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【発明の名称】 蟹、海老等の茹で汁処理方法
【発明者】 【氏名】寺尾和弥

【要約】 【課題】浜茹に使用した蟹や海老の茹で汁は腐敗が早く、処理設備を有する遠隔地まで輸送する途中で腐敗してしまう。また茹で汁の廃棄に際しては、海洋汚染の問題がありそのまま廃棄することができず、廃棄のための処理を必要とする。そこで前記茹で汁の有効利用が可能である処理手段を提供する。

【解決手段】水揚げ加工場所Aで茹で汁3に食品添加可能な酸や酸性塩等の酸性物又はアルカリやアルカリ塩等のアルカリ性物を加えてpH調整を行い、茹で汁を酸性液とし且つこれを加熱殺菌し、適宜に容器5に充填して所定の処理設備を備えた加工処理工場Bに輸送Cし、加工工場で茹で汁を中和し、食材として利用したり、流通可能な商品6となるように所定の加工処理を施す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水揚げ加工場所で茹で汁に、食品添加可能な酸や酸性塩等の酸性物又はアルカリやアルカリ塩等のアルカリ性物を加えてpH調整を行い、茹で汁を酸性液又はアルカリ性液とし且つこれを加熱殺菌し、高温状態で適宜な容器に充填密閉して所定の処理設備を備えた加工工場に輸送し、加工工場で茹で汁を中和し、食材として利用したり、流通可能な状態になるように所定の加工処理を施してなることを特徴とする蟹、海老の茹で汁の処理方法。
【請求項2】
pH調整で、茹で汁をpH4.6以下とした請求項1記載の蟹、海老の茹で汁の処理方法。
【請求項3】
pH調整で、茹で汁をpH10.0以上とした請求項1記載の蟹、海老の茹で汁の処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、水揚げされた蟹や海老の茹で汁の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品(液状)を流通させる場合には、当該食品が腐敗しないように殺菌状態で所定の容器に密封しており、殺菌密封の手段として、所定の加熱殺菌を行ったものを密封容器に封入したり、所定の容器に封入した後に容器自体を外部から加熱して殺菌処理を行うことは周知の手段である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−164272号公報0002欄。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
蟹や海老は、漁獲後生のままで流通させる場合があるが、鮮度維持が煩雑なため一般には水揚げ後直ちに茹でる所謂浜茹を実施し、チルド商品として流通させるのが一般的である。
【0004】
浜茹に使用した茹で汁は、蟹や海老の独特のうまみや風味を有するだし汁として有効に利用できる。例えば茹で汁を味噌汁にしたりラーメンのスープに利用したり、他の食品加工(例えば風味蒲鉾の製造)の風味付け材料として利用することができる。
【0005】
しかし前記の利用には所定の設備を必要とし、また設備を有しない場合には地域的制限がある。即ち前記の茹で汁は、栄養豊富であり、図2の表に示すように一般細菌の繁殖速度が速く、通常は1日で腐敗してしまい、その使用に際して食中毒の発生の虞もある。
【0006】
そのため茹で汁が腐敗する前に殺菌する殺菌装置や濃縮装置、容器密封装置、冷凍装置、急速冷却装置等を備え、茹で汁の所定の処理ができる相当の処理加工設備が、蟹茹でを行う水揚げ加工工場の近くに存在しなければ前記の有効利用が実現しない。簡易な設備では食品衛生上危険でもある。
【0007】
茹で汁処理加工設備が近所に存在しない場合は、数時間以内に輸送できる範囲の利用設備での利用に限定される。しかし水揚げ加工工場の近所に利用設備が存在するとは限らない。そのため現状では、未利用の茹で汁が多量に残ってしまう水揚げ加工工場が多数存在する。しかも未利用茹で汁は、そのまま廃棄すると海洋汚染の問題が生じてしまうので、相応の廃水処理設備が必要で、また当然にそのランニングコストも必要となり、水揚げ加工工場では死活問題にもなっている。
【0008】
そこで本発明は特別に新たな設備を必要とせずに、未利用茹で汁の有効利用を実現する新規な処理システムを提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蟹、海老の茹で汁処理方法は、水揚げ加工場所で茹で汁に、食品添加可能な酸や酸性塩等の酸性物又はアルカリやアルカリ塩等のアルカリ性物を加えてpH調整を行い、茹で汁を酸性液又はアルカリ性液とし、且つこれを加熱殺菌し、高温状態で適宜な容器に充填密閉して所定の処理設備を備えた加工工場に輸送し、加工工場で茹で汁を中和し、食材として利用したり、流通可能な状態になるように所定の加工処理を施してなることを特徴とするものである。
【0010】
蟹や海老の茹で汁自体は、中性又は弱アルカリ性であり、加熱殺菌を施しても、自然に着床繁殖する細菌によって腐敗が進行するが、酸又はアルカリを添加することで茹で汁の腐敗進行を停止でき輸送可能となる。そして水揚げ加工場所から遠隔地にある処理工場において、茹で汁を中和させ、殺菌密封包装処理や、濃縮処理、冷凍処理など茹で汁を保存可能な状態としたり、流通可能な状態に商品化したり、又は当該茹で汁を中和して加工食品の食材として使用するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上の手法を採用することで、水揚げ加工場所の周囲に蟹、海老の茹で汁の処理施設や利用施設がない場合でも、加熱殺菌処理できる簡易な設備(茹で装置自体でも可能である)で、遠隔地への輸送が可能であり、所定の処理加工設備を備えた工場で、多数の水揚げ加工場所から運ばれた茹で汁を効率的に処理できるので、小規模といえる多数の水揚げ加工場所で生ずる茹で汁の有効利用が実現すると共に、多数の水揚げ加工場所で生ずる茹で汁の廃棄処理も不要となったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態について説明する。実施形態は茹で汁の処理の流れに沿って説明する。
【0013】
水揚げ加工場所Aにおいて、水揚げされた蟹1や海老は、茹で上げ釜2で茹でられる。茹で上げを終了すると、茹で汁3に食品添加物として可能な酸性物4(塩酸などの無機酸、酢酸、りんご酸、クエン酸などの有機酸、酸性塩などの水に溶解して酸性を有する物質)を添加してPH調整を行う。或いは茹で汁3に食品添加物として可能なアルカリ性物4(苛性ソーダ、苛性カリ、灰汁、アルカリ塩の水溶液)を添加してpH調整を行う。
【0014】
酸性物によるpH調整は、pH4.6以下とする。pH調整後に再度加熱して殺菌処理を行うものであるが、加熱温度は100℃以下とし、その加熱温度並びに加熱時間は、pH調整値や茹で汁の質や濃度などを考慮して定められるが、一般的な殺菌処理の条件として知られているpH4.6〜4.0で、85℃30分加熱、pH4.0未満で、65℃10分加熱が目安となる。
【0015】
アルカリ性物によるpH調整は、pH10.0以上とする。pH調整後の再加熱による殺菌処理は、加熱温度が80℃で、20分以上が目安となる。
【0016】
前記のpH調整の効果確認のために、水道水を沸騰させて蟹を入れて茹で上げ、その茹で汁を三分し、一方には、塩酸を加えpH3.9に調整し、75℃で15分以上保持し、充填時の液温は65℃であり、もう一方には、苛性ソーダを加えてpH10.1に調整し、80℃20分を保持し、充填時液温が70℃で、所定の清浄な容器に充填して密閉した。
【0017】
茹で汁をそのまま充填して密閉した無調整液と2種類のpH調整液の細菌繁殖数は、図2の表のとおりで、無調整液は、1〜2日でガスが発生し、腸炎ビブリオ、大腸菌が検出されたが、pH調整液は、酸調整品およびアルカリ調整品共に腸炎ビブリオ、大腸菌が検出されなかった。
【0018】
次にpH調整を行い、加熱殺菌を施した茹で汁は、加工処理工場Bに輸送するもので、輸送手段Cは任意であるが、細菌の浸入などを考慮し、所定の密封容器5に収納して輸送するようにする。
【0019】
加工処理工場Bでは、各所から輸送されてきた茹で汁を、所定の加工処理するもので、例えば前記図2の表で示した酸性調整液に、苛性ソーダを添加して中和させ、またアルカリ調整液に塩酸を添加して中和させ、各々pH7に調整した中和液を食したところ、短所の少ない味覚的にも優れた調味液を得ることが出来た。このように各所から輸送されてきた茹で汁は、中和させることで反応塩を含む調味液となるので、加工処理工場Bで中和処理、再度の加熱殺菌、密封処理(瓶詰めや缶詰)や、必要に応じて濃縮を行い、流通商品6とすることができるものである。
【0020】
この流通商品6は、他の加工工場やレストラン、家庭において調味液として使用されるものである。
【0021】
また加工処理工場が当該調味液を使用して食品加工を行う場合には、中和処理、再度の加熱殺菌や、必要に応じて濃縮を行って、食品加工の原材料として使用するものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、腐敗進行が速い蟹、海老の茹で汁について説明したが、蟹や海老以外にも貝類やその他の魚介類や海草類の茹で汁の処理についても同様の手段を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の全体の説明図。
【図2】同pH調整の有無の対比表。
【符号の説明】
【0024】
A 水揚げ加工場所
B 加工工場
C 輸送手段
1 蟹
2 茹で上げ釜
3 茹で汁
4 酸性物・アルカリ性物
5 密封容器
6 流通商品

【出願人】 【識別番号】503372750
【氏名又は名称】寺尾 和弥
【出願日】 平成16年3月29日(2004.3.29)
【代理人】 【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰

【公開番号】 特開2005−130847(P2005−130847A)
【公開日】 平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願番号】 特願2004−95224(P2004−95224)