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【発明の名称】 香味劣化抑制剤
【発明者】 【氏名】戸川 真

【氏名】増田 秀樹

【要約】 【課題】安全性が高く、飲食品や口腔衛生剤などの本来の香味に影響を与えることのない香味劣化抑制剤、すなわち、飲食品や口腔衛生剤などの製造、流通、保存の各段階で、主として光、熱、酸素による香味劣化を抑制できる香味劣化抑制剤を提供することにある。

【解決手段】マレーフトモモ及び/又はリュウガン種子抽出物からなる香味劣化抑制剤である。この香味劣化抑制剤を飲食品、口腔衛生剤等や香味料などに添加することにより光、酸化による香味劣化を抑制することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレーフトモモ(学名:Syzygium malaccensis)の種子及び/又はリュウガン(学名:Euphoria longana)の種子の溶媒抽出物を含有することを特徴とする香味劣化抑制剤。
【請求項2】
溶媒抽出物が、水、極性有機溶媒又はこれらの混合物で抽出して得られるものである請求項1記載の香味劣化抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤が0.5〜500ppm添加されてなる飲食品、口腔衛生剤又は医薬品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤を飲食品、口腔衛生剤又は医薬品に0.5〜500ppm添加することを特徴とする香味劣化抑制方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤が0.005〜5質量%添加されてなる香味料。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤を香味料に0.005〜5質量%添加することを特徴とする香味料の劣化を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、香味成分を含む飲食品、口腔衛生剤、医薬品又は香味料に広く適用することができる特定の天然物由来の香味劣化抑制剤および香味劣化抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や食品あるいは歯磨き剤、口臭防止剤のような口腔衛生剤、経口内服薬のような医薬品(以下、併せて「飲食品等」という)は口に入った瞬間にその味と香りが感じられるので、飲食品等の香味は各種栄養成分と同様に重要な要素である。こうした飲食品等の香味は製造、流通、保存等の各段階で徐々に劣化していくことがよく知られている。飲食品等の香味の劣化は香味成分自身が酸素、光、熱等により変化する他、飲食品に含まれる油脂、たんぱく質、糖類、アミノ酸類、有機酸類等の香味成分以外の各成分が酸素、光、熱等の作用により酸化、還元、異性化、重合等の数多くの反応を起こし、オフフレーバー成分が生成することによっても引き起こされる。最近は特に店頭ディスプレイ時の商品イメージアップのため飲食品等に透明ガラス容器、半透明プラスチック容器等の光透過性の包装材料が用いられる場合が多く、それらをコンビニエンスストア等で長時間、蛍光灯下に陳列する販売形態が一般的になっていることから、飲食品等は以前よりもさらに光による香味劣化を起こしやすくなっている。
【0003】
こうした香味の劣化を抑制するために、これまでにアスコルビン酸等各種の酸化防止剤やクロロゲン酸、ルチン等の光劣化防止剤を添加する方法が提案されている(非特許文献1)。本発明者らも光や熱などによる飲食品等の香味の劣化抑制について、これまでにユーカリ、ペパーミント、カカオ、アシタバ等の植物の抽出物や、カテキン類等の天然由来の成分を添加することによる香味の劣化抑制方法を提案してきた(特許文献1〜13)。
【0004】
しかしながら、飲食品等の香味の劣化は、上述のとおり、香味成分自身が酸素、光、熱等により変化することに加え、飲食品等に含まれる油脂、たんぱく質、糖類、アミノ酸類、有機酸類等も関与する複合的な要因により引き起こされるものである。このため上記従来技術を用いてもなお効果が不十分な場合があり、さらに効果の高い香味劣化抑制技術が求められていた。
【0005】
【非特許文献1】「特許庁公報 周知慣用技術集(香料)第1部」1999年1月29日 p141〜147
【特許文献1】特開平11−137224号公報
【特許文献2】特開平11−169148号公報
【特許文献3】特開2001−346558号公報
【特許文献4】特開2002−244号公報
【特許文献5】特開2002−330741号公報
【特許文献6】特開2003−79335号公報
【特許文献7】特開2004−16056号公報
【特許文献8】特開2004−16057号公報
【特許文献9】特開2004−16058号公報
【特許文献10】特開2004−16059号公報
【特許文献11】特開2004−16061号公報
【特許文献12】特開2004−18611号公報
【特許文献13】特開2004−18612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複雑な要因により引き起こされる飲食品等の香味劣化に対し、従来技術よりもさらに効果の高い香味劣化抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、植物を中心とする多種多様の天然物由来の成分について香味劣化抑制活性を鋭意検討した結果、フトモモ科フトモモ属植物のマレーフトモモの種子、ムクロジ科リュウガンの種子の溶媒抽出物を使用することにより、光、熱、酸素等による飲食品等の香味劣化を長期間抑制することを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、マレーフトモモの種子及び/又はリュウガンの種子の溶媒抽出物を含有することを特徴とする香味劣化抑制剤である。本発明はさらに、上記の香味劣化抑制剤を0.5〜500ppm添加してなる飲食品等である。さらに本発明は、上記香味劣化抑制剤を飲食品等に0.5〜500ppm添加して香味劣化を抑制する方法である。また本発明は上記香味劣化抑制剤を0.005〜5質量%添加されてなる香味料である。さらに本発明は、上記香味劣化抑制剤を香味料に0.005〜5質量%添加して劣化を抑制する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の香味劣化抑制剤を飲食品等や香味料に添加することにより、光、熱、酸素等の影響を受けやすいものについて香味劣化を抑制することができる。特に光に対しては顕著な劣化抑制効果を示し、長期間香味を保持させることができるので、光照射の影響を受け易い透明ガラス容器、半透明プラスチック容器、或いは透明袋等に充填された飲食品等に適用すれば、優れた効果が発揮される。また本香味劣化抑制剤は熱にも安定で、安全であることからさまざまな加工食品、飲料への応用が可能である。
本発明の香味劣化抑制剤自体の味・匂いが飲食品等の本来の香味に影響を及ぼすことがないので幅広く適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(1)原材料
本発明で使用するマレーフトモモ(学名:Syzygium malaccensis)はインドから東ポリネシアの各地に広く分布しているフトモモ科フトモモ属の常緑高木であり、果実は生食の他、ジャムなどに加工されている。リュウガン(学名:Euphoria longana)は南アジア原産のムクロジ科の常緑高木で、中国南部及び台湾を中心として果肉を生食、又は加工して缶詰、乾果として食されている。本発明ではマレーフトモモ又はリュウガンの種子を使用する。マレーフトモモ及びリュウガンの種子はいずれも熱病に対する民間薬としての利用が知られているが、これらの溶媒抽出物が香味劣化抑制作用を有することは全く知られていない。本発明ではマレーフトモモ又はリュウガンの果実から種子のみを取り出して後述の抽出処理に付するのが好ましいが、種子の入った果実をそのまま抽出処理に付した場合でも本発明の効果を発揮できる。
【0011】
(2)抽出処理
1)抽出溶媒
抽出処理に使用する溶媒は、水、有機溶媒が好ましいが、これに限定されず、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体であってもよい。また、有機溶媒は含水物であってもよい。有機溶媒としては特に制限はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類を適宜単独で、又は混合して使用することができる。アルコール類のような極性有機溶媒が好ましく、特に50〜95%エタノールが好ましい。
抽出に用いる溶媒の量は任意に選択できるが、一般には上記原材料1重量部に対して溶媒量1〜100重量部を使用することが好ましい。
【0012】
2)抽出処理方法
抽出処理方法としては、溶媒の種類、量等により種々の方法を採用することができる。例えば前記各種天然物を粉砕したものを溶媒中に入れ、浸漬法又は加熱還流法で抽出することができる。なお浸漬法による場合は加温条件下、室温又は冷却条件下のいずれであってもよい。
ついで、溶媒に不溶な固形物を除去して抽出液を得るが、固形物除去方法としては遠心分離、濾過、圧搾等の各種の固液分離手段を用いることができる。
得られた抽出液はそのままでも香味劣化抑制剤として使用できるが、例えば水、エタノール、グリセリン、トリエチルシトレート、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等の液体希釈剤で適宜希釈して使用してもよい。またはデキストリン、シュークロース、ペクチン、キチン等を加えることもできる。これらをさらに濃縮してペースト状の抽出エキスとしても、また凍結乾燥又は噴霧乾燥などの処理を行い粉末として使用してもよい。
【0013】
3)精製
上記方法で得られた抽出物は、そのまま飲食品等に配合することができるが、さらに、脱色、脱臭等の精製処理をすることができる。精製処理には活性炭や多孔性のスチレン-ジビニルベンゼン共重合体からなる合成樹脂吸着剤などが使用できる。精製用の合成樹脂吸着剤としては例えば三菱化学株式会社製「ダイヤイオンHP−20(商品名)」やオルガノ株式会社製「アンバーライトXAD−2(商品名)」などが使用できる。
【0014】
(3)香味劣化抑制剤の調製
上記精製処理により得られた抽出物は、そのまま飲食品等に配合することができるが、香味劣化抑制剤は上記のとおり得られた抽出物を原材料として、以下のように製剤化して使用することもできる。例えば、水、アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の(混合)溶剤に適当な濃度で溶解させて(具体的には、水/エタノール、水/エタノール/グリセリン、水/グリセリン等の混合溶剤)液剤とする。またはデキストリン、シュークロース、ペクチン、キチン等を加えることもでき、これらをさらに濃縮してペースト状の製剤とすることもできる。また、各溶液に賦形剤(デキストリン等)を添加し噴霧乾燥によりパウダー状の製剤にすることも可能である。さらに上記液剤を乳化剤とともに油脂等に添加して分散させることにより、油溶性の液剤とすることもでき、用途に応じて種々の剤形を採用することができる。
【0015】
(4)用法
本発明の香味劣化抑制剤は飲食品等の加工段階で適宜添加することができる。添加量は、抑制剤の濃度或いは飲食品等に含有されている香味成分の種類や香味閾値によっても多少異なるが、一般的に飲食品等に対して0.5〜500ppmの添加量(抽出物の固形成分として)が適当である。飲食品等の本来の香味に影響を及ぼさない閾値の範囲内で添加する観点からは0.5〜200ppmが好ましく、特に1〜100ppmが好ましい。一方本発明の香味劣化抑制剤を香味料に使用する場合は、0.005〜5質量%が適当であり、本来の香味に影響を及ぼさない範囲内で添加する観点からは0.005〜2質量%が好ましく、特に0.01〜1質量%が好ましい。
また本発明の香味劣化抑制剤と、一般に使用されているL−アスコルビン酸、緑茶抽出物、ルチン等の既知の酸化防止剤や光劣化防止剤を併用してもよく、併用する酸化防止剤等の種類及び混合割合は特に限定されるものではない。混合した香味劣化抑制剤の添加量については、使用する抑制剤の成分の純度、あるいは添加対象の製品の種類により異なるが、飲食品等に対しては0.5〜500ppmが適当であり、特に1〜100ppmの範囲が好ましい。一方香味料に対しては0.005〜5質量%が適当であり、特に0.01〜1質量%の範囲が好ましい。
【0016】
本発明の劣化抑制剤は飲食品等及び香味料に特に制限なく使用できるが、具体例としては下記のものが挙げられる。
飲食品等の例としては、飲料、菓子類、油脂及び油脂加工食品、乳、乳製品、口腔衛生剤、医薬品などが挙げられるが(「特許庁公報 周知慣用技術集(香料)第2部 食品用香料(2000)」p4〜5参照)、より具体的には下記のものを挙げることができる。
飲料の例としては、コーヒー、茶、清涼飲料、乳酸菌飲料、無果汁飲料、果汁、果汁入り飲料、栄養ドリンクなどが挙げられる。
菓子類の例としては、ゼリー、プリン、ババロア、キャンディー、ビスケット、クッキー、チョコレート、ケーキ類、冷菓(アイスクリーム、アイスキャンディー等)、水飴、ガムなどが挙げられる。
油脂及び油脂加工食品の例としては、食用油脂(動物性油脂、植物性油脂)、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング、ハードバターなど、さらに、即席(フライ)麺類、とうふの油揚(油揚、生揚、がんもどき)、揚かまぼこ、てんぷら、フライ、スナック類(ポテトチップス、揚あられ類、かりんとう、ドーナッツ)、調理冷凍食品(冷凍コロッケ、エビフライ等)などが挙げられる。
乳、乳製品等の例としては、乳として生乳、牛乳、加工乳等、乳製品としてクリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエー、チーズ、アイスクリーム類、ヨーグルト、練乳、粉乳、濃縮乳等などが挙げられる。
口腔衛生剤の例としては、歯磨、うがい薬、口中清涼剤、口臭防止剤などが挙げられる。
医薬品の例としては経口内服薬などが挙げられる。
【0017】
香味料の例としては、「特許庁公報 周知慣用技術集(香料)第2部 食品用香料(2000)」等に記載された香料全般に使用できるが、具体的には香料原料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、合成香料)およびそれらを含有する香料組成物などが挙げられる。
【0018】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
〔抽出例1〕
インドネシア産マレーフトモモ(Syzygium malaccensis)果実の種子を粉砕した後、この粉砕粉末100gに50%エタノール1Lを添加し、1時間加熱還流抽出を行った。引き続き冷却後、ろ過して不溶物を除去し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮および乾固して、マレーフトモモ種子抽出物を8.37gを得た。
【0020】
〔抽出例2〕
インドネシア産マレーフトモモ(Syzygium malaccensis)の種子を含む果実100gを95%アルコール1Lに加え粉砕した後、これをそのまま1時間加熱還流抽出を行った。引き続き冷却後、ろ過して不溶物を除去し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮および乾固して、マレーフトモモ果実抽出物を6.4gを得た。
【0021】
〔抽出例3〕
インドネシア産リュウガン(Euphoria longana)果実の種子を乾燥し、粉砕した後、この粉砕粉末100gに50%エタノール1Lを添加し、1時間加熱還流抽出を行った。引き続き冷却後、ろ過して不溶物を除去し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮および乾固して、リュウガン種子抽出物を22.6gを得た。
【0022】
〔抽出例4〕
活性画分を得るため抽出例1の抽出物5gを水に分散させ合成吸着剤(ダイヤイオンHP−20)1000mLを充填したカラムに通導し、水、50%エタノール、エタノール各1000mLにて順次溶出させ、各々の画分を濃縮後凍結乾燥することにより、それぞれ水画分2.3g、50%エタノール画分2.4g、エタノール画分0.2gが得られた。
【0023】
〔試験例1〕
以下のとおり、食品の酸化試験に用いられる試薬2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(DPPH)を使用して、一般的な酸化条件における本発明の各抽出物と既存の抗酸化剤のトコフェロールとの抗酸化力の比較を行った。
この試験はDPPHラジカルを抗酸化剤によって消去する試験であり、抗酸化作用を受けるとDPPHの紫色が無色に変化するので、紫色の変化を吸光度計で測定しラジカルの消去活性すなわち抗酸化力の指標としたものである。
0.1Mの酢酸緩衝液(pH5.5、2.0mL)に各被検物質の50%エタノール溶液(2.0mL)及び2×10-4MのDPPH(ナカライテスク社製)エタノール溶液(1.0mL)を加えて全量5.0mLとし、30分後に517nmにおける吸光度を測定した。結果は、被検物質無添加のコントロールに対して、吸光度を1/2に減少させるのに必要な被検物濃度(最終溶液)で表した。
【0024】
〔表1〕
表1 DPPHラジカル消去活性試験
被験物質 濃度(ppm)
1 抽出例1 4.0
2 抽出例2 35.5
3 抽出例3 5.2
4 クロロゲン酸 6.3

表1に示されるように一般的な酸化条件の下では、本発明の各抽出物とクロロゲン酸とは抗酸化力についてほぼ同等である。
【0025】
〔試験例2〕
0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.5)に柑橘類特有の香味成分であるシトラールを10ppmとなるように添加し、この溶液に抽出例1〜4で得られた抽出物およびL-アスコルビン酸を100ppm添加したものと何も添加しないものをそれぞれ透明ガラス容器に入れ、光安定性試験器(東京理化器械株式会社製「LSR−300型」)にて光照射を行った。照射条件は温度10℃、白色蛍光ランプ40W×15で、15000ルクスに調整し、2週間照射した。
照射後、緩衝液をジクロロメタンで抽出し、乾燥、濃縮後、緩衝液中のシトラールの残存量をガスクロマトグラフィー(GC)にて測定した。結果を表2に示す。なお、測定条件は次のとおりである。
【0026】
測定条件
装 置:HP5890 SERIES II
カラム:DB-wax (0.25mm i.d. × 30m, film thickness 0.25μm)
Oven temp.:80℃-210℃,3℃/min
Injection:250℃,Split ratio 100:1
Detector:250℃,FID
【0027】
表2におけるシトラール残存率(%)は以下の式にしたがって計算した。
シトラール残存率(%)= C/D×100
ここで、C:光照射後の試料中のシトラール含量
D:光照射前の試料中のシトラール含量

【0028】
〔表2〕
シトラール残存量試験
香味劣化抑制剤(添加量:100ppm) シトラール残存率(%)
無添加品 45.6
L−アスコルビン酸 46.0
抽出例1 75.9
抽出例2 55.0
抽出例3 60.1
【0029】
表に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、香味劣化抑制剤を添加したものは光照射によるシトラールの減少を強く抑制した。また前記試験抗酸化試験の結果を鑑みれば、本発明の各抽出物は従来の抗酸化剤と同等の抗酸化力を有しつつ、さらに光及び熱による食品の香味劣化防止に優れていることが明らかである。
【0030】
次に上記抽出で得られた香味劣化抑制剤を各種食品に添加して評価した。
〔試験例3〕(ヨーグルト飲料)
牛乳94g、脱脂粉乳6gを混合後、殺菌(90〜95℃、5分間)した。48℃に冷却した後、スターター(乳酸菌)を接種した。これをガラス容器に入れ、発酵(40℃、4時間、pH4.5)させた。冷却後、5℃にて保存し、これをヨーグルトベースとした。一方、糖液は白糖20g、ペクチン1g、水79gを混合後、90〜95℃、5分間加熱し、ホットパック充填したものを使用した。上記ヨーグルトベース60g、糖液40g、香料0.1gを混合し、これをホモミキサー処理およびホモゲナイザー処理した。これに香味劣化抑制剤を添加しないものと香味劣化抑制剤を10ppm添加したものをそれぞれ半透明プラスティック容器に充填した。それぞれ光安定性試験器に入れ、蛍光灯を照射した後(6000ルクス、10℃、5時間)、習熟した10名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、香味の変化のない対照としては香味劣化抑制剤を添加していない蛍光灯未照射のヨーグルト飲料を使用し、香味の変化(劣化)度合いを評価した。その結果は表3のとおりである。なお、表3中の評価の点数は、下記の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「金属臭」、「漬物臭」、「油の劣化臭」を指す。
(採点基準)
異味、異臭が強い :4点
香味が非常に変化した :3点
香味が変化した :2点
香味がやや変化した :1点
香味が変化していない :0点
【0031】
〔表3〕
ヨーグルト飲料
香味劣化抑制剤(添加量:10ppm) 官能評価の平均点
無添加品 3.6
L−アスコルビン酸 3.3
抽出例1 2.3
抽出例2 3.0
抽出例3 2.5
【0032】
表3に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、本発明の香味劣化抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。また、本発明の香味劣化抑制剤自体の味や匂いは感じられなかった。
【0033】
〔試験例4〕(レモン飲料)
グラニュー糖10g、クエン酸0.1g、レモン香料0.1gおよび水にて全量100gに調製した。これに香味劣化抑制剤を添加しないものと各種の香味劣化抑制剤を10ppm添加したものをそれぞれガラス容器に充填し70℃×10分間殺菌した。それらを光安定性試験器にて光照射を行った後(15000ルクス、10℃、3日間)、習熟した10名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、対照としては香味劣化抑制剤を添加していない蛍光灯未照射のレモン飲料を使用し、香味の変化(劣化)度合いを評価した。その結果は表4のとおりである。なお、表4中の評価の点数は、試験例3と同様の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「ビニール臭」、「グリーン臭」を指す。
【0034】
〔表4〕
レモン飲料
香味劣化抑制剤(添加量:10ppm) 官能評価の平均点
無添加品 3.8
L−アスコルビン酸 4.0
抽出例1 2.8
抽出例2 3.4
抽出例3 3.0
【0035】
表4に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、香味劣化抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。また、本発明の香味劣化抑制剤自体の味や匂いは感じられなかった。
【0036】
〔実施例1〕バニラエキストラクト
バニラビーンズ10gにエタノール35gと蒸留水65gを添加し、室温暗所で4週間静置抽出した。この溶液をろ過することにより、90gのバニラエキストラクトを得た。このエキストラクト90gにリュウガン種子抽出物凍結乾燥粉末0.1質量%/50質量%エタノール水溶液10gを添加し、本発明のバニラエキストラクトを完成した。
【0037】
〔実施例2〕 グレープフレーバー
以下に示す処方によりグレープフレーバーを作成した。
イソ吉草酸イソアミル 10g
シンナミルアルコール 5g
酢酸エチル 60g
酪酸エチル 15g
3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル 10g
ヘプタン酸エチル 8g
アントラニル酸メチル 130g
サリチル酸メチル 15g
エタノール 373g
蒸留水 374g
上記グレープフレーバー100gにマレーフトモモ種子抽出物凍結乾燥粉末1質量%/50質量%エタノール水溶液1.0gを添加し、本発明のグレープフレーバーを完成した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の香味劣化抑制剤は光、熱、酸素等の影響を受けやすい飲食品等や香味料の香味劣化を抑制することができ、さまざまな食品、飲料、香料への利用が可能である。特に光による香味劣化に対しては顕著な抑制効果を示すことから、光の影響を受け易い透明ガラス容器、半透明プラスチック容器、或いは透明袋等に充填された飲食品等に適用すれば、優れた効果が発揮される。
【出願人】 【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
【出願日】 平成16年3月23日(2004.3.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−269908(P2005−269908A)
【公開日】 平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願番号】 特願2004−83778(P2004−83778)