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【発明の名称】 発癌予防剤
【発明者】 【氏名】秋久 俊博

【氏名】浮谷 基彦

【氏名】徳田 春邦

【氏名】田形 匡亮

【要約】 【課題】安全で有効な発癌予防剤を提供すること。

【解決手段】ルシデニン酸P(1a)、ルシデニン酸Pメチル(1b)、ルシデニン酸Qメチル(2b)、ルシデニン酸A(3a)、ルシデニン酸Aメチル(3b)、ルシデニン酸C(4a)、ルシデニン酸D(5a)、ルシデニン酸Dメチル(5b)、ルシデニン酸E(6a)、ルシデニン酸Eメチル(6b)、ルシデニン酸Fメチル(7b)、ルシデニン酸Fメチル(8b)、ガノデリン酸E(9a)、ガノデリン酸F(10a)、ガノデリン酸Fメチル(10b)、ガノデリン酸T−Q(11a)からなる群から選んだ少なくとも1種のトリテルペン系化合物を有効成分とすることを特徴とする発癌予防剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルシデニン酸P(1a)、ルシデニン酸Pメチル(1b)、ルシデニン酸Qメチル(2b)、ルシデニン酸A(3a)、ルシデニン酸Aメチル(3b)、ルシデニン酸C(4a)、ルシデニン酸D(5a)、ルシデニン酸Dメチル(5b)、ルシデニン酸E(6a)、ルシデニン酸Eメチル(6b)、ルシデニン酸Fメチル(7b)、ルシデニン酸Lメチル(8b)、ガノデリン酸E(9a)、ガノデリン酸F(10a)、ガノデリン酸Fメチル(10b)、ガノデリン酸T−Q(11a)からなる群から選んだ少なくとも1種のトリテルペン系化合物を有効成分とすることを特徴とする発癌予防剤。
【請求項2】
エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)活性化抑制効果を有することを特徴とする請求項1に記載の発癌予防剤。
【請求項3】
トリテルペン系化合物が霊芝を処理して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の発癌予防剤。
【請求項4】
トリテルペン系化合物が霊芝子実体を処理して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の発癌予防剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラノスタン型のトリテルペン系化合物を含有する発癌予防剤に関する。ラノスタン型のトリテルペン系化合物は、好ましくは霊芝、さらに好ましくは霊芝子実体を処理して得られる。
【0002】
【従来の技術】
発癌予防剤として有効なトリテルペン系化合物は、すでに知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−25232号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1は、具体的に発癌予防に関して十分な効果を有するトリテルペン系化合物を開示するものではない。ところが、複雑な現代社会において、安全性が高くかつ十分な効果を有する発癌予防剤が強く求められている。
そこで本発明の課題は、安全で有効な発癌予防剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発癌予防剤の探索を行うためには、抗発癌プロモーターの探索を行う方法が最も有用である。この、抗発癌プロモーター探索の一次スクリーニング法としては、EBV活性化抑制検定法が知られている。
【0006】
本発明者等は、霊芝子実体を処理して得られるトリテルペン系化合物に注目して鋭意研究を行った結果、ラノスタン型のルシデニン酸及びガノデリン酸類トリテルペン系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の上記化合物が優れた発癌予防効果を持ち、安全性の高い発癌予防剤になり得ることを見出し、本発明を完成するに至った。特に霊芝子実体を処理して得られる上記化合物は、安全な天然物である霊芝子実体を起源とすることで、安全性については注目に値するメリットがある。
よって本発明は、霊芝子実体エキス成分の抗発癌プロモーター活性を見出した点に重要な意義がある。
【0007】
本発明者等は、EBVのゲノムを内臓するバーキット・リンパ腫由来の培養細胞であるラジ(Raji)株において、EBV・ゲノムの発現を阻害する化合物の多くがマウス皮膚発癌二段階実験において抗発癌プロモーターとして作用する点に注目した。そして霊芝子実体抽出物からEBV・ゲノムの発言を阻害するウイルス・ゲノム不活性化物質を探索した。
【0008】
EBV・ゲノムの発現阻害作用に着目したこの方法はラジ株培養系に発癌プロモーターであるTPA(テトラデカノイルホルボールアセテート)と活性発現のために相乗作用剤として働くn−酪酸、それに被検物質を加えて培養し、TPAにより活性化された細胞由来の抗体を用いる間接蛍光抗体法で検出する方法である。この方法は、迅速、かつ定量性に優れ、加えて、微量活性成分の検出が可能な点で優れた方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
活性試験法
以下に、EBV活性化抑制効果検定法の操作手順を、図1のスキームを参照しながら詳細に説明する。なお、本手順は、徳田らの方法[Cancer Letters、40巻、309頁(1988)]に準拠している。
(1) 1x10/mLのラジ細胞に20ng/mL(32pmol)の濃度のTPAを加え、さらにn−酪酸を加えた。
(2) そこに、水、エタノール、又はジメチルスルホキシドに溶解した所定量の被検物質を添加して、37℃で48時間培養した。
(3) 培養終了後、上咽頭癌患者の血清を用いた間接蛍光抗体法によりEBV早期抗原の発現を検出した。
TPAのみを加えた群(コントロール)のEBV早期抗原の発現率を100%として、被検物質添加群のEBV早期抗原の発現率を求め、次式により被検物質のEBV早期抗原の発現率(%)を算出した。
【0010】
【数1】
EBV早期抗原の発現阻害率(%)= 100 − 被検物質添加群のEBV早期抗原の発現率(%)
なお、被検物質の濃度が1000倍モル濃度の欄の括弧内の数値は、ラジ細胞の生存率(%)を示す。この数値が高い方が正常細胞に対する悪影響が小さい、すなわち安全性が高いと言える。
【0011】
本発明は、好ましくは霊芝子実体を処理して得られるトリテルペン系化合物を含有する発癌予防剤に関する。これらの化合物のうち、トリテルペン系化合物は、ラノスタン型の化合物である、ルシデニン酸P(化合物1a)、ルシデニン酸Pメチル(化合物1b)、ルシデニン酸Qメチル(化合物2b)、ルシデニン酸A(化合物3a)、ルシデニン酸Aメチル(化合物3b)、ルシデニン酸C(化合物4a)、ルシデニン酸D(化合物5a)、ルシデニン酸Dメチル(化合物5b)、ルシデニン酸E(化合物6a)、ルシデニン酸Eメチル(化合物6b)、ルシデニン酸Fメチル(化合物7b)、ルシデニン酸Lメチル(化合物8b)、ガノデリン酸E(化合物9a)、ガノデリン酸F(化合物10a)、ガノデリン酸Fメチル(化合物10b)、ガノデリン酸T−Q(化合物11a)からなる群から選ばれた少なくとも1種のものである。
【0012】
本発明におけるトリテルペン系化合物を得るためにはサルノコシカケ科に属するキノコである霊芝(紫、赤、青、黄、黒、及び白霊芝;マンネンタケ)子実体及び鹿角(ろっかく)霊芝などが挙げられる、
【0013】
本発明においては例えば、霊芝子実体あるいは鹿角霊芝を有機溶媒で抽出してトリテルペン系化合物を得る。
【0014】
抽出用の有機溶媒としては、特にエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトン、n−ヘキサン、酢酸エチル、イソプロピルエーテル等が好ましく、これらの溶媒を単独又は混合し、または水で希釈して用いることができる。
得られた抽出物はそのまま又は濃縮してエキス状で、又は乾燥して粉末状にして種々の製剤化が可能である。
【0015】
本発明の霊芝子実体抽出物は、適当な医薬用の担体又は希釈剤と組み合わせて医薬とすることができ、通常の如何なる方法によっても製剤化でき、経口又は非経口投与するための固体、半固体又は液体の剤形に処方することができる。処方にあたっては、他の医薬活性成分との配合剤としてもよい。
【0016】
例えば、日本薬局方に記載されている各種製剤、即ち、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、乾燥エキス剤、トローチ剤等の内用固形製剤、流エキス剤、エリキシル剤、酒精剤、シロップ剤、リモナーデ剤等の内用液剤、チンキ剤、リニメント剤、ローション剤等の外用液剤、硬膏剤、軟膏剤、パップ剤等の外用剤などに製剤化できる。また、投与可能であるならば、吸入剤、エアゾール剤、注射剤、点眼剤、座剤等にも用途に応じて製剤化してもよい。
【0017】
経口投与においては、成人に対し体重1kg当り0.5〜500 mg/日の範囲で投与するのが好ましい。
【0018】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0019】
乾燥粉砕した霊芝子実体(373g)を室温で2週間ずつメタノール(3L)により3回抽出を行い、30gの抽出物を得た。この抽出物は、シリカゲル(1kg)カラムクロマトグラフィーにより、n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒[1:0(2.5L)、19:1(6.5L)、9:1(2.5L)、4:1(3.0L)、7:3(10.0L)、3:7(9.0L)、0:1(7.0L)]を展開液として用い、薄層クロマトグラフィー(TLC)でモニターしながら、順次溶出させながら6画分に分画した。n−ヘキサン/酢酸エチル(7:3、3:7、及び0:1)で溶出した最も高極性画分(6.9g)の一部(5.0g)をシリカゲル(200g)を用いて再度クロマトグラフィーを行った。n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒[9:1(4.5L)、4:1(5.8L)、7:3(3.0L)、1:1(3.4L)、2:3(0.6L)、3:7(5.2L)、1:4(0.8L),0:1(1.0L)]を展開液として順次溶出させ、n−ヘキサン/酢酸エチル(7:3)、(1:1及び2:3)、及び(3:7、1:4、及び0:1)溶出部から、それぞれ画分I[TLC(シリカゲル;展開液:n−ヘキサン/酢酸エチル/酢酸、50:50:0.5)でR値約0.7;707mg]、II(R値約0.5;916mg)、及びIII(R値約0.2;1.83g)を得た。
【0020】
画分Iの一部(437mg)からは、オクタデシルシリカ(ODS)カラム分取HPLC[25cmx内径10mm;展開液:メタノール/水/酢酸(80:20:1)、2mL/分]により、化合物11a(20.2mg;保持時間39.6分)を単離した。
【0021】
画分IIの一部(250mg)からは、ODSカラムHPLC[展開液:メタノール/水/酢酸(60:40:1)、2mL/分]により、化合物1b(11.0mg;保持時間41.1分)、化合物2b(4.9mg;保持時間26.4分)、化合物3b(14.2mg;保持時間39.4分)、化合物5b(1.6mg;保持時間35.4分)、化合物6b(6.8mg;保持時間29.9分)、化合物7b(5.1mg;保持時間36.7分)、化合物8b(0.8mg;保持時間21.2分)、化合物9a(4.9mg;保持時間22.8分)、及び化合物10b(1.4mg;保持時間30.7分)を得た。
【0022】
画分IIIの一部(556mg)からは、上記画分IIと同条件でのODSカラムHPLCにより、化合物3a(4.7mg;保持時間27.2分)、化合物4a(9.0mg;保持時間15.8分)、化合物5a(44.1mg;保持時間23.3分)、化合物6a(27.7mg;保持時間20.6分)、化合物7a(2.7mg;保持時間24.8分)、及び化合物10a(8.0mg;保持時間25.2分)を得た。トリテルペンの化学構造式は図2に示した。
【0023】
16種の化合物の同定はMS,IR,H NMR,13C NMR,H−H COSY,HMQC,及びHMBCにより行った。これらのうち、化合物1a、1b及び2bの3種はこれまで文献記載のない新規化合物であった。これらのうち化合物1a及び2bの2種の化合物のH NMR及び13C NMRデータをHMBCデータとともに表1に示した。
【0024】
【表1】


【0025】
2種の新規化合物の化学名は以下に示す。
化合物1a:3β,7β−dihydroxy−12β−acetoxy−25,26,27−trinor−11,15−dioxolanost−8−en−24−oic acid
化合物1b:methyl 3β,7β−dihydroxy−12β−acetoxy−25,26,27−trinor−11,15−dioxolanost−8−en−24−oate
化合物2b:methyl 7β,15α−dihydroxy−25,26,27−trinor−3,11−dioxolanost−8−en−24−oate
新規化合物1a、1b及び 2bの諸性質およびスペクトルデータ(表1のNMRデータを除く)を次に示した。
【0026】
ルシデニン酸P(化合物1a): 無色結晶, mp 133−137 ℃; [α] +14.7°(c 0.38, クロロホルム); UV (メタノール) λax 255 nm; IR νmax 3446, 1755, 1729, 1681 cm−1; EIMS m/z 518 [M] (9), 503 (7), 490 (25), 472 (3), 458 (8), 440 (4), 430 (4), 355 (5), 329 (6), 306 (100), 277 (7), 255 (3), 199 (3), 171 (3), 153 (10), 135 (3); 高分解能EIMS m/z 518.2827 (理論値C2942 [M] 518.2880). 本化合物はエーテル性ジアゾメタン処理によりルシデニン酸Pメチル(化合物1b)を与えた。
【0027】
ルシデニン酸Pメチル(化合物1b): 無色結晶, mp 83−85 ℃; [α]25 +77.6°(c 0.41, クロロホルム); UV (メタノール) λmax 252 nm; IR νmax 3459, 1733, 1680 cmH NMR δ 0.85 (3H, s, H−29), 0.99 (3H, s, H−18), 0.99 (3H, d,J = 6.3 Hz, H−21), 1.03 (3H, s, H−28), 1.27 (3H, s, H−19), 1.49 (3H, s, H−30), 2.22 (3H, s, 12β−OAc), 3.20 (1H, dd, J = 5.6, 10.7 Hz, H−3α), 3.68 (3H, s, COOMe), 4.80 (1H, dd, J = 8.5, 8.7 Hz, H−7β), 5.61 (1H, s, H−12α); EIMS m/z 532 [M] (12), 517 (4), 504 (23), 472 (13), 454 (6), 444 (14), 417 (2), 332 (7), 329 (7), 306 (100), 288 (4), 277 (10), 255 (5), 241 (4), 227 (7); 高分解能EIMS m/z 532.3036 (理論値 C3044[M]+ 532.3036).
【0028】
ルシデニン酸Qメチル(化合物2b): 無色結晶, mp 130−131 ℃; [α]25 +58.5°(c 0.13, クロロホルム); UV (メタノール) λmax 252 nm; IR νmax 3445, 1736, 1707, 1661 cm−1; EIMS m/z 474 [M] (100), 456 (42), 441 (16), 425 (17), 413 (12), 336 (92), 330 (17), 318 (46), 313 (22), 299 (14), 287 (14), 276 (19), 259 (28), 245 (13), 203 (28), 161 (29), 137 (24); 高分解能EIMS m/z 474.2979 (理論値C2942 [M] 474.2981).
【0029】
以下には新規化合物1a、1b、及び2bの構造決定について述べた。
【0030】
化合物1aは高分解能EIMS ([M] m/z 518.2827)及び13C NMRより分子式C2942を持つことが示された。UVスペクトルにおける255nm吸収はα、β‐不飽和ケトンの存在を示している。一方、IRスペクトルからは水酸基 (3446 cm−1)、カルボニル基 (1729 cm−1) 及びカルボキシル基 (1681 cm−1)の存在が示唆された。本化合物は5個の第3級メチル基[δ 0.85, 0.99, 1.03, 1.27, 1.49 (各 s)]、1個の第2級メチル基[δ 1.00 (d, J = 6.4 Hz)]、3個の酸素化されたメチン基 [δ 3.18 (dd, J = 6.8, 9.3 Hz), 4.80 (dd, J = 8.9, 8.9 Hz), 5.62 (s)]、及び1個のアセトキシル基 [δ 2.22 (s)]を持つことがH NMRから示された。さらに、13C NMR及びDEPTスペクトル、さらにはHMQCスペクトルから、化合物1aは7個のメチル基(アセチルメチル基を含む)、6個のメチレン基、6個のメチン基(3個の酸素化されたメチン基を含む)、4個の第4級炭素、2個のsp炭素、及び4個のカルボニル基(2個のケトン基を含む)を持つことがわかった。EIMSでは、ヒドリド転位を伴った側鎖 (C)及び酢酸の脱離に対応するm/z 355 [C2227の開裂イオン、及び、側鎖と、C−11−C−12、C−13−C−14、及びC−16−C−17結合開裂により生成したm/z 306 [C1826イオンが観察された。 これらの開裂イオンは、12−hydroxy−11,15−dioxo−Δ−骨格構造を持つラノスタン型トリテルペンに特徴的なものである。以上のデータ、さらにはH及び13C NMRデータのルシデニン酸Cメチル (methyl 3β,7β,12β−trihydroxy−25,26,27−trinor−11,15−dioxolanost−8−en−24−oate)[Nishitobaら、Agric. Biol. Chem., 49巻、1793頁(1985)]及びルシデニン酸P (3β,7β−dihydroxy−12β−acetoxy−25,26,27−trinor−11,15−dioxolanost−8−en−24−oic acid)[Wuら、J. Nat. Prod., 64巻、1121頁(2001)]との比較により、化合物1aは3β,7β−dihydroxy−12β−acetoxy−25,26,27−trinor−11,15−dioxolanost−8−en−24−oic acid(ルシデニン酸Pと命名)構造を持つことが明らかとなった。この構造の正しいことはH−H COSY、HMQC、HMB、及びNOESYスペクトルの解析により確認した。
【0031】
化合物1bは高分解能EIMS ([M] m/z 532.3036)より分子式C4044を持つことが示された。本化合物は2個の第2級水酸基[νmax 3459 cm−1; δ 3.20 (1H, dd, J = 5.6, 10.7 Hz) 及び 4.80 (1H, dd, J = 8.5, 8.7 Hz)]、1個の第2級アセトキシル基[νmax 1680 cm−1;δ 2.22 (3H, s) and 5.61 (1H, s)]、1個のα、β‐不飽和ケトン基(λma 252 nm;νmax 1733 cm−1)、4個の第3級メチル基[δ 0.85, 1.03, 1.27 and 1.49 (各 3H及び s)]、1個の第2級メチル基[δ 0.99 (3H, d, J = 6.3 Hz)]、及び1個のメトキシル基[δ 3.68 (3H, s)]を持つことが示された。さらに、EIMSでは、化合物1aと同様にm/z 306 ([C1826;基準ピーク)に特徴的な開裂イオンが観察された。これらのデータは、MSにおける分子イオン、及びH NMRにおけるメトキシル基の存在を除き、1aに極めて良く一致した。以上より、1bは1aのメチルエステル体、即ちルシデニン酸Pメチルの構造を持つことは明らかである。この化合物1bの推定構造は、1aのジアゾメタン法によるメチルエステル化により、1bが得られたことにより確認した。
【0032】
化合物2bは高分解能EIMS ([M] m/z 474.2979)より分子式C2842を持つことが示された。本化合物は2個の第2級水酸基[νmax 3445 cm−1;δ 4.63 (1H, dd, J = 6.9, 10.8 Hz) 及び 4.80 (1H, dd, J = 7.1, 9.5 Hz)]、1個はα、β‐不飽和ケトン基[νmax 252 nm;δ 140.3, 159.2 (各 s)]として存在する2個のケトン基[νmax 1736, 1707 cm−1;δ 199.6 and 216.9 (each s)]、1個のカルボン酸メチルエステル基[νmax 1661 cm−1;δ 51.6 (q), 174.3 (s);δ 3.67 (3H, s)]、5個の第3級メチル基[δ 0.96, 1.10, 1.12, 1.26, 1.28 (各 3H 及び s)]、及び1個の第2級メチル基[δ 0.88 (3H, d, J = 6.3 Hz)]を有している。EIMSでは、C−5−C−6 及び C−9−C−10 結合開裂によるA環の脱離で生成した特長的な開裂イオンをm/z 336 [C1926に示した。これらのデータのガノデリン酸A (7β,15α−dihydroxy−3,11,23−trioxolanost−8−ene−26−oic acid) [Kohdaら、 Chem. Pharm. Bull. 、33巻、1367頁(1985)]、そのメチルエステル体[Kikuchiら、 Chem. Pharm. Bull. 、34巻、3695頁(1986)]、さらには化合物1aと1bとの比較により、化合物2bはmethyl 7β,15α−dihydroxy−25,26,27−trinor−3,11−dioxolanost−8−en−24−oate構造を持つことが明らかとなった。本化合物はルシデニン酸Pメチルと命名した。この構造の正しいことはH−H COSY、HMQC、HMB、及びNOESYスペクトルの解析により確認した。
【0033】
霊芝子実体抽出物から得た16種のラノスタン型トリテルペン、即ち、ルシデニン酸P(化合物1a)、ルシデニン酸Pメチル(化合物1b)、ルシデニン酸Qメチル(化合物2b)、ルシデニン酸A(化合物3a)、ルシデニン酸Aメチル(化合物3b)、ルシデニン酸C(化合物4a)、ルシデニン酸D(化合物5a)、ルシデニン酸Dメチル(化合物5b)、ルシデニン酸E(化合物6a)、ルシデニン酸Eメチル(化合物6b)、ルシデニン酸Fメチル(化合物7b)、ルシデニン酸Lメチル(化合物8b)、ガノデリン酸E(化合物9a)、ガノデリン酸F(化合物10a)、ガノデリン酸Fメチル(化合物10b)、ガノデリン酸T−Q(化合物11a)のEBV早期抗原発現阻害率を表2に示した。
【0034】
【表2】


【0035】
これらの化合物の阻害率は、TPAに対し10倍モル濃度の時2〜7%、同様に1000倍モル濃度の時94〜100%であり、高い活性を有している。また、この阻害率は、ビタミンA誘導体であり、その発がん予防効果が種々の動物モデル実験でも確認されているβ‐カロテン[村上ら、Biosci. Biotech. Biochem.、60巻、1頁(1996)]よりも高い値を示している。また、これらは検定において高いラジ細胞生存率を示したことから、高い安全性を持つ発癌予防剤として期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】EBV活性化抑制検定法の概略を示す。
【図2】16種のラノスタン型トリテルペンの化学構造式を示す。
【出願人】 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
【出願日】 平成15年7月16日(2003.7.16)
【代理人】 【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓

【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇

【識別番号】100107146
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 武生

【識別番号】100107504
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 克則

【公開番号】 特開2005−35898(P2005−35898A)
【公開日】 平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願番号】 特願2003−197517(P2003−197517)