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【発明の名称】 密閉容器入り加工品、その保存方法及び保存装置
【発明者】 【氏名】井上 孝司
【住所又は居所】愛知県西春日井郡師勝町大字熊之庄字十二社45−2 株式会社ポッカコーポレーション基礎技術研究所内
【課題】保存中に起こる品質の低下を効果的に抑えることができる密閉容器入り加工品、その保存方法及び保存装置を提供する。

【解決手段】密閉容器入り加工品31は、微生物処理が施された状態で密閉容器内に封入された加工品であって、動電場雰囲気下で所定期間保存されたものである。この密閉容器入り加工品31を保存するための保存装置12は、電場発生装置21と、その電場発生装置21に接続された電極22と、密閉容器入り加工品31を収容するための保管庫32とを備えている。さらに、この保存装置12は、前記電場発生装置21により電極22の周囲に動電場を形成させるように構成されているうえ、その動電場により保管庫32内全体が動電場雰囲気下となるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入された加工品であって、
動電場雰囲気下で所定期間保存されたことを特徴とする密閉容器入り加工品。
【請求項2】
常温よりも高い温度に加温された加温室内で保存されたことを特徴とする請求項1に記載の密閉容器入り加工品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の密閉容器入り加工品を保存するための保存方法であって、
動電場雰囲気下で保存することを特徴とする密閉容器入り加工品の保存方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の密閉容器入り加工品を保存するための保存装置であって、
電場発生装置と、その電場発生装置に接続された電極とを備え、
前記電場発生装置により前記電極の周囲に動電場を形成させるように構成したことを特徴とする密閉容器入り加工品の保存装置。
【請求項5】
前記密閉容器入り加工品を収容するための保管庫を備え、
前記電場発生装置により前記電極の周囲に動電場を形成させたとき、その動電場により前記保管庫内が動電場雰囲気下となるように構成したことを特徴とする請求項4に記載の密閉容器入り加工品の保存装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入された加工食品、特に密閉容器内に封入された液体食品や飲料品等の密閉容器入り加工品、その保存方法及び保存装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電場雰囲気下で食品等を保存する技術としては、例えば特許文献1に開示されている白米等穀類の活性化貯蔵法が知られている。この方法は、静電圧発生装置の交流電界内に貯蔵する、白米等穀類に対して静電誘導することによって、白米等穀類の水分の分子に回転、振動を与え、分子の離合分散により水分に機能を持たせることにより活性化を図り、白米等穀類を貯蔵するものである。この方法は、白米等穀類の貯蔵に対して、静電誘導処理による誘電分極、電子分極を行い白米等穀類中の水分の分子に一秒間に周波数分の回転、振動を与え、その離合分散を促進することにより、白米等穀類中の水分の結合水と自由水とに分離し、自由水の発散や貯蔵庫内の水分吸収等、液体に機能を持たせ活性化を図り品質を安定させる。その結果、白米等穀類に含まれる水の分子に、静電誘導により回転、振動を与え、結合水と自由水の分離により、自由水の発散と貯蔵庫内の空気からの水分の吸収の繰り返しの運動により水分含有率を一定にすることができる。
【特許文献1】特開2003−199491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の白米等穀類の活性化貯蔵法は、穀類に含まれる自由水の発散と貯蔵庫内の空気からの水分の吸収により、該穀類中の水分含有率を一定に保持するといった開放系特有の貯蔵法であった。ところが、外部との水や空気の出入りが完全に遮断されている密閉系においては、前記自由水の発散や空気からの水分の吸収はほとんど起こり得ないことから、前記従来の活性化貯蔵法で発揮されるような水分含有率を一定にするといった作用効果は期待することは不可能である。特に、密閉系内で水分を含む食品等の加工品を貯蔵する際には、系内で水蒸気が飽和した状態となることから却って品質が不安定になるおそれすらある。
【0004】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、密閉容器内での保存中に起こる品質の劣化を効果的に抑えることができる密閉容器入り加工品、その保存方法及び保存装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の密閉容器入り加工品の発明は、微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入された加工品であって、動電場雰囲気下で所定期間保存されたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の密閉容器入り加工品の発明は、請求項1に記載の発明において、常温よりも高い温度に加温された加温室内で保存されたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の密閉容器入り加工品の保存方法の発明は、請求項1又は請求項2に記載の密閉容器入り加工品を保存するための保存方法であって、動電場雰囲気下で保存することを特徴とするものである。
【0007】
請求項4に記載の密閉容器入り加工品保存装置の発明は、請求項1又は請求項2に記載の密閉容器入り加工品を保存するための保存装置であって、電場発生装置と、その電場発生装置に接続された電極とを備え、前記電場発生装置により前記電極の周囲に動電場を形成させるように構成したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項5に記載の密閉容器入り加工品保存装置の発明は、請求項4に記載の発明において、前記密閉容器入り加工品を収容するための保管庫を備え、前記電場発生装置により前記電極の周囲に動電場を形成させたとき、その動電場により前記保管庫内が動電場雰囲気下となるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、密閉容器内での保存中に起こる品質の劣化を効果的に抑えることができる密閉容器入り加工品、その保存方法及び保存装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
実施形態の密閉容器入り加工品は、微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入された加工品であって、動電場雰囲気下で所定期間保存されたものである。この密閉容器入り加工品は、動電場雰囲気下で保存されることにより、保存中に起こる品質の劣化が極めて効果的に抑えられ、製造直後のままの高い品質をほぼそのまま継続的に保持することができるようになっている。
【0011】
前記加工品としては、加工飲食品(飲料品又は加工食品)が挙げられる。この加工品は、1種類又は複数種類の原材料を所定の加工工程に従って加工することにより製造されたものである。前記加工工程は、原材料に人為的な処理を施して形状及び物性から選ばれる少なくとも一方を変化させることを意味し、この意味では例えば、牛乳の搾乳及び殺菌工程、野菜や果物(オレンジ、グレープフルーツ、レモン等)の搾汁工程、コーヒー豆の焙煎又は抽出工程、液体の濃縮又は乾燥工程、濃縮液の希釈工程、粉体の溶解工程をも含む。なお、この加工工程としては、前記原材料中に動植物由来の生細胞が含有されている場合には、その生細胞を破壊して生命活動を停止させる工程を含んでいるのが好ましいが、必ずしも全ての生細胞が死滅している必要はない。
【0012】
飲料品としては、サイダー、レモン、コーラ等の炭酸飲料、果汁入り飲料、牛乳、コーヒー、ウーロン茶や紅茶等の茶類、ミネラルウォーター等の清涼飲料、ビール、発泡酒、日本酒、ウイスキー、焼酎、カクテル等の酒類、フルーツシロップ、健康飲料、嗜好飲料、ゼリー飲料、栄養ドリンク剤等が挙げられる。また、加工食品としては、主としてレトルト殺菌した食品(例えば、スープ、シチュー、カレー)、缶詰、サラダ油、ゴマ油、オリーブ油、バター、マーガリン、健康食品、栄養補助食品等が挙げられ、粉ミルクや粉末食品等の粉末状の食品、或いは錠剤やカプセル剤等の製剤であっても構わない。
【0013】
これら加工品としては、動電場雰囲気下による品質の低下が抑えられやすいことから、好ましくは水、アルコール、油等の溶媒(特に水等の極性溶媒)又は分散媒を含む加工飲食品、より好ましくは前記溶媒又は分散媒を多く含むペースト状の加工飲食品、さらに好ましくは溶媒又は分散媒を非常に多く含む液状の加工飲食品が好適に用いられる。さらに、これら加工品としては、有機物を含有するもの、特に有機物及び水を含有するものが好適に使用され、この場合には保存中に起こる熱劣化、酸化劣化、変色等を抑えて品質の低下を効果的に抑制することが可能となる。また、飲料品としては、香りや成分が変化しやすいコーヒー又は茶類、鹸化臭の発生が懸念されるミルク入り飲料、加温販売される飲料、酸味の増大や褐変しやすくビタミンCの減少が懸念される果汁飲料や野菜飲料等が好適に用いられる。
【0014】
これら密閉容器入り加工品(特に飲料品)には、保存中に起こる酸化劣化を防止して保存性を高めるための抗酸化剤が含有されているのが好ましい。前記抗酸化剤としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、リコピン等のビタミン類、イソフラボン、エリオシトリン(レモンフラボノイド)等のフラボノイド類、クロロゲン酸、カテキン、アントシアニン等のポリフェノール類、その他フリーラジカルの捕捉又は一重項酸素消去能を持つ成分なら何でもよい。また、これらの抗酸化剤のうち、天然素材から抽出した成分が最も好適に用いられる。
【0015】
これらの加工品は、空気の通過を遮断する密閉容器(気密容器)内に密閉状態(気密状態)で封入されている。前記密閉容器としては、ビン、缶、ペットボトル、紙パック、プラスチックフィルムパック、アルミニウムフィルムパック等が挙げられる。これら密閉容器は、導電体、半導体又は絶縁体(誘電率が高い絶縁体であるのが好ましい)のいずれであっても構わない。
【0016】
これらの加工品は、微生物制御が施された状態、好ましくは無菌状態、より好ましくは無菌及び無細胞状態で密閉容器内に封入されている。前記微生物制御としては、殺菌処理、pH調整、アルコール含有処理、炭酸ガス処理、水分含量調整処理、濾過等の微生物除去処理、保存料添加処理等が挙げられるが、加熱殺菌処理が最も簡便で微生物制御に適している。この微生物制御は、腐敗菌を除去したり、その腐敗菌の生命活動を破壊又は完全に停止させることを主目的とするものであり、発酵菌(酵母や乳酸菌等)等のバイオプリザバティブ(biopreservative)な作用を有する有用微生物を完全に死滅させたり、前記原材料に由来する動植物の細胞や組織を完全に破壊する必要はない。一方、前記無菌状態とは細菌(腐敗菌及び有用微生物)が存在しない状態であり、前記無菌及び無細胞状態とは細菌及び動植物細胞が存在しない状態である。
【0017】
これら密閉容器入り加工品は、保存中に起こる品質の劣化をより一層効果的に抑えるために、密閉容器内における加工品以外の物質の存在量、即ち無駄な空間が少ないのが好ましく、気体、特に空気(酸素)の存在量が少ないのが好ましい。また、前記密閉容器内に気体が存在する場合には、不活性ガス、窒素ガス、炭酸ガス等の化学反応性の低い気体が含有されているのが好ましい。一方、この密閉容器入り加工品を動電場雰囲気下で保存する際の保存期間(上記所定期間)は、各加工品の品質保持期間(賞味期間)内であれば特に限定されない。
【0018】
これらの密閉容器入り加工品は、図1に示される第1の保存装置11、又は図2〜3に示されるような第2の保存装置12を用いて保存される。
図1に模式的に示すように、第1の保存装置11は、電場発生装置21と、その電場発生装置21に電気的に接続された電極22とを備えている。この電場発生装置21は、回路内にトランスを備えており、家庭用電源等の交流電源から供給される交流電流を一次側回路内に流しながらトランスで昇圧し、昇圧後の二次側の電流の一部を電極22を介してその周囲の空間へと開放させるように構成されている。このとき、前記電極22には、所定周波数(通常は50Hz又は60Hz)の交流電圧が印加され、その周囲の空間に動電場を形成させる。
【0019】
前記電極22は、板状、塊状、棒状、網状、その他任意の形状に形成されているが、密閉容器入り加工品に対して均一な動電場を形成させることが容易であることから、板状であるのが好ましい。この電極22は、漏電を防止するためにその外表面全体が絶縁体により被覆されているのが好ましい。また、この第1の保存装置11は、複数個の電極22を備えるように構成されていてもよく、その場合には、例えば図1に2点鎖線で示されるような構成となる。
【0020】
この第1の保存装置11は、電場発生装置21により電極22を所定の周期でプラス・マイナス交互に帯電させることにより、その電極22の周囲を動電場雰囲気下にする。この保存装置11は、コンテナ、倉庫、ショーケース、輸送用車両、船舶等の上記密閉容器入り加工品を保管するための任意の保管場所に適宜設置して使用される。なお、前記電場発生装置21により電極22に印加される電圧値は、密閉容器入り加工品を十分な動電場雰囲気下で保存することができるうえ、手軽に電源が得られることから、100〜30000V、好ましくは300〜10000V、より好ましくは500〜3000Vの範囲内であるとよい。また、この保存装置11内に流れる電流値は、1A以下、好ましくは1mA以下、より好ましくは0.1mA以下であり、消費電力を抑えるために0.01〜0.1mAの範囲内であるとよい。なお、前記電流値は、動電場を及ぼすべき対象、空間の大きさ、室内温度その他の条件等に応じて回路構成を適宜変更することにより所望の電流値となるように任意に設定され得る。
【0021】
図2及び図3に模式的に示すように、第2の保存装置12は、前記第1の保存装置11を構成する電場発生装置21及び電極22と、密閉容器入り加工品31を収容するための1個又は複数個の保管庫32とを備えており、自動販売機、ウォーマとしての飲料用ウォーマ、ショーケース等の諸形態で利用される。また、コンテナ、倉庫、輸送用車両、船舶等の内装を改造することによって各種用途に利用することも可能である。前記保管庫32は、密閉容器入り加工品31を囲いながら収容するように構成されており、密閉性が低くても構わないが、密閉性が高い方が好ましい。また、この保管庫32が導電体からなる部品を備えている場合には、その部品に対して電場発生装置21を電気的に接続することにより、該部品を電極22として利用することも可能である。
【0022】
この保管庫32としては、庫内の温度を常温よりも低い温度に冷却する冷却室、常温付近の一定の温度にする恒温室又は常温よりも高い温度に加温する加温室のいずれであってもよい。前記冷却室は、密閉容器入り加工品31を冷凍又は冷蔵しながら長期間保存するために設けられる。この冷却室は、多種類の加工品の保存に適していることから、庫内の温度が好ましくは−20〜10℃、より好ましくは0〜5℃の定温となるように設定される。前記恒温室は、密閉容器入り加工品31を常温付近の一定温度で保存するために設けられ、主として季節、天候、時刻によって異なる温度変化に起因する不測の品質低下を防止する。この恒温室は、庫内の温度が好ましくは10〜35℃、より好ましくは15〜30℃の定温となるように設定される。
【0023】
前記加温室は、主として加温販売を目的とする自動販売機やウォーマ等に設けられ、比較的短い期間密閉容器入り加工品31を加温しながら保存する。この加温室は、庫内の温度が好ましくは30〜80℃、より好ましくは35〜75℃、さらに好ましくは50〜70℃の定温となるように設定される。なおこのとき、前記電極22は、遠赤外線照射が可能なセラミックス素材(TiO3やAl23等)により構成されていてもよい。前記加温室内の温度が30℃未満の場合には、加温するための装置を設ける必然性が少ない。逆に80℃を越える場合には、加熱温度に起因する品質低下要因が大きすぎることから、動電場雰囲気下での保存によってもその品質の低下をあまり効果的に抑制することができないおそれがある。
【0024】
この第2の保存装置12における電極22の取付け位置としては、保管庫32の内部(図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(d))、又は保管庫32の外部(図2(d))のいずれであってもよい。保管庫32の内部に電極22を取付ける場合には、電極22を構成する導電体若しくは絶縁体が密閉容器入り加工品31と直接接触する場合(図2(a)及び図3(a))、電極22を構成する導電体若しくは絶縁体が密閉容器入り加工品31と導電体若しくは絶縁体を介して間接的に接触する場合(図2(b)及び図3(b))、又は電極22が密閉容器入り加工品31と接触しない場合(図2(c)及び図3(c))が挙げられる。また、保管庫32の外部に電極22を取付ける場合(図2(d))には、電極22を構成する導電体若しくは絶縁体が保管庫32の外面に接触していてもいなくてもいずれであってもよい。
【0025】
さらに、前記電極22は、密閉容器入り加工品31に近いほどその品質の低下が起こりにくく、密閉容器入り加工品31に接触させる(図2(a)及び図3(a))のが最も好ましい。また、電極22と密閉容器入り加工品31とが間接的に接触する場合でも、それらの間に電気伝導率の高い物体(導電体(鉄等)又は半導体)が介在し、両者が間接的に接触しているのが好ましい。なお、これら図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(d)のいずれの場合であっても、電極22より発生する動電場が保管庫32内全体を動電場雰囲気下とし、その動電場が密閉容器入り加工品31全体を取り囲むように構成されている必要がある。
【0026】
一方、この第2の保存装置12は、自動販売機として利用される場合、面積の大きな平板状の電極22を自動販売機の内扉に設置するか、或いは自動販売機の上部又は下部に設置するのが簡便かつ効果的である。また、この保存装置12は、ショーケースとして利用される場合、密閉容器入り加工品31を載置するための各棚にシート状、平板状又は網状の電極22を敷設し、その電極22の上面に密閉容器入り加工品31を載置するように構成するとよい。
【0027】
上記保存装置11,12の作用について以下に記載する。
上記第1の保存装置11は、既存のコンテナ、倉庫、ショーケース、輸送用車両、船舶等に適宜装着して利用される。なお、前記既存のコンテナ、倉庫、ショーケース、輸送用車両、船舶等は、密閉容器入り加工品31の保管や輸送に利用することができるとともに、それ以外の物品の保管や輸送にも利用することができるものである。一方、上記第2の保存装置12は、密閉容器入り加工品31の保存や輸送のための専用の装置である。
【0028】
さて、これら保存装置11,12は、交流電源から供給される交流電流を電場発生装置21の回路内に通電することによって、電極22に所定周波数の交流電圧を印加し、電極22の周囲に動電場を発生させ、周囲の環境(保管庫32の内部)を動電場雰囲気下にする。なお、前記電極22は、絶縁体により被覆されている場合でも、その絶縁体を透過して周囲の環境に動電場を形成させる。
【0029】
前記動電場雰囲気下に密閉容器入り加工品31を静置したときには、その密閉容器入り加工品31の内部に封入されている加工品は、動電場により電気化学的なコントロールを受け、電子の授受を伴う化学反応が極めて起こりにくくなる。その結果、前記加工品の品質低下に大きく寄与する酸化還元反応を中心とする化学反応が大幅に抑制される。また、この動電場は、雰囲気内を還元状態とすることから、より一層酸化反応を引き起こしにくい環境を形成させる。特に、前記加工品は、密閉容器内に封入されることにより外部から完全に遮断されていることから、外部の物質との間で電子の授受が起こることがなく、密閉系内での良好な定常状態(平衡状態)が継続的に維持されるようになっている。
【0030】
従って、この動電場雰囲気下に静置状態で保存されている密閉容器入り加工品31は、酸化還元反応等の化学反応が抑えられ、加工品中に含まれていた有機物等の劣化や変質が起こりにくくなっており、製造直後のままの状態を長期間に渡って容易に保持することができるようになっている。また、この密閉容器入り加工品31中に生細胞由来の酵素等が含有されている場合でも、その酵素反応等の生物学的反応をも抑える作用も有する。
【0031】
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の密閉容器入り加工品31は、微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入された加工品であって、動電場雰囲気下で所定期間静置しながら保存されたものである。このため、この密閉容器入り加工品31では、保存中に起こる物質や電荷同士の相互干渉(特に化学反応)を極めて効果的に抑制することができ、保存期間中の品質の劣化を容易に防止することができる。
【0032】
さらに、この密閉容器入り加工品31は、密閉容器内に密閉状態で封入されていることから、外部との物質の出入りが全く起こらず、保存中に不測の化学反応が引き起こされることがない。加えて、この密閉容器入り加工品31は、微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入されていることから、腐敗菌による不測の品質劣化が引き起こされることもない。そのうえ、この密閉容器入り加工品31は、動電場雰囲気下で保存されることにより、加工品中に有用微生物や動植物細胞が生存していた場合でも、それらの生命活動を担う諸物質が電気化学的なコントロールを受けることから、製造直後の品質を容易に保持することができる。特に、生命活動の秩序が一部崩壊した状態の細胞が含まれている加工品(果汁入り飲料等)の場合には、動電場による電気化学的なコントロールが直接的に作用しやすくなっており、密閉系内の他の物質との化学反応を抑える効果が顕著である。従って、この密閉容器入り加工品31は、製造直後の品質に対し常に一定レベル以上の高い品質を保持しているうえ、保存期間が長くなるほど動電場雰囲気下で保存されていない密閉容器入り加工品との品質の差が拡大するようになっている。
【0033】
また、この密閉容器入り加工品31は、動電場雰囲気下で保存することにより品質の低下を著しく効果的に抑制できることから、その条件での保存を行う際の新たな品質保持期間の設定を行うことが可能であり、その場合には動電場雰囲気下で保存していない場合よりもその期間が大幅に延長され得る。このとき、品質保持期間を超過したものを廃棄処分する量が削減されることから、コスト削減に大いに貢献する。さらには、品質保持のための特別な添加物(保存料)や特殊な製造工程を削減することも可能である。また、製造後の品質保持を低温での温度制御だけに頼らなくてもよいというメリットもある。
【0034】
・ 密閉容器入り加工品31を動電場雰囲気下の加温室内で保存することにより、特に加工食品や飲料品等の加温販売において、その保存中の熱劣化を大幅に抑えて品質の低下を抑制することができる。例えば、動電場雰囲気下と電場のない雰囲気下とについて実際に試験してみると、60℃で3日間以上保存すると品質に差が生じ、さらに60℃で4週間以上保存すると動電場雰囲気下で保存されたものの品質低下は半分以下に抑えられたケースもあった。
【0035】
一般に、加温販売の飲料品では、60℃付近で2週間程度まで保存されたものが美味しく飲用できる目安となっており、4週間以上保存すれば極端に味が低下するケースが多い。これらの飲料品は、例えば60℃付近で保存された場合、その保存温度が1℃上昇すると常温保存と比較して品質低下が数倍程度早まると言われており、加熱(過熱)による品質低下が非常に深刻な問題となっている。特に冬季では、温かい飲料品の需要が増大する中で、加熱過多や加熱劣化を防止するために温度制御を厳密に行ったり、商品の加熱(加温)期間を厳密に制限して販売することが必要不可欠であったことから、加温販売に適用可能な商品の種類を増やすのが困難であった。さらに、前記温度制御の管理は非常に煩雑であったことから、人件費やコストが著しく増大するという欠点もあった。これに対し、本実施形態の密閉容器入り加工品31及びその保存方法では、加熱期間を延長したり、加熱過多による商品のロスを低減することが極めて容易であり、有用性は著しく高い。また、加温状態で保存される加工品は、低温で保存される場合よりもエントロピーが高い状態となっていることから、動電場による品質の低下抑制効果が顕著に高められ得る。
【実施例1】
【0036】
(缶ウォーマ内でのミルク入り缶コーヒーの保存試験)
粉砕した焙煎コーヒー豆3.9kgを32Lの熱湯にて抽出を行い、その抽出液に牛乳36kg、砂糖4.7kg、乳化剤120g及び重曹130gを加え、全量が100Lになるよう水で調整することによりミルク入りコーヒー飲料を作製した。このコーヒー飲料を金属缶にホット充填、密封を行った後、レトルト殺菌機によりF0=40以上となるように殺菌を行い、密閉容器入り加工品31としてのミルク入り缶コーヒーを複数個作製した。
【0037】
この缶コーヒーを、図2(a)に示される保存装置12内で7日間保存したものを試験例1とした。なお、前記保存装置12は、60℃に加温された加温室を備えたウォーマとしての缶ウォーマであって、YOSHIKIN社製の缶ウォーマ(Model GW−20P)に保存装置11を装着することによって改造されたものである。この缶ウォーマの内部底面上には、絶縁体(ポリプロピレン)によって被覆された四角板状の鉄板からなる電極22が載置されており、その電極22を構成する絶縁体の上面に前記ミルク入り缶コーヒーが載置されるようになっている。さらに、この缶ウォーマは、電極22に0.03mAで1000Vの定電圧が印加されており、加温室内全体が動電場雰囲気下となっている。一方、同ミルク入り缶コーヒーを、前記試験例1の保存装置11が設けられていない既存の缶ウォーマ内で7日間保存したものを比較例1とした。
【0038】
これら試験例1及び比較例1のミルク入り缶コーヒーのそれぞれについて、ヒューレットパッカード社製6890シリーズの分子量検出器を備えたガスクロマトグラフィー・質量分析装置(GC−MS)を用いて香り成分変化の分析を行った。分析方法としては、塩析法によるヘッドスペース中の香気成分の分析を行い、製造直後の香気成分のピーク本数に対する7日間経過後の香気成分のピーク本数の残存割合を求めた。
【0039】
その結果、比較例1では製造直後に検出された香気成分のうち17.5%が7日後にも検出され、試験例1では製造直後に検出された香気成分のうち37.5%が7日後にも検出されたことが示された。従って、ミルク入り缶コーヒーを動電場雰囲気下で静置保存することにより、香気成分の減少が大幅に抑制されたことが確認された。
【実施例2】
【0040】
(自動販売機内でのレモン果汁入り清涼飲料の保存試験)
Bx.43のレモン濃縮果汁0.48kg、砂糖3.3kg、ビタミンC388g、アスコルビン酸ナトリウム60g、クエン酸20g及び紅花黄色色素3gを水に溶解した後、全量が100Lになるよう調合した後、瞬間殺菌(93℃、10秒)を行うことによりレモン果汁入り清涼飲料を作製した。この清涼飲料を金属缶にホット充填、密封することにより、密閉容器入り加工品31としての缶入り清涼飲料を複数個作製した。
【0041】
この缶入り清涼飲料を、図2(d)に示される保存装置12内で5週間まで保存したものを試験例2とした。なお、この保存装置12は、60℃に加温された加温室を備えた自動販売機であって、松下冷機社製の自動販売機(NS−K15BUX)に保存装置11を装着することによって改造されたものである。この自動販売機の下方(床面上)には、絶縁体(ポリプロピレン)によって被覆された四角板状の鉄板からなる電極22が配置されている。さらに、この自動販売機は、電極22に0.03mAで1000Vの定電圧が印加されており、加温室内全体が動電場雰囲気下となっている。
【0042】
また、前記缶入り清涼飲料を、図2(b)に示される保存装置12内で5週間まで保存したものを試験例3とした。なお、この保存装置12は、前記電極22を自動販売機の下方ではなく内扉に取付けたこと以外は、前記試験例2の自動販売機と同じ構成である。一方、前記缶入り清涼飲料を、前記試験例2及び3の保存装置11が設けられていない既存の自動販売機内で5週間まで保存したものを比較例2とした。
【0043】
これら試験例2,3及び比較例2の缶入り清涼飲料のそれぞれを、1週間毎にサンプリングし、褐変度の目安である色差(YI値)と、ビタミンC含量とを測定した。なお、前記ビタミンC含量は、JAS法に基づいたインドフェノール法により測定した。結果を図4(a)、(b)に示す。
【0044】
その結果、試験例2,3はいずれも、比較例2と比較して、経時的に起こる褐変反応が大幅に抑制されているうえ、ビタミンC残存量の低下も大幅に抑制されていることが示された。さらに、電極22を加温室の外部に配置した試験例2(下置き)と、電極22を缶入り清涼飲料と間接的に接触するように配置した試験例3(内扉置き)とを比較して、色差及びビタミンC残存量ともに5週間以内の保存では効果の差はほとんど見られなかったことも確認された。
【0045】
一方、データは示さないが、図3(b)に示される保存装置12(2台の自動販売機、2個の電極22及び1台の電場発生装置21を備えている)を用いて試験例3と同様の保存試験を行ったところ、両自動販売機内で保存された缶入り清涼飲料は、いずれも試験例2,3と同様の効果が発揮された。従って、缶入り清涼飲料は、電極22に直接接触していても、間接的に接触していても、全く接触していなくても、いずれも5週間まではほぼ同様に品質の低下を効果的に抑え得ることが確認された。
【実施例3】
【0046】
(自動販売機内での缶入りブラックコーヒーの保存試験)
粉砕した焙煎コーヒー豆4.7kgを47Lの熱湯にて抽出を行い、その抽出液に重曹50gを加え、全量が100Lになるよう水で調整することにより、ブラックコーヒー飲料を作製した。このコーヒー飲料を金属缶にホット充填、密封を行った後、レトルト殺菌機によりF0=4.0以上となるように殺菌を行い、密閉容器入り加工品31としての缶入りブラックコーヒーを複数個作製した。この缶入りブラックコーヒーを、上記試験例3の自動販売機内で3週間まで保存したものを試験例4とした。一方、同缶入りブラックコーヒーを、上記比較例2の自動販売機内で3週間まで保存したものを比較例3とした。
【0047】
これら試験例4及び比較例3の缶入りブラックコーヒーのそれぞれを、1週間毎にサンプリングし、HPLCを用いてクロロゲン酸量及び各種有機酸量の測定を行った。クロロゲン酸残存率に関する結果を図5に示し、有機酸としてのキナ酸、酢酸及びギ酸の生成量に関する結果をそれぞれ図6(a)〜(c)に示す。
【0048】
その結果、試験例4は、比較例3と比較して、コーヒーに含まれるクロロゲン酸の分解が大幅に抑制されているうえ、各種有機酸の生成が大幅に抑制されていることが示された。なお、クロロゲン酸はコーヒーに元々含有されている苦味成分であり、キナ酸、酢酸及びギ酸はその生成量が多いほどコーヒーの品質が低下していることを示す指標である。
【0049】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図2〜3に示されるような保存装置12において、電極22とは周期がずれた動電場(好ましくは半周期ずれた動電場)を発生させる電極を新たに設けるとともに、その新たに設けられた電極が密閉容器入り加工品31を挟んで前記電極22とは対向位置に配置されるように構成すること。即ち、一対の電極間に密閉容器入り加工品31が位置するように構成すること。
【0050】
例えば、図2(d)に2点鎖線で示される電極22aを保管庫32の上方又は上端部に設けるとともに、電極22と電極22aとが半周期ずれた動電場を発生させるように構成すること。なおこのとき、両電極22,22aは、保管庫32の底面又は上面全体を覆う平板状に形成されているのが好ましい。このように構成した場合、保管庫32内の全ての場所で電場の強さを平均化するのが極めて容易となる。さらに、保管庫32の外部に漏れる動電場の強さを弱め、保管庫32内に形成される動電場の強さを容易に高めることができる。その結果、電場発生装置21の消費電力を容易に低減させることが可能となる。
【0051】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入された加工飲食品であって、常温よりも高い温度に加温された加温室内で動電場雰囲気に晒されながら所定期間保存されたことを特徴とする密閉容器入り加工飲食品。このように構成した場合、加温状態で保存された加工飲食品の保存中に起こる品質の劣化を効果的に抑えることができる。
【0052】
・ 微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入された加工飲食品を保存するための保存装置であって、電場発生装置と、その電場発生装置に接続された電極と、前記加工飲食品を常温よりも高い温度に加温しつつ収容するための加温室とを備え、前記電場発生装置により前記電極の周囲に動電場を形成させるように構成するとともに、該電場発生装置により電極の周囲に動電場を形成させたとき、その動電場により前記加温室内が動電場雰囲気下となるように構成したことを特徴とする密閉容器入り加工飲食品の保存装置。このように構成した場合、密閉容器入り加工飲食品を加温状態で保存する際に起こる品質の劣化を効果的に抑えることができる。
【0053】
・ 前記密閉容器入り加工品を陳列販売するための自動販売機又はウォーマであることを特徴とする請求項5に記載の密閉容器入り加工品の保存装置。前記密閉容器入り加工品を常温よりも高い温度に加温しながら陳列販売するための自動販売機又はウォーマであることを特徴とする請求項5に記載の密閉容器入り加工品の保存装置。
【0054】
・ 微生物制御が施された状態で密閉容器内に封入された飲料品を陳列販売するための自動販売機であって、電場発生装置と、その電場発生装置に接続された電極と、前記飲料品を収容するための保管庫とを備え、前記電場発生装置により前記電極の周囲に動電場を形成させるように構成するとともに、該電場発生装置により電極の周囲に動電場を形成させたとき、その動電場により前記保管庫内が動電場雰囲気下となるように構成されていることを特徴とする自動販売機。このように構成した場合、飲料品を陳列販売するための保存中に起こる品質の低下を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態の第1の密閉容器入り加工品の保存装置を示す模式図。
【図2】(a)〜(d)はいずれも、実施形態の第2の密閉容器入り加工品の保存装置を示す模式図。
【図3】(a)〜(d)はいずれも、実施形態の第2の密閉容器入り加工品の保存装置を示す模式図。
【図4】(a)及び(b)はいずれも、実施例2の試験結果を示すグラフ。
【図5】実施例3のクロロゲン酸残存率の測定結果を示すグラフ。
【図6】(a)〜(c)はいずれも、実施例3の有機酸生成量の測定結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0056】
11…密閉容器入り加工品の保存装置としての第1の保存装置、12…密閉容器入り加工品の保存装置としての第2の保存装置、21…電場発生装置、22,22a…電極、31…密閉容器入り加工品、32…保管庫。
【出願人】 【識別番号】591134199
【氏名又は名称】株式会社ポッカコーポレーション
【住所又は居所】愛知県名古屋市東区代官町35番16号
【出願日】 平成15年10月10日(2003.10.10)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣

【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠

【公開番号】 特開2005−110643(P2005−110643A)
【公開日】 平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願番号】 特願2003−352812(P2003−352812)