| 【発明の名称】 |
統合失調症の治療 |
| 【発明者】 |
【氏名】関根 吉統
【氏名】武井 教使
【氏名】森 則夫
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、定型抗精神病薬または非定型抗精神病薬による薬物療法では改善しにくい、または改善しない、認知機能障害および/または陰性症状を発症した統合失調症患者を処置するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明の医薬組成物は、ドーパミンD1受容体作動薬を含む医薬組成物であって、抗精神病薬と組み合わせて投与することを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 製薬的有効量のドーパミンD1受容体作動活性を有するドーパミン受容体作動薬を含む、認知機能障害および/または陰性症状を伴う統合失調症を処置するための医薬組成物であって、抗精神病薬と組み合わせて投与される組成物。 【請求項2】 抗精神病薬と同時に、または抗精神病薬の投与後に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。 【請求項3】 製薬的有効量の抗精神病薬をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。 【請求項4】 該ドーパミン受容体作動薬がペルゴリドである、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項5】 該抗精神病薬が非定型抗精神病薬である、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。 【請求項6】 該非定型抗精神病薬がクエチアピンである、請求項5に記載の医薬組成物。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、薬物療法による統合失調症の処置に関する。より詳しくは、本発明はドーパミンD1受容体作動活性を有するドーパミン受容体作動薬(ドーパミンD1受容体作動薬)を含み、抗精神病薬と組み合わせて投与される、認知機能障害および/または陰性症状を伴う統合失調症を処置するための医薬組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 統合失調症は、思春期から青年期にその大半が発症し、その生涯羅患率が約1%である、最もありふれた精神疾患である。統合失調症患者には、幻覚および妄想などの陽性症状、および/または情動の平板化、自発性欠如などの陰性症状が見られる。さらに1ないし複数の範囲の認知機能障害が、80%以上の統合失調症患者に見られる(非特許文献1)。認知機能は、就労、社会的スキル開発および社会的問題解決における機能を改善するのに何よりも重要である(非特許文献2)。 【0003】 統合失調症の治療方法の1つとして、抗精神病薬を用いる薬物療法がある。抗精神病薬には、従来型の(定型)抗精神病薬と、近年開発された非定型抗精神病薬がある。ほとんどの定型抗精神病薬は、陽性症状に効力を発揮しても、陰性症状には効果がない。また、錐体外路症状などの副作用を併発するために、その使用は制限的である。一方、非定型抗精神病薬は、錐体外路症状などの副作用をもたらす可能性は低く、陽性症状を緩和し、定型抗精神病薬よりも陰性症状を改善し、さらに認知機能を改善すると報告されている(非特許文献3および4)。 【0004】 しかしながら、現実には多くの患者は、このような非定型抗精神病薬を服用していてさえも認知障害が回復せず、社会復帰ができずにいる。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 従って、本発明は定型抗精神病薬または非定型抗精神病薬の使用によっても改善しにくい、または改善しない、認知機能障害および/または陰性症状を伴う統合失調症の処置を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0006】 ドーパミン作動性(非特許文献5)および適切なD1受容体刺激レベル(非特許文献6)は認知機能を調節する役割を果たすという仮説が、近年提唱された。また、認知機能障害および陰性症状の重症度にはD1受容体の減少が関係しているとの報告(非特許文献7)、およびペルゴリドを投与すると健常者で認知能力が向上するとの報告(非特許文献8)がある。 【0007】 しかし、統合失調症またはその既住のある患者にドーパミンD1受容体作動薬を実際に投与し、その効能を確認した例はない。
【非特許文献1】Palmer BW, et al. Neuropsychology 1997;11:437-446 【非特許文献2】Green MF Am J Psychiatry 1996;153:321-330 【非特許文献3】Meltzer HY, McGurk SR Schizophr Bull 1999;25:233-255 【非特許文献4】Velligan DI, Miller AL Clin Psychiatry 1999;60 (Suppl 23):25-28 【非特許文献5】Sawaguchi T, Goldman-Rakic PS Science 1991;251:947-950 【非特許文献6】Williams GV, Goldman-Rakic PS Nature 1995;376:572-575 【非特許文献7】Okubo Y, Suhara T, et al. Nature 1997;385:634-636 【非特許文献8】Muller U, von Cramon DY, Pollmann S J Neurosci 1998;18:2720-2728 【0008】 本発明者らは、認知機能障害および/または陰性症状を主な症状とする統合失調症患者に、抗精神病薬であるクエチアピンと組み合わせてドーパミンD1受容体作動薬であるペルゴリドを投与すると良好な治療性能が得られることを見い出した。本発明は、クエチアピンの投与により陽性症状は緩和したが、3ヶ月間維持療法を行なっても陰性症状に改善の見られなかった統合失調症患者に、ペルゴリドをクエチアピンと組み合わせて投与した場合に、陽性症状の悪化または錐体外路症状などの副作用の発症を伴わず、陰性症状が軽減し、さらに認知機能障害が回復した臨床結果に基づく。 【0009】 従って、本発明はドーパミンD1受容体作動薬を含み、抗精神病薬と組み合わせて投与される、認知機能障害および/または陰性症状を伴う統合失調症を処置するための医薬組成物を提供する。 【発明の効果】 【0010】 このように、本発明は定型抗精神病薬または非定型抗精神病薬による薬物療法では改善しにくい、または改善しない、認知機能障害および/または陰性症状を伴う統合失調症の処置を提供する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 本明細書中に開示し、特許請求する本発明の目的のために、下記の用語を以下に定義する。 【0012】 ドーパミン受容体は、ドーパミンと特異的に結合してその作用発現に働く受容体であり、脳のドーパミンニューロン部分に分布している。ドーパミン受容体はアデニル酸シクラーゼと共役しているドーパミンD1受容体および共役していないD2受容体に区別される。 【0013】 ドーパミン受容体作動薬とは、ドーパミン受容体に結合し、ドーパミン系の神経の働きを高める働きをする物質を意味する。ドーパミン受容体作動薬の例としては、ペルゴリド(pergolide)、ブロモクリプチン(bromocriptine)およびレルゴトリル(lergotrile)などが挙げられる。ドーパミンD1受容体作動活性を有するドーパミン受容体作動薬(ドーパミンD1受容体作動薬)とは、ドーパミンD1受容体に結合して、ドーパミン系の神経の働きを高める働きをする物質を意味する。本発明におけるドーパミンD1受容体作動薬はドーパミンD2受容体作動活性を併せて有していてもよい。ドーパミンD1受容体作動薬は通常ドーパミン神経系の脱落および機能低下が認められるパーキンソン病の治療に用いられる。該ドーパミン受容体作動薬の例としては、ペルゴリド、SKF38393、SKF75670、SKF77434などが挙げられる。 【0014】 抗精神病薬とは、中枢神経に作用し、とくに精神機能に影響を及ぼす薬物であり、幻覚、妄想、自我障害、思考障害および精神運動興奮など、統合失調症に最も典型的に現れる精神病症状に有効な薬物を意味する。 【0015】 定型抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体拮抗作用を主作用とする抗精神病薬であり、主に陽性症状を有意に改善する。しかし、定型抗精神病薬は陰性症状の改善は不十分であることに加え、錐体外路症状を高頻度に出現させる場合がある。定型抗精神病薬の例としては、ハロペリドール、ピモジドおよびスルピリドなどが挙げられる。 【0016】 非定型抗精神病薬は、ドーパミンD2受容体拮抗作用とセロトニン5HT受容体拮抗作用をあわせ持つ抗精神病薬であって、陽性症状のみならず陰性症状にも治療効果を持ち、錐体外路症状の発現が少ないという利点を有する。非定型抗精神病薬の例としては、クエチアピン、クロザピンおよびリスペリドンなどが挙げられる。 【0017】 統合失調症(精神分裂病)とは、世界人口の約1%に発症し、しばしば慢性に経過する精神疾患を意味する。思春期から青年期に発症することが多く、精神的、社会的、経済的に重大な影響を与える疾患である。その症状は大きく陽性症状と陰性症状の二つに大別される。陽性症状には幻覚、妄想などの症状が挙げられ、陰性症状には情動の平板化、自発性欠如などの症状が挙げられる。また、統合失調症は、ほとんどの場合認知機能障害を伴う。 【0018】 認知機能とは、知覚から判断に至るすべての情報処理の過程を包括しており、この過程には注意機能、記憶機能、照合機能および統合機能などのさまざまな高次脳機能が関与している。この認知機能は、就労、社会的スキル開発および社会的問題解決における機能を改善するのに何よりも重要な機能である。 【0019】 錐体外路症状とは、運動の微調整をつかさどる神経系(錐体外路系)が障害されることによって起こる不随意運動であり、抗精神病薬の持つD2受容体遮断作用によって発現する代表的な副作用である。主な症状としては、パーキンソニズム(筋固縮、振戦、無動、動作緩慢など)、アカシジア(静座不能)、ジストニア(頭部、頚部におこる筋緊張、運動亢進、異常姿勢)などがある。 【0020】 製薬的有効量とは、医薬化合物の治療的に効果のある量を意味する。本発明に基づき投与される化合物の特定の投薬量は、投与される化合物、処置される状態、患者の特性および類似する考慮を含む症例を取り巻く特定の環境を、医師が評価することにより決定されよう。 【0021】 本発明におけるドーパミンD1受容体作動薬の製薬的有効量は、通常350μg/日から750μg/日である。 【0022】 また、本医薬組成物は製薬的に許容される担体を含ませて製造することができる。本医薬組成物を製造するにあたり、活性成分は通常、賦形剤を用いて混合されるか、賦形剤により希釈されるか、或いはカプセル、サシェ、ペーパーまたは他のコンテナの形態にできる担体に封入される。賦形剤を希釈剤として用いる場合、賦形剤は活性成分に対して媒体、担体または媒質として作用する固形、半固形、液体物質であってもよい。このように、本組成物は錠剤、丸剤、粉末剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、軟および硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌注射溶液および滅菌包装粉剤の剤型にできる。本医薬組成物は経口用または注射用の組成物として製造し得る。本医薬組成物は当該製薬分野に周知の様式で製造できる。 【0023】 本医薬組成物は、経口により投与することができる。 【実施例】 【0024】 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これはいかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではない。 実施例1 薬物やアルコールの濫用歴はなく、脳MRIを含め、理学検査で異常が認められなかった、25歳の独身男性患者は、陽性症状である被害妄想に加えて、関心欠如、意欲欠如、情動の平板化、思考貧困などの顕著な陰性症状を伴う統合失調症を発症していた(表1を参照のこと)。該患者は、精神科への通院歴および入院歴はなかった。該患者にクエチアピン投与による薬物療法を施し、徐々に増量して600mg/日にし、3ヶ月間維持療法を施した。この治療により、被害妄想は弱まり始め、最終的に消失した。ただし、陰性症状には変化がなかった。 【表1】
【0025】 そこで、ペルゴリドを50μg/日用量で追加した。徐々に増量して2週間後に750μg/日とし、この用量で維持した。追加投与を開始して4週間後に、該患者の陰性症状は顕著に改善し、PANSSの陰性症状評価尺度(Kay SR, Fiszbein A, Opler LA: 統合失調症における陽性症状尺度と陰性症状尺度: Schizophr Bull 1987; 13: 261-76)が35%低下した(表1を参照のこと)。 【0026】 さらに認知機能の面でも、ウェクスラー記憶尺度改訂版検査(Wechsler D: 臨床場面における標準記憶検査スケール: J Psychol; 19: 87-95)の視覚的再生を除き、調べたあらゆる認知面で改善が認められ、特に論理的記憶および言語の流暢さで改善が見られた。最も注目すべき変化は、社会活動における改善であった。実際、患者自身がエネルギーが沸いてきたと感じ、より社交的になった。情動的な反応もするようになり、話し方にも抑揚が出てきた。 【0027】 クエチアピンにペルゴリドを追加した治療を3ヶ月続けた時点で、該患者の症状は完全に解消した。錐体外路症状などの副作用は認められなかった。さらに、陽性症状の悪化も認められなかった。この結果は、ペルゴリドの投与が通常、そのドーパミンD2受容体作動活性により幻覚、妄想などの陽性症状を悪化させる可能性があるとされているため、驚くべきことであった。また、予後も良好な状態が続いている。
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| 【出願人】 |
【識別番号】594017396 【氏名又は名称】日本イーライリリー株式会社
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| 【出願日】 |
平成15年8月11日(2003.8.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068526 【弁理士】 【氏名又は名称】田村 恭生
【識別番号】100103230 【弁理士】 【氏名又は名称】高山 裕貢
【識別番号】100087114 【弁理士】 【氏名又は名称】齋藤 みの里
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| 【公開番号】 |
特開2005−60286(P2005−60286A) |
| 【公開日】 |
平成17年3月10日(2005.3.10) |
| 【出願番号】 |
特願2003−291328(P2003−291328) |
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