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【発明の名称】 カムカム果汁を含有する食品用酸化防止剤
【発明者】 【氏名】遠藤 秀和

【氏名】大橋 且明

【氏名】尾畑 賢一

【要約】 【課題】本発明の課題は、外観および味を初めとする食品の品質の劣化を防止することを目的とした、従来使用されていた方法よりも安全性、有効性および簡便性の優れた食品酸化防止方法を提供することである。

【解決手段】カムカム果汁を食品に添加することにより、経時的な食品の品質の劣化を防止し得ることを見出した。また、カムカム果汁に加え無機塩を添加することによって相乗的な酸化防止効果が得られることを見出した。したがって上記課題は、1.カムカム果汁を含有する食品用酸化防止剤、2.無機塩を更に含むカムカム果汁含有食品用酸化防止剤、および3.これら食品用酸化防止剤を食品に添加する食品の酸化防止方法によって解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムカム果汁を含有する食品用酸化防止剤。
【請求項2】
更に無機塩を含む請求項1に記載の食品用酸化防止剤。
【請求項3】
無機塩が天然塩である請求項2に記載の食品用酸化防止剤。
【請求項4】
無機塩が塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化アンモニウムおよび塩化カルシウムから成る群より選択される無機塩またはそれらの混合物である請求項2に記載の食品用酸化防止剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の食品用酸化防止剤を食品に添加する食品の酸化防止方法。
【請求項6】
カムカム果汁の添加量が食品に対して0.3から60質量%の範囲である請求項5に記載の食品の酸化防止方法。
【請求項7】
無機塩の添加量が0.01から5質量%である請求項5または6に記載の食品の酸化防止方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な食品酸化防止剤および該酸化防止剤を用いる食品の酸化防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の酸化は、品質を低下させる要因であり、特に色調の劣化の主要な原因である。赤身肉とくにカツオ・マグロなどの運動性の大きい魚類に見られる濃紅色の肉は、血合い肉と呼ばれ、その色調の鮮やかさは消費者の購買意欲をそそる重要な要素となっている。血合い肉は、鮮紅色のオキシミオグロビンを多量に含有しているが、オキシミオグロビンは一般に酸化し易く、酸化体のメトミオグロビンが褐色を呈することから、これら赤身肉は酸化による色調の劣化が顕著である。酸化により色調が劣化した魚肉は味の劣化が生じていないにもかかわらず、極端に市場価値が低下することから、退色を防止し魚肉の市場価値を維持する方法の開発は、食品関連業者に多大なる恩恵をあたえるものであり、その開発が強く望まれている。
【0003】
食品の退色の防止方法としては、
1.アスコルビン酸、エリソルビン酸等の還元剤を用いてヘム色素中の鉄を還元する方法、
2.亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の発色剤を添加する方法、
3.一酸化炭素を用いてヘム色素を安定化させる方法(特許文献1)、
4.包装容器にいれ炭酸ガス置換(特許文献2)または窒素ガス置換(特許文献3)する方法、等が提案されそれらのうちいくつかは実際に実施されている。しかし、これら方法には問題がある。
【0004】
還元剤を用いる方法は持続性が短く、最終消費者にわたるまで十分に品質を維持することが困難である。更に、健康志向の向上とともに、これら合成化合物の食品への添加が敬遠される傾向がある。
【0005】
亜硝酸ナトリウムなどの発色剤は、人体への有害性が問題となっており、食品への使用が制限されている。
【0006】
一酸化炭素を用いてヘム色素を安定化させる方法は、現在食品衛生法に基づき魚肉への使用が禁止されている。
【0007】
ガス置換による酸化防止方法は、密閉容器を用いる必要があり、包装容器の形状が制限されるとともにコストがかかるという問題がある。
【特許文献1】特開平5−308923号公報
【特許文献2】特開平10−45177号公報
【特許文献3】特開2000−287612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、外観および味を初めとする食品の品質の劣化を防止することを目的とした、従来使用されていた方法よりも安全性、有効性および簡便性の優れた食品酸化防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意努力を重ねた結果、カムカム果汁を食品に添加することにより、食品の酸化を防止し得るとの知見を得た。かかる知見に基づき、より有効性の高い食品酸化防止方法を探索した結果、カムカム果汁に無機塩を加えることにより酸化防止効果が相乗的に増強されるとの驚くべき知見が得られた。したがって、上記課題は以下の手段によって解決される。
【0010】
(1)カムカム果汁を含有する食品用酸化防止剤。
(2)さらに無機塩を含む(1)に記載の食品用酸化防止剤。
(3)無機塩が天然塩である(2)に記載の食品用酸化防止剤。
(4)無機塩が塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化アンモニウムから成る群より選択される無機塩またはそれらの混合物である(2)に記載の食品酸化防止剤。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の酸化防止剤を食品に添加する食品の酸化防止方法。
(6)カムカム果汁の添加量が食品に対して0.3〜60質量%である(5)に記載の方法。
(7)カムカム果汁の添加量が食品に対して0.6〜30質量%である(6)に記載の方法。
(8)無機塩の添加量が0.01〜5質量%である(5)乃至(7)のいづれかに記載の方法。
(9)無機塩の添加量が0.01〜1質量%である(8)に記載の方法。
【0011】
「カムカム果汁を含有する食品用酸化防止剤」
「カムカム果汁」とはフトモモ科に属する植物camu−camu(Myrciaria dubia)の果実より得られた搾汁をいう。本明細書において特に断りがない限り「カムカム果汁」は原搾汁、加熱濃縮法または遠心力分離法・減圧濃縮法・逆浸透膜分離法などの非加熱濃縮法による濃縮果汁および濃縮還元果汁のいずれであってもよい。また、凍結乾燥、噴霧乾燥等により粉状化した果汁も「カムカム果汁」に含まれるものとする。尚、特に断りがない限り本明細書に記載されるカムカム果汁の質量は、原搾汁の質量に相当する量である。
【0012】
該組成物は液状、固体状のいずれであってもよい。また、食品に添加することが許容されている糖類、安定化剤、担体等を添加したものであってもよい。糖類として、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、還元水あめなどの糖アルコール、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、異性化糖、水あめ、各種オリゴ糖及びこれらの混合物が例示し得るが、これらに限定されるものではない。
【0013】
無機塩を更に含むカムカム果汁含有食品用酸化防止剤
上記カムカム果汁含有食品用酸化防止剤に無機塩を更に加えることによって、酸化防止効果が増強された酸化防止剤が得られる。
【0014】
「無機塩」とは炭素以外の元素から成る塩であって、食品に添加することが許容されているものをいう。塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化アンモニウムおよび塩化カルシウムが無機塩として例示し得るがこれらに限定されるものではない。
【0015】
「天然塩」とは天然の海水を原料として得られた混合塩をいう。
【0016】
カムカム果汁を含有する食品用酸化防止剤を食品に添加する食品の酸化防止方法
上記のカムカム果汁を含有する食品用酸化防止剤を食品に添加することにより、食品の酸化を防止し得る。「食品」とは、広く一般に食物として摂取されるものであり、加熱等の処理を施した加工品のみならず食物材料が含まれる。
【0017】
本発明による酸化防止に好適な食品としては、カツオ、鮭、赤魚、タコおよびエビ、サンマやアジの開き、ネギトロ、ならびにマグロの切り落としなどの魚介類が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
酸化防止剤を添加する方法は、食品加工材料に加える方法、食品の表面に塗布、噴霧する方法、食品に含浸させる方法などがあげられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の食品用酸化防止剤は、従来用いられていた酸化防止剤に比較してより有効性が高く、また、活性成分が天然果汁由来であることから合成化合物の使用に付随する健康上の好ましくない影響を回避することができる。
【0020】
本発明の食品の酸化防止方法は、食品が酸化することによって生じる品質の低下、例えば色調や味の劣化を長期間防止することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ネギトロ等のように非定型性の食品に適用する場合には、本発明の食品用酸化防止剤を食品に混合して添加するのが好ましい。この場合、カムカム果汁0.3〜60質量%、好ましくは0.06〜30質量%を加えて混和することが好適である。更に無機塩を加える場合には、0.01〜5質量%、好ましくは0.01〜1質量%を加えて混和する。
【0022】
本発明の酸化防止剤をマグロの切り落としのような定型性の食品に適用する場合には、本発明の食品用酸化防止剤を噴霧して用いるのが適している。食品の表面に均質に噴霧するためには、食品の質量あたり1%以上の溶液を噴霧することが好ましい。
【0023】
以下に本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
I.ネギトロにおける酸化防止試験
材料
魚肉として、市販されている冷凍赤身バチマグロを用いた。カムカム果汁は、ビタミンCを10%含有する6倍濃縮果汁を用いた。アセロラ果汁は、ビタミンCを9%含有する9倍濃縮果汁を用いた。天然塩は市販されている食用のものを用いた。該天然塩の組成は、塩化ナトリウム60%、塩化カリウム26%、硫酸マグネシウム10%、塩化マグネシウム1%であった。油脂としてコーン油由来の食用植物油脂を用いた。
【0025】
方法
1.試料の調製
冷凍赤身バチマグロを半解凍し、チョッパーを用いて粗挽ミンチと細挽ミンチを作製した。細挽ミンチに油脂を加え、30秒間混合した。混合後のミンチに規定量のカムカム果汁、アセロラ果汁、ビタミンCナトリウム塩、または無機塩を添加し、更に30秒間混合した。得られたミンチに、4分の1量の粗挽ミンチを加え、30秒間混合した。
【0026】
2.官能評価
上記のように調製した試料を25gずつシャーレに詰め10℃で一定時間放置した後に、色調を指標として各試料の外観を対照と比較して官能評価した。また、調製直後の試料について生臭さを指標として味の官能評価を行った。評価は以下のように7段階で評価し、パネラーが複数の場合はそれぞれの点数を総合して評価した。
外観の評価
【0027】
【表1】


味の評価
【0028】
【表2】


【0029】
結果
処理後72時間後の結果を表3および図1に示す。各試料の評価は、比較例3を基準に行った。表中の数値は、添加した成分の質量をマグロの質量を100として相対的に示す。なお、カムカム果汁およびアセロラ果汁の質量はそれぞれ6倍および9倍濃縮果汁の質量である。
【0030】
【表3】


【0031】
ビタミンCナトリウムを添加した試料(比較例2)に比較して等量のビタミンCを含有するカムカム果汁を添加した試料(実施例1)では退色の程度が少なく、生臭さも少なかった。また、ビタミンCと天然塩を加えた試料(比較例3)に比較してカムカム果汁および天然塩を加えた試料(実施例2)では、外観および味の変化が顕著に抑えられた。
【0032】
これらの結果から、カムカム果汁は相当量のビタミンCに比較してより優れた酸化防止作用を有すること、およびこの作用が天然塩を加えることによって相乗的に増強されることが確認された。
【0033】
一方、カムカム果汁同様にビタミンCを豊富に含有することが知られているアセロラ果汁および天然塩を添加した試料(比較例6)ではこのような退色の抑制効果は確認されなかった。
【0034】
カムカム果汁と無機塩の相乗効果をより詳細に検討した結果を表4に示す。
【0035】
【表4】


【0036】
対照試料に比較して、ビタミンCナトリウム塩を加えた試料(比較例1)では退色が抑制されたが、ビタミンCに無機塩を添加することによる相乗効果は認められなかった(比較例2〜5)。
【0037】
カムカム果汁に天然塩を加えた試料は、ビタミンCに天然塩を加えた試料に比較してより優れた退色の抑制効果を示した(実施例1)。この効果はカムカム果汁に塩化カリウム、塩化ナトリウムあるいは塩化マグネシウムを加えた試料すべてに共通して確認された(実施例2〜4)。
【0038】
以上の結果より、カムカム果汁による食品の酸化防止効果は、天然塩のみでなく広く一般の無機塩によって相乗的に増強されることが確認された。
【0039】
カムカムの果実は、あらゆる果実の中でも最もビタミンC(L-アスコルビン酸)含有量の多い果実の1つであることが知られている(Justi KCら、Arch Latinoam Nutr.2000; 50(4):405−408)。
【0040】
しかし、これら仮説に拘泥するものではないが、本実験の結果はカムカム果汁による食品酸化防止効果が、果汁中に含まれるアスコルビン酸以外の物質を介して発揮されるものであるか、あるいはこのような物質が果樹中のアスコルビン酸と相乗的に機能した結果であることを強く示唆している。
【0041】
II.マグロの切り落としにおける酸化防止試験
方法
半解凍のマグロのさくを厚さ5mmにカットし、カムカム果汁および天然塩、あるいはビタミンCおよび天然塩から成る組成物を水で希釈し、マグロの切り落としの表面上に3回に分けて噴霧した。組成物の希釈は、噴霧する量がマグロ100gあたり1mlとなるよう調製した。10℃で24時間後および48時間放置した後の外観(色調)の変化を経時的に観察した。その他の実験条件は上記ネギトロの試験と同一である。
【0042】
結果
カムカム果汁および天然塩からなる組成物は、対照に比較して濃度依存的に退色を顕著に防止した(表5 実施例1および2)。これに対して、ビタミンCおよび天然塩を含有する組成物も退色を抑制したが、カムカム果汁および天然塩から成る組成物に含有されるよりも多くのビタミンCを含有するにもかかわらず、その退色抑制効果は、カムカム果汁および天然塩から成る組成物に比較して弱いものであった。
【0043】
【表5】


【0044】
以上の結果は、本発明のカムカム果汁および無機塩を含む食品用酸化防止剤が、食品に混和するのみでなく、表面に塗布することによってもその効果を発揮することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ネギトロに、カムカム果汁、アセロラ果汁、天然塩、塩化カリウム、ビタミンCを単独あるいは混合して混和し、72時間後の色調の変化を写真像により比較するものである。
【図2】マグロ切り落としにカムカム果汁またはビタミンCおよび天然塩からなる組成物を噴霧した後48時間における色調の変化を写真像により比較するものである。
【出願人】 【識別番号】503328539
【氏名又は名称】MCフードテック株式会社
【出願日】 平成16年3月9日(2004.3.9)
【代理人】 【識別番号】100062007
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 義雄

【識別番号】100113332
【弁理士】
【氏名又は名称】一入 章夫

【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠

【識別番号】100103920
【弁理士】
【氏名又は名称】大崎 勝真

【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明

【公開番号】 特開2005−253307(P2005−253307A)
【公開日】 平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願番号】 特願2004−65123(P2004−65123)