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【発明の名称】 加圧加熱食品の品質低下防止方法
【発明者】 【氏名】竹内 誠一

【氏名】岡本春実

【要約】 【課題】調味液の炊き上げ工程および高温保管中の原料の品質劣化を防止し、本来期待する製品の品質設計を確保する。

【解決手段】調味液中に配合されている水溶性で揮発性の高い香料もしくは酸化防止剤を加えずに、調味液を炊き上げた後に、容器に調味液と具材を充填直後、密封する直前に、加熱せずに水で調整した香料もしくは水で調整した酸化防止剤を充填し、加圧加熱殺菌を実施する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理液の原料の一部を調味液に加えずに、炊き上げて製造し、容器に調味液と具材を充填後、密封する前に、調味液に加えなかった原料を加熱せずに製造し、充填することを特徴とする加圧加熱食品の製造方法。
【請求項2】
炊き上げ後に加える調味液原料に酸化防止剤および水溶性香料を配合することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
酸化防止剤を製品重量に対して0.02〜0.3%配合することを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はレトルトカレー、レトルト丼のもと、レトルトスープ類等の加熱加圧食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レトルトカレー、レトルト丼のもと、レトルトスープ類等の加熱加圧食品は、加熱用混合機を使用して調整された調味液を密封容器に充填、密封シール後、レトルト殺菌され生産されている。ところで、工場での調味液の製造方法は基本的には各々の調理メニューの一般家庭における調理方法に合わせて行なうのが一般的である。例えば工場においてカレーは、小麦粉と油脂及び必要に応じ香味野菜、スパイス類等を混合加熱しルウを調整後に、砂糖、食塩、各種エキス類等の調味原料の混合と加水調整を行い、更に加熱撹拌することで、カレーソースを製造する。当然カレーソースの調理方法が多様にあるように、工場での製造方法も多様であるが、工場の生産条件を出来る限り家庭での調理方法に合わせて調味液を製造することで、製造後の調味液が家庭での調理品に近づき、風味的に優れたものになる。
ところで、ほとんど調理メニューが最終的に炊き上げるという調理工程があるように、工場で製造される調味液も加熱・炊き上げ工程により製造終了時は高温状態にある。例えばでん粉が含まれる製品ではでん粉が糊化する80℃以上の加熱が必要である。
【0003】
一般的に工場では、数千食分〜数万食分の調味液を1釜で仕込み、更に充填機の充填能力とのバランスを図ることで、生産性を高めている。基本的には充填機の充填能力に負けないように1釜当たりの仕込み量を多くすることで、効率的な生産をしている。従って炊き上げ後から充填されるまでの時間は、1釜当たりの仕込み量及び充填能力によって変わってくるが、仕込み終了後全ての調味液が充填されるまでは、2時間から3時間程度要す。またその間調味液は、自然冷却等により温度の低下は僅かに見られるが、高温で保持されていることになる。一方ではレトルト食品の菌的安全性確保を考慮すると、製造工程中で原料由来の耐熱性菌の増殖を防がなければならず、その為には調味液を耐熱性菌が増殖しない70℃以上に保持しておく必要があると言える。
ところで、レトルト食品ではレトルト殺菌工程で、酸化反応、メイラード反応等が起こり、風味が低下する。そこでこの風味低下を最小限にとどめるために、香料等の添加により風味低下を補い、また酸化防止剤の添加で酸化を防ぐことが一般的に行われている。
ところが、上述の通り調味液が仕込み後高温で保持されることで、着香を目的とした香料の香気成分が熱の影響を受けて揮発し、酸化防止剤は熱の影響を受けて酸化されてしまうので、本来目的とした風味や酸化防止の効果が期待通りに発揮されない。
【0004】
炊き上げ後の調味液の温度をプレートクーラー等で下げる方法もあるが、設備投資が必要となり、コストアップにつながるだけではなく、簡便な方法とはいえない。また、調味液の粘度が増加することで、ポンプでの移送が困難になる、あるいは充填適性がなくなるなどの問題が発生する。
【0005】
残存する酸素を減らせば、レトルト殺菌時の酸化防止剤の酸化を軽減させることは出来、残存する酸素を減らすために、不活性ガスをレトルトパウチ等の密閉容器内に充填する方法が報告されている(特開平2−291230)。しかし、窒素に置換するための装置、不活性ガス充填のための装置を別途設置する必要があり、コストアップになるだけでなく、簡便な方法とはいえない。
【0006】
食品に対して、加圧加熱食品に常温では溶解せずに、加熱工程時に溶解するようにコーティング加工したアスコルビン酸をアスコルビン酸として0.02〜0.2%(重量)の割合で混和して密封包装し、加熱殺菌することを特徴とする製造方法が報告されている。(特許昭63−26980)
【特許文献1】特開平2−291230公報(第1頁〜第2頁)
【特許文献2】特許昭63−26980公報(第1頁)
【0007】
但し、コーティングを行っていないアスコルビン酸では調味液の炊き上げ工程および充填が終了するまでの高温保管中、アスコルビン酸が酸化され、本来の酸化防止効果の期待が薄れ、食品中の調味液や具材が、密封包装後のヘッドスペースに残存する酸素により酸化され、風味の劣化が起こる。
【0008】
また、熱により好気成分が飛びやすい香料は、調味液の炊き上げ工程および充填が終了するまでの高温保管中、風味の劣化が起こり、本来期待する製品の品質設計を確保できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、本来意図し優れた香気成分の風味を損なわない風味特性を有する新しいレトルト製品の製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、酸化防止剤の本来の酸化防止効果を維持するための高品質のレトルト製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成する為に鋭利研究を行った結果、1.調理液の原料の一部を調味液に加えずに、炊き上げて製造し、容器に調味液と具材を充填後、密封する前に、調味液に加えなかった原料を加熱せずに製造し、充填することを特徴とする加圧加熱食品の製造方法、2.前記原料が、酸化防止剤と水溶性香料である1に記載の方法、3.前記酸化防止剤を製品重量に対して0.02〜0.3%配合する1に記載の方法 を発明することで上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本来意図した風味が飛ばずに優れた風味特性を有するレトルト製品を製造することが出来る。また、本発明によれば、酸化防止剤の本来の酸化防止効果を維持するための高品質のレトルト製品を製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における食品とは、レトルトカレー、レトルト丼のもと、スープ類およびこれらに準ずる加圧加熱食品のことである。原料としては水、調味料、調味油、小麦粉、でん粉等が挙げられ、これらを調味液として炊き上げて製造し、調味液、具材を充填した容器に、水で調整した香料、水で調整した酸化防止剤等を充填し、密封した後、加圧加熱殺菌をする食品である。
【0013】
調味料とは砂糖、食塩、醤油、酢、味噌、清酒、ウスターソース、みりん、かつおエキス、こんぶエキス、煮干しエキス、肉エキス、香辛料、たんぱく加水分解物、酵母エキス、野菜から抽出した野菜エキスなどの調味料のことである。
【0014】
調味油とはゴマ油、ラード、パーム油、大豆油、香味油などの調味油のことである。
【0015】
具材とは白菜、玉ねぎ、たけのこ、きくらげ、にんじん、しいたけ、ひら茸、ヤングコーン、ゴボウ、ねぎ等の野菜、鶏肉、牛肉、豚肉の畜肉などを挙げることができる。
【0016】
酸化防止剤は食品添加物として認められるものであり、例えばL-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウムなどのビタミンC、トコフェロールを挙げることができる。これらの中でも、L-アスコルビン酸ナトリウムが保存中の酸化防止の効果が高く、風味への影響も少ないので望ましい。
【0017】
香料は食品添加物として認められるものであり、炊き上げ工程および高温保管中に香気成分が抜けやすい水溶性の香料であり、醤油、かつお節、こんぶの風味のものを挙げることができる。
【0018】
炊き上げ工程とは、でん粉などの粉体原料を均一溶解させるために、80℃以上で溶解することであり、炊き上げた調味液の充填時の温度は、80℃以上であり、調味液完成時から終了時までの調味液保持時間は2時間〜3時間を目安とする。
【0019】
調味液の配合から除いた香料、酸化防止剤はその使用する目的の効果を発揮させるために、水で溶解させるが、その溶解方法、溶解比率は特に規定するものはない。充填方法に関しては、容器に炊き上げた調味液と具材を充填した直後で、容器を密封させる直前であれば、特にその充填方法を規定するものはない。
【0020】
容器とは「容器包装詰加圧加熱殺菌食品」として使用が認められているものであり、レトルトパウチ、瓶、缶が挙げられる。
【0021】
加圧加熱食品中の含気量は、完全脱気が好ましいが、連続生産では完全脱気を実現することが難しいので、容器中の空気量が20mlあれば、シールする際に調理液のシール部への噛みこみや具材部のシール部への噛みこみが発生しないので、容器中の空気量は20ml以下になることを想定している。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
本発明を実施するに当り、以下に実施例を示す。調味液はカジワラ製ミキサーOAM−06にて40kgを製造した。下記の表1の調味液部を80℃達温にて炊き上げ後、重量配合率100%になるように水で調整し、工場での実生産を想定し、2.5時間、80℃に保持し、調味液に配合しなかった表2のL−アスコルビン酸ナトリウムを水で溶解する。表3のとおり調味液100gとボイル牛肉70gと玉ねぎ20gを容器に充填した後、表2のL-アスコルビン酸ナトリウム溶液10gを容器に充填し、容器をシールした後に120℃で20分間の加圧加熱殺菌を実施した。製品配合としてのL
−アスコルビン酸ナトリウムの添加割合は重量配合率0.05%である。
【0023】
(比較例1)
表1の調味液部を80℃にて炊き上げ後、重量配合率100%になるように水で調整し、2.5時間、80℃に保持し、調味液100gとボイル牛肉70gと玉ねぎ20gを容器に充填した後に、水を10g充填し、容器をシールした後に120℃で20分間の加圧加熱殺菌を実施した。
【0024】
(比較例2)
表1の調味液にL-アスコルビン酸ナトリウムを重量配合率0.1%加え80℃にて炊き上げ後、重量配合率が100%であり、最終重量が40kgになるように水で調整し、2.5時間、80℃に保持し、調味液100gとボイル牛肉 70gと玉ねぎ20gを容器に充填した後に、水を10g充填し、容器をシールした後に120℃で20分間の加圧加熱殺菌を実施した。
充填後の含気量は、連続生産時を想定し、空気体積量20mlで実施した。牛肉は厚み2mm、横50mm、縦100mmのものを使用し、80℃で30秒間ボイルしたものを使用した。
【0025】
【表1】



【0026】
【表2】



【0027】
【表3】



【0028】
このように、製造した製品を35℃の恒温室に保管し、30日、90日、180日後の製品評価を、10名のパネラーにより、評価した。評価は3分間沸騰水中で温めたものを用いた。評価結果は+2;酸化臭等の異味異臭が全くなく、製品設計どおりの品質が保たれている、+1;本来の品質からはやや劣るもの、製品設計どおり品質は保たれている、0;本来の品質からは劣るの、製品の価値は失われていない、−1;酸化臭等の異味異臭があり、製品としては向いていない、−2;酸化臭等の異臭が著しくあり、製品としての価値がないの5段階で評価し、その平均値で評価した。評価結果を表5に示す。評価結果よりL−アスコルビン酸ナトリウムを添加しなかったものは90日保管で酸化臭が発生し、製品としての価値を失った。調理部にL−アスコルビン酸ナトリウムを添加いたものは180日保管で製品としての価値を失ったが、調理工程で加熱せずに後添加したものは180日保管では製品の価値は失われずに、本来の調理液、牛肉、玉ねぎの風味を保ち続けた。
【0029】
【表4】



【0030】
(実施例2、3、4、5)
調味液は実施例1と同様にカジワラ製ミキサーOAM−06にて40kgを製造した。上述の表1の調味液部を80℃達温にて炊き上げ後、重量配合率100%になるように水で調整し、工場での実生産を想定して、2.5時間、80℃を保持し、調理液に配合しなかったL−アスコルビン酸ナトリウムを後添加重量配合率として0.4%、1.0%、3.0%、6.0%を加熱せずに水で溶解する。表3のように調理液100gとボイルした肉70gと玉ねぎ20gを容器に充填した後、重量配合率0.4%、1.0%、3.0%、6.0%のL-アスコルビン酸ナトリウム溶液10gを容器に充填し、容器をシールした後に120℃で20分間加圧の加熱殺菌を実施した。L-アスコルビン酸ナトリウム溶液の重量配合率が0.4%のものを実施例2、1.0%のものを実施例3、3.0%のものを実施例4、6.0%のものを実施例5として保存テストを実施した結果を表5に示す。なお、製品配合としてのL−アスコルビン酸ナトリウムの添加割合は重量配合率で順に0.02%、0.05%、0.15%、0.30%である。保存は35℃、180日行い、評価は(0028)と同様の方法で行った。この結果、いずれの配合量においても本来の製品設計どおりの品質を維持できた。
【0031】
【表5】



【0032】
(実施例6)
調味液は実施例1と同様にカジワラ製ミキサーOAM-1000にて40kgを製造した。下記の表6の調味液部の原料を80℃達温にて炊き上げ後、重量配合率が100%になるように水で調整し、工場での実生産を想定し、2.5時間、80℃に保持し、後添加する表7の香料を水で溶解し香料溶液として調整する。表8のように調味液100gとボイル牛肉30g、玉ねぎ20g、しらたき20g、白菜5g、ごぼう5g、ネギ5g、しいたけ5g、しめじ5gを容器に充填した後、香料溶液を5g充填し、容器をシールした後に120℃で20分間の加圧加熱殺菌を実施した。製品としての香料重量配合率は0.1%である。
【0033】
(比較例3)
下記の表6の調味液部に実施例6と同様に最終製品での香料重量配合率が0.1%になるように、かつおぶしフレーバーを重量配合率0.2%添加し、80℃達温にて炊き上げ後、重量配合率が100%になるように水で調整し、工場での実生産を想定し2、5時間、80℃を保持する。表8のように調味液100gとボイル牛肉30g、玉ねぎ20g、しらたき20g、白菜5g、ごぼう5g、ネギ5g、しいたけ5g、しめじ5gを容器に充填した後、水5gを充填し、容器をシールした後に120℃で20分間の加圧加熱殺菌を実施した。
充填後の含気量は、連続生産時を想定し、空気体積量20mlで実施した。牛肉は厚み2mm、横50mm、縦100mmのものを使用し、80℃で30秒間ボイルしたものを使用した。

【0034】
【表6】



【0035】
【表7】



【0036】
【表8】



【0037】
このように、製造した製品を、10名のパネラーにより、評価した。評価は3分間沸騰水中で温めたものを用いた。実施例6のように調味液部に香料を加熱せずに後添加したものはかつお節の風味がほのかに感じられ、良好な製品であり、比較例3のように調味液部に香料を添加し炊き上げたものはかつお節の風味がなくなり、風味に乏しいという結果が得られた。即ち、調理工程で加熱せずに後添加したものは、本来製品設計どおりの調理液であった。

【出願人】 【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
【出願日】 平成15年9月1日(2003.9.1)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−73618(P2005−73618A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−309314(P2003−309314)