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【発明の名称】 青果物加工品およびその製造方法
【発明者】 【氏名】江良 一成

【要約】 【課題】鬆が発生した青果物の商品価値を高めて有効に利用する。

【解決手段】青果物加工品50は、管状の注入部材20を青果物10(例えば苺)に挿入する挿入工程と、調味料を含む流動体30(例えば練乳)を注入部材20の内部を通過させて青果物10の鬆13に注入する注入工程とを経て製造される。より詳細には、注入部材20は、その先端部に複数の注入孔23を有し、挿入工程においては、注入部材20の内部から複数の注入孔23の少なくとも一部を介して流動体30を鬆13に注入する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の注入部材を青果物に挿入する挿入工程と、
調味料を含む流動体を前記注入部材の内部を通過させて前記青果物の鬆に注入する注入工程と
を有する青果物加工品の製造方法。
【請求項2】
前記注入部材は、当該注入部材の側壁を貫通する孔を有し、
前記注入工程においては、前記注入部材の内部から前記孔を介して前記流動体を前記鬆に注入する
請求項1に記載の青果物加工品の製造方法。
【請求項3】
前記注入部材は、当該注入部材の軸方向または周方向の異なる位置に設けられて当該注入部材の側壁を貫通する複数の孔を有し、
前記注入工程においては、前記注入部材の内部から前記複数の孔の少なくとも一部を介して前記流動体を前記鬆に注入する
請求項1に記載の青果物加工品の製造方法。
【請求項4】
前記各孔の径は、前記注入部材のうち前記青果物に挿入される先端部に近い孔ほど大きい
請求項3に記載の青果物加工品の製造方法。
【請求項5】
前記青果物は萼片を有し、
前記挿入工程においては、前記青果物のうち萼片により覆われた部分に前記注入部材を挿入する
請求項1から4の何れかに記載の青果物加工品の製造方法。
【請求項6】
調味料を含む流動体を青果物の鬆に注入してなる青果物加工品。
【請求項7】
練乳を苺の果実の鬆に注入してなる青果物加工品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜や果物などの青果物を加工する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
青果物には収穫の時期や収穫後の経過時間に応じて鬆(す)が発生する。このように鬆が発生した青果物は一般的に鮮度が低いものとして認識される傾向にある。このため、鬆が入った(あるいは鬆が入っていると予測される)青果物は、需要者に販売されることなく不良品として廃棄される場合が多い(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−62362号公報(段落0002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように鬆が入った青果物であっても、その商品の価値を高めて有効に利用することができれば、自然物の効率的な利用という観点からしても望ましいと言える。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、鬆が発生した青果物の商品価値を高めて有効に利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的を達成するために、本発明に係る青果物加工品は、調味料を含む流動体を青果物の鬆に注入してなることを特徴としている。この構成によれば、調味料を含む流動体が青果物の鬆に注入されているから、鬆が入った青果物の商品価値を高めて再利用することができる。しかも、青果物の鬆に流動体が注入されているから、この流動体を注入するための空間を人工的に形成する必要がない。例えば、例えば青果物の一部を切除するといった加工は不要である。したがって、極めて簡易かつ低廉な加工により生産され得るという利点がある。なお、本発明における「鬆(す)」とは、青果物の内部に自然的に(すなわち人工的な加工によらず)発生する空間であり、典型的には収穫の時期や収穫後の経過時間に応じて発生する欠陥であるが、青果物の内部に本来的に形成されている空間をも含む概念である。また、青果物を切断したときに明確な空間として認識される部分に限らず、青果物の他の部分(例えば果肉部)と比較して軟らかくなった部分(すなわち青果物の組織が疎となった部分)も本発明の「鬆」に含まれる概念である。また、本発明における青果物や調味料の種類は任意である。青果物と調味料との好適な組合せの具体例としては、苺の果実と練乳(特に加糖練乳)との組合せが考えられる。
【0005】
また、本発明に係る青果物加工品の製造方法は、管状の注入部材を青果物に挿入する挿入工程と、調味料を含む流動体を注入部材の内部を通過させて青果物の鬆に注入する注入工程とを有する。さらに詳述すると、注入部材は、当該注入部材の側壁を貫通する孔を有し、注入工程においては、注入部材の内部から孔を介して流動体を鬆に注入する。この製造方法によれば、管状の部材を青果物に挿入して流動体を鬆に注入するという極めて簡易かつ低廉な工程によって、鬆が入った青果物の商品価値を高めることができる。もっとも、本発明に係る青果物加工品を製造する方法は任意であり、本発明に係る製造方法には限定されない。また、青果物に注入される流動体は、その注入時には流動性を呈することが必要であるが、いったん青果物の鬆に注入された後には、例えば冷凍によって固形化されてもよい。
【0006】
ところで、青果物を切断することなく鬆の形態(位置、大きさまたは形状)を詳細かつ正確に把握することは一般的に困難である。このため、例えば、注入部材にひとつの孔のみが設けられている場合には、たとえ鬆の形態を推測したうえで注入部材を青果物に挿入したとしても、その孔が鬆の内部ではなく果肉の部分に到達して鬆の内部に流動体が注入されない(あるいは注入されにくい)場合も生じ得る。そこで、本発明の望ましい態様において、注入部材は、当該注入部材の軸方向または周方向の異なる位置に設けられて当該注入部材の側壁を貫通する複数の孔を有し、注入工程においては、注入部材の内部から複数の孔の少なくとも一部を介して流動体を鬆に注入する。この態様によれば、たとえ一部の孔が青果物の果肉の部分に到達したとしても、これとは異なる位置に設けられた他の孔から鬆の内部に流動体を注入することが可能となる。したがって、青果物加工品の生産効率を向上させることができる。一方、注入部材に複数の孔が設けられている場合には、特に流動体が粘性を有する場合に、複数の孔のうち流動体の流動方向の上流側に位置する孔から大量に流動体が流出し、この結果として下流側に位置する孔から流出する流動体が少量となる可能性がある。そこで、本発明の望ましい態様においては、各孔の径が、注入部材のうち青果物に挿入される端部に近い孔ほど大とされる。この構成によれば、注入部材の各孔から流出する流動体の量を均等化することができる。
【0007】
また、本発明に係る製造方法によって生産された青果物加工品の表面には注入部材が挿入されていた穴が残るため、見栄えが損なわれるという問題が生じ得る。そこで、萼片(がく片)を有する青果物を加工するために本発明を適用した場合には、挿入工程において、青果物のうち萼片により覆われた部分に注入部材を挿入することが望ましい。この方法によれば、青果物のうち注入部材が挿入されていた穴が萼片によって覆われるから、青果物加工品の見栄えは損なわれない。もっとも、青果物のうち注入部材が挿入される箇所は萼片の裏側に限られない。例えば、青果物の茎部やその近辺に注入部材を挿入してもよい。なお、注入部材が挿入されていた穴を他の食材によって塞いでもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上に説明したように、本発明によれば、鬆が発生した青果物の商品価値を高めて有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<A:青果物加工品の製造方法>
図1は、本発明の実施形態に係る青果物加工品の製造方法を説明するための断面図である。図1に示されるように、青果物たる苺の果実10は、実際に食に供される果肉部11と、果肉部11の一部を覆う萼片12(いわゆる「へた」)とを有する。同図に示されるように、果肉部11の内部には、例えば収穫からの経過時間が長期化することによって鬆13が発生する。この鬆13は、周囲が果肉部11によって包囲された閉空間である。本実施形態に係る青果物加工品は、以下の手順によって練乳(コンデンスミルク)を鬆13に注入したものである。
【0010】
まず、図1に工程(1)として示されるように、管状の注入部材20を果肉部11の表面から内部に挿入する(矢印A)。さらに詳述すると、果実10の萼片12を果肉部11から離れる方向に持ち上げたうえで、果肉部11の表面のうち当該萼片12によって覆われていた部分に注入部材20を挿入する。なお、図1においては説明の便宜のために果実10の断面が示されているが、実際の製造工程においては、切断されていない果実10に注入部材20が挿入される。
【0011】
図2は、注入部材20のうち果肉部11に挿入される先端部の近傍を拡大して示す図である。同図に示されるように、注入部材20は、その軸方向B1に垂直な断面が輪環状となるように円管をなす側壁21を有する。この側壁21は、例えばプラスチックからなり、その縁端22が軸方向B1に対して鋭角をなすように整形されている。側壁21のうち果肉部11に挿入される部分には多数の注入孔23が形成されている。これらの注入孔23は、側壁21の内側と外側とが連通するように当該側壁21を貫通する略円形の穴であり、各々が注入部材20の軸方向B1または周方向B2における異なる位置に設けられている。各注入孔23の径は、注入部材20のうち果肉部11に挿入される先端部に近い注入孔23ほど大きい。具体的には、図2に示されるように、先端部に近い注入孔23の径D1は、これよりも基端部(縁端22とは反対側の端部)に近い位置にある注入孔23(図2の上方に位置する注入孔23)の径D2よりも大きい。なお、側壁21の縁端22(注入部材20の先端部)は閉塞されていてもよいし開口していてもよい。
【0012】
次いで、図1に工程(2)として示されるように、注入部材20の内部(側壁21の内側)に練乳を流し込む。より具体的には、注入部材20の基端部が連結された容器に練乳を充填しておき、この容器に圧力を加えることによって注入部材20に練乳を流し込む。こうして流し込まれた練乳は注入部材20の先端部に向かって流動し、図1(2)に矢印にて示されるように各注入孔23から果肉部11の鬆13に流出する。ここで、本実施形態における練乳は、牛乳を煮詰めて濃縮したうえで砂糖を含ませた流動体(加糖練乳)である。この種の練乳は粘性を有するから、総ての注入孔23の径が等しいとすれば、練乳の流動方向の上流側に位置する注入孔23(注入部材20の基端部に近い注入孔23)から大量の練乳が流出し、下流側に位置する注入孔23(注入部材20の先端部に近い注入孔23)から流出する練乳が少量となり得る。本実施形態においては、練乳の流動方向の下流側に位置する注入孔23の径が上流側に位置する注入孔23の径よりも大とされているから、このような流出量の不均一を解消して練乳を効率的に注入することができる。
【0013】
次いで、果肉部11の鬆13に練乳が充填された後に注入部材20が引き抜かれる。このとき、注入部材20の挿入に際して上方に持ち上げられていた萼片12は果肉部11の表面を覆う状態に戻される。以上の工程によって、図1に工程(3)として示されるように、果実10の内部に練乳30が注入された青果物加工品50が完成する。注入部材20が挿入されていた穴は萼片12によって覆われるから、青果物加工品50の見栄えが損なわれることはない。さらに、注入部材20が挿入されていた穴は果肉部11の弾力により自然に塞がれるから、鬆13に注入された練乳30が逆流して果肉部11の外側に漏れ出すことはない。
【0014】
以上に説明したように、本実施形態においては果肉部11の鬆13に練乳が注入されるから、鬆13が発生した果実10の商品価値を高めることができる。しかも、注入部材20を果肉部11に挿入して流動体を注ぎ込むという極めて簡易かつ低廉な工程により青果物加工品50が製造される。また、苺の果実10の表面に練乳を付加するといった一般的な食べ方では、これを食べるときに練乳が体の一部や衣服に付着し得るという問題が生じ得るが、本実施形態においては果肉部11の内部に練乳が注入されているから、たとえ手掴みで食べたとしてもこのような問題は生じない。
【0015】
さらに、本実施形態においては、注入部材20に複数の注入孔23が設けられているため、鬆13の形態(位置、大きさまたは形状)を詳細かつ正確に把握していなくても、果肉部11の鬆13に対して確実に練乳30を充填させることができるという利点がある。この点について詳述すると以下の通りである。いま、図3(a)に示されるように、注入部材20にひとつの注入孔23のみが設けられている場合を想定する。ここで、鬆13の形態を推測して注入部材20を果肉部11に挿入したとしても、図3(a)に示されるように注入孔23が鬆13を超えて果肉部11に到達してしまう場合がある。この場合には注入孔23が果肉部11によって塞がれることとなるから、練乳30を注入孔23から流出させることは困難である。これに対し、本実施形態のように注入部材20に複数の注入孔23が設けられた場合には、仮に一部の注入孔23が図3(b)に示されるように果肉部11に到達してしまったとしても他の注入孔23は鬆13の内部に存在することとなるから、これらの注入孔23から鬆13に練乳30を注入することができる。したがって、本実施形態においては、鬆13の形態が不確定的であったとしても鬆13に対して練乳30を確実に注入することができる。もっとも、図3(a)のひとつの注入孔23を鬆13の内部に確実に到達させることができる場合(例えば鬆13の詳細な形態が判明している場合)には、注入部材20にひとつの注入孔23のみが設けられた構成も採用され得る。
【0016】
なお、果肉部11に鬆13が生じているか否かを判別するための方法や鬆13の形態を特定するための方法は任意である。例えば、収穫時期や収穫からの経過時間、または果実10の外観や感触に応じて経験的または統計的に鬆13の有無や形態を推測してもよいし、上述した特許文献1や特開昭52−145154号公報または特開昭62−273087号公報に記載されているようにX線などの電磁波を果実10に照射することによって鬆13の有無や形態を特定してもよい。
【0017】
<B:変形例>
上記実施形態には種々の変形が加えられ得る。具体的な変形の態様は以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0018】
(1)上記実施形態においては、果肉部11の表面のうち萼片12によって覆われた部分に注入部材20を挿入する方法を例示したが、注入部材20が挿入される箇所は任意である。例えば、図4に示されるように、茎部15が果肉部11に連なるように収穫された果実10を加工する場合には、この茎部15の端面15aから茎部15に沿うように注入部材20を挿入してもよい。あるいは、図5に示されるように、茎部15と果肉部11とが連結する部分に注入部材20を挿入してもよい。これらの方法によっても、青果物加工品50の見栄えを損なうことなく練乳30(あるいは他の調味料)を鬆13に注入することができ、さらに注入部材20が挿入された穴は茎部15や果肉部11の弾力によって概ね塞がれるから、練乳30が果肉部11の外側に漏れ出すことはない。
【0019】
(2)上記実施形態においては、果肉部11の内部に明確な空間として形成された鬆13に練乳30を注入する場合を想定したが、鬆13は必ずしも明確な空間として把握されるものでなくてもよい。例えば、果肉部11の内部に他の部分と比較して軟らかくなった部分(果肉の組織が他の部分と比較して疎である部分)を有する果実10を加工する場合には、この軟らかい部分に到達するように注入部材20を挿入して練乳30を注入してもよい。ただし、この場合には、果肉部11内部の空間としての鬆13に練乳30を注入する場合と比較して、練乳を注入するための圧力を増加させる必要がある。
【0020】
(3)上記実施形態においては苺の果実10に練乳30を注入する場合を例示したが、加工の対象となる青果物の種類とこれに注入される流動体の種類(調味料の種類)との組合せは任意である。例えば、昆布、鰹節または煮干しなどから生成された出し汁を調味料として含む流動体を大根や牛蒡といった根菜の鬆13に注入してもよい。こうして製造された青果物加工品を熱湯にて茹でることにより、注入された出し汁が内部から根菜に染み込んでいくから、何らの加工も施されていない根菜を調理する場合と比較して、出し汁を根菜に染み込ませるために要する時間を短縮することができる。また、苺や柑橘類に代表される液果、林檎や梨などのナシ状果、桃などの石果、または栗や胡桃などの乾果など種々の果物の甘みを増加させるために、これらの果物の内部に形成された空間(鬆13)に、砂糖などの調味料が溶解されたシロップを注入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る青果物加工品の製造工程を説明するための図である。
【図2】同製造工程にて使用される注入部材の構成を示す図である。
【図3(a)】同注入部材にひとつの注入孔のみが設けられた場合に生じ得る問題点を説明するための図である。
【図3(b)】同注入部材に複数の注入孔が設けられた場合の効果を説明するための図である。
【図4】変形例において果肉部に挿入部材が挿入された様子を示す断面図である。
【図5】変形例において果肉部に挿入部材が挿入された様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10……苺の果実(青果物)、11……果肉部、12……萼片、13……鬆、15……茎部、20……注入部材、21……側壁、22……縁端、23……注入孔、30……練乳(流動体)、50……青果物加工品。
【出願人】 【識別番号】596030737
【氏名又は名称】江良 一成
【出願日】 平成16年6月1日(2004.6.1)
【代理人】 【識別番号】100098084
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 研二

【公開番号】 特開2005−341832(P2005−341832A)
【公開日】 平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願番号】 特願2004−163307(P2004−163307)