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【発明の名称】 多層繊維構造体からなるカップ材およびその製造方法および乳房用カップ
【発明者】 【氏名】馬場 健二
【住所又は居所】大阪府茨木市耳原3丁目4番1号 帝人株式会社大阪研究センター内

【氏名】鈴木 篤
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南本町1丁目6番7号 帝人ファイバー株式会社内

【要約】 【課題】通気性、洗濯耐久性、形態保持性、リサイクル性を損なうことなく、特に優れたソフト性と弾力性とを有する、多層繊維構造体からなるカップ材およびその製造方法および乳房用カップを提供する。

【解決手段】潜在捲縮が発現してなる30〜60個/25mmのミクロクリンプを有しかつ7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、2種ポリエステルからなるサイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aをマトリックスとし、該複合短繊維Aを構成する前記2種のポリエステルのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bが分散、混入されてなるポリエステル系弾性繊維構造体の両面に、ポリエステル系接着剤でポリエステル織編物を接着して多層繊維構造体とした後、該多層繊維構造体を金型成型加工で湾曲した形状にカップ材を熱成型する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系弾性繊維構造体の両面に、ポリエステル織編物がポリエステル系接着剤で接着された多層繊維構造体で構成されるカップ材であって、前記ポリエステル系弾性繊維構造体が下記(1)〜(5)に示す構造を有することを特徴とする多層繊維構造体からなるカップ材。
(1)固有粘度において互いに異なる2種のポリエステルからなり、潜在捲縮が発現してなる30〜60個/25mmのミクロクリンプを有しかつ7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aをマトリックスとし、前記2種のポリエステルのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bが、分散、混入されてなり、
(2)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとが交叉した状態で熱融着により形成された熱固着点を有し、
(3)前記弾性複合繊維B同士が交叉した状態で互いに熱固着点を有しており、
(4)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとの混合比率が90:10〜50:50であり、かつ
(5)前記複合短繊維Aの単糸繊度が2〜15dtexの範囲であるポリエステル系弾性繊維構造体。
【請求項2】
複合短繊維Aを形成する、固有粘度において互いに異なる2種のポリエステルがともにポリエチレンテレフタレートである請求項1に記載の多層繊維構造体からなるカップ材。
【請求項3】
前記ポリエステル系弾性繊維構造体の構成繊維の表面に、ポリエステルエステル系ブロック共重合体を主成分とする表面処理剤が、該ポリエステル系弾性繊維構造体の合計重量を基準として0.02〜5.0重量%付着している請求項1または請求項2に記載の多層繊維構造体からなるカップ材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の多層繊維構造体からなるカップ材を用いてなる乳房用カップ。
【請求項5】
固有粘度に互いに0.1〜0.4の差のある2種のポリエステルからなり、7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aと、前記2種のポリエステルのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bとを含むウエブを、前記熱可塑性エラストマーの融点以上の温度で熱処理することにより下記(1)〜(5)に示す構造を有するポリエステル系弾性繊維構造体を得た後、該ポリエステル系弾性繊維構造体の両面に、ホットメルトタイプの樹脂バインダーであるポリエステル系接着剤でポリエステル織編物をラミネート接着させ、金型成型加工によりカップ状の湾曲した形状に熱成型することを特徴とする多層繊維構造体からなるカップ材の製造方法。
(1)固有粘度において互いに異なる2種のポリエステル系ポリマーからなり、潜在捲縮が発現してなる30〜60個/25mmのミクロクリンプを有しかつ7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aをマトリックスとし、前記2種類のポリエステル系ポリマーのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bが、分散、混入されてなり、
(2)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとが交叉した状態で熱融着により形成された熱固着点を有し、
(3)前記弾性複合繊維B同士が交叉した状態で互いに熱固着点を有しており、
(4)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとの混合比率が90:10〜50:50であり、かつ
(5)前記複合短繊維Aの単糸繊度が2〜15dtexの範囲であるポリエステル系弾性繊維構造体。
【請求項6】
ウエブの繊維密度が0.009〜0.04g/cmの範囲内である請求項5に記載の多層繊維構造体からなるカップ材の製造方法。
【請求項7】
ウエブの熱処理温度が、弾性複合繊維Bに含まれる熱可塑性エラストマーの融点以上であり、かつ複合短繊維Aに含まれる2種のポリエステルよりも30℃以上低い温度である請求項5または請求項6に記載の多層繊維構造体からなるカップ材の製造方法。
【請求項8】
前記ポリエステル系弾性繊維構造体の構成繊維の表面に、ポリエステルエステル系ブロック共重合体を主成分とする表面処理剤が、該ポリエステル系弾性繊維構造体の合計重量を基準として0.02〜5.0重量%付着している請求項5〜7のいずれかに記載の多層繊維構造体からなるカップ材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、多層繊維構造体からなるカップ材およびその製造方法および乳房用カップに関する。特に、通気性、洗濯耐久性、形態保持性、リサイクル性を損なうことなく、特に優れたソフト性と弾力性とを有するカップ材およびその製造方法および乳房用カップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラジャー、ロングラインブラジャー、ボデイスーツ、スリーインワン、ブラテデイ、ブラキャミソール、ブラスリップ、ビスチェ等の下着類や、レオタード、水着、イブニングドレス、ビスチェタイプ等のアウターウエアー類の、乳房を覆うためのカップ(乳房用カップ)を有する女性用衣類は、女性用の被服として広く普及している。これらのカップには、次のようなものが製造され、市場に供されてきた。
【0003】
最も一般的なものは、その弾力性ゆえに用いられてきたポリウレタンからなるものがある。この場合には、大きなウレタンブロックからスライス、削りだし等の工程を経て、湾曲したカップ材が一体構造体として作り出される。しかし、ウレタン固有の、黄変や耐光劣化の問題、ドライクリーニング耐久性の問題、さらに通気性の無さゆえのムレ感を伴う等の問題があった。特に、黄変の問題は深刻で、このためにウレタンカップの実用にあたっては、黄変による変色を外部から見えないようにするために、何層にも布で覆って隠して用いるのが実情である。
【0004】
また、昨今のエコロジーの流れから各種衣料繊維が回収され、リサイクルされている。一般衣料等は、各種素材が混合された状態であるため、通常反毛化され、工業用ウエスや軍手等にリサイクルされることが多い。しかし、主たる部材がウレタンパットである従来のカップでは、そのリサイクルも不可能であり、焼却または埋め立て処分せざるを得なかった。しかし、焼却処分をした場合には、シアンガス等の有毒ガス発生の問題があり、埋め立て処分をした場合には、産廃処分場を圧迫する等、いずれの場合においても地球環境に対して悪い処分方法しかなく、将来的に問題となる可能性がある。
【0005】
他の乳房カップとしては、繊維からなるものであって、不織布の薄いシートで予め大きさの異なる何枚ものシートを所定の大きさの型で打ち抜いたものを用意しておき、これを4〜8層にも積層して、湾曲形状を形成し、相互を接着剤により互いに接着すると同時に熱成型することによって製造したものや、いわゆるバインダー繊維を混綿してカードウエブを積層し、熱成型時に該バインダー繊維を溶融して接着させ、カップを得る方法が知られている。しかし、これらのカップは、洗濯等による形状変化が大きく、型保持性に問題があった。
【0006】
また、特許文献1や特許文献2では、非弾性ポリエステル捲縮短繊維をマトリックスとし、熱可塑性エラストマーが繊維表面に露出した弾性複合繊維が分散、混入された弾性繊維構造体を用いてカップ材を得ることが提案されている。しかしながら、かかるカップ材はソフト性と弾力性とにおいてまだ満足とはいえず、ソフト性と弾力性とをさらに向上させたカップ材の提案が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平5−195397号公報
【特許文献2】国際公開第03/011063号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、通気性、洗濯耐久性、形態保持性、リサイクル性を損なうことなく、特に優れたソフト性と弾力性とを有する、多層繊維構造体からなるカップ材およびその製造方法および乳房用カップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討した結果、固有粘度の異なるポリエステルがサイバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維に熱処理を施すと、該複合繊維は自ら収縮しながらミクロクリンプを発現させること、また、かかる複合繊維をマトリックスとし、熱可塑性エラストマーが繊維表面に露出した弾性複合繊維を分散、混入せることにより、ソフト性と弾力性に極めて優れた弾性繊維構造体が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば「ポリエステル系弾性繊維構造体の両面に、ポリエステル織編物がポリエステル系接着剤で接着された多層繊維構造体で構成されるカップ材であって、前記ポリエステル系弾性繊維構造体が下記(1)〜(5)に示す構造を有することを特徴とする多層繊維構造体からなるカップ材。」が提供される。
(1)固有粘度において互いに異なる2種のポリエステル系ポリマーからなり、潜在捲縮が発現してなる30〜60個/25mmのミクロクリンプを有しかつ7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aをマトリックスとし、前記2種類のポリエステル系ポリマーのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bが、分散、混入されてなり、
(2)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとが交叉した状態で熱融着により形成された熱固着点を有し、
(3)前記弾性複合繊維B同士が交叉した状態で互いに熱固着点を有しており、
(4)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとの混合比率が90:10〜50:50であり、かつ
(5)前記複合短繊維Aの単糸繊度が2〜15dtexの範囲であるポリエステル系弾性繊維構造体。
【0011】
その際、複合短繊維Aを形成する固有粘度において互いに異なる2種のポリエステルが、ともにポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。また、ポリエステル系弾性繊維構造体の構成繊維の表面に、ポリエステルエステル系ブロック共重合体を主成分とする表面処理剤が、該ポリエステル系弾性繊維構造体の合計重量を基準として0.02〜5.0重量%付着していることが好ましい。本発明のカップ材は乳房用カップとして特に好適に使用することができる。
【0012】
また、本発明によれば「固有粘度に互いに0.1〜0.4の差のある2種のポリエステルからなり、7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aと、前記2種のポリエステルのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bとを含むウエブを、前記熱可塑性エラストマーの融点以上の温度で熱処理することにより下記(1)〜(5)に示す構造を有するポリエステル系弾性繊維構造体を得た後、該ポリエステル系弾性繊維構造体の両面に、ホットメルトタイプの樹脂バインダーであるポリエステル系接着剤でポリエステル織編物をラミネート接着させ、金型成型加工によりカップ状の湾曲した形状に熱成型することを特徴とする多層繊維構造体からなるカップ材の製造方法。」が提供される。
(1)固有粘度において互いに異なる2種のポリエステル系ポリマーからなり、潜在捲縮が発現してなる30〜60個/25mmのミクロクリンプを有しかつ7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aをマトリックスとし、前記2種類のポリエステル系ポリマーのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bが、分散、混入されてなり、
(2)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとが交叉した状態で熱融着により形成された熱固着点を有し、
(3)前記弾性複合繊維B同士が交叉した状態で互いに熱固着点を有しており、
(4)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとの混合比率が90:10〜50:50であり、かつ
(5)前記複合短繊維Aの単糸繊度が2〜15dtexの範囲であるポリエステル系弾性繊維構造体。
【0013】
その際、ウエブの繊維密度が0.009〜0.04g/cmの範囲内であることが好ましい。また、ウエブの熱処理温度が、弾性複合繊維Bに含まれる熱可塑性エラストマーの融点以上であり、かつ複合短繊維Aに含まれる2種のポリエステルよりも30℃以上低い温度であることが好ましい。さらに、ポリエステル系弾性繊維構造体の構成繊維の表面に、ポリエステルエステル系ブロック共重合体を主成分とする表面処理剤が、該ポリエステル系弾性繊維構造体の合計重量を基準として0.02〜5.0重量%付着していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通気性、洗濯耐久性、形態保持性、リサイクル性を損なうことなく、特に優れたソフト性と弾力性とを有する、多層繊維構造体からなるカップ材およびその製造方法および乳房用カップが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のカップ材は、下記のポリエステル系弾性繊維構造体の両面に、ポリエステル織編物がポリエステル系接着剤で接着された多層繊維構造体で構成される。
【0016】
前記ポリエステル系弾性繊維構造体は、
(1)固有粘度において互いに異なる2種のポリエステル系ポリマーからなり、潜在捲縮が発現してなる30〜60個/25mmのミクロクリンプを有しかつ7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aをマトリックスとし、前記2種類のポリエステル系ポリマーのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bが、分散、混入されてなり、
(2)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとが交叉した状態で熱融着により形成された熱固着点を有し、
(3)前記弾性複合繊維B同士が交叉した状態で互いに熱固着点を有しており、
(4)前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとの混合比率が90:10〜50:50であり、かつ
(5)前記複合短繊維Aの単糸繊度が2〜15dtex(好ましくは3〜8dtex)の範囲である。
【0017】
ここで、マトリックスを構成する複合短繊維Aは、固有粘度において互いに異なる2種のポリエステルからなり、潜在捲縮が顕在化してなる30〜60個/25mm(好ましくは40〜55個/25mm)のミクロクリンプを有する。
【0018】
前記複合短繊維Aにおいて、上記のミクロクリンプを有することが特に重要である。かかるミクロクリンプは熱処理により発現したものであり、かかるミクロクリンプにより、あたかもバネのように伸縮性・弾力性に富んだ構造を持つようになる。また、繊維同士が複雑に絡みあうため、ポリエステル系弾性繊維構造体は特に優れたソフト性と弾力性とを有するものとなる。ここで、前記ミクロクリンプの個数が30個/25mmよりも少ないと、十分なソフト性、弾力性が得られず好ましくない。逆に、該ミクロクリンプの個数が60個/25mmよりも多いと、カップ材を成型する際の熱収縮が大きいため、シワ入りや寸法変動などのトラブルが発生しやすく成型が困難となるおそれがある。
【0019】
さらに前記複合短繊維Aには、捲縮数が3〜40個/25mm(好ましくは7〜15個/25mm)となるように通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮が付与されている必要がある。該捲縮数が3個/25mm未満の場合には、短繊維間の絡合が不足してカード通過性が悪くなり、品位の高い繊維構造体が得られないおそれがある。一方、捲縮数が40個/25mmを越える場合には、短繊維の絡合が大きすぎてカードで十分な梳綿をなすことができず、品位の高い繊維構造体が得られないおそれがある。
【0020】
前記複合短繊維Aを形成する、固有粘度において互いに異なる2種のポリエステルとしては、前記のミクロクリンプが得られるものであれば特に限定されないが、固有粘度の差としては、0.1〜0.4の範囲が好ましい。該固有粘度差が0.1よりも小さいとミクロクリンプが十分に発現せず、ミクロクリンプの個数が前記範囲よりも小さくなるおそれがある。逆に、該固有粘度差が0.4よりも大きいとミクロクリンプの個数が前記範囲よりも大きくなるおそれがある。
【0021】
かかる固有粘度において互いに異なる2種のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート系ポリエステル、ポリトリメチレン系ポリエステルなどが好適に例示される。ここで、ポリエチレン系ポリエステルとは、ポリエステルの全繰り返し単位を基準として、エチレンテレフタレート繰り返し単位が90モル%以上(好ましくは95モル%以上)、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルとは、ポリエステルの全繰り返し単位を基準として、トリメチレンテレフタレート繰り返し単位が90モル%以上(好ましくは95モル%以上)、ポリブチレンテレフタレート系ポリエステルとは、ポリエステルの全繰り返し単位を基準として、ブチレンテレフタレート繰り返し単位が90モル%以上(好ましくは95モル%以上)を占めるポリエステルをいう。
【0022】
固有粘度において互いに異なる2種のポリエステルを選択するには、同種ポリエステルにおいては重合度の異なるもの、異種ポリエステルにおいては、その酸成分およびジオール成分の少なくとも1方において異なるものから選択すればよい。
【0023】
前記ポリエステルには必要に応じて、そのテレフタル酸成分やエチレングリコール成分に、5モル%以下の範囲で第3成分を共重合していてもよく、例えば、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、5−スルホキシイソフタル酸金属塩、5−スルホキシイソフタル酸ホスホニウム塩等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジクロヘキサンジメチレンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、o−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ジフェニルスルホン等の芳香族グリコール、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェノール類等があげられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、前記ポリエステル中には、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよく、特に艶消剤として酸化チタンなどは好ましく添加される。
【0024】
前記複合短繊維Aは、サイドバイサイド複合形態または偏心芯鞘型複合形態を有していることが必要である。なかでも、サイドバイサイド複合形態が特に好ましく用いられ、固有粘度において互いに異なる2種のポリエステルを適宜選択して接合させることにより潜在捲縮を有することとなり、かかる複合短繊維に熱処理を施すと、潜在捲縮が発現してミクロクリンプが得られる。
【0025】
ここで、2種のポリエステルの重量比としては、20:80〜80:20(より好ましくは40:60〜60:40)である。
【0026】
前記複合短繊維Aの単糸繊度としては、2〜15dtex(より好ましくは2〜13dtex、特に好ましくは3〜7dtex)である必要がある。該単糸繊度が2dtexよりも小さいと、緻密構造となりすぎてカップ材としての弾力性が十分に得られないおそれがある。逆に、該単糸繊度が15dtexよりも大きいと風合いが粗雑となり、良好な感触のカップ材を得ることができないおそれがある。かかる複合短繊維Aには、繊維長が3〜100mmに裁断されていることが好ましい。
【0027】
ポリエステル系弾性繊維構造体を構成する他方の繊維である弾性複合繊維Bは、熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとから形成される。弾性複合繊維Bの表面は、熱可塑性エラストマーが、少なくとも1/2の表面積を占めるものが好ましい。重量割合は、熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルが、複合比率で30/70〜70/30の範囲にあるのが適当である。弾性複合繊維の形態としては、特に限定されないが、熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとが、サイドバイサイド、芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。この芯鞘型の弾性複合繊維では、非弾性ポリエステルが芯部となり、熱可塑性エラストマーが鞘部となるが、この芯部は同心円状、若しくは、偏心状にあってもよい。特に、偏心状にある弾性複合繊維は、コイル状弾性捲縮が発現するので、同心円状にあるものより好ましい。
【0028】
本発明の熱可塑性エラストマーとしては、前記複合短繊維Aを形成する2種のポリエステルのうちいずれよりも40℃以上低い融点を有するものであれば、特に限定されないが、ポリウレタン系エラストマー、または、ポリエステル系エラストマーが好ましい。
【0029】
前記ポリウレタン系エラストマーは、分子量が500〜6000程度の低融点ポリオール、例えば、ジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えば、p,p´―ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,6―ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分子量500以下の鎖伸長剤、例えば、グリコール、アミノアルコール若しくはトリオール、との反応により得られるポリマーである。これらのポリマーのうち、特に好ましいものは、ポリオールとして、ポリテトラメチレングリコール、又はポリ―ε―カプロラクトンあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合、有機ジイソシアネートとしては、p,p´―ジフェニルメタンジイソシアネートが好適である。また、鎖伸張剤としては、p,p´―ビスヒドロキシエトキシベンゼン、若しくは1,4―ブタンジオールが好適である。
【0030】
本発明のポリエステル系エラストマーは、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステルブロック共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン―2,6―ジカルボン酸、ナフタレン―2,7―ジカルボン酸、ジフェニル―4,4´―ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3―スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体等から選ばれたジカルボン酸の少くとも1種と、1,4―ブタンジオール、ブチレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、若しくは、1,1―シクロヘキサンジメタノール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、又は、これらのエステル形成性誘導体等から選ばれたジオール成分の少なくとも1種、及び、平均分子量が約400〜5000程度の、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2―若しくは1,3―プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキシド)グリコールのうち、少なくとも1種から構成される三元共重合体である。
【0031】
また、ポリエステル系エラストマーは、マトリックスである複合短繊維Aとの接着性、温度特性、強度等を考慮すると、ハードセグメントがポリブチレン系テレフタレートで、ソフトセグメントがポリオキシブチレングリコールである、ブロック共重合ポリエーテルポリエステルが好ましい。この場合、ポリエステル系エラストマーのハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分である、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。この酸成分の一部(通常30モル%以下)は、他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていてもよく、同様にジオール成分の一部(通常30モル%以下)は、ブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていてもよい。また、ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントを構成するポリエーテル部分は、ブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってもよい。なお、ポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていてもよい。
【0032】
弾性複合繊維Bの単糸繊度としては、2〜15dtex(より好ましくは2〜13dtex、特に好ましくは3〜7dtex)であることが好ましい。かかるには弾性複合繊維Bは、繊維長が3〜100mmに裁断されていることが好ましい。
【0033】
本発明のカップ材において、ポリエステル系弾性繊維構造体には、前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとが含まれ、前記複合短繊維Aと前記弾性複合繊維Bとが交叉した状態で熱融着した熱固着点と、前記弾性複合繊維B同士が交叉した状態で互いに熱融着した熱固着点が形成されている。前記複合短繊維Aは前述のようにミクロクリンプを有しているので、あたかもバネのような伸縮性・弾力性が得られる。
【0034】
ここで、ポリエステル系弾性繊維構造体に含まれる複合短繊維Aと弾性複合繊維Bとの混合比率としては、前者:後者の重量比率で90:10〜50:50の範囲である必要がある。弾性複合繊維Bの重量比率が10%より小さいと、ポリエステル系弾性繊維構造体を製造する際に十分な熱固着点の数が得られないため洗濯耐久性が低下するおそれがある。逆に、弾性複合繊維Bの重量比率が50%よりも大きいと、ポリエステル系弾性繊維構造体を製造する際に熱固着点の数が増えすぎ、粗硬なカップ材となるおそれがある。
【0035】
また、前記ポリエステル系弾性繊維構造体の密度については、湾曲した構造の最大厚み部分の繊維密度は、0.01〜0.035g/cmであることが好ましい。
【0036】
本発明のカップ材は前記ポリエステル系弾性繊維構造体の両面に、ポリエステル織編物がポリエステル系接着剤で接着されたものである。その際、ポリエステル系弾性繊維構造体の構成繊維の表面に、ポリエーテル・エステル系ブロック共重合体を主体とする表面処理剤を、ポリエステル系弾性繊維構造体の合計重量を基準として0.02〜5.0重量%付着させることが好ましい。ポリエーテル・エステル系ブロック共重合体を主体とする表面処理剤をポリエステル系弾性繊維構造体の構成繊維の表面に付着させることにより、ポリエステル系弾性繊維構造体中の構成繊維間の接着をより強固にさせることができるので、カップの洗濯耐久性及び形態保持性を一層向上させることができる。なお、ポリエーテル・エステル系ブロック共重合体を主体とする表面処理剤は、ポリエステル系弾性繊維構造体の構成繊維全体に付着させることが最も好ましいが、弾性複合繊維のみに付着させても構成繊維間の接着の向上がみられる。また、表面処理剤をポリエステル系弾性繊維構造体の構成繊維に付着させなくとも本発明の効果は充分に得られる。
【0037】
ポリエーテル・エステル系ブロック共重合体を主体とする表面処理剤としては、テレフタル酸、イソフタル酸、メタソジウムスルフォイソフタル酸、又はそれらの低級アルキルエステルと、低級アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノエーテルからなるポリエーテルエステルブロック共重合体であり、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホスフェートのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアルカリ金属及び/またはこれらのアンモニウム塩、アルカノールアミン塩等の界面活性剤を用いて分散させたものを挙げることができる。
【0038】
本発明で使用される樹脂バインダーは、粉体又はシート状、ネット状等で、熱により初めて溶融接着されるホットメルトタイプの樹脂バインダーであることが必要である。一般に、ラミネート接着には常温で液体状の樹脂バインダーが広く使用されているが、それらは、製造過程における取り扱いや作業環境が悪いだけでなく、繊維構造体の内部まで接着剤が浸透してしまうため、せっかくのソフトで弾力性のある風合いが損なわれてしまう。また、樹脂バインダーの組成は、ポリエステル系弾性繊維構造体、表地及び裏地と同じ、ポリエステル系の樹脂とする。
【0039】
本発明のカップ材の表地及び裏地となる生地は、本発明に使用するホットメルトタイプの樹脂バインダーより、高い融点を有するポリエステル系繊維からなる生地であれば、特に限定されない。また、表裏地となる生地の組成は、ポリエステルのみからなることが好ましい。さらに、表裏地の生地は織編物が好ましいが、不織布等であってもよい。
【0040】
本発明のカップ材は、下記の製造方法により得ることができる。
まず、固有粘度に互いに0.1〜0.4の差のある2種のポリエステルからなり、7〜15個/25mmの機械捲縮が付与されている、サイドバイサイド型または偏心芯鞘型複合短繊維Aと、前記2種のポリエステルのいずれよりも40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなり前記熱可塑性エラストマーが少なくとも繊維表面に露出した弾性複合繊維Bとを含むウエブを用意する。複合短繊維Aおよび弾性複合繊維Bとしては前述のものでよい。
【0041】
その際、複合短繊維Aを形成する2種のポリエステルにおいて、その固有粘度に0.1〜0.4の差があることが肝要である。該固有粘度の差が0.1よりも小さいと、熱処理を施しても前記のミクロクリンプが十分に発現せず好ましくない。逆に、該固有粘度の差が0.4よりも大きいと、ミクロクリンプは発現しやすいものの、紡糸工程でベンデイングトラブルを起こしやすく、また、熱収縮率も同時に高くなるため、カップ成型前のポリエステル系弾性繊維構造体を得るときや、カップ材を成型する際にシワ入りや寸法変動などのトラブルが発生しやすくなり好ましくない。
【0042】
次いで、必要に応じてポリエステルエステル系ブロック共重合体を主成分とする表面処理剤を、該ポリエステル系弾性繊維構造体の合計重量を基準として0.02〜5.0重量%付着させた前記複合短繊維Aおよび弾性複合繊維Bを所定の比率にて混合し、通常のカード工程を経てクロスレアーにて必要な目付け量に積層しシート状のウエブとする。その際、構造体の層間剥離を回避するため必要に応じてニードルパンチおよび/またはウオーターニードリング等の方法によってシートに機械的交絡を加えてもよい。かかるウエブの繊維密度としては0.009〜0.04g/cmの範囲であることが好ましい。続いて、熱処理機によって、前記熱可塑性エラストマーの融点以上の温度(好ましくは前記熱可塑性エラストマーの融点以上、かつ複合短繊維Aを形成する2種のポリエステルのいずれの融点よりも30℃以上低い温度)で不織布シートをプレ融着して複合短繊維Aのミクロクリンプを発現させると同時に、繊維間の交絡点を熱固着させ、前記(1)〜(5)に示す構造を有するポリエステル系弾性繊維構造体を得た後、巻取機にて巻き取る。かかるミクロクリンプにより、伸縮性・弾力性に富んだバネのような構造となる。同時に、繊維間同士が複雑に絡み合うため、従来のような、ミクロクリンプを有さないマトリックスを用いた繊維構造体に比べて、熱固着点の数が増加する。かかる熱固着点は、金型成型加工によりカップ状の湾曲した形状に熱成型した後にも残り、優れたソフト性と弾力性とが得られる。
【0043】
続いて、ポリエステル系弾性繊維構造体の両面にポリエステル繊維製の表地及び裏地を接着させるため、ホットメルトタイプの樹脂バインダーを、繊維構造体と表裏地の間に挟む。そして、樹脂バインダーが挟まれたものを加熱して、バインダーを溶かし、繊維構造体と表裏地をラミネート接着して、多層繊維構造体を得る。多層繊維構造体は、ポリエステル系弾性繊維構造体の両面にポリエステル繊維製の表裏地がポリエステル系接着剤で接着されているものである。その後、多層繊維構造体は、熱成型用のカップ型金型にセットされ、表地及び裏地と繊維構造体が一体的に熱成型されて、所定の湾曲したカップ材が得られる。
【0044】
かくして得られたカップ材において、ポリエステル系弾性繊維構造体には、前述のようにマトリックスとして用いられる複合短繊維Aは、潜在捲縮が加熱処理により発現してなるミクロクリンプを有しているため、あたかもバネのような構造を持つようになる。また、繊維同士が複雑に絡みあうため、ミクロクリンプを有さないマトリックス繊維を用いた従来の繊維構造体に比較して熱固着点の数が増加する。その結果、カップ材は、特に優れたソフト性と弾力性とを有することになる。従来のような、ミクロクリンプを有さないマトリックスを用いた繊維構造体では、繊維構造体の厚みが圧縮されて密度が高くなった場合には単に硬くなるだけであるが、本発明のカップ材は、弾力感のある風合いを残す。
【0045】
さらには、本発明のカップ材は、表生地、裏生地が接着成分により接着され、カップ型に一体成型されているので何十回もの洗濯工程を経ても、寸法変化や形状変化をしない。
【0046】
本発明のカップ材には、通常の染色加工や起毛加工が施されていてもよい。さらには、撥水加工、防炎加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工など公知の機能加工が付加されていてもさしつかえない。
【0047】
本発明のカップ材は必要に応じて縫製され、乳房用カップとして特に好適に使用することができる。さらには、本発明のカップ材およびその製造方法は、金型の変更等によって、乳房用カップに限らず、例えば、バストパッド、肩パッド、ヒップパッド等のパッドのような、内部に繊維構造体を有し表面が布で覆われているもの及びその製造方法にも利用可能である。
【実施例】
【0048】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)融点
Du Pont社製 熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。なお、n数5でその平均値を求めた。
(2)ミクロクリンプ、捲縮数
JIS L 1015 7.12に記載の方法により測定した。なお、n数5でその平均値を求めた。
(3)固有粘度
オルトクロルフェノールを溶媒として35℃で測定した。なお、n数5でその平均値を求めた。
(4)洗濯耐久性
家庭用洗濯機を用いて、連続50分の20サイクル洗濯を100回繰り返した後の型保持性を目視判定により、特に優れている(◎)、優れている(○)、やや劣る(△)、劣る(×)の4段階評価した。
(5)弾力性
カップ材の中央部(厚み最大の位置)を直径10mmの円筒状鉄棒で10mm押し付けたときの反発力を測定した。なお、n数5でその平均値を求めた。
(6)ソフト性
ソフト性は反発性も関係するので、触感判定により、ソフト性と反発性が特に優れているものを◎、ソフト性と反発性が優れているものを○、硬い触感または反発性の小さいものを△、特に硬い触感または反発性の特に小さいものを×とした。
(7)カップ成形性
カップ形状に成型する際の成型のし易さおよび成型後の仕上がり状態の点で○、△、×の3段階判定を行った。(○:成型しやすく、仕上がり状態も良好。△:成型しやすいが、仕上がり状態がやや悪く、シワが入ったり、サイズ変更したりする。×:シワ入りやサイズ変動が大きく、成型が非常に困難。)
【0049】
[実施例1]
テレフタル酸とイソフタル酸とを80/20(モル%)で混合した酸成分と、ブチレングリコールとを重合して得られた、ポリブチレン系テレフタレート38%(重量)を、さらにポリブチレンテレフタレート(分子量2000)62%(重量)と加熱反応させ、熱可塑性ブロック共重合ポリエーテルエステルエラストマーを得た。この熱可塑性エラストマーの固有粘度は1.0、融点は155℃、フィルムでの破断伸度は1500%、300%伸張応力は2.94Pa(0.3kg/mm)、300%伸張回復率は75%であった。この熱可塑性エラストマーを鞘部に、通常のポリブチレンテレフタレートを芯部に、芯部/鞘部の重量比で50/50になるように、常法により弾性複合繊維糸を紡糸した。この弾性複合繊維糸は偏心芯鞘型複合繊維である。この弾性複合繊維糸を約2倍に延伸し、表面処理剤(油剤)を付与した後64mmに切断し、単糸繊度が6.6dtexの弾性複合繊維Bを得た。
【0050】
一方、高粘度側ポリエステルとして固有粘度が0.65のポリエチレンテレフタレート(融点256℃)、低粘度側ポリエステルとして固有粘度が0.45のポリエチレンテレフタレート(融点256℃)を用いて(固有粘度差0.20)、重量比50/50となるように、常法によりサイドバイサイド型複合繊維糸を紡糸した。このサイドバイサイド型複合繊維糸を約2倍に延伸し表面処理剤(油剤)を付与したのち、通常のクリンパー装置を用いて機械捲縮を10個/25mm付与し、さらに51mmに切断し、マトリックスとして単糸繊度が5.0dtexの潜在捲縮性能を有する複合短繊維Aを得た。
【0051】
前記弾性複合繊維B30%(重量)と、前記複合短繊維A70%(重量)とをカードにより混綿し、ウエブを作製し、175℃にて無加圧状態で60秒間乾熱処理(プレ融着)を施し、複合短繊維Aの潜在捲縮を発現させて48個/25mmのミクロクリンプを形成させるとともに熱固着点を形成させ、目付350g/m、厚み20mm、密度0.0175g/cmのポリエステル系弾性繊維集合体を得た。さらに表地としてポリエステル製仮撚捲縮加工糸使いの天竺、裏地としてポリエステル製トリコット編地を使い、それぞれをポリエステル系のネット状熱接着溶融シート(東洋紡製、ダイナックシート G−4000(商標名))とともに積層させ、160℃にてラミネート接着をし、表裏地が接着された多層繊維構造体を得た。そして、該多層繊維構造体を、熱成型カップ金型に投入し、200℃にて30秒間、熱成型を施し、湾曲した乳房用カップ形状を有するカップ材を作製した。その後、家庭用洗濯機を用いて洗濯耐久性と、弾力性、ソフト性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1〜7]
比較例1では、マトリックスとして通常の中実(丸断面)レギュラータイプのポリエチレンテレフタレート短繊維(単糸繊度6.6dtex)を使用し、比較例2では、マトリックスとして単糸繊度が1.1dtexの潜在捲縮性能を有する複合短繊維を使用し、比較例3では、マトリックスとして単糸繊度が20.0dtexの潜在捲縮性能を有する複合短繊維を使用し、比較例4では、マトリックスとして固有粘度差が0.05の潜在捲縮性能を有する複合短繊維を使用し、比較例5では、マトリックスとして固有粘度差が0.6の潜在捲縮性能を有する複合短繊維を使用し、比較例6では、マトリックスとして機械捲縮が4.5個/25mmのものを使用し、比較例7では、マトリックスとして機械捲縮が20個/25mmのものを使用し、それ以外は実施例1と同様にして各々カップ材を得た。評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2〜4、比較例8〜9]
実施例1に使用した両繊維のそれぞれに、ポリエーテル・エステル系ブロック共重合体を主成分とする表面処理剤を全繊維重量に対して約0.16重量%付着させ、実施例2では、ポリエステル系弾性繊維構造体中の弾性複合繊維混率(重量)を10%、実施例3では20%、実施例4では50%、比較例8では60%、比較例9では5%として、カードにより混綿し、ウエブを作製、メッシュコンベアー上で175℃で90秒間の熱処理(プレ融着)を施し、複合短繊維Aの潜在捲縮を発現させた。次に表地としてポリエステル製ウーリー糸使いの天竺、裏地としてポリエステル製トリコットを使い、それぞれをポリエステル系のネット状熱接着溶融シート(東洋紡製、ダイナックシート G―4000(商標名))とともに積層させ、160℃にてラミネート接着をし、表裏地が接着された多層繊維構造体を得た。そして、該多層繊維構造体を、熱成型機に投入し、190℃で10秒間熱処理し湾曲した乳房用カップ形状を有するカップ材を作製した。その後、家庭用洗濯機を用いて洗濯耐久性と、弾力性、ソフト性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、通気性、洗濯耐久性、形態保持性、リサイクル性を損なうことなく、特に優れたソフト性と弾力性とを有する、多層繊維構造体からなるカップ材およびその製造方法および乳房用カップが得られ、その工業的価値は極めて大である。
【出願人】 【識別番号】302011711
【氏名又は名称】帝人ファイバー株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南本町一丁目6番7号
【出願日】 平成16年4月26日(2004.4.26)
【代理人】 【識別番号】100099678
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 秀子

【公開番号】 特開2005−307408(P2005−307408A)
【公開日】 平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願番号】 特願2004−129450(P2004−129450)