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【発明の名称】 食品加工方法および食品加工装置
【発明者】 【氏名】門馬 哲也

【氏名】井上 隆

【氏名】宮武 和孝

【氏名】大西 忠一

【要約】 【課題】複雑な前処理などを必要とせず、食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、食品表面に凝縮水を連続的に付着させて食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより当該食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中に酸素濃度以下にして、当該食品内成分の酸化を少なくした食品加工方法およびその食品加工器を提供する。

【解決手段】食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより、該食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、前記食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中の酸素濃度以下にして、該食品内の成分の酸化を低減することを特徴とする、食品加工方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより、該食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、前記食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中の酸素濃度未満にして、該食品内の成分の酸化を低減することを特徴とする、食品加工方法。
【請求項2】
前記食品中の成分は、油脂成分またはビタミン類である、請求項1に記載の食品加工方法。
【請求項3】
食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を付着させる際の食品の周囲雰囲気は、100℃以上の水蒸気を主成分とした雰囲気である、請求項1または2に記載の食品加工方法。
【請求項4】
前記周囲雰囲気は、水蒸気成分が雰囲気全体の50vol%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の食品加工方法。
【請求項5】
前記蒸気発生装置から前記箱体内に供給される過熱水蒸気量は、凝縮水量に換算して、箱体の内容積1リットルあたり0.1cm/分以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の食品加工方法。
【請求項6】
前記蒸気発生装置から連結部を介して箱体内に供給される過熱水蒸気が、箱体内の外周部に比べて中央部に集中して供給されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の食品加工方法。
【請求項7】
前記過熱水蒸気は、流速2m/秒以上で前記食品に供給されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の食品加工方法。
【請求項8】
食品周囲の雰囲気を安定させるための、食品を収容する箱体と、連結部を介して該箱体に連結された蒸気発生装置とを含む食品加工装置であって、
前記箱体において、前記蒸気発生装置により発生した過熱水蒸気を食品に曝して前記食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより、該食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、前記食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中の酸素濃度以下にして、該食品内の成分の酸化を低減することを特徴とする、食品加工装置。
【請求項9】
食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を付着させる際の食品の周囲雰囲気は、100℃以上の水蒸気を主成分とした雰囲気である、請求項8に記載の食品加工装置。
【請求項10】
前記箱体の温度を調節するためのヒーターをさらに含み、過熱水蒸気の供給を停止する際に、該ヒーターにより食品を加熱することを特徴とする、請求項8または9のいずれかに記載の食品加工装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理による、食品中に含まれる成分の酸化劣化を防止する食品加工方法および食品加工装置を提供するものである。特に、ビタミンCや油脂などの酸化を防止しつつ加熱調理可能な食品加工方法および食品加工装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
業務用または家庭用の加熱調理には、熱源として電気またはガスを使用する熱風オーブン、輻射型グリル、マイクロ波を使用する電子レンジ、100℃以下のスチームを使用する蒸し器などが使用されている。これらの加熱調理では、食品周囲の雰囲気が大気に近い酸素濃度雰囲気であるため、いずれも加熱が始まると、食品内部の成分は雰囲気中の酸素により酸化され、その人体への有効性がなくなるばかりか、逆に有害物質に変化する傾向をもっていた。
【0003】
このような問題の解決法として、最近では真空調理法が高品位調理法として実用化されている。これは食品を加熱する前に樹脂フィルムなどで包装し、この内部を真空ポンプなどで真空引き、その後包装袋の口を密封した後、包装容器ごとお湯の中で加熱する事により食品と空気中の酸素の接触を防止して調理する方法である。
【0004】
また、下記特許文献1には、過熱水蒸気を用いた低酸素状態下で赤外線放射による加熱調理法が開示されている。
【0005】
一般に、ほとんどの食品には、人体に有効な成分としての油脂分やビタミン類が含有されている。たとえば、このような食品中の成分の一つとしてビタミンCがあるが、ビタミンCはほとんどの野菜に含まれていて、日本人は摂取量の3分の2を野菜から摂取しているといわれている。当該ビタミンCは次のような効能を有する。すなわち、ウイルスや細菌に対する抵抗力を高め、風邪や感染症を予防する。ストレスを和らげる。血中コレステロールを下げる。発ガン物質の生成を抑える。
【0006】
しかしながら、ビタミンCを含む食品中の成分が酸素雰囲気中で加熱されると、酸化反応により、その有効性が失われるばかりか、逆に有害成分になることが知られている。従来の加熱調理/加工法として用いられる上記方式は、全て大気雰囲気に近い酸素濃度(約20vol%)雰囲気であり、加熱が始まるとこれらの成分の酸化は避けがたいものであった。
【0007】
また、真空調理法は、加熱する前に食品を樹脂フィルムで真空パックしなければならないというような工程の複雑さがあった。
【0008】
また、下記特許文献1では、赤外線などの加熱手段を必要とし、装置の簡略化が難しい問題があった。
【特許文献1】特開平11−89722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、複雑な前処理などを必要とせず、食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより当該食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中に酸素濃度未満にして、当該食品内成分の酸化を少なくした食品加工方法およびその食品加工装置を提供するものであり、さらに、食品の調理/加工時に食品内部の有効成分の酸化を防止した高品位の調理/加工品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより、該食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、前記食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中の酸素濃度未満にして、該食品内の成分の酸化を低減することを特徴とする食品加工方法を提供する。
【0011】
好ましくは、上記食品中の成分は、油脂成分またはビタミン類である。また好ましくは、食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を付着させる際の食品の周囲雰囲気は、100℃以上の水蒸気を主成分とした雰囲気である。また好ましくは、上記周囲雰囲気は、水蒸気成分が雰囲気全体の50vol%以上である。
【0012】
好ましくは、蒸気周囲雰囲気は、水蒸気成分が雰囲気全体の50vol%以上であり、蒸気発生装置から前記箱体内に供給される過熱水蒸気量は、凝縮水量に換算して、箱体の内容積1リットルあたり0.1cm/分以上であることが好ましい。
【0013】
また、上記蒸気発生装置から連結部を介して箱体内に供給される過熱水蒸気が、箱体内の外周部に比べて中央部に集中して供給されることが好ましく、上記過熱水蒸気は、流速2m/秒以上で前記食品に供給されることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、食品周囲の雰囲気を安定させるための、食品を収容する箱体と、連結部を介して該箱体に連結された蒸気発生装置とを含む食品加工装置であって、上記箱体において、蒸気発生装置により発生した過熱水蒸気を食品に曝して前記食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより、該食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中の酸素濃度以下にして、該食品内の成分の酸化を低減することを特徴とする食品加工装置を提供する。
【0015】
好ましくは、食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を付着させる際の食品の周囲雰囲気は、100℃以上の水蒸気を主成分とした雰囲気である。
【0016】
好ましくは、本発明の食品加工装置は、箱体の温度を調節するためのヒーターをさらに含み、過熱水蒸気の供給を停止する際に、該ヒーターにより食品を加熱することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食品の調理/加工時に食品内部の有効成分の酸化を防止することができ、さらに、そのような高品位の調理/加工品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(食品加工方法)
本発明は、食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより、該食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、前記食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中の酸素濃度未満にして、該食品内の成分の酸化を低減することを特徴とする食品加工方法を提供するものである。
【0019】
上記本発明により次の2つの優れた効果を有する。すなわち、食品中成分の酸化抑制および食品の加熱である。まず、食品成分中の酸化抑制について説明する。
【0020】
食品に過熱水蒸気を曝すと、過熱水蒸気が食品に接触することにより当該過熱水蒸気の温度が低下し、凝縮水に変化する。当該凝縮水は食品に連続的に付着し、それにより食品の周囲における酸素濃度を大気中の酸素濃度より低くする。その結果、通常加熱により食品周囲の酸素と食品中の成分が反応して当該成分を酸化する酸素が、食品周囲において凝縮水が存在することによりその濃度が低減されているので、食品中の成分の酸化が防止され、当該成分の品質が高度に保持されるものである。
【0021】
具体的には、図1(a)に示すように、通常、食品の周囲には酸素(O)が多く存在し、加熱により当該酸素と食品中の成分が反応して当該成分が酸化されるものであるが、図1(b)に示すように、過熱水蒸気を食品に曝すことにより、食品の周囲は、過熱水蒸気および/または凝縮水で覆われており、酸素が遮断された無酸素状態にあるので、食品中の成分の酸化劣化を抑制することができる。
【0022】
本発明において、上記食品中の成分として具体的には油脂やビタミン類、特にビタミンCが挙げられる。ビタミンCは水に可溶であり、熱に弱い特性を有するので、たとえば従来までのゆで調理を用いて加熱すると、ビタミンCが水に溶解して食品中のビタミンC含有率が減少し、また熱風調理を用いる加熱では、下記の化学式
【0023】
【化1】


に示すように、アルコルビン酸(ビタミンC)が酸化により、モノデヒドロアスコルビン酸へ変化し、さらに、デヒドロアスコルビン酸へと変化し、劣化する問題があったが、上記のような本発明の処理を施すことにより、水への溶解および酸化による劣化を防止することができるものである。
【0024】
また、食品中の油脂成分が劣化すると、消化器障害およびアレルギを起こしやすく、他の栄養素の効能を消失させるなどの弊害をもたらす。たとえば、油脂成分の劣化により生じる過酸化物は消化器障害の要因となり、劣化の程度によっては食中毒となる。また、油脂分とアレルギは密接に関連し、劣化した油脂分は食物タンパク質と反応して、食物アレルギの原因である抗原となる。さらに、ビタミンC、ビタミンEまたはポリフェノールなどの抗酸化物質に作用し、これらの効能を消失させる。
【0025】
油脂分の劣化には、一般に、微生物などによる劣化と、酸化による劣化があるが、食品の調理時に生じる劣化は、酸化による劣化である。オーブン加熱などにより調理する場合、図2(a)に示すように、油脂分の周囲にはOが多く存在し、酸化劣化が生じやすい状態にある。このため、香りの変化、臭気の発生、色の変化または有害物質の発生などが起こりやすい。これに対して、過熱水蒸気による加熱により調理する場合、図2(b)に示すように油脂分の周囲は、HO(凝縮水および水蒸気)で覆われており、Oが遮断された無酸素雰囲気にあるため、油脂分の酸化劣化を抑制することができる。
【0026】
また、本発明において、上述した過熱水蒸気を食品に曝すことによる効果の1つである食品の加熱について、過熱水蒸気に曝された食品は、当該暴露によって、高温の過熱水蒸気から食品に放射伝熱および対流伝熱が起こるとともに、食品表面に接触した過熱水蒸気が100℃以下となり、食品の表面において凝縮し、凝縮熱(539kcal/g)を食品に与え、これにより食品が加熱されるという機構を有する。
【0027】
一方、従来の熱風加熱の場合、水分を含まない高温の空気による加熱であるため、放射伝熱および凝縮伝熱がなく、対流伝熱のみにより加熱される。したがって、図3に示すように、過熱水蒸気による加熱は、熱風加熱に比べて高い熱伝達特性を有し、大量の熱を素早く食品に付与することができる。
【0028】
食品の水分量は、過熱水蒸気による加熱の場合、過熱水蒸気が食品の表面に凝縮するため、図4に示すように、凝縮水により、食品の水分は、表面および内部とも、一旦上昇する。その後、凝縮により多量の熱量が食品に伝達し、食品の温度が100℃近くまで上昇すると、食品から水分が蒸発し始め、水分量が復元し、表面および内部とも乾燥が進行する。したがって、過熱水蒸気による加熱によれば、食品の表面がパリッとし、内部がジューシな高品位調理が可能となる。これに対して、スチーム加熱の場合、100℃以下の水蒸気による加熱であるため、食品の温度が100℃以上に上昇することはなく、凝縮が継続して起こり、食品の表面および内部ともベタツイタ仕上がりとなる。また、熱風加熱の場合、加熱開始と同時に乾燥が始まり、どんどん乾燥が進行するため、食品の表面および内部とも乾燥し過ぎの仕上がりになりやすい。
【0029】
過熱水蒸気による加熱では、他の加熱方式に比べて、食品中の成分の酸化を抑制し、劣化を防止することができるが、水蒸気の容積比が大きければ大きいほど凝縮水が増え、昇華が速く、水分の移動時間も短くなり、それにより食品周囲の酸素濃度も小さくなる。このような観点から、過熱水蒸気による加熱時において、水蒸気は、食品周囲雰囲気中に50vol%以上含まれていることが好ましく、75vol%以上がより好ましく、90vol%以上が特に好ましい。
【0030】
また本発明において、水蒸気の温度は、100℃以上が好ましい。100℃以上にすることで、水が完全に気体となるので水蒸気量を大幅に増加することができ、したがって凝縮水量を増加することができ、それにより加熱効率が高まり、加熱効果が大きくなるからである。また、焼き調理などの調理性においては150℃以上にすることが好ましい。
【0031】
本発明において、過熱水蒸気とは、100℃以上に加熱された水蒸気のことをいい、凝縮水とは、過熱状態下の水蒸気の温度が物との接触により低下されることによって液体となった水であって、水蒸気から液体への変化の際に凝縮熱を放射伝熱および/または対流伝熱の形態で物へ付与する水をいう。また、本発明において、食品とは食物として摂取可能なものである。
【0032】
(食品加工装置)
本発明はまた、食品周囲の雰囲気を安定させるための、食品を収容する箱体と、連結部を介して該箱体に連結された蒸気発生装置とを含む食品加工装置であって、上記箱体において、上記蒸気発生装置により発生した過熱水蒸気を食品に曝して上記食品表面に凝縮水を連続的に付着させることにより、該食品を水の凝縮伝熱により加熱すると共に、上記食品周囲の雰囲気の酸素濃度を大気中の酸素濃度未満にして、該食品内の成分の酸化を低減することを特徴とする食品加工装置を提供する。
【0033】
かかる装置により、過熱水蒸気を使用して、食品中の成分を酸化により劣化することなく食品を加熱することができる。蒸気発生装置に連結する箱体は、食品などを収容し、食品などの周囲の雰囲気を安定化する機能を有する。
【0034】
本発明において、食品に過熱水蒸気を曝して該食品表面に凝縮水を付着させる際の食品の周囲雰囲気は、100℃以上の水蒸気を主成分とした雰囲気であることが好ましく、上記周囲雰囲気は、水蒸気成分が雰囲気全体の50vol%以上であることが好ましい。理由は上述したとおりである。油脂成分およびビタミン類の酸化を抑制し、劣化を防止することができ、さらに、加熱効率を高めることができるからである。
【0035】
また、本発明において、蒸気発生装置から箱体内に供給する過熱水蒸気の量は、箱体内の酸素濃度を低下させるため、箱体の内容積1リットルに対して凝縮水量に換算して0.1cm/分以上が好ましく、0.3cm/分以上がより好ましい。また、過熱水蒸気の供給量は、箱体内の外周部に比べて、箱体内の中央部において多くする態様が好ましい。箱体内の中央付近に供給することにより、凝縮水が食品に効率よく付着することができ、食品を効率よく加熱することができるからである。さらに、水蒸気を食品に供給するときの流速は、熱効率を高め、凝縮水の付着量を多くし、また、風速の機械力により脱油量が多くなる点で、2m/秒以上が好ましく、5m/秒以上がより好ましい。
【0036】
本発明において、食品の周囲雰囲気の水蒸気成分の測定方法としては、例えば酸素濃度計のプローブを箱体内の食品近傍にセットし、得られた酸素濃度から水蒸気成分を算出する方法を用いることができる。すなわち箱体内の気体組成が空気と水蒸気であるならば、空気中の酸素濃度は約20%であるため、空気成分は酸素濃度を4倍した濃度、残る成分が水蒸気成分となる。式で示すと (水蒸気成分)=100%−(酸素濃度)×4 である。また、本発明において、箱体内に供給される過熱水蒸気量は、1分間あたりに水タンクから減少する水の量を測定することで、これを箱体の内容積1リットル当たりに換算することにより算出することができる。
【0037】
箱体には、箱体の内側または外側にヒータを設けることができ、箱体への過熱水蒸気の供給停止後、食品をヒータにより加熱する態様とすることができる。かかる態様の食品加工装置を用いると、食品の表面に焦げ目などの焼き目を付けることができるので、商品価値を高まり、有利である。また、かかる仕様の食品加工装置により、食品加熱の初期段階では、水蒸気により食品の温度を100℃近くまで上昇させ、水蒸気の供給停止後に、ヒータで食品を再加熱することもできる。
【0038】
具体的に、本発明において使用可能な食品加工装置の構造を図5に示す。しかし、本発明はこの構造に限定されるわけではない。この食品加工装置は、食品90を収容する箱体20と、箱体20に連結する蒸気発生装置50とを有し、これらは連結器としての外部循環器30を介して接続される。箱体20は直方体形状で1つの面は開口部である。箱体20の残りの面はステンレス鋼板で形成される。箱体20の周囲にはそれぞれ断熱対策が施される。箱体20の床面にはステンレス鋼板製の受け皿21が置かれ、受け皿21の上には食品90を載置するステンレス鋼線製のラック22が置かれる。
【0039】
箱体20の中の気体は、外部循環路30を通って循環する。箱体20の側壁には、これと平行する形で天井面から床面近くまで垂下する気流制御板23(ステンレス製)が配置されている。この気流制御板23の下端と奥の側壁との間の隙間が、外部循環路30に期待を導く下向きの気体吸入口24となる。
【0040】
気体吸込口24から吸込まれたガスは気流制御板23の裏を通って箱体20の外側上部に設けられた送風装置25へと向かう。送風装置25は、遠心ファン26およびこれを収容するファンケーシング27と、遠心ファン26を回転させるモータ(図示せず)を備える。遠心ファン26としてはシロッコファンを用いる。遠心ファン26を回転するモータには高速回転が可能な直流モータを使用する。
【0041】
ファンケーシング27の吐出口に接続された外部循環路30は、断面円形のパイプを組合せて構成される。ファンケーシング27からは第1パイプ31が水平方向に突き出されている。第1パイプ31の端には排気口32が設けられている。第1パイプ31の排気口32より少し上流にはエルモ型の第2パイプ33が接続される。第2パイプ33の水平部分は蒸気発生装置50の上部に入り込み、蒸気吸引エジェクタ34を形成する。第2パイプ33の吐出端は絞り成形され、蒸気吸引エジェクタ34のインナーノズルとなる。蒸気発生装置50の側面からは蒸気吸引エジェクタ34のアウターノズル35が下流に向かって吐出し、その吐出端はノズル形状に絞り成形されている。
【0042】
外部循環路30の第3パイプ36が蒸気吸引エジェクタ34の下流でアウターノズル35のノズル形状吐出端を受入れる。第3パイプ36の端はアウターノズル35を包むように膨らんでおり、ここに後段エジェクタ37が形成される。蒸気吸引エジェクタ34のアウターノズル35のノズル形状吐出端は、後段エジェクタ37においてはインナーノズルの役割を果たす。後段エジェクタ37には、第1パイプ31から分岐したバイパス路38が接続される。バイパス路38も断面円形のパイプにより形成され後段エジェクタ37に左右対称的に気体を吹込む。
【0043】
第3パイプ36の他端は箱体20に気体を戻す気体戻し口39となるサブキャビティ40に接続される。サブキャビティ40は箱体20の天井部の上にて、天井部の中央部にあたる箇所が設けられ、平面形状円形で、その内側には気体の加熱手段である蒸気加熱ヒータ41が設置されている。蒸気加熱ヒータ41はシーズヒータより構成される。サブキャビティ40の底面は箱体20の天井壁となる金属パネルで形成され、この底面パネル42には複数の噴気口43がほぼパネル全面にわたり2次元的にあるいは3次元的に分散配置されている。底面パネル42は上下両面とも塗装などの表面処理により暗色に仕上げられている。底面パネル42は使用を重ねることにより暗色に変色する金属素材で成形してもよく、暗色のセラミック成形品であってもよい。
【0044】
箱体20の上部の一角には気体放出口44が形成されている。また、第1パイプ31の端には電動式のダンパ45が配置される。ダンパ45は排気口32と第2パイプ33の入口とを選択的に閉ざす。
【0045】
次に、図6に、蒸気発生装置50の模式的断面図を示す。蒸気発生装置50は、円筒形のポット51と、ポット51の外面に密着するように設置された蒸気発生ヒータ56と、ポット51の内部に水を供給する給水パイプ63と、排水パイプ52と、ポット51の内部の水に熱を伝える伝熱ユニット60とを含む。そして、ポット51の上部には蒸気吸引エジェクタ34が形成されており、蒸気吸引エジェクタ34は第2パイプ33とアウターノズル35とを備えている。
【0046】
ポット51の底部はロート状に成形され、そこから排水パイプ52が垂下している。排水パイプ52の下端は水平に対しやや勾配をなす形で配置された図5に示す排水パイプ53に接続されている。図5に示すように、排水パイプ53の端は箱体20の側壁を通じ受皿21に向かって開口している。また、排水パイプ52と排水パイプ53との間には排水バルブ54および水位センサ55が設置されている。
【0047】
給水パイプ63の端にはロート状の受入口64が形成される。受入口64から少し下流の位置に洗浄パイプ65が接続される。洗浄パイプ65は洗浄パイプ66を介して排水パイプ53に接続する。
【0048】
給水パイプ63には、洗浄パイプ65の他、略J字形の落差形成パイプ67も接続される。落差形成パイプ67の他端は排水パイプ53に接続される。
【0049】
水タンク室70には横幅の狭い直方体形状の水タンク71が挿入されている。この延び出すエルボ形の給水パイプ72が給水パイプ63の受入口64に接続される。ポンプ73は水タンク71内の水を給水パイプ72を通じて圧送する。
【0050】
蒸気発生ヒータ56は環状のシーズヒータからなる。また、蒸気発生ヒータ56とほぼ同じ高さになるように、電熱ユニット60がポット51の内部に設置されている。
【0051】
伝熱ユニット60は、ポット51の側壁内面に密着するリング61と、このリング61の内部に放射状に設置されている複数のフィン62とを備えている。リング61とフィン62とは押出成形、溶接またはろう付けなどの手法により一体化されている。リング61およびフィン62は、ポット51の軸線方向に所定の長さを有している。
【0052】
ポット51、電熱ユニット60および給水パイプ63は、熱の良導体である金属で形成されることが好ましい。金属としては熱伝導率のよい銅やアルミニウムなどが適する。ただし、銅や銅合金の場合、緑青が発生するので、熱伝導率は少し劣るものの、緑青を懸念せずにすむステンレス鋼を用いることとしてもよい。
【0053】
このような蒸気発生装置50においては、まず、図5に示す水タンク71からポンプ73によって水タンク71内の水が給水パイプ63に圧送される。なお、ポンプ73は、ポンプケーシング74と、ポンプケーシング74に収容されたインペラ75と、インペラ75に動力を伝えるモータ76とにより構成されている。モータ76は、水タンク71が所定位置にセットされるとインペラ75に電磁的に結合される。
【0054】
給水パイプ63に圧送されてきた水は、図6に示すように、給水パイプ63の先端から噴水のように溢れ出し、ポット51の内部に供給される。水位が電熱ユニット60の長さ半ばまで達したことを水位センサ55が検知したら、そこで一旦給水は中止される。
【0055】
このように所定量の水がポット51の内部に供給された後、蒸気発生ヒータ56への通電が開始される。蒸気発生ヒータ56はポット51の壁面を介してポット51の中の水を加熱する。ポット51の壁面が熱せられると、その熱は電熱ユニット60に伝わり、電熱ユニット60から水へと伝えられる。蒸気発生ヒータ56の設置箇所と電熱ユニット60の設置箇所とはほぼ高さにあるので、蒸気発生ヒータ56から電熱ユニット60へとストレートに熱が伝わり、伝熱効率が向上する。
【0056】
蒸気発生ヒータ56への通電と同時に、図5に示す送風装置25および蒸気加熱ヒータ41への通電も開始される。送風装置25は、気体吸込口24から箱体20の内部の気体を吸い込み、外部循環路30に気体を送り出す。遠心ファン26によって、気体が送り出されるので、プロペラファンに比べて気体の流速が速い。また、遠心ファン26を直流モータで高速回転させた場合には、気体の流速は極めて速くなる。このため、外部循環路30を形成するパイプを断面円形でしかも小径のものとすることができる。これにより断面矩形用ダクトで外部循環路30を形成する場合に比べ、外部循環路30の表面積が小さくなる。したがって、内部を熱い気体が通るにもかかわらず、外部循環路30からの熱拡散が少なくなり、本発明の食品の加熱器1のエネルギ効率が向上する。外部循環路30を断熱材で巻く場合も、その断熱材の量が少なくてすむ。
【0057】
そして、ポット51の中の水が沸騰すると、100℃、1気圧の飽和水蒸気が発生する。飽和水蒸気は蒸気吸引エジェクタ34によって速やかに吸上げられ、アウターノズル35から後段エジェクタ37に噴出される。
【0058】
後段エジェクタ37においては、蒸気吸引エジェクタ34のアウターノズル35から噴出された飽和水蒸気を含む気体にバイパス路38から流れてきた気体が合流する。蒸気吸引エジェクタ34をバイパスしてその下流に気体が吸込まれるバイパス路38の存在によって循環器の圧送が小さくなり、遠心ファン26を効率良く駆動することができる。後段エジェクタ37を経た飽和水蒸気を含む気体は高速でサブキャビティ40に突入する。
【0059】
本発明において、上述したような加熱調理器における箱体20の内部または外部に、当該箱体20の温度を調節するためのヒータ(図示せず)を含んでもよく、当該ヒータにより、過熱水蒸気の供給を停止する際に、該ヒータにより食品を加熱することができる。
【0060】
以下実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されることを意味しない。
【0061】
(実施例1:ビタミンC減少率)
本実施例1において、試料としてほうれん草下茹(150g)を用い、さらに上述の食品加工装置を用いて、過熱水蒸気調理によるビタミンC減少率と加熱時間との関係を調べた。供給した過熱水蒸気の温度は、100℃とした。この温度は箱体20内の食品近傍に熱電対を挿入して測定した。試料に供給した過熱水蒸気は、凝縮水量に換算して、箱体の内容積1リットルに対して20cm/分、流速3m/秒、加熱8分後の試料の周囲雰囲気における水蒸気成分の含有率が99.6vol%であった。また、箱体内に設置するときのほうれん草下茹の表面温度は22℃であった。
【0062】
実施例1の手法により8分間加熱調理したほうれん草のビタミンC減少率は15%であった。
【0063】
(比較例1)
実施例1の食品加工装置の変わりに従来のゆで調理法を用い、試料としてのほうれん草下茹(150g)について、沸騰水中(100℃)でのビタミンC減少率と加熱時間との関係を調べた。加熱1分後のビタミンC減少率は31%であった。
【0064】
(実施例2:油脂の酸化)
本実施例2において、試料として3枚おろしの鯵の半身(110g)を用い、さらに上述の食品加工装置を用いて、過熱水蒸気調理法による油脂の酸化と加熱時間との関係を調べた。なお、油脂の酸化の度合いは、過酸化物価で示すものとする。すなわち、過酸化物価は油脂中の過酸化基(−OOH)の量を測定したもので、一般的に油脂の劣化が進むと、過酸化物価の値は上昇するものである。ここで、一般的な品目の過酸化物価の値の目安を列挙すれば、(i)即席めん類:30meg/kg以下(食品衛生法規格基準)、(ii)油で処理した菓子:30meg/kg以下(厚生省指導要領)および(iii)弁当および惣菜:原材料が10meg/kg以下(厚生省弁当および惣菜の衛生規範)である。また、本実施例2において、供給した過熱水蒸気の温度は、280℃とした。この温度は箱体20内の食品近傍に熱電対を挿入して測定した。試料に供給した過熱水蒸気は、凝縮水量に換算して、箱体の内容積1リットルに対して20cm/分、流速3m/秒、加熱11分後の試料の周囲雰囲気における水蒸気成分の含有率が99.6vol%以上であった。また、箱体内に設置するときの鯵の表面温度は8℃であった。
【0065】
実施例2の手法により11分間加熱調理した鯵の過酸化物価は、29.6meq/kgであった。
【0066】
(比較例2)
実施例2の食品加工装置の代わりにグリル(ヒータ高さ5cm)を用い、実施例2で使用した鯵と同じ個体である半身の皮側8分の時間を加熱した。得られた鯵の過酸化物価は、53.8meq/kgであった。
【0067】
実施例2および比較例2の結果より、本発明の食品加工方法および食品加工装置を用いることにより、油脂の酸化抑制効果は、グリルによる場合と比べて、約2倍大きいことがわかる。
【0068】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】食品中の成分の酸化を防止する機構を説明する図である。
【図2】油脂成分の酸化を防止する機構を説明する図である。
【図3】加熱時間と食品内部温度との関係を示す図である。
【図4】加熱時間と食品の水分変化量の関係を示す図である。
【図5】本発明の食品加工装置の内部機構の一例を示す概略断面図である。
【図6】蒸気発生装置の垂直断面図である。
【図7】蒸気発生装置の水平断面図である。
【符号の説明】
【0070】
20 箱体、21 受皿、22 ラック、23 気流制御板、24 気体吸込口、25 送風装置、26 遠心ファン、27 ファンケーシング、30 外部循環器、31 パイプ、32 排気口、33 パイプ、34 蒸気吸引エジェクタ、35 アウターノズル、36 パイプ、37 後段エジェクタ、38 バイパス路、39 口、40 サブキャビティ、41 蒸気加熱ヒータ、42 底面パネル、43 噴気口、44 気体放出口、45 ダンパ、50 蒸気発生装置、51 ポット、52 排水パイプ、53 排水パイプ、54 排水バルブ、55 水位センサ、56 蒸気発生ヒータ、60 伝熱ユニット、61 リング、62 フィン、63 洗浄パイプ、63 給水パイプ、64 受入口、65 洗浄パイプ、66 洗浄パイプ、67 落差形成パイプ、70 水タンク室、71 水タンク、72 給水パイプ、73 ポンプ、74 ポンプケーシング、75 インペラ、76 モータ、90 食品。
【出願人】 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【出願日】 平成16年1月30日(2004.1.30)
【代理人】 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎

【識別番号】100085132
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 俊雄

【識別番号】100083703
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 義平

【識別番号】100096781
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 豊

【識別番号】100098316
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 久登

【識別番号】100109162
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 將行

【公開番号】 特開2005−211012(P2005−211012A)
【公開日】 平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願番号】 特願2004−24092(P2004−24092)