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【発明の名称】 新規食品素材の製造方法
【発明者】 【氏名】多田 典生
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の素株式会社内

【氏名】松本 信俊
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の素株式会社内

【氏名】桜井 通成
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の素株式会社内

【氏名】西村 康史
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の素株式会社内

【氏名】鯉渕 恭子
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の素株式会社内

【氏名】岡村 英喜
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の素株式会社内

【要約】 【課題】加工食品やつゆ、たれ、ソースなどの各種調味料及び食品素材として使用することができる、無塩で、うま味、コク、濃厚感の強い味噌様食材を工業的規模で提供すること。

【解決手段】大豆、米、麦を主原料に、麹菌を用いて固体麹を作成し、味噌様の食材を製造する工程において、麹原料に麹菌及びバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を添加した後、除菌された空気を供給しながら、手入れ時を除き密閉された状態の製麹機内で製麹し、次に得られた麹にバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を混合し、さらに必要により1種類以上の食品素材を混合し、次に、該混合物をペースト状にして諸味を形成し、次に、該諸味を食塩非存在下で加水分解することにより無塩の速醸型味噌様食材を工業的規模で製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麹菌を用いて固体麹を作成し、味噌様の食材を製造する工程において、(1)食品素材に麹菌及びバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を添加し、(2)除菌された空気を連続的又は間欠供給しながら、手入れ時を除き密閉された状態の製麹機内で製麹し、(3)次に、得られた麹に、バクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を混合し、さらに必要により麹重量の0.01〜50倍量の1種類以上の食品素材を混合し(4)次に、該混合物をペースト状にして諸味を形成し、(5)次に、該諸味を実質的食塩非存在下で加水分解する工程を含むことを特徴とする速醸型味噌様食材の製造方法。
【請求項2】
食品素材が大豆又は米又は麦である請求項1記載の方法。
【請求項3】
麹菌がA.sojae及び/又はA.oryzaeである請求項1記載の方法。
【請求項4】
バクテリオシン生産乳酸菌がナイシン生産乳酸菌である請求項1記載の方法。
【請求項5】
ナイシン乳酸菌培養液若しくはその上清のナイシン活性が、20IU/ml以上である請求項4記載の方法。
【請求項6】
ナイシン乳酸菌培養液若しくはその上清のナイシン活性が、200IU/ml以上である請求項4記載の方法。
【請求項7】
乳酸菌がLactococcus lactis AJ110212(FERM BP−8552)である請求項1記載の方法。
【請求項8】
除菌された空気が0.3μm以上の塵を99.97%以上集塵できるフィルターにより除菌されたものである請求項1記載の方法。
【請求項9】
製麹時間が17〜62時間であり、密閉された状態で製麹する時間が15.5〜61.5時間である請求項1記載の方法。
【請求項10】
食品素材に添加するバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清の量が食品素材の重量の0.0001〜0.2倍量である請求項1記載の方法。
【請求項11】
食品素材に添加するバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清の量が食品素材の重量の0.001〜0.1倍量である請求項1記載の方法。
【請求項12】
麹に混合するバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清の量が麹重量の0.01〜5倍量である請求項1記載の方法。
【請求項13】
諸味の加水分解条件が20〜50℃、1〜50日間である請求項1記載の方法。
【請求項14】
諸味の加水分解条件が20〜45℃、3〜30日間である請求項1記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至14記載の製造方法で得ることが出来る、うま味、こくが強く、濃厚感があり、食品素材として、また調味料として使用し得る味噌様食材。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は新規食品素材として、また調味料として使用可能な、うま味、こくが強く、濃厚感があり、さらに食塩を含まない味噌様食材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
味噌は醸造食品のルーツともいえる日本の伝統的食品であるが、近年、生活の洋風化が進み、味噌の使われる料理も味噌汁が中心となり、その味噌汁の消費も減少傾向にある。そこで、健康食としての味噌の需要を喚起するためにも、現代社会にマッチした味噌を利用した食品の開発が望まれている。しかしながら、味噌は著量の塩分を含み、味噌の多用は塩分の取りすぎにつながるという懸念が強く、味噌の需要は減少しているのが現状である。
【0003】
ところで、味噌は、従来より味噌汁のほか、ドレッシング類あるいは各種調味料等に使用される。先述したとおり、味噌をさまざまな用途に用いようとした場合、その塩分が問題となるばかりでなく、味噌に内在する種々の微生物とくに耐熱性バクテリアであるBacillus属細菌が問題となることが多い。すなわち味噌はその製造においてほぼ外気に晒されながら醸造発酵されるため、さまざま微生物が混入する。味噌中では食塩によりそれらの微生物は増殖することがなく問題にならないことが多いが、ドレッシング類などに使用した場合、味噌に内在する微生物がその製品中で増殖し、製品の変敗を招くことがある。
【0004】
そこで我々は鋭意検討した結果、味噌の製法をベースに、食塩をまったく含まず、さらに内在する微生物、特にBacillus属細菌が検出されない程度まで低減された、まったく新しい味噌様の食品素材の開発に成功した。この食品素材は食塩を含まず、微生物も検出されないばかりでなく、味噌に比べてアミノ酸、特にグルタミン酸の含量が多く、うま味、こく、濃厚感が強く、調味料用途としても、またそのまま喫食される食材としても利用可能な食品素材である。
【0005】
従来、減塩味噌や無塩味噌の製法として、希釈及び透析を行った低塩味噌を使用して高蛋白含有食品を製造する方法(特許文献1)、味噌を水で希釈して脱塩味噌を製造する方法(特許文献2)、などさまざまな方法が試みられている。さらに、ナイシンというバクテリオシンを生産する乳酸菌を接種して乳酸発酵することにより、実験室規模において無塩味噌を調製する方法が開示されており、この方法ではバチルス及びその他の汚染細菌は検出されなかったとされている(非特許文献1)。しかしながら、実際の工業的規模での味噌の製造においては、ナイシン生産乳酸菌を加えるだけでは、外気より混入する様々な微生物、特にPediococcus属細菌、Enterococcus属細菌などの乳酸菌が熟成中に著しく増殖し、それらの乳酸菌が産する乳酸によりpHが低下し、いわゆる酸敗が生じる。すなわち、実験室規模での無塩味噌の調製は微生物制御の点で比較的容易であるが、工業規模の製造においては雑菌の制御は非常に困難である。非特許文献1には無塩味噌の工業生産について検討中との記載があるが、具体的な製造条件は開示されておらず、本発明の必須構成要件である、製麹を密閉状態で行うことについて全く言及されていない。また、回転加圧缶を用いて、麹原料の原料処理すなわち散水、蒸煮、冷却及び製麹を同一装置で麹を製造する方法が開示され、その方法では出麹について雑菌が検出されなかったとされている(特許文献3)。しかしながら、特許文献3は麹の培養方法及び装置に関するものであり、食塩非存在下での諸味の分解すなわち無塩味噌の製造に関しては全く言及されていない。また、特許文献3記載の装置は給水蒸気兼用管や容器を回転させる駆動装置など、装置が複雑、高価である。したがって、構造がシンプルで安価な装置を用いて、微生物の混入がなく、無塩下で醸造される食品素材の製造方法の開発が求められている。
【特許文献1】特開昭58−175463号公報
【特許文献2】特開昭63−214154号公報
【特許文献3】特開平7−107966号公報
【非特許文献1】加藤丈雄 食品の非加熱殺菌応用ハンドブックp.216
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は加工食品やつゆ、たれ、ソースなどの各種調味料及び新規食品素材として使用することができる、無塩で、うま味、コク、濃厚感の強い新規味噌様食材を工業的規模で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、食品素材に麹菌及びバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を添加し、除菌された空気を連続的又は間欠供給しながら、手入れの際を除いて密閉された状態の製麹機内で製麹し、次に、得られた麹に、バクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を混合して、さらに必要により麹重量の0.01〜50倍量の1種類以上の食品素材を混合し、該混合物をペースト状にして諸味を形成し、次に、該諸味を食塩非存在下で加水分解する方法により、食塩を含まず、うま味、コク、濃厚感の強い新規な味噌様食材を作成することが出来ることを見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
(1)麹菌を用いて固体麹を作成し、味噌様の食材を製造する工程において、食品素材に麹菌及びバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を添加し、除菌された空気を連続又は間欠供給しながら、手入れ時を除き密閉された状態の製麹機内で製麹し、次に、得られた麹に、バクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を混合し、さらに必要により麹重量の0.01〜50倍量の1種類以上の食品素材を混合し、次に、該混合物をペースト状にして諸味を形成し、次に、該諸味を実質的食塩非存在下で加水分解する工程を含むことを特徴とする速醸型味噌様食材の製造方法。
(2)食品素材が大豆又は米又は麦である(1)記載の方法。
(3)麹菌がA.sojae及び/又はA.oryzaeである(1)記載の方法。
(4)バクテリオシン生産乳酸菌がナイシン生産乳酸菌である(1)記載の方法。
(5)ナイシン乳酸菌培養液若しくはその上清のナイシン活性が、20IU/ml以上である(4)記載の方法。
(6)ナイシン乳酸菌培養液若しくはその上清のナイシン活性が、200IU/ml以上である(4)記載の方法。
(7)乳酸菌がLactococcus lactis AJ110212(FERM BP−8552)である(1)記載の方法。
(8)除菌された空気が0.3μm以上の塵を99.97%以上集塵できるフィルターにより除菌されたものである(1)記載の方法。
(9)製麹時間が17〜62時間であり、密閉された状態で製麹する時間が15.5〜61.5時間である請求項1記載の方法。
(10)食品素材に添加するバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清の量が食品素材の重量の0.0001〜0.2倍量である(1)記載の方法。
(11)食品素材に添加するバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清の量が食品素材の重量の0.001〜0.1倍量である(1)記載の方法。
(12)麹に混合するバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清の量が麹重量の0.01〜5倍量である(1)記載の方法。
(13)諸味の加水分解条件が20〜50℃、1〜50日間である(1)記載の方法。
(14)諸味の加水分解条件が20〜45℃、3〜30日間である(1)記載の方法。
(15)(1)乃至(14)記載の製造方法で得ることが出来る、うま味、こくが強く、濃厚感があり、食品素材として、また調味料として使用し得る味噌様食材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、無塩であることから健康感があり、さらに麹菌のプロテアーゼ、ペプチダーゼなどの酵素活性が食塩で阻害されることが無いため、通常の味噌より短い発酵熟成期間で、可溶化窒素、グルタミン酸濃度が、うま味、コク、濃厚感が強い新規味噌様食材をシンプルで安価な装置を用いて提供することが出来る。また該食材は調味料用途としても、食品素材としても使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において麹原料として使用する食品素材は、通常の味噌に用いられる大豆、米、麦などを用いることが出来る。必要により、これらの原料を水浸漬処理、蒸煮処理してもよい。
【0011】
上記原料に抗菌物質であるバクテリオシンを生産する能力のある乳酸菌の培養液若しくはその上清、及び麹菌を混合し、除菌された空気を供給でき、密閉できる製麹機に盛込む。除菌された空気が供給でき、密閉できる製麹機とは、製麹機内に除菌された空気を供給する機能を持ち、製麹機内部と外気を遮断できる構造を持つものであり、例えば回転ドラム式製麹機が挙げられるが、除菌された空気を製麹機内部に供給する構造を持ち、密閉状態が得られる開閉可能な蓋付の製麹機のほうが、構造がシンプルで安価なためより好ましい。空気の除菌方法は0.3μm以上の塵を99.97%以上集塵できるフィルター、例えばHEPAフィルターなどを用いることが出来る。尚、製麹機の排風口には外気を遮断するためフィルターを取り付ける必要がある。密閉できない製麹機、例えば円盤回転式製麹機、静置通風式製麹機などは、外気からの微生物の混入を免れず、特にPediococcus属細菌、Enterococcus属細菌などの乳酸菌が混入し、熟成中に乳酸を生産して、いわゆる酸敗を招く場合がある。通風の方法は特に限定されるものではなく、内部通風方式、表面通風方式などを用いることが出来る。
【0012】
乳酸菌の培養液若しくはその上清は、例えばナイシン活性が20IU/ml以上のものを、好ましくは200IU/mlのものを、麹原料の0.0001〜0.2倍量、好ましくは0.001〜0.1倍量、より好ましくは0.01〜0.05倍量添加する。0.0001倍量より少ない場合では抗菌作用が少なく、雑菌の汚染を免れない。もちろん、乳酸菌の培養液若しくはその上清のナイシン活性に応じて添加量を変えることはできる。また対麹原料の0.2倍量を超える場合では混合物の水分含量が多くなり、麹菌の生育に悪影響を及ぼす。乳酸菌が生産するバクテリオシンは、ナイシン以外に、ペディオシン、サカシン、ヌカシンなどが挙げられるが、中でも抗菌スペクトルの広さからナイシンを用いることが望ましい。その際、乳酸菌が生産するナイシンの種類はナイシンA、ナイシンZならびにその類縁体どれでもかまわない。微生物の混入、増殖を防ぐには使用する乳酸菌培養液若しくはその上清中のバクテリオシン活性が高い方が望ましい。そこで例えば、ナイシンZを高生産するL.lactis AJ110212(FERM BP−8552)等を使用することが出来る。尚、L.lactis AJ110212株は2003年11月19日に独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM BP−8552の受託番号で寄託されている。
【0013】
麹菌には味噌同様A.oryzae及び/又はA.sojaeを使用することが出来る。使用する麹菌は原料の蛋白質をアミノ酸、ペプチドまで高分解し、得られる新規味噌様食材に強いうま味、コク、濃厚感を与えることができるものが望ましいが、特に制限をうけるものではない。
【0014】
麹原料と乳酸菌培養液若しくはその上清、麹菌の混合物を製麹機内に盛り込んだ後、手入れ(麹菌の生育を促進するために、製麹機内に盛込まれた混合物を例えば10時間毎に攪拌する工程)の際を除いて、製麹機内を密閉した状態で、20〜40℃で17〜62時間、好ましくは24〜34℃で43〜55時間、より好ましくは43〜49時間製麹を行い、麹を得る。製麹温度が40℃を超えると原料蛋白質の分解に必要な酵素活性が低くなり、また温度が20℃未満になると麹菌の生育が悪くなる。いずれの場合も原料蛋白質の分解に必要な酵素を充分得られず、充分なうま味、コク、濃厚感を持った新規味噌様食材を得ることが出来ない。また、製麹時間が17時間未満では麹菌を充分生育させることが困難であり、充分なうま味、コク、濃厚感を持った新規味噌様食材を得ることが出来ない。製麹時間を短くする場合は、麹の生育速度を上げるため、製麹温度を34〜40℃に設定することが望ましい。また、製麹時間が62時間を越えると原料蛋白質の分解に必要な酵素活性が低くなり、充分なうま味、コク、濃厚感が得られないばかりか、苦味が付与される。製麹時間を長くとる場合は、麹の生育速度を下げるため、製麹温度を20〜30℃に設定することが望ましい。尚、手入れの際は、製麹機内部は外気に晒されるため、雑菌の混入の危険性があり、その危険性を最小限に抑えるべく、手入れ工程の総時間、換言すると製麹機の密閉状態が解かれる時間の積算値は、できるだけ短くする必要がある。すなわち、手入れに要する時間を短くするか、手入れ回数を少なくする必要がある。手入れ時間は1回1.5時間以下、好ましくは30分以下、より好ましくは約15分とする。また、手入れ回数であるが、通常約10時間に1回を目安に手入れを行う。従って、少なくとも15.5〜61.5時間、好ましくは16.5〜60.5時間外気から遮断された密閉状態で製麹を行う。
【0015】
次に、得られた麹にナイシン等バクテリオシンを生産する乳酸菌培養液若しくはその上清を諸味の水分含量が35〜60%、好ましくは40〜50%となるように、麹重量の0.01〜5倍量、好ましくは0.1〜1倍量添加し、必要により1種類以上の食品素材を麹重量の0.01〜50倍量添加し、諸味の形成を行う。この場合、「必要により」とは、麹の原料を大豆とした豆麹を用いる場合は、諸味の形成において再度大豆は添加しなくてもよい場合があることを意味する。すなわち、麹の原料を大豆とした場合は、大豆、乳酸菌培養液若しくはその上清、麹菌からなる混合物を製麹した麹に、再び乳酸菌培養液若しくはその上清を添加し、諸味を形成することになる。また、麹に食品素材、例えば大豆、米、麦などを加えてもよい。その場合、あらかじめ蒸煮、もしくは炒煎して用いることができる。例えば、麹の原料を米や麦とした米麹や麦麹を用いる場合、あらかじめ蒸煮もしくは炒煎した大豆を添加することができる。あるいは、豆麹を用いる場合、あらかじめ蒸煮もしくは炒煎した麦や、米を添加することができ、コストダウン目的で大豆を添加することもできる。また、それぞれの植物原料の抽出物、またはその特定成分を加えることもできる。例えば大豆抽出物、米デンプン、小麦ふすまなどが例として挙げられる。またこの食品素材の種類、及び添加量により、色のほか、呈味、風味などをコントロールすることが出来るが、例えば米を添加することにより、甘味を付与することができる。乳酸菌培養液若しくはその上清及び1種類以上の食品素材を麹へ添加する順序は任意であり、麹へ食品素材を添加するのは、乳酸菌培養液若しくはその上清を麹に添加する前でも、後でも、また同時でもよい。
【0016】
乳酸菌培養液若しくはその上清の添加量が0.01倍量未満では、微生物の増殖を抑えきれない。また5倍量を超えると、蛋白質の分解が充分でなく、充分なうま味、コク、濃厚感を持った新規味噌様食材を得ることが出来ない。
【0017】
次に、麹、1種類以上の食品素材とナイシン乳酸菌培養液若しくはその上清の混合物をチョッパーなどですり潰し、ペースト状にして諸味を形成する。その諸味を20〜50℃、好ましくは20〜45℃、より好ましくは25〜35℃に保温し、1〜50日間、好ましくは3〜30日間、より好ましくは4〜14日間、さらに好ましくは4〜9日間発酵熟成し、加水分解する。温度が20℃未満では蛋白質の分解が充分でなく、充分なうま味、コク、濃厚感を持った新規味噌様食材を得ることが出来ない。また50℃を超える温度では諸味に含まれる糖とアミノ酸が反応して、新規味噌様食材に褐変臭、焦げ臭、苦味がついて好ましくない。熟成の日数についても同様の傾向があり、24時間未満であれば蛋白質の分解が充分でなく、充分なうま味、コク、濃厚感を持った新規味噌様食材を得ることが出来ない。また50日間以上では諸味に含まれる糖とアミノ酸が反応して、新規味噌様食材に褐変臭、焦げ臭、苦味がついて好ましくない。
【0018】
次に必要な場合は熟成、加水分解が終了した諸味を、50〜130℃で1〜150分間加熱する。加熱の目的は、殺菌、及び諸味に含まれるプロテアーゼなどの酵素を失活させ、保存中の品質変化を防ぐことである。加熱の方法は限定されるものではなく、例えば味噌の火入れに使用される二重管式加熱機、多管式加熱機などが使用でき、また湯浴なども使用することが出来る。50℃未満では殺菌及び酵素の失活が充分でなく、130℃を超えると、褐変臭、焦げ臭、苦味がついて好ましくない。時間についても同様の傾向があり、1分間未満では殺菌及び酵素の失活が充分でなく、150分間を超えると、褐変臭、焦げ臭、苦味がついて好ましくない。
【0019】
この新規味噌様食材はペースト状のままで使用することが出来るが、またスプレードライヤー、ドラムドライヤー、バキュームドラムドライヤー、フリーズドライヤーなどで乾燥させ、粉末として使用することも出来る。
【0020】
本発明の方法で得られる新規味噌様食材は、官能評価によれば、強いうま味、コク、濃厚感を有する。この新規味噌様食材は、各種の飲食品に幅広く利用できる汎用性がある。その特徴として、飲食品にコク、濃厚感を付与し、味質を改善する効果があり、例えばデミグラスソースのような洋風ソース、ポタージュスープなどの洋風スープ、豆板醤のような中華用調味料、つゆ、たれのような和風調味料、またドレッシングなどに使用が出来、さらに従来の味噌では考えられなかった、餡やプリン、アイスクリーム、ケーキなどの菓子類にも使用できる。さらにそのまま食べても充分美味なものであり、わずかな味の調整で大豆に含まれる健康機能を多量に摂食することができる。
【0021】
本発明の方法で得られる新規味噌様食材の使用形態は、各種飲食品の製造又は加工時に使用する形態、液状又は顆粒状、粉末状の各種調味料に配合して使用する方法、そのまま喫食する形態等が挙げられる。
【実施例1】
【0022】
(熟成時間の検討)
大豆50kgを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆を密閉型製麹機に投入し、さらにL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液1kg(ナイシン活性1208IU/ml)、種麹(ビオック社製、豆味噌用種麹)0.05kgを混合し、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはHEPAフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に15分間、製麹機内部が密閉されておらず外気に晒された状態で行った。得られた麹にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性1208IU/ml)を15.4kg添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき500gとなるように充填した。このパウチを30℃、3〜60日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0023】
以上の操作によって取得した新規味噌様食材について、可溶化した窒素(可溶化TN)、グルタミン酸濃度、乳酸濃度、pH、及び微生物の分析を行った。また、3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。官能評価はそのまま食べて評価し、官能評点は5点を満点として3点以上を合格とした。その結果を表1に示す。
【0024】
その結果、全ての実験区において微生物は検出されなかった。また、新規味噌様食材として官能合格であったのは、3〜30日間、うま味、コク、濃厚感が強いのは4〜14日間、評点が高かったのは4〜9日間で、最高点は7日間であった。したがって、熟成、加水分解の期間は3〜30日間、好ましくは4〜14日間、より好ましくは4〜9日間であることが判明した。特筆すべきは可溶化TN及びグルタミン酸の濃度である。一般に市販される豆味噌は、可溶化TNは1.2重量%、グルタミン酸は0.6重量%程度であり、この新規味噌様食材、特に分解期間が7日以上では可溶化TNは2倍以上、グルタミン酸では3倍以上となっており、これが強いうま味、コク、濃厚感を付与するのに寄与している。
【0025】
【表1】


【実施例2】
【0026】
(分解温度の検討)
大豆50kgを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆を密閉型製麹機に投入し、さらにL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)1kg、種麹(ビオック社製、豆味噌用種麹)0.05kgを混合し、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはHEPAフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に15分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。得られた麹にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)を15.4kg添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき500gとなるように充填した。このパウチを20〜50℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0027】
以上の操作によって取得した新規味噌様食材について、3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。官能評価はそのまま食べて評価し、官能評点は5点を満点として3点以上を合格とした。その結果を表2に示す。
【0028】
その結果、新規味噌様食材として官能合格であったのは、20〜50℃、うま味、コク、濃厚感が強く、評点が3.5点以上であったのは20〜45℃であった。したがって、熟成の温度は20〜50℃、好ましくは20〜45℃であることが判明した。
【0029】
【表2】


【実施例3】
【0030】
(原料及び蒸煮大豆の添加量の検討)
米300gを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮缶で100℃、30分蒸煮した。蒸煮米にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)6g、種麹(樋口もやし社製)1gを混合し、密閉されるラボ製麹機に盛込み、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に2分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。得られた米麹100gに対し大豆を100g、250g、500g、1kg、2kgそれぞれ加え、L.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)を諸味の水分含量が47%となるように順に0.15g、0.06g、0.015g、0.0075g混合した後、チョッパーにより粉砕し、ペースト状にした。得られたペーストをラミネートパウチに1袋につき500gとなるように充填した。このパウチを30℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0031】
以上の操作によって取得した新規味噌様食材について、3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。官能評価はそのまま食べて評価し、官能評点は5点を満点として3点以上を合格とした。その結果を表3に示す。
【0032】
その結果、新規味噌様食材としていずれの添加量でも官能合格であり、蒸煮大豆の添加量が少ないと甘味が強く、色も白かった。一方、蒸煮大豆の添加量が多いとうま味、コク、濃厚感が強く、赤い色を示した。
【0033】
【表3】


【実施例4】
【0034】
(ナイシン乳酸菌の投入量の検討)
大豆300gを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)0.3〜30g、種麹(ビオック社製、豆味噌用種麹)1gを混合し、密閉できるラボ製麹機に盛込み、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に2分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。得られた麹にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)を92.5g添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき300gとなるように充填した。このパウチを30℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0035】
以上の操作によって取得した味噌様食材について、微生物の分析及び3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。官能評価はそのまま食べて評価し、官能評点は5点を満点として3点以上を合格とした。その結果を表4に示す。
【0036】
ナイシン乳酸菌の添加量が麹の0.001〜0.1倍量の範囲では、特に雑菌汚染は認められず、微生物的に清浄な新規味噌様食材が得られた。
【0037】
【表4】


【実施例5】
【0038】
(培養液中のナイシン活性の検討)
大豆350gを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性26〜2600IU/ml)70g、種麹(ビオック社製、豆味噌用種麹)3.5gを混合し、密閉できるラボ製麹機に盛込み、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に2分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。得られた麹275gにL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性26〜2600IU/ml)を50g、蒸煮米175gを添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき500gとなるように充填した。このパウチを30℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0039】
以上の操作によって取得した味噌様食材について、微生物の分析及び3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。官能評価はそのまま食べて評価し、官能評点は5点を満点として3点以上を合格とした。その結果を表5に示す。
【0040】
ナイシン活性が26〜2600IU/mlの範囲では、特に雑菌汚染は認められず、微生物的に清浄で官能的にも良好な新規味噌様食材が得られた。
【0041】
【表5】


【実施例6】
【0042】
(製麹温度、時間の検討)
大豆300gを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性3000IU/ml)6g、種麹(ビオック社製、豆味噌用種麹)1〜3gを混合し、密閉できるラボ製麹機に盛込み、30℃〜35℃、16〜62時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に2分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。得られた麹にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性2500IU/ml)を92.5g添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき300gとなるように充填した。このパウチを30℃、7〜14日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0043】
以上の操作によって取得した味噌様食材について、微生物の分析及び3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。官能評価はそのまま食べて評価し、官能評点は5点を満点として3点以上を合格とした。その結果を表6に示す。
【0044】
【表6】


【実施例7】
【0045】
(米配合による効果)
大豆7000gを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性2900IU/ml)140g、種麹(ビオック社製、味噌用種麹)7gを混合し、密閉できるラボ製麹機に盛込み、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に2分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。次に114℃、40分の蒸煮後、30℃まで冷却した米を、麹:蒸煮米の重量比が9:1〜5:5になるように添加し(10:0をコントロールとした)、L.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性2200IU/ml)を混合物の水分が43%になるように添加した後、混合物をチョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき300gとなるように充填した。このパウチを30℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0046】
以上の操作によって取得した味噌様食材について、微生物の分析及び3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。官能評価はそのまま食べて評価し、官能は苦味、うま味、甘みについてコントロール品(米配合なし)を5点として他の試作品を評価した。その結果を表7に示す。
【0047】
米を配合することにより、苦味が低減し、甘味が増加することが明らかになった。また今回9:1〜5:5の配合比においては適度なうま味、濃厚感、甘味を有することが明らかになった。従って、苦味を付与したくない食品、甘味を付与したい食品への利用には米を配合した該味噌様食材を使用することができると考える。
【0048】
【表7】


【実施例8】
【0049】
大豆50kgを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆を密閉型製麹機に投入し、さらにL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)1kg、種麹(ビオック社製、豆味噌用種麹)0.05kgを混合し、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはHEPAフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に15分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。得られた麹にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)を15.4kg添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき500gとなるように充填した。このパウチを30℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0050】
以上の操作によって取得した味噌様食材を用いて、野菜炒めを作製した。野菜炒めは、キャベツ400g、もやし50g、豚肉150gに対し、新規味噌様食材3.5g及び食塩2.4gを加えて炒めた。対照として新規味噌様食材の代わりに、市販味噌(塩分11%)を20g(食塩量2.2g)加えて炒めたものを用いた。この野菜炒めを3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。その結果を表8に示す。
市販味噌は味がぼけ、濃厚感が足らなかったのに対し、新規味噌様食材は豊かな濃厚感を野菜炒めに付与し、優れた官能が得られた。
【0051】
【表8】


【実施例9】
【0052】
大豆50kgを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆を密閉型製麹機に投入し、さらにL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)1kg、種麹(ビオック社製、豆味噌様種麹)0.05kgを混合し、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはHEPAフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に15分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。得られた麹にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)を15.4kg添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき500gとなるように充填した。このパウチを30℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0053】
以上の操作によって取得した新規味噌様食材100gに対し、食塩2g、酢1g、濃口醤油5mlを加え、よく混合し、ペースト品を作製した。対照として新規味噌様食材の代わりに、市販味噌に対し、食塩2g、酢1g、濃口醤油5mlを加え、よく混合して作製したペースト品を用いた。このペースト品を、3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。その結果を表9に示す。
【0054】
市販味噌は塩味が強く、うま味、コク、濃厚感も弱かったのに対し、新規味噌様食材はコクがあり濃厚感豊かな風味を持っていた。新規味噌様食材はそのまま食すことができるばかりでなく、たれとして使用することも出来るものであった。
【0055】
【表9】


【実施例10】
【0056】
大豆50kgを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆を密閉型製麹機に投入し、さらにL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)1kg、種麹(ビオック社製、豆味噌様種麹)0.05kgを混合し、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱にはHEPAフィルターを通して除菌した空気を用いた。製麹中は、手入れの際を除いて、密閉された状態の製麹機内で製麹した。手入れは製麹開始後10時間毎に15分間製麹機内部が外気に晒された状態で行った。得られた麹にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)を15.4kg添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき500gとなるように充填した。このパウチを30℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0057】
以上の操作によって取得した新規味噌様食材を用いて、クリームを作製した。卵黄6個、砂糖150g、新規味噌様食材100gをしっかりかき混ぜ、続いて小麦粉50gを加えて混ぜ合わせた。牛乳を沸騰寸前まで温めたのち、500mlを加えて混ぜ、溶かしバター500gを加えて、クリームを作製した。対照として新規味噌様食材を入れずに、溶かしバター600gを加えたクリームを作製した。このクリームを、3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。その結果を表10に示す。
【0058】
新規味噌様食材を加えたクリームは豊かな濃厚感を持ち、また甘味が強く、優れた官能が得られた。
【0059】
【表10】


[比較例1]
【0060】
(外気開放型及び密閉型製麹機の比較)
大豆500kgを水に浸漬し、吸水させた後、蒸煮釜にて114℃、40分蒸煮した。蒸煮大豆にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)10kg、種麹(ビオック社製、豆味噌用種麹)0.5kgを混合し、静置通風型(外気開放)製麹機に投入後、30℃、43時間製麹した。製麹中の発酵熱の除熱には除菌しない空気を通風した。得られた麹にL.lactis AJ110212(FERM BP-8552)培養液(ナイシン活性4500IU/ml)を154kg添加し、混合した後、チョッパーにより粉砕、ペースト状とした。このペーストをラミネートパウチに1袋につき500gとなるように充填した。このパウチを30℃、7日間保温後、80℃、40分間加熱した。
【0061】
以上の操作によって取得した新規味噌様食材について、微生物の分析、可溶化TN、グルタミン酸濃度、乳酸濃度、pHの分析及び3名からなる専門の官能評価パネルによる官能評価を行った。官能評価はそのまま食べて評価し、官能評点は5点を満点として3点以上を合格とした。その結果を、静置通風型(外気開放)製麹機の替わりに本発明の密閉型製麹機を用いた以外は全く同条件の操作によって取得した新規味噌様食材の分析結果、評価結果とともに表11に示す。
【0062】
その結果、静置通風型製麹機を用いた新規味噌様食材は、火入れ前ではBacillus属細菌、Pediococcus属細菌 、Staphyrococcus属細菌などの雑菌に汚染されており、火入れ後もBacillus属細菌は残存していた。また官能評価の結果、酸味が非常に強く、不合格となった。乳酸値を測定すると、密閉型製麹機を用いて製麹した物に比べ非常に高く、Pediococcus属細菌の混入により酸敗が起こったと考えられた。
【0063】
【表11】


【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の新規味噌様食材は、その強いうま味、コク、濃厚感を利用して、調味料用途、食材として使用でき、つゆ、たれ類などの各種調味料や、菓子類を含む加工食品に広く用いることが出来る。したがって本発明は工業上、特に食品分野において極めて有用である。
【出願人】 【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目15番1号
【出願日】 平成17年3月17日(2005.3.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−304493(P2005−304493A)
【公開日】 平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願番号】 特願2005−77899(P2005−77899)