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【発明の名称】 心身状態判定システム
【発明者】 【氏名】藤田 悦則

【氏名】前田 慎一郎

【氏名】上野 義雪

【要約】 【課題】人の心身状態の判定を確実かつ容易に行う。

【解決手段】人体支持手段としてのシート100に、該シート100に着座する人の呼吸に伴って検出値が変化する呼吸変位検出センサ10を設けた。呼吸変位検出センサ10から得られた測定データにより、呼吸周波数の時系列変動を、スライド計算して得る。周波数解析により得られたピーク周波数を閾値として設定し、呼吸周波数の時系列データが閾値を下回った場合に、睡眠状態と判定する。また、呼吸による体動の大きさの時系列データと、呼吸周波数の時系列データとを併せて考察することにより、両者の状態が逆位相で現れた時点を検出すると、睡眠に至る前の入眠予兆時を判定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体支持手段に付設され、該人体支持手段に支持された人の呼吸に伴って検出値が変化する呼吸変位検出センサと、
前記呼吸変位検出センサから得られた信号データを基に、呼吸状態の時系列変動を演算する時系列変動演算手段と、
前記呼吸変位検出センサから得られた信号データを周波数解析し、その最大振幅となっているピーク周波数を利用して閾値を求める閾値演算手段と、
前記時系列変動演算手段により得られた呼吸状態の時系列変動を、前記閾値演算手段により求めた閾値と比較し、前記人の心身状態を判定する呼吸用心身状態判定手段と
を具備することを特徴とする心身状態判定システム。
【請求項2】
前記時系列変動演算手段は、前記閾値演算手段により得られたピーク周波数を含む所定の周波数帯域を抜き出すバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタをかけて得られた波形の極大値の所定時間範囲における呼吸周波数の平均値を求め、得られた平均値を所定のスライドラップ率でスライド計算して呼吸周波数の時系列変動を求める呼吸周波数時系列データ演算手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載の心身状態判定システム。
【請求項3】
前記呼吸用心身状態判定手段は、前記呼吸周波数時系列データ演算手段により得られた呼吸周波数時系列データと比較し、前記閾値演算手段により求めた閾値を下回る場合に、睡眠状態と判定することを特徴とする請求項2記載の心身状態判定システム。
【請求項4】
前記閾値が、前記閾値演算手段により得られたピーク周波数と同じであることを特徴とする請求項3記載の心身状態判定システム。
【請求項5】
前記時系列変動演算手段は、前記閾値演算手段により得られたピーク周波数を含む所定の周波数帯域を抜き出すバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタをかけて得られた波形の極大値の所定時間範囲における数を呼吸回数として求め、得られた呼吸回数を所定のスライドラップ率でスライド計算して呼吸回数の時系列変動を求める呼吸回数時系列データ演算手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載の心身状態判定システム。
【請求項6】
前記呼吸用心身状態判定手段は、前記呼吸回数時系列データ演算手段により得られた呼吸回数時系列データと比較し、前記閾値演算手段により求めた閾値を下回る場合に、睡眠状態と判定することを特徴とする請求項5記載の心身状態判定システム。
【請求項7】
前記閾値が、前記閾値演算手段により得られたピーク周波数に、呼吸回数を求めた前記所定時間範囲の時間幅を乗じて得られた値であることを特徴とする請求項6記載の心身状態判定システム。
【請求項8】
さらに、前記バンドパスフィルタをかけて得られた波形の極大値の所定時間範囲における平均値を求め、得られた平均値を所定のスライドラップ率でスライド計算して呼吸による体動の大きさの時系列変動を求める体動大きさ時系列データ演算手段を備え、
前記呼吸用心身状態判定手段においては、前記呼吸周波数時系列データ演算手段により得られた呼吸周波数時系列データと、前記体動大きさ時系列データ演算手段により得られた呼吸による体動大きさ時系列データとを比較し、2つの時系列データが逆位相状態となっているタイミングを入眠予兆時と判定することを特徴とする請求項2記載の心身状態判定システム。
【請求項9】
前記呼吸変位検出センサが、人の呼吸による圧力変動を検知するセンサであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の心身状態判定システム。
【請求項10】
さらに、前記人体支持手段により支持された人の脈波を測定する脈波測定器を備えると共に、
前記脈波測定器から得られた脈波のパワー値の傾きの時系列変動を演算するパワー値傾き演算手段と、
前記脈波測定器から得られた脈波の最大リアプノフ指数の傾きの時系列変動を演算する最大リアプノフ指数傾き演算手段と、
前記パワー値傾き演算手段により得られたパワー値の傾きの時系列変動と、前記最大リアプノフ指数傾き演算手段により得られた最大リアプノフ指数の傾きの時系列変動とを比較し、2つの時系列データが逆位相状態となっているタイミングを入眠予兆時と判定とする脈波用心身状態判定手段と
を備え、
前記呼吸用心身状態判定手段と脈波用心身状態判定手段とを併用して入眠予兆時を判定することを特徴とする請求項8記載の心身状態判定システム。
【請求項11】
前記脈波測定器が、指尖容積脈波又は耳朶脈波のいずれか少なくとも一方を測定する装置であることを特徴とする請求項10記載の心身状態判定システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、列車、航空機などの輸送機器に用いられる乗物用シート、事務用のシート、病院等において検査や診断等の際に人が着席するシートなどの各種のシート、あるいは、布団、マットレス、ベッドなどの寝具等、人を支持する目的として用いられる人支持手段に備え付けられ、実際に人体支持手段によって支持されている人の心身状態として、睡眠状態か否か、あるいは、睡眠に至る前の段階(入眠予兆時)であるか否かの判定を自動的に行うことができ、特に乗物用シートに支持されている人の状態判定に適する心身状態判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の心身状態、例えば、活性状態(覚醒状態)であるか、睡眠状態であるかを検出するには、従来、脳波を測定し、その脳波パターンを解析することにより行われている。しかしながら、脳波を測定するには、被検者の頭部に脳波電極や眼電位電極を取り付ける必要があるなど、人の通常動作を制約する環境下で行わなければならず、例えば、自動車、電車などの各種輸送機器の運転時における生体状態を運転者に負担をかけずに学術的な高いレベルでの評価は困難である。
【0003】
一方、運転中の運転者の生体状態(心身状態)を監視することは、近年、事故予防策として注目されており、例えば、特許文献1、特許文献2には、心拍又は脈拍を用い、これをカオス解析して生体状態を監視する技術が提案されている。特許文献1及び2に開示の技術によれば、脳波測定用の大がかりな装置の頭部への装着が不要で、簡易に運転者の生体状態を評価できる。
【特許文献1】特開平9−308614号公報
【特許文献2】特開平10−146321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示された装置は、いずれも、心臓の拍動に伴う体表面の振動を、シートの座部に装着した圧力センサによりセンシングするものである。しかしながら、実際には、走行中の車体の振動により、該圧力センサによって、シートに着座した人の拍動に伴う体表面の振動のみを検出することは極めて困難である。すなわち、このような圧力センサによって拍動に伴う体表面の振動を検出しようとしても、該圧力センサは車体の振動による圧力変化も敏感に検出してしまうため、車体振動による信号データと生体信号とを明確に区別することは困難である。従って、上記した技術は、外的要因による振動の影響を受けにくい環境下でなければ正確には機能せず、実用性の点で問題がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、心臓の拍動に伴う体表面の振動を利用するのではなく、より明確に検出できる呼吸による体動変化を検出し、呼吸のゆらぎや呼吸による体動の大きさを基に、人の心身状態を判定するシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、人体支持手段に付設され、該人体支持手段に支持された人の呼吸に伴って検出値が変化する呼吸変位検出センサと、
前記呼吸変位検出センサから得られた信号データを基に、呼吸状態の時系列変動を演算する時系列変動演算手段と、
前記呼吸変位検出センサから得られた信号データを周波数解析し、その最大振幅となっているピーク周波数を利用して閾値を求める閾値演算手段と、
前記時系列変動演算手段により得られた呼吸状態の時系列変動を、前記閾値演算手段により求めた閾値と比較し、前記人の心身状態を判定する呼吸用心身状態判定手段と
を具備することを特徴とする心身状態判定システムを提供する。
請求項2記載の発明では、前記時系列変動演算手段は、前記閾値演算手段により得られたピーク周波数を含む所定の周波数帯域を抜き出すバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタをかけて得られた波形の極大値の所定時間範囲における呼吸周波数の平均値を求め、得られた平均値を所定のスライドラップ率でスライド計算して呼吸周波数の時系列変動を求める呼吸周波数時系列データ演算手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項3記載の発明では、前記呼吸用心身状態判定手段は、前記呼吸周波数時系列データ演算手段により得られた呼吸周波数時系列データと比較し、前記閾値演算手段により求めた閾値を下回る場合に、睡眠状態と判定することを特徴とする請求項2記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項4記載の発明では、前記閾値が、前記閾値演算手段により得られたピーク周波数と同じであることを特徴とする請求項3記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項5記載の発明では、前記時系列変動演算手段は、前記閾値演算手段により得られたピーク周波数を含む所定の周波数帯域を抜き出すバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタをかけて得られた波形の極大値の所定時間範囲における数を呼吸回数として求め、得られた呼吸回数を所定のスライドラップ率でスライド計算して呼吸回数の時系列変動を求める呼吸回数時系列データ演算手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項6記載の発明では、前記呼吸用心身状態判定手段は、前記呼吸回数時系列データ演算手段により得られた呼吸回数時系列データと比較し、前記閾値演算手段により求めた閾値を下回る場合に、睡眠状態と判定することを特徴とする請求項5記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項7記載の発明では、前記閾値が、前記閾値演算手段により得られたピーク周波数に、呼吸回数を求めた前記所定時間範囲の時間幅を乗じて得られた値であることを特徴とする請求項6記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項8記載の発明では、さらに、前記バンドパスフィルタをかけて得られた波形の極大値の所定時間範囲における平均値を求め、得られた平均値を所定のスライドラップ率でスライド計算して呼吸による体動の大きさの時系列変動を求める体動大きさ時系列データ演算手段を備え、
前記呼吸用心身状態判定手段においては、前記呼吸周波数時系列データ演算手段により得られた呼吸周波数時系列データと、前記体動大きさ時系列データ演算手段により得られた呼吸による体動大きさ時系列データとを比較し、2つの時系列データが逆位相状態となっているタイミングを入眠予兆時と判定することを特徴とする請求項2記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項9記載の発明では、前記呼吸変位検出センサが、人の呼吸による圧力変動を検知するセンサであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項10記載の発明では、さらに、前記人体支持手段により支持された人の脈波を測定する脈波測定器を備えると共に、
前記脈波測定器から得られた脈波のパワー値の傾きの時系列変動を演算するパワー値傾き演算手段と、
前記脈波測定器から得られた脈波の最大リアプノフ指数の傾きの時系列変動を演算する最大リアプノフ指数傾き演算手段と、
前記パワー値傾き演算手段により得られたパワー値の傾きの時系列変動と、前記最大リアプノフ指数傾き演算手段により得られた最大リアプノフ指数の傾きの時系列変動とを比較し、2つの時系列データが逆位相状態となっているタイミングを入眠予兆時と判定とする脈波用心身状態判定手段と
を備え、
前記呼吸用心身状態判定手段と脈波用心身状態判定手段とを併用して入眠予兆時を判定することを特徴とする請求項8記載の心身状態判定システムを提供する。
請求項11記載の発明では、前記脈波測定器が、指尖容積脈波又は耳朶脈波のいずれか少なくとも一方を測定する装置であることを特徴とする請求項10記載の心身状態判定システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人体支持手段に付設され、該人体支持手段に支持された人の呼吸に伴って検出値が変化する呼吸変位検出センサを備え、時系列変動演算手段により得られた呼吸状態の時系列変動を、閾値演算手段により求めた閾値と比較し、前記人の心身状態を判定する呼吸用心身状態判定手段を備えた構成である。人の呼吸による体動の変化は、特許文献1や特許文献2に開示された心臓の拍動に伴う体表面の変化と比較し、より明確に検出できる。このため、人の心身状態、すなわち、睡眠状態であるか覚醒状態であるかをより確実に捉えることができる。
また、時系列変動演算手段が、呼吸変位検出センサから得られたデータを所定時間範囲時間毎にスライド計算して呼吸周波数又は呼吸回数の時系列データを求めるため、例えば、自動車の走行中に路面から伝達される振動等によるノイズの影響が小さい。
また、呼吸による体動の大きさの時系列データと、呼吸周波数の時系列データとを併せて考察することにより、睡眠に至る前の入眠予兆時のタイミングを検出することができる。従って、自動車などの乗物用のシートに付設した場合には、かかる入眠予兆時のタイミングを検出したならば、シートバックを傾動させたり、警告音などを発したりする何らかの警告装置を動作させる構成とすれば、運転者の意識を覚醒状態に復帰させることが可能となる。
また、指尖容積脈波や耳朶脈波を基に測定されるパワー値の傾き、最大リアプノフ指数の傾きの変化によって入眠予兆時を検出する脈波用心身状態判定手段と、上記した呼吸用心身状態判定手段とを併用することにより、いずれかを、心身状態の判定のバックアップシステムとして利用でき、本発明に係る心身状態判定システムの信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1〜図3は、負荷体支持手段である自動車などの乗物用のシート100に、本発明の一の実施形態に係る心身状態判定システム1を付設した状態の概略構成図である。心身状態判定システム1は、呼吸変位検出センサ10によって収集される信号データを受信し、解析する演算部20を備えている。
【0009】
呼吸変位検出センサ10としては、圧力センサを用いることができる。但し、シートクッション、シートバック又はヘッドレストの少なくとも一つに取り付けて用いるため、着座時において、人に異物感を感じさせない必要があり、圧力センサとしては、例えば、フィルム状の圧電素子を用いることが好ましい。フィルム状の圧電素子としては、例えば、(株)東京センサ、製品名:PIEZO FILM LDTシリーズ、型番:LDT4−028K/Lを用いることができる。
【0010】
また、呼吸変位検出センサ10は、シートクッションに取り付ける場合、座骨結節下付近に1枚のみ配設する構成であってもよいが、例えば、長時間の着座により臀部を前方にずらした姿勢(仙骨姿勢)をとったりすることによりセンサの検知範囲から外れる可能性もあるので、座骨結節下付近に配置するセンサのほかに、その前や後等にずれた位置に、さらに1枚若しくは複数枚のセンサを配置することも可能である。なお、自動車等のシート100により呼吸による体動変化を検出する場合、上記のような圧力センサを用いれば、人が特別な測定装置を装着することなく着座するだけで採取できるため好ましい。
【0011】
ここで、シート100の構造は限定されるものではないが、シートクッション120やシートバック140の各クッション構造が、人の呼吸によって生じる筋肉の圧力変動を呼吸変位検出センサ10に効果的に伝達できると共に、フロア振動の除振機能の高い性能を備えたものであることが好ましい。図1〜図3は、かかる性能を備えた好ましいシート100の一例を示すものである。
【0012】
すなわち、このシート100のシートクッション120は、クッションフレーム121の後部にトーションバー122を備え、該トーションバー122によって後倒方向に付勢されるアーム123に後部支持フレーム124を支持し、前部支持フレーム125と該後部支持フレーム124との間に張設されるベースクッション材126を備えている。ベースクッション材126の上部には、図2において想像線で示したように、クッションフレーム121に低い張力で張られる表層クッション材127が設けられる。なお、ベースクッション材126及び表層クッション材127は、それぞれ1枚のクッション材で形成することもできるし、必要に応じて複数枚のクッション材を積層して形成することもできる。
【0013】
呼吸変位検出センサ10は、ベースクッション材126と表層クッション材127との間に設けられる。ベースクッション材126は、トーションバー122の弾性力によって張力が付与された構造となっているため、フロア振動を除振する。これにより、表層クッション材127への振動伝達が減殺される。一方、表層クッション材127は、クッションフレーム121に低い張力で張られているため、着座時において人の筋肉(特に、臀部筋肉)の圧迫が小さく、血管の拡張・収縮運動、呼吸あるいは体動などによる筋肉運動を妨げない。これにより、呼吸変位検出センサ10によって収集される信号データへの外部振動ノイズの混入が小さくなり、より正確に呼吸に起因する圧力変動信号を収集することが可能となる。
【0014】
表層クッション材127は、二次元のネット材、薄型のウレタン材などから形成することもできるが、臀部筋肉等への圧迫をより小さくするためには、表層クッション材127をクッションフレーム121に張設した際のバネ特性が、臀部筋肉等のバネ特性にできるだけ近似した構成であることが好ましい。このような特性を有する表層クッション材127としては、本出願人が、例えば、特開2002−336076公報に開示した反力の小さな立体編物等を用いることが好ましい。立体編物は、例えば、ダブルラッセル編機等を用いて形成され、所定間隔をおいて位置する一対のグランド編地間に連結糸を往復させて編成される。なお、ベースクッション材126も、表層クッション材127と同様に、二次元のネット材や立体編物等を用いることができる。
【0015】
なお、バネ定数ゼロの範囲を有する除振機構としては、本実施形態のようなトーションバー122とベースクッション材126との組み合わせから作ったものに限らず、本出願人が提案している特開2003−139192号公報や特開2002−206594号公報に開示されているように、永久磁石の反発力や吸引力と金属バネ等の弾性部材とを組み合わせて構成され、負荷質量の平衡点においてバネ定数が略ゼロとなる領域を有する除振機構を用いたシートサスペンション等から構成することもできる。
【0016】
また、上記のように、ベースクッション材126は、後部支持フレーム124と前部支持フレーム125との間に張設され、表層クッション材127は、ベースクッション材126を覆うようにクッションフレーム121に張設される構造であるため、除荷時における復元力を補う構造を設けることが好ましい。図1〜図3では、かかる構造として、ベースクッション材126の下側であって略中央部から前端寄りに金属板や合成樹脂等からなる硬質の補助板材128を配置し、これをサイドフレーム121aに一端を支持させたコイルスプリング129及びワイヤ130を介して弾性的に支持すると共に、補助板材128の上面にウレタン材や立体編物などの緩衝材131を積層した部材を設けている。また、緩衝材131とベースクッション材126との間に、幅方向にゴム等からなる弾性帯状部材132を配置し、これをサイドフレーム121aに一端を支持させたコイルスプリング133により支持している。さらに、ベースクッション材126のうち、後部支持フレーム124の両側部付近に位置する部位にコイルスプリング134の一端を掛け、該コイルスプリング134の他端を、後方斜め外側に広がるような方向に位置する補助フレーム材135に係合している。後方に配置したコイルスプリング134により、ベースクッション材126に前後方向の張力が生じると共に、この張力方向に交差する張力が、帯状弾性部材132等によって生じることにより、復元力が補助される。また、補助板材128をベースクッション材126の前方寄りに配置しているため、臀部付近のホールド性、安定感が高まり、姿勢支持機能が向上する機能も有する。
【0017】
シートバック140は、ベースクッション材141と、該ベースクッション材141を被覆するようにバックフレーム142に張設される表層クッション材(図示せず)とを備えて構成される。ベースクッション材141や表層クッション材は、上記したシートクッション120に用いたものと同様に、立体編物等を用いて構成される。なお、ベースクッション材141は、上端がバックフレーム142の上部にコイルスプリング144により支持され、下端がクッションフレーム121にコイルスプリング145により支持されて、所定の張力が付与され、除荷時の復元性が確保される構成となっている。
【0018】
演算部20は、上記した呼吸変位検出センサ10と無線又は信号ケーブルを介して接続され、閾値演算手段、時系列変動演算手段、呼吸用心身状態判定手段とを備える。図4のフローチャートに示したように、呼吸変位検出センサ10により得られた測定データ(信号データ)は、まず、閾値演算手段において、周波数解析された後(S100)、その最大振幅となっているピーク周波数を閾値として決定する。
【0019】
時系列変動演算手段は、バンドパスフィルタと、呼吸周波数時系列データ演算手段とを備えて構成される。バンドパスフィルタは、測定データから、閾値演算手段により得られたピーク周波数を含む所定の周波数帯域を抜き出す(S101)。次に、時系列変動演算手段に設定された極大値算出手段により、バンドパスフィルタにより抜き出されたデータの波形を用い、該波形の極大値を検出する(S102)。次に、呼吸周波数時系列データ演算手段により、所定時間範囲における呼吸周波数の平均値を求める(S103)。得られた平均値を所定のスライドラップ率でスライド計算し(S104)、測定終了時間に到達したならば、呼吸周波数の時系列変動を表示する(S105)。
【0020】
ここで、呼吸周波数の平均値は、スライド計算で用いる時間幅(例えば、180秒)中に存在する極大値の生じた各時間間隔(差)を平均し、1/(各時間間隔の平均値)から求めたものである。スライド計算は、T秒(s)間における呼吸周波数の平均値を、スライドラップ率90%で求める場合には、
スライド計算(1):T/10(s)〜T+T/10(s)間、
スライド計算(2):2×T/10(s)〜T+2×T/10(s)間、
スライド計算(n):n×T/10(s)〜T+n×T/10(s)間
というように行い、それぞれ呼吸周波数の平均値を求めていく。
【0021】
そして、例えば、最初に得られた呼吸周波数の平均値を、T(s)時点にプロットし、次のスライド計算で得られた呼吸周波数の平均値を、T+T/10(s)時点にプロットし、n回目のスライド計算で得られた呼吸周波数の平均値を、T+n×T/10(s)時点にプロットし、呼吸周波数の時系列データを得る。なお、種々実験を繰り返したところ、スライド計算を行う際の時間幅(T秒間)は180秒間が最適であり、スライドラップ率は90%が最適であった。
【0022】
一方、本実施形態の時系列変動演算手段は、さらに、呼吸による体動の大きさの時系列変動を求める体動大きさ時系列データ演算手段を備えている。図4のフローチャートに示したように、体動大きさ時系列データ演算手段では、S102により検出された極大値から、スライド計算を行う時間幅中に存在する極大値の平均値を求め(S106)、これを上記と同様に所定のスライドラップ率でスライド計算し(S104)、測定終了時間に到達したならば、呼吸による体動の大きさの時系列変動として表示する(S105)。この体動大きさの時系列データと、上記呼吸周波数の時系列データとを比較表示することによって、後述のように、入眠予兆時を判定することができる。
【0023】
呼吸用心身状態判定手段では、呼吸周波数時系列データ演算手段により得られた呼吸周波数時系列データを、閾値演算手段により求めた閾値と比較し、閾値を下回る場合に、睡眠状態と判定する(図4のS107)。また、呼吸周波数時系列データ演算手段により得られた呼吸周波数時系列データと、体動大きさ時系列データ演算手段により得られた呼吸による体動大きさ時系列データとを比較し、2つの時系列データが逆位相状態となっているタイミングを入眠予兆時と判定する(図4のS107)。
【0024】
(試験例)
被験者A及びBの2人について図1〜図3に示したシートに着座させて睡眠実験を行った。また、実験中、観察者により各被験者の様子を観察した。図5(a)は、呼吸変位検出センサ10により検出された被験者Aの測定原波形を示し、図5(b)は、その周波数解析結果を示す。図6(a)は、呼吸変位検出センサ10により検出された被験者Bの測定原波形を示し、図6(b)は、その周波数解析結果を示す。被験者Aは0.28Hzの時に最大振幅(ピーク周波数)を得ていて、被験者Bは0.27Hzの時に最大振幅(ピーク周波数)を得ている。そこで、これらの値を閾値として設定する。図7(a)は、1000〜1100秒までの被験者Aの測定原波形を拡大表示したもので、図7(b)は、同時間についてバンドバスフィルタにより抜き出した波形を示したものである。図8(a)は、1000〜1100秒までの被験者Bの測定原波形を拡大表示したもので、図8(b)は、同時間についてバンドバスフィルタにより抜き出した波形を示したものである。被験者Aの場合は0.01〜0.33Hzまでを抜き出し、被験者Bの場合は0.01〜0.32Hzまでを抜き出している。
【0025】
ここで、バンドパスフィルタをかける周波数帯域としては、0.01Hzとかなり小さい周波数帯域から各被験者のピーク周波数までを抜き出している。これは、低周波領域に存在している呼吸の揺らぎ成分の情報を失われないようにするためである。
【0026】
図9及び図10は、スライド計算により得られた呼吸周波数の時系列データと体動の大きさ(呼吸の大きさ)の時系列データを併せて表示したものであり、図9は被験者Aの結果を、図10は被験者Bの結果を示す。
【0027】
被験者Aについては、呼吸周波数が閾値を下回っている1300secぐらいには睡眠状態に入っていると判定できる。これに対し、観察者は1500secぐらいの時点で睡眠状態と判定したが、観察者が睡眠と判定する2分ほど前から被験者Aは目を閉じた穏やかな呼吸状態を示していることが観察されており、実際に睡眠に至ったタイミングとしては、1300sec前後であったと推測される。また、呼吸の大きさ(体動の大きさ)と呼吸周波数を比較すると、1000sec付近には増減が大きく逆位相になっている。これは、呼吸の速さと大きさが乱れている事を示しており、入眠予兆と判定できる。
【0028】
被験者Bの場合には、呼吸周波数が閾値を下回ったのは1500secぐらいであった。これは、観察者が睡眠と判定したタイミングとほぼ一致していた。また 400sec付近に呼吸の大きさ(体動の大きさ)と呼吸周波数とが逆位相となる入眠予兆と見られる現象が存在していた。
【0029】
以上のことから、上記試験例によれば、睡眠状態か覚醒状態か否かの判定を効果的に行うことができると共に、呼吸の大きさ(体動の大きさ)を併せて判定することにより、睡眠に至る前の入眠予兆時を判定することができることがわかった。
【0030】
上記実施形態では、呼吸変位検出センサ10により検出した測定データを基に、極大値を求め、呼吸周波数を算出しているが、バンドパスフィルタをかけて得られた波形の極大値の所定時間範囲における数を呼吸回数として求め、得られた呼吸回数を所定のスライドラップ率でスライド計算して呼吸回数の時系列変動を求める呼吸回数時系列データ演算手段を備えた構成とすることもできる。この場合、閾値は、周波数解析により得られたピーク周波数に、スライド計算を行う時間幅(例えば、180秒)を乗じて得られた値を設定する。
【0031】
図11は、図1〜図3に示したシートに被験者Cを着座させ行った睡眠実験の結果を示す。図11(a)は、シートクッション(尻下)にセットした圧電センサから得られたデータを処理したものであり、図11(b)は、シートバック(背中)にセットした圧電センサから得られたデータを処理したものである。なお、本試験では、ピーク周波数は0.3Hzであった。また、バンドパスフィルタをかけた周波数帯域は0.1〜0.45Hzとし、スライド計算の時間幅は180秒、スライドラップ率は90%とした。従って、閾値は、ピーク周波数(0.3Hz)×スライド計算の時間幅(180秒)より、54回に設定した。
【0032】
図11に示したように、観察者の記録によれば、600〜1400secまでが低覚醒状態、1400〜2200secまでがもうろう状態、2200secから測定終了までが睡眠状態となった。これを、呼吸数の波形で見ると、図11(a),(b)のいずれも500sec付近を境に下降傾向を示し、閾値である呼吸数54回を下回った1700秒前後から睡眠と判定できる。これは、観察者が朦朧状態と判定してから睡眠と判定するまでの中間であり、観察結果とほぼ一致していると言える。なお、本試験では、尻下のデータよりも背中のデータの方が、判定しやすい結果となっているが、これは、この被験者の場合、背中の方が呼吸成分を検出しやすいことを示すものである。但し、尻下と背中のいずれが顕著に検出できるかは、人により異なるため、圧力変動を検出するセンサは、シートクッションとシートバックの両方に設け、それぞれにおいて判定する構成とすることがより好ましい。
【0033】
また、上記した説明では、呼吸成分のみを検出して人の心身状態を判定しているが、人の脈波を測定する脈波測定器を設けると共に、脈波測定器から得られた脈波のパワー値の傾きの時系列変動を演算するパワー値傾き演算手段と、脈波測定器から得られた脈波の最大リアプノフ指数の傾きの時系列変動を演算する最大リアプノフ指数傾き演算手段とを設け、パワー値傾き演算手段により得られたパワー値の傾きの時系列変動と、最大リアプノフ指数傾き演算手段により得られた最大リアプノフ指数の傾きの時系列変動とを比較し、2つの時系列データが逆位相状態となっているタイミングを入眠予兆時と判定とする脈波用心身状態判定手段を備えた構成とすることもできる。
【0034】
ここで、最大リアプノフ指数は、カオス指標の一つであり、人の精神的負担の状態を把握でき、パワー値は、脈波の信号データの周期のピーク値から求められ、肉体的負担の状態を把握できる。そして、これらを、上記と同様にスライド計算してそれぞれの傾きを求めると、入眠予兆信号や遷移状態信号が現れる入眠移行期おいて、パワー値の時系列変化と最大リアプノフ指数の傾きの時系列変化との間には、位相が180度逆になる関係が存在することが、本出願人が先に提案した特願2003−180294で開示されている。従って、かかる入眠移行期の判定手段を上記した呼吸成分に基づく判定手法と併用し、いずれかにより入眠移行期と判定された場合に、警告装置を動作させる構成とすると、より好ましい。この場合、例えば、呼吸成分による入眠移行期の判定をメインとし、脈波による判定をバックアップとして利用することもできる。
【0035】
脈波としては、指尖容積脈波、耳朶脈波を採取することができ、脈波測定器としては、例えば、公知の指尖容積脈波を採取する光学式指尖脈波計や耳朶脈波を採取する測定器具などを用いることができる。なお、運転者から脈波を採取するに当たっては、例えば、光学式指尖脈波計を運転用のグローブに装着し、計測結果を無線で演算部に送信する構成とすれば、運転に支障を来すことがない。
【0036】
図12は、図1〜図3に示したシートに着座させた人について、指尖容積脈波、耳朶脈波、呼吸(臀部の圧力センサを使用)のデータを上記のように処理して示した時系列データである。この結果から、入眠予兆と判定できるタイミング、入眠ポイントと判定できるタイミングが、ほぼ一致しており、これらを併用することで、より確実に入眠予兆の判定等を行うことができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかる心身状態判定システムを取り付けたシートの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、上記シートの概略構成を示す側面図である。
【図3】図3は、上記シートの概略構成を示す平面図である。
【図4】図4は、上記実施形態にかかる心身状態判定システムの測定データ処理のフローチャートである。
【図5】図5(a)は、呼吸変位検出センサにより検出された被験者Aの測定原波形を示し、図5(b)は、その周波数解析結果を示す図である。
【図6】図6(a)は、呼吸変位検出センサにより検出された被験者Bの測定原波形を示し、図6(b)は、その周波数解析結果を示す図である。
【図7】図7(a)は、1000〜1100秒までの被験者Aの測定原波形を拡大表示した図で、図7(b)は、同時間についてバンドバスフィルタにより抜き出した波形を示した図である。
【図8】図8(a)は、1000〜1100秒までの被験者Bの測定原波形を拡大表示した図で、図8(b)は、同時間についてバンドバスフィルタにより抜き出した波形を示した図である。
【図9】図9は、被験者Aの測定データに関し、スライド計算により得られた呼吸周波数の時系列データと体動の大きさ(呼吸の大きさ)の時系列データを併せて表示した図である。
【図10】図10は、被験者Bの測定データに関し、スライド計算により得られた呼吸周波数の時系列データと体動の大きさ(呼吸の大きさ)の時系列データを併せて表示した図である。
【図11】図11(a)は、シートクッション(尻下)にセットした圧電センサから得られたデータを処理して呼吸回数の時系列データを求めた図であり、図11(b)は、シートバック(背中)にセットした圧電センサから得られたデータを処理して呼吸回数の時系列データを求めた図である。
【図12】図12は、指尖容積脈波、耳朶脈波、呼吸(臀部の圧力センサを使用)のデータを処理した時系列データを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 心身状態判定システム
10 呼吸変位検出センサ
20 演算部
100 シート
120 シートクッション
122 トーションバー
126 ベースクッション材
127 表層クッション材
140 シートバック
141 ベースクッション材
【出願人】 【識別番号】594176202
【氏名又は名称】株式会社デルタツーリング
【出願日】 平成16年6月2日(2004.6.2)
【代理人】 【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆

【公開番号】 特開2005−342188(P2005−342188A)
【公開日】 平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願番号】 特願2004−165089(P2004−165089)