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【発明の名称】 免疫賦活剤
【発明者】 【氏名】井上 靖
【住所又は居所】茨城県つくば市桜1丁目16番地 昭和産業株式会社総合研究所バイオ研究センター内

【氏名】水渕 裕之
【住所又は居所】茨城県つくば市桜1丁目16番地 昭和産業株式会社総合研究所バイオ研究センター内

【氏名】富田 哲司
【住所又は居所】茨城県つくば市桜1丁目16番地 昭和産業株式会社総合研究所バイオ研究センター内

【要約】 【課題】免疫賦活作用を有し、食品素材としても利用可能な安全な免疫賦活剤を提供すること。

【解決手段】本発明の免疫賦活剤は、マンノオリゴ糖、好ましくはα−1,2マンノビオース、α−1,3マンノビオース、およびα−1,4マンノビオースからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。より好ましくは、さらに乳酸菌を有効成分として含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンノオリゴ糖を有効成分として含有する、免疫賦活剤。
【請求項2】
前記マンノオリゴ糖が、α−1,2マンノビオース、α−1,3マンノビオース、およびα−1,4マンノビオースからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の免疫賦活剤。
【請求項3】
さらに乳酸菌を有効成分として含有する、請求項1または2に記載の免疫賦活剤。
【請求項4】
インターロイキン12の産生量を上昇させる作用を有する、請求項1から3のいずれかの項に記載の免疫賦活剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖類を有効成分とする免疫賦活剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、従来免疫賦活作用が知られていなかった糖類、例えば、マンノオリゴ糖を有効成分として含有する、マクロファージのIL−12産生能増強作用を有する免疫賦活剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトを初めとする生体は、侵入してくる外来微生物、ならびに内因性の腫瘍細胞のような異物的自己物質などに絶えずさらされている。これらに起因する各種の疾病に対抗するための生体防御機構として、免疫系を備えている。免疫反応の様式を大きく分類すると、免疫細胞自身が異物を攻撃排除する細胞性免疫と、免疫細胞が産生する抗体によって異物を排除する液性免疫とがある。
【0003】
免疫応答の初期の段階で重要な役割を果たす免疫系細胞の一つに、マクロファージが挙げられる。マクロファージは、侵入した微生物、ならびに個体の形態形成過程あるいは生体の体内に生じた不要なアポトーシス細胞や壊死細胞を、選択的に捕食し、消化分解して、これらを抗原としてリンパ球に提示する。また、マクロファージの表面には、Toll−like receptorと呼ばれる糖鎖をパターン認識して刺激を伝える受容体が存在している。マクロファージは、これらの過程で、種々のサイトカインやケモカインを産生し、生体防御応答に関与する他の細胞機能を制御する。例えば、マクロファージが産生するインターロイキン12(IL−12)は、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化するほか、抗原未感作のナイーブT細胞をTh1に分化させ、Th1/Th2バランスをTh1優位にし、免疫様式を細胞性免疫主体に導く作用があることが知られている。
【0004】
近年日本では、加速度的に高齢化社会を迎えつつあり、加齢による免疫力低下により高齢者がウイルス・微生物感染により死に至るケースが少なくない。また、多忙な現代社会およびストレスを受けやすい環境の中での食事の不規則な摂取も免疫力低下の原因となることが知られており、その対策が強く望まれている。その対処法として新規な抗腫瘍剤やワクチン、抗生物質の開発が精力的に行われている。しかし、これら治療剤は副作用が生じることが問題点であり、また最近は医療費が急増しており、食事の改善による医療費の低減が強く求められている。
【0005】
糖類は、古くから食経験があるため、何らかの生理活性を有するならば、比較的安全な治療剤になり得る。例えば、D−マンノースは生体内において、高マンノース型糖鎖に見られるように糖鎖の構成成分として存在しており、生命活動を維持している上で重要な役割を担っていることが認識されつつある。また、D−マンノースはサルモネラ菌のニワトリ腸管上皮細胞への定着を阻害する作用を有することが知られており(非特許文献1)、畜産分野において有害菌の感染を予防する飼料添加剤としての利用が提案されている(特許文献1および2)。
【0006】
しかし、病原性微生物やウイルスの感染防御、腫瘍細胞の破壊などの働きを担う細胞性免疫系の免疫細胞(マクロファージ、キラーT細胞、NK細胞など)を活性化するサイトカインであるIL−12の産生が、これらの糖質により増強されることは、従来知られていなかった。これまでに、このような機能を有する糖鎖としては、ニゲロオリゴ糖(非特許文献2、特許文献3)、ラフィノース(特許文献4および5)、ネオアガロオリゴ糖(特許文献6)、およびβ1,3グルカン(特許文献7)について報告されているに過ぎない。なお、イソマルトオリゴ糖の混合物については、Tリンパ球およびBリンパ球を増加させる作用が確認されているが、IL−12の産生増強については全く知られていない(特許文献8)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−213781号公報
【特許文献2】
特開平8−38064号公報
【特許文献3】
特開2002−80364号公報
【特許文献4】
特開2001−288093号公報
【特許文献5】
特開2001−288094号公報
【特許文献6】
特開2002−193828号公報
【特許文献7】
特開平11−246435号公報
【特許文献8】
特許第2729820号公報
【非特許文献1】
Poultry、Science, 68巻, 1351−1360頁, 1989年
【非特許文献2】
Murosakiら、Biosci. Biotechnol. Biochem., 63巻, 373頁, 1999年
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、免疫賦活作用を有し、食品素材としても利用可能な安全な免疫賦活剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、食品素材、特に糖類が免疫系に与える影響に関して鋭意研究を行った結果、マンノオリゴ糖に免疫賦活作用があることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、マンノオリゴ糖を有効成分として含有する、免疫賦活剤を提供する。
【0011】
好適な実施態様では、上記マンノオリゴ糖は、α−1,2マンノビオース、α−1,3マンノビオース、およびα−1,4マンノビオースからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0012】
より好適な実施態様では、上記免疫賦活剤は、さらに乳酸菌を有効成分として含有する。
【0013】
さらに好適な実施態様では、上記免疫賦活剤は、インターロイキン12の産生量を上昇させる作用を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の免疫賦活剤は、有効成分として、マンノオリゴ糖を含有する。
【0015】
マンノオリゴ糖は、D−グルコースの2−エピマーの単糖であるD−マンノースから構成されるオリゴ糖である。特に、α−1,2マンノビオースおよびα−1,3マンノビオースは、N−結合型糖タンパク質糖鎖に見られるように、糖鎖の構成単位として存在している。糖鎖は、生体内において細胞−細胞間の相互作用、細胞−基質接着、細菌・ウイルス−宿主相互作用など、生命活動を維持していく上で重要な役割を担っていることが明らかにされつつある。そのため、これらのマンノオリゴ糖は、従来のオリゴ糖には見られない新たな機能が見出されることが期待される。
【0016】
例えば、コーヒー抽出残渣から抽出したマンナンを加水分解して得られる、マンノースを主構成成分とするβ−1,4結合のマンノオリゴ糖について、腸内細菌の資化性、難う蝕性、および低カロリー性が報告されている(特開2001−149041号公報)。このように、種々のマンノオリゴ糖の生理機能については、現在のところ、ほとんど知られていない。
【0017】
本発明においては、主として二糖〜六糖のマンノオリゴ糖が用いられ、α−1,2結合、α−1,3結合、α−1,4結合、またはα−1,6結合しているものが好ましい。良好な免疫賦活作用が得られる点で、α−1,2マンノビオース、α−1,3マンノビオース、およびα−1,4マンノビオースからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。これらの糖類は、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
本発明の免疫賦活剤は、さらに乳酸菌を有効成分として含有することが好ましい。乳酸菌としては、食品の加工などに通常用いられる乳酸菌類が用いられ、特に、ヒトの腸内に棲んでいる腸内乳酸菌類が好適である。代表的には、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーべ、ビフィドバクテリウム・アドレッセンテス、ストレプトコッカス・フェカリスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明の免疫賦活剤は、上記糖類を単独でまたは組み合わせて、あるいは上記乳酸菌との混合物として用いることにより、マクロファージのIL−12の産生能を増強することができる。
【0020】
本発明の免疫賦活剤は、上記の有効成分を、通常用いられる食品あるいは食品成分、医薬担体または賦形剤と、通常用いられる方法で混合して、免疫力を高める食品や医薬品とすることができる。用いる食品あるいは食品成分、医薬担体または賦形剤は特に限定するものではなく、目的とする免疫賦活剤の具体的用途に応じて適宜選択できる。また、免疫賦活剤の形態も特に限定するものではなく、具体的用途に応じて、種々の固体や液体の形態とすることができる。
【0021】
本発明の免疫賦活剤を食品として用いる場合、調味料、畜肉加工品、農産加工品、菓子などの形態で提供することも可能である。
【0022】
【実施例】
(調製例)
乳酸菌培養培地であるMRS培地(商品名「Lactobacilli MRS Broth」、Difco社製)5mlにラクトバチルス/ガセリ ATCC 33323を接種し、32℃で24時間静置培養した。この培養液を100mlのMRS培地に1%になるように接種し、32℃で24時間静置培養した。得られた培養液を10,000×gで20分間遠心分離し、菌体を回収した。この菌体を生理食塩水に懸濁し、10,000×gで20分間遠心分離し、菌体を回収した。この操作を3回繰り返した後、菌体を蒸留水に懸濁した。この懸濁液を70℃に10分間置いて殺菌した後、ドライアイス−エタノール中で急速凍結した。これを凍結乾燥し、ラクトバチルス・ガセリ乾燥死菌体0.25gを得た。
【0023】
(実施例)
マウス由来のマクロファージの細胞株であるJ774細胞株(理化学研究所より入手可能)を、細胞数が5×10/mlとなるように、10%FBS(ウシ胎児血清)を含むDMEM培地(以下、単に培地という)で希釈した。これを96穴組織培養プレートに1穴当たり100μlを播種し、37℃の5%炭酸ガス培養器内で2時間培養した。これに上記調製例で得たラクトバチルス・ガセリ乾燥死菌体を4μg/mlの濃度で培地に分散させた懸濁液を1穴当たり50μl加え、さらに、表1に記載の糖をそれぞれ4μg/mlの濃度で培地に含む溶液を1穴当たり50μl加えた(最終濃度1μg/ml)。比較としてラクトバチルス・ガセリ乾燥死菌体を2μg/mlの濃度で培地に分散させた懸濁液またはラクトバチルス・ガセリ乾燥死菌体およびニゲロースを含む懸濁液を、あるいは対照として培地のみを、1穴当たり100μl加えた。これらを5%炭酸ガス培養器内で37℃にて24時間培養後、培養上清のIL−12をエンザイムイムノアッセイで測定した。
【0024】
IL−12のエンザイムイムノアッセイは以下のように行った。一次抗体としてラット抗マウスIL−12p40抗体(Genzyme社製)をPBSで4μg/mlに調製し、この一次抗体溶液を、96穴組織培養プレートに1穴当たり50μl加え、室温で一晩放置して、ラット抗マウスIL−12p40抗体を各穴に付着させた。PBSで洗浄後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSを1穴当たり100μl加え、室温で1時間放置した。洗浄後、上記培養上清を1穴当たり50μl加え、室温で2時間放置し、培養上清中のIL−12をプレートに付着したラット抗マウスIL−12p40抗体と結合させた。洗浄後、二次抗体(検出抗体)のペルオキシダーゼ標識抗マウスIL−12p40抗体(Genzyme社製)を50μl加え、プレートに結合させたIL−12に結合させた。洗浄後、テトラメチルベンジジン(Dako Cytomation社製)を1穴当たり50μl加え、室温で20分間反応させた後、2N硫酸を1穴当たり50μl加えて反応を停止させた。マイクロプレートリーダーで450nmでの吸光度を測定し、リコンビナントマウスIL−12(Genzyme社製)を用いて作成した標準曲線から、培養上清中のIL−12の濃度を求めた。表1にその結果を示す。
【0025】
【表1】


【0026】
表1からわかるように、実験に用いたいずれの糖においても、IL−12産生能を増強することが知られているニゲロースを用いた場合と同等またはそれ以上のIL−12濃度を示した。さらに、乳酸菌(ラクトバチルス・ガセリ)だけを用いた場合も、IL−12の産生量は増加したが、糖を同時に用いることによって、IL−12の産生量がさらに増加した。このことから、本実験に用いた糖は、特に乳酸菌と組み合わせて用いることにより、マクロファージのIL−12産生能を増強することがわかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明の免疫賦活剤は、IL−12の産生を増強するため、細胞性免疫賦活作用を有する。そのため、癌の免疫療法や癌の予防への利用が期待される。また、本発明の免疫賦活剤の有効成分は、従来から食品として用いられている糖および/または乳酸菌であり、安全であることが知られているため、医薬品としてだけでなく、健康食品としても利用可能である。
【出願人】 【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区内神田2丁目2番1号
【出願日】 平成15年7月16日(2003.7.16)
【代理人】 【識別番号】100104673
【弁理士】
【氏名又は名称】南條 博道

【公開番号】 特開2005−35896(P2005−35896A)
【公開日】 平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願番号】 特願2003−197511(P2003−197511)