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【発明の名称】 薄塩魚卵とその製造方法
【発明者】 【氏名】十見 裕
【住所又は居所】東京都港区南青山1−15−18 新東京インターナショナル株式会社内

【要約】 【課題】3%以下という低塩分濃度下においても十分な保存性を備えた薄塩魚卵の製造方法と、その製造方法によって製造される薄塩魚卵、並びに、その製造方法に用いる薄塩魚卵製造用の処理液を提供することを課題とする。

【解決手段】有効成分として、有機酸塩を合計量で0.1〜6.0質量%、グリシンを0.5〜5.0質量%、リゾチームを0.001〜0.09質量%、有機酸を合計量で0.5〜15.0質量%、及びエタノールを0.1〜10.0質量%含有する所定の塩分濃度の日持ち向上処理液に、処理すべき魚卵を、処理後の魚卵の塩分濃度が3%以下に留まるように浸漬する工程を含む、薄塩魚卵の製造方法、並びに、その製造方法によって製造された薄塩魚卵、及び、その製造方法に使用する薄塩魚卵製造用日持ち向上処理液を提供することによって上記の課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、有機酸塩を合計量で0.1〜6.0質量%、グリシンを0.5〜5.0質量%、リゾチームを0.001〜0.09質量%、有機酸を合計量で0.5〜15.0質量%、及びエタノールを0.1〜10.0質量%含有する所定の塩分濃度の日持ち向上処理液に、処理すべき魚卵を、処理後の魚卵の塩分濃度が3質量%以下に留まるように浸漬する工程を含む、薄塩魚卵の製造方法。
【請求項2】
日持ち向上処理液の塩分濃度が5質量%未満である請求項1記載の薄塩魚卵の製造方法。
【請求項3】
日持ち向上処理液が調味液である請求項1又は2記載の薄塩魚卵の製造方法。
【請求項4】
有機酸塩が、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であり、有機酸が、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の薄塩魚卵の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で製造され、塩分濃度が3質量%以下である薄塩魚卵。
【請求項6】
製造後、25℃で48時間保存したときに、一般生菌数及び乳酸菌数が共に1×10未満である、塩分濃度が3質量%以下の薄塩魚卵。
【請求項7】
有効成分として、有機酸塩を合計量で0.1〜6.0質量%、グリシンを0.5〜5.0質量%、リゾチームを0.001〜0.09質量%、有機酸を合計量で0.5〜15.0質量%、及びエタノールを0.1〜10.0質量%含む、薄塩魚卵製造用日持ち向上処理液。
【請求項8】
塩分濃度が5質量%未満である請求項7記載の薄塩魚卵製造用日持ち向上処理液。
【請求項9】
処理液が調味液である請求項7又は8記載の薄塩魚卵製造用日持ち向上処理液。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、薄塩魚卵とその製造方法に関し、詳細には、薄塩であっても常温で比較的長期間保存することができる薄塩魚卵とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いくらや筋子等に代表される魚卵は、加熱すると変性し易い性質上、加熱滅菌を施すことが困難であり、冷凍して長期保存するにしても、解凍後の保存性を考えて、高濃度の塩分を含んだ塩水もしくは調味液に漬け、魚卵の塩分濃度を高めることが行われてきた。
【0003】
しかしながら、最近の消費者の嗜好は、健康と素材本来の旨味を重視する傾向にあり、いくらや筋子などの魚卵においても、塩分濃度を抑えたいわゆる薄塩のものが好まれるようになっている。特に、本発明者らが新たに見出した知見によれば、魚卵、特にいくらや筋子などの魚卵において、塩分濃度が3質量%以下(以下、本明細書では特に断らない限り、質量%を単に%と記載する)になると、製品を食したときの塩味が薄れ、魚卵本来の旨味を味わうことができるので、これを他の食品素材と組み合わせて、例えば弁当や丼物などに使用しても、他の食品素材の旨味を損なうことなく良く調和し、種々の用途に使用できることが分かった。
【0004】
ところが、魚卵に限らず、食品中の塩分濃度が下がると、一般に水分活性は高まり、微生物の繁殖に好都合な状態となるため、塩分濃度を抑えた薄塩の魚卵においては、微生物が繁殖し易く、日持が悪いという不都合がある。特に、塩分濃度が実質的に3%以下になると、水分活性が急激に高まり、大腸菌を始め一般生菌や乳酸菌などの増殖が活発になるので、塩分濃度が3%以下の魚卵は非常に痛み易いという欠点を持っている。この欠点を解決するために、例えば、いわゆる保存料を使用することも考えられる。しかしながら保存料は、比較的微量で食品保存に有効な製剤であるが、微生物を直接攻撃するものであるので、近年の消費者の健康志向からはその使用が次第に避けられる傾向にある。
【0005】
一方、保存料に代わって、最近使用が拡大しつつあるものに、日持ち向上剤と呼ばれるものがある。日持ち向上剤は、pHを下げるなど環境を調整して微生物の生存しにくい条件を生成し、微生物の増殖を抑えるものであるので、消費者に受け入れられ易いものである。このような日持ち向上剤を使用して、薄塩の食品の日持ちを向上させる試みも提案されている。例えば、特許文献1においては、低塩の状態を維持しながら微生物に対する安定性の高い魚卵を製造する方法として、乳酸、乳酸塩もしくは両者の混合物を用いる方法が開示されている。しかしながら、この開示された製造方法による生いくらの保存性は5℃で2日間がせいぜいであり、常温で流通する例えばコンビニエンスストア用の弁当などに使用するには不十分である。また、魚卵の日持ちを向上させる方法としては、特許文献2に見られるような、リゾチーム、酢酸およびビタミンB1を含有する日持ち向上剤も提案されている。しかしながら、この日持ち向上剤は、特に薄塩の魚卵を対象にしたものではなく、薄塩の魚卵に使用して所期の保存性を達成することができるものかどうかは不明である。
【0006】
上記のような日持ち向上剤を用いて低塩分の魚卵の日持ちを向上させるには、その使用量を増せばよいとの考え方もある。しかしながら、使用量を増せば、日持ち向上剤に含まれる成分の異味などが表に現れやすい傾向がある。特に、塩分濃度が3%以下というような薄塩になると、塩分による異味のマスキング効果が薄く、日持ち向上剤に含まれる成分の苦味などの異味が強く現れてしまうため、日持ち向上剤を従来の高塩分の魚卵に対するよりも多く使用することによって、低塩分の魚卵の日持ちの向上を図ることもできないという制約がある。
【0007】
以上のような事情から、これまで、いわゆる日持ち向上剤と呼ばれるものを用いて、塩分濃度が3%以下というような薄塩の魚卵の日持ちを常温流通に耐える程度にまで向上させることは行われていなかった。
【特許文献1】特開平6−133741号公報
【特許文献2】特開2000−37161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術が持つ問題点を解決するために為されたもので、3%以下という低塩分濃度下においても十分な保存性を備え、魚卵本来の旨味を保持した薄塩魚卵の製造方法と、その製造方法によって製造される薄塩魚卵、並びに、その製造方法に用いる薄塩魚卵製造用の処理液を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有効成分として、有機酸塩を合計量で0.1〜6.0%、グリシンを0.5〜5.0%、リゾチームを0.001〜0.09%、有機酸を合計量で0.5〜15.0%、及びエタノールを0.1〜10.0%含有する所定の塩分濃度の日持ち向上処理液に、処理すべき魚卵を、処理後の魚卵の塩分濃度が3%以下に留まるように浸漬する工程を含む、薄塩魚卵の製造方法、並びに、その製造方法によって製造された薄塩魚卵、及び、その製造方法に使用する薄塩魚卵製造用日持ち向上処理液を提供することによって上記の課題を解決するものである。
【0010】
なお、本発明でいう魚卵とは、海水域、淡水域、及び汽水域に生息する全ての魚類の卵を意味し、サケ・マス科の魚の卵であるいくら、筋子だけではなく、たらこ、数の子、ボラの卵、ししゃもの卵、いわなの卵、チョウザメの卵等を含むものであるけれども、卵の大きさとその特性からして、本発明はいくら及び筋子に適用して最も効果がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薄塩魚卵の製造方法によれば、魚卵本来の旨味を保持した塩分濃度が3%以下という薄塩の魚卵が得られるという利点がある。しかも得られた薄塩魚卵の保存性は、例えば、25℃で48時間保存した場合でも一般生菌数及び乳酸菌数が共に1×10未満という優れたものである。したがって、本発明の薄塩魚卵の製造方法によって製造された薄塩魚卵は、常温で2日間の保存が可能であり、例えば、弁当や丼物に使用し、これをコンビニエンスストアなどにおいて常温ケースに陳列する場合でも、製造日中を賞味期限としても、まだ1日の余裕を見ることが可能となる。このように比較的長期の室温保存が可能な塩分濃度3%以下というような薄塩魚卵は、本発明以前には存在せず、本発明の薄塩魚卵の製造方法によって初めて実現することができたものである。本発明の薄塩魚卵は、消費者の低塩化の嗜好や、素材本来の旨味を重視する嗜好とも一致し、より快適な食生活に資するところ大である。また、本発明の薄塩魚卵の製造に使用される日持ち向上処理液は、保存性が良く魚卵本来の旨味を保持した薄塩の魚卵を製造することができるものであり、例えば、この日持ち向上処理液に種々の調味成分を加えて調味液とすれば、魚卵に対し調味付けと保存性とを同時に付与することができるという利点がある。しかも、本発明の薄塩魚卵の製造に使用される日持ち向上処理液は、通常食品に使用され、その安全性が確認されているものだけを有効成分として含んでいるので、安全であり、安心して使用できるという利点があり、また、そのような日持ち向上処理液を用いて製造された薄塩魚卵も安心して食することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の薄塩魚卵の製造方法は、有効成分として、有機酸塩を合計量で0.1〜6.0%、グリシンを0.5〜5.0%、リゾチームを0.001〜0.09%、有機酸を合計量で0.5〜15.0%、及びエタノールを0.1〜10.0%含有する所定の塩分濃度の日持ち向上処理液に、処理すべき魚卵を、処理後の魚卵の塩分濃度が3%以下に留まるように浸漬する工程を含むものである。
【0013】
日持ち向上処理液に使用する有機酸塩としては、それが本来の作用効果を達成することができる限りどのような有機酸塩を使用しても良いけれども、好ましくは、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上であり、特に好ましくは、酢酸ナトリウムである。日持ち向上処理液中の有機酸塩の濃度は、1種類の有機酸塩を使用する場合にはその有機酸塩の濃度が、また、2種以上の有機酸塩を使用する場合にはその合計量の濃度が0.1〜6.0%の範囲、好ましくは0.5〜3.5%の範囲である。有機酸塩の濃度が0.1%未満では日持ち向上処理液で処理しても所期の日持向上効果を達成することができず、また、6.0%を超えると、それ以上の効果の増大が見込めない上に、処理後の魚卵に異味を付与してしまう可能性があり、好ましくない。
【0014】
日持ち向上処理液に使用するグリシンの濃度は、0.5〜5.0%の範囲、好ましくは1.0〜2.5%の範囲である。グリシンの濃度が0.5%未満では日持ち向上処理液で処理しても所期の日持向上効果を達成することができず、また、5%を超えると、それ以上の効果の増大が見込めない上に、グリシンの異味が現れ、好ましくない。なお、処理後の魚卵の呈味の観点からは、グリシンの濃度は、有機酸塩の濃度よりも低いのが望ましく、有機酸塩の濃度の半分以下であるのがより好ましい。
【0015】
日持ち向上処理液に使用するリゾチームとしては、それがリゾチームである限り、その由来に関わりなく使用することができるけれども、入手が容易で、食品への使用に実績のある卵白リゾチームを使用するのが好ましい。日持ち向上処理液中のリゾチームの濃度は0.001〜0.09%の範囲であり、好ましくは0.003〜0.08%の範囲である。リゾチームの濃度が0.001%未満では日持ち向上処理液で処理しても所期の日持向上効果を達成することができず、また、0.09%を超えると、それ以上の効果の増大が見込めないので好ましくない。
【0016】
日持ち向上処理液に使用する有機酸としては、それが本来の作用効果を達成することができる限りどのような有機酸を使用しても良いけれども、好ましくは、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸から選ばれる1種又は2種以上であり、特に好ましくは、アジピン酸又はフマル酸であり、特に好ましいのはフマル酸で、アジピン酸とフマル酸との併用が最も好ましい。日持ち向上処理液中の有機酸の濃度は、1種類の有機酸を使用する場合にはその有機酸の濃度が、また、2種以上の有機酸を使用する場合にはその合計量の濃度が0.5〜15.0%の範囲、好ましくは0.6〜10%の範囲である。有機酸の濃度が0.5%未満では日持ち向上処理液で処理しても所期の日持向上効果を達成することができず、また、15%を超えると、それ以上の効果の増大が見込めない上に、処理後の魚卵に異味を付与してしまう可能性があり、好ましくない。なお、アジピン酸とフマル酸とを併用する場合には、アジピン酸の量をフマル酸よりも多くするのが、所期の日持向上効果を達成する上で好ましい。
【0017】
日持ち向上処理液に使用するエタノールの濃度は0.1〜10.0%の範囲、好ましくは、2.0〜7.0%の範囲である。エタノールの濃度が0.1%未満では日持ち向上処理液で処理しても所期の日持向上効果を達成することができず、また、10%を超えると、それ以上の効果の増大が見込めない上に、処理後の魚卵に異味を付与してしまう可能性があり、好ましくない。
【0018】
本発明の日持ち向上処理液は、使用時に、上記の有効成分を上記の濃度で含んでいれば良いので、保存時ないし流通時には濃縮された状態にあり、使用時に水で希釈されて、各有効成分の濃度が上記の範囲になるようなものであっても良い。また、本発明の日持ち向上処理液は、通常、全有効成分が混合状態にある1種類の処理液として使用されるものであるが、各有効成分を1種類もしくは2種類以上含む液を、使用時に混合して、本発明で使用する日持ち向上処理液としても良い。このような本発明の日持ち向上処理液は、通常食品に使用され、その安全性が確認されている成分だけを使用しているので安全であり、安心して使用できるというメリットがある。
【0019】
本発明で使用する日持ち向上処理液には、上記の有効成分の他に、通常の日持ち向上剤に使用される他の成分を加えても良い。また、清酒やグルタミン酸ソーダ、旨味調味料、昆布エキス、醤油、みりん等を加えて、調味液としても良い。本発明の日持ち向上処理液を調味液として使用する場合には、魚卵に日持向上効果の付与と調味付けとを同時に行うことができるので便利である。
【0020】
本発明で使用する日持ち向上処理液の塩分濃度は何%であっても良く、0%であっても良いけれども、調味液とする場合には、多少の塩分が含まれるのは避けられず、その場合でも、塩分濃度は5%未満が好ましく、さらに好ましくは4%未満が良い。日持ち向上処理液の塩分濃度が5%を超えると、処理後の魚卵の塩分濃度を3%以下に留めるのが難しくなるので好ましくない。なお、日持ち向上処理液によって処理された後の魚卵の塩分濃度を3%以下に留めるには、例えば、日持ち向上処理液の塩分濃度に合わせて浸漬時間を調節するか、日持ち向上処理液に浸漬する時間に合わせて日持ち向上処理液の塩分濃度を調節すれば良い。使用する日持ち向上処理液の量や、処理対象となる魚卵の種類にも依るけれども、通常、0.5〜10時間の浸漬時間で魚卵の塩分濃度を3%以下に留めるには、日持ち向上処理液の塩分濃度を4%未満にすることが必要となる。日持ち向上処理液と処理すべき魚卵の量比には特に制限はないけれども、容量比で魚卵100に対して日持ち向上処理液を30以上、好ましくは40以上使用するのが望ましい。
【0021】
本発明の薄塩魚卵の製造方法は、上記日持ち向上処理液に魚卵を浸漬する工程を含んでいれば良く、その他に、魚卵の洗浄工程や、洗浄に使用した塩水などの液切り工程、浸漬工程に使用した処理液の液切り工程、さらには計量工程や、品質検査工程、製品として出荷するための容器への充填工程などを含んでいても良い。しかしながら、塩分濃度が3%以下の薄塩魚卵の製造方法である以上、上記日持ち向上処理液への浸漬工程よりも後に、魚卵の塩分濃度を3%超にする工程を含まない必要があることは勿論である。また、上記の日持ち向上処理液への浸漬工程が、処理後の魚卵の塩分濃度が3%以下に留まるように浸漬する工程である以上、日持ち向上処理液への浸漬前においても魚卵の塩分濃度を3%超にする工程を含まないものであることは明らかである。なお、いくらや筋子等の魚卵は、通常、自然状態において1%程度の塩分を含んでいるので、そのままの状態で、もしくは事前に塩水によって洗浄するにしても、それほど高濃度の塩水を使用しなければ、上記日持ち向上処理液への浸漬工程開始持において、魚卵の塩分濃度は3%以下とすることができる。
【0022】
以上のような本発明の薄塩魚卵の製造方法によって製造された薄塩魚卵は、塩分濃度が3%以下であり、日持ち向上処理液に由来する異味もなく、魚卵本来の旨味が生かされ、例えば、25℃で48時間保存後も、一般生菌数及び乳酸菌数が共に1×10未満であるので、室温で2日間の保存が可能である。また、日持ち向上処理液として調味液を用いた場合には、保存性の向上と調味付けとが同時に行われているので、これに適宜の後工程を施すだけで、そのまま商品として出荷することが可能である。なお、魚卵及び日持ち向上処理液の塩分濃度は、例えば、モール法と呼ばれる銀滴定の終点検知法を用いて、銀滴定によって求めることができる。
【0023】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が実施例記載のものに限られるものではないことは言うまでもない。
【実施例】
【0024】
(実施例1〜3:薄塩いくら)
冷凍保存されていた生いくら(塩分濃度1.1%)を解凍後、1.5%濃度の塩水で洗浄し、液切りした後、表1に記載の実施例1〜3の組成の処理液に4時間浸漬し、浸漬終了後、液切りをして、実施例1〜3の3種類の薄塩いくらを製造した。使用した処理液の量は、いくら100容積に対し40容積であった。製造した各実施例の薄塩いくらの一部を用いて、製造直後における薄塩いくらの塩分濃度、大腸菌群の有無、一般生菌数、乳酸菌数を測定すると共に、残りを25℃で48時間の保存試験に供した。保存試験終了後、同様にして、保存後の各実施例の薄塩いくらについて、大腸菌群の有無、一般生菌数、乳酸菌数を測定した。結果を表2に示す。
【0025】
(比較例1〜6:薄塩いくら)
処理液の組成を表1の比較例1〜6に記載のとおり変更した以外は実施例1〜3と同様にして、比較例1〜6の薄塩いくらを製造し、製造直後における各薄塩いくらの塩分濃度、大腸菌群の有無、一般生菌数、乳酸菌数を測定すると共に、25℃で48時間保存後の薄塩いくらについて、大腸菌群の有無、一般生菌数、乳酸菌数を測定した。結果を表2に示した。なお、薄塩いくらの塩分濃度の測定は上述の方法で行い、大腸菌群の有無、一般生菌数、乳酸菌数の測定は食品衛生法に規定されているやり方に従って行った。
【0026】
【表1】


【0027】
【表2】


【0028】
表1及び表2に示すとおり、各有効成分の濃度がいずれも本発明の範囲に入る組成を有する処理液(すなわち日持ち向上処理液)で浸漬処理した実施例1〜3の薄塩いくらは、塩分濃度がいずれも3%以下であるにも係わらず、25℃で48時間保存後も、大腸菌群は陰性であり、薄塩いくら1g当たりの一般生菌数(CFU/g)及び乳酸菌数(CFU/g)はいずれも1×10未満と低く、保存性の目安である1×10を下回っていた。なお、有機酸としてフマル酸だけを含む処理液で処理した実施例3の薄塩いくらの方が、同量のアジピン酸だけを含む処理液で処理した実施例2の薄塩いくらに比べて、一般生菌数、乳酸菌数ともに低いことから、有機酸としてはフマル酸を用いる方が静菌効果に優れていることが分かる。また、有機酸としてフマル酸とアジピン酸の両者を含む処理液で処理した実施例1の薄塩いくらは、一般生菌数、乳酸菌数ともに最も低く、もっとも静菌作用に優れていた。
【0029】
これに対し、有機酸塩、グリシン、リゾチーム、エタノールのうち、いずれか1つを省略するか、有機酸の合計量を本発明の範囲を下回る0.5%未満とした比較例1〜6の処理液で処理した薄塩いくらは、25℃で48時間保存後には、一般生菌数及び/又は乳酸菌数が保存性の目安である1×10を上回り、保存性の点で満足のいくものではなかった。
【0030】
以上の結果から、塩分濃度3%以下の薄塩いくらにおいて、十分満足できる保存性を実現するには、所定量の有機酸塩、グリシン、リゾチーム、有機酸、及びエタノールが不可欠であると結論された。なお、実施例1〜3の処理液で処理した保存試験後の薄塩いくらを食したが、処理液に由来すると思われる異味は感じられず、いくら本来の旨味が保持されていた。
【0031】
(実施例4〜5:薄塩いくら)
処理液の組成を表3の実施例4〜5に示すとおり変更した以外は、実施例1〜3と同様にして、2種類の薄塩いくらを製造し、25℃、48時間の保存試験に供した。結果を表4に示す。
【0032】
(比較例7〜10:薄塩いくら)
処理液の組成を表3の比較例7〜10に示すとおり変更した以外は、実施例1〜3と同様にして、4種類の薄塩いくらを製造し、25℃、48時間の保存試験に供した。結果を表4に示す。
【0033】
【表3】


【0034】
【表4】


【0035】
表3及び表4から見て取れるように、各有効成分の濃度がいずれも本発明の範囲に入る組成を有する処理液で浸漬処理した実施例4〜5の薄塩いくらは、いずれも塩分濃度が3%以下であるにも係わらず、25℃で48時間保存後も、大腸菌群は陰性であり、薄塩いくら1g当たりの一般生菌数(CFU/g)及び乳酸菌数(CFU/g)はいずれも1×10未満と低く、保存性の目安である1×10を下回っていた。またこの場合も、有機酸としてフマル酸を含む処理液で処理した実施例5の薄塩いくらの方が、有機酸の合計量では本発明の範囲に入る処理液で処理した実施例4の薄塩いくらに比べて、一般生菌数、乳酸菌数ともに低いことから、有機酸としてはフマル酸を用いる方が静菌効果に優れていることが分かる。
【0036】
これに対し、有機酸の量が本発明の範囲を下回り、しかもエタノールを含まない比較例7の処理液で処理した薄塩いくらは、25℃で48時間保存後には、一般生菌数及び乳酸菌数ともに10のオーダーになり、保存性のある薄塩いくらを製造するには不適である。この傾向は、比較例7の処理液にエタノールを加えた比較例8においても変わらず、有機酸の合計量が本発明の範囲を下回る場合には、25℃で48時間保存後に、一般生菌数及び乳酸菌数が共に1×10を下回る結果は得られなかった。また、比較例10に示すように、処理液の塩分濃度を7.5%に高め、5.2%という高い塩分濃度を有する塩漬けいくらを製造した場合には、25℃で48時間保存後も、大腸菌群は陰性であり、いくら1g当たりの一般生菌数(CFU/g)及び乳酸菌数(CFU/g)はいずれも1×10を下回る結果が得られる。しかしながら、比較例10の処理液の塩分濃度だけを3.5%と低くした比較例9の処理液を用い、2.8%という低い塩分濃度を有する薄塩いくらを製造した場合には、塩分濃度以外の組成は比較例10の処理液と変わらないにも係わらず、25℃で48時間保存後には、一般生菌数が10オーダーとなり、また乳酸菌数も10オーダーになって、保存性のある薄塩いくらを製造するには不適であった。このことは、高い塩分濃度の塩漬けいくらにおいては有効な処理液も、3%以下の塩分濃度の薄塩いくらにおいては有効でなく、薄塩いくらにおいてその保存性を高め、日持を向上させることが如何に困難であるかを物語っている。なお、実施例4〜5の処理液で処理した保存試験後の薄塩いくらを食したが、処理液に由来すると思われる異味は感じられず、いくら本来の旨味が保持されていた。
【0037】
(実施例6:調味液による薄塩いくらの製造)
新鮮な鮭の腹から卵を取り出し、これを卵粒に分離して、生いくらを得た。一方、適量の清酒、グルタミンソーダ、旨味調味料、昆布エキス、薄口醤油、濃い口醤油、みりんを配合し、これに、酢酸ナトリウム、グリシン、リゾチーム、フマル酸、アジピン酸、及びエタノールを実施例1の日持ち向上処理液の配合になるように混ぜ、塩分濃度3%の調味液を調製した。この調味液40容積に、上で得た生いくら100容積を5時間浸漬し、味付けされた薄塩いくら(塩分濃度2.5%)を製造した。この味付けされた薄塩いくらを25℃で48時間保存し、その後に、大腸菌群、一般生菌数、並びに乳酸菌数を調べたところ、大腸菌群は陰性であり、一般生菌数及び乳酸菌数はいずれも10のオーダーであり、保存性の目安となる1×10をはるかに下回るものであった。また、この味付けされた薄塩いくらを食したところ、いくら本来の旨味が良く保持されており、異味、異臭は感じられなかった。
【0038】
(実施例7:薄塩筋子)
適量の清酒、グルタミンソーダ、旨味調味料、昆布エキス、薄口醤油、濃い口醤油、みりん、及び亜硝酸塩を配合し、これに、酢酸ナトリウム、グリシン、リゾチーム、フマル酸、アジピン酸、及びエタノールを実施例1の処理液の配合になるように混ぜ、塩分濃度3%の調味液を調製した。この調味液100容積に、新鮮な鮭の腹から取り出した筋子100容積を3時間浸漬し、味付けされた薄塩筋子(塩分濃度2.5%)を製造した。この味付けされた薄塩筋子を25℃で48時間保存し、その後に、大腸菌群、一般生菌数、並びに乳酸菌数を調べたところ、大腸菌群は陰性であり、一般生菌数及び乳酸菌数はいずれも10のオーダーであり、保存性の目安となる1×10をはるかに下回るものであった。また、この味付けされた薄塩筋子を食したところ、筋子本来の旨味が良く保持されており、異味、異臭は感じられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明の薄塩魚卵の製造方法によれば、魚卵本来の旨味を保持した薄塩の魚卵でありながら、常温で比較的長期間日持ち保存のできる薄塩魚卵を製造することが可能になる。薄塩魚卵は、近年の消費者の低塩分嗜好に合致し、しかも、食品本来の味を生かすことができるものであり、そのような薄塩魚卵が常温で比較的長期間日持ち保存ができるということは、仕出し業界、弁当業界を始めとして、コンビニエンスストアなどにおいても、製品の範囲を広げ、多種多様な消費者の嗜好にも対応することを可能とし、食生活を安全且つ豊かにするものである。
【出願人】 【識別番号】592070281
【氏名又は名称】新東京インターナショナル株式会社
【住所又は居所】東京都目黒区中央町1丁目8番18号
【出願日】 平成16年3月23日(2004.3.23)
【代理人】 【識別番号】100108486
【弁理士】
【氏名又は名称】須磨 光夫

【公開番号】 特開2005−269933(P2005−269933A)
【公開日】 平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願番号】 特願2004−85304(P2004−85304)