| 【発明の名称】 |
リジン含有抗肥満または抗高脂血食品、飼料またはサプリメント |
| 【発明者】 |
【氏名】平林 由理
【氏名】村上 仁志
【氏名】小林 久峰
【氏名】上田 剛郎
|
| 【要約】 |
【課題】肥満者や体重の増加を気にする者の体重や体脂肪の減少または増加抑制及び高脂血症の改善を安全かつ最大限に得ることのできる方法を提供すること、また、無用に肥満した動物の肥満を解消し、または肥満を抑制する方法を提供すること。
【解決手段】1日の食事がタンパク質エネルギー比率が20%以下であるものの摂食の状態下で、1日当り体重1kg当り遊離態換算で40〜160mgの割合で摂取されるべきリジンを含有することを特徴とするリジン含有抗肥満または抗高脂血食品、飼料またはサプリメント、および乾物換算で0.8〜3.0重量%のリジン(遊離態換算)を含有し、かつタンパク質エネルギー比率が20%以下であることを特徴とするリジン含有抗肥満または抗高脂血食品、飼料またはサプリメント。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1日の食事がタンパク質エネルギー比率が20%以下である摂食の状態下で、1日当り体重1kg当り遊離態換算で40〜160mgの割合で摂取されるべきリジンを含有することを特徴とするリジン含有抗肥満または抗高脂血食品またはサプリメント。 【請求項2】 乾物換算で0.8〜3.0重量%のリジン(遊離態換算)を含有し、かつタンパク質エネルギー比率が20%以下であることを特徴とするリジン含有抗肥満または抗高脂血食品またはサプリメント。 【請求項3】 1日に摂取する回数が何回でも1日のリジンの摂取量が体重1kg当り40〜160mgの割合で摂取されるべきことを特徴とするリジン含有抗肥満または抗高脂血食品またはサプリメント。 【請求項4】 乾物換算で0.8〜3.0重量%のリジン(遊離態換算)を含有し、かつタンパク質エネルギー比率が20%以下であることを特徴とするリジン含有抗肥満または抗高脂血飼料またはサプリメント。 【請求項5】 該リジンが遊離態のリジンまたはペプチド態のリジンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリジン含有抗肥満または抗高脂血食品、飼料またはサプリメント。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、肥満者や体重の増加を気にする者が体重もしくは体脂肪を減少させるために摂取する食品に関するものである。また、本発明は、屋内や狭い囲いの中で飼育され、濃厚飼料を給飼されたり、運動不足などにより肥満しているペットや動物園の動物または家畜等の動物の肥満を解消するのに有用な飼料に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、肥満者の増加が深刻な社会問題になりつつある。肥満は糖尿病や動脈硬化といった成人病の大きな原因であることから、肥満の軽減が切望されている。 【0003】 一方、近年、アミノ酸の生理作用について注目が集まる中、アミノ酸の抗肥満作用が期待されている。中でもリジン、アルギニン、プロリンおよびフェニルアラニンが抗肥満作用のある「ダイエットアミノ酸」とされているが(後掲非特許文献1および2)、その根拠、効果は十分には明確にされていない。 【0004】 また、アミノ酸のダイエット効果を最大限に発揮する食事組成としてはタンパク質:脂質:炭水化物=6:1:3であることが望ましいとされている(同非特許文献3)。しかし、このような高タンパク質の栄養組成の食事を摂取することは実際上の観点から難しく、また、食事栄養組成としてタンパク質が非常に多い場合、肝臓や腎臓への負担が大きく、安全性の観点から望ましいとはいえない。これらのことより食として安全であり、なおかつその効果を最大限に発揮する条件の解明が切望されている。 【0005】 一方、ペットなどの動物や動物園の動物、その他の動物においても、近年、先に言及したような肥満の問題が生じている。 【非特許文献1】山本辰芳監修「アミノ酸ダイエット」ゴマブックス出版2002年 【非特許文献2】三條健昌監修「アミノ酸ダイエット」日東書院出版2002年 【非特許文献3】三條健昌監修「アミノ酸で体の調子がどんどんよくなる!」三笠書房2001年 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 先に説明した背景技術のもとにおいて、本発明の目的は、肥満者や体重の増加を気にする者の体重や体脂肪の減少または増加抑制及び高脂血症の改善を安全かつ最大限に得ることのできる方法の提供にある。また、無用に肥満した動物の肥満を解消し、または肥満を抑制する方法を提供することにもある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者は、前記記載の目的を達成すべく鋭意研究の結果、遊離態のリジン、リジン塩類または/およびペプチド態のリジンを1日の摂取量が体重1kgあたり40〜160mgであり、または乾物換算で食品または飼料中のリジン含量が0.8〜3.0重量%であり、かつ食品または飼料中タンパク質エネルギー比率が20%以下の状態にあるとき、体重および体脂肪の増加抑制及び高脂血症の改善を安全かつ最大限に発揮せしめることができることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0008】 すなわち、本発明は、1日の食事がタンパク質エネルギー比率が20%以下であるものの摂食の状態下で、1日当り体重1kg当り遊離態換算で40〜160mgの割合で摂取されるべきリジンを含有することを特徴とするリジン含有抗肥満または抗高脂血食品、飼料またはサプリメント、および乾物換算で0.8〜3.0重量%のリジン(遊離態換算)を含有し、かつタンパク質エネルギー比率が20%以下であることを特徴とするリジン含有抗肥満または抗高脂血食品、飼料またはサプリメントに関する。 【発明の効果】 【0009】 本発明は、遊離態のリジン、リジン塩類または/およびペプチド態のリジンを1日の摂取量が体重1kgあたり40〜160mgであり、または乾物換算で食品または飼料中のリジン含量が0.8〜3.0重量%でかつ食品または飼料中タンパク質エネルギー比率が20%以下である抗肥満、脂肪蓄積抑制食品及び飼料に関するものである。これにより、前掲非特許文献3の記載にある高タンパク質の食事を摂取しなくても、すなわち食餌中タンパク質エネルギー比率が20%以下の状態にあるとき、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%の状態にあるとき、安全かつ最大限に体重、体脂肪の増加を抑制し、高脂血症を改善させることができる。また、このことは動物の肥満に関してでも言い得る。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 本発明のリジン含有抗肥満または抗高脂血食品や飼料またはサプリメントを摂取または給餌する対象は、ヒトおよび動物であり、動物は犬、猫、ウサギ、フェレット、ハムスター、鳥などのペットや動物園のの動物、さらには(競走)馬、牛、羊、豚、鳥などの家畜(産業動物)などの動物であって、無用に肥満するおそれのあるものであれば、特別の制限はない。 【0011】 本発明で使用するリジンは、遊離態、塩類またはペプチド態のリジンであれば、いかなる形態であってもよい。また、リジンは、L体、D体およびDL体いずれであっても良い。種々の形態のリジンは、2種類以上を併用することのできることは言うまでもない。例えば、リジン塩類として、リジン塩酸塩、リジン酢酸塩、リジングルタミン酸塩、リジンアスパラギン酸塩、そしてペプチド態として、リジルリジン等のリジンを含むオリゴペプチド等があげられる。このうち、ヒトの摂食に際しては、食品としての使用経験の観点から、塩の形態のL−リジン塩酸塩、L−リジン酢酸塩およびL−リジングルタミン酸塩を使用することが特に好ましい。 【0012】 1日あたりに使用するリジン摂取重量として、ヒトの体重1kgあたり40〜160mgが好ましい。更に好ましくは60〜120mgが良い。また、動物の場合、飼料(乾物換算)に含まれるリジン含量が0.8〜3.0重量%が好ましい。さらに好ましくは、1.2〜2.25重量%が良い。40mgもしくは0.8%を下回る場合、効果が弱くなり、より明確な効果は期待できない。また、アミノ酸の最大許容摂取量は不明であるが、160mgもしくは3.0%より多い場合、単一のアミノ酸を多量に摂取することとなり、アミノ酸バランスの点からあまり好ましくない。なお、リジンの形態は各種あるが、本発明でいうリジン摂取重量は、リジンの遊離態換算での重量をさす。そして、食品または飼料中タンパク質エネルギー比率が20%以下、さらに好ましくは15%以下である場合に、安全かつ最大限に体重と体脂肪の増加を抑制する。 【0013】 また、前段落に記載のと同様の使用条件であるならば、肥満や糖尿病などによる脂質代謝異常に伴う高脂血症の改善効果を得ることができる。 【0014】 リジンと組み合わせてなる本発明の食品または飼料は、食品または飼料中タンパク質エネルギー比率が20%以下であることが必要である。ここでいう食品または飼料中タンパク質エネルギー比率とは食品または飼料中に含まれる栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)をエネルギー換算した場合(タンパク質は4.240kcal/g、脂質は9.461kcal/g、炭水化物は4.183kcal/g)のタンパク質の割合である。食品または飼料中脂質エネルギー比率の場合も同様である。そして、食品または飼料中タンパク質エネルギー比率20%以下であれば、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル等の他の栄養素と配合してももちろん良い。そしてその際、例えば、デキストリンなどの賦形剤、バニリンなどの嬌味剤、ベニバナ色素などの色素等と組み合わせることも可能である。その他の栄養素のエネルギー比は本発明では特に限定されないが、好ましくは、脂質のエネルギー比が20〜25%である。 【0015】 本発明によれば、リジンは、これと食品または飼料とを分けたいわゆるサプリメントの形で使用に供することができるし、リジンを添加した食品または飼料の形態で使用に供することもできる。製品形態は、粉体または液体混合物等の形態で流通に置くことができる。また、製品分類としては、サプリメント(ペット用減量クリニックを含む)、飲料、調味料、加工食品などとして流通に供することができる。 【0016】 具体的な摂取または給飼の仕方として、リジンが0.8〜3.0%含まれている機能性食品、動物の飼料などの形態としての摂取または給飼、また、サプリメントとして1日当りヒト体重1kg当り40〜160mg、動物の飼料の場合、摂取タンパク質量の4〜15%摂取するのであれば、摂取するタイミング、回数は問わない。好ましくは食事と一緒、またはその前後にそれぞれ等量摂取するのがよい。 【0017】 最後に、本発明のリジンと食品または飼料、あるいはリジン含有食品または飼料の摂取量について説明する。 【0018】 マウスに20%タンパク食を摂取させ、かつリジンの添加量が1回の食事あたり食事の乾燥重量での換算で、0.8〜3.0%の場合に、安全かつ最大限に体重と体脂肪の増加を抑制し、高脂血症改善効果を示すことが認められた。これは、1日あたりのヒト(例えば、日本人)のタンパク質摂取量は体重1kgあたり約1gであることから、1日あたりのリジンの摂取量を換算すると体重1kgあたり40〜160mgの量となる。 【実施例】 【0019】 <実験例1> 30頭からなる5週齢のC57BL/6J雄性マウスに高脂肪食(食事組成はエネルギー比として、タンパク質:脂質:炭水化物=17:46:37)を16週間供与した。16週目より、各群10頭(各群n=10)からなるマウスに、(1)20%タンパク食(LF;タンパク質:脂質:炭水化物=2:7:1)、(2)1%リジン塩酸塩添加20%タンパク食(LF1K;食事あたり1%リジン塩酸塩(リジンベースとして0.8%含有)、(3)3%リジン塩酸塩添加20%タンパク食(LF3K;食事あたり3%リジン塩酸塩(リジンベースとして2.4%含有)を8週間供与した。ここに、リジンベースは遊離態リジンを言う。また、非肥満群として、(4)試験開始時より終了時まで、すなわち24週間、20%タンパク食(タンパク質:脂質:炭水化物=2:7:1)を供与した同種のマウス10頭からなる群(LL)を設けた。飼料組成は表1に示した。 【0020】
【0021】 食事摂取量を測定し、各試験食の1g当たりのエネルギーより、摂取エネルギー量を求めた。試験食摂取8週目に剖検を行い、体重、総脂肪(副睾丸周囲脂肪、腎周囲脂肪、腸間膜脂肪、および大腿部周辺の皮下脂肪の和)重量を測定した。その結果を後掲図1〜3に示す。LF群をコントロールとしてDunnett’s法にて検定を実施した。図中*はp<0.05を示す。 【0022】 図1に剖検時の体重を、図2に総脂肪量を示した。リジン添加量に依存して体重及び総脂肪量の有意な減少が認められ、本発明が抗肥満作用を持つものとして有用であることが示された。図3に摂取エネルギー量の変化を示した。群間に有意な差は認められず、リジン添加による体脂肪蓄積抑制効果が摂食抑制によるものではないことが示された。 【0023】 <実験例2> 各群10頭(各群n=10)からなる9週齢のC57BL/6J雄性マウス8群に、それぞれ、(1)10%タンパク食(LP;食事組成はエネルギー比として、タンパク質:脂質:炭水化物=1:1:8)、(2)リジン添加10%タンパク食(LPK)、(3)20%タンパク食(LF;タンパク質:脂質:炭水化物=2:1:7)、(4)リジン添加20%タンパク食(LFK)、(5)40%タンパク食(MP;タンパク質:脂質:炭水化物=4:1:5)、(6)リジン添加40%タンパク食(MPK)、(7)60%タンパク食(HP;タンパク質:脂質:炭水化物=6:1:3)、および(8)リジン添加60%タンパク食(HPK)を4週間供与した。リジン添加群は食事あたり3%量のリジン塩酸塩を添加した。飼料組成は表2に示した。 【0024】
【0025】 試験食摂取4週目に剖検を行い、体重、総脂肪(副睾丸周囲脂肪、腎周囲脂肪、腸間膜脂肪、および大腿部周辺の皮下脂肪の和)重量および腎重量を測定した。その結果を後掲図4〜6に示す。各飼料のリジン非添加群をコントロールとしてDunnett’s法にて検定を実施した。図中*はp<0.05を示す。 【0026】 図4に剖検時の体重を、図5に総脂肪量を示した。各食事にリジンを添加することにより体重及び総脂肪量の減少が認められ、特にLPK群、MPK群、HPK群において、体重の有意な減少が認められた。図6に腎重量を示した。食事中タンパク質含量が多くなるに伴い、腎重量が重くなり、高タンパク食摂取による腎臓への負担が確認された。よって、本発明におけるリジンの抗肥満作用は食事タンパク質エネルギー比が20%以下の場合において安全かつ最大限の効果を持つことが示された。 【0027】 <実験例3> 各群10頭(各群n=10)からなる9週齢のC57BL/6J雄性マウス4群に、それぞれ、(1)20%タンパク食(LF;食事組成はエネルギー比として、タンパク質:脂質:炭水化物=2:7:1)、(2)高脂肪食(HF;タンパク質:脂質:炭水化物=17:46:37)、(3)1%リジン塩酸塩添加高脂肪食(HF1K;食事あたり1%リジン塩酸塩(リジンベースとして0.8%)含有)、そして(4)3%リジン塩酸塩添加高脂肪食(HF3K;食事あたり3%リジン塩酸塩リジンベースとして2.4%)含有)を8週間供与した。飼料組成は表3に示した。 【0028】
【0029】 試験食摂取8週目に剖検を行い、血中トリグリセライド濃度を測定した。その結果を後掲図7に示す。HF群をコントロールとしてDunnett’s法にて検定を実施した。図中*はp<0.05を示す。 【0030】 図7より高脂肪食摂取による血漿中トリグリセライド濃度の上昇がリジン添加により有意に抑制され、抗高脂血症作用を持つことが示された。 【図面の簡単な説明】 【0031】 【図1】剖検時の体重を示す(実験例1)。 【図2】剖検時の総脂肪重量を示す(実験例1)。 【図3】飼育時の摂取エネルギー量の変化を示す(実験例1)。 【図4】剖検時の体重を示す(実験例2)。 【図5】剖検時の総脂肪重量を示す(実験例2)。 【図6】剖検時の腎臓重量を示す(実験例2)。 【図7】剖検時血漿のトリグリセライド濃度を示す(実験例3)。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000066 【氏名又は名称】味の素株式会社
|
| 【出願日】 |
平成16年4月28日(2004.4.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064687 【弁理士】 【氏名又は名称】霜越 正夫
【識別番号】100102668 【弁理士】 【氏名又は名称】佐伯 憲生
|
| 【公開番号】 |
特開2005−312365(P2005−312365A) |
| 【公開日】 |
平成17年11月10日(2005.11.10) |
| 【出願番号】 |
特願2004−134683(P2004−134683) |
|