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【発明の名称】 茸類の粉砕レベルの評価方法、茸類エキスの抽出方法、茸類エキス製品の製造方法、茸類のエキス、茸類エキス製品
【発明者】 【氏名】神谷 晋司
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内

【氏名】進藤 美穂
【住所又は居所】秋田県由利郡仁賀保町平沢字画書面15 株式会社TDK秋田研究所内

【要約】 【課題】万年茸の粉砕レベルを正確に評価でき、有効成分の収量を向上させることのできる茸類の粉砕レベルの評価方法、茸類エキスの抽出方法、茸類エキス製品の製造方法等を提供することを目的とする。

【解決手段】嵩密度が所定以上のレベルとなるまで粉砕する粉砕工程と、粉砕された子実体の粉砕物から、子実体のエキスを抽出する抽出工程と、抽出されたエキスを粉末化し、得られた粉末を用い、茸類エキス製品を形成する製品形成工程と、を経ることで、茸類エキス製品を製造する。このとき、粉砕工程では、子実体の粉砕物の嵩密度が、0.2[g/cm]以上、より好ましくは0.25[g/cm]となるまで、子実体を粉砕するのが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茸類の子実体を粉砕する工程と、
粉砕された前記子実体の粉砕物の嵩密度を計測し、前記嵩密度に基づいて前記子実体の粉砕レベルを評価する工程と、
を有することを特徴とする茸類の粉砕レベルの評価方法。
【請求項2】
茸類の子実体を、嵩密度が所定以上のレベルとなるまで粉砕する粉砕工程と、
粉砕された前記子実体の粉砕物から、当該子実体のエキスを抽出する抽出工程と、
を有することを特徴とする茸類エキスの抽出方法。
【請求項3】
前記粉砕工程では、気流式粉砕装置を用いて前記子実体を粉砕することを特徴とする請求項2に記載の茸類エキスの抽出方法。
【請求項4】
前記抽出工程では、熱水抽出により前記子実体のエキスを抽出することを特徴とする請求項2または3に記載の茸類エキスの抽出方法。
【請求項5】
前記抽出工程では、エタノールを用い、前記子実体のエキスを抽出することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の茸類エキスの抽出方法。
【請求項6】
茸類の子実体を、嵩密度が所定以上のレベルとなるまで粉砕する粉砕工程と、
粉砕された前記子実体の粉砕物から、当該子実体のエキスを抽出する抽出工程と、
抽出された前記エキスを粉末化し、得られた粉末を用い、茸類エキス製品を形成する製品形成工程と、
を有することを特徴とする茸類エキス製品の製造方法。
【請求項7】
前記粉砕工程では、前記子実体の粉砕物の嵩密度が0.2[g/cm]以上となるまで、前記子実体を粉砕することを特徴とする請求項6に記載の茸類エキス製品の製造方法。
【請求項8】
前記抽出工程におけるエキス収率が10[%]以上であることを特徴とする請求項6または7に記載の茸類エキス製品の製造方法。
【請求項9】
前記抽出工程における水溶性多糖収率が1.3[%]以上であることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の茸類エキス製品の製造方法。
【請求項10】
前記茸類が万年茸であることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の茸類エキス製品の製造方法。
【請求項11】
茸類の子実体を粉砕した粉砕物から抽出される前記茸類のエキスであって、
嵩密度が0.2[g/cm]以上となるまで前記子実体を粉砕することで得られる前記粉砕物から抽出されたものであることを特徴とする茸類のエキス。
【請求項12】
エキス収率が10[%]以上であることを特徴とする請求項11に記載の茸類のエキス。
【請求項13】
水溶性多糖収率が1.3[%]以上であることを特徴とする請求項11または12に記載の茸類のエキス。
【請求項14】
分子量5000以上の水溶性多糖を7[mg/g子実体]以上含むことを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の茸類のエキス。
【請求項15】
茸類の子実体を粉砕した粉砕物から前記茸類のエキスを抽出し、抽出された前記エキスを原料として製造される茸類エキス製品であって、
嵩密度が0.2[g/cm]以上となるまで前記子実体を粉砕することで得られる前記粉砕物から抽出した前記エキスを、前記原料としていることを特徴とする茸類エキス製品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、万年茸をはじめとする茸類の粉砕レベルの評価方法、茸類エキスの抽出方法、茸類エキス製品の製造方法、茸類のエキス、茸類エキス製品に関する。
【背景技術】
【0002】
万年茸はサイワイタケとも称される茸類であり、中国名では霊芝(れいし)とも称され、旧来より床飾り等の鑑賞用とされていた。
近年、霊芝の薬効効果が注目され、霊芝は顆粒、錠剤等の形態で健康補助食品として提供されている。
【0003】
万年茸を栽培するには、おが屑や米ぬか、ふすま等を混ぜたもの(これを培地と称する)を培養袋や広口ビン等の容器に充填した後、この培地に菌を植え付け、これを一定期間培養させる。すると、菌(菌糸)が容器内の培地に蔓延し、いわゆる菌床が得られる。この菌床を、所定範囲内の湿度・温度・照度環境に維持することで菌床から万年茸の子実体が生えてくるので、この環境を一定期間維持して所望の大きさに生育させる。そして、生育した子実体を収穫し、粉砕、エキス抽出、粉末化といった工程を経て、顆粒、錠剤、カプセル等といった形態の健康補助食品とする。
【0004】
ところで、このような粉砕工程等において、子実体の粉砕レベルを管理するための尺度として、従来は、例えば「2〜20mm」といった長さ、粒径、篩(ふるい)のメッシュサイズ等を用いていた(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−56362号公報(第3頁、段落[0016])
【特許文献2】特開2003−212788号公報(請求項1等)
【特許文献3】特開平5−139989号公報(請求項1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、万年茸のように、菌糸の集合体からなるものは、粉砕しても繊維を完全に破壊するのは困難である。したがって、粉砕した粉砕物は、球状、塊状に近い形状ではなく、針状、あるいは繊維が絡まったような綿状等の異形となっている。
このため、長さを測るといっても、異形の粉砕物の長手方向に正確に測ることは困難である。粒径を用いる場合も、粒径の計測に用いる粒度分布計では、異形の計測対象物(粉砕物)の粒径を正確に計測するのは困難である。メッシュサイズを用いる場合、実際には所定のメッシュサイズを有した篩を通るか否かを判定することになるが、針状の粉砕物は、その方向によって篩のメッシュを通過したりしなかったりするため、この方法でも正確な評価は困難である。
このように、従来の技術では、粉砕物の粉砕レベルを正確に評価することが困難であり、粉砕レベルを実質的に管理していたとは言えないのが実状である。万年茸等の場合、粉砕物の粉砕レベルが、得られる有効成分の収率に影響するため、有効成分の収率に向上の余地があると言える。
また、このように、粉砕レベルを管理できていない粉砕物から製造される顆粒、錠剤、カプセル等は、品質が十分に安定していたとは言い切れない。
さらに、粉砕物から有効成分のエキスを抽出した後の残渣も、粒の大きいものが混在している可能性があるため、これをそのまま食品として摂取するには、飲下するとき等に違和感があるために適さない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、万年茸の粉砕レベルを正確に評価でき、有効成分の収率を向上させることのできる茸類の粉砕レベルの評価方法、茸類エキスの抽出方法、茸類エキス製品の製造方法等を提供することを目的とする。
また他の目的は、万年茸の粉砕レベルを正確に評価することによって、有効成分の高い収率を有した茸類のエキス、茸類エキス製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもとになされた本発明の茸類の粉砕レベルの評価方法は、茸類の子実体を粉砕する工程と、粉砕された子実体の粉砕物の嵩密度を計測し、嵩密度に基づいて子実体の粉砕レベルを評価する工程と、を有することを特徴とする。このように、嵩密度を用いることで、粉砕物の形状等に左右されず、従来より高い精度で子実体の粉砕レベルを評価することが可能となる。
このような評価方法は、茸類の粉砕レベルを評価する必要がある様々なケースで用いることができるが、例えば、以下に示すような茸類エキスの抽出プロセス、茸類エキス製品の製造プロセスで用いるのに好適である。
【0008】
本発明の茸類エキスの抽出方法は、茸類の子実体を、嵩密度が所定以上のレベルとなるまで粉砕する粉砕工程と、粉砕された子実体の粉砕物から、子実体のエキスを抽出する抽出工程と、を有することを特徴とする。このようにして、嵩密度が所定以上のレベルとなるまで粉砕することで、嵩密度による工程管理が可能となる。
ここで、茸類エキスとは、茸類の有効成分を含むものであり、水溶性エキス、水溶性多糖等がある。
粉砕工程では、粉砕手段として、凍結粉砕法等を用いることもできるが、例えば気流式粉砕装置を用いて子実体を粉砕することができる。
また、抽出工程では、熱水抽出により子実体のエキスを抽出することができる。この場合、嵩密度を、例えば0.2[g/cm]以上、より好ましくは0.25[g/cm]以上となるように管理することで、熱水抽出のみで高いエキス収率、水溶性多糖収率を得ることができる。
さらに、抽出工程では、エタノールを用い、子実体のエキスを抽出しても良い。この場合、エタノールによる抽出のみでも良いし、また含水エタノールによる抽出も可能で、さらに熱水抽出による抽出と組み合わせることも可能である。
【0009】
本発明は、茸類の子実体を、嵩密度が所定以上のレベルとなるまで粉砕する粉砕工程と、粉砕された子実体の粉砕物から、子実体のエキスを抽出する抽出工程と、抽出されたエキスを粉末化し、得られた粉末を用い、茸類エキス製品を形成する製品形成工程と、を有することを特徴とする茸類エキス製品の製造方法として捉えることもできる。
ここで、茸類エキス製品としては、カプセル状、タブレット状、顆粒状、粉末状、ドリンク状等の形態がある。
このとき、粉砕工程では、子実体の粉砕物の嵩密度が、0.2[g/cm]以上、より好ましくは0.25[g/cm]となるまで、子実体を粉砕するのが、エキス収率、水溶性多糖収率等の面で好ましい。すなわち、嵩密度を0.2[g/cm]以上とすることで、抽出工程におけるエキス収率を10[%]以上、水溶性多糖収率を1.3[%]以上等とすることができる。
【0010】
本発明は、茸類の子実体を粉砕した粉砕物から抽出される茸類のエキスとして捉えることもできる。この茸類のエキスは、子実体を、嵩密度が0.2[g/cm]以上となるまで粉砕することで得られる粉砕物から抽出されたものであることを特徴とする。このような茸類のエキスは、上記したような茸類エキス製品の原料となる中間生成物である。
嵩密度が0.2[g/cm]以上の粉砕物から抽出された茸類のエキスは、エキス収率を10[%]以上、水溶性多糖収率を1.3[%]以上とすることができる。また、この茸類のエキスは、分子量5000以上の水溶性多糖を、7[mg/g子実体]以上含むものとすることができる。
【0011】
本発明は、茸類の子実体を粉砕した粉砕物から茸類のエキスを抽出し、抽出されたエキスを原料として製造される茸類エキス製品として捉えることもできる。この場合の茸類エキス製品は、子実体を、嵩密度が0.2[g/cm]以上となるまで粉砕することで得られる粉砕物から抽出したエキスを、原料としていることを特徴とする。
【0012】
本発明が対象とする茸類は、主に万年茸である。この他に、例えば、シイタケ、ナメコ、ヒラタケ、シメジ、エノキタケ、キクラゲ、マイタケ、スエヒロタケ、チョレイマイタケ、コフキサルノコシカケ、カワラタケ、メシマコブ、アガリクス、ヤマブシタケ、ハナビラタケ等が挙げられる。これらの茸類に対しても本発明を適用することができる。さらに言えば、特にこれらのうち、繊維質が硬い、サルノコシカケ科の茸類、メシマコブ等に本発明は好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、嵩密度を用いることで、粉砕物の粉砕レベルを正確に評価することができる。これにより、茸類の子実体からエキス抽出を行う過程等において、エキス収率、つまり、得られる有効成分の収率を管理することが可能となり、有効成分の収率を従来以上に向上させることが可能となる。さらに、粉砕レベルを正確に評価できるので、粉砕レベルが一定の範囲に管理された粉砕物から製造される顆粒、錠剤、カプセル等において、有効成分の含有量等の品質を従来以上に安定させることができる。
加えて、粉砕レベルを正確に評価できるので、粉砕レベルを所定レベル以上に管理することで、粉砕物から有効成分を抽出した後の残渣も、粒の大きいものの混在を防止でき、この残渣をそのまま食品として摂取することも可能となり、原料を有効利用でき、また廃棄量を削減することもできる。
【0014】
また、嵩密度を0.2[g/cm]以上、より好ましくは0.25[g/cm]以上に管理して得られた茸類のエキス、茸類エキス製品は、従来手法で管理していた場合に得られるものに比較し、高い収率でエキスや水溶性多糖を含んだものとすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における茸類エキスの抽出プロセス、茸類エキス製品の製造プロセスの流れを説明するための図である。
霊芝(茸類)エキスを抽出するための子実体は、培地に菌が植え付けられ、これを一定期間培養することで得られた菌床を、所定範囲内の湿度・温度・照度環境に維持することで得られる。菌床からは、万年茸の鹿角状の子実体(いわゆる鹿角霊芝)が生えてくる。この子実体を菌床から切り取り、所定期間乾燥させると乾燥子実体が得られるので、この乾燥子実体から、以下のようにして霊芝エキスの抽出を行う。
【0016】
すなわち、乾燥子実体(以下、単に子実体と称する)を、回転刃の付いた破砕装置等で粗粉砕した後、乾式ジェットミル等の粉砕手段によって微粉砕する。
このとき、微粉砕することで得られる微粉砕物の大きさ(粉砕レベル)は、嵩(カサ)密度によって評価する。
【0017】
嵩密度は、原理的には、図2に示すように、所定の容積の容器1に、微粉砕物10を上方から注ぎ、容器1の上端面1aよりも上方にまで盛り上がるようにする。このとき、過大な微粉砕物10の混入を防ぐため、容器1に注ぐ微粉砕物10は、所定メッシュサイズの篩を通すのが好ましい。そして、上端面1aより盛り上がった微粉砕物10を、板2等によって容器1の上端面1aに沿って摺り切る。この後、容器1内に残った微粉砕物10の重量Wを計測し、これを容器1の容積Vで除算したものが、嵩密度Xとなる。
X=W/V [g/cm
【0018】
本実施の形態では、嵩密度Xが、X≧0.2、より好ましくはX≧0.25となるまで、微粉砕を行う。
【0019】
所定以上の嵩密度Xとなった微粉砕物は、熱水抽出、エタノール抽出等といった抽出法により、微粉砕物からβ−グルカン等の有効成分の抽出が行われる。
本実施の形態では、その抽出法を限定する意図は無く、熱水抽出とエタノール抽出を順次行なってもよいし、他の抽出法を用いるようにしてもよい。
微粉砕物からの有効成分の抽出後、水やエタノールを常圧あるいは減圧雰囲気下で蒸発させることで、エキス抽出自体は完了する。
【0020】
引き続き、抽出されたエキス、または残渣を含むスラリー状のエキスを、スプレードライヤ等で粉末化した後、これをカプセルに充填したり、バインダ等を混合して所定形状の成形することでタブレットの打錠を行ったりすることで、所定の形態の製品を得ることができるのである。もちろん、カプセルやタブレット以外にも、粉末化する際に所定粒度の微粉末あるいは顆粒状としたり、これを液体に混合してドリンク剤とすること等ももちろん可能である。
【実施例1】
【0021】
ここで、微粉砕物の粉砕レベルの評価を、嵩密度で行ったときと、従来の粒度分布で行ったときを比較したのでその結果を示す。
収穫後、乾燥した鹿角霊芝を3mm角程度に粗粉砕した後、乾式ジェットミルで微粉砕を行い、微粉砕物を得た。ここで、乾式ジェットミルに対する、粗粉砕後の粗粉砕物の供給速度を、
Test1:5.0[kg/Hr]
Test2:3.5[kg/Hr]
Test3:2.5[kg/Hr]
Test4:1.5[kg/Hr]
Test5:0.5[kg/Hr]
とし、粉砕状態の異なる5種類の微粉砕物を得た。
言い換えれば、10[kg]の粗粉砕物を処理するのに要する時間(粉砕時間)は、
Test1:2時間
Test2:2時間50分
Test3:4時間
Test4:6時間42分
Test5:20時間
となる。
【0022】
上記のようにして得られた微粉砕物を、カーボンテープ上に固定し、さらに帯電防止のためPt−Pdをスパッタコーティングしたものを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した(観察時の加速電圧:0.5kV、エミッション電流5nA)。
図3(a)はTest1、図3(b)はTest2、図4(a)はTest3、図4(b)はTest4、図5はTest5によって得られた微粉砕物のSEM写真である。
【0023】
これらのSEM写真からも明らかなように、乾式ジェットミルへの粗粉砕物の供給速度を低く、つまり粉砕時間を長くし、乾式ジェットミル内で粉砕される時間を長くするほど、得られる微粉砕物の粒子が細かくなるのは視覚的にも明らかである。
【0024】
このようにして得られたTest1〜Test5の微粉砕物について、嵩密度を測定した。これには、体積20mlの測定用セル(容器1)に42メッシュの目開きの篩を通して微粉砕物を落下させ、体積20mlあたりの微粉砕物の重量を測り、嵩密度を算出した。
比較のため、上記Test1〜Test5の微粉砕物を、メタノール中に超音波を用いて分散させ、レーザー回折式粒度分布測定機により、微粉砕物の粒度分布を測定した。
その結果が表1である。
【0025】
【表1】


【0026】
この表1に示すように、Test1〜Test5の微粉砕物は、図3〜図5に示したSEM写真では、粉砕レベルの違いが明らかに確認できているにもかかわらず、粒度分布の測定結果では、平均粒径、粒度分布ともに、Test1〜Test5の微粉砕物で殆ど変化が無い結果となった。
【0027】
これに対し、嵩密度は、
Test1:0.18[g/cm
Test2:0.22[g/cm
Test3:0.26[g/cm
Test4:0.28[g/cm
Test5:0.35[g/cm
と、Test1〜Test5の微粉砕物で明らかに異なっており、また図3〜図5に示したSEM写真と同様、乾式ジェットミルへの粗粉砕物の供給速度を低く、つまり粉砕時間を長くし、乾式ジェットミル内で粉砕される時間を長くするほど、得られる微粉砕物の嵩密度が大きくなる、という相関関係が得られている。
【0028】
このようにして、万年茸のように菌糸の集合体からなる試料は粉砕しても繊維を完全に破壊することが困難であり、綿状や針状となるため、液中で測定する粒度分布では真の粒径を評価することができないことが確認できた。これに対し、嵩密度はSEM写真の破砕レベルによく対応し、万年茸の粉砕レベルを数値化して正確に評価できることが確認できた。
【0029】
また、図5に示したTest5の微粉砕物では、万年茸の菌糸がほぼ完全に破砕されていることが確認できた。つまり、嵩密度を0.35程度とすることで、万年茸の菌糸がほぼ完全に破砕された微粉砕物を得ることができると言える。
【0030】
さて、微粉砕後、100℃、1時間の熱水抽出によりエキスの抽出を行った。そして、抽出液をメンブランフィルターで濾過し、濾液を蒸発乾固させた後、その重量を測定し、これをエキス収率とした。
その結果が、図6に示すものである。
【0031】
この図6に示すように、水溶性エキスおよび水溶性多糖の収率は、嵩密度0.2[g/cm]未満では殆ど一定であるが、0.2[g/cm]以上になると、水溶性エキスおよび水溶性多糖の収率が高くなることが確認された。
【0032】
さらに、前記の濾液の上清をトリフルオロ酢酸で加水分解し、グルコース量を測定することで水溶性多糖類の収率を評価した。このとき、水溶性多糖の分子量を、5000未満、5000以上30000未満、30000以上100000未満、100000以上に区分し、各区分ごとの収率を調べた。
その結果が、図7に示すものである。
【0033】
この図7に示すように、嵩密度が大きくなるに従い、5000未満といった分子量の大きい多糖の収率は大きな変化はないものの、5000以上30000未満、30000以上100000未満、100000以上といった分子量の大きい多糖の収率が明らかに増加していることが明らかである。これにより、嵩密度を大きくすることで、水溶性多糖、つまり有効成分であるβ−グルカンの収率が向上することが確認できた。
【0034】
このようにして、万年茸の子実体からエキス抽出を行う過程で、嵩密度を用いることで、粉砕レベルを正確に評価することができるのである。これにより、量産工程においても、得られる有効成分の収率を管理することが可能となり、有効成分の収率を従来以上に向上させることが可能となる。さらに、粉砕レベルを正確に評価できるので、粉砕レベルが一定の範囲に管理された微粉砕物から製造される顆粒、錠剤、カプセル等において、水溶性多糖の含有量等の品質を従来以上に安定させることができる。
加えて、粉砕レベルを正確に評価できるので、粉砕レベルを所定レベル以上に管理することで、微粉砕物から有効成分を抽出した後の残渣も、粒の大きいものの混在を防止できる。これにより、この残渣をそのまま食品として摂取することも可能となるので、原料の有効利用、廃棄量の削減といった効果をあわせて奏することもできる。
【0035】
また、嵩密度を0.2[g/cm]以上、より好ましくは0.25[g/cm]以上に管理することで、高い収率でエキスや水溶性多糖を得ることが可能となる。
さらに、嵩密度を0.2[g/cm]以上、より好ましくは0.25[g/cm]以上とすることで、図7に示したように、熱水抽出のみで、高い分子量のエキスや水溶性多糖を多く得ることが可能となる、とも言える。
【0036】
ところで、上記実施の形態では、粗粉砕工程、微粉砕工程の2段階を経る構成としたが、これに限るものではなく、1段階のみ、あるいは3段階以上の粉砕工程を経るようにしてもよい。また、粉砕や抽出、粉末化のために用いる手法は、いかなるものであってもよい。加えて、万年茸の子実体を生育するプロセスについても、何らの限定を行う意図はない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で示した構成に対し、構成の変更、削除、追加等を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態における茸類エキスの抽出プロセス、茸類エキス製品の製造プロセスを示す図である。
【図2】嵩密度の原理的な計測方法を示す図である。
【図3】(a)供給流量を5.0[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像、(b)供給流量を3.5[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像である。
【図4】(a)供給流量を2.5[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像、(b)供給流量を1.5[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像である。
【図5】供給流量を0.5[kg/Hr]とした場合に得られる微粉砕物のSEM像である。
【図6】嵩密度とエキス収率、嵩密度と水溶性多糖収率の関係を示す図である。
【図7】嵩密度と水溶性多糖分子量の関係を示すである。
【符号の説明】
【0038】
10…微粉砕物
【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
【出願日】 平成16年1月29日(2004.1.29)
【代理人】 【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充

【公開番号】 特開2005−210968(P2005−210968A)
【公開日】 平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願番号】 特願2004−21693(P2004−21693)