| 【発明の名称】 |
発芽玄米 |
| 【発明者】 |
【氏名】新村 洋人 【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内
【氏名】中川 公太 【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内
【氏名】佐々木 千恵 【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内
【氏名】青砥 弘道 【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内
【氏名】大西 美咲 【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内
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| 【要約】 |
【課題】食味と炊飯性を向上させた発芽玄米の提供。
【解決手段】発芽玄米乾燥重量100グラム中の直接還元糖含量が0.15g以上であり、発芽玄米の澱粉の糊化度をBAP法で測定したとき、総澱粉含量の9〜40%が糊化されている発芽玄米。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 発芽玄米乾燥重量100グラム中の直接還元糖含量が0.15g以上であり、発芽玄米の澱粉の糊化度をBAP法で測定したとき、総澱粉含量の9〜40%が糊化されていることを特徴とする発芽玄米。 【請求項2】 発芽玄米乾燥重量100グラム中の蔗糖含量が0.5g以上であることを特徴とする請求項1記載の発芽玄米。 【請求項3】 発芽米の水分が10〜20%になるまで乾燥されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の発芽玄米。 【請求項4】 発芽玄米を30℃の水に24時間浸漬したときの吸水率が35〜60質量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発芽玄米。 【請求項5】 発芽玄米の胴割れ米混入比率が50%以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の発芽玄米。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、発芽玄米に関する。特に、食味に優れ、炊飯性に優れた発芽玄米に関する。 【背景技術】 【0002】 玄米は、精白した白米に比べて栄養素を豊富に含んでおり、それ自体で人間が必要とする栄養分の殆どを含んでいる。特に、近年生理的作用が注目されている食物繊維やビタミンB群、ビタミンEなどが玄米には多く含まれている。このように、食品素材として優れている玄米も、その表面を、油脂成分と繊維質成分に富む堅牢な外層部、いわゆる糠層により覆われているため、常圧による炊飯では、該外層部が熱の浸透や吸水を妨げるため、澱粉の糊化や外層部組織の柔軟化、分解等が十分に行われ難いという欠点がある。そのため、玄米を常圧で炊飯して得た玄米米飯は、硬くて粘りが少なく、精白米の米飯に比べて食味が著しく劣っている。このような欠点を回避するために、従来、玄米を加圧下で炊飯することが行われてきたが、この方法によると、高温高圧条件に弱いビタミン等の栄養素は一部が分解するほか、玄米外層部が軟らかくなるまで加熱すると、他の部分が糊化により糊状になってしまう。このため、口当たりがよく、消化吸収性に優れた良質の玄米米飯を製造することは極めて困難であった。 【0003】 また、玄米を5〜50℃、好ましくは20〜40℃の温水に適当な時間浸漬することにより発芽させ、この発芽した玄米を常圧下又は加圧下で蒸煮することにより、軟らかな炊飯米が得られることが知られている(特許文献1)。この発芽した玄米、或いは発芽操作を行い発芽の兆しが見られた玄米を発芽玄米又は発芽米と呼び、玄米と明確に区別している。しかし、玄米の発芽過程において、玄米自身の代謝作用の他、玄米の外周面に存在する水によって米の食味に影響する成分が流出してしまうこと、或いは含まれている雑菌の繁殖等により、発酵状態となり、玄米に発酵臭や異臭が残留するという問題がある。さらに、この発芽玄米は日時を経るにつれて含有酵素の作用によって、澱粉等の分解が過度に進行し、食品素材としての品質が低下するという欠点がある。 【0004】 上記の問題点を解決するため、玄米を発芽させるにあたり、殺菌剤を溶解させた温水や希薄な電解食塩水を用いる方法、流水を用いる方法、温水を定期的に交換する方法などが試みられている(特許文献2)。しかしながら、殺菌剤などの薬品を用いる方法は、残留成分の影響や薬品臭が残る等の問題がある。温水を交換したり、流水中で発芽させる方法は、水やエネルギーの無駄が多く、製造管理が煩雑になる等の問題点がある。特許文献4には、100%の湿度環境下において玄米を発芽させる技術が開示されているが、この技術を用いても発芽は容易ではなく、中間段階で特許文献4に記載されているように温水シャワーを玄米にかける必要があり、食味の改善、炊飯性の改善は実現されていない。 また発芽玄米は玄米を発芽させた後乾燥することも行なわれているが、市販されている乾燥発芽玄米は、発芽工程で吸水し、膨潤した発芽玄米は乾燥工程において胴割れが生じており、これがさらに炊飯時の食味低減の原因ともなっていた。これを防止するために発芽直後の玄米を湿熱加熱する方法を本発明者らは提案した(特許文献3)。 本発明者らは、さらに食味改善と炊飯性を改善した発芽玄米を提供するために鋭意研究開発を継続し、本発明を提案するものである。 【0005】 【特許文献1】特開2000-050818号公報 【特許文献2】特開2000-217520号公報 【特許文献3】特許3423931号公報 【特許文献4】特開2002-291423号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の課題は、食味に優れ、炊飯性を改善した発芽玄米を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、発芽玄米の食味について鋭意研究を行い、食味に影響を及ぼす可能性のある成分について検討を行なった結果、発芽玄米中の直接還元糖や蔗糖含量を増加或いは残留量を多くすることで、食味が改善されることを見出した。本来玄米中には、直接還元糖は少なく、また水溶性の蔗糖は従来製法によって製造された発芽玄米では、浸漬やシャワーにより流出して消失或いは著しく減少していた。玄米中の蔗糖は胚部分に多く含まれ、精白米には含有量が少ないものである。発芽の過程において澱粉が糖化することは知られているが、発芽玄米中の蔗糖や直接還元糖と食味の関係は何ら着目されておらず、本発明者らは、これらに着目し、コントロールし、さらに、澱粉の糊化度を調整することにより炊飯性能を高めることによって、実際の飲食における食味を向上させた本発明を提供するものである。また、他の炊飯性能に及ぼす因子もコントロールした発芽玄米を提供し、実用性の向上をはかったものである。 【0008】 本発明の主な構成は、次のとおりである。 (1)発芽玄米中の成分として、少なくとも、原料玄米より増加した直接還元糖成分及び澱粉の一部を糊化したα化澱粉を含むことを特徴とする発芽玄米。 (2)成分として、水溶損失を抑制した高含有量の蔗糖を含むことを特徴とする(1)記載の発芽玄米。 (3)直接還元糖が発芽玄米乾燥重量100グラム中0.15g以上であり、α化澱粉が発芽玄米の澱粉の糊化度をBAP法で測定したとき、総澱粉含量の9〜40%であることを特徴とする(1)又は(2)記載の発芽玄米。 (4)蔗糖が発芽玄米乾燥重量100グラム中0.5g以上であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の発芽玄米。 (5)水分が10〜20%であること特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の発芽玄米。 (6)吸水率が30℃の水に24時間浸漬したとき、35〜60質量%であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の発芽玄米。 (7)胴割れ米混入比率が50%以下であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の発芽玄米。 (8)白米と混米炊飯用である(1)乃至(7)のいずれかに記載の発芽玄米。 【発明の効果】 【0009】 本発明は、高濃度に直接還元糖を含有する発芽玄米を実現できた。直接還元糖が増加することは、発芽の過程で種々の酵素が作用し、高分子の澱粉や糠層を構成するヘミセルロースやリグニン類が低分子化されたことを意味しており、このような高分子が分解された指標としても有用である。そして糠層を構成する高分子の物質が低分子化されることで、従来玄米の欠点とされた硬い、或いは口当たりが悪いという点がより改善され、炊飯後の食味が実質的に白米とほとんど変わらない発芽玄米を得ることができた。 本発明の発芽玄米は、従来発芽工程において水に溶解することで失われていた前記の直接還元糖や蔗糖或いはビタミンやミネラル類を損失せずにとどめた発芽玄米であるので、旨味成分と栄養成分を保持した発芽玄米である。また、発芽玄米に特有の成分要素である胚乳部に富化されたγ−アミノ酪酸も損なわれない。 本願発明の発芽玄米は、乾燥発芽玄米の澱粉の糊化度がBAP法で測定したとき、総澱粉含量の9〜40%が糊化されており、発芽玄米を構成する澱粉を部分的に糊化(アルファ化)させることによって、炊飯時の吸水状態を調整し、炊飯したとき白米と実質的に同等にすることができるものである。発芽玄米の澱粉のα化を調整することによって、発芽玄米を水に浸漬した場合の吸水率を炊飯に適した吸水率に調整することが可能となり、炊飯と食味の向上をより充足することが可能となった。 乾燥させることにより、保存性や取り扱い性を向上させることができる。 本発明は、乾燥発芽玄米を30℃の水に24時間浸漬したときの吸水率が35〜60質量%とすることにより、炊飯時の急激な吸水や過吸水を防止して、精白米との混米炊飯性を向上させるものである。吸水率を制御した発芽玄米は、市販品では実現されていない。 さらにまた、胴割れ米は、過吸水の原因や砕米の発生につながり、食味の低下をもたらすものであるから、これを少なくした発芽玄米である。このような発芽玄米は美観にも優れ消費者の嗜好性も高いものとなる。 本発明の発芽玄米は、従来の発芽玄米にはない好ましい甘味を付与し、特有の食感(特に粘り)を与え、従来の発芽玄米にはない優れた食味をもたらす。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 本発明について詳しく説明する。 本発明に係る発芽玄米は、乾燥発芽玄米の乾燥重量100グラム中の直接還元糖含量が0.15g以上であり、乾燥発芽玄米の澱粉の糊化度がBAP法で測定したとき、総澱粉含量の9〜40%が糊化されているのである。蔗糖含量が0.5g以上であることを特徴とする発芽玄米である。この発芽玄米は好ましくは直接還元糖の含量が発芽玄米100gあたり0.15〜0.35g、蔗糖含量が0.5〜1.2g、特に好ましくは直接還元糖の含量が発芽玄米100gあたり0.2〜0.35g、蔗糖含量が0.6〜1.2gである。従来の精米穀粒は、収穫時に決定され、固定されているものである。本発明は、収穫後にこれらの成分の含有量を変化させるものであり、且つ、従来の発芽玄米では何ら考慮されておらず、却って流出させていた成分を増加、固定化したものである。発芽米の直接還元糖、蔗糖含量が本発明の範囲に入ることによって、従来の発芽玄米にはない好ましい甘味を付与し、特有の食感(特に粘り)を与え、従来の発芽玄米にはない優れた食味をもたらすのである。 なお、本願発明の発芽玄米、従来の発芽玄米、玄米の直接還元糖含量、蔗糖含量の分析値を示す。 【0011】 発芽玄米の直接還元糖含量が発芽玄米100gあたり0.15〜0.35g、乾燥発芽玄米の澱粉の糊化度がBAP法で測定したとき、総澱粉含量の9〜40%が糊化され、さらに、蔗糖含量が0.5〜1.2gの範囲を満たすことにより、食味を向上させたものである。前述したように従来技術においては発芽玄米を炊飯したとき、もっとも食味が好ましい状態を呈するように種々の検討がなされてきたが、発芽玄米は、発芽の過程で酵素が活性化され、そして玄米の組織を構成する澱粉、たんぱく質、ヘミセルロースといった玄米の構造を維持する高分子成分(マトリックス維持成分)が低分子化され、その結果、白米と異なる構造を呈するようになる。その結果、炊飯工程において、発芽玄米の水分吸収状態にバラツキが生じ、過剰吸収になったり、吸収が少なかったりして炊飯がうまくできない。或いは白米と混合したときに異なった炊飯状態となり、食したときに異物感を感じさせ、その結果食味が悪いという評価に繋がっていた。 しかし、本願発明者らは、すでに、発芽米を構成する澱粉を部分的に糊化させ(アルファ化)、次いで乾燥させることによって、炊飯時の吸水状態を調整し、炊飯したとき白米と実質的に同等の硬さにすることができる技術を開発し特許を取得した。(特許文献3を参照)。本願発明においては、さらにこの技術を詳細に検討し、改良した結果、発芽米の澱粉をBAP法で測定したとき、9〜40%が糊化されている場合、好ましくは9〜30%、更に好ましくは15〜30%が糊化されている場合に、良好な炊飯状態を示すことを見出したのである。澱粉の糊化度と食味の良、不良は密接に関係している。糊化度が40%を超えると、炊飯したときに、こしや粘りの無いパサパサした食感になり、食感を改善しようとして加水量を増やすと柔らかすぎてべちゃべちゃする食感になってしまい、良好な炊き上がりにならなかった。 【0012】 そして、上記のように発芽玄米の澱粉のα化を調整することによって、発芽米を水に浸漬した場合の吸水率を炊飯に適した吸水率に調整することが可能となり、炊飯と食味を向上することができたものである。本願発明の実施製品である乾燥発芽玄米を30℃の水に24時間浸漬したときの吸水率が35〜60質量%であり、従来の技術では、発芽米の吸水率を制御することは実質的に不可能であった。 さらにまた、本発明は、従来製品と比較して顕著な胴割れ米発生を抑制したものである。胴割れは玄米水分の急激な変動によって生じ、これが炊飯前の吸水率の調節を不可能にし、さらに砕米の発生につながり、食味の低下をもたらしていたものである。本発明は発芽時の調質操作とα化操作によってこのようなひび割れを顕著に低減することが可能となった。即ち本願発明は、ケット科学製グレインスコープ等の光学観察装置等を用いて拡大鏡で観察したとき発芽玄米の胴割れ米混入比率が50%以下の発芽米である。このような発芽米は美観にも優れ消費者の嗜好性も高いものとなるのである。 なお、本願発明に用いる原料玄米は、炊飯に適した玄米であって発芽能力を有する玄米であれば、品種は問わない。炊飯して食することを考慮するとジャポニカ種であることが望ましい。また、糯米の加工にも適し、甘味、粘りが向上し、食味が改善する。 【0013】 本発明の発芽玄米は、主に、次の製造法によって得ることができる。 本発明者らは、玄米の発芽工程で制御された緩慢な加水を施すことにより、従来にない高濃度の蔗糖、直接還元糖を含有する発芽玄米を実現できた。これは、全く新しい知見である。そして直接還元糖が増加することは、発芽の過程で種々の酵素が作用し、高分子の澱粉や糠層を構成するヘミセルロースやリグニン類が低分子化されたことを意味しており、このような高分子が分解された指標としても有用である。そして糠層を構成する高分子の物質が低分子化されることで、従来玄米の欠点とされた硬い、或いは口当たりが悪いという点がより改善され、炊飯後の食味が実質的に白米とほとんど変わらない発芽玄米を得ることができるのである。このような新規な発芽玄米を得るためには、玄米の発芽工程で、従来のように過剰の水に玄米を浸漬するのではなく、発芽前の玄米に制御された加水速度で発芽に必要な最低量の水分を供給することが好ましいことを見出した。 【0014】 即ち、本発明の発芽玄米を得るための方法の一つとしては以下のような操作を行うことがあげられる。本発明によれば、あらかじめ水分10〜15%に調整した乾燥穀粒を、水分20〜30%の範囲となるように0.5〜2.0%/hの加水速度で緩慢な加水を行い、次いでこの穀粒をタンクに投入して通気条件下で2〜10時間の調質(テンパリング)を行うので、穀粒への水分添加の加水速度が制限されているので、穀粒への吸水速度が緩慢になって胴割れなど穀粒の変性を抑えることができ、さらに発芽の過程で生成する直接還元糖や蔗糖が、穀粒を浸漬した水に溶出することなく、発芽米中に高濃度で含有され、さらに好ましいことに発芽によって生成したγ−アミノ酪酸を胚乳部に富化させることができる。なお、本願発明における調質(テンパリング)とは、上記のように玄米に吸水後、密閉容器内で緩やかに攪拌しながら、玄米の状態を均質に保つ操作をいう。かくして従来の技術で行なわれていた過剰な水分の存在下又は水中や水流中で行なわれていた発芽操作を行なわず、発芽に必要な最低限の水分供給に留めてやることによって、従来発芽工程において水に溶解することで失われていた前記の直接還元糖や蔗糖或いはビタミンやミネラル類の損失がなくなり、このようにして生成された直接還元糖や蔗糖、或いは、胚乳部に富化されたγ−アミノ酪酸は搗精やその後の加工においても損なわれない。 したがって、本発明の発芽玄米は、胚芽米、精白米や米粉に加工しても、直接還元糖や蔗糖、γ−アミノ酪酸は高濃度のままである。 しかも、好気的環境を維持しているので、悪臭の原因となる雑菌の繁殖は抑制される。従って悪臭が発生することもない。 また、前記乾燥玄米穀粒を加水する際は、玄米穀粒表面に霧状の水滴を付着させたり、少量ずつ水を添加して、緩慢な加水を行うので、穀粒の細胞組織内へ水分が均一に吸収されるので、胴割れなど穀粒の変性を抑制することができる。 そして、前記加水した穀粒を調質する際は、タンク内に外気を取り入れて換気を行いながら調質する。 その他、例示できる方法として、収穫した籾を高水分で保持し、発芽を促進させたのちに乾燥させる方法など適宜選択することができる。さらに、加水の手段として低温の水蒸気を照射して品温が40〜50℃となるような方法で加水を行う方法などを選択することができる。いずれの方法を採用するとしても、玄米から発芽させる際に発芽に必要な水分を供給するにあたり、厳密な水分管理(本発明でいう加水処理やテンパリングに相当するような水分管理)を行うことにより、本願発明が所望する性質と効果を有する発芽玄米を得ることができる。 【0015】 α化は、例えば発芽玄米を製造する際の湿熱処理条件を適宜調整することにより所望の値に調整することが可能である。例えば、98℃で1〜30分程度蒸煮する。 この蒸煮終了後の発芽玄米を常温の送風温度で水分減少率を調整しながら発芽米の水分が10〜20%になるまで乾燥する。例えば、水分減少率を毎時0.8%未満となる条件にて乾燥する。 このように発芽工程、α化工程、乾燥工程をハンドリングすることにより、発芽玄米の胴割れ米混入比率を50%以下に押さえることができ、発芽玄米を30℃の水に24時間浸漬したときの吸水率が35〜60質量%の範囲に調整した発芽玄米を製造することができる。 【0016】 以下に実施例、試験例を示し本願発明をより詳細に説明する。 なお、本発明はこれらに限定されるものではない。 【実施例1】 【0017】 あらかじめ水分14%前後に調整した北海道産玄米(ほしのゆめ)を50Kg用い、これに水分20〜30%の範囲となるように緩慢な加水を行った。この緩慢な加水処理は胴割れを生じさせないように、水分17%までの加水を0.5%/hの速度で行い、水分17%を超えた時点で徐々に加水速度を上げて0.5〜0.9%/hの速度で行った。具体的には、直径100cm、長さ200cm、回転速度4rpmの横形ドラム内にて玄米を攪拌しながら、ドラム内側に設置された2流体式噴霧ノズルによって、毎分10gの供給水量にて、水が垂れ落ちないようにして行った。水温は水道水の温度で、pH調整は行なわなかった。ノズルからの噴霧は、水が玄米から垂れ落ちないように霧状の水滴として玄米の表面に付着させた。玄米は攪拌されながらこの霧状の水滴に接触することによって均一に加水されるようにした。加水に使用する水としては、水道水を用い有効塩素濃度50ppm未満を用いた。加水終了後はタンクなどに移し換えて2〜10時間調質(テンパリング)を行った。このテンパリング時の最適環境温度は16〜24℃とし、タンク内に外気を取り入れて換気を行った。一連の工程は20℃程度の室温で行い、テンパリング終了後は、玄米を、蒸気処理した。蒸気処理は、連続蒸米機を用いて2kg/h 100℃ の蒸気中にて5〜30分の所定時間蒸煮することにより行った。さらに、この蒸煮終了後の玄米を常温の送風温度で水分減少率が毎時0.8%未満となる条件にて乾燥し、水分15%の発芽玄米50Kgを得た。 【実施例2】 【0018】 あらかじめ水分14%前後に調整した玄米(ほしのゆめ)を50Kg用い、これに水分20〜30%の範囲となるように緩慢な加水を行った(加水に使用する水は水道水を使用できるが、適宜pHを調節したり、温度を調節したり、食品成分や生理活性物質の水溶液を使用しても良い)。加水にあたっては玄米攪拌装置を使用した。装置の構造は、内径30cm、長さ2mの円筒状であり、水平に載置した該円筒の内部に内径25cm、長さ2mの攪拌翼を設けた。玄米攪拌装置の両端は開放されており、片側より玄米と水を供給し、玄米供給速度を毎分5kg、水を毎分25gで滴下加水し、100rpmの回転速度で攪拌を行い、この攪拌により米粒への加水は均一化される。攪拌機を1回通過した玄米は水分値が0.5%上昇し、逆側より排出される。排出された玄米を一旦調質タンクに入れ、毎時0.5%の加水となるように次の加水までの静置時間を調節し、再度円筒撹拌装置による加水攪拌の工程に戻す。このようにして玄米の水分値を17%まで高めた。また、水分値17%到達以降は玄米水分上昇率が毎時1.0%以下となるように時間を調節して加水処理を行い、最終到達水分値を23%以上とした。次いで、テンパリングを行い、その後蒸気処理を連続蒸米機を用いて2kg/h 100℃ の蒸気中にて5〜30分の所定時間蒸煮することにより行った。さらに、この蒸煮終了後の玄米を常温の送風温度で水分減少率が毎時0.8%未満となる条件にて乾燥し、水分15%の発芽玄米50Kgを得た。 【実施例3】 【0019】 実施例2と同様の方法で、香川県産ヒノヒカリの玄米を原料として水分15%の発芽玄米50Kgを得、実施例3とした。 【実施例4】 【0020】 実施例2と同様の方法で、新潟県産コシヒカリの玄米を原料として水分15%の発芽玄米50Kgを得、実施例とした。 【実施例5】 【0021】 実施例2と同様の方法で、北海道産キララの玄米を原料として水分15%の発芽玄米50Kgを得、実施例5とした。 【実施例6】 【0022】 実施例2と同様の方法で、北海道産ミルキークイーンの玄米を原料として水分15%の発芽玄米50Kgを得、実施例6とした。 【実施例7】 【0023】 実施例1の条件で、加水処理を施し、加水処理終了後、テンパリングを継続した。試験例1で、加水処理並びにテンパリング中に経時的にサンプリングし、直接還元糖の濃度を調べた。 【0024】 〔比較例1〕 原料玄米(北海道産ホシノユメ)50Kgを洗米機にて洗浄し、25℃の恒温水中で吸水が飽和状態となるまで5時間浸漬させ、その後排水し、水切り後、気相暗室中で20時間密閉静置することで発芽させた。その後、連続蒸煮装置で98℃、2分間蒸煮し、引き続き80℃の流動層乾燥を20分間行い、水分値15%の乾燥発芽玄米を得た。 【0025】 〔比較例2〕 原料玄米(愛媛県産ヒノヒカリ)50Kgを洗米機にて洗浄し、25℃の恒温水中で吸水が飽和状態となるまで5時間浸漬させ、その後排水し、水切り後、気相暗室中で20時間密閉静置することで発芽させた。その後、連続蒸煮装置で98℃、2分間蒸煮し、引き続き80℃の流動層乾燥を20分間行い、水分値15%の乾燥発芽玄米を得た。 【0026】 〔比較例3,4〕 湿度100%雰囲気下で発芽させる方法を記載した特開2002-291423号公報の記載に従って、原料玄米(北海道産ホシノユメ)50Kgを洗米機にて洗浄し、湿度100%の環境下で発芽操作を行い、ついで煮沸殺菌後乾燥(比較例3)又は蒸気殺菌後乾燥(比較例4)を行い水分値15%の乾燥発芽玄米を得た。 【0027】 〔比較例5〕 比較例1の条件で原料玄米を30℃の恒温槽に浸漬し、そのまま45時間浸漬を継続した。試験例1で、浸漬中の玄米を経時的にサンプリングし、直接還元糖の濃度を調べた。 【0028】 <試験例> 上記実施例、比較例で得た発芽玄米、及び市販されている表1の発芽玄米を用いて下記の試験を行い、本願発明の発芽玄米の効果を比較検討した。 【0029】 【表1】
【0030】 〔試験例1〕 <直接還元糖の含量分析> 試験溶液は、以下のようにして調製した。まず試料を弱アルカリ性溶液中で一時間超音波抽出し、中和し、酢酸鉛により除タンパクした。次に、抽出液を定容、濾過し、炭酸ナトリウムにて脱鉛、再濾過したものを試験溶液とした。 直接還元糖の分析は、福井作造著 還元糖の定量法(学会出版センター)の方法をもとに行った。測定をソモギー法によって行い、ブドウ糖換算した値を直接還元糖とした。分析結果を表2に示す。 【0031】 <蔗糖分析方法> ショ糖の分析は、高速液体クロマトグラフ法によって行った。 試験溶液は、以下のようにして調製した。まず、検体を50%v/vエタノール溶液にて懸濁・中和し、超音波抽出を行った。次に抽出液を定容し、ろ紙によって濾過を行い、ろ液を濃縮・乾固した。次に、乾固物を改めて水溶し、0.45umの濾過を行ったろ液を試験溶液とした。 高速液体クロマトグラフの分析は、分析器をLC-10Advp(島津製作所製)、検出器を示差屈折計RID-10A(島津製作所製)、カラムをwakosil 5NH2 φ4.6mm×250mm(和光純薬製)にて行った。 分析結果を表2に示す。 【0032】 【表2】
【0033】 表2から明らかなように、本発明の発芽玄米は従来の方法で製造された発芽玄米と比較して直接還元糖及び蔗糖含量が総じて高いものであった。また参考として実施した玄米、精製白米はいずれも蔗糖含量は発芽玄米に比して高いが、直接還元糖含量は低かった。この直接還元糖含量と蔗糖含量の多寡は試験例5の食味試験の結果を良く反映していた。 比較例3,4の発芽米は蔗糖含量は高いものの直接還元糖含量は低く、下記の食味試験においては、糠層が固く感じられるとの評価であった。直接還元糖含量が低く、蔗糖含量が高いという性質は玄米の特性であり、比較例3,4は玄米に非常に近い特性の発芽玄米であると評価した。 また、実施例7、比較例5の玄米を経時的にサンプリングし、直接還元糖量の経時変化を測定した。結果を図1に示す。比較例5の加水方法では、直接還元糖の増加は認められなかった。一方、加水速度を調整した実施例7では、直接還元糖の顕著な増加が認められる。原料玄米(ほしのゆめ)中の直接還元糖の濃度は0.12g/100gであるのに対して、実施例7では直接還元糖量が0.31g/100gまで増加した。実施例7では直接還元糖量の最大値を示す発芽時間20時間以降、直接還元糖量が減少に転じているが、これは発芽のエネルギーとして消費されていると推測される。緩慢な加水速度に調節することにより、直接還元糖の生成を促進し、また、発芽のエネルギーとして直接還元糖が消費されることを抑制することができるのであり、また、栄養成分の濃度が最も高い発芽時間を設定することが可能となる。 【0034】 〔試験例2〕 <BAP法による澱粉糊化度測定> BAP法(βアミラーゼ・プルラナーゼ法)による糊化度の測定は、貝沼圭二らの方法(澱粉科学 第28巻 第4号 p235〜240、1981)を参考に行った。 サンプルの調製は、文献記載の方法に従い3つの処理液、すなわち酢酸処理液(S液とする)、NaOH処理液(R液とする)、酵素液を失活させた以外はR液と同様の操作を行うブランク処理液(R0液とする)を 調製した。 次に、これらのS液、R液、R0液をフェリシアニド法によって発色させた。すなわち、検液1mlにフェリシアニド試液5mlを添加し、沸騰水浴中10分間加熱、水冷し、420nmにおける吸光度を測定した。フェリシアニド液は赤血塩0.37g及び無水炭酸ナトリウム20.0gを蒸留水1Lに溶解して調製した。 S液、R液、R0液の吸光度をそれぞれS、R、R0として、以下の計算式によって糊化度を求めた。 糊化度(%)=(R0-S)÷(R0-R)×100 分析結果を表2に示す。 本願発明の発芽玄米の糊化度は9〜40%に分布している。 【0035】 〔試験例3〕 吸水率・吸水率の経時変化・吸水状態 (1)吸水率の測定米粒10.00gを30℃の水に浸漬し、24時間後の米粒の重量変化量を浸漬前の重量百分率で求めた。なお、重量測定時には玄米表面の余剰な付着水を除去して測定した。測定結果を下記表2に示す。 本願発明の発芽米吸水率は、36〜58%であったが、市販品及び従来技術で製造された発芽玄米の吸水率は主な市販品に関して60%以上のものが多かった。また、35%未満の製品も多かったが、これらは玄米に近い食味であり、固くてあまりおいしくない。 【0036】 (2)吸水率経時間変化測定方法 実施例1、2、比較例1について、市販製品の吸水率を確認するために経時的な変化を観察した。 米粒10.00gを30℃の水に浸漬し、0.5、1、2、3、4、5時間後の米粒の重量変化を百分率で求めた。なお、重量測定時には玄米表面の余剰な付着水を除去して測定した。 本願発明の発芽玄米は白米のように吸水開始直後の吸水速度が緩やかであるが、市販製品、比較例の製品はいずれも吸水開始直後から急激に吸水した。これは、本願発明品の米粒内には、ひび割れ、組織の崩壊が少ないことを示す。飽和吸水率は糊化度に大きく依存するが、本発明品の糊化度は9〜40%、好ましくは9〜30%、更に好ましくは15〜30%に調整されており、白米、玄米より高く、適度な飽和吸水率が得られた。そのため、白米と同様に炊飯したときに最適の固さ、弾力性が得られるため、食味向上に大きく寄与していると考えられる。吸水開始から5時間までの吸水の変動率を示したグラフを図2に、吸水開始から24時間までの吸水の変動率を示したグラフを図3に示す。市販品M、P、Zは比較例1と同様に吸水速度が速く、飽和吸水率も高い。市販品Eは本発明の実施例に近い飽和吸水率を示すが、初期の吸水速度が早く、米粒内のひび割れや組織の崩壊が多いことを示す。 【0037】 (3)吸水状態観察方法 米粒200gを30℃に調整した380gの水(炊飯時の調水量に相当する量)に浸漬し、常温に放置して24時間後の米粒の性状、余剰水の量を確認した。代表的な例として、実施例1の発芽玄米、比較例1の発芽玄米の観察結果を図4に示す。糊化度の高い市販品は比較例と同様の吸水状態となり、残存する水はほとんどなくなった。このため炊飯前の浸漬時間が長いと軟質な食感となり易いが、実施例1の場合はそのような食感にはなり難い。 【0038】 〔試験例4〕 胴割れ米の発生率及び観察試験 観察評価方法 胴割れ比率・砕米比率の測定法 ケット科学社製グレインスコープにて、米粒50粒中の胴割れ・砕米比率を、目視にて計数した。これを8点計測した平均値を、胴割れ比率とした。胴割れの判定基準は以下の通りとした。 軽胴割れ:米粒中に1本以上の亀裂が確認される米粒。ただし、亀裂は米粒中を完全に横断しておらず、精米時に砕米とならない。 重胴割れ:米粒中に1本以上の亀裂が確認できた米粒。亀裂は米粒中を完全に横断しているものを含み、精米時には砕米となる。 砕米 :米粒の1/5以上が欠損しているもの。 これらのうち軽胴割れを除き、重胴割れ、砕米を胴割れ米とした。 胴割れ米の混入比率を表2に示す。表から明らかなように、本願発明品は胴割れ米の比率が50%以下であった。比較例及び市販品は2試料が10%台であったが、それ以外は全て50%を超えていた。実施例1のグレインスコープによる観察画像を図5に、比較例1のそれを図6に示す。実施例1には亀裂があまり見られないが、比較例1では米粒中に亀裂が多数観察される。 【0039】 〔試験例5〕 炊飯状態の観察と食味試験結果 前記実施例1、2、3、4、5、6、比較例及び試験例で選定した市販発芽玄米より任意の15製品を選択し、各2合、通常の水加減で、家庭用炊飯機を用いて、浸漬0.5時間、通常モードで炊飯し、炊飯終了後10〜30分以内に、パネラーによる試食評価を行なった。 評価方法:発芽玄米を食した経験のあるパネラー10名に、検体内容を知らせずに試食してもらい評価した。 比較例の食味を基準(0点)とし外観、粘り、食感、食味、香り、総合の6項目で5段階評価した。評価は、同等0、やや良い1、良い2、やや劣る−1、劣る−2の5段階評価の平均点で行なった。また、同時にコメントを自由記入の形で収集した。 食味の官能試験結果を表3に示す。 【0040】 【表3】
【0041】 総合評価 本願発明の発芽玄米は、白米と全く同条件で炊飯することができ、外観、粘り、食感、食味、香り、総合評価のいずれにおいても比較例、市販品のいずれよりも勝っていた。また甘味、粘り、旨みについては白米と同様であるとのパネラーの評価であり、本発明発芽玄米が嗜好性の高いものであることが確認できた。 【0042】 試験結果のまとめ 本願発明は、従来注目されていなかった発芽工程で増加する直接還元糖を高い水準で固定化し、同様に従来注目されていなかった発芽玄米中の蔗糖含有量を高い水準で固定化して、発芽玄米の旨味に大きく影響する成分要素を高い水準でコントロールし固定化することに成功したものである。さらに、白米と混米して炊飯する場合に、白米と同等の炊飯性を発揮させる上で重要な吸水率をコントロールする技術を付加して炊飯性を向上させた物である。さらに、砕け米など米の品質劣化を押さえ、総合的に食味を向上させた発芽玄米を提供することに成功した発明である。 本願発明の発芽玄米は、直接還元糖、蔗糖の含量が従来の発芽玄米と比較し顕著に増加しており、吸水状態が好ましく、炊飯時の食味が優れていることが確認された。 【図面の簡単な説明】 【0043】 【図1】直接還元糖の経時変化を示すグラフ 【図2】浸漬時間(0〜5時間)と吸水率変化を示すグラフ 【図3】浸漬時間と吸水率変化を示すグラフ 【図4】24時間浸漬状態を示す図 【図5】実施例1の発芽玄米粒の状態を示す図 【図6】比較例1の発芽玄米粒の状態を示す図
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| 【出願人】 |
【識別番号】593106918 【氏名又は名称】株式会社ファンケル 【住所又は居所】神奈川県横浜市栄区飯島町109番地1
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| 【出願日】 |
平成16年5月14日(2004.5.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100105061 【弁理士】 【氏名又は名称】児玉 喜博
【識別番号】100122954 【弁理士】 【氏名又は名称】長谷部 善太郎
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| 【公開番号】 |
特開2005−323550(P2005−323550A) |
| 【公開日】 |
平成17年11月24日(2005.11.24) |
| 【出願番号】 |
特願2004−145330(P2004−145330) |
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