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【発明の名称】 藻類色素組成物及びその製造方法
【発明者】 【氏名】原 格
【住所又は居所】東京都目黒区下目黒1丁目5番19号 ジャパンアルジェ株式会社内

【要約】 【課題】水が存在する80〜90℃の程度の高温状態において藻類色素の分解を防止したいっそう熱安定性に優れた藻類色素組成物を提供する。

【解決手段】藻類色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを有する藻類色素組成物とする。前記藻類色素組成物の配合割合は、例えば、青色色素1重量部、トレハロース50〜150重量部及びグリセリン及び/又はプロピレングリコール1〜20重量部である。前記藻類色素組成物は、さらに、水1〜20重量部を有することができる。前記藻類色素は、好ましくは、フィコシアニン、フィコエリトリン、又は、これらを主成分とする藻類色素である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを有することを特徴とする藻類色素組成物。
【請求項2】
さらに、水を有することを特徴とする請求項1に記載の藻類色素組成物。
【請求項3】
青色色素1重量部とトレハロース50〜150重量部とグリセリン及び/又はプロピレングリコール1〜20重量部とを有することを特徴とする藻類色素組成物。
【請求項4】
さらに、水1〜20重量部を有することを特徴とする請求項3に記載の藻類色素組成物。
【請求項5】
前記藻類色素が、フィコシアニン、フィコエリトリン、又は、これらを主成分とする藻類色素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の藻類色素組成物。
【請求項6】
藻類色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを混練することを特徴とする藻類色素組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の着色に用いられる高温において熱安定性に優れた藻類色素組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の着色料としては、合成着色料及び天然着色料を含む多くの種類の着色料があるが、合成着色料の中には、発ガン性を有するものもあることがわかってきたので、安全性の高い天然着色料が期待されるようになってきた。それらの中でも、藻類から抽出されたフィコシアニンは、鮮明な青色色素であり、また、同じく藻類から抽出されたフィコエリトリンは、鮮明な赤色色素であるので、藻類色素が注目されるようになってきた。
【0003】
これらの藻類色素は、水溶性蛋白質が青色発色団のフィコシアノビリンに結合した蛋白色素であるので、熱安定性に劣り、そのために、用途が限定されるという問題があった。また、これらの藻類色素は、細菌に分解されやすいので、色素製造工程において、藻類色素を殺菌する必要があるが、これらの藻類色素は、加熱殺菌すると、熱によって劣化するという問題があった。但し、フィコシアニンは、水分の少ない条件下に於いては、高温で長時間処理しても安定であり、又、噴霧乾燥の様に、高温で水分の多い条件下であっても、熱平衡に達しない程の短時間であれば安定であることが知られている。
【0004】
そこで、藻類色素とトレハロースとを必須成分とする水溶液を乾燥して藻類色素材を製造することが提案された(特許文献1を参照)。トレハリースは、ブドウ糖2分子が結合した非還元性の2糖類であって、植物や微生物等において存在している糖質であり、従来においては、噴霧乾燥に於いて粉末になりにくい物質に添加してそれらの物質を粉末化しやすくするものであったが、特許文献1に記載された発明においては、トレハロースを水溶液中の藻類色素に熱安定性を付与するために添加されている。
【0005】
特許文献1に記載された発明においては、藻類色素とトレハロースとを必須成分とする水溶液の熱安定性を50℃以下の温度では一応達成することができたが、藻類色素とトレハロースとを必須成分とする水溶液を加熱すると、50℃あたりの温度から、藻類色素の分解が進行し出し、そして、80〜90℃の程度の高温状態になった時には、藻類色素の分解が著しく進行して、藻類色素の熱安定性が著しく低下するという問題があった。
【特許文献1】特開平11−299450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0007】
即ち、本発明は、水が存在する80〜90℃の程度の高温状態において藻類色素の分解を防止したいっそう熱安定性に優れた藻類色素組成物及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、青色色素とトレハロース重量部とグリセリンと水とを混練して藻類色素組成物としたところ、水が存在する80〜90℃の程度の高温状態において藻類色素の分解を防止したいっそう熱安定性に優れた藻類色素組成物を提供できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、藻類色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを有することを特徴とする藻類色素組成物である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、さらに、水を有することを特徴とする請求項1に記載の藻類色素組成物。
【0011】
請求項3に記載された発明は、青色色素1重量部とトレハロース50〜150重量部とグリセリン及び/又はプロピレングリコール1〜20重量部とを有することを特徴とする藻類色素組成物である。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、さらに、水1〜20重量部を有することを特徴とする請求項3に記載の藻類色素組成物である。
【0013】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記藻類色素が、フィコシアニン、フィコエリトリン、又は、これらを主成分とする藻類色素であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載された発明は、藻類色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを混練することを特徴とする藻類色素組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
水が存在する80〜90℃の程度の高温状態において藻類色素の分解を防止したいっそう熱安定性に優れた藻類色素組成物として、該藻類色素組成物の利用できる温度範囲を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の藻類色素組成物は、藻類色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを有している。このように、藻類色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを有していると、水が存在する80〜90℃の程度の高温状態において藻類色素の分解を防止したいっそう熱安定性に優れた藻類色素組成物とすることができる。
【0017】
本発明の藻類色素組成物における各構成成分の配合割合は、次のとおりである。即ち、トレハロースの配合割合は、藻類色素1重量部に対して、50〜150重量部、好ましくは、75〜125重量部、さらに好ましくは、80〜90重量部であり、そして、グリセリン及び/又はプロピレングリコールの配合割合は、藻類色素1重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは、2〜15重量部、さらに好ましくは、3〜10重量部である。
【0018】
本発明の藻類色素組成物は、さらに、水を有することができる。前記水は、藻類色素1重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは、2〜15重量部、さらに好ましくは、3〜10重量部である。
【0019】
本発明の藻類色素組成物は、青色色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを有する藻類色素組成物は、青色色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを均一に溶解した水溶液とするか、又は、青色色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを混練してペースト状にしたものであってもかまわない。
【0020】
このようなペースト状にした藻類色素組成物は、例えば、青色色素1重量部とトレハロース50〜150重量部とグリセリン及び/又はプロピレングリコール1〜20重量部とを混練することにより製造される。その際、水1〜20重量部を添加して混練してもかまわない。このペースト状の藻類色素組成物は、高温且つ長時間の殺菌工程を経過しても、全く色価は減少せず、色素残存率はほぼ100%となる。
【0021】
本発明の青色色素とトレハロースとグリセリン及び/又はプロピレングリコールとを有する藻類色素組成物は、水を乾燥させる必要はなく、水溶液、又は、ペーストとして、そのまま使用することができる。
【0022】
本発明における藻類色素は、天然の藻類から得られる色素であり、例えば、藍藻類から得られる青色のフィコシアニン、赤色のフィコエリトリン、又は、これらを主成分とする藻類色素である。藍藻類には、現在食用に供され、工業的に大量生産されているスピルリナ属、ポルフィラ属等の藍藻類がある。これらのスピルリナ属の藍藻類としては、例えば、スピルリナ・イエンネリ、スピルリナ・フラボリエンス、スピルリナ・ラキシシマ、及び、スピルリナ・マイオールをあげることができる。
【0023】
本発明に使用されるトレハロースは、2分子のD−クルコースが1,1結合した形の非還元性2糖類の一種である。その結合様式は、α,α−1,1結合したもの、α,β−1,1結合したもの、及び、β,β−1,1結合したものの3種の異性体があるが、天然には、α,α−1,1結合したものが存在する。トレハロースは、自然界において、カビ、酵母、紅藻、地衣、多くの昆虫等に広く分布して存在している。
【0024】
本発明に使用されるグリセリンは、三価アルコールの一種であって、無色で粘稠な甘味のある液体である。濃度の高いグリセリン溶液は、吸湿性があり、保湿剤、インキ、化粧品、下剤等の医薬品に広く用いられている。また、グリセリンは、生体内においては、中性脂肪、リン脂質、及び、糖脂質の構成成分となっている。本発明に使用されるプロピレングリコールは、二価アルコールの一種であって、グリセリンと似た性質を有し、無色で粘ちような吸湿性の液体である。プロピレングリコールは、医薬用の溶剤等としても用いられている。
【0025】
本発明の藻類色素組成物は、例えば、
(イ)藍藻類のスピルリナから青色色素であるフィコシアニンを水で抽出する工程、
(ロ)得られた抽出液からクロロフィル等の水不溶部分を遠心分離機を用いて遠心分離する工程、
(ハ)この水不溶部分を遠心分離した抽出液を、限外濾過装置で分子量分画を行なって、フィコシアニン水溶液を分離する工程、
(ニ)分離したフィコシアニン水溶液の濃縮を行なって色価を調整する工程、
(ホ)この色価を調整したフィコシアニン水溶液をフィルターに通して除菌を行なう工程、
(ヘ)除菌したフィコシアニン水溶液に、除菌フィルターを通したグリセリンを所定量加えて、充分に混合する工程、及び、
(ト)得られた混合溶液に所定量のトレハロースを加えて混練することにより藻類色素組成物とする工程、
を順次経て製造される。ここに示した藻類色素組成物の製造例は、本発明の藻類色素組成物の一例を示すものであって、本発明の藻類色素組成物は、ここに示した製造例以外の製造例によっても製造することができる。
【0026】
本発明によって得られる藻類色素組成物は、従来、フィコシアニンが用いられて来た氷菓、アイスクリーム、チューインガム、糖衣菓子等のみならず、ハードキャンデー、ゼリー等の耐熱性が要求される食品にも使用が可能となるのである。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
色価30に調整したフィコシアニン粉末20重量部(色価600の純粋フィコシアニンに換算すると1重量部)とトレハロース80重量部とグリセリン9重量部と水10重量部とを混練して、ペースト状の藻類色素組成物10gを調製した。
【0029】
(実施例2)
色価30に調整したフィコシアニン粉末20部(色価600の純粋フィコシアニンに換算すると1重量部)とトレハロース90重量部とグリセリン4.3重量部と水4.7重量部とを混練して、ペースト状の藻類色素組成物10gを調製した。
【0030】
(比較例1)
色価30に調整したフィコシアニン粉末20部(色価600の純粋フィコシアニンに換算すると1重量部)とトレハロース80重量部と水10重量部とを混練して、ペースト状の藻類色素組成物10gを調製した。
【0031】
(比較例2)
色価30に調整したフィコシアニン粉末20部(色価600の純粋フィコシアニンに換算すると1重量部)とトレハロース90重量部と水4.7重量部とを混練して、ペースト状の藻類色素組成物10gを調製した。
【0032】
以下、実施例1及び実施例2、並びに、比較例1及び比較例2で得たペースト状の藻類色素組成物5.1gをそれぞれ試験管に入れ、これらを85℃の温水で30分間加温した。そして、前記試験管にマッキルベイン緩衝液15mlをそれぞれ加えて溶解した後、色価が一定になるように同緩衝液で希釈した後、OD618 値を測定した。コントロールとして、加温していない色価30に調整したフィコシアニン粉末を、同色価になるように希釈し、OD618 値を測定した。色素残存率は、次の式
色素残存率(%)=実施例1、2、比較例1、2のOD618
/コントロールのOD618 値×100
で求めた。
【0033】
【表1】


【0034】
実施例1で得たペースト状の藻類色素組成物については、前記85℃での加温時間を2時間迄延長して、色素残存率を次のとおりに測定した。即ち、実施例1で得たペースト状の藻類色素組成物20gを調製し、このペースト状の藻類色素組成物5gずつを4本のバイアルに入れた後、これらを85℃のウォーターバスで加温した。そして、30分毎に1本ずつバイアルを取り出し、これらのバイアルにマッキルベイン緩衝液10mlを加えて溶解した。次に、これらのバイアルから液を各1mlずつ取り、同緩衝液で10mlに希釈した後、OD618 値を求めた。色素残存率は、次の式
色素残存率(%)=各時間のOD618 値/0時間のOD618 値×100
で求めた。
【0035】
【表2】


【0036】
表1,2より次のことが分かる。即ち、表1によれば、トレハロース80重量部を用いた比較例1のペースト状の藻類色素組成物、並びに、トレハロース90重量部を用いた比較例2のペースト状の藻類色素組成物においては、それらの色素残存率は、それぞれ、72%及び40%であるが、トレハロース80重量部及びグリセリン9重量部を併用した実施例1のペースト状の藻類色素組成物、並びに、トレハロース90重量部及びグリセリン4.3重量部を併用した実施例2のペースト状の藻類色素組成物においては、それらの色素残存率は、いずれも、100%であるので、グリセリンを用いることによって、高温(85℃)に保持したときの色素残存率が著しく向上することがわかる。また、表2によれば、トレハロース80重量部及びグリセリン9重量部を併用した実施例1のペースト状の藻類色素組成物においては、85℃の加熱時間を20時間まで延長しても、その色素残存率は、100%であるので、グリセリンを用いることによって、高温(85℃)で長時間(2時間)保持したしたときの色素残存率も著しく向上することがわかる。
【出願人】 【識別番号】591050420
【氏名又は名称】ジャパンアルジェ株式会社
【住所又は居所】東京都目黒区下目黒1丁目5番19号
【出願日】 平成16年4月7日(2004.4.7)
【代理人】 【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄

【識別番号】100097858
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 浩史

【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男

【識別番号】100075421
【弁理士】
【氏名又は名称】垣内 勇

【公開番号】 特開2005−295829(P2005−295829A)
【公開日】 平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願番号】 特願2004−113384(P2004−113384)