トップ :: A 生活必需品 :: A23 食品または食料品;他のクラスに包含されないそれらの処理




【発明の名称】 乳飲料及び変形性関節症改善剤
【発明者】 【氏名】又平 芳春

【氏名】菊地 数晃

【氏名】畑本 均

【氏名】池隅 雅浩

【要約】 【課題】保存安定性が高く、良好な風味を有し、高齢の患者でも継続的に無理なく摂取することができる乳飲料及び変形性関節症改善剤を提供する。

【解決手段】乳飲料に、N−アセチルグルコサミン80〜90質量%、キチンオリゴ糖10〜20質量%含有する糖組成物を0.025〜37.5質量%配合する。この乳飲料は、高齢の患者でも継続的に無理なく摂取することができ、筋肉や骨を形成し、関節症の予防に役立つカルシウムやマグネシウム等のミネラルや良質なタンパク質とN−アセチルグルコサミンを一緒に摂取することができるので、これらの成分の相乗効果により、優れた変形性関節症改善効果が期待できる。また、N−アセチルグルコサミンは、グルコサミン塩に比べてpHや熱に対する安定性が高く、pHや熱による褐変や分解が起こることがないので保存安定性に優れており、風味も良好である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アセチルグルコサミン80〜90質量%、キチンオリゴ糖10〜20質量%含有する糖組成物を、0.025〜37.5質量%含有することを特徴とする乳飲料。
【請求項2】
N−アセチルグルコサミン80〜90質量%、キチンオリゴ糖10〜20質量%含有する糖組成物を、0.025〜37.5質量%含有する乳飲料からなることを特徴とする変形性関節症改善剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アセチルグルコサミンを含有する乳飲料及びそれを用いた変形性関節症改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
変形性膝関節症や変形性股関節症等のいわゆる変形性関節症は、老化、スポーツや肥満による関節の酷使等によって、関節の軟骨が擦り減り、骨の末端どうしが擦り合わされてしまう疾患であり、症状の進行と共に疼痛の増強、歩行障害、日常生活動作の制限等が顕著となる。
【0003】
従来、変形性関節症の治療薬としては、ステロイドや非ステロイド系抗炎症剤が一般的に用いられているが、免疫障害や胃腸障害等の重篤な副作用があることから、より安全性の高い治療法や予防法が望まれている。
【0004】
一方、安全性の高い天然物由来の成分を用いたものとして、例えば、下記特許文献1には、コラーゲンペプチドとグルコサミン塩を含み、そのpHが2〜5のものである関節強化飲料が開示されており、この飲料が変形性関節症等の関節症の治療や、関節強化により軟骨や靱帯損傷の予防食品として有用である旨記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2にはグルコサミン塩含有乳製品が開示されており、この乳製品は、骨粗しょう症又は変形関節症等の関節症の治療剤や予防剤等として有用である旨記載されている。
【0006】
また、下記特許文献3には、グルコサミン、キトサンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン、キチンオリゴ糖等を含む飲料水が開示されている。
【0007】
また、下記特許文献4には、経口投与のためのN−アセチルグルコサミン製剤が開示されている。
【特許文献1】特開2002−125638号公報
【特許文献2】特開2001−346512号公報
【特許文献3】特開2001−333750号公報
【特許文献4】特公平7−103033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、グルコサミン塩酸塩や硫酸塩等のグルコサミン塩は、pHや熱に対する安定性が低いという欠点があり、特に、飲料にグルコサミン塩を配合した場合は、加熱殺菌等の製造工程において、容易に褐変やグルコサミン塩の分解が起こり、製品の品質低下や製品中のグルコサミン塩含有量の減少を招いてしまうという問題があった。
【0009】
したがって、上記特許文献1、2に記載された飲料や乳製品においても、グルコサミン塩の配合量を増やしたり、加熱殺菌条件を厳しくすると、褐変やグルコサミン塩の分解が起こってしまうため、保存安定性の点で十分満足できるものではなかった。また、グルコサミン塩は、苦味を伴う独特の味を有しているため、グルコサミン塩の配合量を増やした場合、風味の点でもあまり好ましいものとは言えず、十分な量のグルコサミン塩を配合することが困難であった。
【0010】
一方、N−アセチルグルコサミンは、グルコサミン塩に比べて化学的に安定であり、良質の甘味を有しているが、上記特許文献3に記載された飲料水は、N−アセチルグルコサミン以外にグルコサミンも含むため、加熱殺菌等による褐変やグルコサミンの分解が起こってしまうという問題があった。
【0011】
また、上記特許文献4に記載されたN−アセチルグルコサミン製剤は、N−アセチルグルコサミンの吸収を高めるために、長時間口腔内に保持する必要があるため、高齢の患者が日常的に無理なく摂取できるものであるとは言えない。
【0012】
したがって、本発明の目的は、保存安定性が高く、良好な風味を有し、高齢の患者でも継続的に無理なく摂取することができる乳飲料及びそれを用いた変形性関節症改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の乳飲料は、N−アセチルグルコサミン80〜90質量%、キチンオリゴ糖10〜20質量%含有する糖組成物を、0.025〜37.5質量%含有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の変形性関節症改善剤は、N−アセチルグルコサミン80〜90質量%、キチンオリゴ糖10〜20質量%含有する糖組成物を、0.025〜37.5質量%含有する乳飲料からなることを特徴とする。
【0015】
本発明の変形性関節症改善剤は、乳飲料にN−アセチルグルコサミン及びキチンオリゴ糖を含有する糖組成物を配合したので、筋肉や骨を形成し、関節症の予防に役立つカルシウムやマグネシウム等のミネラルや良質なタンパク質とN−アセチルグルコサミンを一緒に摂取することができ、これらの成分の相乗効果により、優れた改善効果が期待できると共にキチンオリゴ糖によるビフィズス菌増殖作用や免疫調整機能等の生理機能も期待できる。また、N−アセチルグルコサミンは、グルコサミン塩に比べてpHや熱に対する安定性が高く、pHや熱による褐変や分解が起こることがないので保存安定性に優れている。更に、N−アセチルグルコサミンは良質な甘味を有しており、キチンオリゴ糖は難消化性の糖質であるので、乳飲料に配合しても製品の風味を損なったり、余分なカロリーを付与することもない。更にまた、乳飲料形態であるので、高齢の患者でも継続的に無理なく摂取することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保存安定性に優れ、良好な風味を有し、高齢の患者でも継続的に無理なく摂取することができ、高い変形性関節症改善効果が期待できる乳飲料及び変形性関節症改善剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明で用いられる糖組成物は、N−アセチルグルコサミンとキチンオリゴ糖の混合物であり、N−アセチルグルコサミン80〜90質量%、キチンオリゴ糖10〜20質量%、好ましくはN−アセチルグルコサミン80〜85質量%、キチンオリゴ糖15〜20質量%含有するものである。
【0018】
このような糖組成物としては、例えば、食品原料として使用できるN−アセチルグルコサミンとキチンオリゴ糖を上記の比率で混合したものを用いることもできるが、コストがかかってしまうなどの問題がある。
【0019】
そのため、本発明においては、例えば、キチンを塩酸により部分加水分解し、この分解液を中和後、イオン交換膜電気透析法によって脱塩処理した後、共存するグルコサミン塩酸塩をイオン交換樹脂によって吸着除去し、酵素分解によりN−アセチルグルコサミンを遊離させ、スプレードライヤーによって乾燥させて得られる糖組成物を用いることが好ましい。
【0020】
原料として用いられるキチンは、エビ、カニ、オキアミ等、甲殻類の甲皮を塩酸処理してカルシウム分を除去し、更に水酸化ナトリウム処理により蛋白質を除去することなどにより調製することができるが、その他の入手経路、調製手段などで得られるキチンを用いることもできる。
【0021】
キチンの塩酸による部分加水分解は、キチン質量の2〜20倍量の塩酸を添加して、撹拌しながら30〜60℃、2〜8時間反応させることにより行うことができる。より好ましくはキチン質量の3〜10倍量の濃塩酸を添加して、撹拌しながら40〜50℃、3〜5時間反応させる。塩酸の添加量が上記範囲外であると、分解効率が悪くなったり、中和塩の量が多くなり脱塩に時間がかかるため好ましくない。また、反応温度及び反応時間が上記範囲外であると、分解効率が悪くなったり、グルコサミン塩酸塩の生成量が多くなるため好ましくない。
【0022】
次に、加水分解反応を終了させるために、部分加水分解溶液と同容量程度の水で希釈し、さらに温度が上昇しないように、例えば25〜50%水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ剤を用いてpH3〜7になるように中和を行う。
【0023】
中和した部分加水分解溶液には、N−アセチルグルコサミン、キチンオリゴ糖、グルコサミン塩酸等の他、未分解の不溶性キチンも含まれており、糖の分解により多少褐色みを呈しているが、未分解の不溶性キチンや着色は少量の活性炭及びフィルターを用いて濾過することにより除去することができる。
【0024】
そして、中和した部分加水分解溶液を特許第2134244号(特公平5−86399号)に記載された方法(イオン交換膜電気透析法)で脱塩処理を行う。イオン交換膜電気透析に用いられるイオン交換膜は特に限定されないが、例えば、ネオセプタCL−25T、CM−1〜2、AM−1〜3(徳山曹達株式会社製)、セレミオンCMV/AMV(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
次に、脱塩処理した部分加水分解溶液をイオン交換樹脂で処理し、溶液中のグルコサミン塩酸塩を吸着除去する。イオン交換樹脂処理は、強酸性イオン交換樹脂と弱塩基性イオン交換樹脂の組み合わせによって行うことができる。これにより、N−アセチルグルコサミンやキチンオリゴ糖と比べて味が悪く、スプレードライ工程において粉末の褐変化の原因となるグルコサミン塩酸塩を非常に効率よく除去することができる。
【0026】
具体的には、脱塩処理した部分加水分解溶液を強酸性イオン交換樹脂で処理した後、続いて弱塩基性イオン交換樹脂で処理する。処理の方法は、カラム式でもよく、バッチ式でもよい。上記強酸性イオン交換樹脂としては、例えば、商品名「ダイヤイオンSK1−B」(三菱化学製)等が使用でき、上記弱塩基性イオン交換樹脂としては商品名「ダイヤイオンWA−30」(三菱化学製)等が使用できる。
【0027】
次に、上記イオン交換樹脂処理した部分加水分解溶液中に含まれるキチンオリゴ糖を分解してN−アセチルグルコサミンを更に遊離させるために、キチンオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素を作用させる。このような酵素としては、キチンオリゴ糖を単糖のN−アセチルグルコサミンにまで分解してしまう酵素であればいずれの酵素を用いてもよく、例えば、リゾチーム、キチナーゼ、キトビアーゼ(β−N−アセチルヘキソサミニダーゼ)等が挙げられる。なお、リゾチームやキチナーゼの中にはキチンオリゴ糖の二糖や三糖に対して加水分解能が低いものがあるため、キトビアーゼ等の低分子オリゴ糖に対して高い加水分解能を有する酵素を併用することが好ましい。
【0028】
上記酵素は、市販の酵素を利用することができ、例えば、リゾチームは、ニワトリの卵白リゾチームが一般的である。キチナーゼは、ストレプトマイセス・グリセウス、セラチア・マルツセンス(シグマ社)、アエロモナス・ハイドロフイラ(合同酒精)、ストレプトマイセス・アンティビオテイカス(カルビオケム社)等の微生物起源の酵素が挙げられる。なお、キチナーゼやキトビアーゼ等のキチンあるいはキチンオリゴ糖分解酵素を産生する微生物を培養し、この培養物から酵素を抽出した粗酵素を使用することもできる。
【0029】
また、市販の酵素製剤(セルラーゼ製剤、ペクチナーゼ製剤、アミラーゼ製剤、プロテアーゼ製剤等)の中には、キチナーゼやキトビアーゼ等を含む製剤が多く、これらの市販酵素製剤を使用することもできる。
【0030】
本発明において、上記イオン交換樹脂処理した部分加水分解溶液中に含まれるキチンオリゴ糖の酵素分解反応の条件は、最終的に得られる糖組成物が、N−アセチルグルコサミン及びキチンオリゴ糖を上記所定の範囲で含むように、酵素の種類や酵素量に応じて適宜設定すればよい。N−アセチルグルコサミンの比率が上記範囲より高くなると、スプレードライ法での乾燥が難しくなり、キチンオリゴ糖の比率が上記範囲より高くなると、糖組成物の水への溶解性が低下し、飲料への使用に支障をきたすため好ましくない。
【0031】
そして、酵素反応終了後、酵素分解溶液を加熱して酵素を失活させた後、スプレードライ法により乾燥粉末化する。スプレードライの条件は、通常、イン120〜200℃、アウト50〜120℃で行えばよい。本発明においては、上記酵素分解溶液に含まれるキチンオリゴ糖がちょうど賦型材のような役割を果たすので、スプレードライ法で容易に乾燥粉末化することができる。また、グルコサミン塩酸塩を含まないので、スプレードライ工程で問題となる褐変化を防止することができる。
【0032】
上記のようにして得られる糖組成物は、N−アセチルグルコサミン及びキチンオリゴ糖を含むので、N−アセチルグルコサミン純品に比べると甘味度が低く、また、キチンオリゴ糖は難消化性の糖質であるので、N−アセチルグルコサミン純品に比べて低カロリーである。また、味の悪いグルコサミン塩酸塩を含まないので風味も良好である。したがって、上記糖組成物を用いることにより、甘味及びカロリーを抑えつつ、N−アセチルグルコサミンやキチンオリゴ糖の生理機能を付与することができる。
【0033】
本発明の変形性関節症改善剤は、乳飲料に上記糖組成物を0.025〜37.5質量%、好ましくは0.125〜3.75質量%配合することにより得ることができる。上記糖組成物の配合量が少な過ぎると、N−アセチルグルコサミンの生理活性を得るために1回当りの摂取量を大幅に増やす必要があるため、継続的に摂取することが困難となり、多すぎると製品中での結晶化による沈殿発生や、過剰摂取による軟便等の症状がでる可能性がある。なお、本発明において乳飲料とは、乳固形分3質量%以上の種類別乳飲料を意味する。
【0034】
本発明の変形性関節症改善剤は、他の成分として、コラーゲンペプチド、サメ軟骨抽出物、ビタミンB群、M.S.M(メチル・スルフォニル・メタン)、ショウガエキス等を含むことができる。例えば、コラーゲンペプチドやサメ軟骨抽出物を含むことにより、生体内でのコラーゲンやムコ多糖の生合成が促進されて、より効果的な改善効果が期待できる。変形性関節症改善剤におけるコラーゲンペプチドやサメ軟骨抽出物の含有量は、通常、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。なお、本発明の変形性関節症改善剤においては、十分な改善効果が期待できる量のN−アセチルグルコサミンを配合できるので、安定性や風味の点で問題のあるグルコサミン塩は使用する必要はない。
【0035】
本発明の変形性関節症改善剤は、上記各種乳飲料を製造する際に採用される常法に従って製造することができ、例えば、N−アセチルグルコサミン及び必要に応じて上記他の成分を、他の飲料原料と一緒に、液体原料(牛乳、加工乳、乳飲料等)に添加して混合、溶解させた後、加熱殺菌等を行うことにより製造することができる。
【0036】
本発明の変形性関節症改善剤の摂取量は、成人1日当たり、N−アセチルグルコサミン換算で0.1〜15gであり、より好ましくは0.5〜1.5gである。N−アセチルグルコサミンの摂取量が0.1g未満では十分な改善効果が期待できず、15gを超えると体質により軟便、下痢等の症状が出る可能性があるため好ましくない。
【実施例】
【0037】
<実施例1>
10Lのガラス容器中で濃塩酸4Lにキチン1kgを撹拌しながら投入した。容器を外部から温水加熱して40℃に保ちながら加水分解反応を行った。4時間後、水2.5Lをゆっくりと投入し、反応を停止した。ソーダ灰でpH3〜7に中和し、活性炭100gを投入後60分間撹拌、脱色を行った。ろ紙ろ過により活性炭を除去後、ろ液を電気透析脱塩装置(商品名「セレミオンCMV/AMV」、旭硝子株式会社製)により脱塩した。
【0038】
次いで脱塩液を、強酸性イオン交換樹脂(商品名「ダイヤイオンSK1−B」、三菱化学製)を充填した500ml容カラム、また弱塩基性イオン交換樹脂(商品名「ダイヤイオンWA−30」、三菱化学製)を充填した500ml容カラムに順番に通液し(SV=2)、共存するグルコサミン塩酸塩を除去した。
【0039】
さらに処理液に、市販の酵素製剤(商品名「ヘミセルラーゼアマノ90」、アマノエンザイム製)8gを添加し、50℃にて12時間処理した後、85℃まで昇温して酵素を失活させたてからスプレードライ法(ニロ社製スプレードライヤー)にて乾燥(乾燥温度:イン160℃、アウト95℃)し、白色粉末430gを得た。得られた粉末をHPLCにより分析した結果、質量組成比はN−アセチルグルコサミン82%、キチンオリゴ糖18%であり、グルコサミン塩酸塩は検出されなかった。
【0040】
<実施例2>
生乳15%、乳製品(脱脂粉乳等)10%、デキストリン1.45%、上記実施例1で得られた糖組成物を0.49質量%(糖組成物として4.9kg)に水を加えて1000Lとし、充分に撹拌溶解した後、140℃で3秒間殺菌し、250ml入りの紙パック容器に無菌的に充填した。充填後に製品中のN−アセチルグルコサミンの含有量を測定したところ、0.4質量%であった。この乳飲料は、通常の乳飲料に比べてほのかに甘く、良好な風味を有しており、保存安定性にも優れていた。また、高齢の患者でも継続的に無理なく摂取することができ、実施例5の臨床試験結果から、変形性関節症の治療に極めて有効であることが明らかとなった。
【0041】
<実施例3>
生乳15%、乳製品(脱脂粉乳等)10%、デキストリン0.98%、上記実施例1で得られた糖組成物を0.98質量%(糖組成物として9.8kg)に水を加えて1000Lとし、充分に撹拌溶解した後、140℃で3秒間殺菌し、低脂肪乳(脂肪分1%、無脂乳固形分10%)を調製し、250ml入りの紙パック容器に無菌的に充填した。充填後に製品中のN−アセチルグルコサミンの含有量を測定したところ、0.81質量%であった。この乳飲料は、通常の乳飲料に比べてほのかに甘く、良好な風味を有しており、保存安定性にも優れていた。また、高齢の患者でも継続的に無理なく摂取することができ、実施例5の臨床試験結果から、変形性関節症の治療に極めて有効であることが明らかとなった。
【0042】
<対照例>
生乳15%、乳製品(脱脂粉乳等)10%、デキストリン1.94%に水を加えて1000Lとし、充分に撹拌溶解した後、140℃で3秒間殺菌し、低脂肪乳(脂肪分1%、無脂乳固形分10%)を調製し、250 ml入りの紙パック容器に無菌的に充填した。充填後に製品中のN−アセチルグルコサミンの含有量を測定したところ、0.01質量%であった。この乳飲料は、通常の乳飲料同様に良好な風味を有しており、保存安定性にも優れていた。
【0043】
<比較例>
生乳15%、乳製品(脱脂粉乳等)10%、デキストリン1.45%、グルコサミン塩酸塩を0.4質量%(グルコサミン塩酸塩として4kg)に水を加えて1000Lとし、充分に撹拌溶解した後、140℃で3秒間殺菌し、低脂肪乳(脂肪分1%、無脂乳固形分 10%)を調製し、250ml入りの紙パック容器に無菌的に充填した。充填後に製品中のグルコサミン塩酸塩の含有量を測定したところ、0.32質量%であった。この乳飲料は、通常の乳飲料に比べて苦味を伴う独特の風味を有しており、殺菌処理による分解が見られた。
【0044】
<実施例4>
実施例2及び3で調製したN−アセチルグルコサミンを配合した乳飲料、対照例で調製したN−アセチルグルコサミンを無添加乳飲料(対照)、比較例で調製したグルコサミン塩酸塩を0.4質量%配合した乳飲料(比較例)を、10℃(冷蔵)、常温、35℃の条件下でそれぞれ保存し、初発(殺菌前後)、30日後、60日後のN−アセチルグルコサミン(比較例においてはグルコサミン塩酸塩)含量を測定した。その結果を表1に示す。
【0045】
【表1】


【0046】
表1から、実施例2、3の乳飲料は、殺菌処理によるN−アセチルグルコサミン含有量の減少が認められなかったのに対して、比較例の乳飲料は、殺菌処理によってグルコサミン塩酸塩含有量が減少していることが分かる。また、実施例2、3の乳飲料は、10℃、常温、35℃で長期間保存してもN−アセチルグルコサミン含有量の減少がほとんど認められなかったのに対して、比較例の乳飲料は、常温、35℃で保存した場合、グルコサミン塩酸塩含有量が大幅に減少していることが分かる。
【0047】
また、上記の保存試験期間中の各乳飲料の色調、風味の変化を測定した。その結果を表2、3に示す。なお、初発(殺菌後)は殺菌前との比較、30日後及び60日後は初発(殺菌後)との比較により判定し、−:変化なし、+:やや変化あり、++:変化あり、+++:著しく変化あり、で表した。
【0048】
【表2】


【0049】
【表3】


【0050】
表2、3から、実施例2、3の乳飲料は、殺菌処理による色調及び風味の劣化がなく、また、保存温度に関わらず長期間にわたって色調及び風味が良好に維持されていることが分かる。一方、比較例の乳飲料は、殺菌処理により色調及び風味の劣化が見られ、保存期間が長くなるにしたがって、更に色調及び風味の劣化が進んでいることが分かる。
【0051】
<実施例5>
実施例2及び3で調製したN−アセチルグルコサミン含有乳飲料を用いて変形性膝関節症患者に対する臨床試験を行った。
【0052】
(対象患者)
対象は、臨床症状により変形性膝関節症と診断された整形外科外来受診中の患者31名である。年齢は74.4±8.3歳で、うち女性が24名であった(最終試験対象者。エントリーのうち1名が試験開始直後牛乳によるアレルギー症状を訴えたために除外した。)。対象者はいずれも消炎鎮痛貼り付け剤又は経口剤等医薬品の投与を受けた経験があり、安静時疼痛又は運動時疼痛が主症状として持続的に認められる患者である。
【0053】
(試験方法)
臨床投与試験はプラセボを対照とした並行群間試験法で行った。上記31名の患者を男女別に分けた後、無作為抽出法により3群に分け、それぞれプラセボ(N−アセチルグルコサミン無添加乳飲料:対照例)投与群、高用量(N−アセチルグルコサミン0.81質量%含有乳飲料:実施例3)投与群、低用量(N−アセチルグルコサミン0.4質量%含有乳飲料:実施例2)投与群とし、各々一日1本(125ml)、8週間服用してもらった。
【0054】
(評価方法)
変形性膝関節症の評価は、表4に示す日本整形外科学会制定の「変形性膝関節疾患治療成績判定基準」にしたがって行った。更に、日常生活動作、夜間自発痛、圧痛についても、どの程度改善されたかを評価した。
























【0055】
【表4】


【0056】
評価は、各サンプルの投与開始直前及び投与終了後(摂取開始8週間後)、投与期間中は原則として4週間毎に主治医が診察して行い、試験開始前と試験終了後は体重、血圧測定及び血液検査も行った。なお、患者及び評価を行う医師には、飲用しているサンプルがどのサンプルであるかは一切知らせず、評価に際しては、担当した医師間で差が出ないように具体的な評価ポイントを作成した上で予めトレーニングを行い、統一した基準で評価できるよう配慮し、同一患者の評価は同じ医師によって行うようにした。
【0057】
具体的には、患者毎に、投与開始時に認められた症状項目について、サンプル投与前後で比較し、非常に改善された、あるいは症状が全く無くなった場合を「著明改善」、やや改善された場合を「改善」、変化のない場合を「不変」、やや悪化した場合を「悪化」、非常に悪化した、あるいは最重度に至った場合を「著明悪化」として判定を行った。
【0058】
(結果)
医師の診断による試験終了後の最終全般改善度を表5に示す。








【0059】
【表5】


【0060】
表5から、プラセボ投与群に比べて、高用量投与群及び低用量投与群において改善率が高い傾向が認められることが分かる。特に、高用量投与群においては、プラセボ投与群に対して有意差(Mann-Whitney検定、p<0.1)が認められた。
【0061】
また、日本整形外科学会制定「変形性膝関節症治療成績判定」の総得点(満点:100点)の推移を図1に示す。図1から、高用量投与群では、サンプル投与後4週目以降から投与開始時に比べて有意な上昇が認められ、低用量投与群においてもサンプル投与後8週目に有意な上昇が認められることが分かる(Wilcoxon test、**:p<0.05)。一方、プラセボ投与群では、サンプル投与前後でほとんど変化が認められなかった。
【0062】
なお、試験開始前、試験終了後に行った体重、血圧測定及び血液検査の結果も変動が認められず、また、サンプル投与による副作用と考えられる胃腸障害や他の障害、及び投与中止後のリバウンドも全く認められなかった。
【0063】
以上の臨床試験結果から、本発明のN−アセチルグルコサミン含有乳飲料は、変形性関節症の治療に極めて有効であることが明らかとなった。
【0064】
<実施例6>
牛乳800kgに対し、コーヒーエキス10kg、砂糖120kg、カラメル2kg、香料1kg、上記実施例1で得られた糖組成物15kgと52kgの水を加え充分に撹拌、溶解、均質化した後、殺菌、冷却してから紙パック容器に充填した。充填後に製品中のN−アセチルグルコサミンの含有量を分析した結果、1.2質量%であった。
【0065】
<実施例7>
乳製品(脱脂粉乳等)3.5%、砂糖混合異性化糖 12%、デキストリン1.6%、安定剤0.3%、乳化剤0.05%、香料0.15%)、上記実施例1で得られた糖組成物を1.6質量%(糖組成物として16kg)に水を加えて1000Lとし、充分に撹拌溶解した後、130℃で3秒間殺菌し、乳飲料(乳脂肪分0% 無脂乳固形分3%)を調製し、100ml入りのびん容器に充填した。充填後に製品中のN−アセチルグルコサミンの含有量を測定したところ、1.32質量%であった。この乳飲料は、通常の乳飲料に比べて甘く、良好な風味を有しており、保存安定性にも優れていた。また、高齢の患者でも継続的に無理なく摂取することができ、実施例6と同様に変形性関節症に改善効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
乳飲料にN−アセチルグルコサミン及びキチンオリゴ糖を含有する糖組成物を配合したので、筋肉や骨を形成し、関節症の予防に役立つカルシウムやマグネシウム等のミネラルや良質なタンパク質とN−アセチルグルコサミンを一緒に摂取することができるので、これらの成分の相乗効果により、優れた変形性関節症改善効果が期待できる乳飲料及び変形性関節症改善剤として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】試験期間中における日本整形外科学会制定「変形性膝関節症治療成績判定」の総得点の推移を示す図である。
【出願人】 【識別番号】390033145
【氏名又は名称】焼津水産化学工業株式会社
【識別番号】503058751
【氏名又は名称】日本ミルクコミュニティ株式会社
【出願日】 平成15年9月10日(2003.9.10)
【代理人】 【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂

【公開番号】 特開2005−80604(P2005−80604A)
【公開日】 平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願番号】 特願2003−318139(P2003−318139)