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【発明の名称】 デンプン食品の加工方法
【発明者】 【氏名】佐竹 利子

【氏名】金本 繁晴

【氏名】前原 裕之

【氏名】渡辺 尚彦

【氏名】福岡 美香

【氏名】酒井 昇

【氏名】望月 由和

【要約】 【課題】あらかじめ、デンプン食品の中心部のアルファ化度を高め、表面部はアルファ化度がゼロとなるよう、任意にアルファ化度を制御し、家庭用炊飯器など外側から熱伝導によって加熱するタイプの調理器で調理した場合であっても、食味を劣らせることのないデンプン食品の加工方法を提供する。

【解決手段】デンプンを主成分とする食品素材の中心部と表面部とに温度差を設け、マイクロ波加熱によって中心部のみをアルファ化させるデンプン食品の加工方法において、前記食品素材を吸水させた後、液状の冷媒による20秒以内の浸漬を行って表面部の温度を−40℃〜−30℃に、かつ中心部の温度を−5℃〜0℃に維持し、次いでマイクロ波加熱を30秒行い、中心部の温度を80℃に維持して中心部のみをアルファ化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンを主成分とする食品素材の中心部と表面部とに温度差を設け、マイクロ波加熱によって中心部のみをアルファ化させるデンプン食品の加工方法において、
前記食品素材を吸水させた後、液状の冷媒による20秒以内の浸漬を行って表面部の温度を−40℃〜−30℃に、かつ中心部の温度を−5℃〜0℃に維持し、次いでマイクロ波加熱を30秒行い、中心部の温度を80℃に維持して中心部のみをアルファ化させることを特徴とするデンプン食品の加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、加工米や加工麺などのデンプン食品について、任意にアルファ化度を制御することができるデンプン食品の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工米として知られるアルファ化米は、調理の際に洗米及び水への浸漬作業が省略され、炊飯時の加熱時間が短縮されるなどの長所がある反面、炊飯したときの食味が劣るという短所があり、種々の改良がなされてきた。例えば、米粒の表層部のみを糊化(アルファ化)し、その後、乾燥して得られる、内層部まで糊化を及ぼさない加工米の製造方法(特許文献1参照)や、米の内部のβデンプンをマイクロ波加熱により半アルファ化した後、冷凍して保存する加工米の製造方法がある(特許文献2参照)。
【0003】
上記特許文献1の加工米の製造方法によれば、米粒の水への浸漬時間を調整することで表層部のみを吸水させ、加熱することで表層部のみをアルファ化することができるものである。しかし、この加工米を家庭用炊飯器で炊飯する際は、アルファ化が米粒の芯部まで達したときに、表層部は既にアルファ化が過剰に進行した状態となっていて(粘ついてベトベトの状態か、又は粘液が糸を引くようなダラダラの状態)、食味が劣る問題があった。
【0004】
また、上記特許文献2の加工米の製造方法によれば、「マイクロ波加熱では、米内部からアルファ化が進み、したがって、半アルファ化した場合では、米表面は加工前の米と、見た目はほとんど変化がない。本発明にいう半アルファ化米とは、米デンプン層細胞組織をマイクロ波加熱により、内部から75〜80%破壊(アルファ化)した状態を指すものである。」(段落番号0019)と記載されているが、実際にマイクロ波加熱を行うと、米の各部に電波がほぼ均一に浸透されて、米の各部が同時に発熱し、米全体が75〜80%アルファ化することになる(図6参照)。このようにして得られた加工米を、電子レンジなどの調理器で調理すれば、米全体が短時間で100%アルファ化されるので問題はないが、家庭用炊飯器など外側から熱伝導によって加熱するタイプの調理器で調理した場合、上記同様に米粒の芯部のアルファ化が100%に達したときに、表層部はアルファ化が過剰に進行した状態となって、食味が劣る問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−16556号公報
【特許文献2】特開平6−16556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点にかんがみ、あらかじめ、デンプン食品の中心部のアルファ化度を高め、表面部はアルファ化度がゼロとなるよう、任意にアルファ化度を制御し、家庭用炊飯器など外側から熱伝導によって加熱するタイプの調理器で調理した場合であっても、食味を劣らせることのないデンプン食品の加工方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1の発明は、デンプンを主成分とする食品素材の中心部と表面部とに温度差を設け、マイクロ波加熱によって中心部のみをアルファ化させるデンプン食品の加工方法において、前記食品素材を吸水させた後、液状の冷媒による20秒以内の浸漬を行って表面部の温度を−40℃〜−30℃に、かつ中心部の温度を−5℃〜0℃に維持し、次いでマイクロ波加熱を30秒行い、中心部の温度を80℃に維持して中心部のみをアルファ化させる、という技術的手段を講じた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、デンプンを主成分とする食品素材の中心部のアルファ化度が高く、表面部のアルファ化度がゼロとなるように任意にアルファ化度が制御されており、一般家庭にある熱伝導によって外側から加熱するタイプの調理器で再調理した場合であっても、中心部に熱が達したときには、デンプンを主成分とする食品素材の全体がほぼ均一にアルファ化度100%の状態となり、表面部のアルファ化が過剰に進行することはなく、良食味値が得られる。
【0009】
つまり、デンプンを主成分とする食品素材を、液状の冷媒に20秒間以内で浸漬させ、表面部の温度を−40℃〜−30℃に、かつ中心部の温度を−5℃〜0℃に維持し、次いでマイクロ波加熱を30秒行い、中心部の温度を80℃に維持して中心部のみをアルファ化させるので、食品素材の表面部は完全に凍結され、食品素材の中心部は未凍結又は半凍結状態(凍結しない低温のチルド状態)に維持され、中心部のみのアルファ化が効率よく行われる。冷媒への浸漬時間は冷媒の種類、食品素材の初期温度、食品素材の形状などによって異なるが、例えば、冷媒に20秒間以内で浸漬させると食品素材の表面部の温度を−40℃〜−30℃に維持し、中心部の温度を−5℃〜0℃に維持することができる。この際、表面部の温度が−40℃より低ければ中心部まで完全に凍結してしまい、また、温度が−30℃より高いと表面部の凍結が不完全となる。そして、中心部の温度が−5℃〜0℃の範囲を外れると、未凍結又は半凍結状態を維持することができない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
まず、デンプン食品として米を例にとって説明する(図1参照)。収穫後、乾燥、籾摺を経た貯蔵状態の水分が約16%の玄米を原料とし、精米して精白米を得る(ステップ1)。この精白米は一般の小売店等で販売されているものを使用してもよい。その後、精白米を洗米する(ステップ2)。洗米は一般家庭で行うような研ぎ洗いでも足りるが、バッチ式の洗米機、連続式の洗米機など米の使用量に合わせて機械で行ってもよい。また、洗米と浸漬とを同時に行うこともできる。
【0012】
このようにして洗米が終了すると、次に浸漬を行う(ステップ3)。この浸漬は貯水状態で行ってもよいが、流水状態で行ってもよい。約60分間の浸漬が終了した米の水分は約40%である。このようにして浸漬した後は、米の水分が20〜30%程度になるまで脱水し、必要に応じて乾燥する(ステップ4)。脱水には、遠心脱水機などを用い、乾燥には通風乾燥機を用いるとよい。
【0013】
次いで、米を凍結することになる(ステップ5)。米の芯部と表層部との間に温度差を生じさせるためには、例えば、温度が−80℃〜−30℃に維持された液体窒素やドライアイスエタノールなどの液状の冷媒に、米を20秒間以内で浸漬させるとよい。その他、気体の冷媒を噴霧することで温度差を生じさせてもよい。これにより、米の表層部は温度−40℃〜−30℃で完全に凍結され、米の芯部は温度−5℃〜0℃で未凍結又は半凍結状態(凍結しない低温のチルド状態)に維持される。
【0014】
次に、上記米を液状の冷媒から取り出して、マイクロ波加熱することになる(ステップ6)。マイクロ波加熱では、米の各部に電波がほぼ均一に浸透されて、米の各部が同時に発熱することになる。このとき、米の芯部は未凍結又は半凍結状態となっており、この部分が集中的に加熱され、米の表層部が解凍される前に芯部のみがアルファ化されている状態となる。例えば、周波数2.45GHZ〜2.50GHZ 波長約12cm 程度のマイクロ波で、出力360Wで加熱していくと、米の芯部は毎秒2.8℃ずつ昇温し、30秒間照射すると芯部のみを80℃に加熱することができた。このとき、表層部は凍結により温度上昇と乾燥とが防止され、未アルファ化の状態を保持することができた。
【0015】
次いで、上記製法により得られた加工米を冷却する(ステップ7)。ここでの冷却は送風による常温冷却でよい。そして、米の芯部のアルファ化デンプンは老化されて老化デンプンに変化し、米の表層部は解凍され、米表面は見た目ほとんど変化のない加工米となる。
【0016】
最後にこのような加工米を袋詰し、必要に応じて梱包して製品として出荷することになる(ステップ8)。
【0017】
上記工程により製造した加工米は(図2参照)、米のデンプン層が2層に明確に区別される。すなわち、アルファ化度が0%の領域と、アルファ化度が20〜80%の領域とにアルファ化度を任意に制御することが可能となった。また、従来同様、糊粉層はアルファ化度が0%であった。
【0018】
次に、この加工米の調理方法を説明する。一般家庭にある熱伝導によって加熱するタイプの調理器(例えば、電気炊飯器)で再調理した場合、米粒の外側から加熱される。本実施形態の加工米では、アルファ化度0%の領域からアルファ化度20〜80%の領域へと順に加熱されることになり、米粒の芯部に熱が達したときには、米粒全体がほぼ均一にアルファ化度100%の状態となり、表層部のアルファ化が過剰に進行することもなく、良食味値の加工米が得られた。
【0019】
次に、デンプン食品として麺を例にとって説明する(図3参照)。まず、市販乾麺(うどん)の浸漬を行う(ステップ1)。この浸漬は貯水状態で行ってもよいが、流水状態で行ってもよい。約30分間浸漬を行い、その後放置して水分を均一化させた(ステップ2)。放置した後は、水切りを行い、必要に応じて乾燥する(ステップ3)。水切りには、笊(ざる)や脱水機を用いてもよく、乾燥には通風乾燥機を用いるとよい。
【0020】
次いで、麺線を凍結することになる(ステップ4)。麺線の中心部と表面部との間に温度差を生じさせるためには、例えば、温度が−80℃〜−30℃に維持された液体窒素やドライアイスエタノールなどの液状の冷媒に、麺線を20秒間以内で浸漬させるとよい。その他、気体の冷媒を噴霧することで温度差を生じさせてもよい。好ましい実施形態を述べると、液状の冷媒の温度を−72℃、麺線の初期温度20℃、麺線の直径を7mmの条件であった場合、麺線を冷媒に15秒間浸漬した。これにより、麺線の表面部は温度−40℃〜−30℃で完全に凍結され、麺線の中心部は温度−5℃〜0℃で未凍結又は半凍結状態(凍結しない低温のチルド状態)に維持された。
【0021】
次に、上記麺線を液状の冷媒から取り出して、マイクロ波加熱することになる(ステップ5)。マイクロ波加熱では、麺線の各部に電波がほぼ均一に浸透されて、麺線の各部が同時に発熱することになる。このとき、麺線の中心部は未凍結又は半凍結状態となっており、この部分が集中的に加熱され、麺線の表面部が解凍される前に中心部のみがアルファ化されている状態となる。例えば、周波数2.45GHZ〜2.50GHZ 波長約12cm 程度のマイクロ波で、出力360Wで加熱していくと、麺線の中心部は毎秒2.8℃ずつ昇温し、30秒間照射すると中心部のみを80℃に加熱することができた。このとき、表面部は凍結により温度上昇と乾燥とが防止され、未アルファ化の状態を保持することができた。
【0022】
次いで、上記製法により得られた麺線を冷却する(ステップ6)。ここでの冷却は送風による常温冷却でよい。そして、麺線の中心部のアルファ化デンプンは老化されて老化デンプンに変化し、麺線の表面部は解凍され、麺線の表面は見た目ほとんど変化のない加工麺となる。
【0023】
最後にこのような加工麺を袋詰し、必要に応じて梱包して製品として出荷することになる(ステップ7)。
【0024】
上記工程により製造した加工麺及び従来の麺のアルファ化度を、複屈折性の消失度で比較した(図4参照)。デンプン食品中に含有するデンプン粒は結晶構造をもち、光学的に異方体であって偏光顕微鏡で見ると複屈折性があり、粒の形成核で交差する偏光十字が出現する。デンプン粒がアルファ化してしまうと、偏光顕微鏡で観察された偏光十字が消失してしまう。つまり、複屈折性の消失度が0%であれば偏光十字は十分有り、デンプン粒が十分存在していることになり、複屈折性の消失度が100%であれば偏光十字が全く存在せず、デンプン粒がアルファ化されたことを示す尺度となる。
【0025】
図4及び図5を参照すると、麺線を凍結することなくマイクロ波加熱したものは(従来技術)、直径約7.0mmの麺線の横断面の全てにおいて複屈折性の消失が100%であり、麺線全体がアルファ化していることが分かる。一方、麺線を凍結した後、マイクロ波加熱したもの(本発明)は、直径約7.0mmの麺線の横断面の両端部において複屈折性の消失が0%であり、麺線の表面部がアルファ化していないことが分かる。つまり、麺線の外側から約0.5mmまでの表面部は未アルファ化領域であり、麺線の中心部約6.0mmはアルファ化領域であることが分かる。
【0026】
上記加工麺は、茹でる際に表面部の煮崩れの割合が通常の乾麺に比べて減少し、出来上がった麺の食味も良好であった。
【0027】
本実施形態では、加熱源としてマイクロ波加熱に限定して説明したが、これに限らず、例えば、レーザー照射加熱など食品の各部をほぼ同時に発熱させる形態のものを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、加工米や加工麺などのデンプン食品に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】米を例としたデンプン食品の加工方法を実施するための工程図である。
【図2】本発明の加工米のアルファ化領域を示す断面図である。
【図3】麺を例としたデンプン食品の加工方法を実施するための工程図である。
【図4】本発明の加工麺及び従来の麺のアルファ化度を、複屈折性の消失度で比較した図である。
【図5】本発明の加工麺及び従来の麺のアルファ化領域を示す断面図である。
【図6】従来の加工米のアルファ化領域を示す断面図である。
【出願人】 【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
【識別番号】504209725
【氏名又は名称】渡辺 尚彦
【出願日】 平成16年5月31日(2004.5.31)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−333941(P2005−333941A)
【公開日】 平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願番号】 特願2004−160634(P2004−160634)