| 【発明の名称】 |
低温殺菌方法、低温保存方法及び食品用の保存剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】山田 光男
【氏名】李 昌一
【氏名】中村 浩康
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| 【要約】 |
【課題】耐熱性細菌等の低温では完全に殺菌することが困難な微生物を含む微生物類を完全に殺菌することが可能な低温殺菌法を提供する。
【解決手段】食品を水性媒体中0.1%〜1.0%の過酸化水素を作用させて前記過酸化水素由来のラジカルの存在下で殺菌対象微生物を殺菌する低温殺菌方法であって、 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 食品を水性媒体中0.1%〜1.0%の過酸化水素を作用させて前記過酸化水素由来のラジカルの存在下で殺菌対象微生物を殺菌する低温殺菌方法であって、 殺菌すべき食品から存在し得る殺菌対象の微生物を選定し、そして過酸化水素濃度、殺菌すべき食品の殺菌温度、殺菌時間に基づいた前記殺菌対象の微生物の作用点を求めて殺菌プロフィールを決定し、更に前記水性媒体のラジカル消去能又はラジカル発生量に基づいて前記作用点を補正し、補正した作用点に基づいて殺菌プロフィールを決定して殺菌を行うことを特徴とする低温殺菌方法。 【請求項2】 更に前記殺菌系の条件に基づいて、過酸化水素濃度、作用時間又は両者を補正することを特徴とする請求項1に記載の低温殺菌方法。 【請求項3】 殺菌終了時又は途中に、前記食品の過酸化水素濃度を測定し、測定した結果に基づいて更に殺菌を続行するか殺菌を終了するのかを判断する工程を有する請求項1又は請求項2に記載の低温殺菌方法。 【請求項4】 殺菌終了後の過酸化水素濃度を測定し、過酸化水素が所定値以上の場合には、過酸化水素由来のラジカル消去処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の低温殺菌方法。 【請求項5】 殺菌に先立って、殺菌と同時又は途中の対象微生物の検査を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の低温殺菌方法。 【請求項6】 半冷凍又は10℃以下の冷蔵条件下で、食品中有効濃度0.1%〜1.0%の過酸化水素由来のラジカルの存在下で殺菌対象微生物を殺菌して前記冷蔵条件下で前記食品を長期間保存する食品の保存方法であって、 殺菌すべき食品から存在し得る殺菌対象の微生物を選定し、そして過酸化水素濃度、殺菌すべき食品の殺菌温度、殺菌時間に基づいた前記殺菌対象の微生物の作用点を求めて殺菌プロフィールを決定し、更に前記水性媒体のラジカル消去能又はラジカル発生量に基づいて前記作用点を補正し、補正した作用点に基づいて殺菌プロフィールを決定することを特徴とする食品の保存方法。 【請求項7】 前記殺菌プロフィールは、保存温度及び保存時間により決定する請求項6に記載の食品の保存方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、低温殺菌方法、食品の保存方法及び食品用の保存剤に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、食品加工分野では、食中毒の防止、食品の変敗の防止、食品経路からの感染の防止等を目的として、種々の殺菌技術の技術が開発されている。 もっとも一般的な殺菌法は加熱による殺菌であるが、食品は一般的に加熱することにより変性あるいは変質するため、加熱による殺菌は食品の商品価値を減じることが多い。特に、芽胞菌は耐熱性が高いため、加熱殺菌法を用いた場合、食品の品質劣化が著しく、適用できない場合が多い。 【0003】 そのため、過酸化水素水や過酢酸水溶液を用いたり、次亜塩素酸塩、アルカリ剤、洗剤、EDTA、殺菌液などを水に溶解して用いることが試みられているが有効に殺菌できなかったり、食品の品質が劣化する等問題があった。 また、その他の殺菌技術として、オゾン利用技術、水の電気分解により得た酸性水の利用技術、強アルカリアルカリ機能水と強酸性機能水の組み合わせの利用技術が開示されている。 【0004】 しかしながら、これら技術は特定の細菌には効果はあるものの芽胞菌に対しては有効ではないと考えられていた。すなわち、細菌は進化の過程で酸素ストレスに対してカタラーゼ、グルタチオン、アルカリヒドロペルオキシド還元酵素、スーパーオキシドディスムターゼなどの酵素を持つようになり、さらに細菌の中にはその環境が悪化して増殖が停止すると特殊なヒートショックプロテインを産生したり芽胞を形成して酸素ストレス耐性を増したりするものがいる。これらは活発に細菌が増殖しているときには有効に殺菌出来る過酸化水素、次亜塩素酸、オゾンなどに対しても耐性を持つようになっている。 【0005】 そのため、特許文献1(特開2001−231525号公報)では、ヒドロキシラジカルを含む水溶液を接触させてセレウス菌等の土壌由来の芽胞菌を殺菌する方法が開示されている。特許文献1によると、ヒドロキシラジカルとは、過酸化水素と過酢酸の両方又はいずれか一種の水溶液にオゾンを混合して反応生成させたもので、過酸化水素と過酢酸の両方又はいずれか一種とオゾンの混合比は1:10モル乃至10:1モルとしている。また食品にヒドロキシラジカルを含む水溶液を接触させる工程では、該水溶液に浸漬した食品にブラッシング、シャワーリング又は振動エネルギーから選ばれる一つもしくは複数の物理的処理を施すことが記載されている。 【0006】 また、特許文献2(特開2001−86964号公報)には殺菌剤を被処理物中に残存させることなく被処理物中に存在する好熱菌及び耐熱性芽胞菌を完全殺菌する方法であって、被処理物をオゾン、過酸化水素等の殺菌剤で処理した後、低圧過熱水蒸気で処理することを特徴とする殺菌法が開示されている。 しかしながら、特許文献2によるとある程度耐熱性微生物の殺菌は可能であるが、全ての菌を殺菌することができない(例えば、表2〜表5を参照のこと)。 【0007】 また、特許文献2によると、芽胞菌等の殺菌は可能であるが、過熱した水蒸気で処理することが必須であり(例えば請求項1参照のこと)、食品等の対象によっては変性等による品質の劣化を免れることができない。更に、3%濃度以上の過酸化水素を使用する等の食品の品質劣化や食品安全面での課題も残る。 【特許文献1】 特開2001−231525号公報 【特許文献2】 特開2001−86964号公報(請求項1) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 従って、本発明の課題は、耐熱性細菌等の低温では完全に殺菌することが困難な微生物を含む微生物類を完全に殺菌することが可能な低温殺菌法を提供することである。 本発明の別の課題は、食品中の耐熱性細菌等の低温では完全に殺菌することが困難な微生物を含む微生物類を完全に殺菌して長期間食品を保存する方法を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者等は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、所定量の過酸化水素を食品系に添加して10℃以下の低温で長時間作用させると芽胞菌を含む各種菌を殺滅することが可能であることを見出して低温殺菌方法の名称でPCT/JP2004/00001として特許出願した(非公開)。 そして、この低温殺菌方法を改良してより低濃度で安全かつ確実に食品を殺菌する方法について鋭意検討した結果、半冷凍又は10℃以下の冷蔵条件下では、有効量として1.0%以下の過酸化水素由来のラジカルで殺菌できることが判り、また殺菌対象微生物の種類、殺菌温度、濃度の条件に基づいて定まる前記殺菌対象微生物の殺菌作用時間に基づいて、殺菌条件を決定できることを見出して本発明を創作するに至った。 【0010】 本発明は、食品を水性媒体中0.1%〜1.0%の過酸化水素を作用させて前記過酸化水素由来のラジカルの存在下で殺菌対象微生物を殺菌する低温殺菌方法であって、 殺菌すべき食品から存在し得る殺菌対象の微生物を選定し、そして過酸化水素濃度、殺菌すべき食品の殺菌温度、殺菌時間に基づいた前記殺菌対象の微生物の作用点を求めて殺菌プロフィールを決定し、更に前記水性媒体のラジカル消去能又はラジカル発生量に基づいて前記作用点を補正し、補正した作用点に基づいて殺菌プロフィールを決定して殺菌を行うことを特徴とするものである(請求項1)。 【0011】 本発明の低温殺菌方法は、更に前記殺菌系の条件に基づいて、過酸化水素濃度、作用時間又は両者を補正することを特徴とするものである(請求項2)。 本発明において、殺菌終了時又は途中に、前記食品の過酸化水素濃度を測定し、測定した結果に基づいて更に殺菌を続行するか殺菌を終了するのかを判断することが好ましい(請求項3)。 【0012】 本発明において、殺菌終了後の過酸化水素濃度を測定し、過酸化水素が所定値以上の場合には、過酸化水素由来のラジカル消去処理を行うことが好ましい(請求項4)。 また、殺菌に先立って、殺菌と同時又は途中の対象微生物の検査を行うことが特に好ましい(請求項5)。 【0013】 本発明はまた、半冷凍又は10℃以下の冷蔵条件下で、食品中有効濃度0.1%〜1.0%の過酸化水素由来のラジカルの存在下で殺菌対象微生物を殺菌して前記冷蔵条件下で前記食品を長期間保存する食品の保存方法であって、 殺菌すべき食品から存在し得る殺菌対象の微生物を選定し、そして過酸化水素濃度、殺菌すべき食品の殺菌温度、殺菌時間に基づいた前記殺菌対象の微生物の作用点を求めて殺菌プロフィールを決定し、更に前記水性媒体のラジカル消去能又はラジカル発生量に基づいて前記作用点を補正し、補正した作用点に基づいて殺菌プロフィールを決定することを特徴とするである(請求項6)。前記殺菌プロフィールは、例えば保存温度及び保存時間により決定する(請求項7)。 【発明の効果】 【0014】 本発明の低温殺菌によれば、食品の種類に依存せず極めて安全な条件で確実に微生物を殺菌することが可能となる。 本発明の低温保存方法によれば、食品中に存在する微生物を安全に殺菌することによって長期間保存することが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 以下、本発明の実施の形態を説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。 なお、本明細書で使用する用語は、以下の通りに定義されるものである。 用語「水性媒体」とは、所定の流動度を有する水性懸濁液、水溶液、例えば魚のスリミ等の水性スラリ、水性エマルジョンを含むことを意味するものである。以下、本発明において「水または水性媒体」を水性系と総称する。 なお、所定の流動度とは、本発明を実施するに当たって、可視光線の存在下で水性系を過酸化水素由来のラジカルで処理するがその際に、例えば攪拌等により水性系の全体に亘って可視光線が照射可能な流動度を意味する。 また、用語「処理対象の微生物」とは、食品中に存在し得る微生物1種または2種以上、すなわち本発明の低温殺菌法により処理対象の微生物を意味するものである。従って、複数の微生物が存在する場合には、本発明においては、作用点までに要する時間、すなわち作用時間が一番長い微生物を処理対象の微生物と考慮される。 また、用語「過酸化水素由来のラジカル濃度」とは、水性系そのものに存在する過酸化水素由来のラジカル量と添加する過酸化水素量との合計の濃度を意味する。 【0016】 さらに、用語「作用点」とは、所定の過酸化水素由来のラジカルを10℃以下の温度で特定の微生物に作用させた際に、微生物が失活または死滅する点を言い、この作用点に至るまでの時間を、以下作用時間という。この作用時間は、特定の微生物において過酸化水素由来のラジカル濃度、温度により決定される時間である。 【0017】 以下、本発明の第1実施形態を詳細に説明する。 本発明は、10℃以下、好ましくは4℃以下という低温条件下で、過酸化水素由来のラジカルは、水又は水性媒体中で24時間以上の長時間存在し、このようなラジカル種の作用により、耐熱性芽法菌等の従来低温では困難であった微生物に対して過酸化水素由来のラジカルが作用するという知見、10℃以下という低温度において、前記ラジカル種が微生物に対して与える作用は、即時的なものではなく所定時間の後に作用する作用点があり、この作用点において過酸化水素由来のラジカルが当該微生物に作用することという知見に基づくものである。 【0018】 処理する際に使用する水性系は、所定の流動度、すなわち被処理物を均一に混合して、好ましくは可視光線を照射可能である、水性の流体であれば特に限定されるものではなく、水、食塩水、ブドウ糖、塩類等を溶解した水溶液、水性の懸濁液、魚のスリミ、獣肉や鶏肉等のミンチ、蜂蜜、ソーセージ類、これらの混合物等の含水スラリ等が適宜選択される。 【0019】 本発明において処理対象となる微生物は、処理すべき水性系に応じて適宜選択されるものであり、一般には、耐熱性芽胞菌を含む微生物群が挙げられる。耐熱性芽胞菌とは、乾燥、高温等の悪環境となると芽胞を形成する菌であり、代表的には好気性のBacillus属に属する微生物、嫌気性のClostridum属に属する微生物及びAlicyclo Bacillus属に属する耐熱好酸性微生物が挙げられる。 【0020】 このような芽胞菌は、物理的、化学的刺激に対して強い耐性を有しており、120℃以上15分以上のオートクレーブ殺菌により死滅するが100℃の煮沸に対しても耐性を有しているのが一般である。本発明の低温殺菌法においても、これらの微生物単独あるいはこれらの微生物とその他の一般微生物とが混在する水性系を殺菌対象にする場合があるが、一般微生物は、作用点を有していない場合かあったとしても芽胞菌よりも短い時間に作用点があるので、以下の説明においてはこれらの芽胞菌を処理対象として説明する。 【0021】 本発明においては、これらの芽胞菌を対象に低温度で殺菌条件を決定すると、その他の菌の殺菌も同時に行うことが可能であることを見出していた。特に、10℃以下の低温度で殺菌を行うことによって、殺菌と同時に10℃以下の温度で殺菌対象物である食品を著期間保存することが可能となる。 本発明の処理対象となる芽胞菌として、特に限定されるものではないが、Genus Bacillus、例えば、B. cereus、B. coagulans、B. subtilis、B. stearothermophoilus、B. licheniformis、B. macerans、B. megaterium、B. spharicus、B. pumilus、B. thuringiensis等が、Genus Clostridium、例えば、C. pasteurianum、C. sporogenes、C. butyricum、C. bifermentans、C. perfringens、C. difficile、C. tetani、C.septicum等が例示される。 【0022】 (過酸化水素由来のラジカル発生) 本発明で使用するラジカル種は、当該技術分野に公知のラジカル源から得られるものであり、本発明においては特に限定されるものではない。 特に好ましいラジカル種は、ヒドロキシラジカルに代表される過酸化水素由来のラジカルである。すなわち、ヒドロキシラジカルに代表される過酸化水素由来のラジカルは、本発明の条件下での殺菌後に常温下で経時的に水へと変化して残存しない。オゾン等由来のラジカル種も同様に酸素と変化するが、オゾン由来のラジカルは、芽胞菌を殺菌する場合に高い濃度である必要があり、またヒドロキシラジカル等に比べて長期間の安定性はない。過酸化水素由来のラジカルは、従来公知の通り、過酸化水素または過酢酸等の光、特に可視光線の照射下で発生する。以下の説明では、代表的なラジカル源として過酸化水素由来のラジカルに基づいて説明する。 【0023】 本発明においては、食品等の殺菌を考慮して水性系におけるラジカル濃度を0.3〜1.0%濃度と設定する。すなわち、本発明者等が先に出願した低温殺菌方法では3%を上限としたが、食品等に適用する場合安全性を考慮して1%を上限とした。 このことは、食品等の水性系中に存在する他の成分、例えばタンパク質等の有機化合物を変性してしまう可能性をより抑えることが可能となる。 なお、例えば殺菌対象が魚である場合には、適用する魚に固有の過酸化水素由来のラジカルが存在することがある。また、養殖魚、家禽類、家畜類には、ストレス防止のためにアスコルビン酸系のストレス防止剤を投与している場合がある、これらの場合には、後述するESR装置により、殺菌プロフィールの補正を加える必要がある。 【0024】 (過酸化水素由来のラジカル処理) 驚くべきことに、例えば63℃以上の高温では、過酸化水素由来のラジカル(以下、単にヒドロキシラジカルと言うことがある)が即時的に耐熱性芽胞菌等の微生物に作用して殺菌するのに対して、10℃以下の低温度、好ましくは0℃〜4℃の低温度におけるこの過酸化水素由来のラジカルは、対象とする芽胞菌の種類に依存して作用する点があることを本発明者等が見出した。また、10℃を超えた温度においては、ヒドロキシラジカルは、比較的容易に分解消失するが、10℃以下の温度では数日間安定して存在することを本発明者によって見出した。 【0025】 すなわち、所定の耐熱性芽胞菌が、10℃以下の温度、例えば4℃において、水性系中で過酸化水素由来のラジカルを作用し続けると、所定時間経過後、一般には24時間以上、特に96時間程度の時間の経過後に完全に死滅することを見出した。本発明において、このような作用時点を作用点と呼び、また処理の開始時からこのような作用点までの経過時間を作用時間と呼ぶことにする。 従って、本発明の低温殺菌法は、このような現象に基づいて行われるものである。 本発明の低温殺菌法においてまず、所定の水系に対応して処理条件を決定する。 処理条件の決定因子は、(1)存在するあるいは存在する可能性のある微生物の種類、(2)水系の種類(塩の存在、pH値)、(3)水系の温度プログラム、等である。 【0026】 (1) 微生物の種類 被処理物中に存在するあるいは存在する可能性のある微生物種が既知の場合、すなわち卵、スリミや獣肉の粉砕物等の水性スラリまたはブイヨン等の水抽出物の場合には、従来公知のデータより殺菌対象となる微生物種が予測される。 一方、被処理物中に存在するあるいは存在する可能性のある微生物種が未知の場合には従来公知の検査法により処理対象の微生物を実際に検査して特定することによって存在する可能性のある微生物が特定または類推される。 【0027】 ひとたび、存在する可能性がある微生物が決定すると、これらの微生物のうち、本発明の低温処理法の条件下で耐殺菌性の一番強い微生物、例えば耐熱性の微生物であるBacillus cereus、B. stearothermophilus、B. subtilisが選択される。 なお、未知の作用点を有する微生物を処理する場合、実験により図1に示すグラフを作成することによって対応可能である。 このようにして見出された微生物の作用点は、データベースに保存しあるいは例えばグラフまたは表等の形式で保存し、次回以降の殺菌の場合には作用点の特定を省略することが可能である。 【0028】 しかしながら、発明者による予備実験によると、芽胞菌の作用点は、種属に略無関係に略同一であることを見出した。従って、他の芽胞菌、好ましくは同一属に属する既知の芽胞菌の作用点から類推してもよい。 以下に、魚のスリミのスラリ、果実類に存在し得る代表的な微生物の種類を表1に記載する。 【0029】
【0030】 上記表は、微生物105〜107個を純粋10〜100ccに添加し、約1.5%の過酸化水素を添加した溶液を、4℃で1日、3日培養した後に光学顕微鏡にて微生物の有無を判定したものであり、×は存在(1個以上)、○は不存在(0個)を表す。この表に示すとおり、3日間低温下で放置することによって対象となる微生物が確実に殺菌できることが判る。 すなわち、これらの菌は、本発明者等の実験によると、0.3〜1%濃度範囲の過酸化水素中、10℃以下の温度で72〜96時間の温度範囲で死滅することが判った。 【0031】 (2) 水系の条件(温度を除く) また、本発明の低温処理方法において、処理する水系の条件、すなわちpH条件、塩分、糖分等の添加物等によって作用点がシフトする。 すなわち、本発明者の実験によると塩化ナトリウム等の塩等が存在すると、同一の菌種に対して本発明に言う作用点が右側にシフトすることが、本発明者による繰返しの実験により見出された(以下の参照)。 【0032】 なお、pH条件、糖分が含有する水系、水系の状態(例えば水溶液、水性懸濁液、水性スラリ)に応じて同様にしてグラフを作成することによって、作用点のシフトを見出すことが可能である。 未知の微生物の作用点の決定と同様にして、条件変化による作用点のシフトはデータベースあるいは例えばグラフまたは表等の形式で保存して、次回以降の殺菌の場合には作用点のシフトの観察を省略することが可能である。 【0033】 なお、データベース、グラフ等に保存された作用点のシフトから条件の変化に対応する作用点のシフトを類推することが可能である。例えば、食塩濃度1.8%、3%等による特定の微生物の特定条件下での作用点のシフトの傾向により、所定濃度の食塩水の場合の作用点を予測することも本発明の範囲内である。 【0034】 (3) 温度プログラム 本発明の低温殺菌法において、前記過酸化水素由来のラジカル処理を10℃以下の温度で継続するが、その際の温度プログラムは、10℃以下の温度であれば特に限定されるものではなく、例えば4℃等の一定温度で可視光線の照射下に冷蔵庫内で保存することができる。従って、本発明においては、このような処理条件の変化に応じて作用点を見極め(決定または類推し)、その作用点に基づいて過酸化水素由来のラジカル処理を行うことが可能である。 【0035】 (4) 低温度域でのヒドロキシラジカルの存在 このような本発明の殺菌条件である10℃以下という低温度域でのラジカル種の存在は、例えばESR装置により確認することができる。図3に示す通り、殺菌系におけるヒドロキシラジカルのピークは、334〜335mT付近に存在する。本発明においてはこのようなピークをモニタすることによって、低いラジカル濃度が維持できているか否かを確認することが可能である。 本発明は、このような低温殺菌において、作用点のシフトは水性媒体の種類、温度等に依存して起こり、この作用点のシフトが水性媒体に応じた10℃以下の低温度域でのラジカルの残存量の変化に起因することを見出し、更に過酸化水素由来のラジカルは1%以下であっても十分に殺菌可能であることを見出した。すなわち、ラジカル消去作用を有するビタミンCを含む柑橘系の殺菌においても、過酸化水素由来のラジカルは10℃以下の低温度領域でも十分に有効量で残存することを見出した。 【0036】 従って、本発明において、予め殺菌対象の食品に存在し得る微生物を確定し、確定した微生物に対する標準水性媒体、例えば純水における作用点を温度毎に予め作成しておき、所定温度域における標準溶液のラジカル挙動と、前記標準溶液に対する適用する水性媒体のラジカル挙動とを例えばESR装置により測定しておく。 例えばESR装置を用いた場合には特定の温度領域における標準溶液に対する強度比を予め求めておき、その温度領域における強度比に基づいて添加する過酸化水素量を補正することによって安全かつ確実に殺菌することが可能となった。 【0037】 本発明の好ましい実施の形態において、殺菌終了時又は途中に、前記食品の過酸化水素濃度を測定し、測定した結果に基づいて更に殺菌を続行するか殺菌を終了するのかを判断することも可能である。 すなわち、殺菌終了後の過酸化水素濃度を例えばESR装置により測定し、過酸化水素が所定値以上の場合には、過酸化水素由来のラジカルを、ビタミンC、ビタミンE等の従来公知の食品に添加可能なフリーラジカル消去剤により消去処理を行うことも可能である。 【0038】 更に、本発明の好ましい実施の形態において、殺菌に先立って、殺菌と同時又は途中に対象微生物の検査を行うことができる。 すなわち、食品を本発明の殺菌処理を行う前後、あるいは殺菌中、好ましくは直前に微生物検査を行うことによって(予備検査)、対象微生物が存在するか否かを殺菌終了前に把握することが可能となる。 もし、対象微生物が存在しない場合には、そのまま殺菌を完了してもよくあるいは殺菌を続行してもよい。そして、その後の微生物検査を行うことなしに、その食品のバイオハザードに対する安全性が確認できる。 一方、予備検査の結果、対象となる微生物が存在する場合には、殺菌終了後に安全確認を行うことによって対処できる。 すなわち、本発明の低温殺菌方法は、比較的に長期間かけて殺菌を行うので、その期間内に、予備検査を行うことが可能である。 【実施例】 【0039】 以下、本発明を実施例により説明する。 (実施例1) 植物(グレープフルーツ)の過酸化水素水とヒドロオキシラジカルによる殺菌実験 柑橘系果実の表面に付着生息する微生物を低温で低濃度の過酸化水素水により、殺菌可能なことを確認し、溶媒の違いによる殺菌効果の比較し、そして低濃度殺菌作用点を明らかにするために下記の通りの実施例を行った。 【0040】 使用材料 1. 試薬特級30%過酸化水素水Lot No.3760 031224:三徳化学工業株式会社 2. 滅菌RO水 3. 水道水 4. グレープフルーツの表皮(黄色の部分のみ使用) 5. ブレインハートインフュージョン(BHI)寒天培地Lot No.084206:日水製薬株式会社 6. Bacillus cereus YER S−1 7. Alicyclobacillus acidoterrestris KBL304 8. Escherichia coli ATCC25922 9. Staphylococcus aureus ATCC29213 【0041】 測定条件 室温 24.1℃、 湿度 38% RO水 pH 5.68 25.8℃ 水道水 pH 7.41 21.2℃ 直後から30分、60分は室温で実施 1日後から2日後、3日後、4日後はアルミパックに入れ4℃で保存。 その結果、菌付着グレープフルーツ表皮を投入し、撹拌した後は全てpH5.4となった。また4日後も変化は無かった。 結果を図1に示す。 【0042】 (実施例2) 1. 滅菌RO水と水道水における殺菌効果の比較実験方法 2. グレープフルーツの表皮部分を5mm×5mm以下に細かくしたものを、Bacilluscereus YERS−1、 Alicyclobacillus acidoterrestris KBL304、 Escherichia coli ATCC25922、Staphylococcus aureus ATCC29213を0.45%滅菌食塩水に各3×105/mlに調整した混合菌液に1時間つけ、菌付着GF表皮を作った。 3. 滅菌RO水、水道水、で30%過酸化水素水を希釈して0.5%、1%および対照の0%を各10ml作り、これに1の菌付着グレープフルーツ表皮を約1g投入し撹拌、直後から30分、60分、にBHI寒天培地に100μl接種し、35℃で24時間培養、生菌の残存を確認した。 【0043】 滅菌RO水における殺菌効果の最小有効濃度(%)の検出実験方法 1. グレープフルーツの表皮部分を5mm×5mm以下に細かくしたものを、Bacilluscereus YERS−1、 Alicyclobacillus acidoterrestris KBL304、 Escherichia coli ATCC25922、Staphylococcus aureus ATCC29213を0.45%滅菌食塩水に各3×106/mlに調整した混合菌液に1時間つけ、菌付着グレープフルーツ表皮を作った。 2. 滅菌RO水で30%過酸化水素水を希釈して0.01%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%および対照の0%を各10ml作り、これに▲1▼の菌付着GF表皮を約1g投入し撹拌、直後から30分、60分、1日後、2日後、3日後、4日後にBHI寒天培地に100μl接種し、35℃で24時間培養、生菌の残存を確認した。 実施例1の結果、滅菌RO水と水道水では若干水道水の方が殺菌に時間が掛かった(図1参照)。 【0044】 実施例2の結果 4日後で0.3%までは殺菌が可能であった(図2)。 【0045】 以上のことから、実施例1で水道水の殺菌効果が滅菌RO水に比べて良くなかったのは、水道水中の鉄イオンなどが原因と考えられる。 また実施例2より実験的には0.3%まで殺菌が可能であるが、溶媒と溶質の純度と殺菌対象物の処理量により濃度と時間を設定する必要があると考えられる。 【0046】 (実施例3) 各種水性媒体に種々の濃度の過酸化水素を添加し、4℃で保存してESR装置によりヒドロキシルラジカルの生成を示す、DMPO−OHスピンアダクト(1:2:2:1)の低磁場側から2本目のシグナルのピークと標準物質であるマンガンマーカーとの強度比からデータを算出した。 結果を図3に示す。図3は、標準液としての純水、水道水、0.9%食塩水、3.5%食塩水及びグレープフルーツに0〜3%の過酸化水素を添加して、4℃で0〜72時間保存した系のESR測定結果を示している。 【0047】 上記の結果から、全ての系において過酸化水素由来のラジカルであるヒドロキシラジカルが残存していることが判る。そしてその量は系に依存していることが判る。 【図面の簡単な説明】 【0048】 【図1】 本発明の実施例における微生物の殺菌成績を示す表図である。 【図2】 本発明の他の実施例における微生物の殺菌成績を示す表図である。 【図3】 本発明の実施例における各種系におけるヒドロキシラジカルの経時的挙動を示す表図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】503302687 【氏名又は名称】山田 光男 【識別番号】503301657 【氏名又は名称】李 昌一 【識別番号】501052889 【氏名又は名称】中村 浩康
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| 【出願日】 |
平成16年5月26日(2004.5.26) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2005−333963(P2005−333963A) |
| 【公開日】 |
平成17年12月8日(2005.12.8) |
| 【出願番号】 |
特願2004−183100(P2004−183100) |
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