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【発明の名称】 小麦粉の低アレルゲン化方法及びそれによって得られる低アレルゲン化小麦粉並びに小麦粉加工食品
【発明者】 【氏名】森田 栄伸

【氏名】松尾 裕彰

【氏名】堀江 修二

【氏名】松浦 祥悟

【要約】 【課題】小麦に含まれるアレルゲン、特に、小麦粉に含まれる食物依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルゲン(アレルギー原因蛋白質)を有利に低減化せしめる技術を提供すること、特に、小麦粉に含まれるアレルゲンのIgE結合エピトープを有利に低減化せしめる方法と、かかる方法によって低アレルゲン化された小麦粉、並びにそのような低アレルゲン化小麦粉を原料とする小麦粉加工食品を、提供すること。

【解決手段】水系媒体の存在下において、小麦粉に対して、酵母又は麹の抽出物を接触せしめることにより、小麦粉中の小麦アレルゲンを分解するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系媒体の存在下、小麦粉に対して、酵母又は麹の抽出物を接触せしめることにより、かかる小麦粉中の小麦アレルゲンを分解することを特徴とする小麦粉の低アレルゲン化方法。
【請求項2】
前記小麦アレルゲンが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルギー原因蛋白質である請求項1に記載の小麦粉の低アレルゲン化方法。
【請求項3】
前記小麦アレルゲンが、配列番号1乃至配列番号6に示されるアミノ酸配列のエピトープの何れかを有している請求項1又は請求項2に記載の小麦粉の低アレルゲン化方法。
【請求項4】
前記小麦粉の1000重量部に対して、前記水系媒体が10〜5000重量部の割合において存在せしめられる請求項1乃至請求項3の何れかに記載の小麦粉の低アレルゲン化方法。
【請求項5】
前記小麦粉の1000重量部に対して、破砕された状態の酵母が10〜1000重量部の割合において添加されることにより、前記酵母の抽出物が該小麦粉に接触せしめられる請求項1乃至請求項4の何れかに記載の小麦粉の低アレルゲン化方法。
【請求項6】
前記小麦粉に対する麹抽出物の接触が、水1000重量部に対して、麹を10〜1000重量部の割合において混合することにより、かかる麹の抽出液を準備する一方、該抽出液を、前記小麦粉の1000重量部に対して、10〜5000重量部の割合において添加することにより、行なわれる請求項1乃至請求項4の何れかに記載の小麦粉の低アレルゲン化方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の小麦粉の低アレルゲン化方法によって、低アレルゲン化されたことを特徴とする低アレルゲン化小麦粉。
【請求項8】
請求項7に記載の低アレルゲン化小麦を用いて製造される小麦粉加工食品。
【請求項9】
パン、ケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカー、麺類、又は天婦羅である請求項8に記載の小麦粉加工食品。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉の低アレルゲン化方法、及びそれによって得られる低アレルゲン化小麦粉、並びにそのような小麦粉を用いてなる加工食品に係り、特に、食物アレルギーの中でも、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの発症を、有利に予防乃至は抑制することの出来る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、ある特定の食物摂取後に、運動負荷が加わること等により、アナフィラキシー症状を発症する疾患である。具体的に、症状としては、例えば、膨疹や紅斑の出現等が見られ、時には、血圧が低下して、意識を消失する等、生命の危険を伴うこともある。
【0003】
そして、近年、我国においても、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの報告は増加傾向にあり、そこでは、小麦、エビ、イカ、カニ、ナッツ類等の様々な食物が、原因であることが報告されている(非特許文献1)。このような食物依存性運動誘発アナフィラキシーに対する基本的な治療法としては、現在のところ、原因食物の除去療法が有効である。しかしながら、かかる原因食物を原材料として使用した加工食品が市場に多く出回っているところから、アレルギー物質を含む食品に関しては、原材料表示に明記することが義務付けられているものの、それらの全てを避けることが非常に困難となっている。このため、低アレルゲン化食品の開発が進められきているのである。
【0004】
なお、ここにおいて、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物としては、小麦が最も多く報告されている。また、小麦依存性の運動誘発アナフィラキシーにおいては、摂取する小麦の量が、アナフィラキシー症状の誘発に相関することが、知られている。即ち、小麦を低アレルゲン化して、その低アレルゲン化された小麦を用いれば、患者の症状の誘発を、防止乃至は抑制することが出来る。
【0005】
一方、健常者にあっても、アレルギー物質に感作される場合が往々にしてあるが、その場合にも、摂取する抗原量が大きく影響することから、低アレルゲン化した小麦を用いた食品を摂取することが望ましく、そのような低アレルゲン化した小麦製品は、アレルギー予防食品としても、有用となる。
【0006】
ところで、小麦を低アレルゲン化する手法としては、これまで、各種の手法が提案されており、例えば、特許文献1には、高コラゲナーゼ様活性を有し、且つ食品学的に許容される蛋白質分解酵素(具体的には、ブロメライン)を小麦粉に反応させて、小麦粉を低アレルゲン化する手法が、明らかにされている。また、特許文献2には、有機酸を用いて小麦蛋白質を水に分散し、鉱酸を加えて、小麦蛋白質に含まれるグルタミン残基及びアスパラギン酸残基の30%〜90%を脱アミド化して、低アレルゲン化小麦を得る手法が、開示されている。更に、特許文献3には、小麦粉とカーボハイドラーゼとを混合して、小麦粉に含まれる炭水化物性アレルゲンを加水分解した後、プロテアーゼを混合してタンパク質性アレルゲンを分解することにより、低アレルゲン化した小麦粉を製造する手法が、明らかにされており、そこでは、プロテアーゼとして、アクチナーゼやアルカリプロテアーゼが好適であることが記載されている。また、特許文献4〜6には、低アレルゲン化された小麦粉を用いて、お菓子や麺類等の小麦粉加工食品を製造する手法が、明らかにされている。
【0007】
しかしながら、上述せる如き手法にて低アレルゲン化された小麦粉は、配列番号7に示される小麦アレルゲン・エピトープ(QQQPP)を不活性化することを目的とするものであって、そのような小麦粉を用いて、加工食品を製造しても、小麦アレルギー、中でも、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの発症を、効果的に予防乃至は抑制し得るとは、言い難いものであった。しかも、単一の酵素のみを使用すると、その酵素に対するアレルギーを発症してしまうといったリスクがある。
【0008】
【特許文献1】特開平9−172995号公報
【特許文献2】特開2000−69915号公報
【特許文献3】特開2001−258489号公報
【特許文献4】特開2000−342203号公報
【特許文献5】特開2000−342204号公報
【特許文献6】特開2001−275553号公報
【非特許文献1】原田晋,外2名,「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(Food-Dependent Exercise-Induced Anaphylaxis(FDEIA))の本邦報告例集計による考察」,アレルギー,49(11),p.1066−1073。
【非特許文献2】森田栄伸,外5名,「ファストω−グリアジンが小麦依存性運動誘発アナフィラキシーにおける主要なアレルゲンである(Fast ω-gliadin is a major allergen in wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis)」,ジャーナル・オブ・ダーマトロジカル・サイエンス(Journal of Dermatological Science),2003(33),p.99−104。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、小麦に含まれるアレルゲン、特に、小麦粉に含まれる食物依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルゲン(アレルギー原因蛋白質)を分解して、有利に低減化せしめる技術を提供することにある。詳細には、小麦粉に含まれるアレルゲンのIgE結合エピトープを有利に低減化せしめる方法と、かかる方法によって低アレルゲン化された小麦粉、並びにそのような低アレルゲン化小麦粉を原料とする小麦粉加工食品を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明者らは、そのような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、小麦に含まれるω−グリアジンが、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの主要な原因抗原であることを知見した(非特許文献2)。また更に、研究を重ねた結果、かかるω−グリアジン中の、配列番号1〜配列番号6にて示されるアミノ酸配列(QQIPQQQ、QQFPQQQ、QQSPEQQ、QQSPQQQ、QQLPQQQ、QQYPQQQ)が、それぞれ、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルギー反応を引き起こす原因となる主要なIgE結合エピトープであることを見出した。そして、そのようなエピトープを分解するには、酵母や麹菌の抽出物が有効であることを見出したのである。
【0011】
従って、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その第一の態様とするところは、水系媒体の存在下、小麦粉に対して、酵母又は麹の抽出物を接触せしめることにより、かかる小麦粉中の小麦アレルゲンを分解することを特徴とする小麦粉の低アレルゲン化方法にある。
【0012】
また、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法における第二の態様にあっては、前記小麦アレルゲンとして、食物依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルギー原因蛋白質が挙げられる。
【0013】
さらに、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法の第三の態様においては、前記小麦アレルゲンが、配列番号1乃至配列番号6に示されるアミノ酸配列のエピトープの何れかを有している。
【0014】
加えて、本発明の第四の態様においては、前記小麦粉の1000重量部に対して、前記水系媒体が10〜5000重量部の割合において存在せしめられる。
【0015】
また、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法の第五の態様では、前記小麦粉の1000重量部に対して、破砕された状態の酵母が10〜1000重量部の割合において添加されることにより、前記酵母の抽出物が該小麦粉に接触せしめられる構成が、採用されることとなる。
【0016】
さらに、本発明の好ましい第六の態様にあっては、前記小麦粉に対する麹抽出物の接触が、水1000重量部に対して、麹を10〜1000重量部の割合において混合することにより、かかる麹の抽出液を準備する一方、該抽出液を、前記小麦粉の1000重量部に対して、10〜5000重量部の割合において添加することにより、行なわれる構成が、採用される。
【0017】
ところで、本発明は、低アレルゲン化小麦も、その対象とするものであって、上述せる如き小麦粉の低アレルゲン化方法によって、低アレルゲン化されたことを特徴とする低アレルゲン化小麦粉を、その態様とする。
【0018】
さらに、本発明は、小麦粉加工食品もまた、対象とするものであって、上述せる如き小麦粉の低アレルゲン化方法によって得られる、低アレルゲン化された小麦粉を用いて製造される小麦加工食品を、その第一の態様とするものである。
【0019】
また、かかる本発明に従う小麦粉加工食品の第二の態様においては、小麦粉加工食品として、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカー、麺類、又は天婦羅が、例示され得る。
【発明の効果】
【0020】
そして、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法における、先述した第一の態様によれば、水系媒体の存在下で、微生物である酵母や麹の抽出物が、小麦粉に接触せしめられているところから、かかる抽出物に含まれる酵素が、小麦粉中のアレルゲンを効果的に分解し、低アレルゲン化が有利に図られるようになっているのである。また、そのような方法によって得られる小麦粉にあっては、アレルゲンが不活化することとなる。
【0021】
しかも、小麦粉中のアレルゲンに反応し、かかるアレルゲンを不活化せしめるものとして、醸造や発酵食品の分野で従来より汎用されている酵母や麹の抽出物(様々な酵素の混合物)が、採用されているところから、精製した単一の酵素を使用する場合とは異なり、酵素によるアレルギー発症の恐れも低く、食品としての安全性も極めて高度に確保され得ると共に、コストの低廉化を図ることも出来る。
【0022】
また、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法の第二の態様においては、小麦粉アレルギーとして、特に、食物依存性運動誘発アナフィラキシーが挙げられ、酵母や麹の抽出物が、そのようなアレルギーの原因蛋白質を有利に低減化せしめるのである。
【0023】
さらに、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法の第三の態様においては、小麦粉アレルゲンとして、配列番号1〜配列番号6に示されるアミノ酸配列のエピトープの何れかを含む蛋白質若しくはペプチド断片が挙げられており、酵母や麹の抽出物が、そのようなエピトープを効果的に分解するのである。
【0024】
加えて、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法の上記した第四の態様によれば、前記小麦粉の1000重量部に対して、前記水系媒体が10〜5000重量部の割合において存在せしめられている、つまり、水系媒体の量が小麦粉量の1〜500%とされているところから、低アレルゲン化した小麦粉を乾燥することなく、そのまま、加工して、パンや麺類、お菓子、天婦羅等の各種の加工食品を製造することが可能となるのである。
【0025】
また、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法の上記した第五及び第六の態様に従って、水系媒体の存在下、所定量の酵母や麹の抽出物を小麦粉に接触せしめれば、より簡便な操作で、食品又は食品添加物として安全な低アレルゲン化した小麦粉を容易に得ることが出来る。
【0026】
また、本発明に従う低アレルゲン化小麦粉にあっては、小麦アレルゲンの中でも、特に、食物依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルゲン(IgE結合エピトープ)が効果的に分解されており、そのようなアレルギーの発症が、有利に予防乃至は抑制されることとなる。
【0027】
さらに、本発明に従う小麦粉加工食品にあっては、上述せる如き低アレルゲン化小麦粉が原料として使用されているところから、小麦アレルギー、特に食物依存性運動誘発アナフィラキシーの発症が、有利に予防乃至は抑制されるのである。従って、本発明に従う、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカー、麺類、天婦羅等の小麦粉加工食品は、アレルギーの予防食材としても有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
ところで、本発明において、アレルゲンとは、小麦そのものや小麦を含む食品を経口摂取した際に、アレルギー反応を引き起こす原因物質であり、特に、小麦粉中に含まれる原因物質の中でも、食物(小麦)依存性運動誘発アナフィラキシーの主要な原因抗原であるω−グリアジン中の、IgE抗体に結合して反応を誘導する恐れがある配列番号1〜配列番号6にて示されるアミノ酸配列(QQIPQQQ、QQFPQQQ、QQSPEQQ、QQSPQQQ、QQLPQQQ、QQYPQQQ)の何れかを含む蛋白質乃至はペプチド断片である。
【0029】
そして、上述せる如き小麦粉に含まれるアレルゲンの主要なIgE結合エピトープを低減化せしめることによって、アレルギーの発症が予防乃至は抑制されることとなるが、本発明においては、かかるエピトープを有する小麦アレルゲンを、水系媒体の存在下、酵母や麹の抽出物を用いて分解するところに、大きな特徴を有しているのである。
【0030】
このように、本発明においては、醸造や発酵食品の分野で従来より汎用されている酵母や麹の抽出物、具体的には、酵母や麹に含まれる様々な酵素の混合物、が用いられているところから、そのような抽出物にて処理された小麦粉にあっては、人体に対する安全性に優れ、食品としても充分に許容され得るものとなる。また、酵母や麹は、特別な微生物でもないところから、低アレルゲン化小麦粉の製造コストを低く抑えることも可能となる。しかも、抽出物は、様々な酵素の混合物であって、精製した単一の酵素ではないところから、酵素自体がアレルゲンとなってアレルギーを発症するような危険性も極めて低くなっているのである。つまり、小麦アレルゲンを複数の酵素にて分解するところから、一つ一つの酵素の量を、少量とすることが出来、酵素に感作される危険性が極めて低くなるのである。
【0031】
なお、本発明において採用される酵母としては、食品として許容され得るものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、酒類の醸造やアルコールの製造、製パン等に用いられる、サッカロミセス属(Saccharomyces)の酵母である、ビール酵母や清酒酵母、焼酎酵母、ワイン等果実酵母、パン酵母、醤油酵母、味噌酵母、漬物用酵母等を挙げることが出来、これらのうちの少なくとも1種以上の酵母から得られる抽出物が、有利に用いられることとなる。
【0032】
また一方、本発明において採用される麹は、よく知られているように、米やムギ、大豆、ふすま等のデンプンにカビを繁殖させたものである。かかる麹には、例えば、清酒麹、味噌麹、醤油麹、みりん麹、焼酎麹、甘酒麹等があり、それらのうちの少なくとも1種以上の麹から抽出される抽出物が、有利に用いられることとなる。
【0033】
ところで、上述せる如き酵母や麹から、抽出物を得るには、従来から公知の手法が、何れも採用され得る。例えば、酵母にあっては、各種の酵素が細胞内に存在するところから、ボールミル等の公知の破砕機を用いて酵母を潰したり、ソニケーションによって細胞壁を破砕して、細胞内容物を取り出す手法が採用され、そのようにして、細胞壁が破砕された酵母を、そのまま、抽出物として用いることが出来る。なお、酵母を機械的に潰すに際しては、固体状の酵母をそのまま破砕する手法の他、蒸留水や精製水、水道水、電解水(酸性水、アルカリ性水)、牛乳、脱脂粉乳水等の水系媒体の1000重量部に対して、10〜5000重量部程度の酵母を懸濁させた後、上述せるような破砕操作を施して、細胞内の各種酵素を取り出す手法等が採用され得る。そして、そのようにして得られた固体状乃至は粉末状の抽出物や、細胞内容物が溶存された抽出液が、用いられることとなる。また、抽出液を用いる場合には、遠心分離や濾過等を実施して、酵母の細胞壁等からなるカスを取り除くことが望ましい。
【0034】
また一方、麹においては、米やムギ等のデンプンに繁殖したカビが、各種の酵素を菌体外に生成するところから、麹をそのまま使用することも可能ではあるものの、そのまま使用すると、米やムギ等のカスが小麦粉に混入するところから、そのような不都合を回避すべく、蒸留水や精製水、水道水、電解水(酸性水、アルカリ性水)、牛乳、脱脂粉乳水等の水系媒体に、各種酵素を抽出して、かかる抽出液を使用することが望ましい。かかる抽出液は、例えば、水系媒体の1000重量部に対して、その重量の1〜100%となる、10〜1000重量部の麹を混合して、4〜45℃で、1〜24時間、抽出処理を行なった後、遠心分離や濾過等を実施することにより、得ることが出来、このようにして得られた抽出液には、麹菌が細胞外に生成する酵素が溶存せしめられることとなる。
【0035】
かくして、上記した手法等によって得られる酵母や麹の抽出物には、前述せる如きアミノ酸配列を有するタンパク質若しくはペプチド断片を分解する蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)は勿論のこと、その他、デンプン分解酵素や脂質分解酵素等の各種の分解酵素も含まれている。そして、そのような抽出物中の酵素によって、本発明者らが知見した前記アミノ酸配列のエピトープが分解されて、小麦アレルギー、特に、小麦依存性運動アナフィラキシーの発症が、有利に予防乃至は抑制され得るのである。
【0036】
このように、酵母又は麹の抽出物を用いることによって、小麦粉のアレルゲンが低減されることとなるが、本発明においては、かかる小麦アレルゲンを効率的に分解すべく、所定量の水系媒体の存在下において、抽出物と小麦粉とが接触せしめられるのである。この際、水系媒体の量としては、特に制限されるものではないものの、低アレルゲン化処理を施す小麦粉の1000重量部に対して、その重量の1〜500%に相当する、10〜5000重量部の水系媒体が存在せしめられることが望ましい。何故なら、水系媒体量が少な過ぎる場合には、抽出物による小麦アレルゲンの分解が良好に実施され得なくなる恐れがあるからである。また、水系媒体量が多くなり過ぎると、低アレルゲン化処理の施された小麦粉をそのまま原料として食品加工に用いることが不可能となるからである。つまり、水系媒体量が多いと、低アレルゲン化処理の施された小麦粉が多量の水系媒体中に含有せしめられるため、乾燥工程が必要となって、手間が掛かると共に、加工食品の製造コストを高めることとなるからである。なお、本発明において、水系媒体とは、蒸留水や精製水、水道水等の水そのものの他にも、水を主体とし、且つ経口摂取が許容され得るものであれば、例えば、電解水(酸性水、アルカリ性水)、牛乳、脱脂粉乳水、エタノール水等の公知の水溶液を利用することも可能である。
【0037】
また、低アレルゲン化処理の施される小麦粉としては、小麦アレルゲンを含むものである限り、産地や、強力粉、中力粉、薄力粉等の種類によって何等制限されるものではなく、公知の各種の小麦粉に対して、本発明に従う低アレルゲン化処理が実施され得るのである。また、小麦粉は、生、乾燥、冷凍、加熱、或いは、練合処理等の任意の加工処理が施されたもの、例えば、小麦グルテンのようなものであっても良い。なお、小麦粉中に、水系媒体が予め含有されている場合は、その水系媒体も含めて、上述せる如き水系媒体量となるように水系媒体の量が調整されることが望ましいことは、言うまでもないところである。
【0038】
より具体的に、酵母の抽出物を用いて、小麦粉を低アレルゲン化するには、先ず、小麦粉と酵母の抽出物とを、水系媒体の存在下で混合し、かかる混合物乃至は混合液を、好ましくは5〜60℃、より好ましくは18〜50℃の範囲の温度で、好ましくは1〜24時間、放置して、小麦アレルゲンと抽出物に含まれる酵素を反応せしめれば良い。なお、この際、温度が低くなり過ぎると、抽出物に含まれる酵素の活性が低下して、小麦アレルゲンエピトープを効率的に分解することが困難となる一方、温度が高くなり過ぎると、酵素が熱変性して失活する恐れがある。また、反応時間が短過ぎると、小麦アレルゲンエピトープを充分に分解することが困難となる一方、反応時間が長過ぎると、小麦粉中の蛋白質が多く分解されて、例えば、パンを製造する場合に、パンが膨らまず、硬いパンになる等、小麦粉に必要とされる機能を奏し得なくなる恐れがある。
【0039】
また、使用される酵母の抽出物の量としては、特に制限されるものではないものの、小麦粉の重量の1〜100%となる量、換言すれば、小麦粉1000重量部に対して、10〜1000重量部の割合となる量が好適に採用される。けだし、かかる使用する抽出物の量が少な過ぎる場合には、目的とする小麦アレルゲンの分解を、効率的に実施することが出来なくなる恐れがあるからであり、逆に多過ぎる場合には、不経済であると共に、小麦粉の香味の減退や、物性(硬さ応力、凝集性、付着性、ガム性応力)の低下が惹起される恐れがあるからである。
【0040】
また、麹の抽出物を用いて、小麦粉を低アレルゲン化する場合においても、先ず、小麦粉と麹の抽出物とを、水系媒体の存在下で混合し、かかる混合物乃至は混合液を、好ましくは5〜60℃、より好ましくは18〜50℃の範囲の温度で、好ましくは1〜24時間、放置して、小麦アレルゲンと抽出物に含まれる酵素を反応せしめれば良い。なお、この際、温度が低くなり過ぎると、抽出物に含まれる酵素の活性が低下して、小麦アレルゲンエピトープを効率的に分解することが困難となる一方、温度が高くなり過ぎると、酵素が熱変性して失活する恐れがある。また、反応時間が短過ぎると、小麦アレルゲンエピトープを充分に分解することが困難となる一方、反応時間が長過ぎると、小麦粉中の蛋白質が多く分解されて、例えば、パンを製造する場合に、パンが膨らまず、硬いパンになる等、小麦粉に必要とされる機能を奏し得なくなる恐れがある。
【0041】
また、麹の抽出物として、上述せる如き抽出液が採用される場合、かかる抽出液の添加量としては、好ましくは、小麦粉の1000重量部に対して、10〜5000重量部の割合において、つまり、小麦粉量の1〜500%となるように添加されることが望ましい。何故なら、抽出液量が少な過ぎる場合には、酵素量が少なくなって、目的とする小麦アレルゲンの分解を、効率的に実施することが出来なくなる恐れがあるからであり、逆に多過ぎる場合には、不経済であると共に、小麦粉に麹の臭いが付着したり、小麦粉の香味の減退や、物性(硬さ応力、凝集性、付着性、ガム性応力)の低下が惹起される恐れがあるからである。
【0042】
このように、本発明にあっては、小麦粉と特定の微生物の抽出物とを、水系媒体の存在下において接触せしめるだけの簡単な操作で、低アレルゲン化が有利に実現され得ることとなるのであり、この低アレルゲン化が施された小麦粉(低アレルゲン化小麦粉)にあっては、小麦中の小麦アレルゲン、特に、食物依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルゲン・エピトープ(配列番号1〜6に示されるアミノ酸配列)が、効果的に分解され得ているのである。また、本発明では、醸造や発酵食品の分野で汎用されている安全な微生物(酵母、麹)の抽出物が、採用されているところから、食品乃至は食品添加物としての安全性も極めて高度に確保され得るのである。
【0043】
ところで、上述せる如くして得られた低アレルゲン化小麦粉は、そのまま、或いは、乾燥処理が施された後、食品原料として用いられ、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット、クラッカー、麺類、又は天婦羅等の小麦粉加工食品が、常法に従って、製造されることとなる。
【0044】
また、低アレルゲン化小麦粉を用いて、小麦粉加工食品を製造するに際しては、低アレルゲン化小麦粉を別途に得て、従来と同様に、目的とする小麦粉加工食品を製造する方法の他、小麦粉の低アレルゲン化を行ないつつ、小麦粉加工食品を製造することも可能である。例えば、パンを製造する場合には、以下の方法を採用することが出来る。即ち、小麦粉(強力粉)に対して、パン製造原料である砂糖や食塩、酵母、バター、牛乳や水等の水分と共に、上述せる如き酵母や麹の抽出物を加えて、従来と同様に、生地を捏ねるのである。そして、通常の発酵温度で、一次発酵や二次発酵等を行なえば、パン生地の発酵と共に、酵母や麹の抽出物による小麦アレルゲンの分解も行なわれる。そして、最終発酵の行なわれたパン生地を、高温で焼き上げれば、低アレルゲン化された小麦粉からなるパンが製造されることとなる。このように、小麦粉の低アレルゲン化と、小麦粉加工食品の製造を同時に行なうことが出来れば、低アレルゲン化食品の製造時間の短縮化を有利に図ることが出来る。
【0045】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0047】
<試験例 1 (エピトープ分解活性測定試験)>
先ず、2−(N−メチルアミノ)ベンゾイル(Nma)基及び2,4−ジニトロフェニル(Dnp)基を有する下記一般式(I)にて表される消光性蛍光基質を、「アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry),212,p.58−64(1993)」に記載される合成法に従って、通常の自動合成機を使用して、固和法により逐次ペプチド鎖を延長構築し、フッ化水素処理による樹脂からの切り離しと、脱保護を行ない、逆相HPLCにて目的物を分離することで、合成した。そして、かかる消光性蛍光基質をDMSOに溶解することにより、濃度が1mMとされた基質溶液を調製した。なお、下記一般式(I)にて表される消光性蛍光基質は、平均分子量が1936.5であり、配列番号1,2,4,5の何れかに示されるアミノ酸配列中のペプチド結合が切断されると、蛍光(励起波長340nm、測定波長440nm)を発する特性を有するものである。
Ac−rrK(Nma)QQXPQQQK(Dnp)r−NH2 ・・・(I)
[但し、式中、X=I/F/S/L(31:6:32:31)]
【0048】
一方、培養酵母の1×109 個を、50mMリン酸緩衝液(pH6.8)中に入れ、4℃の温度下で、ビーズを用いて破砕した。その後、かかる懸濁液を、回転速度:13000rpmで15分間、遠心分離し、上清を得ることにより、酵母抽出液を準備した。また、米麹の6.8gを、100mlの水道水中に入れ、3時間、室温下で抽出し、静置した後、上清を取ることにより、麹抽出液を準備した。
【0049】
そして、上記で準備された基質溶液を、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で100倍に希釈した。次いで、希釈した基質溶液を、200μlずつ、96穴プレートのそれぞれの穴に注入し、37℃で3分間平衡化を行ない、蛍光強度(initial blank)を測定した。その後、上記で得られた各抽出液を、5μlずつ加えて、37℃の温度条件下で反応させ、抽出液の添加直後、10分、20分及び30分の経過の後の蛍光強度を測定し、得られた結果を、図1に示した。また、比較のために、各抽出液に代えて、緩衝液を5μlずつ、基質溶液に加えて、蛍光強度を同様に測定し、結果を図1に示した。なお、蛍光強度の測定は、励起波長(λex):355nm、測定波長(λem):460nmにて実施した。
【0050】
かかる図1の結果から明らかなように、酵母抽出液又は麹抽出液を加えた場合には、時間の経過と共に蛍光強度が増加しており、酵母抽出液又は麹抽出液に含まれる酵素によって、配列番号1,2,4,5にて示される、小麦アレルゲンエピトープの何れか又は全てが切断乃至は分解されることが、認められた。
【0051】
<試験例 2 (小麦粉のアレルゲン測定)>
(A)抽出物非添加処理産物
小麦粉(日清製粉製カメリア強力粉)の0.5gに、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)の1mlを加えて懸濁し、37℃にて20時間、保持した。これを抽出物非添加処理産物とした。
【0052】
(B)麹抽出物処理産物
小麦粉(日清製粉製カメリア強力粉)の0.5gに、蛋白質濃度が0.33mg/mlの麹抽出液0.5mlと、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)の0.5mlとを加えて懸濁し、37℃にて20時間反応させ、麹抽出物処理産物とした。なお、麹抽出液は、上記<試験例1>と同様にして調製した。
【0053】
(C)酵母抽出物処理産物
小麦粉(日清製粉製カメリア強力粉)の0.5gに、蛋白質濃度が5.22mg/mlの酵母抽出液0.5mlと、100mMリン酸緩衝液(pH7.4)の0.5mlとを加えて懸濁し、37℃にて20時間反応させ、酵母抽出物処理産物とした。なお、酵母抽出液は、上記<試験例1>試験例1と同様にして調製した。
【0054】
そして、上述せる如き各種処理産物を用いて、酵母及び麹抽出物処理画分中のIgE結合エピトープ配列が低減化されているかどうかを、ドットブロット法により調べた。即ち、上記で得られた抽出物非添加処理産物、麹抽出物処理産物、及び酵母抽出物処理産物を、それぞれ、小麦粉量が2μgとなるように、PVDF膜(ミリポア社製)にスポットし、5%スキムミルクを含むTBST緩衝液(50mM Tris-buffered saline、1% Tween 20、pH7.4)にて、一晩ブロッキングした。
【0055】
また一方、配列番号8に示される合成QQSPEQQQFPQQQIPQQQペプチドを、ウサギに免疫して、血清を得た。そして、この血清をアフィニティーカラム精製したIgG画分は、配列番号1,2,3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドの何れにも反応することを、確認した。
【0056】
そして、5%スキムミルクを含むTBST緩衝液を用いて、上記ウサギの血清のIgG画分を5000倍希釈した溶液中に、上記PVDF膜を移し、室温にて1時間反応させた。次いで、TBST緩衝液にて、かかるPVDF膜を3回洗浄した後、TBST緩衝液にて30000倍希釈したペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG抗体(BIOSOURCE社)溶液中で、1時間反応させた。そして、ECL Plus Western Blotting Detection Regents(アマシャム・バイオサイエンス社)を用いて、結合したHRP標識抗ウサギIgG抗体量を、オートラジオグラフィーにて検出した。また、スポットの強度は画像解析ソフトGel-Pro Analyzer(Media Cybernetic社)にて算出すると共に、得られたスポット強度の値から、抽出物非添加処理産物における抗体反応率を100%として、抗体反応率を算出し、それらの得られた結果を下記表1に示した。
【0057】
【表1】


【0058】
かかる表1の結果から明らかなように、酵母抽出物処理産物及麹抽出物処理産物にあっては、スポットの強度が低下しており、配列番号1〜3のうちの少なくとも一つのエピトープ配列が分解されていることが、分かる。また、抗体反応率の値から、酵母抽出物処理産物及び麹抽出物処理産物は、アレルギー反応の発生が有利に抑制され得ることが、予測され得る。
【0059】
<試験例 3 (パン生地及びパンのアレルゲン測定及び患者血清IgEの反応性)>
先ず、次の3種類の液体を用意した。
(a)水道水
(b)麹抽出液(上清)
水100mlと麹6.8gとを混合して、30分毎に攪拌しながら、室温で3時間インキュベートした。そして、かかる液の上清を、麹抽出液として、取り出した。
(c)酵母抽出液(上清)
水1000gに、市販の酵母200gを加えて、攪拌、混合した。そして、ボールミルを用いて、約1時間10分をかけて、酵母の細胞を破砕し、得られた破砕液を、回転速度:3000rpmで10分間、遠心分離して、上清を、酵母抽出液として、取り出した。
【0060】
そして、小麦粉(横山製粉製エゾシカ強力粉)100gに対して、上記で準備された3種の液体うちの何れかの液体50mlと、通常のパン材料である、パン酵母6g、塩15gを加えて、パン生地を捏ねあげた。そして、ホイロ(電気式発酵庫)を、温度:37℃、湿度:80%に設定して、一次発酵:3時間10分と二次発酵:2時間20分を行なった。なお、かかる発酵時に、パン生地の温度を測定し、得られた温度を、下記表2に示した。また、二次発酵後、焼成温度:210℃(上火),200℃(下火)で、11分間焼くことにより、パンを作った。出来上がったパンは、何れも、パンとして充分に膨らんでいた。
【0061】
【表2】


【0062】
また、二次発酵が終了したパン生地(以下、生地と略記)の一部と、焼きあがったパン(以下、パンと略記)の一部を用いて、下記のアレルゲン測定及び患者血清IgEの反応性を確認した。
【0063】
−アレルゲン測定−
1. 生地については、生地1gを、100mMリン酸緩衝液(pH7.4):グリセロール=1:1の混合液5mlに加えて、ガラスホモジナイザーを用いて、懸濁させた。一方、パンについては、パン1gを、100mMリン酸緩衝液(pH7.4):グリセロール=1:1の混合液7.5mlに加えて、ガラスホモジナイザーを用いて、懸濁させた。
2. かかる各懸濁液を、回転速度:12000rpmで10分間、遠心分離した。
3. そして、上清の10μlを、それぞれ、100mMリン酸緩衝液(pH7.4):グリセロール=1:1の混合液で100倍に希釈した。
4. 上記3の希釈液50μlを、ドットブロッターを用いて、PVDFメンブレン(ミリポア社製)にスポットした。
5. そして、4℃で、5%スキムミルクを含むTBST緩衝液(50mM Tris-buffered saline、1% Tween 20、pH7.4)にて、一晩、ブロッキングした。
6. また一方、配列番号8に示される合成ペプチドを、ウサギに免疫して、血清を得た。そして、この血清をアフィニティーカラム精製したIgG画分は、配列番号1,2,3に示されるアミノ酸配列を有するペプチドの何れにも反応することを、確認した。そして、上記ウサギの血清のIgG画分を、5%スキムミルクを含むTBST緩衝液を用いて、5000倍希釈し、その溶液中に、上記PVDF膜を移し、室温にて1時間反応させた。7. 次いで、TBST緩衝液にて、かかるPVDF膜を3回洗浄した後、TBST緩衝液にて30000倍希釈したペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG抗体(BIOSOURCE社)溶液中で、1時間反応させた。
8. そして、ECL Plus Western Blotting Detection Regents(アマシャム・バイオサイエンス社)を用いて、結合したHRP標識抗ウサギIgG抗体量を、オートラジオグラフィーにて検出した。また、スポットの強度は画像解析ソフトGel-Pro Analyzer(Media Cybernetic社)にて算出すると共に、得られたスポット強度の値から、液体として水道水を用いたときのアレルゲン含有率を100%として、アレルゲン含有率を算出し、得られた結果を下記表3に示した。
【0064】
【表3】


【0065】
かかる表3の結果からも明らかなように、麹や酵母の抽出物(抽出液)に接触せしめた小麦粉からなるパン生地やパンにあっては、アレルゲン含有率が低下しており、アレルギー発症の原因となるエピトープ配列が減少していることが、認められる。また、生地よりパンの方が、アレルゲンが少なくなっていることが、分かる。
【0066】
−患者血清IgEの反応性−
1〜5. 上記「アレルゲン測定」の1〜5と同様の操作を行なった。
6. 三人の小麦依存性運動誘発アナフィラキシー患者(A〜C)より採血して調製した血清を、5%スキムミルクを含むTBST緩衝液にて10倍希釈し、その希釈液中に、PVDF膜を移し、4℃で、一晩、反応させた。
7. 次いで、TBST緩衝液にて、PVDF膜を3回洗浄した後、TBST緩衝液にて10000倍希釈したペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ヒトIgE抗体(BIOSOURCE社)溶液中で、1時間反応させた。
8. そして、ECL Plus Western Blotting Detection Regents(アマシャム・バイオサイエンス社)を用いて、結合したHRP標識抗ヒトIgE抗体量を、オートラジオグラフィーにて検出した。また、スポットの強度は、画像解析ソフトGel-Pro Analyzer(Media Cybernetic社)にて算出すると共に、得られたスポット強度の値から、液体として水道水を用いたときのIgE反応性を100%として、IgE反応性を算出し、得られた結果を下記表4に示した。
【0067】
【表4】


【0068】
かかる表4の結果からも明らかなように、麹や酵母の抽出物(抽出液)に接触せしめた小麦粉からなるパン生地やパンにあっては、患者血清のIgEの反応性も低下しており、低アレルゲン化が有利に実現され得ていることが、認められる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う小麦粉の低アレルゲン化方法に従って製造される低アレルゲン化小麦粉にあっては、所定のアレルゲンが有利に分解せしめられる。従って、そのような小麦粉を用いた食品は、小麦に対してアレルギー反応を起こす患者にとって、安心して口に出来るものとなるのみならず、健常人に対しても、小麦アレルギーに羅患しない予防食材として、提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例において、反応時間と蛍光強度の関係を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】504021231
【氏名又は名称】社会福祉法人桑友
【出願日】 平成16年1月16日(2004.1.16)
【代理人】 【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄

【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博

【公開番号】 特開2005−198582(P2005−198582A)
【公開日】 平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願番号】 特願2004−9095(P2004−9095)