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【発明の名称】 食用架橋デンプン及びそれを用いた食品
【発明者】 【氏名】西本 誠治
【住所又は居所】埼玉県草加市青柳1丁目3番3号 理研ビタミン株式会社内

【氏名】倉本 高広
【住所又は居所】埼玉県草加市青柳1丁目3番3号 理研ビタミン株式会社内

【氏名】米沢 久美子
【住所又は居所】埼玉県草加市青柳1丁目3番3号 理研ビタミン株式会社内

【氏名】田邊 義雄
【住所又は居所】埼玉県草加市青柳1丁目3番3号 理研ビタミン株式会社内

【氏名】木尾 茂樹
【住所又は居所】大阪府大阪市淀川区三津屋北3丁目3番29号 日澱化學株式会社内

【氏名】森 恭子
【住所又は居所】大阪府大阪市淀川区三津屋北3丁目3番29号 日澱化學株式会社内

【氏名】家郷 尚幸
【住所又は居所】大阪府大阪市淀川区三津屋北3丁目3番29号 日澱化學株式会社内

【要約】 【課題】架橋デンプンを使用し油脂を加えなくとも、外観、食感、味・風味とも油脂を加える場合と比較して遜色ない半固形状食品又は乳化状食品を提供する。

【解決手段】無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmであって、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gである食用架橋デンプンを含有することを特徴とする食品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmであって、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gである食用架橋デンプンを含有することを特徴とする食品。
【請求項2】
架橋デンプンが架橋米デンプンであることを特徴とする請求項1に記載の食品。
【請求項3】
メタリン酸塩、オキシ塩化リン、無水アジピン酸及びエピクロルヒドリンから選択される架橋剤で処理された食用架橋デンプンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
食用架橋デンプンが3〜30質量%含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食品。
【請求項5】
食品が半固形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の食品。
【請求項6】
無脂肪又は低脂肪であることを特徴とする請求項5に記載の食品。
【請求項7】
半固形状ドレッシング様食品であることを特徴とする請求項6に記載の食品。
【請求項8】
半固形状ドレッシング様食品がマヨネーズ様食品であることを特徴とする請求項7に記載の食品。
【請求項9】
乳化液体ドレッシング様食品であることを特徴とする請求項6に記載の食品。
【請求項10】
無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmであって、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gである食用架橋デンプン。
【請求項11】
架橋デンプンが架橋米デンプンであることを特徴とする請求項10に記載の食用架橋デンプン。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな特性を有する新規食用架橋デンプンに関する。また、本発明は前記食用架橋デンプンを使用した食品に関する。より詳しくは、無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmであって、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gである食用架橋デンプン及び該架橋デンプンを使用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年食品の多様化に伴いデンプンは、あらゆる食品に食感向上、保持、増粘、増量及びつなぎ等の機能目的で使われており、幅広く用いられている。また、天然デンプンだけでなく、透明感に優れた粘度安定性の高いデンプン、冷蔵耐性にも優れたデンプン、加熱による粘度安定性の高いデンプン、冷凍耐性・耐老化性に優れたデンプンあるいは食感を改善するデンプン等、食品の特性や食感に合わせた種々の加工・化工・変性デンプンが提案され、種々の食品に試みられてきた。変性デンプンを用いる方法としては、架橋型デンプンリン酸エステルナトリウム(グルコース残基2個に対して、その間に1分子のリン酸が架橋結合しているジ−結合型のもの)や、架橋型リン酸デンプンに親水性のヒドロキシプロピル基を導入した架橋型ヒドロキシプロピルリン酸デンプン(ヒドロキシプロピル・ジ・スターチホスフェイト)や酢酸デンプンを用いる方法がある(特許文献1、特許文献2参照)。
また、食品の油脂又は油の代替品として使用するための、デキストリン化、酸転化、酵素転化された転化デンプンが知られている(特許文献3参照)。
また、酸化化工デンプンよりなる低カロリーの脂質代替物として、酸化化工デンプンのカルボキシル基含有量が0.1〜1%であり、かつ化工デンプンの15%濃度糊液の粘度が10〜300cpsである脂質代替物が開示されている(特許文献4参照)。
さらに、マヨネーズ様食品に、加熱後α化ゲル化するデンプンを使用することが記載されている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開昭56−124344号公報
【特許文献2】特公昭63−8741号公報
【特許文献3】特開昭60−164449号公報
【特許文献4】特開平6−189699号公報
【特許文献5】特開2003−310206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、国民の健康維持のため、高脂肪、高カロリー食に由来する肥満、高血圧等の生活習慣病を予防、防止するため低脂肪食指向が強い。そのような要望に対応するために、本発明は油脂ではないが油脂が有する滑転味と呼ばれるまろやかな口あたりの食感を呈する食材を提供することを目的とする。また、本発明は前記食材を使用し、油脂が使用されていなくてもあるいは油脂の使用量が削減されていても、油脂が充分に使用された食品(例えば、マヨネーズ等)と同様の滑転味及び風味を有する低カロリー食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmであって、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gである食用架橋デンプンを水と混合し、加熱冷却したところ、まろやかな口あたりの食感の滑転味を有することを知見した。また、この架橋デンプンに酢や調味料を添加して調製されたマヨネーズ様食品は、油脂(脂肪)を含有しないにもかかわらず、元来のマヨネーズの持つ風味及び滑転味を有することを知見した。本発明者らは、本知見に基づきさらに研究をすすめ、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1) 無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmであって、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gである食用架橋デンプンを含有することを特徴とする食品、
(2) 食用架橋デンプンが、架橋米デンプンであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の食品、
(3) メタリン酸塩、オキシ塩化リン、無水アジピン酸及びエピクロルヒドリンから選択される架橋剤で処理された食用架橋デンプンであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の食品、
(4) 食用架橋デンプンが3〜30質量%含有されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食品、
(5) 食品が半固形状であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の食品、
(6) 無脂肪又は低脂肪であることを特徴とする上記(5)に記載の食品、
(7) 半固形状ドレッシング様食品であることを特徴とする上記(6)に記載の食品、
(8) 半固形状ドレッシング様食品がマヨネーズ様食品であることを特徴とする上記(7)記載の食品、
(9) 乳化液体ドレッシング様食品であることを特徴とする上記(6)に記載の食品、
(10) 無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmであって、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gである食用架橋デンプン、
(11) 架橋デンプンが架橋米デンプンであることを特徴とする上記(10)に記載の食用架橋デンプン、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の架橋デンプンは、酸、熱又は撹拌に対して強く、デンプン粒子の崩壊を受けることなく、ゲル状態を維持できる。
水と共に加熱、冷却した本発明の架橋デンプンを口に含むと、油脂が有する滑転味と呼ばれるまろやかな口あたりの食感を呈するので、油脂の代替の低カロリー食材となり得る。
また、本発明の架橋デンプンが食材として使用されるとき、他の調味料等の風味、味を損なうことがないので、広範囲の食材として利用が容易である。
また、本発明の架橋デンプンを使用した無脂肪又は低脂肪の低カロリー食品、例えばマヨネーズ様食品は、油脂(脂肪)を多く含む従来のマヨネーズと同等の滑らかな食感を有するので、油脂(脂肪)を多量に用いるマヨネーズ等の代替の低カロリー類似食品に用いることができる。このような無脂肪又は低脂肪の低カロリー食品は、脂肪を制限されている肥満、高脂血症の予防のための食品として、またダイエット食品として有用である。
本発明の架橋デンプンを用いた食品は、保存温度等の影響を受けることなくゲル化状態を維持できるため、長期間保存しても安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に使用される架橋デンプンの原料デンプンとしては、平均粒子径の小さいもの、約1〜13μm程度が好ましく、例えばコメデンプン、アマランサスデンプン、サトイモデンプン、小麦小粒子デンプン及び馬鈴薯小粒子デンプン等が好適に用いられる。
本発明に使用される架橋デンプンは、上記の原料デンプンをエピクロルヒドリン、オキシ塩化リン、メタリン酸塩及び無水アジピン酸等のいずれかの架橋剤で架橋された架橋デンプンが好ましく、エピクロルヒドリン又はトリメタリン酸ナトリウム等のメタリン酸塩で架橋された架橋デンプンが特に好ましい。
【0008】
本発明に使用される架橋デンプンは、上述のデンプンを、水単独又は水と有機溶媒(例、アルコール等)との混合溶媒に懸濁し、上述の架橋剤をアルカリ触媒の存在下で反応させることにより製造される。この反応は、pHを約10〜13に維持しながら、約10〜50℃にて攪拌することによって行う。使用するアルカリ触媒としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩(例、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等)、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキサイド(例、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムメトキサイド等)、アンモニア、C1−6アルキル基を有するモノ、ジもしくはトリアルキルアミン(例、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミンジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、第2級ブチルアミン、第3級ブチルアミン、アミルアミン、第2級アミルアミン、第3級アミルアミン、ヘキシルアミン等)、アルコール性水酸基を有するジもしくはトリアルコールアミン(例、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン等)などが挙げられる。デンプンに対する架橋剤の添加量は架橋剤の分子量や原料デンプンによって異なるが、好ましくはデンプンの約2〜10質量%程度の範囲で適宜選択できる。
【0009】
本発明に使用される架橋デンプンは、無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmである。また、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gである。
平均粒子径の測定は、粒度分布測定装置等を利用して測定できる。例えば、架橋デンプンの無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したものについて、レーザー回折式粒度分布測定装置〔例えばSALD−1100(島津製作所製)〕を用い、レーザー散乱による方法等により測定できる。
膨潤度は、加熱後の架橋デンプン溶液を遠心分離し、下層に沈殿した容積から換算し膨潤度とされる。具体的には、無水換算15質量%の架橋デンプン懸濁液200gを、ビーカー(200mL)に入れ、攪拌し、加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷する。この糊液50mLを目盛り付き遠沈管(外径35mm、長さ115mm)に移し入れ、遠心分離機で3000rpm、30分間処理後の下層の容積を読み取り、デンプン1g当たりの容積として示される。
上記加熱は、温浴(約85〜100℃)中で行い、その後温浴中で、一定温度(約85℃)に保持されるのが好ましい。
また、平均粒子径又は膨潤度を測定する場合の、架橋デンプンの水溶液中の濃度は、無水換算で、平均粒子径で3質量%、膨潤度で15質量%が適当である。
【0010】
なお、架橋デンプンの無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷した後の平均粒子径が13μmを超える架橋デンプンは、明らかにざらつきを感じ、好ましい食感が得られない。平均粒子径が約8μm未満のものは、高度な篩い分け工程を必要とすることから、高価なものとなり実際的ではない。また、架橋デンプンの膨潤度が、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときに3.0mL/g未満の場合、膨潤が抑制されるために、半固形状食品又は乳化状食品が粘稠なペースト状にならず、一方、前記膨潤度が4.5mL/gを上回る場合、粘りが強調され、いずれも半固形状食品又は乳化状食品としての滑転味が損なわれてしまう。ここで、滑転味とは、コロイドや乳化粒子の大小等によって、主に触感等の物理的刺激(例えば、食品の柔らかさ、硬さ、粘り、脆さ等の粘弾性で現される刺激)によって舌にここちよさ感じさせる味覚をいう。以下、この条件に当てはまる架橋デンプンを本発明の架橋デンプンともいう。
【0011】
また、本発明の架橋デンプンは、上記平均粒子径及び膨潤度を有する架橋デンプンであれば、上記架橋剤で架橋された架橋デンプンに限定されず、上記デンプンが架橋エーテル化又は架橋エステル化されていてもよい。エーテル化反応の試薬としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、モノクロル酢酸等が挙げられ、エステル化反応の試薬としては、無水酢酸、酢酸ビニル、無水コハク酸、1−オクテニル無水コハク酸、オルトリン酸、オルトリン酸塩又はポリリン酸塩等が挙げられる。
架橋エーテル化又は架橋エステル化におけるエーテル化又はエステル化は、上記架橋剤を用いる架橋の前又は後でもよく、同時でもよい。架橋エーテル化又は架橋エステル化は、上記溶媒に懸濁させる湿式反応の他、上記溶媒に懸濁させず、少量の溶媒をデンプンに添加し、例えば、ブレンダー、ミキサー等で加熱・混和する乾式反応で行うこともできる。
【0012】
架橋エーテル化反応は、例えば上述のデンプンを、水単独又は水と有機溶媒(例、アルコール等)との混合溶媒に懸濁し、上述の架橋剤及びエーテル化剤をアルカリ触媒の存在下で反応させることにより行うことができる。エーテル化剤としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドや、モノクロロ酢酸等が好ましく用いられる。この反応は、pHを約10〜13に維持しながら、約10〜50℃にて攪拌することによって行う。使用するアルカリ触媒及び架橋剤の添加量は、先ほどの架橋反応と同様である。またデンプンに対するエーテル化剤の添加量は、約0.05〜10質量%程度、好ましくは約0.5〜5質量%程度の範囲で適宜選択できる。この場合、エーテル化反応の程度を示す置換度(無水グルコース1分子当たりの導入された官能基の数、以後D.S.と略称する。)は約0.002〜0.1程度、好ましくは約0.005〜0.05程度の範囲が好ましい。D.S.が0.002を下回る場合、エーテル化による保存安定性や食感の改良という効果が現われない。0.1を上回った場合では、好ましくない食感である粘りがでるという問題がある。また、D.S.が高くなると、ペーストに粘り性が生じてくるが、膨潤度を低くすることによって、食感の適したペーストにすることが出来る。
【0013】
架橋エステル化反応は、例えば上述のデンプンを、水単独又は水と有機溶媒(例、アルコール等)との混合溶媒に懸濁し、上述の架橋剤で架橋反応を行った後、エステル化剤をアルカリ触媒の存在下で反応させることにより行う。エステル化剤としては、例えば、無水酢酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、無水コハク酸、1−オクテニル無水コハク酸、オルトリン酸、オルトリン酸塩及びポリリン酸塩等から選ばれた一種又は二種以上が好ましく用いられる。無水酢酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、無水コハク酸、1−オクテニル無水コハク酸を用いる場合、エステル化反応は、通常pHを約7〜10に維持しながら、約10〜50℃にて攪拌する湿式反応によって行われうる。オルトリン酸、オルトリン酸塩及びポリリン酸塩を使用する場合には、エステル化反応は、約100〜150℃程度に加熱する乾式反応が好ましい。使用するアルカリ触媒及び架橋剤の添加量は、先ほどの架橋反応と同様である。またデンプンに対するエステル化剤の添加量は、約0.1〜10質量%、好ましくは約1〜5質量%の範囲で適宜選択できる。この場合、エステル化反応を示す置換度D.S.は約0.005〜0.1、好ましくは約0.008〜0.05の範囲になる。D.S.が約0.005を下回る場合、エステル化による保存安定性や食感の改良という効果が現われない。D.S.が0.1を上回った場合では、好ましくない食感である粘りがでるという問題がある。また、D.S.が高くなると、ペーストに粘り性が生じてくるが、膨潤度を低くすることによって、食感の適したペーストにすることが出来る。
本発明の架橋デンプンは、上記の範囲で架橋剤を使用し、無水換算で3質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの平均粒子径が8〜13μmであり、無水換算で15質量%の水懸濁液を加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷したときの膨潤度が3.0〜4.5mL/gになるようにデンプンの架橋反応を行うことが好ましい。
【0014】
本発明の架橋デンプンは、油脂(脂肪)が使用される食品、例えば、マヨネーズ、サラダクリーミードレッシング、半固体状ドレッシング(例えば、タルタルソース等)、乳化液体ドレッシング(例えばフレンチドレッシング、サウザンドアイランドドレッシング等)、トマトペースト、ソース類(ホワイトソース、ペジャメルソース、デミグラスソース等)などの油脂(脂肪)の代替食材として使用することができる。また、クリーム類(カスタードクリーム等)、プリン、パンフィリング又はメレンゲ等のゲル化剤として卵等の代替食材になり得る。また、本発明の架橋デンプンは、上記した食品以外にも、半固形状食品又は乳化状食品のゲル化剤として好ましく用いることができる。
【0015】
半固形状食品とは、粘度約30,000mPa・s(ミリパスカルセコンド)以上のクリーム状の食品をいい、例えばドレッシングについていえば、マヨネーズ、サラダクリーミードレッシング、半固体状ドレッシング(例えば、タルタルソース等)様の食品をいう。乳化状食品とは、粘度約30,000mPa・s未満のとろみのある食品をいい、例えばドレッシングについていえば、乳化液体ドレッシング(例えばフレンチドレッシング、サウザンドアイランドドレッシング等)様の食品をいう。但し、本発明において半固形状食品及び乳化状食品は厳密に区別する必要はない。
【0016】
本発明の架橋デンプンを食品に用いる場合、架橋デンプンの濃度は、製造される食品の種類により異なるが、通常約3〜30質量%、好ましくは約5〜15質量%の範囲から、目的とする食品の食感にあわせ適宜選択できる。
【0017】
本発明の食品の製造は、水に本発明の架橋デンプン及び所望の調味料、甘味料、香料、賦形剤等を添加し、約80〜100℃に加熱し、攪拌機で攪拌して製造することができる。より具体的には、例えば、マヨネーズ様食品は、水(例えば、精製水、水道水、蒸留水等)に、本発明の架橋デンプン、卵黄成分、酸性成分等を添加し、約80〜100℃に加熱しながら、攪拌機(例えば、真空乳化攪拌機、ホモミキサー等)を用いて約5,000〜20,000rpm、好ましくは約8,000〜12,000rpmで攪拌することによって製造できる。この場合、本発明の架橋デンプン量は約3〜30質量%程度、好ましくは約5〜15質量%程度である。水分量は約60〜90質量%、好ましくは約65〜80質量%である。卵黄成分としては、例えば液体卵黄、冷凍卵黄、液体全卵、冷凍全卵、乾燥全卵、又は液体卵白もしくは冷凍卵白を1種以上、好ましくは冷凍卵黄を、0〜約15質量%、好ましくは0〜約10質量%の量で添加できる。酸性成分としては、米酢、ワインビネガー、リンゴ酢、レモン酢等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。酸性成分は、約1〜20質量%、好ましくは約5〜15質量%の割合で添加されるのがよい。また、例えば、乳化液体ドレッシング様食品は、水(例えば、精製水、水道水、蒸留水等)に、本発明の架橋デンプンを添加し、攪拌機(例えば、真空乳化攪拌機、ホモミキサー等)を用いて約3,000〜5,000rpm、攪拌後、約80〜100℃に加熱した後、更に攪拌を続ける。攪拌条件を約6,000〜20,000rpm、好ましくは約8,000〜12,000rpmとし酸性成分を添加し、更に攪拌することによって製造できる。この場合、本発明の架橋デンプン量は約3〜30質量%程度である。本発明では、組成物中に用いる水分量は約60〜90質量%、好ましくは約65〜80質量%である。酸性成分は、上記マヨネーズ様食品と同様であり、その配合量は約0.05〜15質量%、好ましくは約1〜10質量%の量で存在させるのがよい。
【0018】
本発明の食品には、特有の風味特性を付与する適切な調味料を加えることが好ましい。調味料としては、塩、甘味料(例えば、果糖ブドウ糖、ショ糖、果糖、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア等)、スパイス又は香味料(例えば、胡椒、クローブ、シナモン、ナツメグ、メース、ターメリック、クチナシ、パプリカ、ジンジャー等)、旨味調味料(グルタミン酸ナトリウム、チキンエキス、肉エキス等)、結晶化抑制剤(例えば、オキシステアリン、レシチン又は脂肪酸のポリグリセロールエステル)、増粘剤(例えば、キサンタンガム、セルロース、カラギーナン等)などが挙げられる。これらの成分は任意なものであり、所望の味覚効果(味)をつくりだすために加えることができる。塩は必要に応じて約10%以下、好ましくは約5%以下の量で含有させうる。さらに、キレート剤又は保存剤等を含有させることができる。キレート剤又は保存剤としては、エデト酸(EDTA)及び/又はエデト酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
上記酸性成分の全部又は一部の代わりに、他の食用酸(例えばクエン酸、アジピン酸、リン酸、酢酸、アスコルビン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸等)、果汁(例えばレモン果汁、ライム果汁、グレープフルーツ果汁等)を使用することができる。
また、所望により、本発明の食品には、食用油脂(脂肪)又は油は、コーン油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ナタネ油等を使用することもできる。
さらに本発明の食品には、サプリメントを添加することもできる。このようなサプリメントとしては、カルシウム剤(炭酸カルシウム等)、各種アミノ酸、食物繊維、スピルナ、各種ビタミン類等が挙げられる。
【0020】
つぎに実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例で用いる「部」は、特に示さない限り質量部を示す。
【実施例1】
【0021】
エピクロルヒドリン架橋コメデンプン
水120部に水酸化ナトリウム1.2部、塩化ナトリウム35部を溶かし、コメデンプン・ジャポニカ種100部を懸濁し、エピクロルヒドリン4部を投入し、30℃で24時間反応した。その後、pHを5.0に中和し遠心脱水し、水で洗浄後、乾燥(温度40〜50℃、熱風循環の棚乾燥)を行い、エピクロルヒドリン架橋コメデンプンを得た。
【実施例2】
【0022】
リン酸架橋コメデンプン
水120部に水酸化ナトリウム1.2部、塩化ナトリウム35部を溶かし、コメデンプン・ジャポニカ種100部を懸濁し、トリメタリン酸ナトリウム2.5部を投入し、30℃で16時間反応した。その後、pHを5.0に中和し脱水、洗浄、乾燥を行い、リン酸架橋コメデンプンを得た。
【実施例3】
【0023】
実施例2において、トリメタリン酸ナトリウムの投入量を2部にした以外は実施例2と同様にして、リン酸架橋コメデンプンを得た。
【実施例4】
【0024】
リン酸架橋コメデンプン
実施例2において、コメデンプン・ジャポニカ種をインディカ種に変更した以外は実施例2と同様にして、リン酸架橋コメデンプンを得た。
【実施例5】
【0025】
マヨネーズ様食品
約530gの水に、実施例1の架橋デンプン80g、ヒドロキシプロピル化デンプン11g、キサンタンガム3g、セルロース20g、食塩34g、果糖ぶどう糖液糖50g、グルタミン酸ナトリウム10g、脱脂粉乳50g、豆乳100gを添加した。この溶液を約80℃まで加熱しながらホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で10,000rpmの条件で攪拌した。約80℃を保持したままホモミキサーで10,000rpm、5分間攪拌した後、酢110gを添加し、よく攪拌混合してマヨネーズ様食品を得た。
【実施例6】
【0026】
マヨネーズ様食品
実施例5において、実施例1の架橋デンプンのかわりに実施例2の架橋デンプンを使用する以外は同様にマヨネーズ様食品を製造した。
【実施例7】
【0027】
マヨネーズ様食品
実施例5において、実施例1の架橋デンプンのかわりに実施例3の架橋デンプンを使用する以外は同様にマヨネーズ様食品を製造した。
【実施例8】
【0028】
マヨネーズ様食品
実施例5において、実施例1の架橋デンプンのかわりに実施例4の架橋デンプンを使用する以外は同様にマヨネーズ様食品を製造した。
【実施例9】
【0029】
乳化液体ドレッシング様食品
約540gの水に、実施例1の架橋デンプン100g及びペクチン12gを添加し、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)で4,000rpm、3分間の条件で攪拌した。これを、約90℃まで加熱した後、更に10分間攪拌を続けた。攪拌条件を10,000rpmとし、6.5w/v%乳酸カルシウム水溶液200mLを添加、次いで、λ−カラギーナン2g、キサンタンガム0.3g、果糖ぶどう糖液糖70g、食塩32g、レモン果汁7g、酢24gを添加した。更に10分間攪拌し、クリーミータイプの乳化液体ドレッシング様食品を製造した。
【実施例10】
【0030】
クリーミータイプ食品
実施例9において、実施例1の架橋デンプンのかわりに実施例2の架橋デンプンを使用する以外は同様にクリーミータイプのドレッシング様食品を製造した。
【実施例11】
【0031】
クリーミータイプ食品
実施例9において、実施例1の架橋デンプンのかわりに実施例3の架橋デンプンを使用する以外は同様にクリーミータイプのドレッシング様食品を製造した。
【実施例12】
【0032】
クリーミータイプ食品
実施例9において、実施例1の架橋デンプンのかわりに実施例4の架橋デンプンを使用する以外は同様にクリーミータイプのドレッシング様食品を製造した。
【0033】
試験例1
まず、実施例1〜4の架橋デンプンを口に含み食感を評価した。また、平均粒子径及び膨潤度を測定した。
平均粒子径:無水換算3質量%の架橋デンプン懸濁液を未加熱あるいは沸騰水浴中にて加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷し、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−1100(島津製作所製)を用いてレーザー散乱による方法により測定した。測定範囲は、1〜45μmで行った。
膨潤度:無水換算15質量%の架橋デンプン懸濁液200gを沸騰水浴中にて加熱し、85℃に到達後、85℃で10分間保持した後、30℃まで放冷し、糊液が200gとなるよう水分補正した。この糊液50mLを目盛り付き遠沈管(外径35mm、長さ115mm)に移し入れ、遠心分離機で3000rpm、30分間処理後の下層の容積を読み取り、デンプン1g当たりの容積として示した。
【0034】
また、食感を比較するため架橋度の異なる以下の架橋デンプンを比較例として用いた。
比較例1: 実施例1において、エピクロルヒドリンの投入量を8部にした以外は実施例1と同様にして、エピクロルヒドリン架橋コメデンプンを製造した。
比較例2: 実施例2において、トリメタリン酸ナトリウムの投入量を1.5部にした以外は実施例2と同様にして、リン酸架橋コメデンプンを製造した。
比較例3: 実施例2において、トリメタリン酸ナトリウムの投入量を1部にした以外は実施例2と同様にして、リン酸架橋コメデンプンを製造した。
比較例4: 水120部に水酸化ナトリウム1部、塩化ナトリウム25部を溶かし、コーンスターチ100部を懸濁し、トリメタリン酸ナトリウム2部を投入し、30℃で16時間反応した。その後、pHを5.0に中和し脱水、洗浄、乾燥を行い、リン酸架橋コーンスターチを製造した。
比較例5: 比較例4において、コーンスターチをタピオカデンプンに変更した以外は比較例4と同様にして、リン酸架橋タピオカデンプンを得た。
【0035】
その結果を表1に示す。
【表1】


【0036】
本発明の架橋度の架橋デンプンは、加熱後の平均粒子径が約8〜13μmでかつ膨潤度が3.0〜4.5mL/gであり、滑らかで口溶けが良く、食感がよいことが分かった。
一方、膨潤度が4.5mL/gを超える架橋コメデンプン(比較例1,2)は粘りを感じ、3.0mL/g未満では食感が軽く、粉っぽさを感じた。また、平均粒子径が13μmを超える架橋コメデンプン糊液ではざらつきを感じた。また、架橋コーンスターチ(比較例4)、架橋タピオカデンプン(比較例5)は架橋コメデンプン(実施例1〜4)と比較して加熱前、加熱後とも平均粒子径が大きく、ざらつきを感じ好ましい食感が得られなかった。
【0037】
試験例2
まず、実施例5〜8のマヨネーズ様食品の食感を評価した。試食し、ざらつき、口溶け、こく味で食感を評価した。なお食感を比較するため、実施例5に使用した架橋デンプンのかわりに比較例1〜5の架橋デンプン及び市販マヨネーズを用い、比較例6〜10とした。又は、評価は以下の基準に従った。
評価:
ざらつき:A ざらつきを全く感じない、B ざらつきをやや感じる、C ざらつきを強く感じる。
口溶け :A 糊感は全くない、B 糊感はほとんど無い、C 糊感をやや感じる、D 糊感を強く感じる。
こく味 :A こく味を強く感じる、B こく味がある、C こく味が弱い、D こく味を感じない。
その結果を表2に示す。本発明の架橋度の架橋デンプンを使用したマヨネーズ様食品は市販品マヨネーズと同等の食感(ざらつき、口溶け、こく味)を有することが分かった。
【表2】


【0038】
試験例3
まず、実施例9〜12のクリーミータイプのドレッシング様食品の食感を評価した。試食し、ざらつき、口溶け、こく味で食感を評価した。なお食感を比較するため、実施例9に使用した架橋デンプンのかわりに比較例1〜5の架橋デンプン及び市販フレンチドレッシングを用い、比較例11〜15とした。また、評価は、以下の基準に従った。
評価:
ざらつき:A ざらつきを全く感じない、B ざらつきをやや感じる、C ざらつきを強く感じる。
口溶け :A 糊感は全くない、B 糊感はほとんど無い、C 糊感をやや感じる、D 糊感を強く感じる。
こく味 :A こく味を強く感じる、B こく味がある、C こく味が弱い、D こく味を感じない。
その結果を表3に示す。本発明の架橋度の架橋デンプンを使用したドレッシング様食品は市販品フレンチドレッシングと同等の食感(ざらつき、口溶け、こく味)を有することが分かった。
【表3】


【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の架橋デンプンは、低カロリー食品の食材として有用である。また、本発明の架橋デンプンを使用した低カロリー食品は、肥満や高脂血症の予防や抑制、また、ダイエット用食品として有用である。
【出願人】 【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区三崎町2丁目9番18号
【識別番号】000227272
【氏名又は名称】日澱化學株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市淀川区三津屋北3丁目3番29号
【出願日】 平成16年4月7日(2004.4.7)
【代理人】 【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍

【公開番号】 特開2005−295821(P2005−295821A)
【公開日】 平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願番号】 特願2004−113007(P2004−113007)