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【発明の名称】 超音波診断装置
【発明者】 【氏名】中村 恭大
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【要約】 【課題】高分解能のA/D変換器を必要とせずに、高感度でダイナミックレンジの広い小型で安価な超音波診断装置を提供する。

【解決手段】超音波を送受信する超音波振動子1を、パルス信号を発生する駆動回路2で駆動するとともに、超音波振動子が受信したエコー信号をアナログ低域減衰器3に入力して低域成分を減衰させ、このアナログ低域減衰器の出力信号をA/D変換器4に入力してデジタル信号に変換し、変換され出力されたデジタル信号をデジタル補正フィルタ5に入力して、アナログ低域減衰器で減衰された低域成分を増強して、超音波振動子が受信したエコー信号にほぼ等しい周波数分布を持つデジタル信号を出力するように構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波振動子と、パルス信号を発生して前記超音波振動子を駆動する駆動回路と、前記超音波振動子が受信したエコー信号の低域成分を減衰させて出力するアナログ低域減衰器と、前記アナログ低域減衰器の出力信号をA/D変換して出力するA/D変換器と、前記A/D変換器で変換され出力されたデジタル信号の前記アナログ低域減衰器で減衰された低域成分を増強して前記エコー信号にほぼ等しい周波数分布を持つデジタル信号を出力するデジタル補正フィルタとを、
備えた超音波診断装置。
【請求項2】
前記アナログ低域減衰器は、前記超音波振動子が受信した前記エコー信号を増幅する前置増幅器と、前記前置増幅器で増幅された前記エコー信号を入力して低域成分を減衰させて出力する低域減衰フィルタと、前記低域減衰フィルタから出力されたエコー信号を入力して伝播時間に応じて前記エコー信号の減衰分を補正して出力する可変利得増幅器とを備えた請求項1に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波パルスを生体に向けて発信し、その生体からの反射波の受信信号を合成して超音波断層像を得る超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置として、駆動回路から超音波振動子に駆動パルスを与え、超音波振動子から目的部位に超音波を送信し、目的部位からのエコー信号を超音波振動子で受信し、増幅、加算、ログ圧縮などの処理を施して画像データを得て、この画像データをモニタに送出し、このモニタに所望の診断像を表示するものが開示されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
また、エコー信号を処理するに当たり、超音波振動子で受信したアナログ受信信号をデジタル信号に変換し、このデジタル信号と所定周波数との参照信号とを乗算して信号波形を変換する処理を行う超音波信号処理装置(例えば、下記の特許文献2)や、アナログ受信信号をデジタル信号に変換し、得られたデジタルデータを合成して超音波断層像を得る超音波診断装置(例えば、下記の特許文献3参照)が開示されている。
【0004】
図6はアナログ受信信号をデジタル信号に変換する上記の超音波信号処理装置や超音波診断装置における、超音波の送受信部及び信号変換部の概略構成を示したブロック図である。この送受信部及び信号変換部は超音波を送信し、エコー信号を受信する超音波振動子1と、トリガ信号に従って超音波振動子1に駆動パルスを送信する駆動回路2と、超音波振動子1が受信して得られたエコー信号をデジタル信号に変換して出力するA/D変換器4とを備えている。
【0005】
この場合、超音波振動子1が受信して得られるエコー信号は、浅部では大振幅、深部では微弱であるため、A/D変換器4の分解能(ビット数)が不足する(ビット数が少ない)ことがある。そこで、実際の超音波診断装置においては、超音波振動子1とA/D変換器4との間に、図示を省略した前置増幅器と可変利得増幅器(VCA)とを接続し、エコー信号の振幅を制御してダイナミックレンジを抑えてA/D変換器4に入力する構成になっている。
【特許文献1】特開平6−154210号公報(段落0011、図1)
【特許文献2】特開平6−313764号公報(段落0008、図1)
【特許文献3】特開平7−171152号公報(段落0023、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した超音波信号処理装置や超音波診断装置においては、駆動回路2が大振幅パルスを送信して超音波振動子1を駆動した直後は、超音波振動子1を構成する圧電素子やケーブルの影響によって低い周波数成分を持つリンギングが発生する。このため、図7に示すように、送信パルスでの駆動直後に得られる浅部のエコー信号には大振幅パルスのリンギングが重畳してしまうため、浅部のエコー信号を欠落することなく矢印で示した入力上下限の範囲でA/D変換器4に入力するには、浅部にて利得を下げるためにビット数の多いA/D変換器4を使用する必要がある。しかし、現実に安価に実現できるA/D変換器の分解能は12ビット程度で、これでは60dB程度のダイナミックレンジしか扱えず、可変利得増幅器も利得可変幅は40〜60dB程度のため、例えば、120dBのリンギングが重畳したエコー信号を扱うにはビット数が不足する。上述した超音波信号処理装置や超音波診断装置はこの課題を改良するものであるが、構成が複雑となり大型で高価なものになるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来装置の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、高分解能のA/D変換器を必要とせずに、高感度でダイナミックレンジの広い小型で安価な超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、超音波を送受信する超音波振動子を、パルス信号を発生する駆動回路で駆動するとともに、超音波振動子が受信したエコー信号をアナログ低域減衰器に入力して低域成分を減衰させ、このアナログ低域減衰器の出力信号をA/D変換器に入力してデジタル信号に変換し、変換され出力されたデジタル信号をデジタル補正フィルタに入力して、アナログ低域減衰器で減衰された低域成分を増強して超音波振動子が受信したエコー信号にほぼ等しい周波数分布を持つデジタル信号を出力するように構成する。
この構成により、高分解能のA/D変換器を必要とせずに、高感度でダイナミックレンジの広い小型で安価な超音波診断装置を提供することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、アナログ低域減衰器を、超音波振動子が受信したエコー信号を前置増幅器で増幅してから低域減衰フィルタにより低域成分を減衰させ、可変利得増幅器によってエコー信号の減衰分を補正するように構成する。
この構成により、エコー信号をA/D変換するに当たり、低域のリンギング成分を取り除いて信号のダイナミックレンジを減らしてA/D変換器に入力することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高分解能のA/D変換器を必要とせずに、高感度でダイナミックレンジの広い小型で安価な超音波診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図面に示す好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る超音波診断装置の実施の形態における超音波の送受信部及び信号変換部の概略構成を示すブロック図である。この送受信部及び信号変換部は、超音波を送信し、エコー信号を受信する超音波振動子1と、トリガ信号に従って超音波振動子1に駆動パルスを送信する駆動回路2と、超音波振動子1で受信したエコー信号が入力され、低域成分を減衰させて出力するアナログ低域減衰器3と、このアナログ低域減衰器3を通過したエコー信号が入力され、A/D変換して出力するA/D変換器4と、アナログ低域減衰器3とは逆の周波数特性、すなわち、低域成分を増強させて、エコー信号の低域から高域までほぼ平坦な周波数スペクトル分布特性に復元して出力するデジタル補正フィルタ5とを備えている。
【0012】
図2はアナログ低域減衰器3の詳細な構成を示すブロック図であり、超音波振動子1が受信したエコー信号を増幅する前置増幅器31と、この前置増幅器31で増幅されたエコー信号が入力されて低域成分を減衰させて出力する低域減衰フィルタ32と、この低域減衰フィルタ32から出力されたエコー信号を入力して伝播時間に応じてエコー信号の減衰分を補正して出力する可変利得増幅器33とを備えている。
【0013】
上記のように構成された本発明の実施の形態の動作について、図3から図5を参照して以下に説明する。
駆動回路2によって超音波振動子1を大振幅のパルスで駆動すると、従来装置の説明に用いた図7のようにエコー信号にリンギングが重畳した信号がアナログ低域減衰器3に加えられる。アナログ低域減衰器3は低域減衰フィルタ32を備えているため、図7に示した低い周波数成分を持つリンギングが取り除かれ、図3に示したように、A/D変換器入力上下限の範囲に抑えられたエコー信号がA/D変換器4に入力される。そして、A/D変換器4によってデジタル信号に変換され、デジタル補正フィルタ5に加えられる。デジタル補正フィルタ5は低域減衰フィルタ32で減衰された低域成分を増強させて出力する。これによって、アナログ低域減衰器3に入力される信号波形と周波数分布が同じであるデジタルのエコー信号波形が得られる。
【0014】
この場合、アナログ低域減衰器3においては、超音波振動子1が受信したエコー信号を前置増幅器31で増幅してから低域減衰フィルタ32により低域成分を減衰させ、可変利得増幅器33によって、伝播時間に応じてエコー信号の減衰分を補正する。
【0015】
図4(a)は低域減衰フィルタ32の周波数特性、すなわち、周波数と利得との関係を示す線図であり、曲線Pに示したように、低域においてほぼ一定の低利得を持ち、中間の周波数帯で所定の変化率で利得が増大し、高域においてほぼ一定の高利得を持つものである。図4(b)はデジタル補正フィルタ5の周波数特性、すなわち、周波数と利得との関係を示す線図であり、曲線Qに示したように、低域においてほぼ一定の高利得を持ち、中間の周波数帯で所定の変化率で利得が減少し、高域においてほぼ一定の低利得を持つように設定されており、低域減衰フィルタ32に対してデジタル補正フィルタ5は逆フィルタになっている。
【0016】
図5(a)は超音波振動子1で受信して得られるエコー信号の周波数分布を例示したもので、曲線Rのように分布していたとする。このエコー信号がアナログ低域減衰器3を通過すると、図5(b)に示したように、低域成分が減少して曲線Sのような分布に変化する。その後、デジタル補正フィルタ5で低域成分を増強することにより、図5(c)に示したように、低域成分が補償されて曲線Tのように元の周波数分布に復元される。したがって、図5(d)に示した信号波形がアナログ低域減衰器3によって図5(e)に示したように変形を受けるが、デジタル補正フィルタ5から出力されたときは図5(f)に示したように元の信号波形に復元される。
【0017】
実際の超音波診断装置では、前述したように、超音波振動子1とA/D変換器4との間に前置増幅器及び可変利得増幅器を備えるが、本実施の形態ではアナログ低域減衰器3を、前置増幅器31と低域減衰フィルタ32と可変利得増幅器33とを順次に接続した構成にしたことによって、良好なSN比を確保することができる。また、低域成分を減衰させた後の信号はダイナミックレンジが低く抑えられているため、低域成分を減衰させない場合の信号に比べて可変利得増幅器33の利得可変幅も小さくてすむという利点も得られる。
【0018】
このように、本実施の形態によれば、エコー信号と大振幅パルスとが重畳した信号を、アナログ低域減衰器3を通過させることにより低域のリンギング成分を取り除いて、信号のダイナミックレンジを減らしてA/D変換器4に入力することができる。
【0019】
また、デジタル補正フィルタ5でA/D変換器4を通過した後のデジタルデータのエコー信号の低域成分を増強するように構成したことにより、アナログ低域減衰器3の影響を相殺してエコー信号の元々の波形に復元することができるとともに、浅部のエコー信号情報を飽和することなくA/D変換器4に取り込むことができるため、分解能の低いA/D変換器と可変利得増幅器とを使用して浅部の画像情報出力に優れた小型で安価な超音波診断装置が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は上記のように構成されているので、本発明の超音波診断装置は、被検体の超音波断層像を得る技術分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施の形態における超音波の送受信部及び信号変換部の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態を構成するアナログ低域減衰器の詳細な構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態の動作を説明するために、A/D変換器に加えられるエコー信号波形を示した図
【図4】本発明の実施の形態の動作を説明するための図 (a)低域減衰フィルタの周波数特性を示す図 (b)デジタル補正フィルタの周波数特性を示す図
【図5】本発明の実施の形態の動作を説明するために、アナログ低域減衰器の入力、出力及びデジタル補正フィルタの出力それぞれの周波数分布及び信号波形を示した図 (a)超音波振動子で受信して得られるエコー信号の周波数分布の例を示す図 (b)アナログ低域減衰器を通過したエコー信号の周波数分布の例を示す図 (c)デジタル補正フィルタで低域成分が増強されたエコー信号の周波数分布の例を示す図 (d)超音波振動子で受信して得られるエコー信号の信号波形 (e)アナログ低域減衰器を通過したエコー信号の信号波形 (f)デジタル補正フィルタで低域成分が増強されたエコー信号の信号波形
【図6】従来の超音波信号処理装置や超音波診断装置における、超音波の送受信部及び信号変換部の概略構成を示したブロック図
【図7】従来の超音波信号処理装置や超音波診断装置の動作を説明するために、A/D変換器に加えられるエコー信号波形を示した図
【符号の説明】
【0022】
1 超音波振動子
2 駆動回路
3 アナログ低域減衰器
4 A/D変換器
5 デジタル補正フィルタ
31 前置増幅器
32 低域減衰フィルタ
33 可変利得増幅器
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
【出願日】 平成16年6月2日(2004.6.2)
【代理人】 【識別番号】100093067
【弁理士】
【氏名又は名称】二瓶 正敬

【公開番号】 特開2005−342180(P2005−342180A)
【公開日】 平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願番号】 特願2004−164862(P2004−164862)