| 【発明の名称】 |
表皮に傷を付けた丸大豆及びその利用 |
| 【発明者】 |
【氏名】織茂 良和
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| 【要約】 |
【課題】丸大豆中に石豆が存在していたとしても利用可能な丸大豆の処理法を提供する。
【解決手段】丸大豆の表皮に傷を付けるという極めて簡便な方法で、たとえ石豆が数%程度混入していても、石豆を含めたすべての丸大豆を十分に吸水させることができるため、醤油、味噌、納豆、煮豆、豆腐等の丸大豆利用食品全般に応用可能な極めて実用的な方法である。しかも、丸大豆の表皮に傷を付けるだけで、完全に脱皮させるわけではないので、吸水や浸漬時に水溶性窒素等の有用成分が浸漬水中に溶出する危険性も最小限に抑制することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表皮に傷を付けた丸大豆。 【請求項2】 脱皮機を用いて部分的に脱皮した丸大豆である、請求項1記載の丸大豆。 【請求項3】 請求項1記載の丸大豆を用い、吸水後、加熱処理して得られた処理大豆を原料とする丸大豆利用食品の製造法。 【請求項4】 丸大豆利用食品が、醤油、味噌、納豆、煮豆又は豆腐である、請求項3記載の製造法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、丸大豆の表皮に傷を付けた丸大豆及び当該丸大豆を用い、吸水後、加熱処理して得られる処理大豆を原料とする醤油、味噌、納豆、豆腐等の製造法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 一般に、丸大豆を原料として醤油、味噌、納豆、煮豆、豆腐等(以下、まとめて「丸大豆利用食品」と言うこともある)を製造する場合は、大豆たんぱく質を酵素や微生物による作用を受けやすくするため、あるいは煮汁等をしみ込ませるため、原料処理の段階で大豆を十分に吸水、蒸煮させる必要がある。 【0003】 しかし、丸大豆には、石豆と称されている難吸水性の丸大豆の混入率が非常に高いという欠点が指摘されていた。石豆の存在は、味噌、納豆、煮豆、豆腐等においては、商品価値を極端に低下させるため、品質管理上の深刻な問題となっている。また、醤油においても、石豆は蒸煮後も麹菌のプロテアーゼの作用を受けにくいタンパク質が存在するため、火入れをした際にオリが増大し、歩留まりが低下する。 【0004】 このような石豆の問題は、大豆に限らず、小豆等の他の豆類にも見られ、その対処法として多くの場合、高精度の選別機を導入し、吸水前に石豆を選別する方法が採られていた。しかし、石豆の形状、色調などは外観的に通常の豆と酷似しており、たとえ高精度の選別機を導入したとしても、石豆を100%選別することは事実上不可能であった。 【0005】 一方、(1)特殊な装置を利用する方法(特許文献1)、(2)特殊な浸漬処理を施す方法(特許文献2)、未熟な子実(青豆)を使用する方法(特許文献3)、(4)尿素等を利用する方法(特許文献4)なども報告されているが、いずれも特殊な装置や方法を利用する方法であり、また、丸大豆利用食品全般に応用可能な方法でもないことから、より簡便で、丸大豆利用食品全般に利用可能な簡便な方法の確立が切望されていた。 【0006】 【特許文献1】特開平11−9215 【特許文献2】特開平8−242798(特許第2714569号) 【特許文献3】特開平6−178665(特許第2741322号) 【特許文献4】特開平7−177860 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 したがって、本発明は、より簡便で、丸大豆利用食品全般に利用可能な丸大豆の吸水法を提供することを主な目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、丸大豆の表皮を傷つけた表皮裂傷大豆であれば、石豆が存在していたとしても十分に吸水させることが可能で、醤油、味噌、納豆、煮豆、豆腐等の丸大豆利用食品全般に応用可能な方法であることを確認し、本発明を完成させた。 【0009】 したがって、本発明は、丸大豆の表皮に傷を付けた丸大豆に関するものである。 また、本発明は、そのような丸大豆を用い、吸水後、加熱処理して得られた処理大豆を原料とする丸大豆利用食品の製造法に関するものである。 【発明の効果】 【0010】 本発明は、丸大豆の表皮に傷を付ける(たとえば、臼やスリットと大豆とをこすり合わせるような脱皮機を用いて部分的に脱皮させたり、針状のもので部分的に皮に孔を開ける等)という極めて簡便な方法で、たとえ石豆が数%程度混入していても、石豆を含めたすべての丸大豆を十分に吸水させることができるため、醤油、味噌、納豆、煮豆、豆腐等の丸大豆利用食品全般に応用可能な極めて実用的な方法である。 【0011】 しかも、丸大豆の表皮に傷を付けるだけで、完全に脱皮させるわけではないので、吸水や浸漬時に水溶性窒素等の有用成分が浸漬水中に溶出する危険性も最小限に抑制することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 本発明で使用する丸大豆とは、生の全粒大豆もしくは全脂大豆のことを意味し、丸大豆中の石豆の存在比率は、特に限定されるものでもない。 【0013】 最初に、本発明は、丸大豆の表皮に傷を付けた丸大豆(以下、表皮裂傷丸大豆と称することもある)に関するものである。 【0014】 丸大豆の表皮に傷をつける方法としては、傷を付けることのできる方法であれば特に限定されるものではない。殊に、産業的レベルで大量の丸大豆の表皮に傷を付けることのできる方法が好ましい。 【0015】 具体的には、通常の脱皮機を用いて丸大豆の表皮を部分的に脱皮する方法を用いることができる。なお、脱皮による欠減率(脱皮によって実から外れる部分)を高めると水溶性窒素等の有用成分が溶出する確率も高くなるため、欠減率としては、5%以下、好ましくは1〜0.1%程度が適当である。 【0016】 このような表皮裂傷丸大豆は、後述の実施例で示すように、石豆が存在していても十分に吸水させることが可能で、しかも水溶性窒素の溶出も抑制でき、丸大豆利用食品の原料として極めて有用なものである。 【0017】 次に、本発明は、上記の表皮裂傷丸大豆を用い、吸水後、加熱処理して得られた処理大豆を原料とする丸大豆利用食品の製造法に関するものである。 【0018】 丸大豆利用食品としては、丸大豆をそのままの形で利用する食品、あるいは丸大豆を原料として利用する食品であればよく、具体的には醤油、味噌、納豆、煮豆、豆腐等を例示することができる。 【0019】 醤油、味噌、納豆、煮豆又は豆腐を製造する場合には、丸大豆として上記の表皮裂傷丸大豆を用い、吸水後、加熱処理(蒸煮、煮熟など)して得られた処理大豆を原料とする以外は、通常の丸大豆以外の原料を用い、常法に従って処理加工することで、目的とする醤油、味噌、納豆、煮豆又は豆腐を得ることができる。 【0020】 醤油の場合を具体例として、以下、原料処理を中心に詳述する。 【0021】 先ず、表皮裂傷丸大豆を水に浸漬することで吸水させる。具体的には、表皮裂傷丸大豆に対して2〜10倍量の水を加え、10〜60℃の範囲で、2〜24時間程度浸漬すればよい。浸漬水のpHは、特に限定されないが、蛋白質の等電点付近に調整されていることにより、大豆蛋白質中の水溶性窒素の浸漬水への溶出を最小限に抑えることができるため、必要に応じてpHを調整してもかまわない。 【0022】 次いで、吸水後の処理大豆を、連続蒸煮缶を用いる蒸煮方法、高温加熱水蒸気中で連続的に加熱処理する方法等を用いて加熱処理し、焙煎処理した炭水化物原料(例えば、小麦、大麦、米等)とを混合して製麹原料とし、この製麹原料に麹菌を接種し、製麹、醸造を行うことで、醤油を得ることができる。 【実施例】 【0023】 以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。 【0024】 実施例1 (部分脱皮丸大豆の調製) アメリカ産丸大豆(石豆含有率1.3%)を回転する石臼と孔の開いたスクリーンの間を通すことにより脱皮を行った(原田産業製)。この際、対流時間(石臼とスクリーンの間に丸大豆が留まる時間)と処理回数を調整することで、表皮裂傷丸大豆(本発明:対流時間少、処理回数1回)と完全脱皮丸大豆(対照2:対流時間多、処理回数4回)を調製した。 【0025】 無処理の丸大豆(対照1)、上記表皮裂傷丸大豆(本発明)及び完全脱皮丸大豆(対照2)各200gを550mlの水(pH7)に15℃で16時間浸漬後、大豆水分、石豆の割合、浸漬水のBrix、欠減率を測定した。 【0026】 【表1】
【0027】 表1から明らかなように、対照1では吸水後も石豆が存在しているのに対し、対照2及び本発明では石豆を含む丸大豆の表皮に傷が付き、吸水が十分に行われているため、石豆の存在は確認されなかった。 【0028】 さらに、対照2では浸漬水のブリックス(Brix)が高く、つまり水に大豆成分(水溶性窒素、水溶性糖類など)が溶出しているのに対し、本発明1では浸漬水ブリックスが低く、大豆成分の溶出はほとんど観察されなかった。 【0029】 実施例2 実施例1の対照1の丸大豆を浸漬後、石豆と通常の丸大豆を目視によって選り分け、0〜10%までの石豆頻度の丸大豆を調整した(対照3)。これと実施例1と同様に処理した表皮裂傷丸大豆(本発明)とをそれぞれ2Kg/cm2で7分蒸煮して処理大豆とし、常法に従い麹菌を摂取するとともに等量の割砕小麦を混合して製麹し、その後食塩水と混合して6ヵ月間の醸造を行って生醤油を得た。この生醤油を沸騰水中で10分間加熱し、そのオリ量を観察した。 【0030】 【表2】
【0031】 表2から明らかなように、対照3の丸大豆は石豆頻度が高くなるに従って得られた醤油の加熱後のオリ量が増える傾向が認められたが、本発明の表皮裂傷丸大豆を用いた醤油では、加熱後のオリ量は石豆が0%の対照3の丸大豆を用いた醤油と同程度のオリ量であった。 【0032】 実施例3 実施例1と同様に処理した表皮裂傷丸大豆と未処理の丸大豆を、それぞれ室温(15〜25℃)で水に一晩浸漬後、加圧蒸煮して蒸煮大豆を調製した。得られた各蒸煮大豆に、納豆菌の胞子を接種した後、発泡ポリスチロール製容器40個に50gづつ分注し、薄膜シートを被せて蓋をし、発酵室に移して室温39℃で18時間の発酵、冷蔵室(4℃)で1夜保管して熟成させ、納豆を得た。 得られた納豆全量の石豆含有率を調べたところ、表皮裂傷丸大豆を用いて調製した納豆では石豆は全く観察されなかったのに対し、無処理の丸大豆を用いて調製した納豆には、いくつか石豆が確認された。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006770 【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
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| 【出願日】 |
平成16年4月23日(2004.4.23) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2005−304409(P2005−304409A) |
| 【公開日】 |
平成17年11月4日(2005.11.4) |
| 【出願番号】 |
特願2004−127453(P2004−127453) |
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