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【発明の名称】 嚥下困難者用食品及び嚥下困難者用食品の製造方法
【発明者】 【氏名】中塚 卓也

【氏名】齋藤 岩雄

【氏名】山野 善正

【氏名】合谷 祥一

【要約】 【課題】嚥下困難者であっても誤嚥する虞れのない、すべり、きれ、まとまりの3要素を備えた嚥下困難者用食品を提供すること。

【解決手段】牛乳、清水を加熱しながら、予め混合した(粉末)調味料を混合攪拌して85°Cまで加熱した後、野菜、肉或いは魚を煮沸してペースト状としたものを投入して約10分間加熱混合攪拌する。その後、バター、油を加えて一次乳化させ、湯で重量調整した後、約85°Cで10分間加熱する。更にその後ミキサーに入れて最終乳化させる。最終乳化した食品を各々袋等の包装体に入れ、約20°Cまで例えば流水にて冷却し、その後冷凍して袋等の包装体入りの嚥下困難者用食品を完成させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜、肉或いは魚を煮沸してペースト状としたものの一種又は複数種を主材料とし、これにゲル基材として寒天及びゼラチンを加え、さらに牛乳、バター或いは油の少なくとも一種以上を含有し、ゲル化及び乳化させてなることを特徴とする嚥下困難者用食品。
【請求項2】
牛乳を加熱しながら調味料を加えて混合攪拌して加熱した後、野菜、肉或いは魚を煮沸してペースト状としてものを一種又は複数種加えて加熱攪拌し、その後バター、油の少なくとも1種を加えて一次乳化して加熱し、さらにその後攪拌して最終乳化させることを特徴とする嚥下困難者用食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍することによって長持ちさせることができる嚥下困難者用食品及び嚥下困難者用食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今後、日本の高齢者の占める割合が急激に増加し、咀嚼困難者や嚥下困難者が増えることが予想される。このような状況下において高齢者の中でも特に咀嚼、嚥下困難者が手軽に、しかも楽しみながら確実に栄養を補給することができる食品の開発が求められている。特に、嚥下困難者は、気管から肺へ食物などが混入する誤嚥を生じる可能性が高く、誤嚥し難い食品の開発が求められている。ここで、誤嚥し易い食物としては、水、みそ汁、ジュースなどのさらっとした液体、パンやカステラなどの水分の少ない食物、海苔や餅などの付着性のある食物などが挙げられる。一方、嚥下困難者に適した食物としては、舌で押しつぶせる程度に柔らかく、口腔や咽頭に付着せず、咽頭通過時に適度の弾力で変形し、咽頭を滑らかに通過するもの、液体状の場合では適度な粘度が必要である。したがって、嚥下困難者用食物に必要な要素は、滑り、きれ、まとまりであり、この3要素を備えた食品を開発する必要がある。
【0003】
咀嚼、嚥下困難者用の食品、或いは食品用組成物としては、特許第3061776号特許掲載公報、特開2000−157212号公報などにて種々提案されている。前記特許第3061776号特許掲載公報に記載の食品は、例えば白身魚23.0%、大根12.0%、人参10.0%,さやえんどう3.0%、昆布0.1%、しょうが0.1%を、90°Cで20分間加熱し、水分量80%、固形部/液部が48.2/51.8であり、澱粉が2.5%、増粘多糖類0.2%を含有し、スプレッドメータで測定した値が5.5cmとしたものである。一方、特開2000−157212号公報に記載の食品用組成物は、ゼラチンと、寒天、カラギーナン、ネイティブジュウランガム、ローカストビーンガム及びキサンタンガムの中から選ばれる少なくとも1種以上とを含むものである。
【特許文献1】特許第3061776号特許掲載公報
【特許文献2】特開2000−157212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、従来提案されている嚥下困難者用の食品、或いは食品用組成物では、誤嚥を避ける要素中、きれ、まとまりに関しては充足しているが、滑りに関しては、未だ解決されていない。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、嚥下困難者であっても誤嚥する虞れのない、すべり、きれ、まとまりの3要素を備えた嚥下困難者用食品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の嚥下困難者用食品は、野菜、肉或いは魚を煮沸してペースト状としたものの一種又は複数種を主材料とし、これにゲル基材として寒天及びゼラチンを加え、さらに牛乳、バター或いは油の少なくとも一種以上を含有し、乳化させてなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の嚥下困難者用食品の製造方法は、牛乳を加熱しながら調味料を加えて混合攪拌して加熱した後、野菜、肉或いは魚を煮沸してペースト状としてものを一種又は複数種加えて加熱攪拌し、その後バター、油の少なくとも1種を加えて一次乳化して加熱し、さらにその後攪拌して最終乳化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、嚥下困難者であっても誤嚥する虞れのない、すべり、きれ、まとまりの3要素を備えた嚥下困難者用食品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1に示すように、本発明の実施例1の嚥下困難者用食品は、野菜、肉或いは魚を煮沸してペースト状としたものの一種又は複数種を主成分とし、これにゲル基材として寒天及びゼラチン、牛乳、バター或いは(サラダ)油、調味料、清水を加えたもので、具体的には牛乳、清水を加熱しながら、予め混合した(粉末)調味料を混合攪拌して85°Cまで加熱した後、野菜、肉或いは魚を煮沸してペースト状としたものを投入して約10分間加熱混合攪拌する。その後、バター、油を加えて一次乳化させ、湯で重量調整した後、約85°Cで10分間加熱する。更にその後ミキサーに入れて最終乳化させる。最終乳化した食品を各々袋、容器などの包装体に入れ、約20°Cまで例えば流水にて冷却し、その後冷凍して(袋・容器などの)包装体入りの嚥下困難者用食品を完成させる。
本実施例においては、主成分としての野菜、肉或いは魚は、予め煮沸してペースト状にしたものを用いる。この主成分としては、野菜、肉、魚単独でも複合させたものでもよく、野菜としては、コーン、玉葱、人参、カボチャ、グリーンピース、ジャガ芋、トマトなど種々用いることができる。
【0011】
前記食品は、食品の主成分として野菜、肉或いは魚を煮沸した後ペースト状とし、更に他の材料とともに混合加熱することによって舌で押しつぶせる程度に軟らかく、また混入する寒天及びゼラチンによって食品をゲル化させて口腔や咽頭に付着せず、かつ咽頭通過時に適度な弾性力で変形させることができ、さらに牛乳、バター、(サラダ)油を加えて乳化すること(エマルジョンゲル化)によって咽頭を滑らかに通過するものである。
【0012】
すなわち、前記食品は、混入する寒天及びゼラチンによって食品をゲル化させて、食品に「まとまり」を付与し、また食品の主成分として野菜、肉或いは魚を煮沸した後ペースト状とし、更に他の材料とともに混合加熱することによって、食品に「きれ」を付与しているものである。さらに、これらに牛乳、バター、(サラダ)油を加えて乳化すること(エマルジョンゲル化)によって、食品に「滑り」を付与し、嚥下困難者用食品の3要素である「まとまり」「きれ」「滑り」を全て兼ね備えさせているものである。
【0013】
次に、前記実施例の嚥下困難者用食品の試作例を説明する。
試作例1 コーンスープ
試作手順
(1)冷凍コーン・玉葱ピューレの解凍。
ここで、冷凍コーンは、予めコーンを煮沸した後、ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
また、玉葱ピューレは、予め玉葱を煮沸した後、ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
(2)牛乳・水・ホイップクリームを加熱しながら予め混合した粉体調味料を混合攪拌。
(3)85℃まで加熱して前記解凍したペースト状コーン、玉葱ピューレを投入し、加熱混合攪拌(約10分)。
(4)その後、オイル・バターを入れ一次乳化させた後、お湯で重量調整後、85℃で10分加熱。
(5)カッターミキサー(ジューサー)に入れて混合し最終乳化させる。
(6)袋、容器などの包装体に充填し、約20℃まで流水にて冷却。
(7)凍結
各材料の配合量、配合比は表1に示すとおりである。
【0014】
表1


【0015】
試作例2 グリーンピーススープ
試作手順
(1)グリーンピース・玉葱ピューレの解凍。
ここで、冷凍グリーンピースは、予めグリーンピースを煮沸した後ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。また、玉葱ピューレは、
また、玉葱ピューレは、予め玉葱を煮沸した後、ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
(2)牛乳・水・ホイップクリームを加熱しながら予め混合した粉体調味料を混合攪拌。
(3)85℃まで加熱して前記解凍したペースト状グリーンピース、玉葱ピューレを投入し、加熱混合攪拌(約10分)。
(4)その後、オイル・バターを入れ一次乳化させた後、お湯で重量調整後、85℃で10分加熱。
(5)カッターミキサー(ジューサー)に入れて混合し最終乳化させる。
(6)袋、容器などの包装体に充填し、約20℃まで流水にて冷却。
(7)凍結
各材料の配合量、配合比は表2に示すとおりである。
【0016】
表2


【0017】
試作例3 パンプキンスープ
試作手順
(1)かぼちゃ・玉葱の解凍。
ここで冷凍かぼちゃは、予めかぼちゃを煮沸した後ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
また、玉葱ピューレは、予め玉葱を煮沸した後、ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
(2)牛乳・水を加熱しながら予め混合した粉体調味料を混合攪拌。
(3)85℃まで加熱して前記解凍したペースト状かぼちゃ、玉葱ピューレを投入し、加熱混合攪拌(約10分)。
(4)その後、オイル・バターを入れ一次乳化させた後、お湯で重量調整後、85℃で10分加熱。
(5)カッターミキサー(ジューサー)に入れて混合し最終乳化させる。
(6)袋、容器などの包装体に充填し、約20℃まで流水にて冷却。
(7)凍結
各材料の配合量、配合比は表3に示すとおりである。
【0018】
表3


【0019】
試作例4 キャロットスープ
試作手順
(1)人参・玉葱を解凍。
ここで、冷凍人参は、予め人参を煮沸した後ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
また、玉葱ピューレは、予め玉葱を煮沸した後、ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
(2)牛乳・水・ホイップクリームを加熱しながら予め混合した粉体調味料を混合攪拌。
(3)85℃まで加熱して前記解凍したペースト状人参、玉葱ピューレを投入し、加熱混合攪拌(約10分)。
(4)その後、オイル・バターを入れ一次乳化させた後、お湯で重量調整後、85℃で10分加熱。
(5)カッターミキサー(ジューサー)に入れて混合し最終乳化させる。
(6)袋、容器などの包装体に充填し、約20℃まで流水にて冷却。
(7)凍結
各材料の配合量、配合比は表4に示すとおりである。
【0020】
表4


【0021】
試作例5 トマトスープ
試作手順
(1)トマト・人参・玉葱を解凍。
ここで、冷凍トマトピューレは、予めトマトを煮沸した後ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
また、冷凍人参ピューレは、予め人参を煮沸した後ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
さらに、冷凍玉葱ピューレは、予め玉葱を煮沸した後、ペースト状とし、その後冷凍したものを使用した。
(2)牛乳・水・ホイップクリームを加熱しながら予め混合した粉体調味料を混合攪拌。
(3)85℃まで加熱して前記解凍したペースト状トマトピューレ、ペースト状人参ピューレ、玉葱ピューレを投入し、加熱混合攪拌(約10分)。
(4)その後、オイル・バターを入れ一次乳化させた後、お湯で重量調整後、85℃で10分加熱。
(5)カッターミキサー(ジューサー)に入れて混合し最終乳化させる。
(6)袋、容器などの包装体に充填し、約20℃まで流水にて冷却。
(7)凍結
各材料の配合量、配合比は表5に示すとおりである。
【0022】
表5


【0023】
次に、上記各試作例の試験結果を示す。
この試験の方法は、株式会社山電製の「破断強度測定装置RE−33005」を用い、使用器具は、直径40mm×高さ15mmのステンレスシャーレ、直径20mmのプランジャーを用いて行った。
【0024】
試験条件は、温度:20±2℃(試験材料を予め恒温槽に入れる。)、圧縮速度:10mm/sec、クリアランス:5mmである。
【0025】
なお、上記試験方法及び試験条件は、厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知『高齢者用食品の表示許可について』(平成6年2月23日 衛新第15号)に基づくものである。
【0026】
上記試作例の試験結果
キャロットスープ


コーンスープ


グリーンピーススープ


カボチャスープ


【0027】
試験結果における破断応力は、何れも50,000N/m以下を示しているが、この値は厚生省公衆衛生局長通知『特別用途食品の表示許可について』(昭和48年12月26日 衛発第781号)において「舌でつぶせる」と評価されている範囲であり、上記試作例が嚥下困難者に適した食物であることが確認される。
【0028】
なお、上記した試作例は、何れも野菜ペーストについてのものであるが、この野菜ペーストの代わりに肉、或いは魚のペーストについても、さらにこれらを混合させたものにも同様に適用されるものであることは当然であり、またスープは一例であってこれに限定されないことも当然である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
嚥下困難者であっても誤嚥する虞れのない、すべり、きれ、まとまりの3要素を備えた嚥下困難者用食品とすることができ、高齢者、咀嚼困難者、嚥下困難者の食品をして病院、家庭にて利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1における嚥下困難者用食品の製造手順を示すフローチャートである。 代理人 弁理士 伊藤 進
【出願人】 【識別番号】598045863
【氏名又は名称】ケンコーマヨネーズ株式会社
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
【出願日】 平成16年1月30日(2004.1.30)
【代理人】 【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進

【公開番号】 特開2005−211021(P2005−211021A)
【公開日】 平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願番号】 特願2004−24673(P2004−24673)