| 【発明の名称】 |
薬物の取り込み量が多く、かつ薬物放出速度を制御しうる薬物徐放可能なヒドロゲル材料 |
| 【発明者】 |
【氏名】平谷 治之 【住所又は居所】愛知県春日井市高森台五丁目1番地10号 株式会社メニコン総合研究所内
【氏名】水谷 有里 【住所又は居所】愛知県春日井市高森台五丁目1番地10号 株式会社メニコン総合研究所内
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| 【要約】 |
【課題】薬物の取り込み量が多く、かつ薬物放出速度を制御しうる薬物徐放可能なヒドロゲル材料、コンタクトレンズおよび眼内レンズを提供する。
【解決手段】ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなり、かつ下記式(1)を満たすモノマー混合液を重合して得られるヒドロゲル材料、ならびに該ヒドロゲル材料からなる薬物徐放性コンタクトレンズおよび薬物徐放性眼内レンズである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなり、かつ下記式(1)を満たすモノマー混合液を重合して得られるヒドロゲル材料。 y≦0.277x−10 (1) (ここで、xは特定官能基を有するモノマーのモル濃度(mM)、yはターゲット薬剤のモル濃度(mM)を表わす。ただし、xは50〜800である。) 【請求項2】 特定官能基を有するモノマーが、カルボキシル基、スルホン基およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーである請求項1記載のヒドロゲル材料。 【請求項3】 特定官能基を有するモノマーが、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーである請求項1または2記載のヒドロゲル材料。 【請求項4】 モノマー混合液中の架橋剤濃度が10〜800mMである請求項1、2または3記載のヒドロゲル材料。 【請求項5】 モノマー混合液が、さらに親水性モノマーを含む請求項1、2、3または4記載のヒドロゲル材料。 【請求項6】 親水性モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドおよびN−ビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーである請求項5記載のヒドロゲル材料。 【請求項7】 ターゲット薬剤が、緑内障治療剤である請求項1、2、3、4、5または6記載のヒドロゲル材料。 【請求項8】 緑内障治療剤が、チモロールまたはチモロールの医療的に許容される塩である請求項7記載のヒドロゲル材料。 【請求項9】 請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のヒドロゲル材料からなる、薬物の取り込み量が多く、かつ薬物放出速度を制御しうる薬物徐放性コンタクトレンズ。 【請求項10】 請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のヒドロゲル材料からなる、薬物の取り込み量が多く、かつ薬物放出速度を制御しうる薬物徐放性眼内レンズ。 【請求項11】 (a)ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなり、かつ下記式(1)を満たすモノマー混合液を得る工程; y≦0.277x−10 (1) (ここで、xは特定官能基を有するモノマーのモル濃度(mM)、yはターゲット薬剤のモル濃度(mM)を表わす。ただし、xは50〜800である。) (b)該ターゲット薬剤と該特定官能基を有するモノマーとの間に生じる複合体を維持したまま重合する工程;ならびに (c)重合体から該ターゲット薬剤と未反応のモノマーを除去する工程、 を包含するヒドロゲル材料の製造方法。 【請求項12】 さらに、(d)ターゲット薬剤を重合体に取り込ませる工程を包含する請求項11記載の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ヒドロゲル材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、薬物の取り込み量が多く、かつ薬物放出速度を制御しうる薬物徐放可能なヒドロゲル材料、および該ヒドロゲル材料からなるコンタクトレンズおよび眼内レンズに関する。また、本発明は、薬物の取り込み量が多く、かつ薬物放出速度を制御しうる薬物徐放可能なヒドロゲル材料の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 現在、ドライアイ、緑内障、結膜炎あるいは角膜上皮障害などの眼科領域での主要な疾患に対する薬物治療には、点眼薬または眼軟膏が使用されているが、なかでもその第一選択は、専ら点眼薬である。点眼薬は、患者にとっては、取扱いが簡単でかつ低侵襲というメリットがあり、医師にとっても取扱い説明が簡単であり、双方のメリットが大きい。 【0003】 しかしながら、瞬きによる眼瞼の機械的運動や涙液置換のために、点眼薬を長時間に渡って眼内に保持しておくことは不可能に近い。点眼薬によって投与された薬剤の99%は、涙液によって涙点から涙小管に洗い流されてしまい、薬効はほとんど期待できないことが知られている(M. Patrick, A. K. mitra, Ophthalmic Drug Delivery Systems, A. K. Mitra(Ed.), Chapter 1, Marcel Dekker, New York(1993))。 【0004】 すなわち、点眼薬による薬剤投与の場合、一般の内服薬と比較して生体有効利用性が圧倒的に低いのである。したがって、薬効を発揮させるためには頻回の点眼が必要となる。この頻回点眼は、患者にとって煩雑な作業となるだけでなく、患者の服用コンプライアンス(患者が医師の指示通りに薬剤を服用すること)が低下し、点眼投与を忘れたり、また、それを補うために一度に2〜3日分を投与したりすることから、組織内での薬物濃度が低すぎたり高すぎたり不安定になることから、治るはずの疾患も治り難くなることが問題となっている。 【0005】 さらに、頻回点眼により角結膜上から洗い流され、全身に回る薬剤量も点眼回数に比例して増加する。点眼薬依存症のように過度の点眼を繰り返す患者も多く、薬剤の種類によっては、重篤な全身的副作用を引き起こすこともある。眼内においても頻回点眼により、組織内における薬剤濃度は激しく変動し( I. K. Reddy, M. G. Ganesan, Ocular Therapeutics And Drug Delivery, I. K. Reddy(Ed.), Chapter 1, Technomic, Pennsylvania(1996))、眼内局所における副作用の危険性は非常に高くなる。 【0006】 また、眼疾患がある場合に頻回点眼を行なうと、本来の涙液成分(ムチン、ラクトフェリン、IgA、リゾチームなど)を希釈し洗い流してしまうため、逆に疾患の症状が悪化することも多い。さらには、健常人でも人工涙液を頻回点眼すると新たに角膜上皮障害が発生したという報告さえある(眼科 New Insight 2, MEDICAL VIEW(1994))。 【0007】 以上より、眼科領域での疾患に対する薬物治療には、点眼薬が最良であるというわけではなく、点眼薬以外に有効な解決方法がないのが現状である。 【0008】 以上をふまえると、理想的な眼内薬物治療法は、以下のような効果をもたらすものである。: (a)薬効の持続性を向上させ、薬剤の生体有効利用性を高める。 (b)投与回数を極力減らし患者の服用コンプライアンスを向上させる。 (c)投与された薬剤のロスを減らし、副作用を低減させる。 (d)患者自身が投与可能(煩雑な作業でない)である。 (e)低侵襲である 一方、これまでに、コラーゲンシールドやオキュサート(登録商標)などが販売された(M. Friedberg, U. Pleyer, B. J. Mondino, Ophthalmol., 1991, 98, 725-732;S. G. Deshpande, S. Shirolkar, J. Pharm. Pharmacol., 1989, 41,197-200)。しかし、これらは、プラスチックに起因する装用感の悪さに加え、患者自身の取扱いが許されなかったため、医師による装用が必要とされ、患者が頻繁に眼科を訪問しなければならないという欠点を有していた(F. E. Ros, J. W. Tiji, J. A. Faber, CLAO J., 1991, 17, 187-190)。 【0009】 以上のような背景から理想に近いものは、生体との親和性が高く装用感のよいヒドロゲルを用いた薬剤徐放システムであるとされてきた。実際にこれと同じ発想で市販のソフトコンタクトレンズ(以下、SCLと称することがある。)に薬物を染込ませて、これを患者に装用させるという試みは、WaltmanやKaufranらによって1970年にすでに実施されている(S. R. Waltman, H. E. Kaufman, Inv. Ophthalmol., 1970, 9, 250-255;S. M. Podos, B. Becker, C. Asseff, J. Hartstein, Am. J. Ophthalmol., 1972, 73, 336 他)。しかし、ヒドロゲル中に拡散した薬剤は、拡散律速にしたがった放出挙動を示すため(M. Negishi, et al, Drug. Dev. Ind. Pharma., 1999, 25, 437-444)、30分以内にほとんどの薬剤は放出されてしまう(M. R. Jain, Bri. Ophthalmol., 1988, 72, 150-154;J. W. Shell, R. Baker, Ann. Ophthalmol., 1974, 6, 1037)。これは、点眼薬1滴の角膜上滞在時間(約5分)と比較すると確かに改善されてはいるものの、「薬剤徐放システム」と言うにはほど遠い。 【0010】 さらに、市販のSCL1枚に取込むことのできる薬剤量は非常に少なく、薬効を示すに充分な量の薬剤を保持させることはかなり困難である(A. L. Weiner, Polymeric Drug delivery Systems for the Eye, A. J. Domb(Ed.), Polymeric site-specific pharmacotherapy, John Wiley & Sons, Chichester(1994), 315-346;T. P. Heyman, M. L. McDermott, et al, J. Cat. Ref. Surg., 1989, 15, 169-175)。これらが通常のSCLの持つ最大の欠点であり、このために通常のSCLは薬物キャリアとしての利用法が制限されてきた。 【0011】 ヒドロゲル材料に薬物を取り込ませる方法として、 (1)モノマー混合液中に直接薬物を添加し、薬物存在下で重合を行なう方法 (2)薬物非存在下でモノマー混合液を重合し、その後薬物溶液中に浸漬し、飽和させる方法 などが検討されている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。 【0012】 しかし、上記のいずれの方法も薬物の徐放時間が比較的短く、長時間に渡る効果が期待できない。また、ヒドロゲル材料に取り込まれた薬物の放出速度が速いと、適用直後に急激な薬物濃度上昇が起こるため、副作用の危険性が高まってしまう。 【0013】 一方、ヒドロゲル材料内に大量の薬物を保持できる材料の製造方法として、 (3)分子認識機能を有するインプリントゲルの製造方法 などが検討されている(たとえば、特許文献3参照)。 【0014】 しかし、この方法では、より多くの薬物を取り込むことが可能となるものの、薬物の放出速度および放出持続時間を制御するまでには至らなかった。 【0015】 したがって、ゲル内により多くの薬物を取り込み、かつ薬物放出速度を制御しうるヒドロゲル(インプリントゲル)材料が望まれている。 【0016】 【特許文献1】特開昭62−103028号公報 【特許文献2】特開昭62−103029号公報 【特許文献3】国際公開第03/090805号パンフレット 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0017】 本発明の目的は、多くの薬物を取り込み、かつ薬物放出速度を制御しうるヒドロゲル材料を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0018】 本発明は、ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなり、かつ下記式(1)を満たすモノマー混合液を重合して得られるヒドロゲル材料に関する。 y≦0.277x−10 (1) (ここで、xは特定官能基を有するモノマーのモル濃度(mM)、yはターゲット薬剤のモル濃度(mM)を表わす。ただし、xは50〜800である。) 【0019】 特定官能基を有するモノマーは、カルボキシル基、スルホン基およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーであることが好ましい。 【0020】 特定官能基を有するモノマーは、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。 【0021】 モノマー混合液中の架橋剤濃度は、10〜800mMであることが好ましい。 【0022】 モノマー混合液は、さらに親水性モノマーを含むことが好ましい。 【0023】 親水性モノマーは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドおよびN−ビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。 【0024】 ターゲット薬剤は、緑内障治療剤であることが好ましい。 【0025】 緑内障治療剤は、チモロールまたはチモロールの医療的に許容される塩であることが好ましい。 【0026】 本発明は、前記ヒドロゲル材料からなる、薬物の取り込み量が多く、かつ薬物放出速度を制御しうる薬物徐放性コンタクトレンズに関する。 【0027】 また、本発明は、前記ヒドロゲル材料からなる、薬物の取り込み量が多く、かつ薬物放出速度を制御しうる薬物徐放性眼内レンズに関する。 【0028】 さらに、本発明は、(a)ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなり、かつ下記式(1)を満たすモノマー混合液を得る工程; y≦0.277x−10 (1) (ここで、xは特定官能基を有するモノマーのモル濃度(mM)、yはターゲット薬剤のモル濃度(mM)を表わす。ただし、xは50〜800である。) (b)該ターゲット薬剤と該特定官能基を有するモノマーとの間に生じる複合体を維持したまま重合する工程;ならびに (c)重合体から該ターゲット薬剤と未反応のモノマーを除去する工程、 を包含するヒドロゲル材料の製造方法に関する。 【0029】 前記製造方法においては、さらに、(d)ターゲット薬剤を重合体に取り込ませる工程を包含することが好ましい。 【発明の効果】 【0030】 本発明のヒドロゲル材料は、同一組成からなる従来型のヒドロゲル材料に比べ、取り込むことの可能な薬物量が多いため、単位体積あたりのゲルへの薬物の取り込み量を大幅に改善することができ、薬効を得るために充分な量の薬物をゲル内に確保することができる。 【0031】 また、本発明のヒドロゲル材料は、従来型のヒドロゲル材料に比べ、取り込んだ薬物をゆっくり放出させることが可能であるため、点眼直後に起こる急激な薬物濃度上昇による眼内局所における副作用の危険性、頻回点眼による涙液成分の希釈や洗い流しによる眼疾患の悪化などを著しく減少させる効果を奏する。さらに、特定官能基を有するモノマーとターゲット薬剤との配合比を特定の値に調整することにより、放出時間のコントロールをも可能とし、所望の治療期間にわたり薬物を徐放させることができる。この効果によって、点眼薬の頻回投与の必要性がなくなり、患者のコンプライアンスも向上し、疾患に対し、より簡便に、かつ安全な薬物投与を行なうことができるようになる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0032】 本発明のヒドロゲル材料は、ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなり、かつ下記式(1)を満たすモノマー混合液を重合して得られるものである。 y≦0.277x−10 (1) (ここで、xは、特定官能基を有するモノマーのモル濃度(mM)、yは、ターゲット薬剤のモル濃度(mM)を表わす。ただし、xは50〜800である。) 【0033】 なお、本明細書中において、「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」および「・・・メタクリレート」の2つの化合物を総称するものであり、また、その他の(メタ)アクリルアミド誘導体についても同様である。また、本明細書中においてモル濃度とは架橋性化合物、重合開始剤、光増感剤を除いた全重合成分1Lに対する物質量を示す。 【0034】 ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーとしては、カルボキシル基、スルホン基またはアミノ基などを有する化合物があげられる。たとえば、カルボキシル基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸など、スルホン基を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など、アミノ基を有する化合物としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど、またこれらのナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩など種々の塩などがあげられる。これらの中では、ターゲット薬剤と良好な物理的架橋構造を形成する点から、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく、とくに(メタ)アクリル酸が好ましい。 【0035】 なお、本明細書中において、「物理的架橋構造」とは、「水素結合および/または静電的相互作用(荷電粒子間のクーロン力のほかに、双極子や四極子などの多重極子間相互作用を含む)によって生じる架橋構造」のことをいう。 【0036】 ターゲット薬剤としては、特定官能基を有するモノマーと物理的架橋構造を形成できるような薬剤を適宜選択すればよい。たとえば、抗生物質、抗ウィルス剤、抗炎症剤、ステロイド、ペプチド、ポリペプチド、抗アレルギー剤、α−アドレナリン遮断剤、β−アドレナリン遮断剤、抗白内障剤、緑内障治療剤、眼薬、涙液分泌亢進剤、眼の局部的または部分的麻酔薬などがあげられる。とくに、眼科領域での薬物による疾患治療や市場での要求性の点で、緑内障治療剤が好ましい。緑内障治療剤としては、たとえば、チモロール、ピロカルピン、およびこれらの医薬的に許容される塩があげられる。 【0037】 本明細書中において、「医薬的に許容される塩」とは、親化合物の医薬的性質(たとえば、毒性、効率など)に有意に、逆に影響をおよぼさない親化合物の塩を意味する。本発明において、医薬的に許容される塩としては、塩化物、ヨウ化物、臭化物、塩酸塩、酢酸塩、硝酸塩、ステアリン塩、リン酸塩、硫酸塩などがあげられる。 【0038】 モノマー混合液中の特定官能基を有するモノマーおよびターゲット薬剤の濃度は、次の式(1)を満足するように決定される。 y≦0.277x−10 (1) 【0039】 ここで、xは特定官能基を有するモノマーのモル濃度(mM)、yはターゲット薬剤のモル濃度(mM)を表わす。xおよびyが式(1)を満たさない場合には、得られるヒドロゲル材料は薬剤の徐放効果を示さない傾向がある。 式(1)において、xは、50〜800mM、好ましくは100〜600mM、さらに好ましくは150〜500mMである。xが50mM未満では、得られるゲル内にターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できるような特定官能基の数が少なくなり、充分な薬効を発揮することができなくなる傾向がある。また、xが800mMをこえると、製品が硬く、脆くなる傾向がある。モノマー混合液中の全重合成分1Lに対するターゲット薬剤の配合量は、好ましくは2.5〜200mMである。とくに、xが50mM以上100mM以下の場合には、モノマー混合液中の全重合成分1Lに対するターゲット薬剤の配合量は2.5〜12.5mMであることが好ましい。xが100mMをこえ200mM以下の場合には、モノマー混合液中の全重合成分1Lに対するターゲット薬剤の配合量は2.5〜40mMであることが好ましい。また、xが200mMをこえ800mM以下の場合には、モノマー混合液中の全重合成分1Lに対するターゲット薬剤の配合量は2.5〜200mMであることが好ましい。 【0040】 モノマー混合液中の全重合成分1Lに対するターゲット薬剤の配合量が200mMをこえる場合には、ターゲット薬剤濃度が過剰であるため、重合時、ゲル内に形成されるターゲット薬剤と相補的な形をもつ穴(分子認識サイト)が効率よく形成されず、結果としてターゲット薬剤の非存在下でモノマー混合液を重合して得られるゲル(ランダムゲル)と同様のヒドロゲル材料となる。このようなヒドロゲル材料と重合後に取り込まれるターゲット薬剤との物理的架橋構造は弱く、薬物徐放速度をコントロールすることが困難となる。また、ターゲット薬剤が過剰量の場合には、得られるヒドロゲル材料の透明性が低下する。一方、モノマー混合液中の全重合成分1Lに対するターゲット薬剤の配合量が2.5mM未満の場合には、形成される分子認識サイトが少なくなるため、重合後にヒドロゲル材料に取り込まれるターゲット薬剤量が少なく、所望の治療効果を発揮することができなくなる。 【0041】 本発明において、ターゲット薬剤と特定官能基を有するモノマーとは複合体を形成するものであり、モノマー混合液の重合完了時に、この複合体は維持されていなければならない。このようなターゲット薬剤と特定官能基を有するモノマーとの好ましい組合せとしては、表1の組合せがあげられる。 【0042】 【表1】
【0043】 架橋剤としては、一般的に使われている架橋剤であれば何ら問題はない。たとえば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、アジピン酸ジアリル、トリアリルジイソシアネート、α−メチレン−N−ビニルピロリドン、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、N,N’−ビスアクリロイルシスタミン、メチレンビスアクリルアミドなどがあげられる。これらの架橋剤は、単独で、または2種以上を同時に用いることができる。これらの中では、ヒドロゲル材料の柔軟性を適度にコントロールでき、良好な機械的強度を付与し、共重合性を向上させる効果が大きい点で、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。 【0044】 モノマー混合液中の架橋剤のモル濃度は、好ましくは10〜800mM、より好ましくは20〜600mMである。10mM未満では、得られるヒドロゲル材料が製品(たとえば、眼用レンズ、とくにコンタクトレンズ、眼内レンズなど)として必要な形状を保持できなくなる傾向にあり、800mMをこえると、得られる製品が硬く、装用感がわるくなる傾向にあるため、好ましくない。 【0045】 本発明においては、ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなるモノマー混合液に、さらに、親水性モノマーを含有させることが好ましい。親水性モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、リン含有(メタ)アクリル酸エステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系親水性モノマー;ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩酸塩、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、グリセロールアクリルアミド、アクリルアミド−N−ブリコール酸などのアクリルアミド系親水性モノマー;ビニルスルホン、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などスルホン系親水性モノマー;(メタ)アクリロイルモルホリン;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;N−ビニルオキサゾリン;N−ビニルサクシンイミド;ビニルピリジン;酢酸ビニル;イタコン酸;クロトン酸;N−ビニルイミダゾール;ビニルベンジルアンモニウム塩などがあげられる。これらの中では、透明性、成形性、強度の面から、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドおよびN−ビニルピロリドンが好ましい。また、これらのモノマーは、単独で、または2種以上を同時に用いることができる。 【0046】 また、本発明においては、ターゲット薬剤、該ターゲット薬剤と物理的架橋構造を形成できる特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなるモノマー混合液に、さらに、任意のモノマーを含有させてもよい。たとえば、酸素透過性の良好なヒドロゲル材料を得ようとする場合には、任意のモノマーとして、ペンタメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキサニルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレートなどのシリコン含有(メタ)アクリレート;トリメチルシリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレンなどのシリコン含有スチレン誘導体;4−ビニルベンジル−2’,2’,2’−トリフルオロエチルエーテル、4−ビニルベンジル−2’,2’,3’,3’,4’,4’,4’−ヘプタフルオロブチルエーテル、4−ビニルベンジル−3’,3’,3’,−トリフルオロプロピルエーテル、4−ビニルベンジル−3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,6’−ノナフルオロヘキシルエーテル、4−ビニルベンジル−4’,4’,5’,5’,6’,6’,7’,7’,8’,8’,8’−ウンデカフルオロオクチルエーテル、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、パーフルオロスチレン、p−トリフルオロメチルスチレン、o−トリフルオロメチルスチレン、m−トリフルオロメチルスチレンなどのフッ素含有スチレン誘導体;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロ−tert−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−tert−ヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロへプチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−オクタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ノナデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−エイコサフルオロドデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,7,7,7−オクタフルオロ−6−トリフルオロメチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,9,9,9−ドデカフルオロ−8−トリフルオロメチルノニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,11,11,11−ヘキサデカフルオロ−10−トリフルオロメチルウンデシル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート;特開平2−188717号公報、特開平2−213820号公報および特開平3−43711号公報に開示されているマクロモノマーなどを用いることができる。また、たとえば、強度的に優れた前記薬物放出速度を制御し得る薬物徐放可能なヒドロゲル材料を得ようとする場合には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、tert−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、トリメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、パーブロモスチレン、ジメチルアミノスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;(メタ)アクリル酸などを用いることができる。これらのモノマーは、単独でまたは2種以上を同時に用いることができる。 【0047】 本発明のヒドロゲル材料は、(a)ターゲット薬剤、特定官能基を有するモノマーおよび架橋剤からなるモノマー混合液を得る工程; (b)該ターゲット薬剤と該特定官能基を有するモノマーとの間に生じる複合体を維持したまま重合する工程;ならびに (c)重合体から該ターゲット薬剤と未反応のモノマーを除去する工程 により製造される。 【0048】 モノマー混合液は、ターゲット薬剤、特定官能基を有するモノマー、架橋剤、ラジカル重合開始剤、および必要に応じて親水性モノマーや任意のモノマーを混合して調製される。このとき、モノマー混合液中の特定官能基を有するモノマーおよびターゲット薬剤の濃度は、前述のように調整される。 【0049】 ラジカル重合開始剤としては、たとえば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(V−65)、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどがあげられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。 【0050】 また、モノマー混合液の重合を、電磁波などを照射して行なう場合には、光重合開始剤や増感剤をさらに添加することが好ましい。光重合開始剤としては、たとえば、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテルなどのベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア(登録商標)1173)、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノンなどのフェノン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム;2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2−エチルアントラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジルなどがあげられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。 【0051】 重合開始剤や増感剤の配合量は、充分な速度で重合反応を進行させるためには、0.002重量%以上、なかんずく0.01重量%以上となるように調整することが好ましく、また得られるヒドロゲル材料に気泡が発生するおそれをなくすためには、10重量%以下、なかんずく2重量%以下となるように調整することが好ましい。ここで、本明細書中における重量%とは、架橋性化合物、重合開始剤、光増感剤を除いた全重合成分に対する割合を示す。 【0052】 モノマー混合液の重合は、モノマー混合液を樹脂製の成形型に注入し、成形型の型締めを行なって、進行させる。モノマー混合液の重合方法としては、室温〜約130℃の温度範囲で徐々にまたは段階的に加熱する方法、あるいは、マイクロ波、紫外線または放射線(γ線)などの電磁波を照射する方法などがある。重合は、塊状重合法、溶媒などを用いた溶液重合法またはそのほかの方法によってなされてもよい。 【0053】 本発明において、モノマー混合液の重合は、ターゲット薬剤と、特定官能基を有するモノマーとの間に生ずる複合体を維持したまま完了させる。したがって、複合体を維持したまま重合が完了するように、適宜、重合条件を変更してもよい。 【0054】 重合終了後、重合体を成形型から脱型後、大過剰量の洗浄溶液によって洗浄して、内部に存在する未反応モノマーおよびターゲット薬剤を除去することにより、本発明のヒドロゲル材料を得ることができる。 【0055】 未反応モノマーおよびターゲット薬剤を除去するために使用される洗浄溶液としては、水、蒸留水、生理食塩水;希塩酸;水酸化ナトリウム水溶液;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール;または、これらの混合溶液などがあげられる。 【0056】 また、本発明のヒドロゲル材料は、未反応モノマーおよびターゲット薬剤を除去したのち、さらに、(d)ターゲット薬剤を前記重合体に取り込ませる工程を経て製造してもよい。取り込ませるターゲット薬剤は、モノマー混合液に配合したターゲット薬剤と同一のものを使用する。ターゲット薬剤を組み込むためには、ターゲット薬剤を溶解もしくは懸濁させた水溶液中にヒドロゲル材料を1時間〜数日間浸漬すればよい。 【0057】 ターゲット薬剤を再度組み込んだ本発明のヒドロゲル材料のターゲット薬剤の放出持続性比は、2以上であることが好ましい。放出持続性比が2未満では、取り込んだ薬物を所望の治療期間にわたりゆっくりと放出させることができなくなる。また、適用後に眼内局所において、急激な薬物濃度上昇による副作用が起こる危険性がある。 【0058】 なお、放出持続性比は、時間tにおけるヒドロゲル材料からのターゲット薬剤の放出量をMt、ターゲット薬剤の放出限界時における全ターゲット薬剤の放出量をM∞としたときに、ターゲット薬剤を配合せずに作製したゲルについて、Mt/M∞の値が1となった時間(Hc)と、ターゲット薬剤を配合して作製したゲルについて、Mt/M∞の値が1となった時間(Hs)から、下式により求められる値である。 放出持続性比=Hs/Hc 【0059】 本発明のヒドロゲル材料は、透明かつ柔軟性に富み、優れた機械安定性と生体適合性を示し、薬物の取り込み量も多いヒドロゲル材料である。また、本発明のヒドロゲル材料は、ゲル調製に用いられるモノマー混合液中の特定官能基を有するモノマーの濃度とターゲット薬剤の濃度との比を変化させることにより、ターゲット薬剤の放出速度を、所望の時間に制御しうるものである。したがって、本発明のヒドロゲル材料は、その光学機能を応用して、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼科用材料に広く利用することができ、そのほか、薬物徐放カプセルなどにも利用することができる。 【実施例】 【0060】 実施例1および2 モノマーおよび架橋剤は、あらかじめ蒸留によって精製したものを使用した。 【0061】 トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート2mLおよびN,N−ジメチルアクリルアミド2mLに、メタクリル酸(MAA)100mM、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)140mMおよび表2に示した濃度のマレイン酸チモロール(下記構造式:以下、チモロールという)を混合したのち、ダロキュア(登録商標)1173を18μL加え、ポリプロピレン製成形型(直径20mm、厚さ0.3mm)に注入した。紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製、UX0302−03)により、室温下、照射強度11mW/cm2で50分間紫外線を照射し、重合を行なった。得られたプレート状ポリマーを蒸留水、生理食塩水にて充分洗浄したのち、1mMチモロール水溶液に25℃で3日間浸漬することにより、チモロールをプレート状ポリマーに取り込ませ、ヒドロゲル材料(試験試料)を得た。 【0062】 【化1】
【0063】 得られた試験試料について、拡散係数、放出持続性、放出持続性比および徐放効果を、次のようにして評価した。結果を表2に示す。 【0064】 (拡散係数) 試験試料を生理食塩水中に移し、温度を25℃に維持したまま、生理食塩水の一部(600μL/回)を定期的に採取し、自記分光光度計((株)島津製作所製、UV−3150)を用いて、波長295nmにおける吸光度を測定することにより、試験試料から放出したチモロールの濃度を定量した。 【0065】 あらかじめ準備した検量線を用いて、チモロールの放出量(Mt)を定量した。拡散係数(D)は、時間(t)における全チモロール放出量(Mt)、チモロール放出限界時における全チモロール放出量(M∞)および試験試料の厚さ(h)を用いて下式より算出した。 Mt/M∞=4(D・t/π)1/2/h 【0066】 (放出持続性および放出持続性比) 前記Mt/M∞の値が1となった時間を放出持続性の値とした。また、チモロールを配合せずに作製したゲルについて、Mt/M∞の値が1となった時間(Hc)と、チモロールを配合して作製したゲルについて、Mt/M∞の値が1となった時間(Hs)を求め、下式より放出持続性比を算出した。 放出持続性比=Hs/Hc 【0067】 (徐放効果) 試験試料の徐放効果について、次の評価基準で評価した。 ○:放出持続性比が2以上である。 ×:放出持続性比が2未満である。 【0068】 比較例1〜3 チモロールの濃度を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、ヒドロゲル材料を作製した。ここで、MAA濃度とチモロール濃度の関係は、式(1)を満たすものではなかった。得られたヒドロゲル材料について、実施例1と同様に、拡散係数および放出持続性、放出持続性比および徐放効果を評価した結果を表2に示す。 【0069】 比較例4 チモロールを配合しない以外は、実施例1と同様にしてヒドロゲル材料を作製した。実施例1と同様に、拡散係数および放出持続性を評価した結果を表2に示す。 【0070】 実施例3〜5 MAA濃度を200mMにし、チモロール濃度を表2に示すようにした以外は、実施例1と同様にしてヒドロゲル材料を作製した。実施例1と同様に、拡散係数、放出持続性、放出持続性比および徐放効果を評価した結果を表2に示す。 【0071】 比較例5および6 チモロールの濃度を表2に示すように変えた以外は、実施例3と同様にして、ヒドロゲル材料を作製した。ここで、MAA濃度とチモロール濃度の関係は、式(1)を満たすものではなかった。得られたヒドロゲル材料について、実施例1と同様に、拡散係数、放出持続性、放出持続性比および徐放効果を評価した結果を表2に示す。 【0072】 比較例7 チモロールを配合しない以外は、実施例3と同様にしてヒドロゲル材料を作製した。実施例1と同様に、拡散係数および放出持続性を評価した結果を表2に示す。 【0073】 実施例6〜9 MAA濃度を400mMにし、チモロール濃度を表2に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、ヒドロゲル材料を作製した。実施例1と同様に、拡散係数、放出持続性、放出持続性比および徐放効果を評価した結果を表2に示す。 【0074】 比較例8 チモロールを配合しない以外は、実施例6と同様にしてヒドロゲル材料を作製した。実施例1と同様に、拡散係数および放出持続性を評価した結果を表2に示す。 【0075】 【表2】
【0076】 放出持続性比が2以上である試験試料を、薬物放出速度を制御しうる薬物徐放可能なヒドロゲル材料であると判断した。その結果、特定官能基を有するモノマー(MAA)のモル濃度(x)とチモロールの濃度(y)が、式(1)を満たす実施例1〜9で得られるヒドロゲル材料の放出持続性比は2以上であり、薬物放出速度を制御しうる薬物徐放可能なヒドロゲル材料であることがわかった。 y≦0.277x−10 (1)
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| 【出願人】 |
【識別番号】000138082 【氏名又は名称】株式会社メニコン 【住所又は居所】愛知県名古屋市中区葵3丁目21番19号
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| 【出願日】 |
平成16年4月30日(2004.4.30) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100065226 【弁理士】 【氏名又は名称】朝日奈 宗太
【識別番号】100117112 【弁理士】 【氏名又は名称】秋山 文男
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| 【公開番号】 |
特開2005−314338(P2005−314338A) |
| 【公開日】 |
平成17年11月10日(2005.11.10) |
| 【出願番号】 |
特願2004−136416(P2004−136416) |
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