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【発明の名称】 二枚貝の浄化方法、二枚貝の浄化判定方法及び二枚貝の浄化装置
【発明者】 【氏名】室越 章

【氏名】吉水 守

【要約】 【課題】牡蠣のウイルス性食中毒における主な原因物質であるノロウイルスを、短時間で効果的に二枚貝から排出させ、または死滅させて、ノロウイルスの感染価を大幅に低下させる。

【解決手段】牡蠣浄化用の海水を貯留した浄化槽1に、電解装置4及び加温装置5を接続する。浄化槽1と電解装置4との間で海水を循環させながら電解装置4において海水を電解水にする。また、浄化槽1と加温装置5との間で海水を循環させながら加温装置5を20℃に加温する。これにより、生理活性によって牡蠣内部を通過する電解水の水流によって牡蠣内のノロウイルスを排出させ、この排出したノロウイルスを電解水によって死滅させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスを二枚貝から排出することにより二枚貝を浄化する方法であって、
電解水で成る浄化水を貯留した浄化槽内に二枚貝を入れ、この二枚貝が生理活性を行う温度となるように上記電解水を温度管理することにより、二枚貝の生理活性に伴って電解水を二枚貝の内部に通過させて貝内のノロウイルスを水流と共に貝外に排出させ、且つこのノロウイルスを電解水によって死滅させることを特徴とする二枚貝の浄化方法。
【請求項2】
請求項1記載の二枚貝の浄化方法において、
電解水で成る浄化水は、10〜43℃の範囲内に温度管理されていることを特徴とする二枚貝の浄化方法。
【請求項3】
二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスを死滅させることにより二枚貝を浄化する方法であって、
浄化水を貯留した浄化槽内に二枚貝を入れ、水温が20〜43℃となるようにこの浄化水を温水として温度管理することにより、二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスに温水を接触させ、また、二枚貝の生理活性に伴って貝外に排出されたノロウイルスに温水を接触させることによりノロウイルスを死滅させることを特徴とする二枚貝の浄化方法。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の二枚貝の浄化方法において、
浄化槽内の浄化水の残留塩素濃度は0.3ppm以下に設定されていることを特徴とする二枚貝の浄化方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうち何れか一つに記載の二枚貝の浄化方法において、
浄化水に紫外線照射を行っていることを特徴とする二枚貝の浄化方法。
【請求項6】
上記請求項1〜5のうち何れか一つに記載の二枚貝の浄化方法によって浄化された二枚貝を、浄化槽から取り出して密閉容器内に入れ、この密閉容器内を30℃以上で50℃未満の温度まで加熱し、且つ密閉容器内の圧力を100MPa未満に設定することにより二枚貝を開殻すると共に、貝内のノロウイルスを死滅させることを特徴とする二枚貝の浄化方法。
【請求項7】
上記請求項1〜6のうち何れか一つに記載の二枚貝の浄化方法による浄化性能を判定するための判定方法であって、
ノロウイルスの代替ウイルスとしてネコカリシウイルスを使用し、二枚貝の内部にネコカリシウイルスを取り込ませた状態で、上記請求項1〜6のうち何れか一つに記載の二枚貝の浄化方法を実施し、ウイルス感染価を計測することによって浄化性能を判定することを特徴とする二枚貝の浄化判定方法。
【請求項8】
二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスを二枚貝から排出することにより二枚貝を浄化するための浄化装置であって、
浄化水を貯留した浄化槽と、
この浄化水を電気分解することによって電解水を生成する電解手段と、
上記電解水を、二枚貝が生理活性を行う温度となるように温度調整する温度調整手段とを備えていることを特徴とする二枚貝の浄化装置。
【請求項9】
二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスを死滅させることにより二枚貝を浄化するための浄化装置であって、
浄化水を貯留した浄化槽と、
この浄化水の温度が20〜43℃となるように温度調整する温度調整手段とを備えていることを特徴とする二枚貝の浄化装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、牡蠣等の二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスを排出または死滅させて二枚貝を浄化する方法、この方法による浄化に対する判定方法及びこの浄化方法を実施するための浄化装置に係る。特に、本発明は、短時間でノロウイルスの感染価を大幅に低下させることを可能とするための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、活魚介類等を洗浄・殺菌する方法としては、次亜塩素酸ソーダ、紫外線、オゾンなどが使用されている。次亜塩素酸ソーダを使用する方法(例えば下記の特許文献1参照)では、遊離残留塩素濃度が10ないし20ppmという高い濃度液で処理しても十分な殺菌効果を得ることができないという課題がある。紫外線を使用する方法(例えば下記の特許文献2参照)では、浅い水槽でなくては効果が少なく、また水中の懸濁粒子により遮光されてしまうと十分な効果を得ることができない。オゾンを使用する方法(例えば下記の特許文献3参照)は、殺菌効果は高いが、残留オキシダントの人に対する毒性が高く、金属性のタンクや配管の腐食を招いてしまうため使用し難い。
【0003】
ところで、平成5年9月、厚生省(現厚生労働省)はカリシウイルス族のノロウイルスを食中毒原因物質として指定した。このノロウイルスは、牡蠣のウイルス性食中毒における主な原因物質である。つまり、牡蠣の中腸腺に蓄積したノロウイルスが、この牡蠣を加熱処理することなく食した者の体内に侵入した後、腸等の粘膜細胞内で増殖することに伴って、下痢や嘔吐、発熱等の胃腸炎症状が誘起される。実際、食中毒症状を訴える者の吐瀉物に菌類が検出されない場合、このノロウイルスが検出されることが多い。
【0004】
このノロウイルスによるウイルス性食中毒を防止するためには、食物中のウイルス数を減少させるべく、ウイルスの増殖を阻害する物質やウイルスを死滅させる物質を使用すればよいことが想起される。この物質を見出すためには、先ず、ノロウイルスの培養技術を確立する必要があるが、このノロウイルスは、人の腸管細胞でしか増殖しないため、その培養環境を実現することが難しく、未だ培養技術は確立されていない。このため、どのような物質がノロウイルスに対して滅ウイルス能を有するかを検討することは著しく困難である。
【特許文献1】特開平9−308886号公報
【特許文献2】特開平10−249364号公報
【特許文献3】特開2000−106856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したこれまでの殺菌方法(次亜塩素酸ソーダ、紫外線、オゾンを使用する方法)によりノロウイルスをある程度まで死滅させることは可能であるものの、未だ十分な効果(食中毒を発症させない程度までウイルス数を確実に減少させる効果)は得られていない。
【0006】
具体的には、ノロウイルスによる食中毒は、100個程度のノロウイルスを人が摂取することにより発症すると言われている。ノロウイルスを取り込んでいる牡蠣の1個当たりの平均的なノロウイルス数は数千個(例えば5千個)である。人が一度に食べる生牡蠣の個数を最大でも8個と仮定とすると、確実に発症を回避できるようにするためには、牡蠣1個当たりのノロウイルス数を1/1000程度まで減少させる(総摂取ウイルス数を40個程度まで減少させて確実に発症を回避できるようにする)必要がある。これまでの殺菌方法を使用してノロウイルスを死滅させようとした場合、ノロウイルス数を1/1000程度まで減少させることは困難であり、また、その信頼性も得られていないのが実情である。
【0007】
このように、牡蠣のウイルス性食中毒における主な原因物質であるノロウイルスについての滅ウイルスに関する技術は未だ確立されていない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二枚貝、特に牡蠣のウイルス性食中毒における主な原因物質であるノロウイルスを、短時間で効果的に二枚貝から排出させ、または死滅させて、ノロウイルスの感染価を大幅に低下させることを可能にする二枚貝の浄化方法、この方法による浄化に対する判定方法及び二枚貝の浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、二枚貝の生理活性(プランクトンや酸素を取り込むための運動)を有効利用してノロウイルスを排出または死滅させるようにしている。つまり、この生理活性によって二枚貝の内部を水が常時通過することから、この水流によって貝内のノロウイルスを貝外に排出させ、この排出したノロウイルスを電解水によって死滅させるようにしている。また、二枚貝の内部に、温度管理された温水を通過させることにより、ノロウイルスを高温下に常時晒して死滅させるようにしている。
【0010】
−解決手段−
具体的に、本発明は、二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスを二枚貝から排出することにより二枚貝を浄化する方法を前提とする。この二枚貝の浄化方法に対し、電解水で成る浄化水を貯留した浄化槽内に二枚貝を入れ、この二枚貝が生理活性を行う温度となるように上記電解水を温度管理することにより、二枚貝の生理活性に伴って電解水を二枚貝の内部に通過させて貝内のノロウイルスを水流と共に貝外に排出させ、且つこのノロウイルスを電解水によって死滅させるようにしている。この場合、電解水で成る浄化水は10〜43℃の範囲内で温度管理されている。
【0011】
この特定事項により、浄化槽内に入れられた二枚貝は、その生理活性により浄化槽内の電解水を殻内に取り込むと共に、殻内の電解水を排出する。つまり、水中のプランクトンを濾し取ると共に酸素を吸収するための繊毛運動を行う。これにより、電解水は二枚貝の内部を通過することになり、この通過に伴って貝内のノロウイルスは水流と共に貝外に排出され、貝内の浄化が行われる。また、この排出されたノロウイルスは電解水に常時接触した状態となりこの電解水の作用によって死滅する。このため、殻内に取り込まれる電解水内に存在するノロウイルス数も低減され、ノロウイルスの感染価を大幅に低下させることが可能になる。また、貝内に残存し続けるノロウイルスに対しても電解水が上記接触することになり死滅させることができる。電解水を上記温度に管理する理由は、浄化水の温度が10℃未満であると、二枚貝の生理活性が行われなくなりノロウイルスの排出ができなくなってしまうからであり、浄化水の温度が43℃を越えると、二枚貝のタンパク質に熱変性が生じてしまって生理活性が不能になってしまうからである。
【0012】
また、この二枚貝の浄化方法を実施するための浄化装置も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、浄化水を貯留した浄化槽と、この浄化水を電気分解することによって電解水を生成する電解手段と、上記電解水を、二枚貝が生理活性を行う温度となるように温度調整する温度調整手段とを備えた浄化装置である。
【0013】
また、二枚貝の浄化方法に係る他の解決手段として以下のものが掲げられる。つまり、二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスを死滅させることにより二枚貝を浄化する方法を前提とする。この二枚貝の浄化方法に対し、浄化水を貯留した浄化槽内に二枚貝を入れ、水温が20〜43℃となるように上記浄化水を温水として温度管理することにより、二枚貝の内部に取り込まれているノロウイルスに温水を接触させ、また、二枚貝の生理活性に伴って貝外に排出されたノロウイルスに温水を接触させることによりノロウイルスを死滅させるようにしている。
【0014】
ノロウイルスは高温下に晒されることで活性を失い、やがて死滅することが知られている。本解決手段によれば、二枚貝を温水中に存在させることによりノロウイルスを死滅させることが可能である。この場合、浄化槽内の水温は20〜43℃の間の所定温度に設定される。つまり、二枚貝の生理活性が行われる範囲であって比較的高い値に設定される。このため、二枚貝の生理活性によるノロウイルスの排出動作を行わせながらも、貝内部及び貝外部のノロウイルスに温水を接触させることで、貝内のノロウイルス数及び浄化槽内のノロウイルス生存数を削減することができる。浄化水を上記温度に管理する理由は、浄化水の温度が20℃未満であると、水温が低すぎてノロウイルスを死滅させることができないからであり、浄化水の温度が43℃を越えると、二枚貝のタンパク質に熱変性が生じてしまって生理活性が不能になってしまうからである。
【0015】
また、この二枚貝の浄化方法を実施するための浄化装置も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、浄化水を貯留した浄化槽と、この浄化水の温度が20〜43℃となるように温度調整する温度調整手段とを備えた浄化装置である。
【0016】
二枚貝の浄化効果をより高めるために付加される特定事項としては以下のものが掲げられる。先ず、浄化槽内の浄化水の残留塩素濃度を0.3ppm以下に設定することである。浄化水の残留塩素濃度が0.3ppmを越えてしまうと、二枚貝が生理活性を停止してウイルス排出動作が行えなくなる可能性がある。このため、残留塩素濃度を0.3ppm以下に設定することで、二枚貝の生理活性に伴うウイルス排出動作が確実に行えることになる。
【0017】
また、浄化水に紫外線照射を行うことが掲げられる。この紫外線照射により、浄化槽内の浄化水(貝外の浄化水)中に生存しているウイルスを死滅させることができ、浄化槽内全体におけるウイルスの感染価を大幅に低下させることができる。
【0018】
また、二枚貝を剥き身に加工する際にも以下の工程によってウイルスの感染価を低下させることができる。つまり、上記浄化された二枚貝を、浄化槽から取り出して密閉容器内に入れ、この密閉容器内を30℃以上で50℃未満の温度まで加熱し、且つ密閉容器内の圧力を100MPa未満に設定することにより二枚貝を開殻すると共に、貝内のノロウイルスを死滅させるものである。このような温度及び圧力管理の元で剥き身加工することにより、貝内に残存しているウイルスを死滅させることができウイルスの感染価を確実に低下させることができる。
【0019】
更に、上述した各解決手段のうち何れか一つの二枚貝の浄化方法による浄化性能を判定するための判定方法も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、ノロウイルスの代替ウイルスとしてネコカリシウイルスを使用し、二枚貝の内部にネコカリシウイルスを取り込ませた状態で、上記各解決手段のうち何れか一つの二枚貝の浄化方法を実施し、ウイルス感染価を計測することによって浄化性能を判定する浄化判定方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、二枚貝の生理活性を有効利用して貝内のノロウイルスを貝外に排出させ、この排出したノロウイルスを電解水によって死滅させるようにしている。また、二枚貝の内部に温度管理された温水を通過させることにより、ノロウイルスを高温下に常時晒して死滅させるようにしている。このため、従来の殺菌方法(次亜塩素酸ソーダ、紫外線、オゾンを使用する方法)では実現できなかった高い滅ウイルス効果を得ることができ、ノロウイルス数を1/1000程度まで確実に減少させることが可能になる。その結果、二枚貝のウイルス性食中毒を確実に予防できる。また、上述した各解決手段のうち、二枚貝が生理活性を行う温度となるように上記電解水を温度管理することと、温度及び圧力管理の元で剥き身加工することとを組み合わせることにより、ノロウイルス数を1/10000程度まで減少させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、二枚貝として牡蠣を浄化するために本発明を適用した場合について説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本形態に係る浄化装置としての浄化システム1の全体構成の概略を示す模式図である。この図に示すように、本浄化システム1は、浄化槽2、濾過装置3、電解手段としての電解装置4、温度調整手段としての加温装置5を備えている。
【0023】
浄化槽2は、上部開放型の水槽であって、貯水量が例えば数百リットルのものであり、内部に数十個の牡蠣を生息させることが可能な大きさである。尚、この浄化槽2の大きさは特に限定されるものではなく、また、上部閉鎖型の浄化槽であってもよい。
【0024】
濾過装置3は、内部に中空子膜を有していると共に、海水導入管31及び濾過水供給管32が接続されている。この濾過水供給管32の一端(下流端)は上記浄化槽2の上方で開放されている。このため、海水導入管31に備えられたポンプ33から汲み上げられた海水は、濾過装置3の内部で中空子膜を通過することにより、不純物(ゴミなど)が濾過された後、濾過水供給管32を経て浄化槽2内に供給されるようになっている。尚、この浄化槽2への海水供給動作は、本浄化システム1の使用開始時(牡蠣を投入する前)に行われる。また、浄化槽2内の海水を入れ換える場合や、浄化槽2内の海水量が減少した場合にも行われる。
【0025】
電解装置4は、ポンプ43を備えた海水取り出し管41及び海水戻し管42によって浄化槽2に接続されている。つまり、この電解装置4は浄化槽2との間で海水の循環回路を構成している。また、この電解装置4には、導入された海水を電気分解するための図示しない電極が内装されており、浄化槽2との間で海水を循環させながら、この海水を電解水に生成していくようになっている。例えば、白金電極を用い、直流10Vで2A前後の電流によって電気分解を行うことなどが掲げられる。
【0026】
また、この電解装置4には、紫外線照射装置(紫外線ランプ)6が備えられている。つまり、この電解装置4内の海水に対して紫外線(例えば1.0×104μW・sec/cm2)を照射(電解装置4内の水面上からの照射または水中に紫外線ランプを沈めることによる水中照射)することにより殺菌や滅ウイルス効果が得られるようにしている。このため、電解装置4から海水戻し管42を経て浄化槽2に戻される海水(電解水)中の細菌やウイルスは、紫外線照射によって大半が死滅した状態となっている。
【0027】
加温装置5は、ポンプ53を備えた海水取り出し管51及び海水戻し管52によって浄化槽2に接続されている。つまり、この加温装置5は浄化槽2との間で海水の循環回路を構成している。また、この加温装置5には、導入された海水を所定温度まで加熱するための図示しないヒータが内装されており、浄化槽2との間で海水を循環させながら、この海水を所定温度の温水に生成していくようになっている。具体的には、海水を20℃の温水に生成するようになっている。つまり、この加温装置5の内部または海水取り出し管51には温度センサが設置されており、そのセンシング温度が20℃に達するまではヒータをON作動させて海水を加温する一方、センシング温度が20℃に達するとヒータをOFF作動させるようになっている。また、センシング温度が20℃を下回ると再びヒータをON作動させて海水を一定温度に維持するようになっている。尚、このヒータとしては、電気ヒータやヒートポンプ等を使用することが可能である。
【0028】
また、ここで設定される海水温度は、20℃に限らず、10〜43℃の範囲内の所定温度に管理される。この温度範囲は、牡蠣の生理活性(プランクトンや酸素を取り込むための運動)が行われる範囲であり、この範囲に海水温度を管理することにより、牡蠣の内部を水が常時通過することから、この水流によって牡蠣内のノロウイルスを牡蠣外に排出させることができるようにしている。つまり、海水温度が10℃未満であると、牡蠣の生理活性が行われなくなり、ノロウイルスの排出ができなくなってしまい、海水温度が43℃を越えると、牡蠣のタンパク質に熱変性が生じてしまって生理活性によるウイルス排出動作が不能になる。このため、海水温度は10〜43℃の範囲内に管理される。
【0029】
上述の如く構成された浄化システム1における牡蠣の浄化動作は以下のとおりである。先ず、浄化槽2へ牡蠣を投入する前に、この浄化槽2への海水供給動作が行われる。この動作は、海水導入管31に備えられたポンプ33が起動し、このポンプ33から汲み上げられた海水が、濾過装置3の内部に導入され、中空子膜を通過することにより不純物が濾過された後、濾過水供給管32を経て浄化槽2内に供給される。そして、所定量の海水が浄化槽2に貯留された時点でポンプ33を停止する。
【0030】
その後、浄化槽2へ所定個数の牡蠣を投入する。これと同時に電解装置4及び加温装置5を起動する。つまり、電解装置4では、海水取り出し管41に備えられたポンプ43が起動し、浄化槽2との間で海水を循環させながら、この海水を電解水に生成していく。また、この電解装置4の内部では海水に対して紫外線照射装置6から紫外線照射が行われ、殺菌や滅ウイルスが行われる。一方、加温装置5では、海水取り出し管51に備えられたポンプ53が起動し、浄化槽2との間で海水を循環させながら、この海水を20℃の温水に生成していく。
【0031】
このような作動状態を継続することにより、浄化槽2の内部では、20℃に温度管理された電解水中に牡蠣が生息した状態となる。このため、牡蠣は、その生理活性により浄化槽2内の電解水を殻内に取り込むと共に、殻内の電解水を排出する。つまり、水中のプランクトンを濾し取ると共に酸素を吸収するための繊毛運動を行う。これにより、電解水は牡蠣の内部を通過することになり、この通過に伴って牡蠣内のノロウイルスは水流と共に牡蠣の外部に排出され、牡蠣の内部の浄化が行われる。また、この排出されたノロウイルスは電解水に常時接触した状態となりこの電解水の作用によって死滅する。このため、殻内に新たに取り込まれる電解水内に存在するノロウイルス数も低減され、ノロウイルスの感染価を大幅に低下させることが可能になる。本形態では、この浄化動作を20時間程度継続して行うようにしている。
【0032】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本形態に係る浄化システム1は、電解装置4を備えていない点が上記第1実施形態のものと異なっている。つまり、浄化槽2内の海水の温度管理のみによって牡蠣の浄化を行うようにしたものである。従って、ここでは、海水の温度管理についてのみ説明する。
【0033】
図2に示す本形態に係る浄化システム1では、加温装置5が、海水温度を20〜43℃の範囲内の所定温度に管理するようにしている。具体的には30℃に設定している。ここで設定される海水温度は、30℃に限らず、20〜43℃の範囲内の所定温度に管理される。この温度範囲は、牡蠣の生理活性(プランクトンや酸素を取り込むための運動)が行われる範囲のうち比較的高い値である。このため、牡蠣の生理活性によるノロウイルスの排出動作を行わせながらも、牡蠣内部及び牡蠣外部のノロウイルスに温水を接触させることで、牡蠣内のノロウイルス数及び浄化槽2内のノロウイルス生存数を削減することができる。浄化水を上記温度に管理する理由として、海水温度が20℃未満であると、水温が低すぎてノロウイルスを死滅させることがでず、海水温度が43℃を越えると、牡蠣のタンパク質に熱変性が生じてしまって生理活性によるウイルス排出動作が不能になる。このため、海水温度は20〜43℃の範囲内に管理される。
【0034】
本形態によれば、ノロウイルスが常時高温下に晒されることになり、この温水から受ける熱エネルギによってノロウイルスは活性を失い、その後、死滅させることが可能である。
【0035】
(剥き身加工)
次に、上述した第1実施形態または第2実施形態に係る浄化システム1において浄化された牡蠣を剥き身に加工する際にウイルスの感染価を低下させるための剥き身加工について説明する。
【0036】
この剥き身加工は、上記浄化後に浄化槽2から取り出した牡蠣を密閉容器内に入れ、この密閉容器内を30℃以上で50℃未満の温度まで加熱し、且つ密閉容器内の圧力を100MPa未満に設定することにより牡蠣を開殻するものである。つまり、牡蠣の身のタンパク質に生じる熱変性が可逆的なものである限界温度以下の温度まで加熱し、また、この温度において牡蠣の閉殻筋と外殻との接合部分が外れる圧力を作用させるようにしている。このような環境下で剥き身加工することによっても牡蠣の内部のノロウイルスを死滅させることができ、ウイルスの感染価を確実に低下できる。
【0037】
具体的には、水温が30℃の場合には密閉容器内の圧力が70MPa程度であっても開殻が開始し、また、水温が40℃の場合には密閉容器内の圧力が60MPa程度であっても開殻が開始し、更に、水温が50℃の場合には密閉容器内の圧力が50MPa以下であっても開殻が開始する。
【0038】
特に、水温が30℃の場合には密閉容器内の圧力が80MPaであっても95%の牡蠣が開殻し、その全てが脱殻まで至る。また、水温が40℃の場合には密閉容器内の圧力が70MPaであっても97%の牡蠣が開殻し、その全てが脱殻まで至る。更に、水温が50℃の場合には密閉容器内の圧力が60MPaであっても97%の牡蠣が開殻し、その殆どが脱殻まで至る。但し、水温を50℃とした場合、牡蠣の身に含まれているタンパク質が不可逆的な熱変性を生じる可能性があるため、この温度域で開殻を行わせることはあまり好ましくない。実際には、水温が30℃〜45℃の範囲で開殻率が95%以上となる圧力域を使用することが好ましい。例えば、水温が30℃の場合には密閉容器内の圧力を80MPaに設定し、また、水温が40℃の場合には密閉容器内の圧力を70MPaに設定し、更に、水温が45℃の場合には密閉容器内の圧力を65MPa程度に設定する。これらの場合には、殆どの牡蠣が開殻だけでなく脱殻まで至るので、密閉容器から取り出した牡蠣に対して脱殻作業を行う必要は殆どない。また、殆どの牡蠣を脱殻まで至らせる必要が無く、開殻のみを行わせればよい場合には、もう少し低い温度及び低い圧力を牡蠣に作用させれば済む。尚、この開殻のみを行わせた場合であっても、既に、牡蠣の閉殻筋と外殻との接合部分は外れ易い状態になっているので、脱殻作業は極めて容易に行える。
【0039】
−実験例−
上述した各実施形態の効果を裏付けするために行った実験の結果について以下に説明する。上述したように、ノロウイルスは、人の腸管細胞でしか増殖しないため、その培養環境を実現することが難しく、未だ培養技術は確立されていない。このため、本発明の発明者らは、代替ウイルスについて検討し、このノロウイルスの代替ウイルスとしてネコカリシウイルスを使用して実験を行った。つまり、牡蠣の内部にネコカリシウイルスを取り込ませた状態(例えば数百個の取り込み個数)で浄化判定を行った。
【0040】
図3は、ネコカリシウイルスの温度安定性に関する実験結果である。この実験では、浄化槽2の水温を5℃、10℃、20℃、37℃にそれぞれ設定したものに対し、ウイルス感染価の時間的変化を計測した。
【0041】
この図3から分かるように浄化槽2の水温が20℃を越えると、短時間でウイルス感染価を大幅に低下させることができることが確認できた。つまり、上記第2実施形態において管理される温度の設定範囲の裏付けができたことになる。
【0042】
図4は、ネコカリシウイルスの電解水感受性に関する実験結果である。この実験では、浄化槽2内の海水として残留塩素濃度0.23mg/Lの電解水を使用し、ウイルス感染価の時間的変化を計測した。
【0043】
この図4から分かるように、処理時間として1分が経過した時点でウイルス感染価は2桁を越える減少が確認できた。つまり、上記第1実施形態において電解水を使用したことの効果が裏付けできたことになる。
【0044】
図5は、ネコカリシウイルスの紫外線感受性に関する実験結果である。この実験では、ネコカリシウイルスを含む海水に対して紫外線を照射し、その照射量とウイルス感染価との関係を計測した。
【0045】
この図5から分かるように、紫外線を照射することによりウイルス感染価は低下することが確認できた。特に、照射量が多いほどウイルス感染価の低下割合は大きくなっている。つまり、上記第1実施形態において海水に紫外線を照射したことの効果が裏付けできたことになる。
【0046】
図6は、高水圧下でのネコカリシウイルスの安定性に関する実験結果である。この実験では、牡蠣を剥き身にするに際し、40℃の環境下における環境圧力を0MPa、80MPa、200MPa、300MPaにそれぞれ設定したものに対し、処理時間5分とした場合のウイルス感染価を計測した。
【0047】
この図6から分かるように、環境圧力が高いほどウイルス感染価は低下することが確認できた。つまり、上述した条件下での剥き身加工によってもウイルスの感染価を低下させることができることが裏付けできたことになる。
【0048】
−その他の実施形態−
以上説明した各実施形態は牡蠣を浄化するための浄化方法、浄化判定方法及び浄化装置として本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、その他の二枚貝(浅蜊や帆立貝など)を浄化するための浄化方法、浄化判定方法及び浄化装置として適用することも可能である。
【0049】
また、上述した各実施形態に係る浄化システム1における濾過装置3にも電極を内装しておき、この濾過装置3内においても電解水が生成される構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る浄化システムの全体構成の概略を示す模式図である。
【図2】第2実施形態に係る浄化システムの全体構成の概略を示す模式図である。
【図3】ネコカリシウイルスの温度安定性に関する実験結果を示す図である。
【図4】ネコカリシウイルスの電解水感受性に関する実験結果を示す図である。
【図5】ネコカリシウイルスの紫外線感受性に関する実験結果を示す図である。
【図6】高水圧下でのネコカリシウイルスの安定性に関する実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 浄化システム(浄化装置)
2 浄化槽
4 電解装置(電解手段)
5 加温装置(温度調整手段)
【出願人】 【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
【識別番号】591036631
【氏名又は名称】社団法人マリノフォーラム二十一
【出願日】 平成16年4月7日(2004.4.7)
【代理人】 【識別番号】100075502
【弁理士】
【氏名又は名称】倉内 義朗

【公開番号】 特開2005−295820(P2005−295820A)
【公開日】 平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願番号】 特願2004−112914(P2004−112914)