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【発明の名称】 冬虫夏草菌糸体抽出物の分画物、および経口摂取用組成物
【発明者】 【氏名】山口 能宏
【住所又は居所】大阪府茨木市豊川一丁目30番3号 小林製薬株式会社中央研究所内

【氏名】国友 栄治
【住所又は居所】大阪府茨木市豊川一丁目30番3号 小林製薬株式会社中央研究所内

【氏名】内田 健志
【住所又は居所】大阪府茨木市豊川一丁目30番3号 小林製薬株式会社中央研究所内

【要約】 【課題】本発明の目的は、冬虫夏草に含まれる有効成分を含む分画物を提供することである。また、免疫賦活のための有効な手段、および癌に対する有効な予防手段または治療手段を提供し、また健康食品の製造において有用な組成物を提供することである。

【解決手段】本願発明は、冬虫夏草菌糸体を熱水抽出して得られる抽出液に、エタノールを加えることにより得られる沈殿画分を提供する。さらに当該沈殿画分を含む経口摂取用組成物を提供する。また、本発明により、抗癌作用、癌予防作用または免疫賦活作用を有することを特徴とする当該経口摂取用組成物を含む、飲食物、免疫賦活剤、抗癌剤などが提供される。さらに本願発明により、前記経口摂取用組成物の有効な製造方法もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルジセプス シネンシス(Cordyceps sinensis(Berkely)Saccardo)の菌糸体を熱水抽出して得られる抽出液に、抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量のエタノールを加えることにより得られる沈殿画分。
【請求項2】
請求項1に記載の沈殿画分であって、前記抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量のエタノールを当該抽出液に加え生じる沈殿画分を取り除いた上澄み液として得られる抽出液に、当該抽出液が容積比で70%〜90%の量のエタノールを含むこととなる量のエタノールをさらに加えることより得られる前記沈殿画分。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の沈殿画分であって、前記抽出液が、エタノールを加える前に、濃縮することにより得られるものである請求項1に記載の沈殿画分。
【請求項4】
前記菌糸体が、前処理としてエタノールによる加熱抽出を行った後の残査である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の沈殿画分。
【請求項5】
10万以上の分子量を有する多糖類を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の沈殿画分。
【請求項6】
哺乳類における、インターフェロン−γまたは腫瘍壊死因子−αの産生亢進活性を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の沈殿画分。
【請求項7】
請求項1に記載の沈殿画分をさらに透析により分子量分画することにより得られる分子量10万以上の画分。
【請求項8】
糖含量がD−グルコース換算で60〜80重量%であることを特徴とする請求項7に記載の画分。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の画分を含む、経口摂取用組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の経口摂取用組成物を含む、飲食物。
【請求項11】
抗癌作用、癌予防作用または免疫賦活作用を有することを特徴とする、請求項10に記載の飲食物。
【請求項12】
請求項11に記載の経口摂取用組成物を含む、免疫賦活剤。
【請求項13】
請求項11に記載の経口摂取用組成物を含む、抗癌剤。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の画分の製造方法であって、
a)冬虫夏草菌糸体を85〜100℃で水による加熱抽出を行い抽出液を得る工程;および
b)前記抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量のエタノールを、抽出液に加え、発生する沈殿を回収する工程、を含む前記製造方法。
【請求項15】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の画分の製造方法であって、
a)冬虫夏草菌糸体を85〜100℃で水による加熱抽出を行い抽出液を得る工程;
b)前記抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量のエタノールを、抽出液に加え、発生する沈殿を取り除き上澄み液を回収する工程;および
c)前記上澄み液が容積比で70%〜90%の量のエタノールを含むこととなる量のエタノールをさらに当該上澄み液に加えることより得られる沈殿を回収する工程、を含む前記製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本出願は、薬理効果を有する冬虫夏草由来の分画物、および当該分画物の製造方法に関する。さらに本発明は、当該分画物を含む経口摂取組成物、医薬組成物、飲食物組成物、もしくは免疫賦活効果を有するおよび/または癌の予防または治療に用いられる医薬品、医薬部外品、飲食物等に関する。
【背景技術】
【0002】
冬虫夏草は昆虫などから生じるきのこの総称であり、子のう菌類・麦角菌目・麦角菌科の一属として位置づけられる。そのうちのコルジセプス シネンシス(Cordyceps sinensis(Berkely)Saccardo)は鱗翅類のコウモリ蛾の幼虫に寄生し、中国、チベット、ネパール、ヒマラヤの高山帯、海抜3000〜4000mの荒草原に分布するきのこである。中国では古くから不老不死、強壮強精の漢方薬として珍重され、伝承されてきた。近年の研究により冬虫夏草に含まれる成分は種々の生理活性を有することがわかり、免疫賦活効果、抗腫瘍活性、血糖値降下作用、血圧降下作用および血管拡張作用についての報告がなされている(非特許文献1〜6参照)。このような生理活性に注目して、有効成分を効率よく摂取するための試みもなされているが(特許文献1参照)、抽出物における有効成分の含有量および活性面において十分であるとは言い難い。
【0003】
また、近年の培養技術の進歩により、天然物とほぼ同等の冬虫夏草の菌糸体培養物が生産可能となっている。そのため冬虫夏草の菌糸体は、従来利用されてきた子実体の部分と比べて、工業的に生産する上での原料としてより適している。したがって、当該菌糸体培養物を利用して、冬虫夏草の有効成分を含む画分を効率よく取り出すための方法が求められている。
【特許文献1】特開平11−228440号公報
【非特許文献1】Biol.Pharm.Bull.、第22巻(第9号)、第966−970頁、1990年
【非特許文献2】Jpn.J.Pharmacol.、第79巻、第505−508頁、1999年
【非特許文献3】J.Kanazawa Med.Univ.、第16巻、第46−54頁、1991年
【非特許文献4】Biol.Pharm.Bull.、第16巻(第12号)、第1291−1293頁、1993年
【非特許文献5】Phytochemistry、第51巻、第891−898頁、1999年
【非特許文献6】Life Science、第66巻(第14号)、第1369−1376頁、2000年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、かかる問題点を解決する為に鋭意研究を進めたところ、特異的に生理活性を有する冬虫夏草菌糸体の分画物の調製方法を見出した。
本発明の目的は、免疫賦活効果および/または癌の予防効果または治療効果を有する冬虫夏草菌糸体由来の分画物、および当該分画物を含む経口摂取用組成物、ならびに当該経口摂取組成物を含む飲食物、免疫賦活剤、抗癌剤および癌予防剤を提供することである。
【0005】
すなわち本願発明の一つの側面によれば、冬虫夏草菌糸体を熱水抽出して得られる抽出液に、エタノールを加えることにより得られる沈殿画分が提供される。ここで加えるエタノールの量は、例えば前記抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量であってよい。
【0006】
本発明の他の側面によれば、前記抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量のエタノールを当該抽出液に加え、生じる沈殿画分を取り除いた上澄み液として得られる抽出液に、当該抽出液が容積比で70%〜90%の量のエタノールを含むこととなる量のエタノールをさらに加えることより得られる前記沈殿画分が提供される。
【0007】
本発明の他の側面によれば、前記沈殿画分であって、冬虫夏草菌糸体を熱水抽出液、および/または当該抽出液に一定量のエタノールを加え生じる沈殿画分を取り除いた上澄み液を、エタノールを加える前に濃縮し、その後エタノールを加えることにより得られる沈殿画分が提供される。本発明の他の側面によれば、前処理としてエタノールによる加熱抽出を行い得られる残査を前記冬虫夏草菌糸体として、熱水抽出して得られる抽出液に、エタノールを加えることにより得られる沈殿画分が提供される。さらに、本発明の他の側面によれば、前記沈殿画分が10万以上の分子量を有する多糖類を含むことを特徴とする、前記沈殿画分が提供される。さらに、本発明の他の側面によれば、哺乳類における、インターフェロン−γ(IFN−γ)または腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の産生亢進活性を有することを特徴とする、前記沈殿画分が提供される。
【0008】
本発明の別の側面によれば、前記沈殿画分をさらに透析により分子量分画することにより得られる分子量10万以上の画分が提供される。
本発明の別の側面によれば、前記沈殿画分または分子量10万以上の画分を含む経口摂取用組成物が提供される。また本発明の別の側面によれば、前記経口摂取用組成物を含む飲食物が提供される。さらに本発明の別の側面によれば、前記経口摂取用組成物を含む免疫賦活剤が提供される。さらに本発明の別の側面によれば、前記経口摂取用組成物を含む抗癌剤または癌予防剤が提供される。
【0009】
本発明のさらに別の側面によれば、前記画分の製造方法であって、
a)冬虫夏草菌糸体を85〜100℃で水による加熱抽出を行い抽出液を得る工程;および
b)前記抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量のエタノールを、抽出液に加え、発生する沈殿を回収する工程、を含む前記製造方法が提供される。さらに本発明の別の側面によれば、前記画分の製造方法であって、
a)冬虫夏草菌糸体を85〜100℃で水による加熱抽出を行い抽出液を得る工程;
b)前記抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量のエタノールを、抽出液に加え、発生する沈殿を取り除き上澄み液を回収する工程;および
c)前記上澄み液が容積比で70%〜90%の量のエタノールを含むこととなる量のエタノールをさらに当該上澄み液に加えることより得られる沈殿を回収する工程、を含む前記製造方法もまた提供される。
【0010】
以下、本発明を更に具体的に説明する。
本発明における冬虫夏草とは、子のう菌類・麦角菌目・麦角菌科の一属を意味し、例えば、コルジセプス シネンシス(Cordyceps sinensis(Berkely)Saccardo)である。
【0011】
本発明における冬虫夏草菌糸体は、培養により生産されたものであっても天然より採取されたものであってもよく、例えば培養物の乾燥粉末などが用いられる。
本発明において行われる熱水抽出は、例えば液温で70〜120℃において行われる。好ましい温度は85〜100℃であり、より好ましくは90〜95℃である。抽出時間は、例えば1時間〜24時間であり、好ましくは2〜12時間であり、より好ましくは3〜7時間である。熱水抽出は複数回行ってもよく、例えば1〜4回、好ましくは2〜3回行われる。抽出に用いる水のpH値は特に限定されないが、例えば蒸留水を用いて行うことができる。
【0012】
前記熱水抽出により得られる抽出液は、そのまま使用することもできるが、使用するエタノールの量を低減させ効率よく分画物を得るために、当該抽出液を濃縮して使用することもできる。濃縮率は特に限定されないが、例えば容積比で80〜20%であってよく、好ましくは60%〜25%であり、さらに好ましくは50%〜30%である。また当該濃縮は常圧下または減圧下のいずれにおいても行われうるが、好ましくは減圧下で行われる。
【0013】
抽出液に加えるエタノールの量は、特に限定されないが、例えば濃縮後の抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量であってよく、好ましくは0.8〜1.2倍であり、濃縮しない場合も同様である。得られた沈殿画分は、当該技術分野に周知の方法により精製することができ、例えば、再度水に溶解した後にエタノールを加えて沈殿画分を得る操作を1回または複数回行うことにより精製することもできる。
【0014】
また、前記抽出液に一定量のエタノールを加え生じる沈殿画分を回収した後の上澄み液として得られる抽出液に、さらにエタノールを加えることにより、さらに沈殿画分を得ることもできる。当該上澄み液として得られる抽出液は、そのまま使用することもできるが、濃縮して使用することもできる。濃縮率は特に限定されないが、例えば容積比で80〜20%であってよく、好ましくは60%〜25%であり、さらに好ましくは50%〜30%である。また当該濃縮は常圧下または減圧下のいずれにおいても行われうるが、好ましくは減圧下で行われる。また、最初に加えるエタノールの量は、特に限定されないが、例えば濃縮後の抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍の量であってよく、好ましくは0.8〜1.2倍である。2回目にエタノールを加えた後の抽出液中に含まれるエタノールの量は特に限定されないが、例えば容積比で70%〜90%であってよく、好ましくは75%〜85%である。例えば抽出液に対する容積比で0.5〜2.0倍のエタノールを加えて生ずる沈殿画分を回収した後の上澄み液に、例えば減圧濃縮してエタノールを除去した後に、容積比で3.0〜5.0倍のエタノールを加え、沈殿画分を得ることもできる。
【0015】
本発明における経口摂取用組成物とは、例えば、飲食物組成物および医薬組成物などを含むものである。
有効成分の含有量の高い分画物を得るために、本発明において熱水抽出に付される冬虫夏草菌糸体については前処理を行ってもよい。当該前処理は特に限定されないが、例えば、炭素数1〜4のアルコールまたは当該アルコール水溶液を用いての加熱抽出などが挙げられ、好ましくはエタノールが用いられる。加熱の際の温度は、例えば液温で70〜120℃、好ましくは80〜100℃であり、より好ましくは90〜95℃である。抽出時間は、例えば1時間〜24時間であり、好ましくは2〜12時間であり、より好ましくは3〜7時間である。エタノール抽出は複数回行ってもよく、例えば1〜4回、好ましくは2〜3回行われる。異なる溶媒を用いて複数回行ってもよく、例えば、95〜99.5%のエタノールを用いて抽出した後に、その残査を容積比で60〜80%のエタノール水溶液により抽出し、その残査を熱水抽出に付す原料として使用することができる。
【0016】
本発明において得られる沈殿画分は、その成分として例えば多糖類などを含みうる。当該多糖類は、特に限定されないが、天然に存在する単糖類から構成されるものであり、その分子中の1または2以上の箇所においてアシル化、リン酸化などの修飾、またはタンパク質、核酸が結合することによる修飾を受けていてもよい。当該多糖類の分子量は、特に限定されないが、例えば、10万以上200万以下であり得る。本発明の画分の糖含量は、当該技術分野における当業者にとって周知の方法により測定することができ、例えばフェノール−硫酸法などを用いることができる。本発明の糖含量は、特に限定されないが、例えばD−グルコース換算で40〜90重量%であり、好ましくは50〜80重量%であり、さらに好ましくは60〜80重量%である。
【0017】
前記沈殿画分は、例えば透析などの手段により、例えば分子量5万未満の画分、分子量5万以上10万未満の画分、分子量10万以上の画分に分画することができる。
本発明の免疫賦活剤は、哺乳類におけるインターフェロン−γおよび/また腫瘍壊死因子−αの産生亢進作用を有するため、免疫賦活を必要とする被験者に対して予防薬および/または治療薬として使用することができる。また、本発明の抗癌剤は、有意な抗腫瘍効果を示すことから、癌に対する有効な予防薬および治療薬となりうるものである。従って、本発明の免疫賦活剤および抗癌剤は、医薬組成物の有効成分として使用することができる。当該医薬組成物は、一般に用いられる各種成分を含みうるものであり、例えば、1種もしくはそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤等を含みうる。
【0018】
本発明の免疫賦活剤および抗癌剤の投与量は、患者の体型、年齢、体調、疾患の度合い、発症後の経過時間等により、適宜選択することができるが、例えば、一般に1〜5000mg/日/成人の用量で使用される。
【0019】
また、本発明の経口摂取組成物は、そのまま機能性食品として使用できるほか、医薬部外品、飲食物等の成分、食品添加物などとして使用することができる。当該使用により、本発明の免疫賦活効果および抗腫瘍効果を有する当該経口摂取組成物の日常的および継続的な摂取が可能となり、効果的な免疫賦活による体質改善、癌の治療および癌の発症の予防が可能となる。本発明の経口摂取組成物が食品素材として使用される例としては、免疫賦活効果もしくは癌治療効果または予防効果を有する機能性食品、健康食品、一般食品(ジュース、菓子、加工食品等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)が挙げられる。
[実施例]
【0020】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] コルジセプス シネンシス菌糸体の分画物の調製
本発明を実施するに当たり、原料となるコルジセプス シネンシス菌糸体培養物の粉末としては、例えば中国で市販されている"発酵虫草菌粉"(製品名:CORBRIN CAPSULE、製造会社:杭州中美華東製薬有限公司)を用いることができる。
【0021】
原料の冬虫夏草菌糸体粉末を99.5%エタノールで90〜95℃、6時間抽出した。エタノール量は、菌糸体1gあたり2mLとした。残査を濾別し、再度残査をこの方法で抽出して濾過により抽出液と残査に分けた。2度の抽出で得られた抽出液は合わせて減圧濃縮し、粘凋な濃褐色液体のエタノールエキス(Et Ext)を原料換算で15.0%(重量比)得た。次に残査を70%エタノール水溶液(体積比)で90〜95℃,6時間抽出した。70%エタノールの量は、残査1gあたり2mLとした。残査を濾別し、再度残査をこの方法で抽出して濾過により抽出液と残査に分けた。2度の抽出で得られた抽出液は合わせて体積が約40%になるまで減圧濃縮し、凍結乾燥により濃褐色粉末の70%エタノールエキス(70%Et Ext)を原料換算で45.8%(重量比)得た。次に残査を蒸留水で90〜95℃,6時間抽出した。蒸留水量は、残査1gあたり4mLとした。残査を濾別し、再度残査をこの方法で抽出して濾過により抽出液と残査に分けた。2度の抽出で得られた抽出液は合わせて体積が約40%になるまで減圧濃縮し、体積比で等量の99.5%エタノールを添加し、一晩冷暗所に静置した。遠心分離により沈殿物を回収し、蒸留水に溶解させて凍結し、凍結乾燥により吸湿性の高い濃茶色粉末の50%エタノール沈殿画分(50%EP)を原料換算で17.9%(重量比)得た。上清は体積が約40%になるまで減圧濃縮した後に体積比で4倍量の99.5%エタノールを添加し、一晩冷暗所に静置した。遠心分離により沈殿物を回収し、蒸留水に溶解させて凍結し、凍結乾燥により茶色粉末の80%エタノール沈殿画分(80%EP)を原料換算で6.0%(重量比)得た。
【0022】
50%エタノール沈殿画分を蒸留水に溶解し、スペクトラム社製Spectra/Por(登録商標)CE Membrane MWCO:100,000で蒸留水に対し透析する。50%エタノール沈殿画分を溶解する蒸留水量は、画分1gあたり50mLとした。透析内液を凍結乾燥することにより原料換算で10.0%(重量比)の分子量10万以上の画分(M1)を得た。透析外液を減圧濃縮し、スペクトラム社製Spectra/Por(登録商標)6 Membrane MWCO:50,000で蒸留水に対し透析した。透析内液を凍結乾燥することにより原料換算で3.94%(重量比)の分子量5万以上10万未満の画分(M2)を得た。透析外液を減圧濃縮し、凍結乾燥することにより原料換算で3.45%(重量比)の分子量5万未満の画分(M3)を得た。
【0023】
M1画分について、フェノール−硫酸法による糖含量の定量を行った結果、M1画分の糖含量は、D(+)−グルコース換算で69.9%であった。なお、フェノール−硫酸法は、一般的な方法によりおこなった(例えば、「新実験化学講座20 生物化学[II]」、1085頁、日本化学会編、1978年10月20日発行、丸善株式会社を参照のこと。)。
【0024】
[製造例1]熱水抽出物の調製例
実施例における比較対照として用いている熱水抽出物は、以下の方法で調製した。冬虫夏草菌糸体粉末を蒸留水で90〜95℃,4時間撹拌しながら抽出した。蒸留水量は、菌糸体1gあたり20mLとした。残査を濾別し、濾液を減圧濃縮して凍結乾燥することにより吸湿性のある茶褐色粉末である熱水抽出物(HWE)を得た。
【0025】
[実施例2] ヒト末梢血を用いた免疫賦活効果の測定
48穴細胞培養用プレートに、ヒトから採血した末梢血500μLと、末梢血と等量のRPMI1640培地を添加した。被験物質を最終濃度が200μg/mLになるように添加し、37℃,5%CO2条件下で24時間培養した。培養上清を回収し、インターフェロン−γ(IFN−γ)及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)をそれぞれ酵素免疫測定法(ELISA)による測定キット(バイオソース社製)を用いて定量した。キットの使用方法と定量結果の解析方法はキット添付の手順書に従った。
【0026】
実施例1において調製した50%エタノール沈殿画分(50%EP)、80%エタノール沈殿画分(80%EP)、エタノールエキス(Et Ext)、70%エタノールエキス(70%Et Ext)および製造例1において調製した熱水抽出物(HWE)について、IFN−γ産生量およびTNF−αの産生量を測定した結果を、それぞれ図1および図2に示す。当該測定結果より、IFN−γおよびTNF−αのいずれにおいても、50%EPおよび80%EPは、HWE、Et Extおよび70%Et Extと比べて顕著な産生量亢進効果を有することが明らかとなり、ヒト由来の末梢血を用いた試験系における本発明の分画物の効果が確認された。また、50%EPは、80%EPと比してより高い亢進効果を有することも明らかとなった。
【0027】
実施例1において調製した、50%エタノール沈殿画分(50%EP)の分子量分画物M1(分子量10万以上の画分)、M2(分子量5万以上10万未満の画分)およびM3(分子量5万未満の画分)について、IFN−γおよびTNF−αの産生量を測定した結果を、それぞれ図3および図4に示す。当該測定結果より、IFN−γ産生量およびTNF−αのいずれにおいても、M1が50%EPを上回る産生量亢進効果を有することが明らかとなった。また、当該産生量亢進活性はM1(分子量10万以上の画分)のみに集中しており、50%EPにおけるIFN−γおよびTNF−αの産生量亢進活性には、分子量10万以上の化合物が深く関与していることが確認された。
【0028】
[実施例3] 担癌マウスを用いた抗腫瘍効果の測定
日本エスエルシー株式会社より購入した6週齢の交雑群Slc:BDF1マウス雄32匹を8匹1群として4群に分け、4匹を1ゲージに入れて1週間馴化させた。7週齢のマウスにマウスの腫瘍Sarcoma180を1×106 cells/mouse となるように右腋下の皮下に接種した。なお、接種に先立ち接種部の体毛を剃り、腫瘍の定着及び成長の観察をより正確に行うようにした。腫瘍成長は腫瘍の短径と長径をデジタルノギスで計測し、腫瘍の大きさ(長径×短径2/2mm3)を算出した。4群は対照群(control群)、熱水抽出物群(HWE群)、50%エタノール沈殿画分群(50%EP群)と80%エタノール沈殿画分群(80%EP群)であり、各群は腫瘍接種日から毎日午前10時に被験物質をゾンデにより経口投与した。投与量は、control群は生理食塩水を体重10gあたり0.1mLとなるように投与し、HWE群はHWEが250mg/kgとなるように生理食塩水に溶解させて投与し、50%EP群は50%EPが44.8mg/kgとなるように生理食塩水に溶解させて投与し、80%EP群は80%EPが15.0mg/kgとなるように生理食塩水に溶解させて投与した。
【0029】
7日目および10日目の腫瘍体積の測定結果を図5に示す。当該測定結果より、in vivoの試験系において、本発明の分画物の有する抗腫瘍活性が確認された。さらに投与量ではHWEの1/5以下の50%EPが、HWEを上回る抗腫瘍効果を示すことも明らかとなり、同時にこの結果は実施例2における結果を支持するものであった。
【0030】
[実施例4]A431細胞増殖抑制試験
A431細胞(ヒト扁平上皮癌細胞株;大日本製薬より入手)を10%FBSを含むダルベッコ改変イーグル培地(シグマ社製)に4×104個/mLとなるように懸濁し、96穴マイクロプレート(住友ベークライト製)の各ウェルに50μLずつ(2×103個/ウェル)添加した。6時間培養(37℃、5%CO2)した後、被検物質としてHWE、70%Et Ext、50%EP、80%EPをそれぞれ2000μg/mlおよび10%FBSを含む培地を、各ウェルに50μLずつ添加(終濃度1000μg/ml)した。200μMのGenisteinを含む培地を50μL添加したものを陽性対照とした。4日間培養した後、各ウェルにCell counting kit−8(和光純薬)を5μlずつ添加し、60分後の吸光度(波長450nm)を測定した。被検物質を含まない系との比較により抑制率を算出した。
【0031】
試験結果を以下の表1に示す。当該試験結果においては、すべての被検物質が細胞増殖の抑制効果を示す中で、特に80%EPの抑制率が顕著に高かった。
【0032】
【表1】


【0033】
[実施例5]A431細胞障害性試験
A431細胞(ヒト扁平上皮癌細胞株;大日本製薬より入手)を10%FBSを含むダルベッコ改変イーグル培地(シグマ社製)に5×105個/mLとなるように懸濁し、96穴マイクロプレート(住友ベークライト製)の各ウェルに100μLずつ(5×104個/ウェル)添加した。24時間培養(37℃, 5%CO2)した後、HWE、70%Et Ext、50%EP、80%EPをそれぞれ1000μg/mL含む無血清培地に交換した。48時間培養した後、各ウェルにCell counting kit−8(和光純薬)を5μLずつ添加し、30分後の吸光度(波長450nm)を測定した。被検物質を含まない系との比較により生存率を算出した。
【0034】
試験結果を以下の表2に示す。当該試験結果においては、HWEおよび70%Et Extが若干の細胞毒性を示したのに対し、本発明の分画物である50%EPおよび80%EPは、A431細胞の生存率に何らの影響も示さなかった。このことより、実施例4で50%EPおよび80%EPが示した細胞増殖抑制効果は、細胞障害性によるものではないことが確認された。
【0035】
【表2】


【発明の効果】
【0036】
本発明の経口摂取組成物は、免疫賦活作用および/または抗腫瘍作用を有することから、本発明は、免疫賦活のための有効な手段、および癌に対する有効な予防手段または治療手段を提供し、また健康食品の製造において有用な組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、熱水抽出画分(HWE)、50%エタノール沈殿画分(50%EP)、80%エタノール沈殿画分(80%EP)、エタノールエキス(Et Ext)、70%エタノールエキス(70Et Ext)のIFN−γの産生量亢進活性を、ヒト末梢血を用いたin vitro試験により測定した結果を示すものである。
【図2】図2は、熱水抽出画分(HWE)、50%エタノール沈殿画分(50%EP)、80%エタノール沈殿画分(80%EP)、エタノールエキス(Et Ext)、70%エタノールエキス(70Et Ext)のTNF−αの産生量亢進活性を、ヒト末梢血を用いたin vitro試験により測定した結果を示すものである。
【図3】図3は、透析による分子量分画により得られた、分子量10万以上の画分(M1)、分子量5万以上10万未満の画分(M2)および分子量5万未満の画分(M3)、熱水抽出画分(HWE)および50%エタノール沈殿画分(50%EP)のIFN−γの産生量亢進活性を、ヒト末梢血を用いたin vitro試験により測定した結果を示すものである。
【図4】図4は、透析による分子量分画により得られた、分子量10万以上の画分(M1)、分子量5万以上10万未満の画分(M2)および分子量5万未満の画分(M3)、熱水抽出画分(HWE)および50%エタノール沈殿画分(50%EP)のTNF−αの産生量亢進活性を、ヒト末梢血を用いたin vitro試験により測定した結果を示すものである。
【図5】図5は、熱水抽出画分(HWE)、50%エタノール沈殿画分(50%EP)、80%エタノール沈殿画分(80%EP)をマウスに投与することによる、腫瘍体積の変動を示すものである。
【出願人】 【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区道修町四丁目3番6号
【出願日】 平成15年7月14日(2003.7.14)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100076691
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 忠弐

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100091638
【弁理士】
【氏名又は名称】江尻 ひろ子

【公開番号】 特開2005−35928(P2005−35928A)
【公開日】 平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願番号】 特願2003−274368(P2003−274368)