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【発明の名称】 胃潰瘍予防または治療剤
【発明者】 【氏名】灘岡 勲
【住所又は居所】茨城県守谷市緑1丁目1番21号 アサヒビール株式会社未来技術研究所内

【要約】 【課題】本発明の課題は、副作用のない安全性の高い抗潰瘍性物質を提供し、このような抗潰瘍性物質を有効成分として含有する消化器潰瘍を抑制するための食品組成物および医薬組成物を提供することである。

【解決手段】本発明は、シミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、へラオオバコ、オオアワダチソウの少なくとも1種類の植物体もしくは植物体から水又は有機溶媒単独、又はそれらの混合物で抽出処理して得たエキスを有効成分とし、抗胃潰瘍作用を有する胃潰瘍予防または治療剤および胃潰瘍予防または治療用食品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、ヘラオオバコ、オオアワダチソウから選ばれる少なくとも1種の植物体、またはその植物体から水、有機溶媒単独、またはそれらの混合物で抽出処理して得た抽出物を有効成分とする胃潰瘍予防または治療剤。
【請求項2】
シミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、ヘラオオバコ、オオアワダチソウから選ばれる少なくとも1種の植物体、またはその植物体から水、有機溶媒単独、またはそれらの混合物で抽出処理して得た抽出物を有効成分として含有する胃潰瘍予防または治療用食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はシミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、ヘラオオバコ、オオアワダチソウから選ばれる少なくとも1種の植物体、またはその植物体の抽出物を有効成分とする胃潰瘍予防または治療剤、それを含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
胃潰瘍は、消化器疾患の中でも十二指腸潰瘍とならんで羅患率が高く、医師および患者の両方にとって厄介な疾患である。特に胃潰瘍は男性に多くみられ、社会的ストレスの多い人や性格的に神経質な人などが、自律神経を介して胃液分泌や胃血流に影響を及ぼして潰瘍を作ると考えられている。統計によると、働き盛りの成人は死ぬまでに4人に1人は1度はかかり、しかも1度かかった人は繰り返し再発することが多いとされている。これまで胃潰瘍治療のために様々な治療薬が用いられてきたが、眠気を伴ったり、アナフィラキシーショックなどの副作用が現れることがあった。そこで、これらの副作用がなく、簡便に摂取し得る天然植物由来の胃潰瘍改善薬の開発が期待されている。
【0003】
ストレス性潰瘍に対する抗潰瘍剤として、甘草を水または含水アルコールで抽出し、フェノール母体を有する多孔質弱塩基性イオン交換樹脂のOH型のものに、上記抽出処理による抽出物の水溶液を接触させ、樹脂に吸着された成分をアルカリ性にした低級アルコールもしくは低級アルキルケトンを用いて溶離し、溶離された成分を溶離液より採取することを特徴とする抗潰瘍性物質の製造法(特許文献1)、ケイヒ、エンゴサク、ボレイ、ウイキョウ、カンゾウ、シャクヤク、リョウキョウからなる7種の生薬を低級アルコールで抽出して得たエキスを有効成分とすることを特徴とする抗潰瘍剤(特許文献2)、桂子の熱水抽出液またはアルコール抽出液を水・アルコール混液の抽出液を回収して得られる抗潰瘍作用を有する活性成分を主成分とする消化器潰瘍治療予防剤(特許文献3)、アヤメ科イリス属植物の根茎よりアルコール抽出したエキスからエーテルで抽出して得られる抗消化性潰瘍治療剤(特許文献4)、ヤツデの葉よりアルコール抽出したエキスをアルコール/水で分配抽出して得られる水溶性画分を有効成分として含有することを特徴とする抗消化性潰瘍剤(特許文献5)、イワタバコの全草よりアルコール抽出したエキスからエーテルで抽出して得られる抗消化性潰瘍治療剤(特許文献6)、カキドウシ(連銭草):3〜30重量部と、カンゾウ(甘草):2.5〜25重量部との配合割合の生薬から抽出された生薬エキスを有効成分とする胃腸病治療薬(特許文献7)、モッコウ、ショウキョウ、ジュツ及びカンゾウを含有する生薬組成物(特許文献8)、アマチャヅル根抽出物を有効成分として含有する消化性潰瘍治療剤(特許文献9)、米からの水抽出物または有機溶媒抽出物を含有する抗潰瘍剤(特許文献10)、米を除く穀類、豆類からの搾汁液あるいは米を除く穀類、豆類からの水抽出物または有機溶媒抽出物を含有する抗潰瘍剤(特許文献11)、カカオ豆から熱水またはエタノールを使用して抽出した抗酸化物質を含有することを特徴とする胃潰瘍予防飲食品(特許文献12)、ローズマリー抽出物またはローズマリン酸を有効成分とする消化器潰瘍抑制用食品組成物及び医薬組成物(特許文献13)、エゾウコギの抽出物を有効成分として含有する組成物(特許文献14)等が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−116420号公報
【特許文献2】特開昭58−152818号公報
【特許文献3】特開昭60−105624号公報
【特許文献4】特開昭63−196522号公報
【特許文献5】特開昭63−216823号公報
【特許文献6】特開昭63−216825号公報
【特許文献7】特開昭64−38025号公報
【特許文献8】特開平3−161446号公報
【特許文献9】特開平3−197431号公報
【特許文献10】特開平4−210645号公報
【特許文献11】特開平6−135846号公報
【特許文献12】特開平7−274894号公報
【特許文献13】特開2000−72685号公報
【特許文献14】特開2002−3391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記のような副作用のない安全性の高い抗潰瘍性物質を提供し、このような抗潰瘍性物質を有効成分として含有する消化器潰瘍を抑制するための食品組成物および医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ハーブ等の各種植物を探索した結果、シミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、へラオオバコ、オオアワダチソウの抽出物に抗潰瘍効果があることを発見し、この効果を消化器潰瘍の予防および/または治療に使用しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、シミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、へラオオバコ、オオアワダチソウの少なくとも1種類の植物体もしくは植物体から水又は有機溶媒単独、又はそれらの混合物で抽出処理して得たエキスを有効成分とし、抗胃潰瘍作用を有する胃潰瘍予防または治療剤および胃潰瘍予防または治療用食品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
実施例1に示されるように、本発明による特定の植物エキスを有効成分とする医薬組成物、食品組成物は抗胃潰瘍作用を有する。したがって、これを用いることにより、副作用のない安全性の高い抗潰瘍性物質を提供し、このような抗潰瘍性物質を有効成分によって消化器潰瘍を抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いるシミシフーガ(学名Cimicifuga racemosa、慣用名:ブラックコホシュ)は、キンポウゲ科サラシナショウウマ属の多年草草木、原産地は北アメリカ西部であり、アメリカ等においては根茎が痛み止めや更年期治療に使用されている。
田七ニンジン(学名Panax Notoginseng panax)はウコギ科ニンジン属の多年草草木で、いわゆる朝鮮人参(高麗人参)といわれるオナネニンジンと非常に近縁の植物で、止血作用が非常に強く、刀傷等の特効薬として使用された。他に、肝炎に対する予防、治療効果や心筋の酸素消費量を減少させる作用、血圧降下作用などが知られている。
チャボトケイソウは(学名Passiflora incatnata L、慣用名 パッションフラワー)トケイソウ科トケイソウ属のつる性植物で、南米と東インドを原産地とし、現在では米国東部にも自生している。米国の先住民は根を強壮、葉を鎮静に用いてきた。
ヘラオオバコ(学名Plantago lanceolata)はオオバコ科の多年草で、ほとんどの温帯地域に見られる。去痰、利尿作用があり、傷薬としても利用されている。
オオアワダチソウ(学名Solidago gigantea var.leiphylla)は北アメリカ原産のキク科の多年草。清田かあわ立ちそうに似るが、茎はやや細い。
【0009】
本発明において用いるシミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、へラオオバコ、オオアワダチソウの抽出物は、シミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、へラオオバコ、オオアワダチソウを適当な溶媒で抽出することによって得られる。全草、またはその葉、根皮、茎、根、枝、果実、種子もしくは花のいずれか、またはこれら植物部位の2以上を混合したものを抽出に用いることができる。これら植物原料は生であっても、乾燥物であってもよい。好ましくは、これら植物原料を粉砕した後、抽出に用いる。
抽出は通常の方法で行ってよい。即ち、上記の植物原料を常温または加温下に溶媒で抽出するのが一般的である。しかし、臨界抽出法などの特殊な抽出法を用いることもできる。
抽出に用いる溶媒としては、水、または低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコールまたはブタノールなど)、アセトンもしくは酢酸エチルなどの有機溶媒の1種または2種以上を適宜混合して使用することができる。好ましい抽出溶媒は、水または低級アルコールの単独、または水と低級アルコールの混合液である。
抽出温度は、通常は5〜120℃、好ましくは40〜100℃の範囲である。抽出時間は、抽出温度によって変化するが、通常、室温付近で抽出する場合は1〜10日間であり、50℃以上で抽出する場合は1〜48時間である。
このようにして得た抽出液をそのままで本発明に用いることができるが、この抽出液を濃縮あるいは適当な溶媒(例えば、水または低級アルコール)で希釈して用いることもできる。また、この抽出液を蒸発乾固し、その固形分を本発明に用いることもできる。さらに、これら抽出物を適当な樹脂担体を用いて分画し、このようにして得た有効成分を多く含む画分を本発明に用いることもできる。
【0010】
本発明の食品組成物および医薬組成物は、上記の乾燥粉末または抽出物をを含有する。食品組成物としては、顆粒、錠菓、ゼリー、飴、飲料などが挙げられ、これらを必要に応じて摂取させることができる。医薬組成物としては、錠剤、丸剤、粉剤、カプセル剤、液剤、乳濁剤、懸濁剤、シロップ剤などの形態が挙げられ、これらを必要に応じて経口投与することができる。
食品組成物を調製する際に用いる原料はこの分野で普通に使用されるものであってよく、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂類、多糖類などを挙げることができる。
医薬組成物を調製する際に用いる担体としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、トラガカント、ゼラチン、シロップ、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、鉱油などを挙げることができる。
【0011】
本発明の食品および医薬組成物は、さらに潤沢剤、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、甘味剤および/または香味剤などを含んでいてよく、また、他の有効成分(水溶性ビタミン類および油溶性ビタミン類などを含む)を含んでいてもよい。このような成分からなる本発明の食品および医薬組成物を、当分野で周知の方法に従って製造してよい。
本発明の抽出物は広い用量範囲にわたって有効である。従って、その1日あたりの用量は、通常、体重1kgに対して約0.01〜1000mg、好ましくは約0.1〜500mg、さらに好ましくは約1〜300mgの範囲であってよい。この量を1回または数回に分割して摂取させるかまたは投与する。しかし、実際の用量は、対象の年齢、体重および症状の重篤度などを考慮した上で決定する。
【実施例1】
【0012】
(1)植物体の粉末化
シミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、へラオオバコ、オオアワダチソウの葉、花、果実、種子、幹もしくは根を生の状態、或いは乾燥の後、粉末化した。
(2)エキス抽出
シミシフーガ、田七ニンジン、チャボトケイソウ、へラオオバコ、オオアワダチソウの葉、花、果実、種子、幹もしくは根を水、アルコール、それらの混合物を用いて、加熱抽出し、凍結乾燥してエキスを得た。
(3)胃瘍抑制効果の検討
体重250g前後のSD系雄性ラットを用いて検討した。24時間自由摂水下に絶食させたラットにシミシフーガ根茎、田七ニンジン地下部、チャボトケイソウ地上部、へラオオバコ地上部、オオアワダチソウ地上部について、50%エタノール水溶液にて120分間、60℃で加熱抽出し減圧濃縮後、凍結乾燥したエキス1.0g/kg(対照群には水)を経口投与した。投与30分後よりラットをステンレス製ストレスゲージに拘束し、水温20±1℃の水槽に胸部まで浸して胃粘膜損傷を惹起させた。2時間後にラットを水槽より引き上げ放血致死せしめ、直ちに胃を摘出後、生理食塩水10mlを胃内に注入して胃を膨らませ、その状態で10%中性ホルマリン溶液に1時間浸漬して固定した。2時間後ホルマリン固定された胃を大弯に沿って切開し、デジタルカメラを用いて胃潰瘍形成の様子を撮影した。水浸拘束ストレス潰瘍ラットに形成された胃潰瘍は、画像解析ソフト(NIH image)を用いて解析し、下記計算式*1にて胃潰瘍形成度(%)を算出した。
*1:胃潰瘍形成度(%)=胃潰瘍形成部位面積/(胃底部面積+幽門部面積)×100
表1〜5に示す通り試験群は対照群と比較して、有意に胃潰瘍形成を抑制した。
【0013】
表1:オオアワダチソウの胃潰瘍抑制効果
胃潰瘍形成度(%)
対照群 8.1±1.5
オオアワダチソウ群 1.4±0.7
(n=5、平均値±標準偏差、p<0.05)
【0014】
表2:シミシフーガの胃潰瘍抑制効果
胃潰瘍形成度(%)
対照群 19.0±5.2
シミシフーガ群 4.4±0.4
(n=5、平均値±標準偏差、p<0.05)
【0015】
表3:ヘラオオバコの胃潰瘍抑制効果
胃潰瘍形成度(%)
対照群 6.8±1.1
ヘラオオバコ群 2.3±1.2
(n=5、平均値±標準偏差、p<0.01)
【0016】
表4:田七ニンジンの胃潰瘍抑制効果
胃潰瘍形成度(%)
対照群 11.8±2.4
田七ニンジン群 1.6±0.9
(n=5、平均値±標準偏差、p<0.01)
【0017】
表5:チャボトケイソウの胃潰瘍抑制効果
胃潰瘍形成度(%)
対照群 11.8±2.4
チャボトケイソウ群 2.5±1.1
(n=5、平均値±標準偏差、p<0.01)
【実施例2】
【0018】
(錠剤、カプセル剤)
実施例1で得られたエキス 10.0g
乳糖 75.0g
ステアリン酸マグネシウム 15.0g
合 計 100.0g
上記の各重量部を均一に混合し、常法に従って錠剤、カプセル剤とした。なお上記エキスはシミシフーガを50%エタノール水溶液で抽出したエキスであるが、実施例1で得られた他の植物の抽出物を添加した錠剤、カプセル剤も同様に得た。
【実施例3】
【0019】
(散剤、顆粒剤)
実施例1で得られたエキス 20.0g
澱粉 30.0g
乳糖 50.0g
合 計 100.0g
上記の各重量部を均一に混合し、常法に従って散剤、顆粒剤とした。なお上記エキスはシミシフーガを50%エタノール水溶液で抽出したエキスであるが、実施例1で得られた他の植物の抽出物を添加した散剤、顆粒剤も同様に得た。
【実施例4】
【0020】
(飴)
ショ糖 20.0g
水飴(75%固形分) 70.0g
水 9.5g
着色料 0.45g
香 料 0.045g
実施例1で得られたエキス 0.005g
合 計 100.0g
上記の各重量部を均一に混合し、常法に従って飴とした。なお上記エキスはシミシフーガを50%エタノール水溶液で抽出したエキスであるが、実施例1で得られた他の植物の抽出物を添加した飴も同様に得た。
【実施例5】
【0021】
(ジュース)
濃縮ミカン果汁 15.0g
果 糖 5.0g
クエン酸 0.2g
香 料 0.1g
色 素 0.15g
アスコルビン酸ナトリウム 0.048g
実施例1で得られたエキス 0.002g
水 79.5g
合 計 100.0g
上記の各重量部を均一に混合し、常法に従ってジュースとした。なお上記エキスはシミシフーガを50%エタノール水溶液で抽出したエキスであるが、実施例1で得られた他の植物の抽出物を添加したジュースも同様に得た。
【実施例6】
【0022】
(クッキー)
薄力粉 32.0g
全 卵 16.0g
バター 16.0g
砂 糖 25.0g
水 10.8g
ベーキングパウダー 0.198g
実施例1で得られたエキス 0.002g
合 計 100.0g
上記の各重量部を均一に混合し、常法に従ってクッキーとした。なお上記エキスはシミシフーガを50%エタノール水溶液で抽出したエキスであるが、実施例1で得られた他の植物の抽出物を添加したクッキーも同様に得た。
【出願人】 【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋3丁目7番1号
【出願日】 平成16年5月7日(2004.5.7)
【代理人】 【識別番号】100083714
【弁理士】
【氏名又は名称】舟橋 榮子

【公開番号】 特開2005−320274(P2005−320274A)
【公開日】 平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願番号】 特願2004−139063(P2004−139063)