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【発明の名称】 包装茹で麺の製造方法
【発明者】 【氏名】井若 義徳

【要約】 【課題】殺菌による品質劣化がなく、通常の茹でたての麺と同等の風味および食感を有する、長期保存可能な茹で麺類の製造方法を提供すること。

【解決手段】長期保存用麺類の製造方法であって、生麺類を50℃以上100℃未満、50%RH以上80%RH以下の条件下で乾燥して、水分含量が15重量%以下の乾麺類を得る工程;該乾麺類を70℃以上100℃以下の温度で茹でて、茹で麺類を得る工程;該茹で麺類のpHをpH3.7〜4.2に調整する工程;該pHが調整された茹で麺類を、殺菌された容器に無菌下で充填する工程;および該容器を無菌下で密封する工程を包含し、該方法は、該生麺類または該乾麺類を100℃を超える温度で加熱する工程を包含せず、かつ、得られた該茹で麺類を加熱する工程を包含しない、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期保存用麺類の製造方法であって、
生麺類を50℃以上100℃未満、50%RH以上80%RH以下の条件下で乾燥して、水分含量が15重量%以下の乾麺類を得る工程;
該乾麺類を70℃以上100℃以下の温度で茹でて、茹で麺類を得る工程;
該茹で麺類のpHをpH3.7〜4.2に調整する工程;
該pHが調整された茹で麺類を、殺菌された容器に無菌下で充填する工程;および
該容器を無菌下で密封する工程
を包含し、該方法は、該生麺類または該乾麺類を100℃を超える温度で加熱する工程を包含せず、かつ、得られた該茹で麺類を加熱する工程を包含しない、方法。
【請求項2】
前記乾麺類を酸性水溶液中で70℃以上100℃以下の温度で茹でることによって前記茹で麺類のpHがpH3.7〜4.2に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記pHが調整された茹で麺類に油脂を噴霧する工程を包含しない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記pHが調整された茹で麺類に無菌下で無菌の油脂を噴霧する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記密封した容器内の酸素濃度が5%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生麺類が、以下の工程:
減圧下において、麺類原料を混錬して麺類生地を得る工程;および
該麺類生地を加圧押出しして生麺類を得る工程
を包含する方法によって製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記麺類原料が、デュラム小麦粉を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記乾麺類がマカロニ類である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記乾麺類がスパゲッティである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記乾麺類が有機酸またはグリシンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記乾麺類が、グルテン、澱粉、多糖類、卵白およびカルシウム製剤から選択される1以上の食感改良剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記酸性水溶液が、食塩、アミノ酸塩、ショ糖および乳清ミネラルから選択される1以上の風味改良剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記容器が、電子レンジ加熱に耐性の耐熱性発泡樹脂製である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記密封した容器内にエタノールガスが封入されており、該エタノールガスの濃度が0.5%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
長期保存用麺類の製造方法であって、
生麺類を50℃以上100℃未満、50%RH以上80%RH以下の条件下で乾燥して、水分含量が15重量%以下の乾麺類を得る工程;
該乾麺類を70℃以上100℃以下の温度で茹でて、茹で麺類を得る工程;
該茹で麺類のpHをpH3.7〜4.2に調整する工程;
該pHが調整された茹で麺類を、容器に充填する工程;
該容器および該容器に充填された茹で麺類を、90℃以上100℃以下の温度で1分間以上30分間以下加熱する工程、ならびに
該容器を無菌下で密封する工程
を包含し、該方法は、該生麺類、該乾麺類または該茹で麺類を100℃を超える温度で加熱する工程を包含しない、方法。
【請求項16】
前記乾麺類を酸性水溶液中で70℃以上100℃以下の温度で茹でることによって前記茹で麺類のpHがpH3.7〜4.2に調整される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記pHが調整された茹で麺類に油脂を噴霧する工程を包含しない、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記pHが調整された茹で麺類に油脂を噴霧する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記密封した容器内の酸素濃度が5%未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記生麺類が、以下の工程:
減圧下において、麺類原料を混錬して麺類生地を得る工程;および
該麺類生地を加圧押出しして生麺類を得る工程
を包含する方法によって製造される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記麺類原料が、デュラム小麦粉を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記乾麺類がマカロニ類である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記乾麺類がスパゲッティである、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記乾麺類が有機酸またはグリシンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記乾麺類が、グルテン、澱粉、多糖類、卵白およびカルシウム製剤から選択される1以上の食感改良剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記酸性水溶液が、食塩、アミノ酸塩、ショ糖および乳清ミネラルから選択される1以上の風味改良剤を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記容器が、電子レンジ加熱に耐性の耐熱性発泡樹脂製である、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記密封した容器内にエタノールガスが封入されており、該エタノールガスの濃度が0.5%以上である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存用麺類の製造方法および容器に密封された長期保存用麺類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乾麺類または生麺類を茹でてまたは蒸して得た茹で麺または蒸し麺等の喫食可能な麺類を耐熱性容器中に充填し、この容器を密封した後に、高温下でこれらを加熱殺菌することにより得られるレトルト麺が知られている。しかし、この加熱殺菌(レトルト殺菌ともいう)によって十分な殺菌価を得るためには、加熱温度を高くし、かつ加熱時間を長くする必要がある。加熱温度が高くなると、または加熱時間が長くなると、容器中の麺類はふやけてしまう。また、高い加熱温度または長い加熱時間により、タンパク質が変性し、製造直後ですら麺類の食感が非常に硬く弾力のないものとなる。さらに、高い加熱温度または長い加熱時間により、酸化またはアミノカルボニル反応による風味劣化も生じる。そのため、得られるレトルト麺類の品質(風味、食感など)は著しく劣化する。
【0003】
殺菌価とは、殺菌程度の指標である。「Fo値」は殺菌価に関する値であり、殺菌時間と殺菌温度とにより決定される関数である。Fo値は、次式で決定される:
【0004】
【数1】


(ここで、Tiは加熱温度を表し、tiは加熱処理時間を表す)。
上記の式から明らかなように、Fo値は、加熱処理時間に比例して増減し、そして加熱温度により指数的に増減する。充分な殺菌価、例えば、120℃4分間での殺菌に相当する殺菌価を得るために、通常加圧下で121.1℃前後、場合によってはさらに高温での殺菌を行う。
【0005】
包装茹で麺の製造方法において、レトルト麺よりも歩留り、品質、保存性を向上させるために弱酸性(H5.0〜5.5)の茹で液で生麺を茹でる方法が一般に用いられている。しかし、pH5.0以上では常温で長期保存に耐えるほどの保存性は得られない。
【0006】
例えば、特許文献1(特開昭49−54561号公報)には、グルコノデルタラクトンを配合した生麺を酸液で30分間茹で、さらにpH4に調整した90℃の熱湯殺菌玉取機を通過させ、直ちに充填密封する包装茹で麺の製造方法が開示されている。この公報には、麺のpHを下げて無菌麺のまま袋入するから保存性を従来の2倍以上に高めることができると記載されている。しかし、この製造方法の殺菌条件は、耐熱性菌に対しては殺菌価が明らかに不足しており、酸液のpHも5レベルでは耐熱性菌を静菌できないので、この製造方法では包装茹で麺の商業的無菌を確保できない。仮にpHを4前後に調整し耐熱性菌を静菌するとしても、pH4以下で生育するカビ、酵母、好酸性菌に対して麺の中心まで完全に茹であげて殺菌する必要があり、このように茹でて殺菌すると麺がふやけてコシがなくなってしまうという欠点がある。
【0007】
麺の日持ち向上を目的として、有機酸と有機酸塩とを含む水溶液中で生麺類を茹でる方法が、特許文献2(特開2001−161296号公報)に開示されている。この方法では、酸度400〜3000度の酸液中に有機酸塩を加え、茹で湯のpHを弱酸性の4.0〜5.5に戻すことで、生麺類を酸液で茹でる時に生じる生麺類の茹で溶けおよび肌荒れを防止することができるとされている。この方法では有機酸塩が共存するため、茹で湯のpHを維持しやすい半面、麺のpHが下がりにくい。そのため茹で麺を所定のpHに調整するには、有機酸塩不使用の場合と比較してより高い酸度の酸液で茹でる必要がある。従って茹で麺に強い酸味が生じるため、pH4.0以上の酸液を使った場合、得られる包装茹で麺類の味に悪影響を与えずに包装茹で麺類のpHを4.0付近まで調整するのは困難である。さらに、特許文献2に記載の方法では、6ヶ月程度の長期保存に耐えるに十分な殺菌価は得られない。実際、特許文献2において保存性があると判断されたのは、10℃という低温条件下における、せいぜい12日目までの生菌数の抑制に過ぎない。
【0008】
得られる麺類の品質(風味、食感など)を向上させ、かつ長期保存を可能にするために、レトルト殺菌よりも低い殺菌価で茹で麺類の加熱殺菌を行うことが検討された。その結果、茹で麺類のpHを4前後に調整し、その後にレトルト殺菌よりも低い殺菌価の加熱殺菌処理を施す製法が開発された。この製法により得られる麺類は、常温で6ヶ月程度の長期保存が可能であり、ロングライフ麺類(LL麺類)と呼ばれる。ロングライフ麺類の食感は、レトルト麺類の食感ほど硬くはなく、食感がわずかに改良されている。しかし、この従来のロングライフ麺類製法には殺菌による麺類の品質劣化の問題が依然として存在し、この製法によって得られるロングライフ麺類の食感および風味は、茹でたての茹で麺類の食感および風味とは程遠い。
【0009】
ロングライフ麺類の製造方法においては、酸液で茹でることによって、または酸液に浸漬することによってpHを4前後に調整した茹で麺類を加熱殺菌するのが定法である。茹で麺類を密封包装してから加熱殺菌を行うのが一般的であるが、加熱殺菌後に密封包装を行い、その後無菌包装を行うことも可能である。密封包装後に加熱殺菌を行う場合、包装体の中心部まで加熱する必要があるため、全体として加熱過剰となり、茹で麺類の著しい品質劣化が生じる。無菌包装前に加熱殺菌を行う場合、加熱媒体として蒸気を茹で麺類に直接噴射すれば殺菌時間を短縮することができるが、それでも加熱による茹で麺類の劣化は避けられず、その上、殺菌に充分な時間にわたって蒸気殺菌すると、蒸気から麺が吸水しすぎ、ふやけてしまう。またどちらの場合も容器等に充填した状態で茹で麺を加熱殺菌すると、熱で麺が軟化し、自重で麺が沈み込んで麺線が湾曲する。その結果、外観上好ましくないだけでなく、喫食時のほぐれおよび食感も悪くなるという欠点がある。
【0010】
特許文献3(特開平1−285169号公報)には、生のパスタを酸性化水中で煮沸して、部分加熱パスタのpHが3.8〜4.3となるようにパスタを部分加熱し、部分加熱パスタを酸性化水に浸漬し、包装および密封後に80〜110℃の温度で加熱処理する方法が記載されている。
【0011】
特許文献4(特許第3022305号公報)には、蒸煮および/または茹で処理した麺線のpHを3.2〜5.2に調整した後、包装麺類を100〜120℃で加熱殺菌処理することによって得られる加熱殺菌済の包装麺類の製造方法が記載されている。
【0012】
特許文献5(特開昭64−74958号公報)には、蒸煮したパスタを有機酸含有溶液に浸漬してそのpHを4.5〜5.5に調整し、耐熱性容器内に密封した後、加圧加熱殺菌装置内で90〜110℃で加熱することによる、電子レンジ用容器入りパスタの製法が記載されている。
【0013】
特許文献3〜5に記載の方法はいずれも、麺類を蒸煮および/または茹でた後に麺類を中心部まで殺菌するに充分に加熱処理することが必要であり、このような強い加熱処理を行うと、上記のように、全体として加熱過剰となり、茹で麺類の著しい品質劣化が生じるという欠点がある。
【0014】
乾麺または生麺の状態のスパゲッティを常圧下で適切な時間茹でた直後の茹でたてのスパゲッティには、コシ、適度の弾力およびなめらかさがあり、非常に優れており、官能評価においてコシが「非常に強く」、弾力が「非常に高く」、なめらかさが「非常に高く」、そして硬さは「適度である」と評価され得る。
【0015】
スパゲッティは通常、茹でた後放置すると風味および食感が経時的に徐々に劣化する。茹でたスパゲッティは、時間がたつと、その食感からコシ、弾力およびなめらかさが徐々に失われていき、硬くパサパサになる。例えば、常圧下で100℃で乾麺のスパゲッティを茹で上げた後に30分間密封放置し、このスパゲッティを電子レンジなどで再度温めて喫食した場合、茹でたてのスパゲッティと比べて、コシ、弾力およびなめらかさが若干低下する。この30分密封放置後のスパゲッティは、官能評価においてコシが「強く」、弾力が「高く」、なめらかさが「高く」、そして硬さは「適度である」と評価され得るので、この状態での食感は一般消費者に好まれ、商業的に価値がある。
【0016】
一方、乾麺または生麺から製造された、従来のロングライフ麺類のスパゲッティは、レトルト加熱殺菌よりも穏やかな条件であるとはいえ、茹でられた後に再度加熱殺菌が施されているので、製造直後であっても、電子レンジなどで温めて喫食した場合、官能評価においてコシが「なく(低い)」、弾力が「なく(低い)」、なめらかさが「なく(低い)」、そして硬さが「硬い」と評価され得るので、一般消費者にあまり好まれず、商業的価値が低い。
【0017】
乾麺または生麺から製造された、従来のレトルト麺類のスパゲッティは、茹でられた後レトルト加熱殺菌が施されているので、製造直後であっても、電子レンジなどで温めて喫食した場合、コシが「なく(低い)」、弾力が「なく(低い)」、なめらかさが「なく(低い)」、そして硬さが「非常に硬い」と評価され得るので、一般消費者にあまり好まれず、商業的価値が低い。
【0018】
また例えば、乾麺または生麺の状態のスパゲッティを常圧下または加圧下で茹でる時間が長すぎると、得られるスパゲッティがふやけて、コシが「なく(低い)」、弾力が「なく(低い)」、なめらかさが「なく(低い)」、そして硬さが「軟らかい」と評価され得るので、一般消費者にあまり好まれず、商業的価値が低い。
【0019】
得られる麺類の硬さは、ロングライフ麺類、レトルト麺類などのような過度の硬さが感じられず、かつ、茹でる時間が長すぎる場合のように軟らかすぎず、適度な硬さであることが好ましい。最も好ましい硬さは、適切な時間茹でた直後の硬さである。
【0020】
本明細書では、「食感が優れた」とは、従来のロングライフ麺類よりも食感が優れており、官能評価においてコシが「強く」、弾力が「高く」、なめらかさが「高く」、そして硬さは「適度である」と評価され得ることをいう。
【0021】
このように、常温において長期保存可能であり、しかもこの長期保存効果を付与するに十分なほどの殺菌処理を施しても品質劣化が実質的になく、食感が優れた美味しい長期保存用麺類を効率良く製造するという方法は、これまで知られていなかった。
【0022】
他方、生麺類を乾燥して乾麺類を得る技術に関して、いくつかの文献が公知である。特許文献6(特開2003−310191号公報)によれば、100℃以上の加熱蒸気で短時間に麺類の乾燥を行い、耐熱性菌を殺菌できるとされている。しかし芽胞を持つ耐熱性菌を殺菌するには少なくとも120℃4分相当の殺菌価が必要であり、このレベルで殺菌を行った場合麺の品質劣化は明らかである。また乾燥で耐熱性菌を殺滅しても、乾燥後に乾麺の表面が耐熱性菌に汚染される危険性があるため、調製した茹で麺に対してさらに120℃4分相当のレトルト殺菌をするかpHを下げる必要がある。従って、茹で麺に長期保存性を付与する目的では、耐熱性菌をも殺菌できるような殺菌価は過剰であり不必要である。
【0023】
特許文献7(特開2002−335895号公報)によれば、生麺の予備乾燥時に加熱蒸気を用い110〜190℃で30〜660秒間処理すれば、乾燥時間を短縮でき殺菌効果も得られるとされている。乾燥により生麺の殺菌を行うことは従来から知られているが、茹で麺に長期保存性を付与するには到っていない。
【0024】
特許文献8(特開平6−153837号公報)によれば、乾燥した麺線を用いることで、茹で後の加圧加熱殺菌によるほぐれおよび食感の低下を防止できるとされている。特許文献9(特開平6−169711公報)および特許文献10(特開平6−169713号公報)では同様の効果を得るために、乾燥温度100℃未満と100℃以上について、それぞれ乾燥に適した乾燥時間と使用する麺線の水分値を限定している。しかしこれらの製法はいずれも加圧加熱殺菌を前提とした品質改良であり、乾燥による殺菌を有効に利用できていないため、殺菌による品質劣化の根本的な解決に到っていない。
【特許文献1】特開昭49−54561号公報(第555頁および第557頁)
【特許文献2】特開2001−161296号公報(第2〜4頁および表6)
【特許文献3】特開平1−285169号公報(第413頁〜第414頁)
【特許文献4】特許第3022305号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献5】特開昭64−74958号公報(第313頁)
【特許文献6】特開2003−310191号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献7】特開2002−335895号公報(第1頁)
【特許文献8】特開平6−153837号公報(第2頁〜第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、従来の上記問題点の解決を意図して創出されたものであり、長期保存用麺類を提供すること、およびその製造方法を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、殺菌による品質劣化がなく、通常の茹でたての麺と同等に優れた風味および食感を有する、長期保存用麺類を提供すること、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生麺類を乾燥して乾麺類を得る工程で一次殺菌を行い、そして乾麺を茹でて茹で麺類とする工程で二次殺菌を行い、茹で麺類のpHを4.2以下とし、茹で麺類を無菌充填することにより、常温で長期保存可能でありかつ長期保存後の風味および食感が優れた、極めて品質良好な長期保存用麺類が得られることを見出した。すなわち、このような方法を実施することによって、従来行われていた、茹で麺類の包装前の殺菌工程および茹で麺類の包装後の殺菌工程を省略することができ、その結果、茹で麺類の食感の低下を回避できることを見出した。さらに、無菌充填を行わずに、茹で麺類を容器に充填してから容器ごと加熱殺菌を行う場合には、容器および茹で麺類の表面に付着した非耐熱性菌を殺菌することにより、従来のロングライフ麺類と比較すると極めて良好な食感の茹で麺類を製造できることを見出した。
【0027】
詳細には、本発明の長期保存用麺類の製造方法は、理論に束縛されないが、以下のような菌制御の理論に基づいて完成された。まず、生麺類を乾燥して乾麺類を得る工程によって一次殺菌を行うことにより、乾麺類の表面から中心部まで非耐熱性菌が殺菌される。次いで、乾麺類を茹でて茹で麺類とする工程によって二次殺菌を行うことにより、茹で麺類の表面が殺菌される。この二次殺菌では、生麺類の乾燥後に乾麺類の表面に細菌などの微生物が付着したとしても、殺菌することができる。さらに、乾麺類を茹でて茹で麺類とする工程において、得られる茹で麺類のpHをpH4.2以下とすることにより、一次殺菌および二次殺菌では殺菌できない耐熱性菌を静菌することができる。得られる茹で麺類を、殺菌された容器に無菌下で充填し、そして無菌下で密封することにより、pH4.2以下で生育可能な微生物の付着を防止することができる。
【0028】
さらに、従来の長期保存用麺類の製造方法と異なり、この長期保存用麺類の製造方法においては、加圧下で100℃を超える温度で加熱殺菌を行わないので、驚くべきことに、長期間保存した後でも、食感が極めて優れた品質良好な長期保存用麺類が得られることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。特に、本願発明の長期保存用麺類の食感は、製造直後は、常圧下で100℃で茹でた場合の茹でたての麺類の食感と全く区別できないほど優れている。さらに、本願発明の長期保存用麺類は、2週間以上保存した場合であっても、乾麺類を常圧下で100℃にて茹でた後に常圧下で常温にて30分間密封放置した茹で麺類と同等以上の食感を有すると官能評価で評価され得、従来のロングライフ麺類よりも食感が格段に優れている。
【0029】
本発明の長期保存用麺類の製造方法と従来の長期保存用麺類の製造とを比較すると、従来から生麺類を酸液で茹でるケースはあるが、得られる茹で麺類が適度な硬さとなるように茹でると、長期保存に充分に殺菌するには短時間となり茹で麺類の中心まで殺菌できないため、茹で麺類を得た後に殺菌が必要であった。また、従来、生麺類を70℃、84℃〜95℃、または100℃以上といった高温で乾燥して乾麺類を得ている場合もあるが、このような温度で乾燥しただけでは、茹で麺に長期保存性を付与することはできない。100℃未満での乾燥と茹でとを組合せると耐熱性菌以外を殺菌できるとはいえ、これらを組合せても、耐熱性菌を殺菌できない。しかし、本発明者らは、茹で麺類のpHを4.2以下とすることにより、耐熱性菌の静菌状態が長期間持続し、茹で麺類の長期保存が可能であることを見出した。本発明の方法で採用している乾燥条件および茹で条件は、得られる長期保存用麺類の品質に対して悪影響を与えないので、極めて良好な品質の長期保存用麺類が得られる。
【0030】
本発明の第1の方法は、長期保存用麺類の製造方法であって、生麺類を50℃以上100℃未満、50%RH以上80%RH以下の条件下で乾燥して、水分含量が15重量%以下の乾麺類を得る工程;該乾麺類を70℃以上100℃以下の温度で茹でて、茹で麺類を得る工程;該茹で麺類のpHをpH3.7〜4.2に調整する工程;該pHが調整された茹で麺類を、殺菌された容器に無菌下で充填する工程;および該容器を無菌下で密封する工程を包含し、該方法は、該生麺類または該乾麺類を100℃を超える温度で加熱する工程を包含せず、かつ、得られた該茹で麺類を加熱する工程を包含しない。
【0031】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類を酸性水溶液中で70℃以上100℃以下の温度で茹でることによって上記茹で麺類のpHがpH3.7〜4.2に調整され得る。
【0032】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、本発明の方法は、上記pHが調整された茹で麺類に油脂を噴霧する工程を包含しなくてもよい。
【0033】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、本発明の方法は、上記pHが調整された茹で麺類に無菌下で無菌の油脂を噴霧する工程をさらに包含し得る。
【0034】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記密封した容器内の酸素濃度は5%未満であり得る。
【0035】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記生麺類は、以下の工程:減圧下において、麺類原料を混錬して麺類生地を得る工程;および該麺類生地を加圧押出しして生麺類を得る工程を包含する方法によって製造され得る。
【0036】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記麺類原料は、デュラム小麦粉を含み得る。
【0037】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類は、マカロニ類であり得る。
【0038】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類はスパゲッティであり得る。
【0039】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類は、有機酸またはグリシンを含み得る。
【0040】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類は、グルテン、澱粉、多糖類、卵白およびカルシウム製剤から選択される1以上の食感改良剤を含み得る。
【0041】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記酸性水溶液は、食塩、アミノ酸塩、ショ糖および乳清ミネラルから選択される1以上の風味改良剤を含み得る。
【0042】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記容器は、電子レンジ加熱に耐性の耐熱性発泡樹脂製であり得る。
【0043】
本発明の上記第1の方法の1つの実施形態では、上記密封した容器内にはエタノールガスが封入されていてもよく、該エタノールガスの濃度は、0.5%以上であり得る。
【0044】
本発明の長期保存用麺類の第2の製造方法は、生麺類を50℃以上100℃未満、50%RH以上80%RH以下の条件下で乾燥して、水分含量が15重量%以下の乾麺類を得る工程;該乾麺類を70℃以上100℃以下の温度で茹でて、茹で麺類を得る工程;該茹で麺類のpHをpH3.7〜4.2に調整する工程;該pHが調整された茹で麺類を、容器に充填する工程;該容器および該容器に充填された茹で麺類を、90℃以上100℃以下の温度で1分間以上30分間以下加熱する工程、ならびに該容器を無菌下で密封する工程を包含し、該方法は、該生麺類、該乾麺類または該茹で麺類を100℃を超える温度で加熱する工程を包含しない。
【0045】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類を酸性水溶液中で70℃以上100℃以下の温度で茹でることによって上記茹で麺類のpHがpH3.7〜4.2に調整され得る。
【0046】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、本発明の方法は、上記pHが調整された茹で麺類に油脂を噴霧する工程を包含しなくてもよい。
【0047】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、本発明の方法は、上記pHが調整された茹で麺類に油脂を噴霧する工程をさらに包含し得る。
【0048】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記密封した容器内の酸素濃度は5%未満であり得る。
【0049】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記生麺類は、以下の工程:減圧下において、麺類原料を混錬して麺類生地を得る工程;および該麺類生地を加圧押出しして生麺類を得る工程を包含する方法によって製造され得る。
【0050】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記麺類原料は、デュラム小麦粉を含み得る。
【0051】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類は、マカロニ類であり得る。
【0052】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類はスパゲッティであり得る。
【0053】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類は、有機酸またはグリシンを含み得る。
【0054】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記乾麺類は、グルテン、澱粉、多糖類、卵白およびカルシウム製剤から選択される1以上の食感改良剤を含み得る。
【0055】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記酸性水溶液は、食塩、アミノ酸塩、ショ糖および乳清ミネラルから選択される1以上の風味改良剤を含み得る。
【0056】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記容器は、電子レンジ加熱に耐性の耐熱性発泡樹脂製であり得る。
【0057】
本発明の上記第2の方法の1つの実施形態では、上記密封した容器内にはエタノールガスが封入されていてもよく、該エタノールガスの濃度は、0.5%以上であり得る。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、殺菌による品質劣化がなく、通常の茹でたての麺と同等に優れた風味および食感を有し、しかも長期保存可能である長期保存用麺類を効率良く製造することが可能となる。さらに、本発明によって得られる長期保存用麺類は、無菌充填される場合は特に、茹で上げた後、充填密封前にも充填密封後にも加熱殺菌を行っていないため、過度の加熱による食感の劣化がないという利点を有する。充填後に加熱殺菌を行う場合であっても、食感の劣化が少なく、従来のロングライフ麺類よりも優れた食感の長期保存用麺類が得られる。また、麺線の湾曲も起こらないため、喫食時のほぐれが良く、ほぐれ向上のための油を加えなくともよい。油を無添加とすれば、風味上の油っぽさを解消でき、油の酸化の問題もそもそも発生しないので、油を使用した場合と比較してさらに保存性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0060】
<長期保存用麺類の材料>
本明細書において、「長期保存用麺類」とは、容器に密封された麺類であって、製造過程で加熱殺菌処理および酸性水溶液処理が施された、常温において約2週間以上保存可能な麺類をいう。「常温」とは、好ましくは約3℃〜約40℃であり、より好ましくは約10℃〜約30℃であり、さらに好ましくは約15℃〜約25℃であり、最も好ましくは20℃である。「長期」とは、約2週間以上であり、好ましくは約1ヶ月間以上、より好ましくは約2ヶ月間以上、より好ましくは約3ヶ月間以上、より好ましくは約4ヶ月間以上、より好ましくは約5ヶ月間以上、より好ましくは約6ヶ月間以上、より好ましくは約7ヶ月間以上、より好ましくは約8ヶ月間以上、より好ましくは約9ヶ月間以上、より好ましくは約10ヶ月間以上、最も好ましくは約12ヶ月間以上である。一つの実施態様において、本発明の麺類はロングライフ麺類(LL麺類)である。
【0061】
本明細書において、「麺類」とは、麺類生地の加工品をいう。「麺類生地」とは、麺類原料を混合または混捏することによって得られる混合物または混捏物をいう。
【0062】
(I.麺類原料)
(1.穀粉)
麺類原料は、穀粉を含む。本明細書中では、穀粉とは、穀物の穀粒から得られる破砕物または粉末をいう。穀物の例としては、コムギ、ソバ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、イネ、マメ、アワ、ヒエなどが挙げられる。穀物としては、コムギまたはソバが好ましく、コムギがより好ましい。コムギの例としては、デュラム小麦および普通小麦が挙げられる。普通小麦は、硬質小麦、中間質小麦、および軟質小麦に分類される。麺類にはデュラム小麦、硬質小麦、中間質小麦が好ましく、マカロニ類には、デュラム小麦が特に好ましい。
【0063】
デュラム小麦以外の小麦を粉砕し、210μmの篩いで篩ったときに通り抜ける穀粉をフラワーという。デュラム小麦由来の胚乳粗粒で、粒径250〜1000μmの穀粉をセモリナという。セモーラは、セモリナを篩いにかけて篩いに残った粗い穀粉をいう。セモラードは、セモーラを篩いにかけて篩いに残った粗い穀粉をいう。ファリナという穀粉には、以下の2通りのものがあることが知られている:1)デュラム小麦由来の粗い穀粉をセモリナというのに対して普通小麦由来の粗い穀粉のこと、または2)原料となる小麦の種類とは無関係に、フラワーとセモリナとの間の粒径の穀粉のこと。また原料となる小麦の種類にかかわらず、穀粉は粒径によってさらに、ミドル(約500〜600μm)、ファイン(約350〜400μm)、コースミドリング(約250〜300μm)およびファインミドリング(約150〜200μm)に分類される。品質の良いパスタを得るためには、小麦粉の粒径は、好ましくは、約350〜500μmである。
【0064】
小麦粉はまた、原料となる小麦の種類によって、強力粉、準強力粉、中力粉、および薄力粉に分けられる。強力粉は、硬質小麦から製造される。準強力粉は、硬質小麦から製造される。中力粉は、中間質小麦から製造される。薄力粉は、軟質小麦から製造される。強力粉、準強力粉、中力粉、および薄力粉はまた、タンパク質含量との密接な関係がある。強力粉は、通常、タンパク質含量が11.5%以上であり、好ましくは、11.5%〜14.5%である。準強力粉は、通常、タンパク質含量が11.5%以上であり、好ましくは、11.5%〜13.5%である。中力粉は、通常、タンパク質含量が8.0%以上であり、好ましくは、8.0%〜10.0%である。薄力粉とは、通常、タンパク質含量が9.5%以下であり、好ましくは、6.5%〜9.5%である。本発明では、強力粉、準強力粉および中力粉が好ましく、強力粉および準強力粉がより好ましく、そして強力粉が最も好ましい。
【0065】
本発明で麺類原料として使用する強力粉の好ましいタンパク質含量は、13.0%以上14.5%以下である。本発明で麺類原料として使用する準強力粉の好ましいタンパク質含量は、11.5%以上13.0%未満である。本発明で麺類原料として使用する中力粉の好ましいタンパク質含量は、8.0%以上11.5%未満である。本発明で麺類原料として使用する薄力粉の好ましいタンパク質含量は、6.5%以上8.0%未満である。
【0066】
穀粉は、1種類のみが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。好ましくは、1種類のみが用いられる。
【0067】
穀粉は、当該分野で周知の方法によって、穀物から製造され得る。例えば、穀物の穀粒を臼で挽き、ふるい分けすることによって穀粉を製造し得る。穀粉は、好ましくは、小麦粉またはソバ粉であり、より好ましくは小麦粉である。小麦粉は、好ましくは、デュラム小麦粉である。デュラム小麦粉とは、デュラム小麦から得られる小麦粉をいう。
【0068】
麺類原料に含まれる穀粉の量は、当業者により適宜決定され得る。麺類原料に含まれる穀粉の量は、麺類原料の合計量の好ましくは約40重量%〜約90重量%、より好ましくは約50重量%〜約80重量%、さらに好ましくは約60重量%〜約80重量%である。
【0069】
(2.酸)
麺類原料は酸を含んでもよい。麺類原料が酸を含むことにより、この麺類を茹でて得られた茹で麺類に殺菌作用および静菌作用がもたらされ、長期保存時の生残菌の増殖抑制をより効率的に行うことが可能となる。酸は、有機酸であっても無機酸であってもよいが、食用可能な酸である。有機酸が好ましい。有機酸とは、構造内に1個以上のカルボキシル基を有する化合物をいう。有機酸は食用可能な有機酸である。有機酸の例としては、例えば乳酸、酢酸、クエン酸、アジピン酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸、フィチン酸、コハク酸、酒石酸などが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい有機酸は、乳酸、クエン酸およびグルコン酸である。乳酸およびクエン酸は静菌作用が比較的強いという利点を有する。グルコン酸は、食味への影響が比較的少ないという利点を有する。無機酸の例としては、塩酸、硫酸、リン酸および炭酸が挙げられる。酸は、好ましくは、食品衛生法別表2の指定添加物リストに記載の酸である。これらの酸は、1種類のみが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0070】
麺類原料に含まれる酸の量は、当業者により適宜決定され得る。麺類原料に含まれる酸の量は、麺類原料の合計量の好ましくは約0.01重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.01重量%〜3重量%、さらに好ましくは約0.05重量%〜約1重量%である。
【0071】
(3.塩)
麺類原料は、塩を含み得る。本明細書において「塩」とは、酸に含まれている1つ以上の解離し得る水素イオンをカチオン(例えば、金属イオン)で置換して得られる反応生成物をいう。塩は、有機酸塩であっても、無機酸塩であってもよい。塩は好ましくは、有機酸塩である。塩は、酸性塩であってもよく、中性塩であってもよく、塩基性塩であってもよい。酸性塩が好ましい。または、塩は好ましくは、配合される麺類に食感改良効果をもたらす塩である。例えば、かんすいは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸塩の1種または2種以上を混合したものであり、中華麺類特有のコシ、歯ごたえを付与し、舌触りを滑らかにすることが知られている。種々のリン酸塩または重合リン酸塩は、配合される麺類の食感を改良することが公知である。塩は、好ましくは、食品衛生法別表2の指定添加物リストに記載の塩である。
【0072】
有機酸塩の例としては、上記有機酸の金属塩が挙げられる。有機酸塩は例えば、乳酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸、コハク酸または酒石酸などのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などであり得る。特に乳酸ナトリウムを使用すると茹で麺の保水性が向上し、茹で麺の保存中の乾燥による劣化を防止する。
【0073】
塩の例としては、食塩すなわち塩化ナトリウムが挙げられる。本明細書中では用語「塩」とは、上述した通りの定義で用いられる。従って、食塩などのように、調味料として添加される塩も、上記定義に該当する限り、塩に含まれる。
【0074】
無機酸塩の例としては、上記無機酸の金属塩が挙げられる。無機酸塩は例えば、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などであり得る。
【0075】
麺類原料に含まれる塩の量は、当業者により適宜決定され得る。麺類原料に含まれる塩の量は、麺類原料の合計量の好ましくは約0.01重量%〜約5重量%であり、より好ましくは約0.05重量%〜約3重量%であり、さらに好ましくは約0.1重量%〜約1重量%である。麺類原料に含まれる塩の量が多すぎると、この麺類原料から製造された乾麺類を酸性水溶液中で茹でる工程において酸性水溶液中に塩が溶け出し、緩衝作用により酸性水溶液のpHが上がりすぎてしまう場合があるので、麺類材料に塩を過剰に添加しないことが好ましく、麺類原料に塩を積極的に添加しないことがさらに好ましい。
【0076】
(4.グリシン)
麺類原料は、グリシンを含み得る。麺類がグリシンを含むことにより、この麺類を茹でて得られた茹で麺類に殺菌作用および静菌作用がもたらされ、長期保存時の生残菌の増殖抑制をより効率的に行うことが可能となる。
【0077】
グリシン(アミノ酢酸またはグリココールとしても公知)とは、組成式CNOおよび分子量75.07を有するアミノ酸である。
【0078】
麺類原料に含まれるグリシンの量は、当業者により適宜決定され得る。麺類原料に含まれるグリシンの量は、麺類原料の合計量の好ましくは約0.01重量%〜約5重量%であり、より好ましくは約0.05重量%〜約3重量%であり、さらに好ましくは約0.1重量%〜約2重量%である。
【0079】
(5.食感改良剤)
麺類原料は1以上の食感改良剤を含み得る。本明細書において「食感改良剤」とは、茹で麺類の食感を改良する任意の物質をいう。本明細書において、食感(テクスチャーともいう)とは、麺類を喫食する際に得られる感覚をいい、例えば、口当たり、歯触り、のど越し、歯ごたえ、舌触りなどの感覚を含む。食感改良剤としては、例えば、麺類の硬さを変更することにより食感が改良され得るので、麺類の硬さを調節する材料を食感改良剤とすることができる。食感改良剤の例としては、例えば、グルテン、澱粉、多糖類、卵白、カルシウム製剤などが挙げられるが、これらに限定されない。グルテンは、麺類の弾力を向上させる。澱粉は、麺類を滑らかにする。多糖類は麺類の硬さを向上させる。卵白は、麺類の硬さを向上させ、コシを強化する。
【0080】
麺類原料に含まれる食感改良剤の量は、当業者により適宜決定され得る。麺類原料に含まれる食感改良剤の量は、麺類原料の合計量の好ましくは約0.01重量%〜約30重量%であり、より好ましくは約0.01重量%〜約20重量%であり、さらにより好ましくは約0.1重量%〜約10重量%であり、最も好ましくは約1重量%〜約7重量%である。
【0081】
(6.水)
麺類原料は、水を含み得る。水は、軟水、中間水および硬水のいずれであってもよい。麺類原料に含まれる水の量は、麺類原料の合計量の好ましくは約5重量%〜約50重量%であり、より好ましくは約15重量%〜約40重量%であり、さらに好ましくは約20重量%〜約35重量%である。
【0082】
(7.他の原料)
麺類原料は、本発明の方法による効果を妨害しない限り、上記の麺類原料に加えて、必要に応じて他の添加物を含み得る。他の添加物としては、調味料;かんすい;着色料;乳化剤;乳蛋白質;食品素材(例えば、トマト、ホウレンソウなどの野菜、いかすみなど)などが挙げられる。調味料の例としては、砂糖、アミノ酸、核酸などが挙げられる。調味料の配合量は麺類原料の合計量の好ましくは約0.001重量%〜約5重量%であり、より好ましくは約0.005重量%〜約1重量%であり、さらに好ましくは約0.01重量%〜約0.5重量%である。
【0083】
(II.生麺類の製造)
生麺類は、当該分野で周知の方法に従って製造され得る。例えば、上記のような麺類原料を混練して麺類生地を調製し、この麺類生地を加圧押出しするか、圧延して平板状にして切出すか、または引き伸ばすことによって製造され得る。
【0084】
製造される生麺類は、任意の形状であり得る。生麺類がとり得る形状の例としては、棒状、帯状、板状、円盤状、管状、リボン状、貝殻状などが挙げられるが、これらに限定されない。生麺類のうち、棒状または帯状の形状の麺類を、特に「生麺」という。
【0085】
上記の加圧押出しか、切出しか、または引き伸ばしによって得られた直後の状態のままの麺類のうち、水分含量が20重量%より多い麺類を本明細書では、「生麺類」という。他方、本明細書において「乾麺類」とは、水分含量が20重量%以下の麺類をいう。生麺類の水分量は、好ましくは約20重量%〜約40重量%であり、より好ましくは約25重量%〜約35重量%であり、最も好ましくは約30重量%である。この生麺類を一定の水分含量となるまで乾燥させることにより、「乾麺類」が得られ得る。乾麺類の水分含量は、好ましくは、約20重量%以下であり、より好ましくは約5重量%〜約20重量%であり、さらに好ましくは約8重量%〜約15重量%である。生麺類を乾燥して乾麺類を得る工程は、「VI.長期保存用麺類の製造」の項に後述する。
【0086】
なお、本明細書では、「水分含量」とは、麺類に含まれる水分重量の、麺類全体の重量に対する割合をいう。例えば、100gの麺類中に1gの水分が含まれている場合、その麺類の水分含量は1重量%である。水分含量の測定方法は、当業者に公知である。例えば、まず、麺類の重量を測定し、次いで、この麺類を135℃にて2時間保持し、2時間保持後の麺類の重量を測定し、保持前と比較して、2時間の保持後に減少した重量から水分含量を決定し得る。
【0087】
減圧下において、麺類原料を混錬して麺類生地を得、この麺類生地を加圧押出しして生麺類を得、そしてこの生麺類を乾燥させて得られる乾麺類(例えば、マカロニ類)は、切出しまたは引き伸ばしによって得られる乾麺類と比べて組織が緻密であり、高い硬度を有する。このような高い硬度を有する乾麺類は、低いpHの酸性水溶液中で茹でても肌荒れ、茹で溶けおよび崩壊が起り難く、しかも茹で時間を比較的長く取ることができるため、表面を充分殺菌し得、かつ殺菌価を調整し易いという利点を有する。そのため、乾燥することによってこのような高い硬度を有する乾麺類となる生麺類は、本発明に特に適する。
【0088】
上記の材料および方法により製造される生麺類の例としては、例えば、マカロニ類、うどん類、素麺類、日本そば類および中華麺類などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の長期保存用麺類の製造に使用され得る生麺類の種類に特に限定はないが、マカロニ類が特に好ましい。
【0089】
「マカロニ類」(一般的に、「パスタ類」とも呼ばれる)とは、デュラム小麦のセモリナか、デュラム小麦の普通小麦粉(すなわち、セモリナ以外の粉)か、または強力小麦のファリナか、もしくは強力小麦の普通小麦粉(すなわち、ファリナ以外の粉)を原料とし、これに水を加えて練り合わせ、1cmあたり80kg以上の圧力をかけてマカロニ類成型機から押出した後、切断した麺類およびそれを熟成乾燥した麺類をいう。マカロニ類は、一般的には、減圧下で麺類原料を混錬して麺類生地を得、そしてこの麺類生地を加圧押出しするという方法で製造され、高い硬度を有する。
【0090】
マカロニ類は主に、ロングパスタおよびショートパスタに分けられる。ロングパスタの例としては、スパゲッティ、スパゲッティーニ、ヴェルミチェッリ、カペリーニ、カペッリ・ダンジェロ、パッパルデッレ、タッリアテッレ、フィトチーネ、ツィーテ、ブカティーニ、ラザニェッテ・リッチェ、リングイーネ、ラザニェッテ・リッチェ、ラザーニェおよびバーミセリーなどが挙げられる。ショートパスタの例としては、マカロニ、リガトーニ、マニケ、ペンネ、ファルファッレ、コンキッリェ、フジッリ、カヴァタッピ、カッペッレッティ、ルマキーネ、ルオーテ、リソーニ、セミーニ、ニョッキ、ラヴィオリ、オレッキエッテ、スパイラルおよびシェルなどが挙げられる。
【0091】
本発明の長期保存用麺類の製造に使用され得るマカロニ類の種類に特に限定はないが、マカロニまたはスパゲッティが特に好ましい。マカロニとは、断面の直径が2.5mm以上(好ましくは、約3mm〜1cm、より好ましくは約3mm〜約5mm)の、管状またはその他の形状のショートパスタをいう。スパゲッティとは、断面の直径が1.2mm以上の太さの棒状、または断面の直径が2.5mm未満の管状のロングパスタをいう。好ましくは、スパゲッティは、断面が円形でかつ直径約1.6mm〜約1.9mmの棒状のロングパスタである。
【0092】
(III.酸性水溶液)
本明細書において、「酸性水溶液」とは、酸性の水溶液をいう。酸性とは、pHが7.0未満であることをいう。本明細書では、pHは、好ましくは20℃で測定されるpHである。酸性水溶液を用いて乾麺類を茹でることにより、または茹で麺類を酸性水溶液中に浸漬することなどにより、茹で麺類のpHが酸性に調整され、この茹で麺類を保存する間の生残菌の増殖が著しく抑制され、この茹で麺類の長期保存が可能となる。また、酸性水溶液を用いて乾麺類を茹でることにより、中性の茹で水で乾麺類を茹でる場合よりも、加熱殺菌の効果を高めることも可能である。
【0093】
(1.酸)
酸性水溶液は、酸を含む。本発明に使用される酸は、無機酸であっても有機酸であってもよい。好ましくは、有機酸である。有機酸とは、構造内に1個以上のカルボキシル基を有する化合物をいう。有機酸は食用可能な有機酸である。有機酸の例としては、例えば乳酸、酢酸、クエン酸、アジピン酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸、フィチン酸、コハク酸、酒石酸などが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい有機酸は、乳酸、クエン酸およびグルコン酸である。乳酸およびクエン酸は静菌作用が比較的強いという利点を有する。グルコン酸は、食味への影響が比較的少ないという利点を有する。無機酸の例としては、塩酸、硫酸、リン酸および炭酸が挙げられる。酸は、好ましくは、食品衛生法別表2の指定添加物リストに記載の酸である。これらの酸は、1種類のみが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。酸は好ましくは、麺類原料に含まれる酸と同種の酸である。
【0094】
酸性水溶液中の酸の濃度は、茹で上がり時の茹で麺類のpHが好ましくは、3.7〜4.2、より好ましくはpH3.8〜4.2、より好ましくはpH3.9〜4.2となるように適宜決定され得る。酸性水溶液中の酸の濃度は、その酸性水溶液のpHが、好ましくは4.2以下、より好ましくは2.0〜4.2、さらに好ましくはpH2.5以上4.0未満となるように、使用する酸の種類に応じて適宜決定され得る。
【0095】
任意のpH値を維持しつつ、酸の濃度を増加させることにより、殺菌作用および静菌作用を高めることも可能である。酸の濃度は、使用される酸の種類に応じて容易に決定され得る。
【0096】
酸性水溶液中の酸の濃度が高すぎると、得られる長期保存用麺類が酸味または苦味を呈する場合がある。酸性水溶液中の酸の濃度が低すぎると、pHが調整できず、静菌効果が得られなくなる場合がある。
【0097】
(2.塩)
酸性水溶液は、塩を含み得る。本明細書において「塩」とは、酸に含まれている1つ以上の解離し得る水素イオンをカチオン(例えば、金属イオン)で置換して得られる反応生成物をいう。塩は、有機酸塩であっても、無機酸塩であってもよい。塩は好ましくは、有機酸塩である。塩は、酸性塩であってもよく、中性塩であってもよく、塩基性塩であってもよい。酸性塩が好ましい。塩は好ましくは、麺類原料に含まれる塩と同種の塩である。塩は、好ましくは、食品衛生法別表2の指定添加物リストに記載の塩である。
【0098】
有機酸塩の例としては、上記有機酸の金属塩が挙げられる。有機酸塩は例えば、乳酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸、コハク酸または酒石酸などのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などであり得る。特に乳酸ナトリウムを使用すると茹で麺の保水性が向上し、茹で麺の保存中の乾燥による劣化を防止する。
【0099】
塩の例としては、食塩すなわち塩化ナトリウムが挙げられる。本明細書中では用語「塩」とは、上述した通りの定義で用いられる。従って、食塩などのように、調味料として添加される塩も、上記定義に該当する限り、塩に含まれる。
【0100】
無機酸塩の例としては、上記無機酸の金属塩が挙げられる。無機酸塩は例えば、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などであり得る。
【0101】
酸性水溶液中の塩の濃度は、茹で上がり時の茹で麺類のpHが好ましくは3.7〜4.2、より好ましくは3.8〜4.2、より好ましくはpH3.9〜4.2となるように適宜決定され得る。酸性水溶液中の酸の塩の濃度は、その酸性水溶液のpHが、好ましくは4.2以下、より好ましくは2.0〜4,2、より好ましくはpH2.5以上4.0未満となるように、使用する酸の種類に応じて適宜決定され得る。酸味を抑えるためには、pHを4.0未満とすることが好ましい。
【0102】
酸性水溶液中に酸と塩とが共存すると緩衝作用が起こり、酸または塩の濃度変動によるpH変化が小さくなる。そのため、本発明の製造方法を連続式で行う場合のpH調整が容易になる。
【0103】
任意のpH値を維持しつつ、塩の濃度を増加させることにより、殺菌作用および静菌作用を高めることも可能である。塩の濃度は、使用される酸および塩の種類に応じて容易に決定され得る。
【0104】
酸性水溶液中の塩の濃度は、好ましくは約0.1重量%〜約1.0重量%であり、より好ましくは約0.2重量%〜約0.5重量%である。酸性水溶液中の塩の濃度が高すぎると、得られる長期保存用麺類が酸味または苦味を呈する場合がある。酸性水溶液中の塩の量が多すぎると、酸の添加によって酸性溶液のpHを下げにくくなり、酸性溶液のpHを所望のpHまで低下させると酸味が強くなり、得られる茹で麺類の風味を損ねる場合があるので、この風味の観点からは、酸性水溶液中に塩を過剰に添加しないことが好ましく、酸性水溶液中に塩を積極的に添加しないことがさらに好ましい。
【0105】
なお、塩として食塩またはグルタミン酸ナトリウムのようなアミノ酸塩などを用いることもできる。これらの塩は、後述する風味改良剤としても機能し得る点で有用である。
【0106】
(3.風味改良剤)
酸性水溶液は、1以上の風味改良剤を含み得る。本明細書において「風味改良剤」とは、茹で麺類の風味を改良する任意の物質をいう。本明細書において、風味とは、五味(甘味、酸味、塩味、辛味、苦味)、旨み、コク、香りなどによって食品の特長となる味わいをいう。風味改良剤を酸性水溶液中に添加することにより、酸性処理によって引き起こされる茹で麺類の酸味または苦味を軽減することが可能となる。風味改良剤は好ましくは、酸味を軽減するために用いられる。
【0107】
風味改良剤の例としては、例えば、ショ糖または乳清ミネラル、またはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
酸性水溶液中の風味改良剤の濃度は、必要に応じて、当業者により適宜決定され得る。
【0109】
(IV.容器)
本発明において、茹で麺を充填するのに用いられる「容器」は、密封可能な任意の入れ物であり得る。容器は着色されていてもよく、完全な透明であってもよく、半透明(着色透明)であってもよい。容器には、文字または記号などの装飾または情報表示が付されていてもよく、そのような装飾または情報表示が全く付されていない容器であってもよい。
【0110】
容器は、全体が一体化した構造をとってもよく、蓋部分と底部分とに分かれた二部構造をとってもよい。製造時の便宜性から、二部構造をとることが好ましい。
【0111】
容器は、茹で麺類を密封した後に密封した状態を保持し得るのであれば、任意の容器材料であり得る。容器材料は好ましくは合成樹脂である。
【0112】
合成樹脂は、任意の合成樹脂であり得る。従来、食品の包装に用いられていた任意の合成樹脂が使用可能である。合成樹脂の例としては、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、熱硬化性樹脂およびセロハンが挙げられる。合成樹脂は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ナイロンおよびポリメチルペンテンからなる群より選択されることが好ましい。
【0113】
容器材料は、耐熱性であることが好ましい。容器材料はより好ましくは電子レンジ加熱に耐性である。「電子レンジ加熱に耐性である」とは、電子レンジで1200Wで1分間加熱した場合に、容器の変形および容器の融解が見られないことをいう。電子レンジ加熱に耐性である容器材料の例としては、耐熱性ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ハイインパクトポリスチレンなどが挙げられる。
【0114】
容器材料は、発泡樹脂であることが好ましい。容器材料が発泡樹脂であると、喫食前に包装容器ごと長期保存用麺類を例えば、電子レンジで加熱した場合に、温まった長期保存用麺類の熱が包装容器に伝わりにくく、包装容器を手で持つことが容易であるという利点を有する。
【0115】
容器材料はまた、酸素透過度が低いことが好ましい。酸素は、好気性菌の繁殖に利用される。そのため、容器材料の酸素透過度が高すぎると、容器内の好気性菌が繁殖し易くなる。また酸素透過度の低い容器材料を用いることは、このように好気性菌の増殖抑制に有利であるだけでなく、内容物の酸化劣化防止にも有効である。容器材料の酸素透過度は、好ましくは0cc/m/24h〜500cc/m/24hであり、より好ましくは0cc/m/24h〜50cc/m/24hである。このような酸素透過度を満たす容器材料の種類としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素もしくはアルミニウムを蒸着した樹脂、またはアルミニウム箔を貼り合わせた樹脂、またはポリビニルアルコール(PVA)をコーティングした樹脂、またはエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を共押し出しした樹脂が挙げられる。
【0116】
容器材料は、好ましくは耐熱性発泡樹脂(例えば、耐熱性ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ハイインパクトポリスチレン等、またはこれらを組み合わせたもの)である。容器材料は、酸素透過度の低い容器材料(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミニウム、PVA、EVOH等)と耐熱性発泡樹脂とを、例えば、蒸着、貼り合わせ、コーティング、または共押し出しによりラミネートして製造されたものであり得る。好ましくは、本発明の製造方法に用いられる容器は、電子レンジ加熱での調理を可能とする耐熱性容器である。
【0117】
容器材料から、公知の任意の方法により容器が製造される。容器の形状に限定はなく、袋状でもよく、箱状でもよい。製造された容器の酸素透過度は、好ましくは、容器の表面積1mあたり0〜500cc/24hであり、より好ましくは、容器の表面積1mあたり0〜50cc/24hである。
【0118】
耐熱性容器は、殺菌した後、茹で麺類を充填するために用いられる。容器を殺菌する方法は、当該分野において周知である。容器を殺菌する方法の例としては、例えば、紫外線で表面を殺菌する方法、35%過酸化水素水で表面を殺菌する方法、高圧蒸気殺菌法、酸化エチレンガス殺菌法、放射線殺菌法、電子線殺菌法、プラズマ殺菌法、熱湯殺菌法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
(V.油脂)
本発明の製造方法では、茹で麺類に油脂が噴霧され得る。容器に茹で麺類を充填した後に加熱を行わない場合、油脂は無菌油脂でなければならず、無菌油脂は無菌下で茹で麺類に噴霧されなければならない。容器に茹で麺類を充填した後に加熱を行う場合、油脂を無菌とする必要はない。油脂は、任意の食用可能な油脂であり得る。油脂の例としては、大豆油、なたね油、ごま油、コーン油、綿実油、米油、紅花油、ヤシ油、ひまわり油、オリーブオイル等が挙げられる。油脂は、1種類のみが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0120】
油脂は、茹で麺類に単独で噴霧されてもよく、乳化剤、水のような他の物質と混合してから噴霧されてもよい。
【0121】
乳化剤は、食用可能な任意の乳化剤であり得る。乳化剤の例としては、特に限定されるものではないが、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等が挙げられる。
【0122】
乳化油脂の製造方法は周知である。例えば、使用する乳化剤に応じて油脂と水の比率を決定し、ホモミキサーで撹拌することによって、乳化油脂が得られる。乳化油脂は、茹で麺類のほぐれに特に有利である。
【0123】
容器に茹で麺類を充填した後に加熱を行わない場合、本発明で使用する油脂は、製品への菌の混入を防ぐために完全に無菌化されたものでなければならない。種々の無菌化方法が周知である。油脂は、好ましくは除菌フィルターを用いて無菌化され得る。除菌フィルターの目開きは、好ましくは約0.2μm以下であり、より好ましくは約0.1μm〜約0.2μmであり、さらに好ましくは約0.2μmである。除菌フィルターの材料としては、例えばPVDF(ポリビニリデンフロライド)、ナイロン66、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が挙げられる。他の無菌化方法としては、乾熱殺菌が挙げられる。当業者は、油脂および乳化剤の種類、ならびに製造設備などに応じて、適切な無菌化方法を適宜決定し得る。
【0124】
(VI.長期保存用麺類の製造)
本発明の長期保存用麺類の1つの製造方法は、生麺類を50℃以上100℃未満、50%RH以上80%RH以下の条件下で乾燥して、水分含量が15重量%以下の乾麺類を得る工程;該乾麺類を70℃以上100℃以下の温度で茹でて、茹で麺類を得る工程;該茹で麺類のpHをpH3.7〜4.2に調整する工程;pHが調整された該茹で麺類を、殺菌された容器に無菌下で充填する工程;および該容器を無菌下で密封する工程を包含する。
【0125】
本発明の長期保存用麺類の別の製造方法は、生麺類を50℃以上100℃未満、50%RH以上80%RH以下の条件下で乾燥して、水分含量が15重量%以下の乾麺類を得る工程;該乾麺類を70℃以上100℃以下の温度で茹でて、茹で麺類を得る工程;該茹で麺類のpHをpH3.7〜4.2に調整する工程;該pHが調整された茹で麺類を、容器に充填する工程;該容器および該容器に充填された茹で麺類を、90℃以上100℃以下の温度で1分間以上30分間以下加熱する工程、ならびに該容器を無菌下で密封する工程を包含する。
【0126】
生麺類は、上記の「II.生麺類の製造」に記載のように、当該分野で公知の方法によって製造された任意の生麺類であり得る。上記のように、生麺類とは、水分含量が20重量%より多い麺類である。
【0127】
生麺類は、約50℃以上約100℃未満の温度で、約50%RH以上約80%RH以下の湿度条件下で乾燥される。
【0128】
乾燥時の温度は、より好ましくは約70℃〜約100℃未満であり、特に好ましくは約75℃〜約100℃未満であり、最も好ましくは約80℃〜約100℃未満である。約50℃以上の温度で乾燥することにより、生麺類の表面から中心部まで非耐熱性菌が殺菌される。乾燥時の温度は好ましくは95℃未満であり、より好ましくは90℃未満であり、最も好ましくは85℃未満である。pH4.2以下で生育可能な菌、すなわち、好酸性菌、カビおよび酵母は耐熱性が低いので、この乾燥工程において殺菌される。乾燥時の温度が低すぎると、乾燥時の殺菌が不充分となり、得られる長期保存用麺類が保存中に腐敗する可能性がある。乾燥時の温度が高すぎると生麺類に含まれるタンパク質が過度に変性して、得られる長期保存用麺類の食感が非常に硬く弾力のないものとなる場合がある。さらに、風味の劣化が生じる場合もある。
【0129】
乾燥時の湿度は、より好ましくは約55%RH以上80%RH以下である。
【0130】
乾燥は、定温および定湿度で行われてもよく、あるいは、温度および湿度を段階的に変化させることによって行われてもよい。例えば、生麺類が、減圧下において、麺類原料を混錬して麺類生地を得て、そして該麺類生地を加圧押出しすることによって得られる生麺類(例えば、マカロニ類)である場合、組織が非常に緻密であって乾燥しにくく、表面の水分の蒸発速度と内部水分の表面への拡散速度との間に大差があり、得られる乾麺類の表面にひび割れなどが生じる場合があるので、生麺類をあまりにも急激に乾燥せずに、ゆっくりとまたは段階的に乾燥させることが好ましい。
【0131】
乾燥に要する時間は、乾燥させる生麺類の組織の緻密さおよび太さに依存する。特定の生麺類の組織の緻密さおよび太さに適切な乾燥条件は、当業者によって容易に決定され得る。
【0132】
乾燥は、約50℃以上約100℃未満の温度で、50%RH以上80%RH以下の湿度条件下であれば、当該分野で公知の任意の方法を用いて行われ得る。乾燥は、回転ドラム、バンドコンベヤー、トンネル乾燥機などを用いて行われ得る。生麺類がマカロニなどのショートパスタである場合、回転ドラムまたはバンドコンベヤーを用いて乾燥を行うことが好ましい。生麺類がスパゲッティなどのロングパスタである場合、トンネル乾燥機を用いて乾燥を行うことが好ましい。
【0133】
このようにして、生麺類は、水分含量が15重量%以下となるまで乾燥されて、乾麺類が得られる。好ましくは、5重量%〜14重量%に乾燥され、より好ましくは8重量%〜13重量%に乾燥され、より好ましくは10重量%〜12重量%に乾燥される。乾燥が不充分であると、水分含量が高くなり腐敗、退色等の変質が起こりやすく、乾燥しすぎるとひび割れ等が生じ品質が悪くなる。乾燥時間は特に限定されず、上述した条件下で15重量%以下、好ましくは5重量%〜14重量%の水分含量が達成されるのに必要な時間が乾燥時間となる。好ましくは3〜30時間、より好ましくは4〜15時間程度である。比較的長時間かけて少しずつ乾燥させることが、菌を殺菌し、かつ麺の食感を良くする点で有利である。
【0134】
乾麺類は、酸性水溶液または水中で70℃以上100℃以下の温度で茹でられる。乾麺類は、任意の温度の時点で酸性水溶液または水中に投入され得る。酸性水溶液または水が70℃以上100℃以下の温度に達した時点で乾麺類を投入することが好ましい。乾麺類を投入した時の酸性水溶液または水の温度が低すぎると、酸性水溶液または水の温度が約70℃以上約100℃以下の温度に到達するまえに麺類が過度にふやけてしまう場合がある。乾麺類を酸性水溶液中で茹でることによって1段階で茹で麺類のpHを調整してもよく、あるいは、乾麺類を酸性水溶液中で茹でながら途中で酸を何回か添加することによって何段階かでpHを調整してもよく、乾麺類をpH未調整の水(例えば、イオン交換水、水道水など)で茹で始め、茹でかけの乾麺類を途中から酸性水溶液中に移して茹で上げてもよく、あるいは、乾麺類を水で茹で上げた後に酸性水溶液に浸漬することによってpHを調整してもよい。pH未調整の水で乾麺類を茹でた後に茹で麺類を酸性水溶液中に浸漬する場合、pH調整された茹で麺を加熱する工程を含まない製造方法では、この酸性水溶液は殺菌されている必要がある。茹で処理後を全て無菌工程とすることで、pH4.2以下で生育可能な菌による汚染を防止できる。しかし、pH調整された茹で麺を充填された容器とともに加熱殺菌する工程を含む別の製造方法では、この酸性水溶液は殺菌されている必要はない。
【0135】
乾麺類を茹でる温度は、好ましくは、約70℃以上約100℃以下、より好ましくは約80℃以上約100℃以下、さらに好ましくは約85℃以上約100℃以下、特に好ましくは約90℃以上約100℃以下、最も好ましくは約95℃以上約100℃以下であり得る。このような温度で乾麺を茹でることにより、乾燥後に乾麺の表面に付着した、pH4.2以下で生育可能な菌を殺菌することができる。乾燥工程において乾麺の中心部まで殺菌されており、茹でる工程では乾麺の表面を殺菌すればよいので、芯を残した状態で所望の硬さに茹で上げることが可能である。喫食前にソースをかけてから電子レンジで温めることを意図する場合、温める間にソース中の水分が茹で麺類に移動するので、茹で麺類を硬めに茹でることが好ましい。
【0136】
酸性水溶液のpHは、得られる茹で麺類のpHがpH3.7〜4.2となるように、当該分野で公知の方法に従って調整される。茹で麺類のpHを4.2以下とすることにより、生麺類の乾燥工程および乾麺類の茹で工程において殺菌できない耐熱性菌を静菌することができる。
【0137】
本発明の方法において、乾麺を茹でる工程では、任意の加熱器具(例えば、加熱釜など)が使用可能である。加熱器具は、水および乾麺を収容できる任意の加熱容器である。加熱器具は好ましくは、水および乾麺を収容した状態で攪拌、加熱などの調理作業を行うことができる。乾麺をゆでる際には、撹拌をしてもしなくてもよい。撹拌羽根を用いた撹拌、茹で水の対流による撹拌、バブリングによる撹拌などによって撹拌をすることにより、乾麺をよりむらなく茹でることができる。例えば、加熱器具として従来公知の茹で装置が使用可能であり、このような茹で装置の例としては、加熱釜、加熱撹拌釜、反転式の連続茹で装置などが挙げられる。
【0138】
具体的には、茹で麺類を得る工程においては、任意の加熱器具が使用可能である。これらの加熱器具の加熱方式は任意の加熱方式であり得る。例えば、スチーム加熱、電気ヒーター加熱、直火による加熱、マイクロ波加熱または電磁加熱など各種の加熱方式が可能である。工業的な生産効率、設備コストおよび温度制御の容易さなどの点で、スチーム加熱が好ましい。
【0139】
乾麺類を茹でる時間は、乾麺類を茹でる温度、使用する乾麺類の種類、太さおよび大きさ、目的とする茹で上がり時の茹で麺類の水分含量などに応じて変動し得る。これらの因子を考慮して、当業者は、茹でる時間を容易に決定し得る。特定の実施形態では、茹でる時間は、好ましくは約3分間〜約25分間、より好ましくは約5分間〜約15分間、特に好ましくは約6分間〜約10分間である。例えば、太さ約1.2mm〜約1.9mmの乾燥スパゲッティを100℃で茹でる場合、茹でる時間は好ましくは約4分間〜約13分間である。さらなる例を挙げると、太さ約1.4mmの乾燥スパゲッティを100℃で茹でる場合、茹でる時間は好ましくは約5分間であり、太さ約1.8mmの乾燥スパゲッティを100℃で茹でる場合、茹でる時間は好ましくは約11分間である。
【0140】
なお、本明細書では、「茹でる時間」とは、乾麺が酸性水溶液または水の中で加熱されている時間をいう。なお、例えば、乾麺を予め100℃に加熱し、その温度のまま、この乾麺を約90℃の酸性水溶液または水に投入したとしても、この乾麺は、酸性水溶液または水の中で加熱されているとみなされる。乾麺が約50℃以上の酸性水溶液または水の中に入れられているのであれば、その乾麺は、その酸性水溶液または水の中で加熱されているとみなされる。
【0141】
本発明の長期保存用麺類の1つの製造方法では、腐敗の原因となる菌の混入を回避するために、茹で上がった茹で麺類の水切りを無菌下で実施する。容器に充填してから加熱殺菌を行う場合は、水切りを必ずしも無菌下で行う必要はない。水切りは、任意の手段により達成され得る。例えば、水切りは、麺類の大きさよりも小さい穴の開いた「ざる」、「網」などの上に、茹で上がった麺類をのせ、ざるまたは網の穴から水がほぼ滴り落ちなくなるまでざるまたは網を数回振ることによりまたは放置することにより、達成され得る。もちろん、茹で上がった麺類の水切りは、それほど厳密に行う必要がなく、ある程度水が残った状態で容器に充填されたとしても問題はない。一般的には、水切りを全く水が滴り落ちなくなるまで行うことが望ましい。ただし、工業レベルでは、水が全く滴り落ちなくなるまで水切りを行うと、時間がかかりすぎ、得られる水切り後の茹で麺類が潤いをなくしてざるにへばりつき充填しにくくなる場合がある。
【0142】
本発明の長期保存用麺類の製造方法の好ましい実施形態では、茹で麺類の茹で上がり時の水分含量が好ましくは、約50重量%〜約80重量%、約50重量%〜約78重量%、約54重量%〜約76重量%、より好ましくは約57重量%〜約70重量%、特に好ましくは約58重量%〜約66重量%となるように茹で時間を調整する。茹で上がり時の水分含量とは、水切り直後の茹で麺類に含まれる水分含量をいう。茹で麺類の水分含量が所定の値になるように茹でることによって、長期間(例えば、約6ヶ月間)にわたり保存した後でも、茹で伸びが生じず、コシがある。そのため、食感の低下が生じず、乾麺類を常圧下で100℃にて茹でた後に常圧下で常温にて30分間密封放置した茹で麺類と同等以上の食感を有し得る。容器に充填した後に蒸気で加熱殺菌を行う場合、加熱殺菌が短時間(例えば、約1分間〜5分間)であれば、茹で麺類は蒸気から水分をほとんど吸収しないが、加熱殺菌が長時間(例えば、約6分間〜約30分間)である場合、茹で麺類が蒸気から水分を吸収し得るので、その分水分含量が低くなるように設定することが好ましい。
【0143】
得られた茹で麺類のpHは、好ましくは3.7〜4.2、より好ましくは3.8〜4.2、より好ましくはpH3.9〜4.2である。
【0144】
茹で麺類は、そのまま容器に充填されてもよく、あるいは、容器に充填される前に無菌の油脂が噴霧されてもよく、あるいは、容器に充填された後に油脂が噴霧されてもよい。茹で麺類に油脂を噴霧することによって、茹で麺類のほぐれをさらに良くすることができる。油脂の噴霧方法および噴霧量は当該分野で公知である。
【0145】
腐敗の原因となる菌の混入を回避するために、茹で麺類の充填、油脂の噴霧および容器の密封は、無菌下または無菌に近いクリーンな環境下で行われることが好ましい。充填後に加熱殺菌を行う場合、格別に無菌条件にせずに通常の工業的生産環境下で充填および油脂の噴霧を行ってもよい。茹で麺類の充填、油脂の噴霧および容器の密封を無菌下または無菌に近いクリーンな環境下で実施することにより、菌の混入が回避されるので、容器の密封後にさらに殺菌処理を行う必要がなくなる。そのため、従来の長期保存用麺類の製造方法で問題となっていた、殺菌処理による品質劣化が回避される。好ましくは、茹で麺類の充填、油脂の噴霧および容器の密封は、無菌ルームまたは無菌に近いルームで行われ、このような無菌ルームまたは無菌に近いルームは好ましくは、アメリカ航空宇宙局(NASA)規格のクラス100,000またはそれよりも清浄度の高いクリーンルームであり、より好ましくはアメリカ航空宇宙局規格のクラス10,000またはそれよりも清浄度の高いクリーンルームであり、より好ましくはアメリカ航空宇宙局規格のクラス1,000またはそれよりも清浄度の高いクリーンルームであり、より好ましくはアメリカ航空宇宙局規格のクラス100またはそれよりも清浄度の高いクリーンルームである。
【0146】
本発明の方法において、茹で麺類を通常の工業的生産環境下で充填し、次いで油脂の噴霧を行う場合、あるいは、茹で麺類を、殺菌されていない酸性水溶液に浸漬してpH調整する場合、必要に応じて、容器および茹で麺類の表面に付着した非耐熱性微生物を殺菌するために、加熱が行われる。容器および容器に充填された茹で麺類は好ましくは、約90℃以上約100℃以下の温度で約1分間以上約30分間以下加熱され、より好ましくは約90℃以上約100℃以下の温度で約1分間以上約14分間以下加熱され、さらに好ましくは約95℃以上約100℃以下の温度で約1分間以上約10分間以下加熱され、特に好ましくは約98℃以上約100℃以下の温度で約1分間以上約5分間以下加熱される。加熱は、当該分野で公知の任意の方法によって実施される。加熱は好ましくは、蒸気を容器および充填された茹で麺類に直接吹き掛ける方法によって実施される。この加熱は、トレーなどの容器に付着している非耐熱性微生物および茹で麺類のpH調整時または充填時に付着または混入する非耐熱性微生物の殺菌を目的としており、容器表面および茹で麺類の表面が殺菌されれば充分である。従来技術の加熱殺菌方法では、茹で麺類の中心部まで殺菌する必要があるため、加熱条件が極めて過酷なものとなり、加熱殺菌後の茹で麺類の品質劣化が極めて顕著である。これに対して、本願発明の方法では、乾燥工程で麺の中心部の殺菌を行っており、この加熱段階では茹で麺類の中心部まで殺菌する必要は全くなく、表面を殺菌する程度の軽い加熱殺菌で充分であるので、加熱殺菌後の茹で麺類の品質劣化はそれほど起こらず、品質の良好な長期保存用麺類が得られる。このように加熱殺菌を行った後、容器は、無菌にされた蓋を被せて密封される。
【0147】
好ましい実施形態では、本発明の長期保存用麺類を充填した容器内の含気率を約70%以下、好ましくは、約50〜60%とする。含気率とは、容器の容量に占める空気の体積の割合をいう。空気の体積は、容器の容量から茹で麺類などの固形物の体積を減算することによって得られる。含気率の最も簡便な測定方法は以下の通りである。まず、容器の容量を測定する。例えば、空の容器の重さを測定し、次いで、容器いっぱいに水を入れた状態で重さを測定する。水を入れた状態の重さから空の容器の重さを減算した重さが、容器に入る最大の水の量であり、水1gは1mlであるので、この水の量から容器の容積が計算される。なお、当該分野で周知のように、水の密度は水温4℃のときが最大であり、0.999973g/cmになるが、水温の変化による密度の変化は小さいので、上記のように1gが1mlと概算することができる。次いで、水を捨て、茹で麺類を入れ、茹で麺類のみが入っている状態の容器の重さを測定する。次いで茹で麺類が入った状態でこの容器いっぱいに水を加えて重さを測定する。茹で麺類および水を入れた状態の重さから、茹で麺類のみが入った状態の容器の重量を減算することによって添加した水の重量を得、この水の重量を体積に換算することによって、容器中に占めていた空気の体積を知ることができる。容器が一定の含気率を有することによって、容器内において麺類に調味具材(例えば、ソースなど)をかける空間を得ることができる。また容器が一定の含気率を有することにより、麺類同士の付着が防止され、麺類のほぐれ向上の効果も得られる。
【0148】
好ましい実施形態では、保存期間中の酸化による品質劣化を抑制するために、長期保存用麺類を密封した容器内の酸素濃度を約5%未満とし、より好ましくは約4%未満とし、さらに好ましくは約3%未満とし、さらに好ましくは約2%未満とし、さらに好ましくは約1%未満とし、最も好ましくは約0.5%未満とする。密封された容器内の酸素濃度を低くする種々の方法が周知である。密封された容器内の酸素濃度を低くする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、密封時に容器内の空気を、無菌的に窒素および/または二酸化炭素の不活性ガスで置換する方法が挙げられる。あるいは、酸素吸収剤を同封して密封することによって容器内の空気の酸素濃度を低下させてもよい。あるいは、酸素吸収素材をラミネートした容器を用いてもよい。このようにして容器内の空気の酸素濃度を低下させることによって、保存中の茹で麺類の酸化による品質劣化を防止でき、その上、万が一容器充填時にカビなどの好気性微生物が混入した場合であっても、その微生物を静菌することができる。
【0149】
好ましい実施形態では、エタノールを封入してもよい。エタノールを封入しておけば、万が一容器内に微生物が混入した場合であっても、保存期間中に微生物が増殖することを抑制することができる。長期保存用麺類を密封した容器内のエタノールガス濃度は、好ましくは約0.5%以上であり、より好ましくは約1%以上であり、さらに好ましくは約1.5%以上であり、さらに好ましくは約2.0%以上である。長期保存用麺類を密封した容器内のエタノールガス濃度は、好ましくは約5.0%以下であり、より好ましくは約4.0%以下であり、さらに好ましくは約3.0%以下であり、さらに好ましくは約2.0%以下である。密封された容器内のエタノールガス濃度を調整する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、密封時に液体のエタノールを噴霧して容器内にエタノールを封入し、さらにこのエタノールを気化させることによってエタノールガス濃度を調整する方法が挙げられる。あるいは、徐々にエタノールを気化する、無菌化した徐放性製剤を容器内に封入してもよい。このようにして容器内の空気にエタノールガスを混入させることによって、保存中の微生物、特にカビの増殖を防止できる。
【0150】
本発明の長期保存用麺類の製造においては、茹で麺類は、温かい状態(例えば、約45℃より高い温度)のまま容器に充填されても、冷めた状態(例えば、約45℃以下の温度)で容器に充填されてもよい。あるいは、茹で麺類を容器に充填した後、加熱殺菌を行った場合、茹で麺類が冷めてから容器を密封しても、茹で麺類が冷める前に温かい状態で容器を密封してもよい。工業的生産効率の面からみて、茹で麺類が冷める前に温かい状態で容器を密封することが好ましい。茹で麺類が温かい状態で容器を密封した場合、容器内の飽和蒸気圧が高くなるので、茹で麺類から水分が蒸発し、容器が外気で冷されるので、容器の内側に結露が生じる。茹で麺類と容器との間に隙間がある場合、充填した茹で麺類のうち、上側の部分が比較的乾いた状態になりやすい。また、温かい状態の茹で麺類は軟らかいので、自重で圧着し、麺線が縮れ、容器の底に詰まった状態になってほぐれが悪くなる場合がある。そこで、茹で麺類が温かい状態で容器を密封する場合には、茹で麺類が冷めて硬化するまでの間(すなわち、茹で麺類の温度が約45℃以下になるまでの間)、密封した容器を倒置しておき、約45℃以下になった後に正常な向きに戻すことが好ましい。倒置することによって、本来の向きに置かれたとき上側にある茹で麺類の蒸発乾燥が緩和され、水分分布のより一層の均一化が促進され、茹で麺類の硬さのばらつきが生じにくくなり、かつ茹で麺類のほぐれもよい状態のまま保たれるという効果が得られる。
【0151】
(VII.長期保存用麺類の保存)
このようにして製造された本発明の長期保存用麺類は、常温で保存可能である。本発明の長期保存用麺類を保存する温度は、好ましくは約3℃〜約40℃であり、より好ましくは約10℃〜約30℃であり、特に好ましくは約15℃〜25℃であり、最も好ましくは、約20℃である。もちろん、本発明の長期保存用麺類は、常温よりもさらに低い温度(例えば、−約20℃〜約5℃)で保存され得る。しかし、低温条件下では、長期保存用麺類中の、糊化したデンプンが老化し易くなる場合があるので、本発明の長期保存用麺類は、常温で保存されることが好ましい。
【0152】
本発明の長期保存用麺類は、常温で長期間保存され得る。本発明の長期保存用麺類は、好ましくは約2週間以上、好ましくは約1ヶ月間以上、より好ましくは約2ヶ月間以上、より好ましくは約3ヶ月間以上、より好ましくは約4ヶ月間以上、より好ましくは約5ヶ月間以上、より好ましくは約6ヶ月間以上、より好ましくは約7ヶ月間以上、より好ましくは約8ヶ月間以上、より好ましくは約9ヶ月間以上、より好ましくは約10ヶ月間以上、最も好ましくは約12ヶ月間以上常温で保存可能である。
【0153】
本発明の長期保存用麺類が常温で長期保存可能であるか否かは、当該分野で公知の方法によって容易に決定され得る。例えば、常温で長期保存可能であるか否かは、常温で密封放置した複数の長期保存用麺類から経時的に検体をサンプリングし、このサンプリングされた検体1gあたりに含まれる生菌数を測定することにより決定され得る。生菌数は、当該分野で公知の方法によって測定され得る。生菌数の測定方法としては、食品衛生法に基づき、好気性菌用として標準寒天培地平板混釈法、嫌気性菌用としてGAM寒天培地平板混釈法、真菌用としてポテトデキストロース寒天培地平板塗抹法が挙げられる。
【0154】
本明細書では、20℃で2週間保存した場合の麺類の検体1gあたりの生菌数が10個以下である場合、この麺類は長期保存可能であるという。本発明の長期保存用麺類は、2週間保存した場合の検体1gあたりの生菌数が、好ましくは10個以下であり、より好ましくは10個以下であり、さらに好ましくは10個以下であり、特に好ましくは10個以下であり、最も好ましくは10個以下である。本発明の長期保存用麺類は、6ヶ月保存した場合の検体1gあたりの生菌数が、好ましくは10個以下であり、より好ましくは10個以下であり、さらに好ましくは10個以下であり、さらに好ましくは10個以下であり、最も好ましくは10個以下である。
【0155】
本発明の長期保存用麺類は、20℃で2週間保存しても菌の増殖が実質的にない。「20℃で2週間保存しても菌の増殖が実質的にない」とは、20℃で2週間保存した後の長期保存用麺類の検体1gあたりの生菌数が、製造直後(すなわち、製造1日目)の長期保存用麺類の検体1gあたりの生菌数の1000倍(すなわち、10倍)以下であることをいう。この比は、好ましくは100倍以下であり、より好ましくは50倍以下であり、さらに好ましくは10倍以下である。
【0156】
このようにして製造された本発明の長期保存用麺類は、そのまま喫食してもよく、加熱してから喫食してもよい。好ましくは、喫食する直前に加熱される。本発明の長期保存用麺類は、任意の方法で加熱され得る。本発明の長期保存用麺類は、簡便には、例えば、電子レンジで加熱することによるか、湯煎することによるか、湯通しすることによるか、炒めることによるか、または蒸すことなどによって加熱され得る。長期保存用麺類を充填した容器は、電子レンジ、湯通し、炒めること、蒸すことなどによって加熱される場合、加熱の直前に開封されることが好ましい。湯煎することによって加熱する場合は、容器は、未開封の状態で湯煎され、その後開封されることが好ましい。
【0157】
本発明の長期保存用麺類は、他の食材を加えずに喫食されてもよく、あるいはソース、調味料、具材などをかけたり、和えたりしてから喫食されてもよい。ソースの例としては、トマトソース、ホワイトソース、カレーソース、ミートソース、和風だしつゆ、ウスターソース、醤油などが挙げられる。調味料の例としては、塩、香辛料(例えば、胡椒、唐辛子)、カレー粉、かつお粉などが挙げられる。具材の例としては、肉類、卵類、野菜類(例えば、トマト、ピーマン、バジル)、香辛料(例えば、ニンニク)、チャーシュー、わかめ、シーフード、もち、油揚げ、天ぷら、めんま、たらこ、玉子、しょうが、香草、青海苔などが挙げられる。このようなソース、調味料、具材などは、長期保存用麺類の加熱前にかけたり和えたりしてもよく、あるいは、長期保存用麺類の喫食の直前にかけたり和えたりしてもよい。長期保存用麺類の加熱前に水分の多いソースなどをかけたり和えたりする場合、加熱中にソースなどから麺類が水分を吸水するので、長期保存用麺類は、予め硬めに茹でた茹で麺類であることが好ましい。この場合、硬めに茹でた茹で麺類は、ソースなどとともに加熱することによって水分を吸収し、芯が硬く外側が軟らかいちょうど良い食感となる。水分の多いソースを麺類と混ぜれば、食感がさらに良くなる。
【0158】
好ましくは本発明の長期保存用麺類は、20℃で2週間保存しても、乾麺類を常圧下で100℃にて茹でた後に常圧下で常温にて30分間密封放置した茹で麺類と同等以上の食感を有する。本発明の長期保存用麺類は、20℃で、より好ましくは約1ヶ月間、より好ましくは約2ヶ月間、より好ましくは約3ヶ月間、より好ましくは約4ヶ月間、より好ましくは約5ヶ月間、より好ましくは約6ヶ月間、より好ましくは約7ヶ月間、より好ましくは約8ヶ月間、より好ましくは約9ヶ月間、より好ましくは約10ヶ月間、最も好ましくは約12ヶ月間保存しても、乾麺類を常圧下で100℃にて茹でた後に常圧下で常温にて30分間密封放置した茹で麺類と同等以上の食感を有する。
【0159】
常圧とは、減圧処理も加圧処理も施していない状態の圧力をいい、通常は、大気圧に等しい圧力、一般的には、約1気圧のことをいう。「20℃で2週間保存しても、乾麺類を常圧下で100℃にて茹でた後に常圧下で常温にて30分間密封放置した茹で麺類と同等以上の食感を有する」とは、20℃で2週間保存した長期保存用麺類と、乾麺類を常圧下で100℃にて茹でた後に常圧下で常温にて30分間密封放置した茹で麺類とを同じ条件で電子レンジなどで温めて食感を比較した場合に、長期保存用麺類の食感が茹で麺類の食感と実質的に同じであるか、またはそれよりも良いことをいう。風味、ほぐれやすさ、色調などについても同様である。「実質的に同じ」とは、20℃で2週間保存した後の長期保存用麺類と、乾麺類を常圧下で100℃にて茹でた後に常圧下で常温にて30分間密封放置した茹で麺類とを同じ条件で電子レンジなどで温めて食感を比較した場合に、これらの食感の区別ができないことをいう。なお、比較のための茹で麺類は、茹で上がった後に水切りされてから、水分の蒸発を防ぐために密封された状態で放置される。
【0160】
比較のために乾麺類を常圧下で100℃にて茹でる時間は、乾麺類の太さによって変わり得、通常乾麺類を喫食するために茹でる時間が選択されればよい。
【0161】
「20℃で2週間保存しても、乾麺類を常圧下で100℃にて茹でた後に常圧下で常温にて30分間密封放置した茹で麺類と同等以上の食感を有する」か否かは、官能評価によって決定されてもよく、あるいは、当該分野で公知の食感分析値を測定することによって決定されてもよい。
【0162】
茹で麺類の食感は、当該分野で公知の力学的特性測定手段により分析され得る。例えば、食感を分析する方法としては、市販の測定機器クリープメーター(例えば、山電製、型式:RE−33005)を用いて、検体(すなわち麺類)が変形するときの破断強度を測定する方法が挙げられる。
【実施例】
【0163】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0164】
(実施例1および比較例1〜3:生麺類と乾麺類との比較、および茹で麺類のpHの影響)
まず、スパゲッティの生麺を製造した。デュラム小麦のセモリナ100重量部および水32重量部を、減圧下において混合機で20分間混練して麺類生地を得た。次いで、この麺類生地を、マカロニ類成型機(ラ・パルミジャーナ社製;パスタマシーン(型式:D−45))を使用して加圧押出しすることによって、直径1.7mm、長さ240mmでかつ断面が円形のスパゲッティ生麺を得た。この生麺の一部を135℃にて2時間保持し、2時間保持後の麺類の重量を測定し、保持前と比較して、2時間の保持後に減少した重量から水分含量を測定したところ、このスパゲッティ生麺の水分含量は、29重量%であった。
【0165】
スパゲッティ生麺を50〜85℃で、50〜80%RHで合計約4時間40分かけて段階的に乾燥させてスパゲッティ乾麺を得た。この乾麺の一部を135℃にて2時間保持し、2時間保持後の麺類の重量を測定し、保持前と比較して、2時間の保持後に減少した重量から水分含量を測定したところ、このスパゲッティ乾麺の水分含量は、12重量%であった。
【0166】
容量6.0リットルのなべ中で、乳酸0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%または0.3重量%を含む3.0リットルの酸性水溶液を常圧下で沸騰させた。この水溶液の20℃でのpHは、それぞれ、3.1、3.0、2.9または2.7であった。沸騰後、上記の乾麺(300g)または生麺(375g)をこのなべの中の酸性水溶液に加えた。乾麺は20℃でのpHが3.1、3.0または2.9の酸性水溶液で、生麺は、20℃でのpHが2.7の酸性水溶液のみで茹でた。続いて常圧下で掻き混ぜながら、乾麺は8分間、そして生麺は3.5分間、約98℃〜約100℃で茹でた。次いで、無菌ブース内で、茹で水である酸性水溶液を水切りした。
【0167】
得られた茹で麺の一部を135℃にて2時間保持し、2時間保持後の麺類の重量を測定し、保持前と比較して、2時間の保持後に減少した重量から水分含量を測定したところ、茹で麺の水分含量は、乾麺から得た茹で麺および生麺から得た茹で麺のいずれについても61重量%であった。また得られた茹で麺のpHを測定した。茹で麺のpHは、麺50gに脱イオン水100ccを加え、10分間以上浸漬した後、マルチブレンダーにより1000rpmで5分間破砕した後に20℃にて測定した。測定機器は、掘場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度計(型式F−23)を用いた。その結果、茹で麺のpHは、乾麺から得た茹で麺については、pH3.1の酸性水溶液を用いた場合5.0、pH3.0の酸性水溶液を用いた場合4.5、pH2.9の酸性水溶液を用いた場合4.2であった。生麺から得た茹で麺については、4.2であった。
【0168】
さらに、35%過酸化水素水で表面殺菌し滅菌水で濯いだ、縦180mm×横118mm×高さ44mmの大きさのポリプロピレン(PP)/EVOH/PP(48重量%/4重量%/48重量%;全体の厚み0.7mm;酸素透過度1.5cc/m/24h)の容器に、乾麺から得た茹で麺および生麺から得た茹で麺のいずれかの茹で麺を容器1個あたり180gずつ無菌下で充填した。茹で麺に対する油の噴霧は行わなかった。その後、この茹で麺を含む耐熱性ポリプロピレン容器に過酸化水素水処理済の縦200mm×横140mmの大きさのアルミ蒸着PET12(μm)/ナイロン25(μm)/CPP35(μm)(全体の厚み72μm;酸素透過度1.5cc/m/24h)のフタを無菌下でかぶせ、酸素濃度が約0.5%となるように窒素置換を行い、このフタと容器とをヒートシールすることによってこの容器を密封した。これにより、容器に密封されたスパゲッティを得た。
【0169】
得られたスパゲッティが長期保存され得るか否かを調べるために、このスパゲッティを、細菌の生育に適した温度である35℃で3ヶ月間保存した。製造日および保存3ヶ月目のスパゲッティをそれぞれ10g取り出し、標準寒天培地平板混釈法およびGAM寒天培地平板混釈法により、好気性および嫌気性の一般生菌数を測定した(真菌は完全に殺菌できているため、真菌数の測定は行わなかった)。それぞれスパゲッティ0.1g分の試料をシャーレにまいてインキュベートした。結果を以下の表1に示す。
【0170】
【表1】


その結果、製造日にはいずれの場合も生菌は検出されなかった。乾麺を茹でて茹で麺のpHを4.2とした場合、35℃で3ヶ月間保存した後も菌の増殖は認められなかった。しかし、生麺を茹でた場合および乾麺を茹でて茹で麺のpHを4.5または5.0とした場合、35℃で3ヶ月間保存した後では、菌が著しく増殖した。このことから、生麺を乾燥して乾麺を得て、この乾麺を酸性水溶液中で茹でて茹で麺のpHを4.2以下とすることにより、容器に密封されたスパゲッティが長期保存可能であることが示された。
【0171】
さらにこの実施例1のスパゲッティについて、製造日および保存3ヶ月目の容器の密封状態を開放して電子レンジで500Wにて2分間(ただし、茹で麺1食分180gを温める場合)加熱し、15人の熟練したパネラーにより試食した。
【0172】
食感の比較のために、長期保存用麺類を製造するのに用いたスパゲッティ乾麺と同じスパゲッティ乾麺300gを3.0リットルの水を含むなべで常圧下で100℃にて8分間茹で、水切りし、そして常圧下で常温にて30分間密封放置して官能評価基準用のスパゲッティを製造した。この官能評価基準用のスパゲッティを、本発明のスパゲッティと同様に、電子レンジで500Wにて2分間(ただし、茹で麺1食分180gを温める場合)加熱し、15人の熟練したパネラーにより試食した。
【0173】
その結果、製造日および保存3ヶ月目のスパゲッティは、30分間しか保存していない官能評価基準用のスパゲッティの風味および食感と同等の、極めて品質良好なスパゲッティであることが明らかになった。
【0174】
(実施例2〜3および比較例4〜5:酸性水溶液中での塩の使用の影響)
上記実施例1と同様にして乾麺を得た。
【0175】
容量6.0リットルのなべ中で、以下の表2に記載の濃度の乳酸および乳酸ナトリウムを含む3.0リットルの酸性水溶液を常圧下で沸騰させた。この水溶液の20℃でのpHも以下の表2に示す。沸騰後、上記の乾麺(300g)をこのなべの酸性水溶液に加えた。続いて常圧下で掻き混ぜながら、8分間、約98℃〜約100℃で茹でた。次いで、無菌ブース内で、茹で水である酸性水溶液を水切りした。
【0176】
得られた茹で麺の一部を135℃にて2時間保持し、2時間保持後の麺類の重量を測定し、保持前と比較して、2時間の保持後に減少した重量から水分含量を測定したところ、茹で麺の水分含量は、61重量%であった。また得られた茹で麺のpHを、上記実施例1と同じ方法で測定した。結果を以下の表2に示す。
【0177】
これらのスパゲッティの食味を確認するために、これらのスパゲッティを、電子レンジで500Wにて2分間(ただし、茹で麺1食分180gを温める場合)加熱し、15人の熟練したパネラーにより試食した。結果を以下の表2に示す。その結果、有機酸塩を併用すると緩衝作用が働いて酸性水溶液のpHを低下させにくく、茹で麺のpHが4.3または4.5になるようなpHにすると、得られる茹で麺類の味に強い酸味が感じられて好ましくなく、それゆえ、塩を積極的に添加しないことが好ましいことが明らかになった。
【0178】
【表2】


(比較例6〜7:生麺の乾燥温度と乾麺の品質)
乾燥温度を45℃(比較例6)または110℃(比較例7)とした以外は実施例1と同様にして、容器に密封されたスパゲッティを得た。
【0179】
このスパゲッティを35℃で3ヶ月間保存し、実施例1と同様にして菌数を測定した。その結果、乾燥温度が45℃の場合、スパゲッティが腐敗した。乾燥温度が110℃の場合、スパゲッティは腐敗しなかった。乾燥温度が110℃のスパゲッティは、乾麺の状態で褐色の色調を呈し、表面が硬すぎ、そして茹でた後も褐色を帯びた色調を呈した。乾燥温度が110℃のスパゲッティを保存3ヵ月後に実施例1と同様に試食したところ、表面が硬すぎて食感が悪かった。
【0180】
(実施例1および比較例8〜10:本発明の長期保存用麺類と従来の製造方法によって製造したLL麺との比較)
本発明の長期保存用麺類として、実施例1で製造した長期保存用麺類を用いた。
【0181】
従来の製造方法の1例として、実施例1と同様にして得られた茹でスパゲッティを、未殺菌の容器に充填し、容器内の空気を酸素濃度0.5%に窒素置換してから密封シールして、容器に密封されたスパゲッティを得た後、この容器密封スパゲッティを、100℃で40分間加熱殺菌した(比較例8)。
【0182】
従来の製造方法の別の例として、実施例1と同様にして得られた乾麺状態のスパゲッティをpH未調整の水中で98℃〜100℃で4分間茹で、水切りし、その後、半茹で麺状態のスパゲッティを20℃の1.4重量%乳酸水溶液に1分間浸漬して、pH調整された半茹で麺状態のスパゲッティとした。このスパゲッティのpHおよび水分含量を実施例1と同様にして測定したところ、pHは4.2であり、水分含量は54重量%であった。このpH調整された半茹で麺状態のスパゲッティを、未殺菌の容器に充填し、この容器ごと125℃の蒸気で2分間加圧加熱殺菌して、スパゲッティを完全な茹で麺状態とした。この完全な茹で麺状態のスパゲッティの水分含量を実施例1と同様にして測定したところ、水分含量は61重量%であった。無菌下で容器内の空気を酸素濃度0.5%に窒素置換してから殺菌済みの蓋をかぶせて密封シールして、容器に密封されたスパゲッティを得た(比較例9)。
【0183】
従来の製造方法のさらに別の例として、実施例1と同様にして得られた乾麺状態のスパゲッティをpH未調整の水中で98℃〜100℃で7分間茹で、45秒間流水で冷却してから水切りし、その後、茹で麺状態のスパゲッティを20℃の1.0重量%乳酸水溶液に1分間浸漬して、pH調整された茹で麺状態のスパゲッティとした。このスパゲッティのpHおよび水分含量を実施例1と同様にして測定したところ、pHは4.2であり、水分含量は60重量%であった。このスパゲッティを未殺菌の容器に充填し、この容器ごと135℃の蒸気で5秒間の加圧加熱殺菌を8回繰り返し、さらに100℃の飽和蒸気で15分間蒸煮を行って、スパゲッティを完全な茹で麺状態とした。この完全な茹で麺状態のスパゲッティの水分含量を実施例1と同様にして測定したところ、水分含量は61重量%であった。無菌下で容器内の空気を酸素濃度0.5%に窒素置換してから殺菌済みの蓋をかぶせて密封シールして、容器に密封されたスパゲッティを得た(比較例10)。
【0184】
得られたスパゲッティが長期保存され得るか否かを調べるために、これらのスパゲッティを20℃で保存した。製造日および保存6ヶ月目のスパゲッティをそれぞれ10g取り出し、標準寒天培地平板混釈法、GAM寒天培地平板混釈法およびポテトデキストロース寒天培地平板塗抹法により、好気性および嫌気性の一般生菌数および真菌数を測定した。それぞれスパゲッティ0.1g分の試料をシャーレにまいてインキュベートしたが、実施例1および比較例8〜10のいずれの場合も、生菌は検出されなかった。
【0185】
さらにこれらのスパゲッティについて、保存6ヶ月目の容器の密封状態を開放して電子レンジで500Wにて2分間(ただし、茹で麺1食分180gを温める場合)加熱し、15人の熟練したパネラーにより試食し、風味、食感、ほぐれやすさおよび色調を評価した。比較のために、長期保存用麺類を製造するのに用いたスパゲッティ乾麺と同じスパゲッティ乾麺300gを3.0リットルの水を含むなべで常圧下で100℃にて8分間茹で、水切りし、そして常圧下で常温にて30分間密封放置して官能評価基準用のスパゲッティを製造した。この官能評価基準用のスパゲッティを、本発明のスパゲッティと同様に、電子レンジで500Wにて2分間(ただし、茹で麺1食分180gを温める場合)加熱し、15人の熟練したパネラーにより試食した。結果を以下の表3に示す。
【0186】
【表3】


この結果、本発明の製造方法によって製造され、6ヶ月保存されたスパゲッティは、30分間しか保存していない官能評価基準用のスパゲッティの風味、食感および色調と同等の、極めて品質良好な風味、食感および色調を有し、かつほぐれやすいという利点があるスパゲッティであることが明らかになった。一方、従来の製造方法で製造されたスパゲッティはいずれも、茹でた後に加熱殺菌を施すことによって麺が湾曲し、ほぐれが悪く、風味および食感も官能評価基準用のスパゲッティと比較して極めて劣るという欠点があった。このことから、本発明の製造方法が従来の製造方法と比較して極めて良好な製造方法であることがわかった。
【0187】
(実施例4〜7および比較例11〜12:乾麺の茹で温度と風味、食感および色調との関係)
乾麺を茹でる温度を、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃または110℃としたこと以外は実施例1と同様にして、容器に密封されたスパゲッティを得た。
【0188】
風味、食感および色調を評価するために、これらのスパゲッティについて、製造日の容器の密封状態を開放して電子レンジで500Wにて2分間(ただし、茹で麺1食分180gを温める場合)加熱し、15人の熟練したパネラーにより試食した。
【0189】
比較のために、長期保存用麺類を製造するのに用いたスパゲッティ乾麺と同じスパゲッティ乾麺300gを3.0リットルの水を含むなべで常圧下で100℃にて8分間茹で、水切りし、そして常圧下で常温にて30分間密封放置して官能評価基準用のスパゲッティを製造した。この官能評価基準用のスパゲッティを、本発明のスパゲッティと同様に、電子レンジで500Wにて2分間(ただし、茹で麺1食分180gを温める場合)加熱し、15人の熟練したパネラーにより試食した。
【0190】
結果を以下の表4に示す。
【0191】
【表4】


その結果、乾麺を茹でる温度が100℃のスパゲッティは、官能評価基準用のスパゲッティの風味、食感および色調と同等の、極めて品質良好なスパゲッティであり、乾麺を茹でる温度が70℃〜90℃のスパゲッティも、官能評価基準用のスパゲッティの風味、食感および色調に極めて近い品質良好なスパゲッティであることが明らかになった。乾麺を茹でる温度が60℃では、茹で麺が粉っぽく、弾力がなく、品質の劣ったスパゲッティとなることが明らかとなった。乾麺を茹でる温度が110℃では、風味はよいが、食感が本発明の方法のものよりやや劣り、しかも、色調がやや褐色を帯びてしまって劣ることがわかった。このように、乾麺を茹でる温度を70℃〜100℃とすることにより、極めて食感の良い茹で麺が得られることがわかった。
【0192】
(実施例8:容器への充填後に軽い殺菌を施す工程を含む、本発明の長保存用麺類の製造方法)
実施例1と同様にして、pH4.2の茹で麺を得た。この茹で麺を、未殺菌であること以外は実施例1と同じ容器に、容器1個あたり180gずつ充填した。茹で麺に対する油の噴霧は行わなかった。次いで、そのまま、100℃の飽和蒸気を1分間、容器および茹で麺を飽和蒸気の中にさらして加熱することにより、容器および茹で麺の表面殺菌を行った。なお、加熱殺菌後の茹で麺の一部を採取して水分含量を実施例1と同じ方法で測定したところ、61重量%であり、加熱殺菌前と変化がなかった。次いで、実施例1と同様にして、無菌下で容器内の空気を酸素濃度約0.5%となるように窒素置換してから、殺菌済みの蓋をかぶせて密封シールし、容器に密封されたスパゲッティを得た。
【0193】
得られたスパゲッティが長期保存され得るか否かを調べるために、このスパゲッティを35℃で3ヶ月間保存した。製造日および保存3ヶ月目のスパゲッティをそれぞれ10g取り出し、標準寒天培地平板混釈法、GAM寒天培地平板混釈法およびポテトデキストロース寒天培地平板塗抹法により、好気性および嫌気性の一般生菌数および真菌数を測定した。それぞれスパゲッティ0.1g分の試料をシャーレにまいてインキュベートしたが、生菌は検出されなかった。
【0194】
さらにこのスパゲッティについて、保存3ヶ月目の容器の密封状態を開放して電子レンジで500Wにて2分間(ただし、茹で麺1食分180gを温める場合)加熱し、15人の熟練したパネラーにより試食し、風味、食感、ほぐれやすさおよび色調について、実施例1〜7と同様に官能評価を行った。
【0195】
この結果、実施例8の製造方法によって製造され、3ヶ月保存されたスパゲッティの風味、食感および色調は、30分間しか保存していない官能評価基準用のスパゲッティの風味、食感および色調にかなり近く、良好であった。実施例8の製造方法によって製造されたスパゲッティのほぐれも良好であった。これらの風味、食感および色調は、実施例1よりはやや劣るとはいえ、比較例8〜10と比較すると格段に優れている。このことから、無菌充填を行わずに、充填後に加熱殺菌する場合であっても、本発明の製造方法が従来の製造方法と比較して極めて良好な製造方法であることがわかった。
【0196】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明により、殺菌による品質劣化がなく、通常の茹で立ての麺と同等の風味および食感を有する長期保存可能な茹で麺類が提供される。
【出願人】 【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
【出願日】 平成17年1月20日(2005.1.20)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策

【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明

【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹

【公開番号】 特開2005−253460(P2005−253460A)
【公開日】 平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願番号】 特願2005−13393(P2005−13393)