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【発明の名称】 点鼻剤組成物
【発明者】 【氏名】鈴木 康之
【住所又は居所】東京都豊島区高田3丁目24番1号 大正製薬株式会社内

【要約】 【課題】良好な噴霧性状を有し、血管収縮薬をはじめ他の有効成分の放出性には影響を及ぼさず、抗アレルギー薬であるフマル酸ケトチフェンを選択的に徐放化し、その効果を持続させた点鼻剤を提供すること。

【解決手段】フマル酸ケトチフェン、及びフマル酸ケトチフェンの作用を持効化させるためのβ−シクロデキストリン又はその誘導体を配合したことを特徴とする点鼻剤組成物。または、フマル酸ケトチフェン、血管収縮薬、及びフマル酸ケトチフェンの作用を持効化させるためのβ−シクロデキストリン又はその誘導体を配合したことを特徴とする点鼻剤組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸ケトチフェン、及びフマル酸ケトチフェンの作用を持効化させるためのβ−シクロデキストリン又はその誘導体を配合したことを特徴とする点鼻剤組成物。
【請求項2】
フマル酸ケトチフェン、血管収縮薬、及びフマル酸ケトチフェンの作用を持効化させるためのβ−シクロデキストリン又はその誘導体を配合したことを特徴とする点鼻剤組成物。
【請求項3】
β−シクロデキストリン又はその誘導体の配合量が、フマル酸ケトチフェンの1モルに対して0.4モル以上である請求項1又は2記載の点鼻剤組成物。
【請求項4】
血管収縮薬がテトラヒドロゾリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリン及びこれらの薬学的に許容される塩の少なくとも1種である請求項2記載の点鼻剤組成物。
【請求項5】
β−シクロデキストリンの誘導体がヒドロキシプロピル型である請求項1〜3記載の点鼻剤組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルギー薬であるフマル酸ケトチフェンを含有する点鼻剤組成物に関し、さらに詳しくはβ−シクロデキストリン又はその誘導体を配合し、フマル酸ケトチフェンの鼻腔内での放出性を選択的に制御した持効性の点鼻剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の点鼻剤は、水溶性の薬物を液剤の形態で調製し、噴霧器を使用して鼻腔内に噴霧投与するのが一般的であった。そのため、水溶性薬物が鼻粘膜表層に直接作用し、薬効の発現が速いという長所を有していたが、反面、薬物の吸収が速く、その効果が持続しないという短所があった。
【0003】
ところで、近年は、花粉症等の増加により、点鼻剤を使用する人の数が増えているが、従来の点鼻剤では薬効が持続せず、短時間に再投与が必要となり、人前では使用しにくい製剤ということもあって、効果持続型の点鼻剤の開発が望まれていた。
【0004】
これに対して、薬物の放出を制御し、その薬効が持続する点鼻剤もいくつか報告されている。例えば、O/W型にすることにより有効成分の鼻粘膜内への放出を制御し、薬効の持続化を図った製剤が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この製造方法は複雑で、それは直ちに製造コストの上昇という形で跳ね返り、実用化には今一歩適していなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−258069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鼻アレルギー症状の作用メカニズムから推察するに、点鼻剤の持効化には、薬物を鼻粘膜表層に滞留させ、鼻粘膜に吸収され難くすることが一つのポイントになると思われる。
【0008】
しかし、澄明な一液相である点鼻剤では、有効成分たる水溶性薬物の放出が極めて速く、さらに局所用薬物の分子量が比較的小さいため、速やかに鼻粘膜から吸収されてしまう。よって、即効性は得やすいが、薬物を鼻粘膜表層に滞留させて持効化を図るにはもともと不向きといえる。
【0009】
端的には、ヒドロキシプロピルセルロースやカルメロースナトリウムといった水溶性高分子を配合し、鼻粘膜への付着性を上げるといった方法もあるが、点鼻液の粘度も上昇するため、噴霧性の悪化を招来するという問題がある。また、この方法ではすべての有効成分が一様に持効化されてしまうため、即効性が減退し、点鼻剤とするメリットが小さくなってしまう。特に、血管収縮薬は鼻閉改善に重要な役割を担っていることから、抗アレルギー薬の作用を選択的に持効化した点鼻剤こそが望ましいといえる。
【0010】
したがって、本発明は、良好な噴霧性状を有し、血管収縮薬をはじめ他の有効成分の放出性には影響を及ぼさず、抗アレルギー薬であるフマル酸ケトチフェンを選択的に徐放化し、その効果を持続させた点鼻剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、抗アレルギー薬であるフマル酸ケトチフェン及び血管収縮薬を含有する点鼻剤にβ−シクロデキストリン又はその誘導体を配合すると、フマル酸ケトチフェンの放出のみ遅延し、血管収縮薬の放出性には影響を及ぼさないことを見出した。
【0012】
かかる知見に基づき完成した本発明の態様の一つは、フマル酸ケトチフェン、及びフマル酸ケトチフェンの作用を持効化させるためのβ−シクロデキストリン又はその誘導体を配合したことを特徴とする点鼻剤組成物である。
【0013】
本発明の他の態様は、フマル酸ケトチフェン、血管収縮薬、及びフマル酸ケトチフェンの作用を持効化させるためのβ−シクロデキストリン又はその誘導体を配合したことを特徴とする点鼻剤組成物である。
【0014】
本発明の他の態様は、β−シクロデキストリン又はその誘導体の配合量が、フマル酸ケトチフェンの1モルに対して0.4モル以上である前記点鼻剤組成物である。
【0015】
本発明の他の態様は、血管収縮薬がテトラヒドロゾリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリン及びこれらの薬学的に許容される塩の少なくとも1種である前記点鼻剤組成物である。
【0016】
本発明の他の態様は、β−シクロデキストリンの誘導体がヒドロキシプロピル型である前記点鼻剤組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、抗アレルギー薬であるフマル酸ケトチフェンと血管収縮薬を配合した場合には、フマル酸ケトチフェンを選択的に徐放化し、その効果を持続させ、噴霧性の良好な点鼻剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における「フマル酸ケトチフェン」の「作用」としては、ヒスタミン受容体に結合してヒスタミンと拮抗したり、肥満細胞を安定化して化学伝達物質の遊離を抑制することによる鼻掻痒、くしゃみ、鼻汁分泌等の抑制が挙げられる。本発明においてはそれらの作用が持効化される。
【0019】
フマル酸ケトチフェンの配合量は、点鼻剤組成物全体に対して0.02〜0.2質量%が好ましい。
【0020】
「シクロデキストリン」とは、D−グルコピラノース単位がα−1,4−グルコシド結合で環状に結合した王冠状の化合物で、デンプンに Bacillus からとれたアミラーゼを作用させて得られる。本発明の「β−シクロデキストリン」とはグルコース単位が7のもので、環の中に種々のカチオンや有機化合物を取り込んで包接化合物を形成する。β−シクロデキストリンは誘導体であってもよく、例えば、ヒドロキシプロピル型、スルフォブチル型が挙げられる。
【0021】
β−シクロデキストリン又はその誘導体の配合量はフマル酸ケトチフェンの1モルに対して0.4モル以上であり、フマル酸ケトチフェンの持効化の点で、0.8〜8モルが好ましい。
【0022】
本発明において使用する「血管収縮薬」とは、血管収縮を来す薬物であって、例えば、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、フェニレフリンが挙げられ、これらは薬学的に許容される塩であってもよい。本発明においては、テトラヒドロゾリン塩又はナファゾリン塩が好ましい。塩としては、塩酸塩、硝酸塩などが挙げられる。
【0023】
血管収縮薬の「作用」としては、血管を収縮し、血流を減じることによる、うっ血の解消と鼻閉の改善が挙げられ、本発明においてはβ−シクロデキストリン又はその誘導体の配合によりその作用に影響を及ぼさない。
【0024】
血管収縮薬の配合量は、点鼻剤組成物全体に対して0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0025】
本発明において「持効化」とは、徐々に薬物を放出するように制御して、その薬理作用がある程度持続するように調節することをいう。「徐放化」、「持続化」などと同義である。
【0026】
本発明の点鼻剤組成物は、フマル酸ケトチフェン、β−シクロデキストリン又はその誘導体、その他血管収縮薬を精製水に溶解することにより調製できる。そして、これを点鼻剤用の噴霧器に充填することにより点鼻剤として提供できる。
【0027】
その際、本発明の効果を損なわない範囲で、他の有効成分として、抗炎症剤、局所麻酔剤、殺菌剤、収れん剤等を配合することができる。また、pH調節剤、清涼化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤、等張化剤、溶解補助剤等の公知の添加剤を配合してもよい。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0029】
実施例1
塩酸テトラヒドロゾリン 0.1g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
β−シクロデキストリン 1.0g
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
上記成分を精製水に溶解し、pHを4.0に調整して全量100mLの点鼻剤液を調製した。これを点鼻剤用噴霧器に充填して点鼻剤とした。
【0030】
実施例2
塩酸ナファゾリン 0.05g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
β−シクロデキストリン 1.0g
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
上記成分を精製水に溶解し、pHを4.0に調整して全量100mLの点鼻剤液を調製した。これを点鼻剤用噴霧器に充填して点鼻剤とした。
【0031】
実施例3
塩酸テトラヒドロゾリン 0.1g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
β−シクロデキストリン 1.0g
L−メントール 0.01g
ポリソルベート80 0.02g
エタノール 0.1mL
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
塩酸テトラヒドロゾリン、フマル酸ケトチフェン及び塩化ベンザルコニウムを精製水に溶解させた後、L−メントールを溶解させたポリソルベート80のエタノール混合水溶液を加え、pH4.0、全量100mLの点鼻剤液を調製した。これを点鼻剤用噴霧器に充填して点鼻剤とした。
【0032】
実施例4
塩酸テトラヒドロゾリン 0.1g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
ヒドロキシプロピル型β−シクロデキストリン 1.0g
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
上記成分を精製水に溶解し、pHを4.0に調整して全量100mLの点鼻剤液を調製した。これを点鼻剤用噴霧器に充填して点鼻剤とした。
【0033】
実施例5
塩酸ナファゾリン 0.05g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
ヒドロキシプロピル型β−シクロデキストリン 1.0g
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
上記成分を精製水に溶解し、pHを4.0に調整して全量100mLの点鼻剤液を調製した。これを点鼻剤用噴霧器に充填して点鼻剤とした。
【0034】
実施例6
塩酸テトラヒドロゾリン 0.1g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
ヒドロキシプロピル型β−シクロデキストリン 1.0g
L−メントール 0.01g
ポリソルベート80 0.02g
エタノール 0.1mL
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
塩酸テトラヒドロゾリン、フマル酸ケトチフェン及び塩化ベンザルコニウムを精製水に溶解させた後、L−メントールを溶解させたポリソルベート80のエタノール混合水溶液を加え、pH4.0、全量100mLの点鼻剤液を調製した。これを点鼻剤用噴霧器に充填して点鼻剤とした。
【0035】
実施例7
塩酸テトラヒドロゾリン 0.1g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
β−シクロデキストリン 1.0g
ジェランガム 0.2g
ポリソルベート80 0.2g
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
上記成分を精製水に溶解し、pHを5.0に調整して全量100mLの点鼻剤液を調製した。これを点鼻剤用噴霧器に充填して点鼻剤とした。
【0036】
比較例1
塩酸テトラヒドロゾリン 0.1g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
上記成分を精製水に溶解し、pHを4.0に調整して全量100mLの点鼻剤液を調製した。
【0037】
比較例2
塩酸テトラヒドロゾリン 0.1g
フマル酸ケトチフェン 0.075g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
α−シクロデキストリン 1.0g
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
D−ソルビトール 適量
上記成分を精製水に溶解し、pHを4.0に調整して全量100mLの点鼻剤液を調製した。
【0038】
試験例1 in vitro 薬物放出性試験(図1及び2)
[検体]検体には、実施例1、実施例4、実施例1の処方からβ−シクロデキストリンを除いて調製した点鼻剤液(比較例1)及び実施例1の処方でβ−シクロデキストリンの代わりにα−シクロデキストリンを配合して調製した点鼻剤液(比較例2)を用いた。
【0039】
[試験方法]点鼻剤液からの薬物放出性を in vitro 系で評価するため、溶出試験器を用いた日本薬局方記載のパドル法を応用し、放出性試験を実施した。すなわち、予め精製水で充分に水和したセルロース膜(Dialysis Membrane, size 36:和光純薬社製)に検体を封入し、これを37℃の疑似鼻汁液(組成は下記)に浸した。そして、セルロース膜を透過した薬物の量を時間を追って測定した。結果を図1及び2に示す。
【0040】
〔疑似鼻汁液の組成〕
NaCl 6.81g
KCl 1.91g
CaCl2・2H2O 0.59g
MgCl2・6H2O 0.13g
精製水 全1000mL
なお、上記疑似鼻汁液は、佐分利保雄ら「鼻汁によるスギ花粉の破裂」(日本公衆衛生誌 第39巻 第6号 P341〜P346)に記載されている「人工鼻汁」の組成を参考に調製したものである。
【0041】
[結果]実施例1及び実施例4の処方において、塩酸テトラヒドロゾリンの放出性には変化がなかったが、フマル酸ケトチフェンの放出性は抑制された。比較例1及び2では、フマル酸ケトチフェンの放出性は抑制されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、抗アレルギー薬であるフマル酸ケトチフェンの作用のみ持効化された新しいタイプの点鼻剤開発の可能性が示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1、実施例4、比較例1及び比較例2におけるフマル酸ケトチフェンの放出性を示すグラフである。
【図2】実施例1、実施例4、比較例1及び比較例2における塩酸テトラヒドロゾリンの放出性を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
【住所又は居所】東京都豊島区高田3丁目24番1号
【出願日】 平成16年8月10日(2004.8.10)
【代理人】 【識別番号】100115406
【弁理士】
【氏名又は名称】佐鳥 宗一

【識別番号】100074114
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 富造

【公開番号】 特開2005−97264(P2005−97264A)
【公開日】 平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願番号】 特願2004−232956(P2004−232956)