| 【発明の名称】 |
苦蕎麦茶の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】横道 泰隆 【住所又は居所】静岡県榛原郡相良町女神21番地 株式会社伊藤園中央研究所内
【氏名】植田 幸市 【住所又は居所】静岡県榛原郡相良町女神21番地 株式会社伊藤園内
【氏名】岡野谷 和則 【住所又は居所】静岡県榛原郡相良町女神21番地 株式会社伊藤園中央研究所内
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| 【要約】 |
【課題】γ−アミノ酪酸(ギャバ)という薬効成分を富化するための苦蕎麦茶の製造方法を提供する。
【解決手段】苦蕎麦の穀粒を、初期温度50〜80℃の熱水に浸漬した後、当該苦蕎麦の穀粒を蒸し、乾燥後実と殻とを分離し、その実を苦蕎麦茶とすることを特徴とする苦蕎麦茶の製造方法を提案する。苦蕎麦の穀粒を初期温度50〜80℃の熱水に浸漬させることにより、苦蕎麦に含まれているグルタミン酸デカルボキシラーゼが活性化し苦蕎麦中のグルタミン酸がγ−アミノ酪酸に変化するため、γ−アミノ酪酸の溶出量は初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて約3倍に増やすことができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 苦蕎麦の穀粒を、初期温度50〜80℃の熱水に浸漬した後、当該苦蕎麦の穀粒を蒸し、乾燥させた後、実と殻とを分離し、その実を苦蕎麦茶とすることを特徴とする苦蕎麦茶の製造方法。 【請求項2】 苦蕎麦の穀粒を、初期温度50〜80℃の熱水に浸漬した後、当該苦蕎麦の穀粒を蒸し、乾燥させた後、実と殻とを分離し、その実を加熱処理して苦蕎麦茶とすることを特徴とする苦蕎麦茶の製造方法。 【請求項3】 苦蕎麦の穀粒を初期温度50〜80℃の熱水に浸漬することにより、苦蕎麦茶を抽出した際に溶出されるγ−アミノ酪酸を、苦蕎麦の穀粒を初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて富化させることを特徴とする請求項1又は2記載の苦蕎麦茶の製造方法。 【請求項4】 苦蕎麦の穀粒を初期温度50〜80℃の熱水に浸漬することにより、苦蕎麦茶を抽出した際に溶出されるγ−アミノ酪酸を、苦蕎麦の穀粒を初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて3倍富化させることを特徴とする請求項1記載の苦蕎麦茶の製造方法。 【請求項5】 苦蕎麦の穀粒を初期温度50〜80℃の熱水に浸漬することにより、苦蕎麦茶を抽出した際に溶出されるγ−アミノ酪酸を、苦蕎麦の穀粒を初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて1.5倍富化させることを特徴とする請求項2記載の苦蕎麦茶の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、苦蕎麦茶の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 蕎麦には、大きく分けると普通種、韃靼種(苦蕎麦)、宿根種の三種類があり、そのうち食用に栽培されているのは普通種、韃靼種(苦蕎麦)の2種類である。 このうち韃靼蕎麦(本発明では「苦蕎麦」と呼ぶ)は、中国雲南省、四川省、チベット自治区、内モンゴル地区、ネパールなどの高度2000メートル以上の山岳地帯で栽培されている蕎麦であり、普通種の蕎麦よりも薬効成分であるルチンの含有量が多いことが知られ、健康食品として着目されてきた。しかし、苦蕎麦という名前のとおり苦味が強いため、従来我が国ではほとんど飲食されることはなかった。 【0003】 そこで、特許文献1に係る発明は、苦蕎麦の苦味を低減しつつルチンの摂取量を維持するべく、苦そばの穀粒を焙煎し、その焙煎物をお湯で抽出して苦そば茶とすることを開示すると共に、その苦そば茶の製造方法として、苦蕎麦の穀粒から苦蕎麦茶を製造する際、該苦蕎麦の穀粒を水に浸漬して穀粒の中心部まで水を浸透させた後、蒸して前記穀粒をアルファ化し、次いで、蒸した殻粒を乾燥してから実と殻とを分離した後、前記実を焙煎することを特徴する苦蕎麦茶の製造方法を開示している。 【特許文献1】特許第2896346号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明者は、苦蕎麦について鋭意研究を進めた結果、苦蕎麦にはルチンのほかにγ−アミノ酪酸(ギャバ)という優れた薬効成分が含まれていることを見出し、本発明では、かかる知見に基づき当該薬効成分を富化するための苦蕎麦茶の製造方法を提供せんとするものである。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明は、苦蕎麦の穀粒を、初期温度50〜80℃の熱水に浸漬した後、当該苦蕎麦の穀粒を蒸し、乾燥後実と殻とを分離し、その実を苦蕎麦茶とすることを特徴とする苦蕎麦茶の製造方法、並びに、前記の如く乾燥後実と殻とを分離した後、その実を加熱処理して苦蕎麦茶とすることを特徴とする苦蕎麦茶の製造方法を提案する。 【0006】 このように、苦蕎麦の穀粒を初期温度50〜80℃(好ましくは70〜80℃)の熱水に浸漬することにより、苦蕎麦茶を水又は熱水で抽出した際に溶出されるγ−アミノ酪酸の量を、苦蕎麦の穀粒を初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて顕著に富化させることができる。具体的には、蒸した苦蕎麦の穀粒を乾燥し殻を分離した苦蕎麦茶であれば、苦蕎麦の穀粒を初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて、γ−アミノ酪酸の量を3倍に富化させることができ、又、前記苦蕎麦茶を更に加熱処理した苦蕎麦茶であれば、苦蕎麦の穀粒を初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて1.5倍に富化させることができる。 【0007】 γ−アミノ酪酸(Gamma-Amino Butyric Acid;略してGABA)は、アミノ酸の一種で、生体内では主に抑制系神経伝達物質として機能している。薬効としては、血圧降下作用、精神安定作用、脳代謝促進作用、脳血管障害の諸症状の改善作用、頭部外傷に伴う諸症状の改善作用、筋萎縮性疾患の改善作用、腎、肝機能改善作用、アルコール代謝促進作用等の薬理作用が知られている。 このγ−アミノ酪酸(GABA)は、従来、玄米・紅麹・お茶・野菜・果物、特に米や小麦の胚芽や麸(ふすま)に含まれていることは知られていたが、蕎麦、中でも苦蕎麦に含まれている旨の開示はなかった。 【0008】 γ−アミノ酪酸の溶出量が増加するメカニズムとしては、苦蕎麦の穀粒を初期温度50〜80℃の熱水に浸漬させることにより、苦蕎麦に含まれているグルタミン酸デカルボキシラーゼが活性化し、この活性化したグルタミン酸デカルボキシラーゼの作用によって苦蕎麦中のグルタミン酸がγ−アミノ酪酸により多く変化するものと考えることができる。よって、γ−アミノ酪酸の溶出量は、25℃の水に浸漬した場合に比べて顕著に富化することになる。 【0009】 本発明の製造方法によれば、より一層多くのγ−アミノ酪酸を茶液中に溶出させることができるから、従来知られている苦蕎麦茶飲料に比べて多くのγ−アミノ酪酸を含んだ苦蕎麦茶飲料を提供することができる。 【0010】 なお、本発明において、「初期温度50〜80℃の熱水に浸漬し」とは、浸漬開始時の浸漬液の温度を50〜80℃に設定することを意味し、浸漬開始後に浸漬液の温度を保持する場合も、保持しない場合も包含する。 本発明において「苦蕎麦茶」とは、特に言及しなければ、お湯等に浸出させる原料(緑茶で言えば、茶葉に相当)を意味する。 【0011】 本発明は、苦蕎麦を原料とするものであるが、通常の蕎麦にもγ−アミノ酪酸が含まれているため、本発明の技術思想を通常の蕎麦に適用することにより、γ−アミノ酪酸を含んだ蕎麦茶及び蕎麦茶飲料を製造することも可能である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。 【0013】 (苦蕎麦茶) 本発明の苦蕎麦茶は、苦蕎麦の穀粒を熱水に浸漬し、当該苦蕎麦の穀粒を蒸し、乾燥させた後、皮むきして実と殻とを分離し、その実を苦蕎麦茶とすることにより製造することができる。 【0014】 原料としての苦蕎麦は、普通の蕎麦同様にタデ科に属する植物であり、中国雲南省、四川省、チベット自治区、内モンゴル地区、ネパールなどの高度2000メートル以上の山岳地帯で栽培されている蕎麦であり、日本そばに比較して、かなり小さいが、殻の部分が厚くて硬いという特徴を有している。また、普通の蕎麦の実は三角稜形状をしているが、苦蕎麦の実は丸みのあるものから長粒状のものまでいろんな形がある。 【0015】 浸漬条件としては、浸漬する熱水の初期温度を50〜80℃、好ましくは70〜80℃に設定することが重要である。 この際、恒温槽などを使用して浸漬液の温度を保持することも、浸漬する熱水を加熱或いは冷却することなく常温で放置するようにしてもよいが、浸漬液の温度を保持するには恒温槽の設備費やランニングコストがかかる。また、50〜80℃に一定時間保持するとグルタミン酸デカルボキシラーゼの働きが弱まるため、液温を高温のまま保持せず、浸漬液を自然に冷却させながら浸漬するのが好ましい。 浸漬時間は、浸漬温度との関係で適宜設定するのが好ましく特に限定するものではないが、1時間以上、特に3時間〜5時間浸漬するのが好ましい。 【0016】 苦蕎麦穀粒の蒸しは、その方法を特に限定するものではなく、例えばせいろや密閉容器等の中に収納して水蒸気で蒸すようにすればよい。この際、蒸し温度及び蒸し時間に制限はないが、穀粒を十分にアルファ化する蒸し温度及び蒸し時間を設定するのが好ましい。 【0017】 蒸した後の乾燥は、殻と実とを分離させ易くすることが目的であり、そのための乾燥方法を特に限定するものではない。例えば、装置としては市販の熱風乾燥機などを使用して乾燥させればよく、乾燥処理の目安としては、乾燥後の苦蕎麦茶の水分含有量が20〜8%、中でも15〜8%、その中でも特に12〜8%となるように乾燥させるのが好ましい。水分含有量が20%を超えると殻と実の分離効率が低下することになる。 【0018】 皮むき及び殻と実の分離についても、その方法は任意であり、例えば麦用の粉砕機などを使用して皮むきを行い、所定の粗さの篩や風力選別機を使って実と殻とを分離すればよい。 【0019】 このように分離して得た実を使用してそのまま苦蕎麦茶とするようにしてもよいし、また、分離した実を更に加熱処理し、加熱処理後の実を苦蕎麦茶とするようにしてもよい。 その場合の加熱処理としては、分離した実を、攪拌しながら加熱するのがよい。この際、実の内部まで十分且つ均等に加熱するのがよく、加熱処理後の苦蕎麦茶の水分含有量が8%以下、中でも5%以下、その中でも特に3〜2%程度となるように加熱するのが好ましい。8%以下、特に5%以下にすれば保存性が十分に良くなるからである。 【0020】 上記の如く得られた苦蕎麦茶(加熱処理をするものしないものの双方含む)は、通常の蕎麦茶同様、急須等に入れてお湯を注いで抽出することにより苦蕎麦茶(液)を得ることができる。この際、温度の低い水でも抽出可能であるが、水抽出の場合には、より長く抽出する必要がある。 【0021】 本発明の製造方法で得られた苦蕎麦茶にお湯(例えば90℃)を注いで抽出すれば、苦蕎麦の穀粒を初期温度25℃の水及び90℃以上の熱水に浸漬した場合に比べて、苦蕎麦茶(液)中に溶出されるγ−アミノ酪酸の量を富化させることができる。具体的には、本発明において加熱処理しない苦蕎麦茶であれば、初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて約3倍富化させることができ、初期温度90℃の水に浸漬した場合に比べて約6倍富化させることができ、又、本発明において加熱処理した苦蕎麦茶であれば、初期温度25℃の水に浸漬した場合に比べて約1.5倍富化させることができ、初期温度90℃の水に浸漬した場合に比べて約4倍富化させることができる。 なお、どのような成分であっても、50−80℃の熱水に浸漬させれば溶出量が富化するというものではない。例えばルチンやアスパラギン等はそのような傾向を示さないことが確かめられており、50−80℃の水に浸漬させた場合に溶出量が顕著に富化するのはγ−アミノ酪酸の特徴と言える。 【実施例】 【0022】 (苦蕎麦茶の製造) 殻のついたままの苦蕎麦茶(穀粒)1kgを、初期温度25〜90℃の各温度に調整した水乃至熱水1500mL中に投入し、1時間、3時間又は5時間常温下で保管して浸漬させた(表1参照)。なお、図中に水と記載した水温は25℃である。 浸漬後、当該苦蕎麦の穀粒をせいろに移し、5分おきに攪拌させながら25分間蒸した(表1参照)。その後、熱風乾燥機を使って所定温度で所定時間乾燥させた(表1参照)。この際、乾燥後の穀粒の水分含有量は10%であった。 次いで、乾燥後の穀粒を麦用粉砕機で皮むきした後、廻し篩(10号下30号上)と風力選別械を使用して実と殻とを分離し、その実の一部を乾燥済苦蕎麦茶として得た。 更に、得られた実の一部を、ドラム式乾燥機を使って所定温度で所定時間焙煎して焙煎済苦蕎麦茶として得た。この際、得られた焙煎済苦蕎麦茶の水分含有量は3%であった。 【0023】 【表1】
【0024】 (苦蕎麦茶の抽出) 上記製造方法で得られた乾燥済苦蕎麦茶及び焙煎済苦蕎麦茶それぞれ30gを、温度95℃の熱水3Lに投入し、攪拌しながら30分間浸漬して抽出し、苦蕎麦抽出液を得た。 苦蕎麦抽出液中のγ−アミノ酪酸(ギャバ)の量を、OPAポストカラム蛍光法により測定し、乾燥済苦蕎麦茶の結果を下記表2及び図1に示し、焙煎済苦蕎麦茶の結果を下記表3及び図2に示した。なお、焙煎済苦蕎麦茶については、結果が分り易くなるように、3時間浸漬させた結果のみ掲載する。 また、得られた苦蕎麦抽出液について、3名のパネラーで官能検査を行い、3名の総合評価を下記表4に記載した。 【0025】 【表2】
【0026】 【表3】
【0027】 【表4】
【0028】 官能検査の結果をまとめると、1時間浸漬においては浸漬開始温度70℃まで生っぽさを感じ、浸漬開始温度50℃から甘味を感じ、70℃及び80℃が甘味のピークであった。また、浸漬開始温度が85℃以上になると生っぽさは感じないものの、甘味及びコクが少なくて味に厚みが感じられない、という総合評価を得た。 【図面の簡単な説明】 【0029】 【図1】実施例で得られた、乾燥済苦蕎麦茶抽出液(飲料原料)中のγ−アミノ酪酸の量を、浸漬温度(℃)×浸漬時間(hr)ごとに示したグラフである。 【図2】実施例で得られた、焙煎済苦蕎麦茶抽出液(飲料原料)中のγ−アミノ酪酸の量を、浸漬温度(℃)ごとに示したグラフである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】591014972 【氏名又は名称】株式会社 伊藤園 【住所又は居所】東京都渋谷区本町3−47−10
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| 【出願日】 |
平成16年4月19日(2004.4.19) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072084 【弁理士】 【氏名又は名称】竹内 三郎
【識別番号】100110962 【弁理士】 【氏名又は名称】市澤 道夫
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| 【公開番号】 |
特開2005−304328(P2005−304328A) |
| 【公開日】 |
平成17年11月4日(2005.11.4) |
| 【出願番号】 |
特願2004−122870(P2004−122870) |
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