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【発明の名称】 :喫煙によって生ずるDNA酸化損傷を抑制するに有効な食品組成物
【発明者】 【氏名】大野 由美子

【氏名】大野 智

【氏名】鈴木 信孝

【氏名】井上 正樹

【要約】 【課題】生体に害を及ぼす酸化ストレスの一つである喫煙や受動喫煙によるDNA酸化損傷を、抑制せしめるに有効な食品組成物を提供する。

【解決手段】松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物を有効成分とする喫煙によって生ずるDNA酸化損傷抑制用食品組成物であって、喫煙によって生ずるDNA酸化損傷を尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標とし、尿中に排出される8-OHdGの量を低下せしめるものである。該食品組成物は更に抗酸化性物質を含有させることによって喫煙によって生ずるDNA酸化損傷抑制効果を増大させることが出来る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロアントシアニジンを含有する植物抽出物を有効成分とする、喫煙によって生ずるDNA酸化損傷の抑制用食品組成物。
【請求項2】
プロアントシアニジンを含有する植物抽出物が松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物から選ばれた1種以上である請求項1記載の食品組成物。
【請求項3】
尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標とし、尿中に排出される8-OHdGを低下せしめるものである請求項1または2記載の食品組成物。
【請求項4】
プロアントシアニジンを含有する植物抽出物が、フランス海岸松樹皮抽出物である請求項1、2または3記載の食品組成物。
【請求項5】
プロアントシアニジンを含有する植物抽出物を20mg/日〜120mg/日となるように配合してなる、請求項1、2、3または4記載の食品組成物。
【請求項6】
更に抗酸化性物質を含有する請求項1、2、3、4または5記載の食品組成物。
【請求項7】
抗酸化性物質が水溶性抗酸化物質のビタミンC、脂溶性抗酸化物のスクワレン、ビタミンEおよびカロテン類から選ばれる一種以上である請求項6記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は喫煙によって生ずるDNA酸化損傷を抑制するに有効な食品組成物に関し、喫煙によって生ずるDNA酸化損傷を尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標としたとき、松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上を有効成分とする食品組成物を摂取することで、喫煙者の尿中8- OHdGを効果的に低下せしめることに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ガンをはじめ生活習慣病の90%以上は、体内における活性酸素やそれに由来するフリーラジカル・過酸化脂質等による酸化ストレスが発症の主要因となっていることが明らかにされてきている。
疾病・老化の予防のためにはこの酸化ストレスをコントロールし、小さくすることが重要である。
呼吸により吸収される酸素の約2%が活性酸素になるといわれるが、時には10%にも達することがある。本来活性酸素は、生体内ではエネルギーを産生する際や、マクロファージが病原菌などの外界から侵入した異物を攻撃したり、また生体内で不要となった細胞を処理するときにも発生するなど、生体維持に必要かつ有用なものである。こうして生じた活性酸素群のうち、抗酸化システムで捕捉しきれなかった余剰の活性酸素は、脂質やたんぱく質・酵素や、遺伝情報をになう遺伝子DNAを酸化し損傷を与え、生体の構造や機能を乱し、種々の病気を引き起こし、老化を早めている。実際に、ガンや生活習慣病といわれる動脈硬化、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、痴呆、糖尿病、白内障などが、活性酸素による酸化ストレスが原因で起っていることがわかってきている。
このほか、生活習慣の中でも、過食、深酒、喫煙、激しい運動、睡眠不足、過度の身体的・精神的ストレス、薬物摂取、自動車の排気ガスの吸引、紫外線・放射線暴露など種々の原因により活性酸素群が発生し、酸化ストレスとなり生体に害を及ぼす。
【0003】
遺伝子DNAの構成成分の一つであるデオキシグアノシン(dG)が、上記の種々の酸化ストレスにより生じたヒドロキシラジカルにより酸化を受け、8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を生成することが、1984年葛西らにより見出された(例えば非特許文献1参照)。この8-OHdGは、DNA中などに生成されるが、定常的に修復酵素系で異物として検出され、正常塩基と入れ替わりに切出されたのち、生体内で代謝されることなく、血液を通じて最終的に尿中に排出されることから、酸化ストレス指標としての要件を満たしている。したがって、この濃度(変化)を測定すれば、生体内での総合的な酸化ストレスの大きさ、変化を推定できるのである(例えば非特許文献2参照)。
非特許文献2には酸化による2’-dGから8-OHdGの生成が示されている(図1参照)。
【0004】
喫煙は喫煙者ばかりか、周囲の人(受動喫煙者)の健康に悪影響を与えるため、世界的に大きな問題である。厚生労働省はホームページで、“平成14年6月「分煙効果判定基準策定検討会報告書概要」1.受動喫煙の健康への影響”の中で、喫煙者の喫煙条件は、人によって大きく異なリ、個々の喫煙者によって発生する粒子状やガス状の化学物質量は大きく異なる。しかし、たばこの煙には、無機ガス、有機酸、アルデヒド、ケトン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ピリジン、フラン、インドール等の複素環化合物、多環芳香族炭化水素等を含んでおり、この大部分は健康に影響を与える可能性がある旨、報告されている(例えば非特許文献3参照)。
【0005】
また、伊佐山 芳郎によると、日本人男性の喫煙率は、1984年の男性66%、女性14%から1998年の男性55.2%、女性13.3%と男性は下がってはいるが、女性の喫煙率の低下が低い旨報告している(例えば非特許文献4参照)。また、日本人の喫煙率は欧米各国と比較すると依然かなり高い割合を占めている。一方多くの知見により喫煙と肺気腫や肺癌の因果関係は明らかである。たばこの煙中に含まれるニトロソアミンのベンツピレンは、生体内で代謝されるとベンツピレンジオールエポキシドと称される「究極発がん物質」となり、細胞の遺伝子を傷つけて発癌の原因となる。
【0006】
Daniel F.Church & William A.Pryorは、タバコの煙中のフリーラジカルの化学と、それらの毒性学的関連性を研究している(例えば非特許文献5参照)。その報告によると、タバコの煙にはタール部分と煙の部分の2つにフリーラジカル集団が含まれている。このタール相にはキノン/ハイドロキノンの複合体から成る比較的安定なフリーラジカルが含まれていているが、時として水素パーオキシドやヒドロキシパーオキシドを生成し、in vivoでDNAと反応する。タール相は3000種類以上の化学物質を含むが、約10%程度が同定されているもののその多くは未同定である。また、煙の部分にはタール相のラジカルよりも反応性の高い酸素と炭素から成るフリーラジカルを含み、NOをNO2に酸化する。喫煙によって生成した酸化剤のNOとNO2 はチオールをジスルフィドに酸化する。結論として、喫煙による煙とタールは肺中にフリーラジカルの濃度を高めるので、DNA,RNA,脂質などが攻撃ターゲットとなり、肺気腫や肺癌その他の疾患の原因となると推定することができることを示している。
また駿河台日本大学 救急医学教室助教授 長尾 建、同大学病院循環器科 川保 博文は、「喫煙は冠動脈疾患に対してリスクファクターともなっている。この原因はタバコの煙には多量のフリーラジカルが含まれており、冠動脈の血管内皮細胞の機能を傷害(血管弛緩作用を有するNOの産生・放出を障害)させ、冠収縮を惹起しやすくなることによると言われる。また、タバコのニコチンはカテコールアミンの分泌を亢進させ、肝臓でのトリグリセリドの合成を促進し、悪玉コレステロールといわれるLDL−コレステロールを増加し、善玉コレステロールであるHDL−コレステロールを減少させる。さらに、喫煙はマクロファージへのHDLの取り込みを促進し、泡沫細胞化を促し、動脈硬化を進展させる。体内に取込まれた一酸化炭素は酸素よりもヘモグロビンに結合しやすく、血管内細胞を酸欠状態にして機能障害を惹起させ、血液粘度を高め血小板凝集能を亢進させたりして、動脈硬化の発生、進展に強く関与している」旨報告している(例えば非特許文献6参照)。
【0007】
又、喫煙による酸化ストレスの程度を簡便に測定する検討は、前述の尿及び血球中の8-OHdGを測定する研究および血漿中のアラキドン酸代謝物である脂質酸化物のF2-isoprotaneを測定した研究が報告されている。
即ち、Haruko Kiyosawa ほかは、20-25才の健康な男性ボランティアに対し、10分間で2本のタバコを喫煙させ、喫煙前と喫煙10分後の血液を採取し、白血球中の8-OHdG量をelectrochemical scanを備えたHPLC(高速液体クロマトグラフィ−)を用いて測定し、8-OHdG/106 dG比を求め、喫煙前のこの比は、平均値が3.3±0.8 であったのに対して喫煙後は5.1±2.5と有意に高かったこと、このことから喫煙は比較的短時間で末梢血球中のDNA酸化損傷を引き起こすことがわかったことを報告している(例えば非特許文献7参照)。また、Steffen Loftらは、83名の40-64才の日常喫煙者及び非喫煙者の健常人(53名の女性を含む)について、2週間食事内容を記録させ2週間後尿中の8-OHdG量をelectrochemical検出器付HPLCによって定量し、喫煙者の8-OHdG排出量は非喫煙者のそれよりも50%も多く、男性喫煙者は女性喫煙者に比べ約30%も多く8-OHdG量を排出していると報告し、さらに、食事からの計算平均抗酸化物質としての、ビタミンC(72±43mg/日)、ビタミンE(5.9±2.7mg/日)、ビタミンA当量(1.1±0.6mg/日)と8-OHdG量の相関性を検討して、関連性がなかったとしている(例えば非特許文献8参照)。
【0008】
Wako Yらは喫煙者における白血球DNAにおける8-OHdG値は非喫煙者に比べ有意に高いレベルにあり、さらにそのような人はex vivoにおける血漿酸化耐性が低いことを報告している(例えば非特許文献9参照)。
【0009】
Jason D.Morrowらは、喫煙によって脂質酸化物として知られるF2-isoprostaneが生成しているのかを10名の喫煙者と10名の非喫煙者について検討し、血漿中の遊離F2-isoprostane、脂質とエステル化したF2-isoprostaneレベルと尿中への排出量を測定し. 血漿中の遊離F2-isoprostane、脂質とエステル化したF2-isoprostaneレベルは、喫煙者の方が約1.5-2倍程度有意に高く、喫煙者に強制的に2週間禁煙させるとそれらのレベルは有意に低下することを報告している(例えば非特許文献10参照)。
このように、喫煙による生体の酸化ストレスを評価する有用且つ簡便な方法の一つとして、血中または尿中の8-OHdG量を測定する方法が挙げられるのである。
【0010】
以上のように、喫煙によりタール物質および煙を肺、胃、粘膜から体内に吸収することで、生体内のいろいろな組織、臓器、血液中の細胞に酸化ストレスを与え、肺気腫、肺癌、胃癌、咽頭癌、心臓疾患、動脈硬化および妊娠障害など多くのリスクを生じることは明らかである。
そして、これら喫煙に限らずDNA酸化損傷を、健康食品や食事によって改善しようとする検討が報告されている。
鎌田 靖弘、立花 寛ほかは、境界型糖尿病患者10人および健常者12人に、発酵グァバ粒7粒(1.4g)を毎食後、3ヶ月摂取させた結果、発酵グァバの摂取は、食後の急激な血糖上昇を抑制し、インスリン分泌促進や感受性改善などに効果を示し、尿中の8-OHdGを低下させることを見出している(例えば非特許文献11参照)。
金谷 節子、三浦綾子らは、ボランティア非喫煙者50名に対し、アンチオキシダントを多く含むようにデザインした食事(高ORAC食)を摂取させ、尿中酸化損傷バイオマーカー、8-OHdG、フリーラジカルによる非酵素的脂質酸化マーカー尿8-isoprostane 2F α(8-iso-PGF2α)の変化を栄養介入前後で比較し、8-OHdG値は、栄養介入により有意に低減することを発表している(例えば非特許文献12参照)。
以上のように、世界的に喫煙率は低下しているものの、我国では近年20才代の女性を中心としての喫煙率は上昇しており、将来的な健康への影響が懸念される。したがって、喫煙によるDNA酸化損傷を抑制することのできるように改善された食事の摂取および抗酸化健康食品の提案が望まれる。
【0011】
【非特許文献1】Nucleic Acids Res. Vol.12,No.4,p.2137-2145(1984)“Hydroxylation of deoxyguanosine at the C-8 position by ascorbic acid and other reducing agents”
【非特許文献2】蔵重 惇;臨床検査、Vol.45,No.3,pp.271-280(2001年3月)
【非特許文献3】“平成14年6月「分煙効果判定基準策定検討会報告書概要」1.受動喫煙の健康への影響”
【非特許文献4】伊佐山 芳郎著;現代たばこ戦争、岩波新書614
【非特許文献5】Daniel F.Church & William A.Pryor[Environmental Health Perspectives,Vol.64, pp.111-126(1985)]
【非特許文献6】駿河台日本大学 救急医学教室助教授 長尾 建、同大学病院循環器科 川保 博文が、インターネットホームページ(http://medical tampa.co.jp/MQ9905-1.htm)
【非特許文献7】Haruko Kiyosawa ほか(Free Rad. Commn.,Vol.11,Nos.1-3,pp.23-27(1990))
【非特許文献8】Steffen Loftら(Carcinogenesis,Vol.13,pp.2241-2247(1992))
【非特許文献9】Wako Y ら(Tohoku J Exp. Med.,Vol.194,No.2,p.99-106(200106))
【非特許文献10】Jason D.Morrowら(The New England Journal of Medcine,May 4、pp.1198-1203(1995))
【非特許文献11】鎌田 靖弘、立花 寛ほか(沖縄県工業技術センター研究報告、No.5,p.91-98,(200308))
【非特許文献12】金谷 節子、三浦綾子ら(日本栄養・食糧学会総会講演要旨集、Vol.56、 p.187(20020620))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
喫煙は生活習慣病の一種とも云えるが、喫煙者のみならず近くにいる非喫煙者の健康にも害を及ぼすこと(受動喫煙者)が世界的な問題となっている。この喫煙によるDNAの酸化損傷の度合いは、血球および尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)が、酸化ストレスによるDNA損傷のバイオマーカーとして有用である。
しかし、喫煙者や受動喫煙者のDNAの酸化損傷の改善には、前記のように発酵グァバ粒の摂取、およびアンチオキシダントを多く含むようにデザインした食事(高ORAC食)の摂取が、DNA酸化損傷のバイオマーカーとしての尿中の8-OHdGを低減することに有効であることが報告されているにすぎない。
本発明者は、生体に害を及ぼす酸化ストレスの一つである喫煙によるDNA酸化損傷を、尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標として、尿中に排出される8-OHdGの量を低下せしめるに有効な食品組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
喫煙による害は、タール部と煙に含まれる種々の化合物から発生するフリーラジカルが肺に高濃度に吸入されることが原因である。その害は肺気腫、肺癌、脂質の酸化によるLDLの増加および動脈硬化など種々の疾患を引き起こす。生体内の酸化ストレスは、生体の親水性部分のみならず親脂溶性部分にも存在すると推察でき、本発明者は鋭意検討を行なった結果、松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物が、尿中に排出される8-OHdGの量を低下せしめるに有効であること、即ち喫煙によるDNA酸化損傷を抑制するために有効であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、生体に害を及ぼす酸化ストレスの一つである喫煙によるDNA酸化損傷を、尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標として、松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上を有効成分とする、8-OHdGを低下せしめるに有効な食品組成物を提供することを特徴とするものである。
【0014】
本発明は、(1)プロアントシアニジンを含有する植物抽出物を有効成分とする喫煙によって生ずるDNA酸化損傷の抑制用食品組成物、(2)プロアントシアニジンを含有する植物抽出物が松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物から選ばれた1種以上である(1)記載の食品組成物、(3)尿中の8-ハイドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)を指標とし、尿中に排出される8-OHdGを低下せしめるものである(1)または(2)記載の食品組成物、(4)プロアントシアニジンを含有する植物抽出物が、フランス海岸松樹皮抽出物である(1)(2)または(3)記載の食品組成物、(5)プロアントシアニジンを含有する植物抽出物を20mg/日〜120mg/日となるように配合してなる、(1)(2)(3)または(4)記載の食品組成物、(6)更に抗酸化性物質を含有する(1)(2)(3)(4)または(5)記載の食品組成物および(7)抗酸化性物質が水溶性抗酸化物質のビタミンC、脂溶性抗酸化物のスクワレン、ビタミンEおよびカロテン類から選ばれる一種以上である(6)記載の食品組成物、に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上を有効成分とした食品を摂取することにより、喫煙によって生ずるDNA酸化損傷を抑制できるものである。この喫煙によって生ずるDNA酸化損傷の抑制については、尿中の8-OHdGを指標とし、尿中に排出される8-OHdGを有効に低下せしめていることを判定したので、その効果は有意のものであることは明らかである。そして、この喫煙によって生ずるDNA酸化損傷の抑制効果は、上記のプロアントシアニジンを含有する植物抽出物に更にスクワレンなどの抗酸化物質を含有させることによって、より増大させることが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に用いるプロアントシアニジンは、ポリフェノールに属し、「分子内に2つ以上のフェノール性水酸基を持つ植物成分の総称」であり、強力な抗酸化剤の1つとして知られ、フラバノール骨格を持った縮合型タンニンである。これらプロアントシアニジンは様々な植物中に見出されているが、松樹皮、ブドウ種子、ブドウ果皮、リンゴ未熟果実、渋柿、月見草油、落花生種皮などに特に多く存在している。
本発明で用いる松樹皮抽出物としては、市販されているフランス海岸松樹皮抽出物(例えば商品名「ピクノジェノール」スイス、ホファー・リサーチ社製造、日本シーベルヘグナー(株)販売、商品名「フラバンジェノール」(株)東洋新薬販売)、同じく市販されているフィンランド産松樹皮抽出物(例えば商品名「フィンジェノール」)、および同じく市販されているニュージーランド産松樹皮抽出物(例えば商品名「エンゾジノール」)などを挙げることができる。
またブドウ種子抽出物としては市販されているもの(例えば商品名「グラヴィノール」(キッコーマン(株)製造・販売)、および落花生種皮抽出物としては市販されているもの(例えば商品名「PAQ」((株)エフェクト社販売))などを挙げることができる。
これらは、抽出原料由来植物によって含有するプロアントシアニジン化合物の量と化学構造は多少異なるものの、ほとんどプロアントシアニジン系ポリフェノール類であり、図2にそれらの化学構造の代表例を示した。またプロアントシアニジンを含有する植物抽出物には、主要構成成分として、プロシアニジンB1、−B3、−B6、−B7、−C1およびプロシアニジン C2などが挙げられ、補助的成分としてはhydroxy benzoic acid(p−オキシ安息香酸)、vanillic acid(バニリン酸)p−cumaric acid(p−オキシ桂皮酸)、ferulic acid(フェルラ酸)、vanilline(バニリン)、caffeic acid(3,4−ジオキシ桂皮酸)、gallic acid(没食子酸)、(+)−catechin(カテキン)およびこれらのエステル化合物などが挙げられるが、その具体的な代表的構成成分の一部を図3に示した。
【0017】
松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物のそれぞれの摂取効果は、多数の特許および研究報告で公表されているが、それらの代表的な薬理機序を示すと、抗酸化作用、抗炎症作用、末梢血管拡張作用、血小板凝集阻止能、末梢血管抵抗減弱作用、結合組織の補強作用、ビタミンCの生体内作用に対する増強作用、が挙げられる。
さらに、フランス海岸松樹皮抽出物の持つ薬理効果は多彩で、人の脳血流障害の改善、動脈硬化症による末梢血流障害の改善、血栓予防、ADHD(注意欠陥多動障害=いわゆる,落ち着きのない子、多動児)への改善・治癒効果、月経困難症、子宮内膜症の治療薬、糖尿病性網膜症、美肌効果、鎮痛作用、不眠の改善・治療、こむら返りの治療、慢性疲労症候群;CFS(chronic farigue symdrome)の改善・治療、その他、足のむくみ、静脈瘤、花粉症や喘息等のアレルギー性疾患、眼精疲労、糖尿病、インフルエンザ、癌の予防といった疾患の改善・治療効果があるとされている。
また、フランス海岸松樹皮抽出物の安全性については、過去30年以上に亘り、フランス、イギリス、アメリカ、ドイツ、イタリア、日本などの研究者によって安全が確認されている。
【0018】
一方、ブドウ種子抽出物(ポリフェノール)も、フランス海岸松抽出物に類似し、その薬理作用も多様で、薬理作用は、静脈瘤改善、毛細血管抵抗改善、網膜症改善、筋肉萎縮抑制効果、などを挙げることができる。また、安全性も確認されていて、外国では、医薬品として使用されている。
さらに、落花生種皮(通称、赤皮)抽出物も、松樹皮抽出物やぶどう種子抽出物と同様、プロアントシアニジン系ポリフェノールを含有し、含有量は約90%以上といわれる。まだその薬理作用についての報告は少ないが、造血機能回復効果、花粉症治癒効果および美白効果などを挙げることができる。
【0019】
本発明で用いる有効成分としての松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上と、組み合わせ配合するに好ましい抗酸化物質としては、水溶性抗酸化物質の代表例として知られるビタミンC、脂溶性抗酸化物としては、スクワレン、α-、β-、γ-、δ-トコフェロールなどのビタミンE、それぞれ単独または各々複数混在した混合ビタミンEを用いることができ、その由来は天然物由来または化学合成由来を問わない。
【0020】
脂溶性抗酸化物としてのスクワレンは、深海鮫肝油からの抽出物およびオリーブ果実または米胚芽から抽出した植物性スクワレンを挙げることができる。
スクワレンは、ヒト生体内では主として肝臓、皮膚組織内で産生され、種々の臓器、組織に分布・存在していることが知られている。生体内ではビタミンD3前駆体、コレステロールに代謝し、さらにコレステロールからは男性・女性ホルモン、コルチゾールなどの副腎皮質ホルモン、胆汁酸などに代謝していく生体内の免疫に係わる重要な脂溶性内因性抗酸化剤であることは多くの生化学教科書に記載されている。さらに、スクワレンは表皮皮脂構成成分であり、皮膚を健康に保つのに重要な役割を果たしていることは広く知られているが、年齢と共に減少したり、ストレスなどにより減少するため、鮫肝油エキスの名で健康食品として摂取される長い使用実績を有し、愛好者も多い。スクワレンの水素添加物であるスクワランは化粧品、医薬部外品、医薬品の原料として安全性の高い原料として認識されている。
またスクワレンは我々人間にとって、太陽光線からの紫外線を防御するための皮膚組織の中で最も重要な脂溶性内因性抗酸化剤であることも知られている。
古くから漁民の間ではスクワレンを含む鮫肝油を民間薬的に食してきた。深海に生息するある種の鮫の肝臓に特異的に多不飽和炭化水素が存在することを、1907年辻本 満丸博士が発見し,1916年スクワレンと命名して以来、世界各国の多くの研究者が研究をしている。スクワレンの摂取効果については、動物実験およびヒトでの臨床試験結果など数多く発表されているが、代表的なものとして、血中コレステロールの低減、化学療法剤の抗腫瘍効果を高める、癌の成長の抑制、免疫システムの効果の増大、肝機能の改善などが挙げられる。
以上のようにスクワレンについてはいくつかの効果が期待されるものである。
【0021】
またさらに、脂溶性抗酸化物としては、炭化水素系のα-、β-、γ-カロテン、リコペンおよび水酸基を有するアスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテインなどのキサントフィル類などのカロテン類を挙げることができる。
キサントフィルを含むカロテン類も、優れた脂溶性抗酸化物質であり、その摂取効果はビタミンA前駆体としての役割は深く認識されている。中でもルテイン、ゼアキサンチンは網膜黄斑部に特異的に存在するなど、活性酸素傷害防御に役立つことが知られている。配合に当たっては、上記カロテン類単品ではなく、パーム油から抽出されるカロテン混合物が望ましい。
【0022】
本発明は、喫煙による生体内の酸化ストレスの結果の一つである、DNA酸化損傷を尿中の8-OHdGをバイオマーカーとしたときに、松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上を構成成分とした食品組成物が、尿中の8-OHdGを低下せしめるに有効であることを見出しそれを提供するものである。
本発明では、松樹皮抽出物(例えば上述の商品名「ピクノジェノール」、「フラバンジェノール」および「エンゾジノール」)、ブドウ種子抽出物(例えば商品名「グラヴィノール」および落花生種皮抽出物(例えば商品名「PAQ」)などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物は、1日20mg以上、好ましくは60mg以上120mg以下摂取することが望まれる。1日120mg以上の摂取は松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物が比較的高価であり、特別な目的で摂取する以外には一般的に経済的ではない。
本発明で用いる有効成分としての松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上と、組み合わせ配合するに好ましい抗酸化物質の、スクワレン、ビタミンE、カロテン類などの脂溶性抗酸化物及びビタミンCなどの水溶性抗酸化物の配合は、それぞれ摂取習慣量や公的摂取基準に基づくことが好ましい。特に脂溶性抗酸化物の摂取量は、スクワレンについては100mg〜3,000mg/日、ビタミンEは第6次改訂日本人の栄養所要量(1999.10)によると、成人の許容上限摂取量がα−トコフェロール当量として、1日600mgとされ、又栄養機能食品の栄養素としてのビタミンE量の配合限度量は上限150mg、下限3mgと定められているので、この範囲量であれば量は問わないが、1日50mg以上の摂取が好ましい。
更にカロテン類はビタミンA前駆体として知られ、体内でのビタミンAが不足するとビタミンAに転換することから、公的には上限値は定められていないが、栄養機能食品の栄養素としてのビタミンAとしての配合限度量はレチノール当量として、上限2000IU(1IU=0.33μgであるので660μg)、下限600IU(=198μg)である。β−カロテンのビタミンA当量は約10〜43%であるので、これらの値を参考にすると460〜6600μgの間の量を配合することが好ましい。水溶性のビタミンCについては栄養機能食品として食品の公定書(厚生労働省)が定めた35〜1000 mg/日程度を摂取するよう配合することが好ましい。
本発明で用いる有効成分としての松樹皮抽出物、ブドウ種子抽出物および落花生種皮抽出物などのプロアントシアニジンを含有する植物抽出物から選ばれた1種以上と、組み合わせ配合する抗酸化物質との重量配合割合は、植物抽出物:抗酸化物質=1:0〜1:100、好ましくは1:0〜1:15の範囲である。このものに賦型剤、増量剤、乳化剤、香料、着色剤など添加剤を剤型等に応じて常法に従い含有させることが出来るが、これら添加剤の配合量は上記植物抽出物および抗酸化物質の総量に対して0ないし50の重量割合とすることが出来る。
【0023】
本発明の組成物は、ソフトカプセル、ハードカプセル、ペレットおよびタブレット状打錠品、粉体、飲用アンプル、丸薬および座薬など、摂取に適した形態にすることができる。
また、摂取に当たっては形態に応じ、好ましくは1日の摂取量を2〜数回に分けて摂取することができる。形態によって、賦型剤、増量剤、乳化剤、香料、着色剤およびその他の抗酸化剤など定法に従い添加することができる。これら添加剤の配合量は剤型等に応じて常法に従い適宜決めることが出来る。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれら実施例のみに限定されることを意味するものではない。
〔実施例1〕
【0025】
<被験者の選定>本試験の内容を理解し、同意を得た健康な喫煙者[男性3名、女性4名、平均年齢37才、平均Brinkmann指数*263を対象に試験を行った。
*(注):Brinkmann指数:1日の喫煙本数×喫煙年数
抗酸化天然成分としてフランス海岸松エキス(商品名PYCNOGENOL60mg/日)を14日間服用し、服用前、服用後3、7、14日目、服用終了後1カ月目の尿中8- OHdGを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で測定した。
<結果>
服用3日目の尿中8- OHdGは、クレアチニン換算値で3.8±1.4ng/mgCRE(平均±標準偏差)で、服用前の5.4±1.4ng/mgCREより有意に低下していた(p<0.01)。服用終了後1ヶ月目の尿中8-OHdGは、4.9±1.8ng/mgCREであり、投薬中止によって再上昇した。
<結果>
抗酸化天然成分であるフランス海岸松エキス(PYCNOGENOL)は、喫煙によるDNA酸化傷害を抑制することが示唆された。
〔実施例2〕
【0026】
<被験者の選定>本試験の内容を理解し、同意を得た基礎疾患のない喫煙者12名[男性6名、女性6名、平均年齢38才(26−49才)、Brinkmann指数*264(50−600)]を選んだ。
*(注):Brinkmann指数:1日の喫煙本数×喫煙年数
<試験物質>
1.(株)ハーバー研究所品、商品名「ピクエース」
内容量:250mg
内容成分:フランス海岸松エキス(商品名ピクノジェノール) 15mg
スクワレン 138.9mg
ビタミンE 56.1mg
ミツロウ 40mg
<服用方法> 1.「ピクエース」:朝、夕2回、2カプセル・・・4カプセル/日、14日間内服
<尿の採取法>
1.早朝一番尿を採取し、直ちに−20℃で保存、
2.採取日:0、3、7、14、44日(服用後1ケ月後)
<8- OHdG>の測定 :高速液体クロマトグラフィーによる。
8- OHdGはng/mgで測定されるが、尿の濃度差を補正するため、尿中のクレアチン濃度で除して表示した。
結果を表1および図4に示した。
【表1】


表1および図4の結果から明らかなように、有効成分のプロアントシアニジンを含有するフランス海岸松樹皮抽出物「ピクノジェノール」を配合したソフトカプセル状健康食品「ピクエース」の摂取は、喫煙者の尿中の8-OHdGを摂取後3日目で統計学的有意差をもって低下させることが判明した(対応のあるt検定;P=0.0009)。また「ピクエース」の摂取を止めた1ヵ月後には、喫煙者の尿中の8-OHdGは統計学的有意差をもって再び元の値まで戻ってしまうことが明らかとなった(対応のあるt検定;P=0.0296)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】酸化による2’-dGから8-OHdGの生成を示す図である。
【図2】プロアントシアニジン系ポリフェノール類の化学構造の一例をを示す図である。
【図3】プロアントシアニジンを含有する植物抽出物の具体的な代表的構成成分の例を示す図である。
【図4】フランス海岸松抽出物摂取による喫煙者の尿中の8-OHdGの変化を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】397031599
【氏名又は名称】株式会社ハーバー研究所
【出願日】 平成16年2月24日(2004.2.24)
【代理人】 【識別番号】100089314
【弁理士】
【氏名又は名称】大多和 明敏

【識別番号】100086999
【弁理士】
【氏名又は名称】大多和 曉子

【公開番号】 特開2005−237203(P2005−237203A)
【公開日】 平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願番号】 特願2004−47350(P2004−47350)