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【発明の名称】 ポリ塩化ビニル製手袋
【発明者】 【氏名】熊倉 伸一
【住所又は居所】茨城県龍ヶ崎市板橋町字西山1番地 オカモト株式会社茨城工場内

【要約】 【課題】耐油性に優れ、油性物質などの取り扱い作業用として有用な新規なポリ塩化ビニル製手袋を提供する。

【解決手段】ポリ塩化ビニルペーストレジン(重合度1500);100重量部に対し、(メタ)アクリル系モノマーを主体として重合した分子量1600の(メタ)アクリル系可塑剤;100重量部、Ca-Zn系安定剤;3重量部、増粘剤;1重量部、顔料;微量を加えた配合のものを用い、ポリ塩化ビニル製の手袋を成形した。該手袋は、灯油、ガソリン等の油性物質などと接触した際の可塑剤の移行が少なく、耐油性に優れた効果を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル100重量部に対し、可塑剤として、(メタ)アクリル系モノマーを主体として重合した分子量500〜10000の(メタ)アクリル系可塑剤を50〜150重量部含有したことを特徴とするポリ塩化ビニル製手袋。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系可塑剤の分子量が1000〜3000であることを特徴とする請求項1記載のポリ塩化ビニル製手袋。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系モノマーが、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートなどのアクリル系モノマー、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなどのメタクリル系モノマーのうちの何れかであることを特徴とする請求項1又は2記載のポリ塩化ビニル製手袋。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系可塑剤が、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーと、それ以外の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合させた分子量500〜10000の可塑剤であり、該可塑剤をポリ塩化ビニルとの混合後に架橋させてなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のポリ塩化ビニル製手袋。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系可塑剤が、活性水素基含有(メタ)アクリルモノマーと、それ以外の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合させた分子量500〜10000の可塑剤であり、該可塑剤をポリ塩化ビニルとの混合後に架橋させてなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のポリ塩化ビニル製手袋。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル製手袋に関し、詳しくは、灯油、ガソリン等の油性物質などと接触した際の耐油性に優れたポリ塩化ビニル製手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、可塑剤としてフタル酸エステルやアジピン酸エステル、低重合度ポリエステル、アルキルスルフォン化フェニルエステルを含有したポリ塩化ビニル製手袋が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
しかし、これら可塑剤を含有してなるポリ塩化ビニル製手袋は、油性物質などと接触した際に可塑剤が油性物質に移行してしまうことがあり、手袋が硬化することによりごわごわした、使用感の悪い手袋になり易いという問題点があった。
【0003】
さらに、今日では、フタル酸エステルは食品衛生法で使用制限がかかっており、食品加工用には非フタル酸エステルを含有した手袋を用いなければならず、一つの製造ラインでフタル酸エステル含有手袋と非フタル酸エステル含有手袋を生産しようとした場合、清掃に手間がかかり生産コストが高騰する虞れがある。
【0004】
耐油性に優れる可塑剤として、耐油性ポリエステル可塑剤が知られているが、可塑化効率が低いためフタル酸エステルと併用せざるを得ず(例えば特許文献3参照)、充分な耐油性を得ることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−12823号公報
【特許文献2】特願2002−186124号
【特許文献3】特開平6−81203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、油性物質などと接触した際の可塑剤の移行が少なく、耐油性に優れ、且つ非フタル酸系可塑剤として使用できる新規なポリ塩化ビニル製手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明に係るポリ塩化ビニル製手袋は、請求項1記載のように、ポリ塩化ビニル100重量部に対し、可塑剤として、(メタ)アクリル系モノマーを主体として重合した分子量500〜10000の(メタ)アクリル系可塑剤を50〜150重量部含有したことを特徴とする。
【0008】
このような構成とした場合、油性物質などと接触した際の可塑剤の移行が少なく、手袋が硬化する虞れを低減することができる。
可塑剤の含有量が50重量部未満では、手袋としての柔軟性に乏しく硬い風合いの製品に仕上がり、手に装着して作業する際、手が疲れやすくなるなどの不具合が生じるため好ましくない。
また、可塑剤の含有量が150重量部を超えると、手袋が硬くなりすぎ、物理的耐久性が低下して、破損し易くなると共に、可塑剤が手袋表面にしみ出てブリード現象が起こり粘着性が強くなるなどの不具合が生じるため好ましくない。
【0009】
分子量が500未満の(メタ)アクリル系可塑剤を用いた場合、油性物質などと接触した際に可塑剤が移行し、手袋が硬化するため好ましくなく、分子量が1000以上である場合、手袋の硬化がより確実に防止される。
分子量が10000を超える(メタ)アクリル系可塑剤を用いた場合、ポリ塩化ビニルに対する混合が困難になるなどの不具合が生じるため好ましくなく、分子量が3000以下である場合、このような問題がより確実に解消される。
すなわち、本発明に用いる(メタ)アクリル系可塑剤のより好ましい分子量の範囲は、請求項2記載のように、1000〜3000である。
【0010】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、請求項3記載のように、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートなどのアクリル系モノマーや、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなどのメタクリル系モノマーをあげることができる。
【0011】
ところで、前記したように、耐油性は、可塑剤の分子量と相関関係にあり、同一の性質を持つ物質では分子量が大きいほど耐油性が良いが、ポリ塩化ビニルに対する可塑剤混合が困難になる等の製造上の問題から、請求項1,2では可塑剤の分子量が前記範囲に限定される。
【0012】
そこで、本願発明者はさらに研究を続け、可塑剤を架橋性とし、ポリ塩化ビニルに対する可塑剤混合時(配合時)の分子量は請求項1若しくは2で規定した範囲内としながら、その後の架橋により分子量を大きくすることで、耐油性をさらに向上し得ることを知見した。
このようにした場合、配合時にはより低分子量の可塑剤として、ポリ塩化ビニルに対する混合と、ポリ塩化ビニルペーストによる手袋の浸漬成形(手袋の成膜)を容易に行うことができ、成膜後の加熱ゲル化時に架橋を行うことで、分子量が大きく耐油性により優れたポリ塩化ビニル製手袋を提供することが可能になる。
ここで、架橋とは手袋成膜後の架橋を意味し、本発明では手袋成膜後の加熱ゲル化時に架橋を行うものとする。本発明において可塑剤の分子量は、ポリ塩化ビニルに対する可塑剤混合時(配合時)の分子量であり、前記架橋をした後の可塑剤分子量は、前記配合時より大きくなる。
【0013】
ポリ塩化ビニルに対する可塑剤混合時(配合時)の分子量は請求項1,2で規定した範囲内としながら、その後の架橋により分子量を大きくするには、請求項4記載のように、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーと、それ以外の(メタ)アクリル系モノマーとを共重合させた可塑剤を用いることが好ましい。
エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどをあげることができる。それ以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、請求項3記載のアクリル系モノマーやメタクリル系モノマーなどをあげることができる。
このような可塑剤を用いた場合、反応性架橋剤などを別途用いることなく、該可塑剤の自己反応により、手袋成膜後の架橋を行わせることができる。
尚、エポキシ官能基のみでも自己反応による架橋は可能であるが、反応性に劣る場合があるので、活性水素基を持つ(メタ)アクリルモノマーをさらに共重合させることが好ましい。
【0014】
また、請求項5記載のように、活性水素基含有(メタ)モノマーとを共重合させた可塑剤を用いることが好ましい。
活性水素基を持つモノマーとしては、カルボキシル基をもつものとして例えばアクリル酸をあげることができ、また、水酸基をもつものとして、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどの2、3または4−ヒドロキシ基を有するヒドロキシ官能性アクリルモノマーをあげることができる。
それ以外の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、請求項3記載のアクリル系モノマーやメタクリル系モノマーなどをあげることができる。
このような可塑剤を用いた場合、エポキシ官能基や、ジイソシアネート、カルボジアミドなどの活性水素基反応性架橋剤を用いて、手袋成膜後の架橋を行わせることができる。
【0015】
また、活性水素基含有(メタ)アクリルモノマーと、それ以外の(メタ)アクリル系モノマーと、イソシアネート基を有するビニル基重合性モノマーとを共重合させた可塑剤を用いた場合、該可塑剤の自己反応により、手袋成膜後の架橋を行わせることができる。
【0016】
尚、前述したカルボキシル基、イソシアネート基、ジイソシアネートはブロック化して用いても良く、ブロック化することで、手袋製造中の架橋による粘度上昇が抑えられ、安定したポリ塩化ビニル製手袋の製造が可能になる。
具体的には、カルボキシル基はビニルエーテルでブロック化することが可能であり、イソシアネート基はメチルエチルオキシム、マロン酸ジアルキルなどでブロック化することが可能である。
【0017】
尚、本発明に係るポリ塩化ビニル製手袋は、上記可塑剤、架橋剤以外に、安定剤、増粘剤、希釈剤、顔料などの、この種手袋において含有される各種の添加剤が、必要に応じて所望量含有されることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るポリ塩化ビニル製手袋は以上説明したように、ポリ塩化ビニル100重量部に対し、可塑剤として、(メタ)アクリル系モノマーを主体として重合した分子量500〜10000の(メタ)アクリル系可塑剤を50〜150重量部含有したので、油性物質などと接触した際の可塑剤の移行が少なく、手袋が硬化する虞れを低減することができる。
よって、耐油性に優れるため、灯油やガソリン等の油性物質の取り扱い用として有効に供することができ、また、例えば食品加工や精密機器加工などの各種作業用としても供することが期待でき、幅広い用途での使用が可能な新規なポリ塩化ビニル製手袋を提供することができた。
また、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーや活性水素基含有(メタ)アクリルモノマーを、前記(メタ)アクリル系モノマーと共重合させ、ポリ塩化ビニルとの混合後に架橋させた場合、耐油性がさらに向上し、前記効果をより実効あるものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態例について説明する。
【0020】
(実施例1)
ディッピング装置を用い、手袋成形型を軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液に浸漬して引き上げ、その手袋成形型の表面に、厚みが所定の範囲、本例では0.3mm厚になるよう調整して、手袋部と袖被覆部が一体の手袋形状に成膜し、これを加熱ゲル化してポリ塩化ビニル製手袋を作製した。
【0021】
軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液としては、ポリ塩化ビニルペーストレジン(重合度1500);100重量部に対し、(メタ)アクリル系モノマーを主体として重合した分子量1600の(メタ)アクリル系可塑剤(東亞合成社製のARUFON XP−1025);100重量部、Ca-Zn系安定剤;3重量部、増粘剤;1重量部、顔料;微量、を加えた配合のものを用いた。
【0022】
このようにして作製したポリ塩化ビニル製手袋について、日本グローブ工業会標準規格「手袋の耐油試験方法(JRV−009−1996)」に準じて耐油性試験を行った。詳しくは、JIS K 6258に準じて浸漬試験を行い、表面積変化率を算出して、油性物質と接触した際の耐油性を評価した。結果を表2中に示す。
浸漬試験に用いる試料は、前記ポリ塩化ビニル製手袋の平滑な面から切り取った50mm×50mm×厚さ0.3mmの試験片を用い、この試験片を、JIS K 2203に規定する1号試験液である灯油中に、浸漬温度23℃、浸漬時間22時間の条件で浸漬し、浸漬後の試験片の表面積変化率(収縮率)を、次式により算出した。
(式1)
表面積変化率(%)=(1−浸漬後の試験片の2本の対角線の長さ(mm)の積/浸漬前の試験片の2本の対角線の長さ(mm)の積)×100
【0023】
(実施例2、3)
(メタ)アクリル系モノマーを主体として重合した分子量1000、3000の(メタ)アクリル系可塑剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして試験片を作製し、前記同様の試験を行って耐油性を評価した。結果を表2中に示す。
【0024】
(実施例4〜6)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)を、4(2EHA):4(BA):2(EA)の配合割合になるよう重合した(メタ)アクリル系可塑剤を用いると共に、分子量を表中記載としたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、前記同様の試験を行って耐油性を評価した。結果を表2中に示す。
【0025】
(実施例7)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)、グリシジルメタクリレートを、4(2EHA):4(BA):1(AA):1(グリシジルメタクリレート)の配合割合になるよう重合し、手袋成膜後に架橋させた(メタ)アクリル系可塑剤を用いると共に、該可塑剤の配合時(ポリ塩化ビニルペーストレジンに対する混合時)の分子量を表中記載としたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、前記同様の試験を行って耐油性を評価した。結果を表2中に示す。
【0026】
(実施例8)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)を4(2EHA):4(BA):2(AA)の配合割合になるよう重合し、さらにジイソシアネート(MDI):2重量部を添加し、手袋成膜後に架橋させた(メタ)アクリル系可塑剤を用いると共に、該可塑剤の配合時の分子量を表中記載としたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、前記同様の試験を行って耐油性を評価した。結果を表2中に示す。
【0027】
(比較例1)
フタル酸ジ2−エチルヘキシルを可塑剤として用いること以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、前記同様の試験を行って耐油性を評価した。結果を表2中に示す。
【0028】
耐油性試験の評価は、日本グローブ工業会標準規格「耐油性ビニル手袋(JRV−011−1997)」に準じて性能評価を行った。すなわち、前記式1に基づき算出した表面積変化率(収縮率)が15%以下であれば「耐油性有り」と評価し、表面積変化率が15%を超える場合は「耐油性無し」と評価した。
また、「耐油性有り」の中でも、表面積変化率が10%以下であれば、「耐油性極めて高い」との評価を付した。
【0029】
【表1】


【0030】
【表2】


【0031】
以上の結果から、本発明に係るポリ塩化ビニル製手袋の優位性を確認することができた。尚、実施例7、8において、(メタ)アクリル系可塑剤の配合時の分子量が1000、3000である場合も、それら実施例と同様の傾向になることは確認済みである。
【0032】
次に、前記ポリ塩化ビニル製手袋を図1に示す形状とした実施形態について説明する。
図1に示すポリ塩化ビニル製手袋Aは、手を収納し得るよう形成された手袋部1の手首部位2に袖被覆部3を延設した手袋本体aの手首部位2の近傍に、前記袖被覆部3のズリ落ちを防止する厚肉部bを一体に形成した薄手の軟質ポリ塩化ビニル製手袋であって、厨房,家事などにおける水仕事や食品加工、医療行為や医療器具の取り扱い、精密機器の組立てや検査などの各種作業を行なう際に使用することができる。
【0033】
手袋本体aは、手袋成形型を軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液に浸漬して引き上げ、その手袋成形型の表面に、その厚み(t1)が例えば0.15mm〜0.35mm程度の範囲になるよう調整して、手袋部1と袖被覆部3を一体に成膜することで成形されている。
【0034】
厚肉部bは、上記手袋本体aの手首部位2の近傍箇所に、後述する方法により、手袋本体aの手首回りに沿うよう、その全長にわたって帯状に一体成形されて、袖被覆部3の指先方向へのズリ落ちを防止している。
すなわち、厚肉部bは、上記手首部位2を基準として少なくとも、指先側の端部bが袖口4方向に対し+20mmに位置し、袖口側の端部bが袖口4方向に対し+40mmに位置する全範囲(図2中に示す範囲L)に一体成形されることで、厚肉部bと手首部位2若しくは厚肉部bと袖口4との間での手袋本体aの折れ、すなわち、厚肉部b以外の手袋本体aの薄肉部分の折れを防いで、袖被覆部3のズリ落ちを防止している。
【0035】
また厚肉部bは、前述したように、手首部位2を基準として、指先側の端部bが指先5方向に対し+10mmに位置し、袖口側の端部bが袖口4方向に対し+90mmに位置する範囲(図2中に示す範囲L)内に形成すると良く、さらに、指先側の端部bが袖口4方向に対し+10mmに位置し、袖口側の端部bが袖口4方向に対し+70mmの範囲(図2中に示す範囲L)内とすることがより好ましい。また厚肉部bの形成幅(図1中に示すh)は、20mmを超えて70mm未満とすると良く、さらに、厚肉部bの厚み(図1中に示すt2)は、0.15mm以上、0.55mm未満であることが好ましい。
【0036】
尚、ポリ塩化ビニル製手袋Aのサイズは必ずしも限定されるものではないが、おおよそ、指先5から袖口4までの長さAが25〜35cm程度であり、手首部位2から袖口4に至る袖被覆部3の長さAは120〜140mm程度である。
また、袖被覆部3における袖口4から指先5に向けて20mmの範囲には、脱着性が劣るなどの理由から、厚肉部bを形成しないほうが良い。
【0037】
この例のポリ塩化ビニル製手袋Aの製造方法を簡単に説明すれば、まず、ディッピング装置を用い、手袋成形型を軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液に浸漬して引き上げ、その手袋成形型の表面に、その厚み(t1)が0.15mm〜0.35mmの範囲になるよう調整して、手袋部1と袖被覆部3を一体に成膜する。
【0038】
次いで、上記手袋成形型をほぼ水平に支持すると共に、該手袋成形型をその長さ方向の中心軸を中心に回転させながら、前記と同一配合の軟質ポリ塩化ビニル樹脂溶液を手首部位2の近傍に滴下して、厚肉部bを、手袋本体aの手首回りに沿うようその全長にわたって帯状に形成した。その後、所定温度で加熱することで手袋本体aと厚肉部bをゲル化させた後、手袋成形型から脱型して、手首部位2の近傍に厚肉部bを有するポリ塩化ビニル製手袋Aを得た。
【0039】
このようにして得られたポリ塩化ビニル製手袋Aは、前記したように、手袋部1と、該手袋部の手首部位2から延設される袖被覆部3とを一体成形してなり、前記手首部位2を基準として、少なくとも袖口4方向に対し+20mm〜+40mmの全範囲に、前記袖被覆部3のズリ落ちを防止する厚肉部bを備える。
【0040】
厚肉部bの指先方向の端部bが、手首部位2を基準として袖口4方向に対し+20mmに至らない場合、使用中に、厚肉部bの指先方向端部bと手首部位2との間で折れが生じて袖被覆部3がズリ落ちてくる。また、厚肉部bの袖口4方向の端部bが、手首部位2を基準として袖口4方向に対し+40mmに至らない場合、使用中に、厚肉部bの袖口方向端部bと袖口4との間で折れが生じ袖被覆部3がズリ落ちてくる。
本例では、厚肉部bの形成位置を前記の如く選択することで、袖被覆部3における厚肉部bと指先、厚肉部bと袖口4との間での折れ、すなわち、厚肉部b以外の薄肉部の折れを防いで、袖被覆部3のズリ落ちを防止することができた。
【0041】
また、図1に示すポリ塩化ビニル製手袋Aについて、前記実施例1〜8、比較例1と同様にして作製したものに対し前記した浸漬試験を行い、表面積変化率を算出した処、表1中に記載の評価と同様の結果が得られた。
【0042】
以上、本発明に係るポリ塩化ビニル製手袋の実施形態の例を図面及び実施例を参照して説明したが、本発明はこれら図示例および実施例に限定されるものではなく、特許請求範囲の各請求項に記載される技術的思想の範疇において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るポリ塩化ビニル製手袋の実施形態の一例を示す要部切欠正面図で、要部を拡大して表す。
【符号の説明】
【0044】
A:ポリ塩化ビニル製手袋
a:手袋本体
1:手袋部
2:手首部位
3:袖被覆部
4:袖口
5:指先
b:厚肉部
:指先側の端部
:袖口側の端部
t1:手袋本体の厚み
t2:厚肉部の厚み
h:厚肉部の形成幅
【出願人】 【識別番号】000000550
【氏名又は名称】オカモト株式会社
【住所又は居所】東京都文京区本郷3丁目27番12号
【出願日】 平成15年10月24日(2003.10.24)
【代理人】 【識別番号】100109955
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 貞行

【識別番号】100090619
【弁理士】
【氏名又は名称】長南 満輝男

【識別番号】100111785
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 英房

【識別番号】100127409
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正道

【公開番号】 特開2005−126860(P2005−126860A)
【公開日】 平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願番号】 特願2003−364716(P2003−364716)