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【発明の名称】 〆鯖の製法
【発明者】 【氏名】坂本 義信
【住所又は居所】東京都港区赤坂三丁目3番5号 株式会社極洋内

【氏名】前川 貴浩
【住所又は居所】東京都港区赤坂三丁目3番5号 株式会社極洋内

【要約】 【課題】ノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖を用いても、真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えた〆鯖であって、食味、食感に優れた美味しい〆鯖の製法の提供。

【解決手段】表皮2を真皮3から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖の表皮を真皮から剥皮して〆鯖1Aを製造する方法において、酢〆前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理することにより課題を解決できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖の表皮を真皮から剥皮して〆鯖を製造する方法において、酢〆前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とする〆鯖の製法。
【請求項2】
リパーゼおよびプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とする請求項1記載の〆鯖の製法。
【請求項3】
ノルウエー産の鯖を用いたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の〆鯖の製法。
【請求項4】
表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖を3枚に卸してフィレを作り、このフィレを塩〆液を用いて塩〆し、次いで酢〆液を用いて酢〆し、酢〆したフィレの表皮を真皮から剥皮して〆鯖を製造する方法において、前記酢〆前にリパーゼあるいはさらにフィレをプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の〆鯖の製法。
【請求項5】
表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの冷凍鯖を解凍した鯖を用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の〆鯖の製法。
【請求項6】
フィレをリパーゼあるいはさらにプロテアーゼを添加した塩〆液を用いて処理することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の〆鯖の製法。
【請求項7】
フィレに対してリパーゼを0.01〜0.3質量%添加した処理液を用いて処理することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の〆鯖の製法。
【請求項8】
総酸(酢酸換算)2〜3(%)の酢〆液を用いて酢〆することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の〆鯖の製法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、〆鯖の製法に関するものであり、さらに詳しくは表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖の表皮を、真皮を傷つけることなく剥いて〆鯖を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、〆鯖は、例えば、次のようにして製造されている。
冷凍鯖の場合は解凍し、生鯖の場合はそのまま、3枚に卸してフィレを作り、腹骨取り後、塩〆液を用いて塩〆し、次いで酢〆液を用いて酢〆し、水切り後、酢〆したフィレの表皮を真皮から剥皮し、選別した後、真空包装し、凍結、箱詰めするなどして貯蔵、出荷される。
【0003】
図3(イ)に示すように塩〆、酢〆された鯖(フィレ)1は、最外層に半透明の硬い表皮2があり、その下に鯖特有の縞模様と色を有する真皮3があり、真皮3の下に身4が存在している。表皮2は硬いために噛み切れず、食感の低下を招き、商品価値を落とす要因となるため、前記のように酢〆後、表皮2を真皮3から剥皮して商品化することが行われている。
【0004】
日本国産の鯖の場合は塩〆、酢〆された後、表皮2が真皮3から剥皮し易く、真皮3を傷つけることなく表皮2を容易に剥皮することができるので前記従来の製法により、真皮2に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮2を備えた良好な〆鯖が製造されていた。
しかし、ノルウエー産、アイスランド産などの北大西洋産などの鯖の場合は、塩〆、酢〆された後、表皮2が真皮3から剥皮し難く、図3(ロ)に示すように表皮2を矢印のように剥皮すると同時に真皮3の一部5が剥皮してしまい、図3(ハ)に示すように真皮3に剥皮傷6がついてしまい、図4に示すように剥皮傷6が多い、鯖特有の縞模様7が一部無くなった、外観の悪い、商品価値の低いものになってしまうという問題があった。
【0005】
本発明者等は、先に、鯖を酢〆する前にプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理して、真皮を傷つけずに表皮を剥皮することを提案した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−299464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、本発者等の提案した前記〆鯖の製法を改良し、ノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖を用いても、真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備え、脂っぽさが低減され、食味、食感に優れた美味しい〆鯖を従来の製造工程を用いて容易に経済的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意研究した結果、表皮を真皮から剥皮するのが困難なノルウエー産、アイスランド産などの鯖を酢〆前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理することにより、好ましくはリパーゼを添加した塩〆液を用いて処理することにより、表皮が真皮から剥皮し易くなり、真皮を傷つけることなく表皮を容易に剥皮することができ、真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えた、脂っぽさが低減され、食味、食感に優れた美味しい〆鯖を得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明の請求項1は、表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖の表皮を真皮から剥皮して〆鯖を製造する方法において、酢〆前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とする〆鯖の製法に関するものである。
【0009】
本発明の請求項2は、請求項1記載の〆鯖の製法において、リパーゼおよびプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3は、請求項1あるいは請求項2記載の〆鯖の製法において、ノルウエー産の鯖を用いたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の〆鯖の製法において、表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖を3枚に卸してフィレを作り、このフィレを塩〆液を用いて塩〆し、次いで酢〆液を用いて酢〆し、酢〆したフィレの表皮を真皮から剥皮して〆鯖を製造する方法において、前記酢〆前にリパーゼあるいはさらにフィレをプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の〆鯖の製法において、表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの冷凍鯖を解凍した鯖を用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の〆鯖の製法において、フィレをリパーゼあるいはさらにプロテアーゼを添加した塩〆液を用いて処理することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項7は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の〆鯖の製法において、フィレに対してリパーゼを0.01〜0.3質量%添加した処理液を用いて処理することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項8は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の〆鯖の製法において、総酸(酢酸換算)2〜3(%)の酢〆液を用いて酢〆することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1は、表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖の表皮を真皮から剥皮して〆鯖を製造する方法において、酢〆前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とするものであり、表皮が真皮から剥皮し易くなり、真皮を傷つけることなく表皮を容易に剥皮することができ、真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えた、脂っぽさが低減され、食味、食感に優れた美味しい商品価値の高い〆鯖を従来の製造工程を用いて容易に経済的に製造することができる、という顕著な効果を奏する。
【0017】
本発明の請求項2は、請求項1記載の〆鯖の製法において、リパーゼおよびプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とするものであり、リパーゼおよびプロテアーゼの相乗効果により表皮が真皮からより剥皮し易くなる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0018】
本発明の請求項3は、請求項1あるいは請求項2記載の〆鯖の製法において、ノルウエー産の鯖を用いたことを特徴とするものであり、ノルウエー産の鯖は捕獲量が多く輸入量も多いので容易に経済的に入手できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0019】
本発明の請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の〆鯖の製法において、表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖を3枚に卸してフィレを作り、このフィレを塩〆液を用いて塩〆し、次いで酢〆液を用いて酢〆し、酢〆したフィレの表皮を真皮から剥皮して〆鯖を製造する方法において、前記酢〆前にリパーゼあるいはさらにフィレをプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とするものであり、鯖の取り扱い性が容易になり、しかも、従来の製造工程をあまり変えることなくリパーゼあるいはさらにプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理して、表皮を真皮から容易に剥皮でき、真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えた〆鯖を製造できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0020】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の〆鯖の製法において、表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの冷凍鯖を解凍した鯖を用いることを特徴とするものであり、保存性に優れ、使用時には解凍して使用できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0021】
本発明の請求項6は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の〆鯖の製法において、フィレをリパーゼあるいはさらにプロテアーゼを添加した塩〆液を用いて処理することを特徴とするものであり、従来の製造工程を全く変えず、そのまま使用して処理できる、という顕著な効果を奏する。
【0022】
本発明の請求項7は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の〆鯖の製法において、フィレに対してリパーゼを0.01〜0.3質量%添加した処理液を用いて処理することを特徴とするものであり、品質が安定した商品価値の高い〆鯖を容易に確実に製造できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【0023】
本発明の請求項8は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の〆鯖の製法において、総酸(酢酸換算)2〜3(%)の酢〆液を用いて酢〆することを特徴とするものであり、身がしまり、表皮を真皮からより容易に剥皮できる、というさらなる顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1(イ)〜(ハ)は、本発明の製法によりノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖(フィレ)を酢〆する前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理した鯖(フィレ)の表皮を真皮から剥皮する状態を模式的に説明する説明図であり、図2は図1に示すようにして剥皮した鯖(フィレ)を説明する説明図である。
図1(イ)に示すように本発明の製法によりノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖(フィレ)を酢〆する前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理した鯖(フィレ)1Aは、最外層に半透明の硬い表皮2があり、その下に鯖特有の縞模様と色を有する真皮3があり、真皮3の下に身4が存在している。図1(ロ)に示すように鯖(フィレ)1Aの表皮2を矢印のように剥皮すると真皮3を傷つけることなく容易に剥皮でき、図1(ハ)に示すように真皮3に剥皮傷のない、そして図2に示すように、真皮3に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様7と色を有する真皮3を備えた、外観の優れた商品価値の高い〆鯖を得ることができる。
【0025】
ノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖は、国産の鯖と比較すると、国産の鯖の縞模様がぼけていて薄いのに対してノルウエー産、アイスランド産などの鯖は縞模様が明確ではっきりしており、また、蛋白質の含有量はあまり変わらないが、水分/油分の比率が異なる。したがって、その縞模様を見れば両者を判別することができるが、ノルウエー産、アイスランド産などの鯖は、国産の鯖と比較すると水分が少なく、油分が多いので水分/油分の比率を測定することにより両者を判別することができる。
【0026】
表皮と真皮との結合は蛋白質や脂質などが関係した複雑な構造からなる。北大西洋産などの鯖の場合に表皮が真皮から剥皮し難い理由は、表皮と真皮の結合が強過ぎるのかあるいは部分的に弱いためなのかは定かではないが、酢〆する前にリパーゼあるいはさらにプロテアーゼを添加した処理液を用いて処理することにより、表皮が真皮から剥皮し易くなり、真皮を傷つけることなく表皮を容易に剥皮できるようになるので前記従来の製法により、真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備え、脂っぽさが低減され、食味、食感に優れた美味しい良好な〆鯖を得ることができる。
【0027】
本発明で用いるリパーゼはエステラーゼの一種で脂質分解酵素であり、グリセロールエステルの加水分解を触媒する酵素であればよく特に限定されるものではなく、例えば市販品を用いることができる。
市販品のリパーゼの具体例としては、例えば、リパーゼA−10FG(Rhizopus japonicus由来、ナガセケムテック社製、反応部位 トリグリセリド1位と2位)、リパーゼA「アマノ」6(Aspergillusniger由来、天野エンザイム社製、反応部位 α位、長鎖、中鎖脂肪酸)、リパーゼM「アマノ」10(Canadia rugosa由来、天野エンザイム社製、反応部位 α位、β位、長中短鎖)、リパーゼF−AP15(Penicillium camembertii由来、天野エンザイム社製、反応部位モノグリセリド、ジグリセリド)、リパーゼAY「アマノ」30G(Mucor javanicus由来、天野エンザイム社製、反応部位 トリアシルグリセリドのα位、β位)、リパーゼ和光(豚膵臓由来、仙台和光純薬社製、反応部位位置特性性ない2位の分解速度遅い)などを挙げることができる。これらは単独でもあるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0028】
本発明で用いるプロテアーゼは蛋白質分解酵素であり、ペプチド結合の加水分解を触媒する酵素であればよく特に限定されるものではなく、例えば市販品を用いることができる。
市販品のプロテアーゼの具体例としては、例えば、精製パパインF(商品名、アサヒビール食品社製)、精製パパインFL−3(商品名、アサヒビール食品社製)、AKアーゼIK(商品名、青葉化成社製)、プロレザ−FG−F(商品名、天野製薬社製)、イカクリーンFP(商品名、エフシー化学社製)などを挙げることができる。これらは単独でもあるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0029】
本発明においてリパーゼとプロテアーゼを併用することができる。併用すると両者の相乗効果により表皮が真皮からより剥皮し易くなり、またリパーゼの作用により脂っぽさが低減され、食味、食感に優れた美味しい商品価値の高い〆鯖を提供できる。
リパーゼとプロテアーゼの混合比率(質量比)は約99:1〜1:99の範囲でよく、使用目的により混合比率を適宜決めることが好ましい。
【0030】
〆鯖は前記のように、通常、冷凍鯖の場合は室温で1晩放置するとか、解凍装置を用いて解凍するとか、水中に入れて解凍するなどの公知の方法を用いて解凍し、生鯖の場合はそのまま、公知の機械を用いるか、あるいは手作業で3枚に卸してフィレを作り、残った腹骨などを手作業で取り、よく取り除かれているかをチェックした後、塩〆液を用いて塩〆し、次いで酢〆液を用いて酢〆し、水切りした後、酢〆したフィレの表皮を真皮から剥皮し、不良品などを選別して除いた後、真空包装し、約−30℃以下で約30分〜1晩で凍結し、箱詰めするなどして製造される。
リパーゼを添加した処理液を用いて処理するのは、前記酢〆前であればよく、例えば、塩〆前、あるいは塩〆する際、あるいは塩〆後、あるいはこれらの2つ以上の組み合わせにおいて処理することができる。
【0031】
塩〆前、あるいは塩〆する際、あるいは塩〆後、あるいはこれらの2つ以上の組み合わせにおいて、リパーゼを添加した処理液を用いて処理すれば、処理後、リパーゼを失活させる工程を新たに設けなくても酢〆液で酢〆する際の条件下でリパーゼを失活させることができる利点がある。
これらの中でも、リパーゼを添加した塩〆液を用いて処理する方法は、従来の製造装置を変えることなく、そのまま使用して、リパーゼによる処理ができるので、さらに好ましい。
【0032】
塩〆液中のリパーゼの濃度や処理液中のリパーゼの濃度は特に限定されるものではないが、処理するフィレに対してリパーゼを0.01〜0.3質量%、好ましくは、0.05〜0.2質量%添加した処理液を用いて処理することが望ましい。リパーゼが0.01質量%未満では効果がでない恐れがあり、未だ表皮が真皮から剥皮し難く真皮を傷つけることなく表皮を剥皮できない恐れがある。リパーゼが0.3質量%を超えると表皮を真皮から剥皮し易くなり剥皮効果は良好となるが、油脂の加水分解が進み過ぎる、身が柔らかになり過ぎる恐れがあり、食味、食感が悪化し、美味しさが損なわれる恐れがある。
【0033】
リパーゼを添加した処理液を用いて処理する際の処理温度、処理時間、塩分濃度、pHなども特に限定されるものではない。
しかし処理温度は約0〜60℃であるとリパーゼの酵素活性が高いので好ましい。0℃未満では酵素活性が低く処理時間が長くなり過ぎる恐れがあり不経済となり好ましくなく、約60℃を超えるとリパーゼの酵素活性が低下したり失活する恐れがあるので好ましくない。本発明においてはこれらのことを考慮して約5℃程度が好ましく使用される。
【0034】
処理時間は約18〜24時間程度が好ましく、18時間未満であると前記剥皮効果が良好とならない恐れがあり、また18時間未満であると塩〆液を用いる場合、フィレから水分を充分だすことができず塩〆が不十分で〆まらない恐れがあり、24時間を超えると剥皮効果は良好となるが、身が柔らかになり過ぎ、食味、食感が悪化し、美味しさが損なわれる恐れがある。
【0035】
塩分濃度は約0〜20質量%が好ましい。塩〆液とは別の処理液にリパーゼを添加して処理する際には塩分を添加せず塩分濃度0質量%であってもよい。塩〆液にリパーゼを添加する場合は塩分濃度は約1〜20質量%が好ましく、さらに約8〜20質量%がより好ましい。この場合、1質量%未満では塩〆効果がでない恐れがあり、20質量%を超えると塩分が多過ぎて塩辛くなり食味、食感が悪化し、美味しさが損なわれる恐れがある。
【0036】
塩〆液や処理液のpHは3〜10程度が好ましく、6.5〜7.0がさらに好ましい。pHが3未満あるいは10を超えるとリパーゼの酵素活性が損なわれるので好ましくない。
【0037】
塩〆後、次いで酢〆液を用いて酢〆を行う。酢〆液は砂糖、グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダ、アミノ酸、塩などの調味料、酢酸、クエン酸などの食用有機酸などを適宜の割合で含む調味液である。
本発明においては公知の配合の酢〆液を使用することができる。
酢〆液を用いて酢〆する際の処理温度、処理時間、調味料濃度、pHなども特に限定されるものではない。
しかし処理温度は約0〜60℃が好ましく、0℃未満では処理時間が長くなり過ぎる恐れがあり不経済となり好ましくなく、約60℃を超えると腐敗の恐れもでてくるので好ましくない。本発明においてはこれらのことを考慮して約5℃程度が好ましく使用される。
【0038】
処理時間は約18〜40時間程度(1晩〜2晩程度)が好ましく、18時間未満であると酢〆が不十分で〆まらない恐れがあり、40時間を超えると食味、食感が悪化し、美味しさが損なわれる恐れがある。
【0039】
各調味料の濃度は少なすぎても多すぎても美味しさに係わるので、食味、食感がよく、美味しさがでるように適宜の濃度に調整する必要がある。
【0040】
酢〆液の総酸(酢酸換算)は2〜3(%)程度が好ましく、2〜2.5がさらに好ましい。総酸が2%未満であると良好な酢〆ができない恐れがあり、また美味しさも損なわれる恐れもあり、総酸が3%を超えると良好な酢〆ができない恐れがあり、酢〆が良好になされないと、身が〆って適度な硬度にならないので、酢〆後、剥皮する際、表皮が真皮から剥皮し難く、真皮を傷つけることなく表皮を剥皮できない恐れがある。
【0041】
なお総酸(酢酸換算)(%)は次のようにして測定、計算された値である。
試料5mlをホールピペットで100ml容のフラスコにとり、約10mlの水を加えて希釈する。次に0.1フェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加えた後、攪拌しながら水酸化ナトリウム溶液で微桃色になるまで滴定する。そして次の式で総酸(酢酸換算)(%)を計算する。
総酸(酢酸換算)=(60×N)/(1000)×V×100/S×F
=(60×N×V×100×F)/1000×S
=(6×N×V×F)/S
但し、N:水酸化ナトリウム溶液の規定度
V:滴定値(ml)
S:サンプル量(ml)
F:水酸化ナトリウム溶液の規定度のファクター
【0042】
リパーゼを添加した処理液やリパーゼを添加した塩〆液を用いて処理した後、酢〆すれば表皮を真皮から剥皮し易くなるので、真皮を傷つけることなく表皮を剥皮できる。表皮を真皮から剥皮するのは、手作業で行っても、専用のピーラーなどの機械を用いて自動的に行っても、あるいは手作業と機械を組み合わせて行ってもよい。
【0043】
以上の説明は、リパーゼを用いた場合について行ったが、リパーゼとプロテアーゼを併用する場合についても適用できる。
【0044】
以下本発明を実施例および比較例により、具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しないかぎり本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
ノルウエー産原料冷凍鯖400kgを解凍装置を用いて5℃、20時間解凍した後、3枚に卸してフィレ228kgを作り、残った腹骨などを手作業で取り、よく取り除かれているかをチェックした後に、下記に示した組成例に準じて調製した塩〆液を用いて塩〆する。すなわち、表1に示した種類の市販のリパーゼを用い、表1に示したリパーゼ濃度の塩〆液で処理温度5℃、処理時間16〜20時間の条件で塩〆し、塩〆後の身質を食すなどにより〆具合(身質)をチェックして、結果を表1に示した。
次いで、塩〆したフィレを下記に示した組成例(総酸2.5%)に準じて調製した酢〆液であって表1に示した総酸を有する酢〆液を用いて処理温度5℃、処理時間16〜20時間の条件で酢〆し、水切りした後、酢〆したフィレの表皮をピーラーを用いて真皮から剥皮し、下記評価基準により剥皮の状態を調べて結果を表1に示した。
【0046】
剥皮後、不良品などを選別して除いた後、原料からの歩留りを測定した結果、日本国産鯖を使用した場合の原料からの歩留りとほぼ同じであった。
剥皮後、所定のプラスチック袋中に真空包装し、約−30℃以下で1晩で凍結し、箱詰めした。
【0047】
凍結した製品〆鯖を解凍して、パネルメンバー20人で真皮に剥皮傷がないかどうか、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えているかどうか、食して食味、食感に優れた美味しい〆鯖であるかどうかを官能試験を行って下記官能試験評価基準により評価した。評価した結果を表1に合わせて示す。
【0048】
塩〆液の組成例(フィレ228kgに対して用いる配合):
水 325.34kg
並塩 44.88kg(塩分12質量%)
リパーゼ和光 0.23kg(フィレに対して0.1質量%)
リンゴ酸ソルト(1%)3.74kg
合計 374.07kg
【0049】
酢〆液の組成例(フィレ228kgに対して用いる配合):
水 200kg
上白糖 9.14kg
並塩 3.04
醸造酢(MHV-310) 8.67kg
氷酢酸 4.48kg
グルソー 0.68kg
イノシン酸ソーダ(リボタイド) 0.04kg
コハク酸ソーダ 0.173kg
アミノ酸調味料(味ミックス) 0.152kg
フジリチンGT−20 0.332kg
クエン酸 0.576kg
酢酸ナトリウム 2.273kg
合計 229.556kg
【0050】
剥皮の評価基準:
◎:真皮に剥皮傷が全くなく、鯖特有の美しい縞模様と色を有する真皮を備えており、商品価値が非常に高い。
○:真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の美しい縞模様と色を有する真皮を備えており、商品価値が高い。
△:真皮に剥皮傷があるが少なく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えており、商品価値がある。
×:真皮に多くの剥皮傷があり、鯖特有の縞模様が損傷を受けており、商品価値がない。
【0051】
官能試験評価基準:
◎:真皮に剥皮傷が全くなく、鯖特有の美しい縞模様と色を有する真皮を備えており、食味、食感に優れた美味しい〆鯖である。
○:真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の美しい縞模様と色を有する真皮を備えており、食味、食感に優れた美味しい〆鯖である。
△:真皮に剥皮傷があるが少なく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えており、食味、食感に優れた美味しい〆鯖である。
×:食味、食感に優れた美味しい〆鯖であるが真皮に多くの剥皮傷があり、鯖特有の縞模様が損傷を受けており、商品価値がない。
【0052】
[実施例2〜7]
表1に示した種類の市販のリパーゼを表1に示した濃度で用いた以外は実施例1と同様にして塩〆し、塩〆後の身質の〆具合(身質)をチェックして、また、実施例1と同じ酢〆液を用いて同じ条件で酢〆し、水切りした後、酢〆したフィレの表皮をピーラーを用いて真皮から剥皮し、実施例1と同様にして剥皮の状態を調べ、また実施例1と同様にして凍結した製品〆鯖を解凍して、真皮に剥皮傷がないかどうか、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えているかどうか、食して食味、食感に優れた美味しい〆鯖であるかどうかを官能試験を行って、これらの結果を表1に示した。
【0053】
[実施例8]
表1に示した種類の市販のリパーゼを0.05質量%、さらにプロテアーゼ(AKアーゼIK:青葉化成社製)を0.01質量%配合した以外は実施例1と同様にして塩〆し、塩〆後の身質の〆具合(身質)をチェックして、また、実施例1と同じ酢〆液を用いて同じ条件で酢〆し、水切りした後、酢〆したフィレの表皮をピーラーを用いて真皮から剥皮し、実施例1と同様にして剥皮の状態を調べ、また実施例1と同様にして凍結した製品〆鯖を解凍して、真皮に剥皮傷がないかどうか、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えているかどうか、食して食味、食感に優れた美味しい〆鯖であるかどうかを官能試験を行って、これらの結果を表1に示した。
【0054】
(比較例1)
日本国産鯖を用いてリパーゼを用いなかった以外は実施例1と同様にして〆鯖を製造し、評価した結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
ノルウエー産原料冷凍鯖を用いてリパーゼを用いなかった以外は実施例1と同様にして〆鯖を製造し、評価した結果を表1に示す。
【0056】
【表1】


【0057】
表1から、実施例1〜8の〆鯖は1級品〜3級品としての商品価値があるものであり、リパーゼあるいはさらにプロテアーゼを添加した塩〆液を用いて処理すると真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の美しい縞模様と色を有する真皮を備えた、食味、食感に優れた美味しい〆鯖が得られることが判り、また、実施例1〜8の〆鯖は脂っぽさが低減されている。
それに対して、日本国産鯖を用いると(比較例1)リパーゼを用いなくても、真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の美しい縞模様と色を有する真皮を備えた、食味、食感に優れた美味しい〆鯖が得られる。しかし、ノルウエー産原料冷凍鯖を用いて(比較例2)、リパーゼを用いないと、食味、食感に優れ、美味しい〆鯖であるが真皮に多くの剥皮傷があり、鯖特有の縞模様が損傷を受けており、商品価値がない〆鯖しか得られないことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、表皮を真皮から剥皮するのが困難な北大西洋産などの鯖の表皮を真皮から剥皮して〆鯖を製造する方法において、酢〆前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理することを特徴とするものであり、表皮が真皮から剥皮し易くなり、真皮を傷つけることなく表皮を容易に剥皮することができ、真皮に剥皮傷がなく、鯖特有の縞模様と色を有する真皮を備えた、脂っぽさが低減され、食味、食感に優れた美味しい商品価値の高い〆鯖を従来の製造工程を用いて容易に経済的に製造することができる、という顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(イ)〜(ハ)は、本発明の製法によりノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖(フィレ)を酢〆する前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理した鯖(フィレ)の表皮を真皮から剥皮する状態を模式的に説明する説明図である。
【図2】図1に示すようにして剥皮した鯖(フィレ)を説明する説明図である。
【図3】(イ)〜(ハ)は、従来の製法によりノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖(フィレ)の表皮を真皮から剥皮する状態を模式的に説明する説明図である。
【図4】図3に示すようにして剥皮した従来の鯖(フィレ)を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖(フィレ)
1A 本発明の製法によりノルウエー産、アイスランド産などの表皮が真皮から剥皮し難い鯖(フィレ)を酢〆する前にリパーゼを添加した処理液を用いて処理した鯖(フィレ)
2 表皮
3 真皮
4 身
5 真皮の一部
6 剥皮傷
7 縞模様
【出願人】 【識別番号】390023456
【氏名又は名称】株式会社極洋
【住所又は居所】東京都港区赤坂3丁目3番5号
【出願日】 平成16年3月2日(2004.3.2)
【代理人】 【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄

【公開番号】 特開2005−245248(P2005−245248A)
【公開日】 平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願番号】 特願2004−57785(P2004−57785)