トップ :: A 生活必需品 :: A23 食品または食料品;他のクラスに包含されないそれらの処理




【発明の名称】 茸類エキスの抽出方法、茸類エキス製品の製造方法、茸類のエキス、茸類エキス製品
【発明者】 【氏名】神谷 晋司
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内

【氏名】佐藤 りか
【住所又は居所】秋田県由利郡仁賀保町平沢字画書面15 株式会社TDK秋田研究所内

【氏名】進藤 美穂
【住所又は居所】秋田県由利郡仁賀保町平沢字画書面15 株式会社TDK秋田研究所内

【氏名】青山 かおり
【住所又は居所】秋田県由利郡仁賀保町平沢字画書面15 株式会社TDK秋田研究所内

【要約】 【課題】エキス収量を向上させ、有効成分の抽出を効率よく行うことのできる茸類エキスの抽出方法、茸類エキス製品の製造方法等を提供することを目的とする。

【解決手段】茸類の子実体を粉砕して得られる粉砕物から、エタノール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水エタノールで、子実体の含水エタノール可溶性のエキスを抽出するようにした。このとき、粉砕物の嵩密度を0.2[g/cm]以上とするのが好ましい。そして、エキスを含んだ含水エタノールを沸点以下で加熱してエタノールを除去した後、エキスを粉末化し、得られた粉末を用いて茸類エキス製品を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茸類の子実体を粉砕する粉砕工程と、
粉砕された前記子実体の粉砕物から、アルコール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水アルコールで、含水アルコール可溶性のエキスを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程に続き、前記エキスを含んだ前記含水アルコールを沸点以下で加熱し、アルコールを除去する除去工程と、
を有することを特徴とする茸類エキスの抽出方法。
【請求項2】
前記抽出工程では、嵩密度を0.2[g/cm]以上とされた前記粉砕物から前記エキスを抽出することを特徴とする請求項1に記載の茸類エキスの抽出方法。
【請求項3】
前記抽出工程におけるエキス収率が10[%]以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の茸類エキスの抽出方法。
【請求項4】
前記抽出工程で抽出されるポリフェノール量が4[mg/g子実体]以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の茸類エキスの抽出方法。
【請求項5】
茸類の子実体を粉砕する粉砕工程と、
粉砕された前記子実体の粉砕物から、エタノール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水エタノールで、含水エタノール可溶性のエキスを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程に続き、前記エキスを含んだ前記含水エタノールを沸点以下で加熱し、エタノールを除去する除去工程と、
前記エキスを粉末化し、得られた粉末を用い、茸類エキス製品を形成する製品形成工程と、
を有することを特徴とする茸類エキス製品の製造方法。
【請求項6】
前記粉砕工程では、前記子実体の粉砕物の嵩密度が0.2[g/cm]以上となるまで、前記子実体を粉砕することを特徴とする請求項5に記載の茸類エキス製品の製造方法。
【請求項7】
茸類の子実体を粉砕した粉砕物から抽出される前記茸類のエキスであって、
前記子実体からのエキス収率が10[%]以上であり、抽出されたポリフェノール量が4[mg/g子実体]以上であることを特徴とする茸類のエキス。
【請求項8】
前記子実体からのGanoderic Alcoholsの抽出量が500[μg/g子実体]以上であることを特徴とする請求項7に記載の茸類のエキス。
【請求項9】
アルコール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水アルコールによって、前記粉砕物から抽出されたものであることを特徴とする請求項7または8に記載の茸類のエキス。
【請求項10】
茸類の子実体を粉砕した粉砕物から前記茸類のエキスを抽出し、抽出された前記エキスを原料として製造される茸類エキス製品であって、
エタノール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水エタノールによって、前記粉砕物から抽出することで得られる前記エキスを、前記原料としていることを特徴とする茸類エキス製品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、万年茸をはじめとする茸類エキスの抽出方法、茸類エキス製品の製造方法、茸類のエキス、茸類エキス製品に関する。
【背景技術】
【0002】
万年茸はサイワイタケとも称される茸類であり、中国名では霊芝(れいし)とも称され、旧来より床飾り等の鑑賞用とされていた。
近年、霊芝の薬効効果が注目され、霊芝は顆粒、錠剤等の形態で健康補助食品として提供されている。
【0003】
万年茸を栽培するには、おが屑や米ぬか、ふすま等を混ぜたもの(これを培地と称する)を培養袋や広口ビン等の容器に充填した後、この培地に菌を植え付け、これを一定期間培養させる。すると、菌(菌糸)が容器内の培地に蔓延し、いわゆる菌床が得られる。この菌床を、所定範囲内の湿度・温度・照度環境に維持することで菌床から万年茸の子実体が生えてくるので、この環境を一定期間維持して所望の大きさに生育させる。そして、生育した子実体を収穫し、粉砕、エキス抽出、粉末化といった工程を経て、顆粒、錠剤、カプセル等といった形態の健康補助食品とする。
【0004】
ところで、エキス抽出の工程においては、水やアルコール、あるいは含水アルコールを用い、水溶性、アルコール可溶性の有効成分の抽出を行っている。
例えば、特許文献1に記載の技術では、霊芝子実体の粉砕物に冷含水アルコールを加え、含水アルコール可溶性成分を抽出している。また、特許文献2に記載の技術では、非極性溶媒によって霊芝を抽出処理した後の抽出残渣を、熱水またはアルコール水溶液で有効成分を抽出している。特許文献3に記載の技術では、霊芝子実体の粉砕物に30〜70[%]濃度の熱含水アルコールによる含水アルコール可溶成分の抽出と、熱水の水溶性成分の抽出からなる2段階の抽出を行っている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−235502号公報
【特許文献2】特許第3128147号公報
【特許文献3】特許第2965490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなエキス抽出の工程においては、エキスの総収量を高め、トリテルペン類等の特定成分の抽出を効率よく行えることが望まれている。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、エキスの総収量が低く、またトリテルペン類の抽出量が低い。また、特許文献2に記載の技術では、非極性溶媒を用いることで、霊芝の有効成分であるトリテルペン類を除去してしまう。さらに、非極性溶媒による抽出と、熱水またはアルコール水溶液による抽出と、2段階の抽出工程を経ており、工程が煩雑であるという問題もある。特許文献3に記載の技術も、2段階の抽出工程を経ており、工程が煩雑であり、またエキス収率が8.51〜9.54[%]と低い数値に留まっているという問題もある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、エキス収率を向上させ、有効成分の抽出を効率よく行うことのできる茸類エキスの抽出方法、茸類エキス製品の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の茸類エキスの抽出方法は、茸類の子実体を粉砕する粉砕工程と、粉砕された子実体の粉砕物から、アルコール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水アルコールで、子実体の含水アルコール可溶性のエキスを抽出する抽出工程と、抽出工程に続き、エキスを含んだ含水アルコールを沸点以下で加熱し、アルコールを除去する除去工程と、を有することを特徴とする。
万年茸等の茸類の子実体の粉砕物から、アルコール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水アルコールでエキス抽出を行うと、エキスが効率よく抽出できる。エキス収率を高めるのであれば、アルコール濃度は30〜80[%]とするのが好ましく、ポリフェノールの抽出効率を高めるのであれば30〜90[%]、より好ましくは60〜70[%]のアルコール濃度とするのが好ましい。また、a.alcohol量を高めるのであれば、アルコール濃度は、40〜85[%]であるのが好ましい。
このとき、エキス抽出は、上記条件を満たした含水アルコールによる1段階の抽出のみ行う。つまり、子実体を粉砕して得られる粉砕物を含水アルコールに所定時間投入することにより、エキスの抽出を完了するのである。
【0008】
ところで、粉砕工程等では、子実体の粉砕レベルを管理するのが好ましい。そのための尺度として、従来は、例えば「2〜20[mm]」といった長さ、粒径、篩(ふるい)のメッシュサイズ等を用いていた(例えば、特許文献4、5、6参照。)。
【0009】
【特許文献4】特開平9−56362号公報(第3頁、段落[0016])
【特許文献5】特開2003−212788号公報(請求項1等)
【特許文献6】特開平5−139989号公報(請求項1等)
【0010】
しかしながら、万年茸のように、菌糸の集合体からなるものは、粉砕しても繊維を完全に破壊するのは困難である。したがって、粉砕した粉砕物は、球状、塊状に近い形状ではなく、針状、あるいは繊維が絡まったような綿状等の異形となっている。
このため、長さを測るといっても、異形の粉砕物の長手方向に正確に測ることは困難である。粒径を用いる場合も、粒径の計測に用いる粒度分布計では、異形の計測対象物(粉砕物)の粒径を正確に計測するのは困難である。メッシュサイズを用いる場合、実際には所定のメッシュサイズを有した篩を通るか否かを判定することになるが、針状の粉砕物は、その方向によって篩のメッシュを通過したりしなかったりするため、この方法でも正確な評価は困難である。
このように、従来の技術では、粉砕物の粉砕レベルを正確に評価することが困難であり、粉砕レベルを実質的に管理していたとは言えないのが実状である。万年茸等の場合、粉砕物の粉砕レベルが、得られる有効成分の収率に影響するため、有効成分の収率に向上の余地があると言える。
【0011】
そこで、本発明では、粉砕物の粉砕レベルの評価に、嵩密度を用いる。
抽出工程では、嵩密度を0.2[g/cm]以上とされた粉砕物からエキスを抽出すると、エキス収率が顕著に向上し、エキス収率を10[%]以上、抽出されるポリフェノール量を4[mg/g子実体]以上とすることができる。ここで、ポリフェノール量の単位[mg/g子実体]は、子実体1[g]中のポリフェノールの含有量[mg]である。
このような方法で抽出したエキスはいかなる目的に用いても良い。しかし、エキスを食用・飲用とする場合には、アルコールとしてエタノールを用いるのが好ましい。
【0012】
本発明は、茸類の子実体を粉砕する粉砕工程と、粉砕された子実体の粉砕物から、エタノール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水エタノールで、子実体の含水エタノール可溶性のエキスを抽出する抽出工程と、抽出工程に続き、エキスを含んだ含水エタノールを沸点以下で加熱し、エタノールを除去する除去工程と、エキスを粉末化し、得られた粉末を用い、茸類エキス製品を形成する製品形成工程と、を有することを特徴とする茸類エキス製品の製造方法として捉えることができる。ここで、茸類エキス製品としては、カプセル状、タブレット状、顆粒状、粉末状、ドリンク状等の形態がある。
この場合、粉砕工程では、子実体の粉砕物の嵩密度が0.2[g/cm]以上となるまで、子実体を粉砕するのが好ましい。
【0013】
本発明は、茸類の子実体を粉砕した粉砕物から抽出される茸類のエキスとして捉えることもできる。この場合、茸類のエキスは、子実体からのエキス収率が10[%]以上であり、抽出されたポリフェノール量が4[mg/g子実体]以上であることを特徴とする。さらに、子実体からのGanoderic Alcoholsの抽出量が500[μg/g子実体]以上であることを特徴とすることもできる。
このような茸類のエキスは、アルコール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水アルコールによって、粉砕物から抽出することができる。
【0014】
本発明は、茸類の子実体を粉砕した粉砕物から茸類のエキスを抽出し、抽出されたエキスを原料として製造される茸類エキス製品であって、エタノール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水エタノールによって、粉砕物から抽出することで得られるエキスを、原料としていることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明が対象とする茸類は、主に万年茸である。この他に、例えば、シイタケ、ナメコ、ヒラタケ、シメジ、エノキタケ、キクラゲ、マイタケ、スエヒロタケ、チョレイマイタケ、コフキサルノコシカケ、カワラタケ、メシマコブ、アガリクス、ヤマブシタケ、ハナビラタケ等が挙げられる。これらの茸類に対しても本発明を適用することができる。さらに言えば、特にこれらのうち、繊維質が硬い、サルノコシカケ科の茸類、メシマコブ等に本発明は好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法によれば、万年茸等の茸類の子実体の粉砕物から、アルコール濃度が30〜90[%]、30〜80[℃]の含水アルコールでエキス抽出を行うことで、エキス収率を向上させ、有効成分の抽出を効率よく行うことができる。
また、このような方法で得られた茸類のエキス、茸類エキス製品は、従来手法で得られるものに比較し、高い収率でエキスやポリフェノール等の有効成分を含んだものとすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における茸類エキスの抽出プロセス、茸類エキス製品の製造プロセスの流れを説明するための図である。
霊芝(茸類)エキスを抽出するための子実体は、培地に菌が植え付けられ、これを一定期間培養することで得られた菌床を、所定範囲内の湿度・温度・照度環境に維持することで得られる。菌床からは、万年茸の鹿角状の子実体(いわゆる鹿角霊芝)が生えてくる。この子実体を菌床から切り取り、所定期間乾燥させると乾燥子実体が得られるので、この乾燥子実体から、以下のようにして霊芝エキスの抽出を行う。
【0018】
<粉砕工程>
乾燥子実体(以下、単に子実体と称する)を、回転刃の付いた破砕装置等で粗粉砕した後、乾式ジェットミル等の粉砕手段によって微粉砕する。
ここで、本実施の形態では、嵩(カサ)密度による子実体の粉砕レベルの管理を行うのが好ましい。
【0019】
嵩密度は、原理的には、図2に示すように、所定の容積の容器1に、微粉砕物10を上方から注ぎ、容器1の上端面1aよりも上方にまで盛り上がるようにする。このとき、過大な微粉砕物10の混入を防ぐため、容器1に注ぐ微粉砕物10は、所定メッシュサイズの篩を通すのが好ましい。そして、上端面1aより盛り上がった微粉砕物10を、板2等によって容器1の上端面1aに沿って摺り切る。この後、容器1内に残った微粉砕物10の重量Wを計測し、これを容器1の容積Vで除算したものが、嵩密度Xとなる。
X=W/V [g/cm
【0020】
本実施の形態では、嵩密度Xが、X≧0.2となるまで、微粉砕を行うのが好ましい。このようにして、微粉砕物の粉砕レベルを所定以上に細かくすることで、エキス収率を高めることができる。
【0021】
<抽出工程>
得られた微粉砕物は、含水エタノール抽出により、微粉砕物からβ−グルカン等の有効成分の抽出が行われる。ここで、抽出に用いる含水エタノールは、エタノール濃度を30〜90[%]、温度を30〜80[℃]とした温含水エタノールを用いる。これにより、微粉砕物から含水アルコール可溶性成分を抽出する。
微粉砕物からの有効成分の抽出後、エタノールを沸点以下の温度(常圧あるいは減圧雰囲気下)で蒸発乾燥させることで、エキス抽出自体は完了する。
なお、このようにして抽出されたエキスは、霊芝抽出液は−20[℃]で溶液のまま保存することもできるし、また凍結乾燥や減圧濃縮等により固形物として保存することもできる。
【0022】
<粉末化工程>
抽出されたエキスに、抽出された際に生じる残渣を投入してスラリー状のエキスを得る。そして、スラリー状のエキスを、スプレードライヤ等で粉末化し、エキス粉末を得る。
【0023】
<製品形成工程>
得られたエキス粉末を計量し、これをカプセルに充填することで、カプセル状の茸類エキス製品を製造できる。また、所定重量のエキス粉末にバインダ等を混合して所定形状の打錠成形することで、タブレット状の茸類エキス製品を形成できる。もちろん、カプセルやタブレット以外にも、粉末化する際に所定粒度の微粉末あるいは顆粒状としたり、これを液体に混合してドリンク剤とすること等ももちろん可能である。
【0024】
このように、エキス抽出工程において、エタノール濃度を30〜90[%]、温度を30〜80[℃]とした温含水エタノールを用いることにより、エキス収率を高めることができる。特に、トリテルペン類、ポリフェノールといった有効成分を効率よく抽出することができる。しかも、含水エタノールによる1段のみの抽出であり、従来のような2段抽出を行う必要がないため、抽出を簡易に行うことが可能となる。
さらに、嵩密度Xを、X≧0.2、より好ましくはX≧0.25とした微粉砕物からエキス抽出を行うことで、上記効果は一層顕著となる。
【実施例1】
【0025】
ここで、微粉砕物の粉砕レベルの評価を、嵩密度で行ったときと、従来の粒度分布で行ったときを比較したのでその結果を示す。
収穫後、乾燥した鹿角霊芝を3[mm]角程度に粗粉砕した後、乾式ジェットミルで微粉砕を行い、微粉砕物を得た。ここで、乾式ジェットミルに対する、粗粉砕後の粗粉砕物の供給速度を、
Test1:5.0[kg/Hr]
Test2:3.5[kg/Hr]
Test3:2.5[kg/Hr]
Test4:1.5[kg/Hr]
Test5:0.5[kg/Hr]
とし、粉砕状態の異なる5種類の微粉砕物を得た。
言い換えれば、10[kg]の粗粉砕物を処理するのに要する時間(粉砕時間)は、
Test1:2時間
Test2:2時間50分
Test3:4時間
Test4:6時間42分
Test5:20時間
となる。
【0026】
上記のようにして得られた微粉砕物を、カーボンテープ上に固定し、さらに帯電防止のためPt−Pdをスパッタコーティングしたものを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した(観察時の加速電圧:0.5kV、エミッション電流5nA)。
図3(a)はTest1、図3(b)はTest2、図4(a)はTest3、図4(b)はTest4、図5はTest5によって得られた微粉砕物のSEM写真である。
【0027】
これらのSEM写真からも明らかなように、乾式ジェットミルへの粗粉砕物の供給速度を低く、つまり粉砕時間を長くし、乾式ジェットミル内で粉砕される時間を長くするほど、得られる微粉砕物の粒子が細かくなるのは視覚的にも明らかである。
【0028】
このようにして得られたTest1〜Test5の微粉砕物について、嵩密度を測定した。これには、体積20[ml]の測定用セル(容器1)に42メッシュの目開きの篩を通して微粉砕物を落下させ、体積20[ml]あたりの微粉砕物の重量を測り、嵩密度を算出した。
比較のため、上記Test1〜Test5の微粉砕物を、メタノール中に超音波を用いて分散させ、レーザー回折式粒度分布測定機により、微粉砕物の粒度分布を測定した。
その結果が表1である。
【0029】
【表1】


【0030】
この表1に示すように、Test1〜Test5の微粉砕物は、図3〜図5に示したSEM写真では、粉砕レベルの違いが明らかに確認できているにもかかわらず、粒度分布の測定結果では、平均粒径、粒度分布ともに、Test1〜Test5の微粉砕物で殆ど変化が無い結果となった。
【0031】
これに対し、嵩密度は、
Test1:0.18[g/cm
Test2:0.22[g/cm
Test3:0.26[g/cm
Test4:0.28[g/cm
Test5:0.35[g/cm
と、Test1〜Test5の微粉砕物で明らかに異なっており、また図3〜図5に示したSEM写真と同様、乾式ジェットミルへの粗粉砕物の供給速度を低く、つまり粉砕時間を長くし、乾式ジェットミル内で粉砕される時間を長くするほど、得られる微粉砕物の嵩密度が大きくなる、という相関関係が得られている。
【0032】
このようにして、万年茸のように菌糸の集合体からなる試料は粉砕しても繊維を完全に破壊することが困難であり、綿状や針状となるため、液中で測定する粒度分布では真の粒径を評価することができないことが確認できた。これに対し、嵩密度はSEM写真の破砕レベルによく対応し、万年茸の粉砕レベルを数値化して正確に評価できることが確認できた。
【0033】
また、図5に示したTest5の微粉砕物では、万年茸の菌糸がほぼ完全に破砕されていることが確認できた。つまり、嵩密度を0.35程度とすることで、万年茸の菌糸がほぼ完全に破砕された微粉砕物を得ることができると言える。
【0034】
さて、微粉砕後、100[℃]、1時間の熱水抽出によりエキスの抽出を行った。そして、抽出液をメンブランフィルターで濾過し、濾液を蒸発乾固させた後、その重量を測定し、これをエキス収率とした。
その結果が、図6に示すものである。
【0035】
この図6に示すように、水溶性エキスの収率は、嵩密度0.2[g/cm]未満では殆ど一定であるが、0.2[g/cm]以上になると、水溶性エキスの収率が高くなることが確認された。
【0036】
このようにして、万年茸の子実体からエキス抽出を行う過程で、嵩密度を用いることで、粉砕レベルを正確に評価することができるのである。これにより、量産工程においても、得られる有効成分の収率を管理することが可能となり、有効成分の収率を従来以上に向上させることが可能となる。さらに、粉砕レベルを正確に評価できるので、粉砕レベルが一定の範囲に管理された微粉砕物から製造される顆粒、錠剤、カプセル等において、品質を従来以上に安定させることができる。
【実施例2】
【0037】
また、エキス抽出に用いる含水エタノールの濃度とエキス収率との関係を調べたのでその結果を以下に示す。
収穫後、乾燥した鹿角霊芝を3[mm]角程度に粗粉砕した後、乾式ジェットミルで微粉砕を行い、カサ密度が0.2[g/cm]以上となるように粉砕した。なお、カサ密度の測定は体積20[ml]の測定用セルに、42メッシュの目開きの篩を通して微粉砕物を落下し、体積20[ml]あたりの微粉砕物の重量を計り、カサ密度を計算した。
その後、微粉砕物4[g]を、蒸留水で希釈した濃度の異なる含水エタノール100[ml]に加え、60[℃]のウォーターバス中で攪拌しながら1時間加温し、エキス抽出を行った。ここで、エタノール濃度は、0(すなわち水を用いた熱水抽出)、30、40、50、60、65、70、75、80、85、90、100(すなわちエタノール抽出)[%]とした。
エキス収率の測定は抽出液をメンブランフィルターで濾過し、濾液を蒸発乾固させた後、重量により測定した。
その結果を図7に示す。
【0038】
図7に示すように、エタノールが含まれない熱水抽出の場合や、エタノール濃度が低すぎたり高すぎたりした場合には、エキス収率が低くなり、エタノール濃度が30〜80[%]の範囲で高いエキス収率が得られることが確認された。
【実施例3】
【0039】
また、エキス抽出により得られるトリテルペン類の量について評価したのでその結果を以下に示す。
実施例2と同様にして得た微粉砕物から、異なるエタノール濃度でエキス抽出を行った。エキス抽出により得られた抽出液は、固液分離し、抽出液と抽出残渣に分けた。そして、抽出液を蒸発乾固した後、100[%]メタノールを用いてトリテルペン類を溶解させて回収し、減圧濃縮後、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)にてトリテルペン類の量を測定した。HPLCにおける分析条件は、次の通りである。
カラム 東ソー TSK−GEL ODS−80TM (4.6φ×15[mm])
移動相 Ganoderic Alcohol Fr. アセトニトリル:2[%]酢酸 60:40
Ganoderic Acid Fr. アセトニトリル:2[%]酢酸 30:70
流量 1[ml/min]
HPLC装置 日立 D−7000 HSM
【0040】
各濃度に調整した含水エタノールを抽出溶媒とした時の、抽出エキスに含まれるGanoderic Alcohols又はGanoderic Acids量を図8(a)および(b)に示した。
その結果、抽出エキス中のGanoderic Alcoholの抽出量は、含水エタノールのエタノール濃度40[%]以上で高くなり、Ganoderic Acid量は、30[%]以上で高くなった。
また抽出処理およびエタノールを除去する工程で、含水エタノールの沸点以上の温度に加温するとトリテルペン類が分解した。
【0041】
これにより、トリテルペン類の抽出量を高めるには、エキス抽出に用いる含水エタノールのエタノール濃度を30ないし40[%]以上とし、上限は沸点未満とするのが好ましいことが確認された。
【実施例4】
【0042】
次に、エキス抽出に用いる含水エタノールのエタノール濃度と、得られるエキスの総ポリフェノール量の関係を調べたので、その結果を示す。
実施例2で得られたエキスの総ポリフェノール量を、フォリンデニス法で測定し、フェノール性水酸基の存在をカテキン量に換算し、子実体1[g]中の含有量[mg/g子実体]として算出した。
その結果を図9に示す。
この図9に示すように、エキス抽出に用いた含水エタノールのエタノール濃度を、30〜90[%]とすることで、ポリフェノール抽出量が増加し、特にエタノール濃度を60〜70[%]とすることで、特に高いポリフェノール抽出量となることが確認された。
【実施例5】
【0043】
実施例2と同様にして得た微粉砕物4[g]を、蒸留水で希釈しエタノール濃度70[%]とした含水エタノール100[ml]に加え、温度(抽出温度)を室温の25[℃]から90[℃]に調整したウォーターバス中で攪拌しながら1時間加温し、エキス抽出を行った。
得られたエキスの総ポリフェノール量を、フォリンデニス法で測定し、フェノール性水酸基の存在をカテキン量に換算し、子実体1[g]中の含有量として算出した。
その結果を図10に示す。
【0044】
この図10に示すように、エキス収率、ポリフェノール抽出量ともに室温の25[℃]より高い温度で高くなり、エタノールの沸点以上である80[℃]より高い温度ではあまり差がなかった。
これにより、エキス抽出を、室温の25[℃]より高い温度で行う、つまりエキス抽出に用いる含水エタノールを加熱し、温含水エタノールを用いることで、エキス収率、ポリフェノール収量ともに高くなるのが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施の形態における茸類エキスの抽出プロセス、茸類エキス製品の製造プロセスを示す図である。
【図2】嵩密度の原理的な計測方法を示す図である。
【図3】(a)供給流量を5.0[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像、(b)供給流量を3.5[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像である。
【図4】(a)供給流量を2.5[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像、(b)供給流量を1.5[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像である。
【図5】供給流量を0.5[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像である。
【図6】実施例1の結果を示すものであり、嵩密度とエキス収率の関係を示す図である。
【図7】実施例2の結果を示すものであり、エタノール濃度とエキス収率の関係を示す図である。
【図8】実施例3の結果を示すものであり、(a)はエタノール濃度とGanoderic Alcoholの抽出量、(b)はエタノール濃度とGanoderic Acidの抽出量の関係を示す図である。
【図9】実施例4の結果を示すものであり、エタノール濃度とポリフェノール抽出量の関係を示す図である。
【図10】実施例5の結果を示すものであり、抽出温度と、エキス収率およびポリフェノール量の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10…微粉砕物
【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
【出願日】 平成16年3月25日(2004.3.25)
【代理人】 【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充

【公開番号】 特開2005−269990(P2005−269990A)
【公開日】 平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願番号】 特願2004−88367(P2004−88367)