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【発明の名称】 クチナシ黄色素の退色防止剤
【発明者】 【氏名】中條 武
【住所又は居所】静岡県駿東郡小山町湯船1157番16号 株式会社タイショーテクノス研究所内

【氏名】林 克美
【住所又は居所】静岡県駿東郡小山町湯船1157番16号 株式会社タイショーテクノス研究所内

【要約】 【課題】クチナシ黄色素によって着色され、かつ流通時に光が当たる食品の耐光性を顕著に改善させるクチナシ黄色素の退色防止剤、退色性が改善された食品用着色剤および食品の退色防止方法を提供すること。

【解決手段】アスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンとからなることを特徴とするクチナシ黄色素の退色防止剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンとからなることを特徴とするクチナシ黄色素の退色防止剤。
【請求項2】
クチナシ黄色素に、請求項1に記載の退色防止剤を加えてなることを特徴とする食品用着色剤。
【請求項3】
クチナシ黄色素と、請求項1に記載の退色防止剤とがセットになっていることを特徴とする食品用着色剤。
【請求項4】
クチナシ黄色素を含む食品に請求項1に記載の退色防止剤を添加することを特徴とするクチナシ黄色素を含む食品の退色防止方法。
【請求項5】
クチナシ黄色素を含む食品のpHが、酸性〜中性である請求項4に記載の食品の退色防止方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンを主成分とするクチナシ黄色素の退色防止剤、食品用着色剤および食品の退色防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流通期間中に光の当たる食品のうちで黄色に着色された食品は、合成色素であるタール系色素あるいは天然系色素であるベニバナ黄色素などで着色されている場合が多い。
【0003】
タール系色素は、安価なうえ、pH、熱あるいは光に対し非常に安定である。また、食品に添加した場合の色調が鮮やかであるという特徴を有している。ただし、タール系色素は化学的な合成品であることで、消費者のイメージが悪いことから代替色素が望まれている。しかし、タール系色素以外の黄色素としては、例えば、クチナシ黄色素、ベニバナ黄色素、カロチン色素、リボフラビンなどがあるが、光に不安定なものが多いことから食品への利用に大きな障害となっている。その中ではベニバナ黄色素は比較的光に安定であり、特に中性〜酸性の食品で使用されているが、それ以外に使用できる黄色素が無く、色調的なバリエーションを求められてきた。
【0004】
天然系色素の中でクチナシ黄色素は、アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRILL var.grandiflora HORT.,Gardenia jasminoides ELLIS)の果実から得られるクロシン(分子式C446424、分子量976)およびクロセチンを主成分とする黄色色素であり、従来は、アルカリ性食品の着色に使用されているが、酸性食品では安定性が悪いという性質があるため、特に酸性領域にある飲料やゼリーなどの食品には殆ど使用されていなかった。これらのクチナシ黄色素の退色防止剤としてポリフェノール類を使用することが提案されている(特許文献1)が、その退色防止効果が充分とはいえない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−93199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、クチナシ黄色素は光に弱く、それを補う目的で上記特許文献1に記載の方法以外に、アスコルビン酸またはその塩などの酸化防止剤を併用添加し、光によるクチナシ黄色素の退色の改善がなされてきた。しかしながら、この方法による退色防止効果は依然として十分ではなく、クチナシ黄色素を添加した飲料やゼリーなどに光があたると顕著に退色が起きてしまい、そのため、従来クチナシ黄色素が光のあたる食品において使用されることは殆ど無かった。
【0007】
従って、本発明は、クチナシ黄色素によって着色され、かつ流通時に光が当たる食品の耐光性を顕著に改善させるクチナシ黄色素の退色防止剤、退色性が改善された食品用着色剤および食品の退色防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、アスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンとからなることを特徴とするクチナシ黄色素の退色防止剤、クチナシ黄色素に上記本発明の退色防止剤を加えてなることを特徴とする食品用着色剤、クチナシ黄色素と、上記本発明の退色防止剤とがセットになっていることを特徴とする食品用着色剤、およびクチナシ黄色素を含む食品に前記本発明の退色防止剤を添加することを特徴とするクチナシ黄色素を含む食品の退色防止方法を提供する。上記本発明の食品用着色剤は、クチナシ黄色素を含む食品のpHが、酸性〜中性である場合において該着色食品の退色防止効果が顕著である。
【0009】
本発明者らは、前記した課題を解決すべく鋭意努力して実験を重ねた結果、クチナシ黄色素の耐光性が非常に悪いという欠点のために使用できなかった食品、例えば、酸性領域(pH=2〜6)にあるゼリーや飲料などの食品の着色において、本発明の構成によりクチナシ黄色素の耐光性を大幅に向上させることが可能になり、これらの食品の着色にクチナシ黄色素が使用できることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クチナシ黄色素で食品を着色する際に、アスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンとからなるクチナシ黄色素の退色防止剤を併用することにより、クチナシ黄色素により着色された食品の耐光性を顕著に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明におけるクチナシ黄色素とは、アカネ科クチナシ(Gardenia augusta MERRILL var.grandiflora HORT.,Gardenia jasminoides ELLIS)の果実から室温時、水若しくは含水エタノールで抽出して得られたもの、またはこれを加水分解して得られたものである。また、例えば、噴霧乾燥などにより適宜粉末に加工されたものでもよい。このようなクチナシ黄色素は、色価E10%が50〜500のものが製剤として市販され、いずれも本発明で使用できるが、後述の実施例および比較例では色価E10%が100の製剤を使用した。
【0012】
本発明の退色防止剤の必須成分は、アスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンである。後述の実施例および比較例に示すように、アスコルビン酸またはその塩単独、または酵素処理ルチン単独ではクチナシ黄色素に対して顕著な耐光性向上効果はない。上記本発明によれば、上記成分の併用によって上記単独使用からは予測を遥かに超えた顕著な耐光性向上効果が得られる。
【0013】
本発明で用いるアスコルビン酸またはその塩は、食品用の酸化防止剤としてよく知られたものであり、市場から容易に入手して使用することができる。また、本発明で使用し、主として本発明を特徴づける酵素処理ルチンとは、ルチンを酵素処理により水溶性を高めたものである。ルチン(抽出物)それ自体は、自然界に広く分布するクエルセチンの配糖体であり、マメ科エンジュ、マメ科アズキ、タデ科ソバを基原植物として抽出されたものであり、針状結晶性粉末である。該粉末は水に難溶性であるが、これを酵素処理することによって水溶性化されている。
【0014】
以上の酵素処理ルチンは、商品名「αGルチン」(登録商標)として東洋製糖株式会社から入手して本発明で使用することができる。このような酵素処理ルチンは、酵素処理ルチンの濃度が23質量%、40質量%および80質量%などの如く種々の濃度のものが市販されいずれも本発明で使用できる。なお、後述の実施例および比較例では濃度23質量%のものを使用した。なお、上記酵素処理ルチンの詳細は、例えば、特開平3−27293号公報、特開平3−58790号公報、特開平5−199891号公報および特許第1222288号明細書などに記載されている。
【0015】
本発明のクチナシ黄色素の退色防止剤におけるアスコルビン酸またはその塩と、上記の酵素処理ルチンとの使用比率は特に限定されないが、アスコルビン酸またはその塩(A)と濃度23質量%の酵素処理ルチン(B)との質量比が、A:B=100:0.1〜1,000の範囲が好ましく、さらに好ましい配合質量比はA:B=100:100〜200の範囲である。上記範囲を超えてアスコルビン酸またはその塩の使用量が多過ぎると、食品の味や物性を損なう畏れがある。一方、アスコルビン酸またはその塩の使用量が少な過ぎると、クチナシ黄色素の耐光性向上効果が不十分である。また、上記範囲を超えて酵素処理ルチンの使用量が多過ぎると、経済的に不利であり、一方、酵素処理ルチンの使用量が少な過ぎると、クチナシ黄色素の耐光性向上効果が不十分である。
【0016】
上記本発明のクチナシ黄色素の退色防止剤は、上記の通りアスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンとを必須成分とするが、その他の成分として、例えば、従来公知の食品用酸化防止剤などを本発明の目的達成を損なわない範囲で含むことができる。その他の酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウムやピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類など;ミックストコフェロール、トコトリエノールなどのトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)など;アスコルビン酸パルミチン酸エステルなど;アオイ花抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ルチン抽出物、小豆全草、エンジュまたはソバ全草の抽出物、ローズマリー抽出物などの植物抽出物;その他、ルチン分解物(クエルセチン)、酵素処理イソクエルシトリン、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、シスチンなどが挙げられる。
【0017】
本発明の食品用着色剤は、クチナシ黄色素と前記本発明の退色防止剤とからなることを特徴としている。クチナシ黄色素と上記退色防止剤との組み合わせはいずれの態様でもよい。好ましい態様としては、クチナシ黄色素に上記退色防止剤を混合して混合物とする態様、およびクチナシ黄色素と上記退色防止剤とをセットにして、食品の着色時に両者を混合する態様などが挙げられる。上記色価E10%が100のクチナシ黄色素製剤(A)と上記濃度23質量%の酵素処理ルチンを含む上記退色防止剤(B)との質量比は特に限定されないが、A:B=100:10〜2,000の範囲であり、さらに好ましい配合質量比はA:B=100:100〜1,000の範囲である。退色防止剤の使用量が多過ぎると、結果として着色された食品中における退色防止剤の量が多くなり、食品の味や品質を損ねる畏れがある。一方、退色防止剤の量が少な過ぎると満足できる退色防止効果が得られない。また、本発明の食品用着色剤の形態はいずれの形態でもよい。例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状、乳液状、ペースト状などの任意の形態が挙げられる。
【0018】
本発明の食品の着色方法は、上記本発明の食品用着色剤を用いて食品を着色することを特徴としている。着色される食品は特に限定されないが、本発明の着色方法は、流通時に光が当たり、かつpHが酸性〜中性(pH=2〜7)領域にある食品において最も効果を発揮する。このような食品として特に優れた退色防止効果が得られるものとしては、例えば、ゼリー、飲料、キャンディなどが挙げられる。これらの食品に対する着色剤の使用量は、食品によって淡色に着色されるもの、濃色に着色されるものなど、種々の着色濃度が要求されるので、要求される着色濃度によって着色剤の使用量が決められるので一概に規定することはできないが、一般的には食品100質量部当たり着色剤が約0.01〜1質量部である。
【0019】
上記の如き流通時に光が当たり、かつ酸性領域にある食品において、本発明の着色剤によって着色された食品は、長時間クチナシ黄色素の退色が少なく、加工食品の内部のみならず、外部表面においても着色が長時間維持される理由は、アスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンという作用機構の異なる2種の酸化防止剤を併用していることから、両者の相乗効果が働き、光に対して高い抵抗力を有するものと想像される。なお、本発明の退色防止剤の用途は、クチナシ黄色素により着色された食品に限定されるものではなく、例えば、クチナシ黄色素により着色された医薬品、医薬部外品および化粧品をも対象とすることができる。
【実施例】
【0020】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制約されるものではない。
【0021】
実施例1〜3および比較例1〜13
下記の処方に従って各成分を混合しゼリーを調製した。これらを10℃に静置して、10,000luxの蛍光灯で四方から光を照射し、クチナシ黄色素の残存日数を目視で確認した。この際に退色防止剤無添加のゼリーを対照区とした。結果を図1に示す。図1において退色・非退色の区別は、着色時(ゼリー調製時)の濃度を100%とした場合、肉眼判定で濃度が90%以下になった時を退色したと評価した。
【0022】
・砂糖 16g
・クエン酸ナトリウム 1g
・リンゴ酸 1.35g
・ゲル化剤 1.2g
・クチナシ黄色素(色価E10%が100の
製剤) 0.05g
・表1に記載の退色防止剤 Xg
・水 全体が100gとなる量
(pH=3.8)
【0023】


【0024】
図1から明らかであるように、対照区は蛍光灯照射半日後に色素が退色した。それに比べて実施例1〜3では30日以上にわたって着色が維持されていた。また、酵素処理ルチン単独使用(比較例3、4)ではそれぞれ10日以内、15日以内で退色し、アスコルビン酸単独使用(比較例6、7)では、それぞれ3日以内、5日以内で退色した。その他の比較例における退色防止効果は本発明の退色防止剤の効果の50%未満であった。
【0025】
実施例4
・砂糖 20g
・クチナシ黄色素(色価E10%が100の
製剤) 0.06g
・アスコルビン酸 0.5g
・酵素処理ルチン(濃度23質量%)
0.5g
・クエン酸 pHが3.8になる量
・水 全体が100gになる量
【0026】
上記の処方に従って各成分を混合し、容器に充填後、85℃で30分間加熱殺菌して清涼飲料を調製した。この清涼飲料は、14,000luxで5日間蛍光灯照射しても鮮明な色調を保ったが、上記処方からアスコルビン酸と酵素処理ルチンを含まないで調製した清涼飲料では、14,000luxで1日間蛍光灯照射すると退色した。
【0027】
実施例5
・砂糖 45g
・水あめ 55g
・クエン酸 1.5g
・クチナシ黄色素(色価E10%が100の
製剤) 0.1g
・アスコルビン酸 0.5g
・酵素処理ルチン(濃度23質量%)
0.5g
(pH=3.8)
【0028】
上記処方の砂糖とクチナシ黄色素を混合後、水あめに加え130℃まで加熱し、放冷後残りの各成分を混合し、成型してグレープフルーツキャンディーを調製した。このグレープフルーツキャンディーは10,000luxで7日間蛍光灯照射しても鮮明な色調を保ったが、上記処方からアスコルビン酸と酵素処理ルチンを含まないで調製したグレープフルーツキャンディーでは、10,000luxで1日間蛍光灯照射すると退色した。なお、上記のpHは上記のキャンディーをイオン交換水で10質量倍に希釈して測定した値である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、クチナシ黄色素で食品を着色する際に、アスコルビン酸またはその塩と酵素処理ルチンとからなるクチナシ黄色素の退色防止剤を併用することにより、クチナシ黄色素により着色された食品の耐光性を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1〜3、比較例1〜13および対照区の耐光性を示す図。
【出願人】 【識別番号】593157910
【氏名又は名称】株式会社タイショーテクノス
【住所又は居所】東京都中央区日本橋富沢町十番十八号
【出願日】 平成15年10月31日(2003.10.31)
【代理人】 【識別番号】100077698
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 勝広

【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子

【公開番号】 特開2005−130827(P2005−130827A)
【公開日】 平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願番号】 特願2003−373397(P2003−373397)