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【発明の名称】 普遍的な放出制御組成物
【発明者】 【氏名】アドナン アリ バドワン

【氏名】マイヤス モハマド アーマド アル−レマウィ

【氏名】ムタツ ベラー エイ ダブリュ シェイク サレム

【要約】 【課題】本発明は放出制御薬剤組成物の調製法およびそのような組成物の使用法を提供する。

【解決手段】少なくとも1種の活性成分および不活性マトリックスを含み、該マトリックスは、キサンタンガムならびにその塩および誘導体と、アルギン酸ナトリウムならびにその塩および誘導体とを含む親水性多糖類ポリマー混合物を含み、前記活性成分と前記親水性多糖類ポリマー混合物との比は、約1:1〜約1:5の範囲であるような放出制御薬剤組成物を調製する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの活性成分と不活性マトリックスとを含む放出制御薬剤組成物であって、該マトリックスが、キサンタンガムならびにその塩および誘導体と、アルギン酸ナトリウムならびにその塩および誘導体とを含む親水性多糖類ポリマーの混合物を含み、前記活性成分と前記親水性多糖類ポリマー混合物との比が約1:1〜約1:5の範囲であることを特徴とする放出制御薬剤組成物。
【請求項2】
活性成分とポリマー混合物との比が約1:3であることを特徴とする請求項1記載の放出制御薬剤組成物。
【請求項3】
前記活性成分が酸性活性成分であることを特徴とする前記請求項1または2記載の放出制御薬剤組成物。
【請求項4】
前記酸性活性成分が、ジクロフェナク、インドメタシン、ナプロキセン、ならびにその塩および誘導体よりなる群から選択されることを特徴とする請求項3記載の放出制御薬剤組成物。
【請求項5】
キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの比が約1:5〜約1:15の範囲であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の放出制御薬剤組成物。
【請求項6】
キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの比が約1:7.5〜約1:12.5の範囲であることを特徴とする請求項5記載の放出制御薬剤組成物。
【請求項7】
キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの比が約1:10であることを特徴とする請求項6記載の放出制御薬剤組成物。
【請求項8】
薬剤学的に許容される1種またはそれ以上の賦形剤を追有することを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の放出制御薬剤組成物。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項記載の放出制御薬剤組成物を調製する方法であって、
(a)キサンタンガムならびにその塩および誘導体と、アルギン酸ナトリウムならびにその塩および誘導体とを含む親水性多糖類ポリマーの混合物を調製し;
(b)前記混合物と、活性成分、好ましくは酸性活性成分、ならびに、必要であれば、薬剤学的に許容される1種またはそれ以上の賦形剤とを混合し;
(c)調製物を顆粒状に加工し;
(d)顆粒を圧縮し、好ましくはタブレット状に成型する;各工程を含む方法。
【請求項10】
動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトに投与することを特徴とする請求項1から請求項8いずれか1項記載の放出制御薬剤組成物の使用法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの活性成分および不活性なマトリックスを含む、普遍的な放出制御薬剤組成物に関するものであり、該マトリックスは、キサンタンガムならびにその塩および誘導体と、アルギン酸ナトリウムならびにその塩および誘導体とを含む親水性多糖類ポリマーの混合物を含む。また、本発明は、そのような組成物の調製法および使用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、薬物送達の制御に関する概念が広められ、この目的に合致する放出制御系は、今日では、幅広く用いられている。一般的にそのような系は、1種またはそれ以上の活性成分を含有する薬剤学的に不活性なマトリックスを含み、そのような活性成分は、マトリックスから放出される。薬物送達を制御することは、時間(時間的制御)および/または場所(空間的制御)に関して、治療上望ましい。
【0003】
時間的制御の場合には、薬物の放出を遅延させ、または変更する。放出速度が変化することにより、薬物送達部位において局所的に薬物濃度が一定になり、さらに、血漿中の濃度も一定になる。この結果、例えば、効果が増大し、および/または毒性が低下するなどにより、治療効果が著しく改善し得る。さらにまた、投与回数が減ることにより、投与方式がより簡素化され、従って、患者の服薬遵守が得やすくなる。時間的制御に関しては、ひとつには、プラスター(膏薬)製剤などのように、皮膚系に焦点を当てたものがある。しかしながら、タブレットやカプセルなどのような経口投与系も当該分野において既知である。
【0004】
さらにまた、経口系により、消化管内において薬物送達を空間的に制御する機会が得られる。このことは、例えば、期待される治療効果の成否が、薬理学的に活性な成分が送達されるべき消化管の特定部分に左右される場合には、非常に有効である。
【0005】
活性成分の放出を制御するために利用する不活性マトリックスの調製において親水性ポリマーを使用することは、当該分野において既知である。親水性ポリマー内に薬物が均一に分散している放出制御固体投与剤型においては、基本的に薬物の放出は、薬物の拡散、もしくは周囲の溶媒による親水性ポリマーの表面浸食、またはこれら2つの過程の組み合わせによって制御される。
【0006】
放出制御薬剤組成物の開発においては、親水性多糖類などの数種のポリマー類、例えば、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムおよびキトサンなどを使用した。
【0007】
1.キサンタンガム
キサンタンガムは、トウモロコシガム糖としても知られている。酵素の攻撃に対する抵抗性が非常に強いため、経口放出制御マトリックス調製物として非常に適している(例えば、特許文献1などを参照)。
【0008】
キサンタンガムは、放出制御組成物中に単独で、または他のポリマーと組み合わせて使用されている。特許文献2においては、放出制御用被膜タブレット中に、キサンタンガムならびにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロースおよびエチルセルロースを組み合わせて使用している。これらのタブレットは、ポリマー混合物を30〜72質量%含有している。キサンタンガムを含有するタブレットからの薬物の放出は、酸性環境内において若干速かったが、これは、pHが高い場合に比べて、酸性の方が初期の表面浸食が迅速に起こるからである。ガムの水和後は、薬物の放出は基本的にpH依存性である(1)。キサンタンガムマトリックスタブレットの膨潤は、塩濃度に反比例した。製品の溶解性に応じて、このマトリックスからの薬物の放出は、膨潤挙動によって制御されていた(2)。非特許文献1(3)においては、圧縮およびイン・ビトロ(in vitro)薬物放出に基づき、放出制御用マトリックスとしてのキサンタンガムとHPMCとを比較している。
【0009】
2.アルギン酸ナトリウム
アルギン酸ナトリウムは、ポリウロン酸のグループに属し、放出制御製剤においては、ゲル形成ポリマーとして作用する(特許文献1を参照)。これらの方法ならびにその利点およびメカニズムについては、文献に詳細に記載されている(4−12)。
【0010】
キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとを組み合わせて使用することについても既に記載されている。特許文献3には、放出制御タブレット用の薬剤組成物が開示されており、該タブレットは、活性成分としてのβ−ラクタム抗生物質、ならびに、アルギン酸ナトリウムおよびキサンタンガムよりなる群から選択される親水性ポリマーの混合物を含有する。前記組成物は、約30〜約90質量%の活性成分、および約1〜約25質量%の親水性ポリマー類を含んでおり、後者の混合物は、約0.1〜約20質量%のアルギン酸ナトリウムおよび約0.1〜20質量%のキサンタンガムを含む。
【0011】
特許文献1(ならびに該特許から派生した特許文献4および特許文献5)は、薬物送達を時間的および空間的に組み合わせて制御するタブレット型またはカプセル型の薬剤組成物を開示しており、それらには、活性成分もしくは薬物、気体発生構成成分、膨潤剤、粘性剤(viscolysing agent)(例えば、キサンタンガムなど)、および、必要であればゲル化剤(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)を含む。好ましい1日1回投与用シプロフロキサシン製剤は、69.9%のシプロフロキサシン主成分、0.34%のアルギン酸ナトリウム、1.03%のキサンタンガム、13.7%の重炭酸ナトリウム、12.1%の架橋型ポリビニルピロリドンおよびその他の薬剤学的賦形剤を含む。しかしながら、組成物の総質量に対して、粘性剤(例えば、キサンタンガムなど)を約0.1〜30質量%、およびゲル形成ポリマー(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)を約0.1〜20質量%含有していなければならないとも開示している。
【特許文献1】米国特許第6,261,601号明細書
【特許文献2】米国特許第4,309,405号明細書
【特許文献3】国際公開第02/41876号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/15198号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第1 282 397号明細書
【非特許文献1】M.Talukdar., A. Michoel, P.Rombaut, R. Kinget, Int. J. Pharm., 129, pp233-241, 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、放出制御組成物用の製剤は個々の薬物に対して開発されるのが一般的である。そのような開発過程には、長い時間と膨大な資金を必要とする。従って、大多数の活性成分に放出制御挙動をとらせるような普遍的な製剤を見出すことは非常に有効である。
【0013】
従って、ある分類によるいくつかの群にのみ属する薬物に普遍的に適した放出制御組成物の開発は、いまだに必要とされている。
【0014】
故に、本発明の目的は、分類がはっきりしている群の活性成分の放出を制御するために調製された普遍的な薬剤組成物を提供することである。
【0015】
予期していなかったことに、「酸性成分」として分類される薬物は、キサンタンガムおよびアルギン酸ナトリウムの多糖類混合物をマトリックスとして使用した場合には、類似した放出制御特性を示すことが明らかになった。
【0016】
故に、特に、本発明の目的は、酸性活性成分の放出制御用に調製された普遍的な薬剤組成物を提供することである。
【0017】
本発明に従って提供された放出制御製剤は、従来のものに比べていくつかの利点を有する。特に、本発明の組成物は、容易かつ安価に調製でき、直接圧縮に適している。本組成物中には有機溶媒を含まず、使用した構成成分は生体適合性である。さらに、本組成物は、投与ダンピング特性(dose dumping properties)をあまり示さない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、少なくとも1つの活性成分および不活性マトリックスを含む放出制御薬剤組成物を提供し、ここで、該マトリックスは、キサンタンガムならびにその塩および誘導体と、アルギン酸ナトリウムならびにその塩および誘導体とを含む親水性多糖類ポリマーの混合物を含み、活性成分と親水性多糖類ポリマー混合物との比は、約1:1〜約1:5の範囲であることを特徴とする。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態においては、活性成分と親水性多糖類ポリマー混合物との比は、約1:3である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態においては、活性成分は酸性活性成分である。
【0021】
好ましくは、酸性活性成分は、ジクロフェナク、インドメタシン、ナプロキセンならびにそれらの塩および誘導体よりなる群から選択される。
【0022】
本発明の別の実施形態においては、キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの比は、約1:5〜約1:15の範囲である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態においては、キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの比は、約1:7.5〜約1:12.5の範囲である。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態においては、キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの比は、約1:10である。
【0025】
本発明の別の実施形態においては、放出制御組成物は、薬剤学的に許容される1種またはそれ以上の賦形剤を追有する。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、本発明に基づく放出制御薬剤組成物を調製する方法に関し、その方法は、次の各工程を含む:
(a)キサンタンガムならびにその塩および誘導体と、アルギン酸ナトリウムならびにその塩および誘導体とを含む親水性多糖類ポリマーの混合物を調製し;
(b)前記混合物と、活性成分、好ましくは酸性活性成分、ならびに必要であれば、薬剤学的に許容される1種もしくはそれ以上の賦形剤とを混合し;
(c)調製物を顆粒状に加工し;
(d)顆粒を圧縮し、好ましくはタブレット状に成型する。
【0027】
別の態様において、本発明は、本発明に従って調製された放出制御薬剤組成物を動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトに投与することによる使用法に関する。
【0028】
本発明の組成物は、低価格で容易に製造することができ、均質な分散が得られ、高分子量の薬物を輸送することができ、さらに、薬物−ポリマーおよびポリマー−ポリマー相互作用が起こる可能性が低い。
【0029】
本明細書中において使用している「放出制御」または「送達制御」という語は、時間的および/または空間的制御をさす。「時間的」とは、「徐放性」および「持続送達性」を意味し、あるいは、時間に関して改変もしくは調節された任意の放出および送達を意味する。時間的な「改変」または「調節」は、放出または送達が「制御されていない」状態と比較した結果生じ、または、時間内にそのような改変または調節が起こっていることを意味する。「空間的」とは、任意の局所送達をさす。
【0030】
本明細書中において使用している「活性成分」とは、一般的に、薬理学的、治療学的、またはその他の有効成分を意味しており、ここで、そのような有効成分は、それ自身が効力を有するものであっても、または内在性酵素によって代謝された後、もしくはイン・ビボ(in vivo)での特定の反応条件下(例えば、pHなど)において転換された後に活性化されるものであってもよい。
本発明において有用な活性成分の例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID類)が挙げられ、例えば、ジクロフェナク、インドメタシンおよびナプロキセンなどが含まれる。しかしながら、経口投与され、消化管内に放出される任意の成分よりなる群から選択されるその他の多くの活性成分も考慮に入れることができ、そのようなものとしては、例えば、抗感染症(例えば、抗ウイルス、抗バクテリア、抗真菌)薬、NSAID類以外の抗炎症薬、脂質低下剤、血圧に影響を与える薬物、免疫抑制剤、解熱薬、鎮痛薬、避妊薬、抗癌化学療法剤およびその他のものが挙げられる。
【0031】
一般的には、活性成分は、遊離酸類、または薬剤学的に許容されるそれらの任意の塩として使用する。活性成分の誘導体も使用することができる。
【0032】
本明細書において使用している「不活性マトリックス」とは、放出制御薬剤組成物の構成成分であって、それ自身は薬理学的、治療学的またはその他の有効性を持たず、活性成分のキャリヤーとして作用するものをさす。好ましくは、活性成分が不活性マトリックス内に分散する、または包埋されるように、放出制御薬剤組成物の調製中に活性成分を不活性マトリックス構成成分と混合する。
【0033】
炭水化物ガム類に属する親水性多糖類ポリマーとしては、キサンタンガム以外に、トラガカントガム、インドゴム、グァーガム、アカシアガムなどが挙げられ、ならびにそれらの塩および誘導体も含まれる。
【0034】
ポリウロン酸類に属する親水性多糖類ポリマーとしては、アルギン酸ナトリウム以外に、ペクチン酸塩などが挙げられ、ならびにそれらの塩および誘導体も含まれる。
【0035】
本明細書において使用している「酸性活性成分」とは、塩基性官能基と比較して、酸性官能基を過量に有する活性成分をさす。酸性官能基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ニトロ基、リン酸基などが挙げられるが、当該分野において既知のその他任意の酸基も含まれる。塩基性条件下においては、酸性活性成分は負の電荷を帯びている。当該分野において既知の条件に応じて、酸性官能基は、遊離酸または対応する塩として存在する。
【0036】
好ましくは、本発明に従う放出制御薬剤組成物は、圧縮成型されたタブレット製剤である。しかしながら、カプセルなどのその他の固体投与剤型を調製するために組成物を使用することも含まれる。さらに、固体投与剤型についての任意の改善(例えば、タブレットのコーティングなど)も本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
要するに、本発明は、酸性活性成分のための普遍的な組成物として有用な放出制御薬剤組成物の調製法を提供する。該組成物は、親水性多糖類の二成分混合物を含み、酸性活性成分の放出制御に関しては、キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの1:10の組み合わせが特に有用である。
【0038】
本発明においては、2種類の多糖類を用いた最適混合物は、薬物の溶解特性に応じて異なることを示している。水溶性が低い薬物については、1種類の多糖類、すなわち、アルギン酸ナトリウムを添加することで、薬物の放出が十分に遅延することがわかった。しかしながら、キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムという多糖類を組み合わせることは、水溶性酸性薬物の放出制御において有利であることがわかった。例えば、酸性モデル薬物としてジクロフェナクナトリウムを使用した場合には、キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの最適比は1:10であった。
【0039】
キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの1:10の組み合わせは、タブレット表面で生じるポリマー分解過程に耐え得る。消化管の酸性部位においては、不溶性被膜が形成される。ポリマーの浸食と薬物の溶解は、消化管の十二指腸部位で生じる。このメカニズムは、図1に図示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、添付の図1〜図6および表1〜表2について、以下の実施例に従ってさらに詳細に具体的に説明する。全ての実施例は単なる例示として挙げたものであり、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1:放出制御タブレットの調製および圧縮についての実験
親水性多糖類の放出制御特性およびマトリックス形成能を評価することを目的として、総合的な圧縮実験およびイン・ビトロ(in vitro)薬物放出試験を行った。本発明においては、親水性多糖類の組み合わせが重要点である。
【0042】
本発明においてモデル酸性薬物として使用した薬理学的に活性な成分は、ジクロフェナク、インドメタシンおよびナプロキセンであった。
【0043】
1.放出制御タブレットの調製
最終的に使用したポリマーは、陰イオン性キサンタンガムおよび陰イオン性アルギン酸ナトリウムであった(第1回目の試みにおいては、陽イオン性キトサンも使用した)。多糖類を単独で使用するのか、または二成分ポリマー混合物を使用するのかに関わりなく、薬物のポリマーに対する比は1:3に固定した(以下の表1を参照)。二成分混合物の場合には、最初に、キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの比を1:4、1:1および4:1として実験を行ったが、次に、至適化を行うためにその他の比率も用いた(以下の表1を参照)。最終的に、1:10が最適であることが判明した。
【表1】


【0044】
モデル酸性薬物を含む多糖類混合物は、粉末状および顆粒状に調製し(以下を参照)、物理的特性を評価した。粉末から調製したタブレットの強度は、顆粒から調製したもののそれよりも強かった。しかしながら、薬物放出についての差異は観察されなかった。
【0045】
タブレット強度の差は圧縮中に明らかになった。一般的に、顆粒は、粉末よりも流動特性が高い(より流動性である)が、圧縮時には、より大きな弾性回復応力(elastic recovery stress)を示す。本発明においては、通常の顆粒化法を使用した場合には、多孔性顆粒が形成されることを見出した。そのような小孔は、圧縮時にエアポケットを狭める。これらのエアポケットはタブレット強度を低下させ、弾性回復応力を増す。新式の技術で微小粒(顆粒)を形成することが最適な解決法であると考えられる。この方法により、非孔性粒子が得られ、その結果、弾性回復応力が弱い状態で圧縮することができ、タブレット成型器内の圧力を下げることによってより容易に操作を行うことができた。
【0046】
1.1 粉末構成成分からのタブレットの調製
モデル酸性薬物(表1参照)は、1種類の多糖類(キサンタンガムまたはアルギン酸ナトリウム)、ならびにキサンタンガム/アルギン酸ナトリウムの二成分多糖類混合物とそれぞれ混合した。混合に先立ち、粉末をふるいにかけることによって塊をほぐした。各調製物の構成成分は、磁器製乳鉢と乳棒を用いて等比数列的に混合し、約10分間混ぜ合わせてから圧縮した。低速圧縮機(油圧KBrプレス機またはInstron Instrument)を用い、粉末混合物に約443MPaの圧力を15秒間かけることにより、二面が平らで円筒状のタブレットを成型した。タブレットは、アルミニウム箔を用いて適切に密封し、琥珀色のガラス瓶に24時間保存した。
【0047】
圧縮混合物の質量は、直径選択における決定因子であった。事前に行った実験から、300〜400mgのタブレット質量のものを圧縮するためには、直径を13mmにするのが最適であった。
【0048】
1.2 顆粒からのタブレットの調製
粉末構成成分から調製されたタブレットに関して得られた至適処方(すなわち、キサンタンガム/アルギン酸ナトリウムの比が1:10、薬物のポリマーに対する比が1:3)を使用し、ジクロフェナクナトリウムを含む顆粒状のタブレット出発材料を調製した。
【0049】
上述したように(1.1を参照)、100gの粉末混合物を顆粒化したが、このとき、顆粒化湿潤塊が得られるまでエタノールと水との1:1混合物を加えた(約60ml)。湿潤塊をメッシュNo.20のふるいに通し、次に、Kerl Fisher滴定装置を用い、含湿量が対応する粉末製剤と同等になるまで、65℃で乾燥させた。乾燥した顆粒は、目の大きさが500μmのふるいに通した。サンプルは、密閉容器に入れて室温で保存した。これらの顆粒混合物については、タブレットの形状に圧縮する前後に特性を調べた。油圧KBrプレス機を用い、顆粒に約443MPaの圧力を15秒間かけることにより、二面が平らで円筒状のタブレットを成型した。300〜400mgの顆粒を圧縮するためには、金型(ダイ)の直径を13mmにするのが最適であった。
【0050】
実施例2 酸性薬物を用いたイン・ビトロ(in vitro)放出アッセイ
放出制御送達系に関するイン・ビトロ(in vitro)溶解試験については多数の報告がなされている。それらの中には、米国薬局方(USP)のパドル装置またはバスケット装置を用いたものが含まれる。使用した溶解液は、最初の2時間は酸性溶液であり、残りの試験時間では塩基性溶液であった(15)。
【0051】
2.1 最適ポリマー比についての評価
酸性活性成分を放出制御するための製剤を開発するにあたり、まず、薬物のポリマーに対する適切な比(D:P)について評価を行った。モデル薬物として使用したジクロフェナクナトリウムは、D:P比を1:1、1:2および1:3として、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびキトサンとそれぞれ別異に混合した。ジクロフェナクの放出速度を測定した。比較として、ノヴァルティス(Novartis)社(スイス)から市販されているボルタレン(登録商標)遅延放出製剤(ジクロフェナクナトリウムの持続放出性タブレット)を使用した。キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムでは、D:P比が1:1および1:2の場合には薬物の放出が速く、最も遅かったのはD:P比が1:3の場合であった(図6参照)。「ボルタレン」遅延放出製剤を比較対照とし、キサンタンガムおよびアルギン酸ナトリウムをD:P比=1:3で使用した場合に示されたジクロフェナクの放出速度の比較を図2に示す。このグラフにおいては、「ボルタレン」遅延放出製剤と比較して、キサンタンガムおよびキトサンを用いた方がジクロフェナクナトリウムの放出が遅く、一方、アルギン酸ナトリウムを用いた場合には、ジクロフェナクナトリウムの放出遅延性がよくなかった。
【0052】
しかしながら、キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとを混合することにより、優れた薬物放出が観察されたことから、この混合物を用いることによって、薬物放出と放出遅延との間の至適バランスが得られたことが示唆された。従って、比率の最適化を行い、最良の処方として、キサンタンガム/アルギン酸ナトリウム比=1:10を選択するに至った。図3は、キサンタンガム/アルギン酸ナトリウム(1:10)混合物からのジクロフェナクナトリウムの放出が直線状を保っているときに、「ボルタレン」遅延放出製剤からの放出が終わっていることを示している。同様の結果は、インドメタシンおよびナプロキセンでも得られた(図4)。ジクロフェナクナトリウムの溶解の全期間、すなわち、本発明のマトリックス内における溶解開始から16時間後に薬物が100%放出されるまで、グラフの直線性が得られた。しかし、「ボルタレン」遅延放出製剤ではこのようなことは起こらず、約70%が放出されるまでは直線状であるが、その後はプラトーであった。溶解の全期間(24時間)について示してはいないが、ジクロフェナク、インドメタシンおよびナプロキセンを用いても同様の挙動を示す結果が得られた。
【0053】
2.2 放出制御のメカニズム
放出制御のメカニズムは、ポリマー浸食過程によるものであった。別異に確立されたモデルを使用して調べたところ、カツェンドラー(Kazhendler)のモデル(16)が最もよくてはまることがわかり(図5を参照)、これが、モデル選択規準(MSC)の最重要点であった(表2の下部を参照)。このモデルは、薬物放出のためには、ポリマーの浸食は制御可能なメカニズムであると仮定している。
【0054】
使用した別異のモデルから得られた結果を図5に示す。非線形最小二乗当法を用い、観察されたデータにヒル(Hill)の方程式、ウィーブル(Weibull)の方程式、ゴンペルツ(Gomperz)の方程式、ロジェスティック(Logestic)方程式、ホッフェンバーク(Hopfenberg)方程式およびカツェンドラー(Kazhendler)の方程式を適用した(図5)(16〜17)。カツェンドラー(Kazhendler)とホッフェンバーク(Hopfenberg)の方程式からは、最大のMSCおよび最小の平方剰余の和が得られた(表2の下部を参照)。これら2つのモデルから計算されたモデルパラメータも観察された結果と非常に近似しており(表2の下部を参照)、このことは、それらが、浸食可能なマトリックス系からの薬物放出を表現することに優れていることを示している。
【表2】


【0055】
ホッフェンバーク(Hopfenberg)は、単純浸食性スラブ、シリンダーおよびスフェアからの放出メカニズムについて報告している。このモデルに従えば、nは形状因子であり、スフェアは3,シリンダーは2、スラブは1である(16)。本発明のマトリックス系のn値は1.28であることがわかった。この値は、スラブ様およびシリンダー様の挙動を同時にとるマトリックスの形態によるためと考えられる。これは、マトリックスの直径がマトリックスの厚さよりもかなり大きい(約6.5倍)であるからだと判断される。
【0056】
ホッフェンバーク(Hopfenberg)の方程式よりもカツェンドラー(Kazhendler)の方程式が優れている点は、カツェンドラー(Kazhendler)では、マトリックスの浸食が半径方向および垂直方向に生じると考えていることである(17)。このことにより、MSCが高いことによって示されているように、カツェンドラー(Kazhendler)の方程式の方がよりよくデータが当てはまる。しかしながら、半径方向における浸食速度(ka)は、垂直方向におけるそれ(kb)よりも大きい。従って、これらのモデルによれば、ポリマーの浸食が薬物放出の主要メカニズムである。
【0057】
キサンタンガム/アルギン酸ナトリウム(1:10)マトリックスからのジクロフェナクナトリウムの放出は、大部分が親水性ポリマーの溶解中に起こった。このことは、2種類のマトリックスの膨潤/浸食実験を行うことによって確認した(図7):第一のものは、薬物不含のポリマー混合物(キサンタンガム:アルギン酸ナトリウム=1:10)を含むマトリックスであり(これを、プラセボマトリックスと称する)、第二のものは、第一のものと同一のポリマー混合物(キサンタンガム:アルギン酸ナトリウム=1:10)であって、ジクロフェナクナトリウムをD:P=1:3で含有するマトリックスである(これを真正マトリックスと称する)。プラセボマトリックスも真正マトリックスも時間と共にタブレットの乾燥質量が減少したことから、浸食メカニズムが薬物放出の原因であることを示唆している(図7の左のグラフを参照)。しかしながら、真正マトリックスはグラフの傾きがより急であり、このことは、特に、リン酸緩衝液相においては、プラセボマトリックスよりも真正マトリックスの方がタブレットの浸食速度が速いことを意味している。リン酸緩衝液中における浸食の結果は次のようなものである。溶媒がポリマーの表面を湿らせ、ポリマーが膨潤し(図7の右のグラフ)、膨潤することによって、マトリックス内部へのさらなる溶媒の浸透速度が減速する。一方、親水性ポリマーとは異なり、薬物は膨潤せず、中性pH中へ溶解する。このことにより、薬物を含有する真正マトリックス内にさらに多孔性の系が形成される。このことにより、マトリックス内部への溶媒の浸潤が促進される。結果的に、真正マトリックスから求められた浸食速度が速い。故に、本実験は、薬物放出はポリマー浸食過程によって媒介されているという従前の仮定をさらに裏付けるものであった。
【0058】
キサンタンガム/アルギン酸ナトリウム(1:10)マトリックスからのジクロフェナクナトリウムの放出は、次のように特徴付けられる。薬物の放出は、マトリックスを酸性溶解相(tlag)に2時間浸漬した後、pH6.8のリン酸緩衝液に浸すことによって生じた(図3参照)。マトリックス内のポリマーは、ほぼ中性の溶媒内に溶解し始めた。薬物は、マトリックス系からゆっくりと放出され、薬物が完全に放出されてしまうまでに約14時間を要した。ほぼ中性の溶媒中では、放出は0次速度論に従っていた。円筒状タブレットの内径および厚さは、それぞれ、約1.3cmおよび約0.2cmであった。水溶性薬物であるジクロフェナクナトリウムのうちのいくらかは拡散によって放出されると考えられているが、その量は、マトリックスの浸食によって放出される量と比較すると、ごく少量である。
【0059】
薬物放出はポリマーの浸食速度によって制御されることから、被浸食性マトリックスとしてキサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとの組み合わせを使用することは、マトリックス溶解系のその他全ての利点に加えてさらにいくつかの利点を有する。図3に示すように、延長された全期間にわたり、0次送達を維持することが可能である。ポリマー比を変えると放出速度の傾きは変化するが、0次放出パターンは保持される。さらに、本発明のキサンタンガム−アルギン酸ナトリウムマトリックスは、低コストで容易に製造することができる。組み合わせた化合物について均一な分散が得られる。高分子量の薬物をも送達することができ、薬物−ポリマー、およびポリマー−ポリマー相互作用の可能性は低い。
【0060】
請求項、明細書、および/または図面に開示された特徴は、単独で、あるいはこれらを任意に組み合わせて、本発明の多様な形態を理解するためのよりどころとなり得る。
【参考文献】
【0061】


【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の放出制御薬剤組成物からなる経口投与単位(例えば、タブレットなど)を表した図式
【図2】別異のポリマーマトリックスからのジクロフェナクナトリウム(100mg)の溶解プロファイル。薬物に対するポリマーの比は1:3。各製剤とも、0.1MのHClに2時間浸し、残りの溶解時間はリン酸緩衝液(pH6.8)に浸した。溶解条件:RPM=50;装置=米国薬局方に従うパドル装置;容量=600ml;温度=37℃。各点はn=3の平均値である。エラーバーは標準偏差を表す。
【図3】キサンタンガムとアルギン酸ナトリウムとのポリマー混合物(1:10)を含むマトリックスタブレットからのジクロフェナクナトリウム(100mg)の溶解プロファイルを「ボルタレン」タブレットからのそれと比較したもの。溶解条件:0.1MのHClに2時間浸し、残りの溶解時間はリン酸緩衝液(pH6.8)に浸した。RPM=50;装置=USPに従うパドル装置;容量=600ml;温度=37℃。各点はn=3の平均値である。エラーバーは標準偏差を表す。
【図4】キサンタンガムとアルギン酸ナトリウム(1:10)を含むマトリックスからの酸性薬物の溶解プロファイル。はじめに0.1MのHClに2時間浸し、残りの溶解時間はリン酸緩衝液(pH6.8)に浸した。溶解条件:RPM=75;装置=USPに従うバスケット装置;容量=750ml;温度=37℃。各点はn=3の平均値である。エラーバーは標準偏差を表す。
【図5】キサンタンガムとアルギン酸ナトリウム(1:10)を含むポリマー混合物からのジクロフェナクナトリウムの溶解プロファイルをシミュレートするために使用したモデル。D:P=1:3。溶解条件:RPM=50;装置=USPに従うパドル装置;容量=600ml;0.1MのHClに2時間浸し、残りの溶解時間はリン酸緩衝液(pH6.8)に浸した。;温度=37℃。点は実験データを示し、線はモデルシミュレーションを表す。
【図6】D:P比を変えた場合における、キサンタンガム(A)およびアルギン酸ナトリウム(B)からのジクロフェナクナトリウム(100mg)の溶解プロファイル。各処方とも、0.1MのHClに2時間浸し、残りの溶解時間はリン酸緩衝液(pH6.8)に浸した。溶解条件:RPM=50;装置=USPに従うパドル装置;容量=600ml;温度=37℃。
【図7】ジクロフェナクナトリウムを含むキサンタンガムおよびアルギン酸ナトリウム(1:10)マトリックス(真正マトリックス)、ならびにジクロフェナクナトリウムを含まないマトリックス(プラセボマトリックス)の浸食および水吸収曲線。
【出願人】 【識別番号】504109263
【氏名又は名称】ザ ヨルダニアン ファーマスーティカル マニュファクチャリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Jordanian Pharmaceutical Manufacturing Co.
【出願日】 平成16年9月1日(2004.9.1)
【代理人】 【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史

【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛

【公開番号】 特開2005−75830(P2005−75830A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2004−253850(P2004−253850)