| 【発明の名称】 |
発芽小麦乾燥物及び穀物加工食品 |
| 【発明者】 |
【氏名】西村 新路
【氏名】稲垣 一弥
【氏名】川村 奈津子
【氏名】八木 忍
【氏名】松村 真理子
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 小麦粒を水中に浸漬して充分に含水させた後に水を切って、該小麦粒の水分含量を30重量%以上に保ちつつ空気を1〜200立方メートル/平方メートル/時で供給しながら発芽させた後に湿熱処理及び乾燥処理を施してなる発芽率80%以上の発芽小麦乾燥物。 【請求項2】 請求項1記載の発芽小麦乾燥物の表皮を1〜30重量部搗精してなる搗精発芽小麦乾燥物。 【請求項3】 請求項1記載の発芽小麦乾燥物を含む穀物加工食品。 【請求項4】 請求項2記載の搗精発芽小麦乾燥物を含む穀物加工食品。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、遊離アミノ酸をはじめとする様々な栄養・機能性成分が富化されていると共に風味・食感にも優れた発芽率が高い発芽小麦乾燥物及び該発芽小麦乾燥物を用いた穀物加工食品に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、食品に対する健康志向はますます高まっており、市場では様々な栄養富化食品が開発・販売されている。穀物食品においても通常の白米や小麦粉に比べ、よりビタミンやミネラル、食物繊維等が豊富に含まれている玄米や雑穀、全粒粉などが見直されてきている。 【0003】 近時、発芽玄米は血圧上昇抑制作用や肝機能改善などに効果があると言われるγ−アミノ酪酸などの生理活性成分を豊富に含有することがわかり、その有用性や製造方法及び利用方法などが発表されている(例えば特許文献1参照)。 【0004】 一方、発芽により二次加工適正を改良したり、あるいはγ−アミノ酪酸を始め、フェルラ酸やフィチン酸、プロリルエンドペプチダーゼ阻害物質などの様々な栄養機能を富化した発芽小麦の製造方法及び発芽小麦を利用した食品が発表されている(例えば特許文献2参照)。 【特許文献1】特開2002−360192号公報 【特許文献2】特開2002−335891号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 周知のとおり、玄米が水に浸漬した嫌気性条件下でも発芽するのに対し、小麦は水中では発芽しにくいという特性があり、また含水後に水切りをした場合においても、小麦粒に新鮮な空気が供給されていないと発芽率及び芽・根の伸長度が抑えられる傾向がある。例えば水浸漬後に水切りした小麦粒を大型のタンクに投じ、そのまま放置した場合、空気に触れている表層部は問題なく発芽するが、タンク下部においては充分な空気供給あるいは循環が行なわれないため、発芽率の低下や芽・根の伸長度の低下を招くという問題があった。 【0006】 このため、従来の小麦発芽方法は、含水後水切りした小麦粒を平板上に薄層に敷き詰めたものを多数準備し、より空気との接触面積を広くとりながら発芽させる薄層発芽法、あるいは水中に浸漬した状態で長時間発芽させる水中発芽法が採られていた。 【0007】 しかし、前記の薄層発芽法においては発芽小麦を大量に生産する場合、非常に煩雑な作業が必要となり、前記の水中発芽法においては発芽工程中の菌数増加や発芽率低下の可能性をはらんでおり、従来の製造方法では、発芽小麦を大量に、短時間で、しかも衛生的に製造することは困難であった。 【0008】 また、主に発芽前吸水時の含水速度や発芽後乾燥効率の向上を目的とした発芽前搗精が提案されているが(特許文献2参照)、この方法によると発芽工程中の菌数増加が著しい場合があり、また水浸漬中の小麦胚入部の溶出による浸漬水の懸濁・汚染、さらには発芽中の小麦粒同士の結着や発芽容器壁面や底面への付着が見られる場合もあった。 【0009】 ところで、小麦は精選後粉砕して小麦粉あるいは全粒粉とし、パンや麺といった製品に加工して食する方法が一般的であるが、イタリアなど一部外国では小麦を粒のまま食するという習慣もあり、このような小麦の粒食という食形態を日本国内に提案することも小麦食品のバラエティ化のために有効な手段であると考えられる。 【0010】 しかし、この小麦の粒食は、小麦粒をそのまま調理した場合にはフスマ部分がその硬い食感や特有の苦み・エグミなどで嗜好性に劣るという欠点があった。 【0011】 さらに、小麦を粉砕して全粒粉とし、これをパンや菓子類に配合した製品も市場に見受けられるが、その多くはフスマ特有の前記食感・風味によって食べにくいという欠点があった。 【0012】 また、ライ麦や大麦、発芽玄米などの穀粒を、粉砕せずそのまま配合したパンなども市場に出回っているが、穀粒のままの状態で添加した場合には調理後に穀粒が硬い食感となって食べにくくなるため、穀粒を予めシロップなどと共に煮込みα化させ、これをレトルト加工品またはチルド品として流通・保管し、このチルド品を生地に必要量練り込むか、あるいは穀粒を使用直前に煮るなどの前処理が必須とされていた。 【0013】 本発明は、前述したとおりの従来技術に見られる諸問題点を解決することを技術的課題とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0014】 前記技術的課題は次のとおりの本発明によって達成できる。 【0015】 すなわち、本発明は、小麦粒を水中に浸漬して充分に含水させた後に水を切って、該小麦粒の水分含量を30重量%以上に保ち且つ空気を1〜200立方メートル/平方メートル/時で送風しながら発芽させた後、湿熱処理及び乾燥処理した発芽率80%以上の発芽小麦乾燥物である。 【0016】 また、本発明は、前記発芽小麦乾燥物の表皮を1〜30重量部搗精してなる搗精発芽小麦乾燥物である。 【0017】 さらに、また、本発明は、前記発芽小麦乾燥物および搗精発芽小麦乾燥物を含む穀物加工食品である。 【発明の効果】 【0018】 本発明によれば、発芽率80%以上の発芽小麦を衛生的に、しかも安定した発芽で大量に得ることができるので、栄養価が高いと共に風味・食感にも優れた発芽小麦乾燥物及び搗精発芽小麦乾燥物を提供することができる。さらにこの発芽小麦乾燥物および搗精発芽小麦乾燥物を各種食品に配合することで、栄養価や機能性に優れた特徴ある穀物加工食品を提供することができる。 【0019】 なお、本発明の発芽小麦乾燥物は湿熱処理及び乾燥処理することにより、粒の硬度が高まると共に均一化され、通常の小麦や発芽小麦よりも表皮搗精が容易である。 【0020】 さらに、本発明の搗精発芽小麦乾燥物は湿熱処理工程におけるアルファー化と表皮搗精との相乗効果により、湯又は水に浸漬した場合に復水速度の早い作業性に優れた穀物食品素材となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0021】 以下、本発明の実施の形態について説明する。 【0022】 本発明において使用する小麦粒は、国内産や外国産といった産地、品種名、また硬質や軟質といった硬度・蛋白質含量などによらず、あらゆる種類の小麦粒を用いることができる。 【0023】 本発明においては、先ず、小麦粒を選別機などにかけて含まれている異物・夾雑物等を取り除いた後、表皮に付着する汚れ等を除去するため数回にわたり水洗浄する。水洗浄に使用する水は通常の水道水を始めとし、清浄で食品に使用可能な水であれば何れも使用でき、また洗浄には大量の水をジェット噴霧したり、大きな槽中で小麦と洗浄水を撹拌するなど、小麦表面を清浄にするための物理的措置を施すことが好ましい。さらに水洗浄は洗浄水を換えながら3回以上実施するか、又は水を連続して流しながら洗浄を行うことが好ましい。 【0024】 次に、水洗浄の後、洗浄水をよく切った小麦粒を新しい清浄な水中に浸漬させ、発芽に必要な水分を小麦粒中に充分に含ませる。水浸漬に使用する水は、水道水、蒸留水、井戸水、酸性水、電解水、オゾン溶存水、ミネラルウォーターなど清浄で食品に使用可能な水であればいずれも使用でき、特に制限されるものではない。浸漬水温度は10〜30℃が好ましく、15〜25℃がより好ましい。また浸漬時間は5〜20時間が好ましく、8〜15時間がより好ましい。 【0025】 次に、浸漬を終えて充分に含水した小麦粒を一旦水を切った後、発芽タンクに入れ、該小麦粒の水分含量を30%以上、好ましくは35%以上に保ちつつ、発芽タンク中にブロワーなどを使用して空気を供給して小麦を取り巻く雰囲気に酸素を供給し、15〜35℃、好ましくは18〜25℃の温度条件下で、15〜48時間、好ましくは18〜25時間程度静置し、該小麦粒を発芽させる。空気流量は1〜200立方メートル/平方メートル/時が必要で、3〜150立方メートル/平方メートル/時がより好ましい。また送風は連続的であっても間歇的であってもよいが、間歇的に行う場合には、少なくとも1時間に1回は小麦雰囲気が清浄な空気で置換されるようにすることが好ましい。 【0026】 該小麦粒の水分含量を30%以上に保つ方法としては、発芽タンク並びにブロワー等の発芽装置全体を恒温調湿庫内に設置して供給する空気の湿度を高湿度に保つ方法、ブロワーなどより供給する空気に外部より水を供給して空気の湿度を高湿度に保つ方法、発芽中に小麦粒に直接シャワリング等により水をかけて水分含量を30%以上に保つ方法などが使用できるが、衛生面を考慮すると、発芽タンク並びにブロワーなどを恒温調湿庫内に設置して供給する空気の湿度を高湿度に保つ方法がより望ましい。 【0027】 小麦粒の水分含量が30%未満になると、発芽に必要な水分が不足して発芽率が極端に低下する原因となる。小麦粒を長時間にわたり水に浸漬したり、小麦粒に直接シャワリング等により水をかけても、含水率の上昇には上限があり、通常45%程度以上には小麦粒の水分含量は増加しない。 【0028】 空気流量が1立方メートル/平方メートル/時未満の場合、発芽に必要な酸素が充分に供給されずに発芽率の低下を招く一方で、空気流量が200立方メートル/平方メートル/時を超えると、前記したような小麦粒の水分を保つ前記の各手法を講じても小麦粒が乾燥して水分含量の減少を起こしやすくなり、これも発芽率低下の要因となる。 【0029】 本発明における発芽工程終了時点での小麦粒の発芽状態は、芽・根の伸長度が0.1〜5.0mm程度、好ましくは0.5〜2.0mm程度である。この時、遊離アミノ酸を始めとする栄養素の富化状態が最良となるが、芽・根の伸長度が5.0mm以上になると、小麦の持つ栄養成分が芽や根の伸長に利用され減少し、また二次加工適性にも悪影響を及ぼすため好ましくない。 【0030】 本発明においては、発芽工程終了時点における小麦粒の発芽率が80%以上となる。小麦粒の発芽率が80%未満の場合には発芽による各種栄養機能の富化や風味・食感の改良効果が不十分となる。 【0031】 次に、発芽した小麦粒を湿熱処理する。該湿熱処理は飽和水蒸気や熱水、あるいは加熱蒸気等を熱媒体として高湿度雰囲気下で対象物を加熱する処理法である。具体的には、例えばトンネル型の連続蒸煮装置を用いて90〜100℃で20〜35分間湿熱処理を行うことができる。発芽工程における高い含水量のまま蒸煮することによりほぼ完全にα化するため、調理適性にも優れた発芽小麦が提供でき、またこの湿熱処理により菌数の低減化が進み、生地に添加した場合様々な悪影響を及ぼすアミラーゼを初めとする各種酵素の活性も失活せしめることができる。 【0032】 その後、乾燥処理して、水分含量を5〜15%、好ましくは11〜14%にまで乾燥せしめる。乾燥は、流動乾燥、棚式乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥など様々な方法を用いることができるが、具体的には、例えばトンネル型の連続式熱風乾燥機を用いて80〜95℃で40〜60分間乾燥処理を行うことができる。 【0033】 本発明の発芽小麦乾燥物は、前記した湿熱処理および乾燥処理によって、発芽小麦粒の硬度が高まると共に硬度の均一化が進行し、硬度の低い軟質系小麦を原料に使用した場合においても、原料小麦や従来の製法により製造された発芽小麦に比べて、その後の表皮搗精が非常に容易なものとなる。 【0034】 また、本発明の発芽小麦乾燥物は、フスマの食感も改善され、胚芽部の油分酸敗も少なく非常に衛生的で安全性の高い製品となる。さらに小麦胚乳に含まれる蛋白質や澱粉が発芽工程中に酵素分解してグルタミン酸やアラニン、各種の糖類といった旨み・甘み成分が増えることにより、該発芽小麦乾燥物は通常の小麦と比べて風味的にも優れたものとなる。 【0035】 なお、水洗浄、水浸漬、発芽、蒸煮、乾燥の全て、あるいはそのいずれかを、同一タンク内で実施することも可能であり、これら設備類は特に使用機種など限定されるものではない。 【0036】 次に、発芽小麦乾燥物の表皮を、精米機や精麦機などの装置を用いて搗精することで、加工適性に優れ食味・食感も良好な搗精発芽小麦乾燥物を得ることができる。 【0037】 なお、表皮の搗精度は1〜30重量部が好ましく、10〜20重量部がより好ましい。表皮を搗精すると調理時の湯戻りが早くなり、フスマ特有の硬い食感や苦み・エグミといった不快な味が軽減され、食べやすくおいしい食品素材となる。 【0038】 表皮の搗精度が1重量部未満であると、風味食感の改善や復水速度の向上といった表皮搗精の効果がほとんど発現されず、反対に30重量部を超えると製品歩留が顕著に低下し経済性が悪くなるとともに、粒溝部以外のフスマがほぼ全て取り除かれるため、ビタミンやミネラル、食物繊維といった各種栄養素が減少し、発芽小麦の持つ特長も薄れてしまうため、好ましくない。 【0039】 本発明の搗精発芽小麦乾燥物は、湿熱処理によるほぼ完全なアルファー化と、表皮を適度に搗精することにより、30分〜2時間ほど湯戻しまたは水浸漬することにより自重と同程度もしくはそれ以上の水分を吸い、そのままでも喫食可能な状態となる。すなわち、該搗精発芽小麦乾燥物は従来の発芽小麦関連食品には類を見ない簡便な手順で粒のまま様々な食品に配合することができ、例えば含水させた搗精発芽小麦乾燥物をパンや菓子、麺、惣菜等の小麦粉製品に練り込んで使用することにより、栄養成分に富み、嗜好性にも優れた発芽小麦粒入り穀物加工食品を得ることができる。また湯戻しや水戻し時に用いる湯や水に茶類を使用したり香料を添加したりして、各種のバラエティ化を図ることも可能である。 【0040】 本発明の搗精発芽小麦乾燥物は様々な穀物加工食品に用いることができる(ただし、ここで言う穀物加工食品とは、米飯炊き込み調理品、レストランにおける前菜やメインディッシュの付け合せ、リゾット・おかゆ類、サラダトッピング、スープ具材、朝食シリアルなどを指すものとする)。 【0041】 本発明の発芽小麦乾燥物並びに本発明の搗精発芽小麦乾燥物は適当な粉砕機を用いて粉砕することにより、それぞれ発芽小麦乾燥粉砕物、搗精発芽小麦乾燥粉砕物が得られる。この粉砕処理にあたっては、ロールミル、ピンミル、ジェットミル、石臼などあらゆる粉砕機が使用できる。さらに粉砕機の回転数や処理量、処理時間、スクリーン目開きを調整することで、様々な粒径の粉砕物を得ることができる。さらに最終的な用途によっては、粉砕物を篩い、分級することで、いろいろな粒度・フスマ混入度の粉砕物を得ることができる。 【0042】 前記発芽小麦乾燥粉砕物並びに前記搗精発芽小麦乾燥粉砕物は、通常の小麦粉に配合してパン類や麺類、菓子類、惣菜類といった小麦粉関連食品に広く利用でき、これら最終商品群は、発芽小麦の健康的なイメージや、配合比率によってはある特定の栄養成分が実際に富化されていることをセールスポイントとして商品展開・販売することが可能である。 【0043】 前記発芽小麦乾燥粉砕物並びに前記搗精発芽小麦乾燥粉砕物は、それぞれ最終製品に応じて、1〜100重量部の配合比率で使用でき、好ましくは5〜50重量部の配合比率で使用できる。該発芽小麦粉砕物並びに該搗精発芽小麦乾燥粉砕物の配合比率が1重量部未満のときには、発芽小麦配合による栄養成分富化や全粒粉の風味・特徴付与が充分に行えず、50重量部を超えるときには、生地のべたつきや粘弾性低下により作業性に悪影響を及ぼす場合もある。 【0044】 以下に実施例と比較例を挙げて、本発明を詳細に説明する。なお、本発明の発芽小麦乾燥物並びに本発明の搗精発芽小麦乾燥物の用途はこれら実施例に限定されるものではない。 【実施例1】 【0045】 小麦粒(農林61号)100重量部を、水道水で3回洗浄した後、200重量部の水道水中に20℃で10時間浸漬した。その後浸漬水を除去して発芽タンクに入れ、小麦粒の入っている容器下部からエアポンプにて空気を70立方メートル/平方メートル/時の流量で供給し、24時間発芽させた。この際、発芽タンク、エアポンプ等(以下、「当該発芽装置」という)はその全体を恒温調湿庫内に設置して庫内温度を25℃に設定、また相対湿度は100%を保った。次に、該発芽小麦粒を95℃で27分間蒸煮処理した後、90℃で52分間加熱乾燥して発芽小麦乾燥物を得た。なお、発芽を終えた小麦粒から500粒を無作為抽出して発芽している穀粒数を数え発芽率を測定し、それとは別に50粒を無作為抽出して芽・根の伸長度を測定、さらに水分含量を測定した。その結果を表1に示す。 【実施例2】 【0046】 小麦粒(農林61号)100重量部を、水道水で3回洗浄した後、200重量部の水道水中に20℃で10時間浸漬した。その後浸漬水を除去して発芽タンクに入れ、小麦の入っている容器下部からエアポンプにて空気を3立方メートル/平方メートル/時の流量で送風し、24時間発芽させた。当該発芽装置はその全体を恒温調湿庫内に設置して庫内温度を25℃に設定、また相対湿度は100%を保った。次に、該発芽小麦粒を95℃で27分間蒸煮処理した後、90℃で52分間加熱乾燥して発芽小麦乾燥物を得た。なお、発芽を終えた小麦粒から500粒を無作為抽出し、発芽している穀粒数を数え発芽率を測定し、それとは別に50粒を無作為抽出して芽・根の伸長度を測定、さらに水分含量を測定した。その結果を表1に示す。 【実施例3】 【0047】 小麦粒(農林61号)100重量部を、水道水で3回洗浄した後、200重量部の水道水中に20℃で10時間浸漬した。その後浸漬水を除去して発芽タンクに入れ、小麦の入っている容器下部からエアポンプにて空気を180立方メートル/平方メートル/時の流量で送風し、24時間発芽させた。当該発芽装置はその全体を恒温調湿庫内に設置して庫内温度を25℃に設定、また相対湿度は100%を保った。次に、該発芽小麦粒を95℃で27分間蒸煮処理した後、90℃で52分間加熱乾燥して発芽小麦乾燥物を得た。なお、発芽を終えた小麦粒から500粒を無作為抽出し、発芽している穀粒数を数え発芽率を測定し、それとは別に50粒を無作為抽出して芽・根の伸長度を測定、さらに水分含量を測定した。その結果を表1に示す。 【0048】 比較例1として、小麦粒(農林61号)100重量部を、水道水で3回洗浄した後、200重量部の水道水中に20℃で10時間浸漬した。その後浸漬水を除去して発芽タンクに入れ、エアポンプによる空気送風を行わずに24時間発芽させた。当該発芽装置はその全体を恒温調湿庫内に設置して庫内温度を25℃に設定、また相対湿度は100%を保った。次に、該発芽小麦粒を95℃で27分間蒸煮処理した後、90℃で52分間加熱乾燥して発芽小麦乾燥物を得た。なお、発芽を終えた小麦粒から500粒を無作為抽出し、発芽している穀粒数を数え発芽率を測定し、それとは別に50粒を無作為抽出して芽・根の伸長度を測定、さらに水分含量を測定した。その結果を表1に示す。 【0049】 比較例2として、小麦粒(農林61号)100重量部を、水道水で3回洗浄した後、200重量部の水道水中に20℃で10時間浸漬した。その後浸漬水を除去して発芽タンクに入れ、小麦の入っている容器下部からエアポンプにて空気を300立方メートル/平方メートル/時の流量で送風し、24時間発芽させた。当該発芽装置はその全体を恒温調湿庫内に設置して庫内温度を25℃に設定、また相対湿度は100%を保った。次に、該発芽小麦粒を95℃で27分間蒸煮処理した後、90℃で52分間加熱乾燥して発芽小麦乾燥物を得た。なお、発芽を終えた小麦粒から500粒を無作為抽出し、発芽している穀粒数を数え発芽率を測定し、それとは別に50粒を無作為抽出して芽・根の伸長度を測定、さらに水分含量を測定した。その結果を表1に示す。 【0050】 【表1】
【0051】 表1より、実施例1に示す送風量70立方メートル/平方メートル/時のとき、最も発芽率が高く、芽・根の伸長度が大きくなることがわかる。一方比較例1の場合には、無送風状態では発芽に必要な酸素が十分に供給されず、特に発芽槽下部において発芽率および芽・根の伸長度が低下する傾向が顕著に発現したものと考えられ、逆に比較例2のような過剰送風の条件下では風量が強すぎて小麦粒の乾燥を招き、これが未発芽粒の発生と芽・根の伸長度抑制を助長したものと考えられる。 【実施例4】 【0052】 実施例1で製造した発芽小麦乾燥物をテスト精米機(株式会社サタケ製TM05C)を用いて表皮を15重量部搗精して搗精発芽小麦乾燥物を得た。 【実施例5】 【0053】 実施例1で製造した発芽小麦乾燥物をテスト精米機(株式会社サタケ製TM05C)を用いて表皮を5重量部搗精して搗精発芽小麦乾燥物を得た。 【実施例6】 【0054】 実施例1で製造した発芽小麦乾燥物をテスト精米機(株式会社サタケ製TM05C)を用いて表皮を25重量部搗精して、搗精発芽小麦乾燥物を得た。 【実施例7】 【0055】 実施例1で製造した発芽小麦乾燥物をテスト精米機(株式会社サタケ製TM05C)を用いて表皮を40重量部搗精して搗精発芽小麦乾燥物を得た。 【0056】 実施例1の発芽小麦乾燥物20重量部及び実施例4〜7の各搗精発芽小麦乾燥物各20重量部を、それぞれ白米80重量部に加えて市販の電気炊飯器で炊飯し、8名のパネラー(20代〜50代)を対象として表2に示す評価基準により試食評価を実施した。その結果を表3に示す。 【0057】 【表2】
【0058】 【表3】
【0059】 表3より、実施例4〜6の各搗精発芽小麦乾燥物入り米飯は、実施例1の発芽小麦乾燥物入り米飯及び実施例7の搗精発芽小麦乾燥物入り米飯と比べて総合評価で優位性があることがわかる。これは、実施例4〜6では、ふすまの搗精により白色の胚乳部が部分的に剥き出すことで外観上の違和感が軽減され、またふすま特有の硬い食感や歯応え、そして苦みやエグ味といった不快な味が和らげられることが、比較的高評価である要因として挙げられる。さらに実施例7では表皮を剥き過ぎることによる経済性低下も懸念される。 【0060】 比較例3として、小麦粒(農林61号)100重量部を、水道水で3回洗浄した後、200重量部の水道水中に20℃で10時間浸漬した。その後浸漬水を除去して発芽タンクに入れ、小麦の入っている容器下部からエアポンプにて空気を70立方メートル/平方メートル/時の流量で送風し、24時間発芽させた。当該発芽装置はその全体を恒温調湿庫内に設置して庫内温度を25℃に設定、また相対湿度は100%を保った。次に、該発芽小麦粒を蒸煮処理せずに直接90℃で52分間加熱乾燥して未蒸煮発芽小麦乾燥物を得、これをテスト精米機(株式会社サタケ製TM05C)を用いて表皮を15重量部搗精して搗精未蒸煮発芽小麦乾燥物を得た。 【0061】 実施例4及び比較例3の各表皮搗精状態と、各粒形状及び熱湯による各湯戻りの状態をそれぞれ観察した。その結果を表4に示す。
【0062】 【表4】
【0063】 表4より、実施例4では乾燥後の表皮搗精状態も良好で粒形状も問題なく、湯に浸漬した場合の復水も比較的短時間で達成されることがわかる。この現象は、実施例4においては蒸煮処理工程で発芽小麦粒がほぼ完全にアルファー化することにより澱粉の結晶構造が変化することに起因している。それまで白色の粉状質であった胚乳部が蒸煮工程により飴色に硬化し、硬度が高まるとともに均一化されるため、搗精時の穀粒の崩壊が抑制され、斑剥けの少ない均一な搗精が可能となる。また、アルファー化により湯戻し時の澱粉の水分吸収・膨潤速度が早くなり、短時間で復水するようになる。一方、比較例3では蒸煮によるアルファー化が進行していないため、該未蒸煮発芽小麦乾燥物の胚乳部は白色の粉状質のままで脆く、搗精時の胚乳欠落や粒の崩壊が発生する。 【実施例8】 【0064】 実施例4で製造した搗精発芽小麦乾燥物の水浸漬品20重量部と白米80重量部からなるリゾットを次に示すように調理した。先ず鍋にオリーブオイルを熱し、スライスした玉ねぎとにんにくのみじん切りを入れて炒め、しんなりとしたら、米を入れて透明になるまで炒める。次に搗精発芽小麦乾燥物をあらかじめ冷蔵庫内で2時間水中に浸漬して復水させた後にザルにあげてよく水を切ったものを加えてさらに炒め、水と固形スープを入れてやや硬めの食感に炊き上げる。最後にダイス状にカットしたトマトを入れ、塩・こしょうで味を調えパルメザンチーズを加える。なお、ここに得たリゾットの具体的な配合を、表5に示す。
【0065】 【表5】
【0066】 (注1)実施例4の搗精発芽小麦乾燥物を冷蔵庫内で同一重量部の水に2時間浸漬した後、ざるに上げて水切りしたもの。 【0067】 実施例8のリゾットは、搗精発芽小麦乾燥物の含まれない通常のリゾットに比べて栄養成分的に優れ、かつ搗精発芽小麦乾燥物の外観とつぶつぶした食感、風味の感じられるリゾットである。 【実施例9】 【0068】 実施例4で製造した搗精発芽小麦乾燥物の湯戻し品を小麦粉対比で30重量部配合した山型食パンを製造した。製造に先立ち、所定量の該搗精発芽小麦乾燥物を同一重量部の熱湯に浸漬して2時間ほど室温で放置し充分含水させた後、これを予め混捏しておいたパン生地に添加して均一になるまで混合した。なお具体的な配合および工程を、表6および表7にそれぞれ示す。
【0069】 【表6】
【0070】 (注2)強力1等粉(千葉製粉株式会社製 商品名「特ばら」)。 (注3)実施例4の搗精発芽小麦乾燥物を同一重量部の熱湯に2時間浸漬した後、ざるに上げて水切りしたもの。 【0071】 【表7】
【0072】 このようにして製造された山型食パンは、搗精発芽小麦乾燥物の含まれない通常の山型食パンに比べて栄養価も高く、また発芽小麦搗精品の独特な外観や食感、風味による差別化を図ることができ、さらに穀物を丸ごと食するという健康イメージを付与した商品開発も可能となる。 【実施例10】 【0073】 実施例1で製造した発芽小麦乾燥物を、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製M−5型ピンミル、目開き2mmのスクリーンを装着)で粉砕し、発芽小麦粉砕物とし、この発芽小麦粉砕物15重量部と通常の小麦粉85重量部とからなる山型食パンを製造した。なお具体的な配合および工程を、表8および表9にそれぞれ示す。 【0074】 【表8】
【0075】 (注4)強力1等粉(千葉製粉株式会社製 商品名「特ばら」)。
【0076】 【表9】
【0077】 このようにして製造された山型食パンは、発芽小麦粉砕物の含まれない通常の山型食パンに比べて栄養価も高く、また発芽小麦粉砕物の独特な食感及び風味による差別化を図ることができる。また通常の全粒粉を配合したいわゆる全粒パンとの比較においても、従来の全粒粉に特有のざらついた硬い食感が軽減され、さらに苦みやエグミといった不快な味も少ないものである。 【実施例11】 【0078】 実施例1で製造した発芽小麦乾燥物を、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製M−5型ピンミル、目開き2mmのスクリーンを装着)で粉砕し、発芽小麦粉砕物とし、この発芽小麦粉砕物10重量部と通常の小麦粉100重量部を配合したうどんを製造した。その具体的な配合および工程を表10および表11にそれぞれ示す。 【0079】 【表10】
【0080】 (注5)中力1等粉(千葉製粉株式会社製 商品名「ラベンダー」)。 【0081】 【表11】
【0082】 このようにして製造されたうどんは、発芽小麦全粒粉の配合されていない通常のうどんと比べて栄養価的にも優れており、また従来のうどんにはなかった独特の風味や食感、素朴な外観が付与され、強く差別化された商品開発が可能となる。 【実施例12】 【0083】 実施例1で製造した発芽小麦乾燥物を、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製M−5型ピンミル、目開き2mmのスクリーンを装着)で粉砕し、発芽小麦粉砕物とし、この発芽小麦粉砕物30重量部と通常の小麦粉70重量部とからなるショートブレッドクッキーを製造した。ここで言うショートブレッドクッキーとは、短時間で様々な栄養成分を摂取でき栄養補助食品的な位置付けで販売されているいわゆる「エネルギーバー」と呼ばれるスティック状クッキーを指す。なお具体的な配合および工程を、表12および表13にそれぞれ示す。
【0084】 【表12】
【0085】 (注6)薄力1等粉(千葉製粉株式会社製 商品名「特梅」)。 (注7)小麦蛋白(千葉製粉株式会社製 商品名「グルリッチA」)。 【0086】 【表13】
【0087】 このようにして製造されたショートブレッドクッキーは、発芽小麦全粒粉の含まれていない通常の製品に比べて栄養的にも優れ、また湿熱処理によりアルファー化し硬化した全粒粉のしっかりとした歯ざわりのある、食感や風味的にも特徴ある製品となる。 【産業上の利用可能性】 【0088】 本発明によれば、栄養価が高いと共に風味・食感にも優れ、しかも汎用性が高い発芽小麦乾燥物及び搗精発芽小麦乾燥物を提供することができ、さらにこの発芽小麦乾燥物及び搗精発芽小麦乾燥物を各種食品に配合することで、栄養価や機能性に優れた特徴ある食品を製造することができる。従って本発明は、産業上の利用価値が高いものといえる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000199441 【氏名又は名称】千葉製粉株式会社
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| 【出願日】 |
平成15年10月30日(2003.10.30) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2005−130754(P2005−130754A) |
| 【公開日】 |
平成17年5月26日(2005.5.26) |
| 【出願番号】 |
特願2003−369744(P2003−369744) |
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