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【発明の名称】 魚節抽出残渣を利用した調味料素材及びその製造方法
【発明者】 【氏名】田中 将行

【氏名】池田 博明

【氏名】井上 英彦

【氏名】古庄 律

【氏名】安原 義

【氏名】片岡 榮子

【氏名】片岡 二郎

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌化された魚節抽出残渣を無菌状態で製造した固体麹と共に混合し、無菌無塩状態で分解することにより得られた、苦味のない風味の優れた調味料素材。
【請求項2】
無菌化された魚節抽出残渣を無菌状態で製造した固体麹と共に、固体麹が魚節抽出残渣の乾重量の10%以上となる比率で混合し、分解温度30℃〜60℃及び分解時間10時間〜72時間、分解PH5〜8の条件下において無菌無塩状態で分解することを特徴とする苦味のない風味の優れた調味料素材の製造方法。
【請求項3】
魚節抽出残渣が予め2mm以下の粉砕粒度に粉砕されることを特徴とする請求項2に記載の調味料素材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、魚節抽出残渣を利用した苦味のない風味の優れた調味料素材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚節は昆布と共に日本古来のだし調味料素材であり、和風料理の天然基本調味料である。魚節は味噌汁の「だし」等に使用され、そば、うどん等の「つゆ」にも多量に使用されている。
【0003】
これら日本人の嗜好の源とも言える「だし」、「つゆ」はかつては個々の家庭で魚節を削りこれを煮て「だし」「つゆ」を作っていた。しかし現在では「だし」は粉末状の魚節を塩や調味料と混合した風味調味料が主流となり、「つゆ」は工場で魚節から抽出された「だし」と調味料を混合して液体調味料として販売されているが、この製造工程では大量の魚節抽出残渣が発生する。この魚節抽出残渣としては、「つゆ」等の液体調味料を製造するのに使用されるカツオ節、宗田節の他に独特な風味発現原料として使用されるさば節等の雑節、及び煮干類を単独または混合使用したものから得られる残渣が含まれ、本明細書では、用語「魚節抽出残渣」はこれらの総称を意味している。
【0004】
この様に魚節は古来から和食の世界では使用されてきたが、この魚節抽出残渣を利用した酵素分解による調味料の製造方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、この公知の製造方法ではタンパク成分に富む魚節抽出残渣の可溶化率が低く、呈味力価が弱いものであって、一般的に魚節抽出残渣を酵素分解すると強い苦味を伴うと言う問題点がある。
【0005】
また、魚節抽出残渣に醤油麹を作用させた調味料の製造方法が知られている。(特許文献2参照)。この方法で得られた調味料はアルコールを多く含むため抽出原料そのものの風味の再現性に乏しいものであって、より自然な風味という観点では十分満足し得るものではないことと、食塩を添加するため、目的の品質を得るために分解時間が長期となるという問題点がある。
【特許文献1】特開平1−300872号公報
【特許文献2】特開2001−149033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記で挙げた公知の製造方法に伴う問題点を解決してタンパク成分に富む魚節抽出残渣の可溶化率を高くし、呈味力価が高く、抽出原料そのものの風味の再現性がよく、苦味のないより自然な風味をもつ調味料素材及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の発明によれば、無菌化された魚節抽出残渣を無菌状態で製造した固体麹と共に混合し、無菌無塩状態で分解することにより、苦味のない風味の優れた調味料素材が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、苦味のない風味の優れた調味料素材の製造方法は、無菌化された魚節抽出残渣を無菌状態で製造した固体麹と共に、固体麹が魚節抽出残渣の乾重量の10%以上となる比率で混合し、分解温度30℃〜60℃及び分解時間10時間〜72時間、分解PH5〜8の条件下において無菌無塩状態で分解することを特徴としている。
【0009】
本発明の方法においては好ましくは、原料として用いる魚節抽出残渣は予め2mm以下の粒度に粉砕され得る。
【0010】
本発明においては、酵素源として古来より日本の調味料として長い歴史をもつ「味噌」「醤油」「清酒」の製造に使用されている麹菌(Aspergillus属)の酵素を使用する方法を検討した。麹菌は特に東南アジアでは稲に寄生するカビであるが米食用の調味料の製造酵素であることから数千年の喫食の歴史があり、欧米におけるぶどう酒、パンに使用されている酵母とともに、食品としての安全性は自然的に容認されている微生物である。
【0011】
麹菌は同時に多種類の酵素を大量に産生するカビとして有名である。この産生される酵素の特性は高濃度の食塩に対する耐塩性をもっていることで、この特性が現在の味噌、醤油への調味料生産へと連なったと考えられる。
【0012】
食塩への耐性が強いことは、逆に考えると食塩が存在しなければさらに強い酵素作用が期待される。このためには無塩環境下での分解条件の構築が必要であり、無塩環境下での分解は無菌状態での固体麹の製造が必要である。
【0013】
製麹原料が穀類でありこの完全殺菌と、無菌状態での麹菌接種、大量の無菌空気を送風しつつの麹培養がその主点である。これらの難題を解決することにより、完全無菌の固体麹を製造した無菌固体麹(以下 無菌麹と略す)と、通常の製法で製麹した普通麹の酵素活性を測定した結果、無菌麹の中性プロテアーゼ活性は普通麹に比べて約1.2倍であった。この事実は製麹時に共存する雑菌の増殖が麹の酵素活性や麹品質への影響の大きさを示唆している。無菌麹と普通麹の酵素活性の結果を表−1に示す。
【0014】
【表−1】


【0015】
このように製麹した無菌麹と無菌化された魚節抽出残渣を滅菌した容器内で混合し、麹菌が産生する酵素による分解を実施した。分解の条件は通常の蛋白質の酵素分解反応条件である、30℃〜60℃で行う。一方、通常の麹を使用した場合高濃度の食塩存在下で発酵分解を行うが、雑菌の増殖や乳酸菌の急激な増殖による品質のバラツキを少なくするために比較的低温での分解が行われている。しかしながら、無菌状態での分解はその他微生物の影響がないために酵素の最適な条件など任意の温度帯での分解が可能である。
【0016】
この結果、無菌麹を使用した無菌無塩の酵素分解では酵素活性が高く維持され、分解効率が向上すること、酵素の最適条件での分解が可能であることで酵素分解の所要時間も短時間(10時間〜72時間)で可能であった。無菌麹を用いて魚節抽出残渣の有塩分解及び無菌無塩分解した分解液の分析の比較を行った結果、無菌無塩分解した分解液は有塩分解した分解液に比べ全窒素値は約1.5倍、総遊離アミノ酸値は約1.8倍と無菌無塩状態で分解することで分解率が向上することがわかった。
【0017】
魚節抽出残渣の無菌麹による無菌無塩分解の報告は現在までになされていない。
魚節抽出残渣を無菌麹及び酵素プロテアーゼで無菌無塩分解した分解液の分析の比較を行った結果、全窒素値はほぼ同値であったが無菌麹を使用した分解の方が総遊離アミノ酸値が高くアミノ化率が高いことがわかった。グルタミン酸値においては酵素分解液の約2.5倍であった。
【0018】
また、本分解液は苦味が少なく、旨味を伴う原料節特有の良好な風味を有するものであったが、酵素プロテアーゼ分解液は非常に苦味が強く旨味に乏しいものであった。
【発明の効果】
【0019】
以上説明してきたように、本発明による調味料素材は、無菌化された魚節抽出残渣を無菌状態で製造した固体麹と共に混合し、無菌無塩状態で分解しているため、旨味が多く使用原料節特有の良好な風味を有している。
【0020】
また、本発明による調味料素材の製造方法では、無菌化された魚節抽出残渣を無菌状態で製造した固体麹と共に、固体麹が魚節抽出残渣の乾重量の10%以上となる比率で混合し、分解温度30℃〜60℃及び分解時間10時間〜72時間、分解PH5〜8の条件下において無菌無塩状態で分解することで、分解条件(温度、時間)を任意に設定することができ、かつ旨味が多く原料節特有の良好な風味を有する調味料素材を製造できる。また、「つゆ」類製造時に発生する副産物である「魚節抽出残渣」を利用することができるため、環境汚染の問題を解決でき、かつ安価なコストで高付加価値、高旨味の調味料を提供することができるようになる。
【0021】
さらに、本発明による調味料素材の製造方法において、原料として使用する魚節抽出残渣を予め2mm以下の粒度に粉砕した場合には、殺菌効率及び分解効率を向上させることができ、全体処理工程に要する時間を大幅に短縮させることができ、生産性を上げて製造コストを低減することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一つの実施の形態によるカツオ節抽出残渣の無菌麹による無菌無塩分解の製造方法について説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
無菌麹の製造
脱脂大豆5kgと小麦フスマ5kgを無菌固体麹製造機(フジワラテクノアート株式会社製)にいれ、60%の蒸留水を均一混合した。この製麹装置全体を121℃で1時間滅菌し、冷却した。冷却後に麹菌(Aspergillus sojae)の懸濁液を噴霧接種し、30℃の無菌空気を送風して麹菌を培養した。麹菌接種後16時間と24時間と30時間の3回自動手入れ装置により切り返しを実施し、42時間で出麹とした。
【0024】
無菌麹によるカツオ節抽出残渣の無菌無塩分解
分解用の耐圧容器(内容量500リッター)に予め2mm以下に粉砕したカツオ節抽出残渣120kgと水240リッターを混合し、蒸気(間接加熱方式)で121℃、1時間滅菌処理を行い、これを冷却した。このカツオ節抽出残渣滅菌液に無菌麹を無菌的に混合し、よく攪拌してPH6、45℃±2℃で麹菌の酵素による分解を行った。48時間で分解終了とし、この分解液を固液分離した。このようにして得られた分解液の分析値を表−2に示す。なお、比較例1として、原料仕込み時の無菌麹を酵素プロテアーゼにする以外は同様の方法で行って得られた分解液を用いた。また、比較例2として原料仕込み時の仕込み水を塩水にする以外は同様の方法で行って得られた分解液を用いた。
【0025】
【表−2】


【0026】
また、得られた分解液と酵素プロテアーゼ分解液を同一濃度にて官能した官能評価結果を表−3に示す。風味ともに両者は著しく異なり、本分解液は良好なカツオ節香と苦味を伴わない旨味とコク味を持ったバランスの良い調味素材であった。
【0027】
【表−3】


【0028】
以上例示してきた実施例では分解に使用する原料としては、カツオ節抽出残渣を使用してきたが、本発明はカツオ節抽出残渣以外の魚節抽出残渣を使用することができ、また必要により、だし抽出前の魚節を使用することも可能である。
【0029】
また、実施例においては、分解処理条件としてPH6の場合について記載しているが、本発明においてはPH5〜8の範囲であれば十分満足できる。さらに実施例においては使用するカツオ節抽出残渣を2mm以下の粒度に予め粉砕しているが、この粉砕粒度に限定されるものではなく、粉砕粒度は殺菌、分解処理条件に応じて任意に選定することができる。
【出願人】 【識別番号】000114732
【氏名又は名称】ヤマキ株式会社
【識別番号】502367720
【氏名又は名称】片岡 二郎
【出願日】 平成15年9月11日(2003.9.11)
【代理人】 【識別番号】100066452
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 茂

【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄

【識別番号】100067965
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 哲二

【識別番号】100088236
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 輝一

【公開番号】 特開2005−80627(P2005−80627A)
【公開日】 平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願番号】 特願2003−319644(P2003−319644)