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【発明の名称】 加熱凝固卵白及びこれを用いた加工食品
【発明者】 【氏名】国香 彦一郎
【住所又は居所】東京都府中市住吉町5丁目13番地の1キユーピー株式会社研究所内

【氏名】三尋木 健史
【住所又は居所】東京都府中市住吉町5丁目13番地の1キユーピー株式会社研究所内

【要約】 【課題】他の食材と共にレトルト殺菌、あるいはそれ以外の加熱殺菌(例えば、酸性下での加熱殺菌)を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有し、しかもこれらの加熱殺菌物を長期間保存したとしても当該食感が維持される卵白を主成分とする加熱凝固卵白、及びこれを食材として用いた加工食品を提供する。

【解決手段】卵白に澱粉を添加したスラリーを加熱凝固してなる加熱凝固卵白において、前記スラリーに原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物が添加されており、スラリーの水分が卵白固形分11.6部に対し100〜150部であり、スラリーのpHが8.0以下である加熱凝固卵白、及びこれを食材として用いた加工食品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵白に澱粉を添加したスラリーを加熱凝固してなる加熱凝固卵白において、前記スラリーに原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物が添加されており、スラリーの水分が卵白固形分11.6部に対し100〜150部であり、スラリーのpHが8.0以下であることを特徴とする加熱凝固卵白。
【請求項2】
原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物の添加量が、製品に対し固形分換算で0.2%以上である請求項1記載の加熱凝固卵白。
【請求項3】
澱粉の一部あるいは全部が、化工澱粉および/または湿熱処理澱粉である請求項1又は2記載の加熱凝固卵白。
【請求項4】
澱粉の添加量が、製品に対し1〜20%である請求項1乃至3のいずれかに記載の加熱凝固卵白。
【請求項5】
スラリーにガム質を添加してなる請求項1乃至4のいずれかに記載の加熱凝固卵白。
【請求項6】
ガム質の添加量が、製品に対し0.05〜1%である請求項5記載の加熱凝固卵白。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の加熱凝固卵白を食材として用いた加工食品。
【請求項8】
加工食品がFが4以上のレトルト殺菌を施されてなる請求項7記載の加工食品。
【請求項9】
加工食品がFが4未満の加熱殺菌を施されてなる請求項7記載の加工食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、他の食材と共にレトルト殺菌、あるいはそれ以外の加熱殺菌(例えば、酸性下での加熱殺菌)を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有し、しかもこれらの加熱殺菌物を長期間保存したとしても当該食感が維持される卵白を主成分とする加熱凝固卵白、及びこれを用いた加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
茹で卵を利用した代表的な加工食品としては、例えば、マヨネーズ等の酸性食品と和えた、タマゴサラダ、タマゴスプレッド、タマゴフィリング、タルタルソース等がある。これらの加工食品は、一般的に茹で卵より得られる完全に加熱凝固した卵黄部及び卵白部を利用したものである。
【0003】
茹で卵を工業的規模で生産する場合、茹で卵の殻を機械的に剥いている。しかしながら、機械的に殻を剥ぐと、殻の破片が茹で卵(製品)に混入することがあり、当該茹で卵を食材として上述の加工食品等に用いると、混入した殻が加工食品の食感に影響するという問題があった。また、例えば、上述の加工食品を長期間保存するため加熱殺菌すると、茹で卵の卵白部が酸性食品により酸変性し硬くなり、更に長期保存により当該硬化が徐々に進む等、凝固した卵白部の食感が好ましくないという問題があった。
【0004】
そこで、殻の破片混入が殆どない割卵分離して得られる卵白液を利用した加熱凝固してなる卵白であって、酸性食品と和えた後、当該加工食品を長期間保存するため加熱殺菌したとしても弾力のあるソフトな食感を有し、更にはその後の保存においても当該食感が維持される加熱凝固卵白の開発が切望されている。また、近年、中性付近の加工食品であって常温で流通することができるレトルト殺菌を施したレトルト加工食品の需要が高まっている。したがって、レトルト殺菌を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有し、更にはその後の保存においても当該食感が維持される加熱凝固卵白の開発も切望されている。
【0005】
このような状況下、特開昭62−171655号公報(特許文献1)には、酸性食品と和えた場合、さらに加熱した場合でも酸変性による硬化が生じ難い加熱凝固卵白として、ワキシコーンスターチ又はワキシコーンスターチの化工澱粉を含有したものが提案されている。
【0006】
また、特許文献1には、当該明細書の試験例2において、酸変性による硬化に関し、特許文献1記載の加熱凝固卵白と、従来品である特開昭53−6457号公報(特許文献2)記載の加熱凝固卵白とを比較している。特許文献2記載の加熱凝固卵白は、凍結解凍時の離水及び食感を改良することを目的とし、酸変性による硬化を防止することを目的としていないが、澱粉等の水結合物質、ガム質等の増粘剤、及びDEが好ましくは約5〜25のデキストリやデキストリンアルコール等の澱粉加水分解物又はその誘導体を含有したものである。
【0007】
しかしながら、従来開示されているこれらの加熱凝固卵白は、茹で卵を使用した時に比べ硬化防止が改善されているものの、酸性下での加熱殺菌、レトルト殺菌等、他の食材と共に加熱殺菌を施した場合、更にはこれらの加熱殺菌物を長期間保存した場合、依然として加熱凝固卵白が硬化してしまう等、弾力のあるソフトな食感が維持されるとは言い難いものであった。
【0008】
【特許文献1】特開昭62−171655号公報
【特許文献2】特開昭53−6457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、他の食材と共にレトルト殺菌、あるいはそれ以外の加熱殺菌(例えば、酸性下での加熱殺菌)を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有し、しかもこれらの加熱殺菌物を長期間保存したとしても当該食感が維持される卵白を主成分とする加熱凝固卵白を提供するものである。また、本発明は、前記加熱凝固卵白を食材として用いた加工食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成すべく卵白に添加する原料等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、特定の原料や水を添加し、かつ特定のpHとするならば、意外にもレトルト殺菌、あるいはそれ以外の加熱殺菌を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有し、しかもこれらの加熱殺菌物を長期間保存したとしても当該食感が維持されることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) 卵白に澱粉を添加したスラリーを加熱凝固してなる加熱凝固卵白において、前記スラリーに原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物が添加されており、スラリーの水分が卵白固形分11.6部に対し100〜150部であり、スラリーのpHが8.0以下である加熱凝固卵白、
(2) 原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物の添加量が、製品に対し固形分換算で0.2%以上である(1)の加熱凝固卵白、
(3) 澱粉の一部あるいは全部が、化工澱粉および/または湿熱処理澱粉である(1)又は(2)の加熱凝固卵白、
(4) 澱粉の添加量が、製品に対し1〜20%である(1)乃至(3)のいずれかの加熱凝固卵白、
(5) スラリーにガム質を添加してなる(1)乃至(4)のいずれかの加熱凝固卵白、
(6) ガム質の添加量が、製品に対し0.05〜1%である(5)の加熱凝固卵白、
(7) (1)乃至(6)のいずれかの加熱凝固卵白を食材として用いた加工食品、
(8) 加工食品がFが4以上のレトルト殺菌を施されてなる(7)の加工食品、
(9) 加工食品がFが4未満の加熱殺菌を施されてなる(7)の加工食品、
である。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成により、本発明の加熱凝固卵白は、他の食材と共にレトルト殺菌、あるいはそれ以外の加熱殺菌例えば、酸性下での加熱殺菌等を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有し、しかもこれらの加熱殺菌物を長期間保存したとしても当該食感が維持される。
したがって、本発明の加熱凝固卵白は、従来の加熱凝固卵白のような加熱殺菌や保存中に硬くなる等、好ましくない食感となることから配合出来なかったレトルト加工食品や酸性食品等、色々な加工食品の食材として配合することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0014】
本発明においてスラリーとは、後述する卵白やその他の原料を均一に混合した加熱凝固させる前の卵白を主成分とした液状物であり、加熱凝固卵白とは、当該スラリーを任意の方法で加熱凝固させ、目視で観察したとき加熱凝固卵白の表面ばかりでなく中身も凝固し、全体において凝固していない部分、即ち、半熟状の部分が殆ど観察されない状態にあるものである。加熱凝固卵白の大きさや形状は任意であり、具体的には例えば、スラリーを加熱工程により単に凝固させた状態のもの、更に当該凝固物をダイサー、フードカッター、撹拌機等により定形あるいは不定形の大きさや形状に処理したもの等が挙げられる。また、加熱凝固する方法としては、スラリーが凝固する温度、具体的には75℃以上、好ましくは80℃以上に加熱する方法を用いればよく、その手段は任意である。例えば、スラリーをトレー等の容器に移し、蒸煮、通電加熱、マイクロ波加熱等により加熱処理を行なう、あるいはポリ袋等の容器にスラリーを充填密封し、熱水や蒸気等により加熱処理を行なう方法等が挙げられる。
【0015】
本発明の卵白を主成分とするスラリーには、卵白に加え澱粉、及び原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物が添加されていること、また当該スラリーにおいて、水分が卵白固形分11.6部に対し100〜150部であり、pHが8.0以下であることが肝要である。
【0016】
ここで卵白とは、卵白成分からなり、生卵白と同等の固形分濃度11.6%にしたとき、加熱により完全に凝固する性質を有するものである。このような卵白としては、殻付卵を割卵して卵黄と分離して得られる生卵白は勿論のこと、例えば、糖分、リゾチーム等の卵白成分の一部を除去したもの、オボアルブミン等の卵白成分の一部を分画したもの、並びにこれらの卵白又は卵白画分に濾過、殺菌、凍結、乾燥等の各種処理を施したもの、若しくは上記凝固性を有する程度、酵素、酸、アルカリ等で加水分解した卵白分解物等が挙げられる。また、本発明の加熱凝固卵白は、レトルト殺菌、あるいはレトルト殺菌以外の加熱殺菌例えば、酸性下での加熱殺菌等を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有するために、本発明では、生卵白の卵白固形分と水分との比率に比べ水分を多くしている。即ち、生卵白は卵白固形分と水分の比率が11.6部対88.4部であるのに対し(「五訂食品成分表2001」、女子栄養大学出版部)、本発明のスラリーは、当該比率が11.6部対100〜150部と水分が多い。したがって、卵白の含有量は、製品に対し卵白固形分換算で好ましくは5〜10%、より好ましくは6〜9%である。
【0017】
また、本発明で使用する澱粉は、食用として供されるものであればいずれのものでもよく、例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチ、レギュラーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉等の天然澱粉、あるいはこれらの天然澱粉に冷水膨潤化処理や、架橋、エステル化、エーテル化、アルデヒド化、酸化等の処理を施した化工澱粉、並びに例えば、特開平4−130102号公報に記載された方法、すなわち天然澱粉を減圧下に置いた後、蒸気導入による加圧加熱を行ない、あるいはこの操作を繰り返した後、冷却し、粉砕して製造する方法等により得られる湿熱処理澱粉等を用いるとよい。また澱粉の添加量は、特に限定するものではないが、レトルト殺菌、あるいはレトルト殺菌以外の加熱殺菌、例えば、酸性下での加熱殺菌等を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有する加熱凝固卵白が得られ易く、また澱粉特有の風味が感じ難いことから、製品に対して1〜20%が好ましく、2〜15%がより好ましい。
【0018】
本発明においては、上述した澱粉の1種又は2種以上を組み合わせて用いるとよいが、特に、澱粉の一部あるいは全部を化工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を用いるならば、当該澱粉を添加した加熱凝固卵白は、他の食材と共に加熱殺菌し、これを長期間保存したとしても弾力のあるソフトな食感がより維持され易く好ましい。
【0019】
また、本発明において還元澱粉糖化物とは、澱粉を酸や酵素等で加水分解して得られる澱粉糖化物(澱粉糖)を更に水素添加処理により還元した糖アルコールの混合物で、還元澱粉加水分解物、還元水飴、デキストリンアルコール等とも呼ばれる。そして本発明の還元澱粉糖化物は、当該原料糖、即ち澱粉糖化物(澱粉糖)のDEが40以上、好ましくは65以上のものを用いることが肝要である。ここでDEとは、「デキストロースエキュイバレント(dextrose equivalent)」の略称で、澱粉糖化物(澱粉糖)の品質表示の一方法で、澱粉の加水分解の程度を示す指標である。DEが高いほうが加水分解の程度が高く、一方、DEが低いほうが加水分解の程度が低いことを意味する。原料糖のDEが40より低い還元澱粉糖化物を使用すると、得られた加熱凝固卵白は、他の食材と共にレトルト殺菌、あるいはそれ以外の例えば、酸性下での加熱殺菌等を施すと食感が硬くなる等、好ましくない食感となるからである。また、原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物の添加量は、他の食材との各種条件での加熱殺菌及びその後の保存においても弾力のあるソフトな食感がより維持され易いことから、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.5%以上である。
【0020】
さらに、本発明において加熱凝固卵白の加熱前のスラリーは、当該スラリーの水分が卵白固形分11.6部に対し100〜150部、好ましくは115〜140部である。前記卵白固形分11.6部は、上述したとおり生卵白の卵白固形分(水分以外の成分)が11.6%であることによる。スラリーの水分が前記範囲より少ないと、上述した澱粉や還元澱粉糖化物を添加したとしても、他の食材と共にレトルト殺菌、あるいはそれ以外の例えば、酸性下での加熱殺菌等を施すと食感が硬くなる等、好ましくない食感となり、一方、前記範囲より多いと、加熱凝固卵白の自体の食感が軟らか過ぎて好ましくない。なお、スラリー中の卵白固形分及び水分の量は、原料卵白及びスラリーのそれぞれの水分を常圧加熱乾燥法により105℃×2時間の乾燥条件で測定し算出した値である。
【0021】
また、本発明のスラリーは、pHが8.0以下である。産み立て直後の殻付鶏卵は、当該殻中の卵白の炭酸ガス容積百分率が約10%(分圧0.1)と高いため、卵白のpHは7.5〜7.6であるが、一般的に流通している卵白は、多くが割卵された状態で大気圧中で流通されており、空気中の炭酸ガス容積百分率は約0.03%(分圧0.0003)と低いことから、卵白中の炭酸ガスが抜け、卵白のpHは約9〜9.5である。したがって、本発明の卵白を主成分とするスラリーも、pH調整前は約9程度であり、したがって、酸材を用いてpHを8.0以下とする必要がある。ここで、酸材とは、食用として供されるもので、水溶液とした時酸性を呈するものであればいずれのものでもよく、例えば、食酢、醸造酢、果汁、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、L-アスコルビン酸等の有機酸等が挙げられる。また、本発明では、酸材のみでpH調整してもよいが、有機酸のナトリウム塩やカリウム塩等の食用のアルカリ材と組み合わせてpH調整してもよい。
【0022】
本発明のスラリーは、pHを8.0以下に調整することで、得られた加熱凝固卵白は、他の食材と共にレトルト殺菌、あるいはそれ以外の例えば、酸性下での加熱殺菌等を施したとしても弾力のあるソフトな食感を有し、しかもこれらの加熱殺菌物を長期間保存したとしても当該食感が維持されるのに対し、pHが8.0よりも高いと、他の食材と共にレトルト殺菌、あるいはそれ以外の例えば、酸性下での加熱殺菌等を施すと食感が硬くなる等、好ましくない食感となる。なお、本発明では、スラリーのpHの下限について特に規定していないが、pHが低すぎると加熱凝固卵白が酸味を呈することから、pHは4.5以上が好ましい。また、本発明におけるpHは、(株)堀場製作所製のpH測定装置「F−22」を用い品温20℃における値である。
【0023】
また、本発明の加熱凝固卵白は、澱粉の添加に加えガム質を添加することで、スラリー中の澱粉を均一に分散した状態で維持することが容易に可能となり、全体が均一な食感の加熱凝固卵白を得られ好ましい。ガム質としては、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドシーガム、アラビアガム、カラヤガム等が挙げられる。本発明では、これらの1種または2種以上を組合わせて用いるとよいが、特に、キサンタンガムは、上記効果に加え、製品の離水を防止し、外観に優れ好ましい。ガム質の配合量は、製品に対して0.05〜1%が好ましく、0.1〜0.8%がより好ましい。この範囲の配合量とする上述したガム質による効果を奏し易く、またガム質特有の風味も感じられず好ましいからである。
【0024】
本発明の加熱凝固卵白の製造方法は、特に限定するものではなく、例えば、常法に則り行なえばよい。つまり、まず、上述した配合原料を含めた全原料を準備する。この準備した全原料をミキサー等の混合機に投入し十分に混合し均質なスラリーを製する。次に、このスラリーをトレー等の容器に移し、蒸気、通電加熱、マイクロ波加熱あるいは焼成等の加熱処理により加熱凝固させる。あるいはスラリーをポリ袋等に充填密封し、これを熱水や蒸気等の加熱処理により加熱凝固させる方法等により製すればよい。
【0025】
また、上述した以外の原料は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ選択すればよい。そのような他の原料としては、例えば、食塩、砂糖、醤油、グルタミン酸ナトリウム、動植物等のエキス類、アミノ酸等の調味料類、卵黄油、菜種油、コーン油、綿実油、大豆油、パーム油、魚油等の動植物油又はこれらの精製油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂、コレステロール、フィトステロール、各種脂肪酸等の油脂類、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、リン脂質、リゾリン脂質等の乳化材、卵黄、卵黄レシチン等の卵黄成分、ホエー、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン等の乳蛋白、魚肉蛋白、畜肉蛋白、血清蛋白、小麦蛋白、ゼラチン等の蛋白質類、鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、銅、セレン、マンガン、コバルト、ヨウ素等のミネラル類、あるいはこれらミネラル類を高度に含有した酵母、スクラロース、ステビア、マルチトール、アセスルファムカリウム等の甘味料、からし粉、胡椒等の香辛料、酢酸ソーダ、グリシン、ポリリジン、卵白リゾチーム、プロタミン等の静菌剤、β―カロチン、クチナシ、アナトー色素などの着色成分、デキストリン、オリゴ糖、糖アルコール、水飴等の糖類、その他、食物繊維、ビタミン類、キレート剤等が挙げられる。
【0026】
さらに本発明は、上述した加熱凝固卵白を食材として用いた加工食品も本発明の1つである。一般的に加工食品としては、流通温度により、冷凍食品、チルド(冷蔵)食品および常温流通食品に分れ、更に常温流通食品は、当該食品のpHが4.6以下の酸性食品、pHが4.6を超え、かつ水分活性が0.94以下の低水分活性食品、あるいはpHが4.6を超え、かつ水分活性が0.94を超えるものでFが4以上のレトルト殺菌(加圧加熱殺菌)を施したレトルト加工食品に分れる。また、酸性食品や低水分活性食品は、レトルト加工食品のようなFが4以上の強力な加熱殺菌を施さないものの、保存性を向上される目的で加熱殺菌を施す場合があり、具体的には、60〜105℃で数分〜1.5時間程度の加熱殺菌を行う。
【0027】
本発明の加工食品は、上述のいずれの食品でもよいが、特に、本発明の加熱凝固卵白は、レトルト殺菌やそれ以外の加熱殺菌に対しても弾力のあるソフトな食感を有することから、加熱殺菌を施す加工食品、特に強力な加熱殺菌であるレトルト殺菌を施す加工食品に好適である。本発明の加工食品としては、茹で卵を利用した代表的な加工食品である例えば、タマゴサラダ、タマゴスプレッド、タマゴフィリング、タルタルソース等が挙げられるが、本発明の加熱凝固卵白を利用する可能性がある加工食品であればいずれのものでも良く、例えば、パスタソース、カレー、シチュー、スープ、お粥、雑炊、目玉焼き、オムレツ、ラーメン等が挙げられる。なお、レトルト殺菌(加圧加熱殺菌)において、Fが4となるように食品(容器詰め)をレトルト殺菌するとは、当該食品の中心部の品温を120℃で4分間加熱すること又は同等の効力を有する条件で処理を施すことをいう。
【0028】
以下、本発明の加熱凝固卵白およびこれを食材として用いた加工食品について、実施例および試験例に基き具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例および試験例に限定するものではない。
【実施例】
【0029】
[実施例1](加熱凝固卵白:発明品1)
下記に示す全原料をミキサーに投入し十分に混合しスラリーを製した。このスラリーを150×200mmのボイル用パウチに300gずつ充填密封した。この密封物を95℃の熱水中で30分間、加熱凝固処理を行なった後、冷水で冷却し、本発明の加熱凝固卵白(発明品1)を製した。
得られた加熱凝固卵白は、弾力のあるソフトな食感を有したものであった。
なお、スラリーの水分は卵白固形分11.6部に対し132部であり、スラリーのpHは7.5であった。
【0030】
<加熱凝固卵白の配合割合>
生卵白 30部
乾燥卵白 4部
化工澱粉 6部
(日本エヌエスシー(株)製「コルフロ67」)
還元澱粉糖化物 3部
(日研化学(株)製「エスイー600」:原料糖のDEは70、固形分濃度は70%である)
乳化油脂 6部
食酢(酸度:11%) 0.4部
食塩 0.3部
キサンタンガム 0.15部
清水 50.15部
―――――――――――――――――――
合計 100部
【0031】
[実施例2](加熱凝固卵白:発明品2)
実施例1において、化工澱粉(日本エヌエスシー(株)製「コルフロ67」)を湿熱処理澱粉(日本エヌエスシー(株)製「ノベーション」)、原料糖のDEが70である還元澱粉糖化物(日研化学(株)製「エスイー600」:原料糖のDEは70、固形分濃度は70%である)を原料糖のDEが40である還元澱粉糖化物(日研化学(株)製「エスイー57」:原料糖のDEは40、固形分濃度は70%である)に替えた以外は、実施例1と同様な方法で、本発明の加熱凝固卵白(発明品2)を製した。
得られた加熱凝固卵白は、弾力のあるソフトな食感を有したものであった。
なお、スラリーの水分は卵白固形分11.6部に対し132部であり、スラリーのpHは7.5であった。
【0032】
[比較例1](加熱凝固卵白:比較品1)
実施例1において、原料糖のDEが70である還元澱粉糖化物(日研化学(株)製「エスイー600」:原料糖のDEは70、固形分濃度は70%である)を原料糖のDEが30である還元澱粉糖化物(日研化学(株)製「エスイー30」:原料糖のDEは30、固形分濃度は70%である)に替えた以外は、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵白(比較品1)を製した。
得られた加熱凝固卵白は、弾力のあるソフトな食感を有したものであった。
なお、スラリーの水分は卵白固形分11.6部に対し132部であり、スラリーのpHは7.5であった。
【0033】
[比較例2](加熱凝固卵白:比較品2)
実施例1において、食酢を清水に替えた以外は、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵白(比較品2)を製した。
得られた加熱凝固卵白は、弾力のあるソフトな食感を有したものであった。
なお、スラリーの水分は卵白固形分11.6部に対し132部であり、スラリーのpHは9.0であった。
【0034】
[比較例3](加熱凝固卵白:比較品3)
実施例1において、清水の量を50.15部から24部に変えた以外は、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵白(比較品3)を製した。
得られた加熱凝固卵白は、やや硬い食感であるが、問題とならない程度であった。
なお、スラリーに水分は卵白固形分11.6部に対し90部であり、スラリーのpHは7.7であった。
【0035】
[比較例4](加熱凝固卵白:比較品4)
実施例1において、清水の量を50.15部から67.5部に変えた以外は、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵白(比較品3)を製した。
得られた加熱凝固卵白は、やや硬い食感であるが、問題とならない程度であった。
なお、スラリーに水分は卵白固形分11.6部に対し160部であり、スラリーのpHは7.4であった。
【0036】
[試験例1]
実施例1及び2、並びに比較例1乃至3で得られた各加熱凝固卵白を用いて、下記に示す配合割合のpH4.6以下であり加熱殺菌を施したタルタルソースを製した。
1)「加熱凝固卵黄」の製造
まず、タルタルソースの配合原料である下記の配合割合の加熱凝固卵黄を製した。割卵し卵白から分離して得た卵黄液10kgを送風温度175℃で噴霧乾燥した。得られた乾燥卵黄粉を布を敷いた蒸し器の上に1cmの厚さに広げ、100℃の熱蒸気に2分間さらして加熱変性させ水不溶性乾燥卵粉粒子を製した。得られた水不溶性乾燥卵粉粒子と加熱凝固卵黄の他の原料をミキサーに投入し十分に混合しスラリーを製した。このスラリーをボイル用パウチに3kgずつ充填密封し、この密封物を90℃の熱水中で60分間、加熱凝固処理を行った後、冷水で冷却し、加熱凝固卵黄を製した。
なお、下記に示す配合原料において、ホスホリパーゼA処理卵黄のリゾ化率とは、イヤトロスキャン法(TLC−FID法)で分析したリゾリン脂質とリン脂質の総和に対するリゾリン脂質の質量割合を意味する。
【0037】
<加熱凝固卵黄の配合割合>
殺菌卵白 25部
殺菌全卵 20部
ホスホリパーゼA処理卵黄 6部
(卵黄液をホスホリパーゼAで処理したリゾ化率約50%の卵黄)
水不溶性乾燥卵粉粒子 5部
化工澱粉 4部
(日本エヌエヌシー(株)製「コルフロ67」)
サラダ油 4部
食酢(酸度:4%) 3.5部
グラニュー糖 2部
食塩 0.65部
キサンタンガム 0.6部
酵素処理卵黄油 0.6部
(キユーピー(株)製「卵黄レシチンLPL−20」)
清水 28.65部
――――――――――――――――――――――
合計 100部
【0038】
2)「タルタルソース」の製造
加熱凝固卵白を約7mm、加熱凝固卵黄を約1cmのダイス状にカットした。また、玉葱を70℃で10分間ブランチング処理した後、約5mmのダイス状にカットした。次にタルタルソースの全配合原料をミキサーに投入し加熱凝固卵白が崩れない程度の攪拌速度で攪拌混合してタルタルソースを製した後、これをボイル用パウチに1kgずつ充填密封した。この密封物を70℃で30分間加熱殺菌を施し加熱殺菌を施したタルタルソースを製した。
なお、加熱殺菌前のタルタルソースはいずれもpHが約4.0であった。
【0039】
<タルタルソースの配合割合>
マヨネーズ 65部
(キユーピー(株)製「耐熱マヨネーズNo.2」)
加熱凝固卵白 16部
(約7mmダイスカット品)
加熱凝固卵黄 8部
(約1cmダイスカット品)
玉葱 9部
(約5mmダイスカット品、70℃で10分間ブランチング処理済)
食塩 1部
濃縮レモン果汁 1部
乾燥パセリ 0.2部
――――――――――――――――――――
合計 100.2部
【0040】
3)加熱凝固卵白の食感評価
各加熱凝固卵白を使用して得られた加熱殺菌前後のタルタルソースを試食し、加熱殺菌前後における加熱凝固卵白の食感を評価した。また、加熱殺菌後の各タルタルソースを35℃で2週間保管して加速試験を行い、保存後の加熱凝固卵白の食感を評価した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】


【0042】
<食感の評価>
◎:弾力がありソフトな食感を有する。
○:やや硬いが問題とならない程度である。
△:やや硬い。
×:硬い。
<総合評価>
◎:加熱殺菌後及び保存後とも食感の評価が「◎」のもの
○:加熱殺菌後及び保存後とも食感の評価が「○」乃至「◎」で、総合評価「◎」を除く
△:加熱殺菌後及び保存後のいずれか、あるいは両方の食感の評価が「△」で、いずれも「×」でないもの
×:加熱殺菌後及び保存後のいずれか、あるいは両方の食感の評価が「×」のもの
【0043】
表1より、加熱凝固卵白の加熱凝固処理前のスラリーにおいて、澱粉及び原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物が添加されており、水分が卵白固形分11.6部に対して100〜150部であり、pHが8.0以下である実施例1及び2で得られた発明品1及び2の加熱凝固卵白は、pH4.6以下の酸性下で加熱殺菌しても弾力のあるソフトな食感を有し、保存後も当該食感が維持されるのに対し、比較例1乃至3で得られた比較品1乃至3の加熱凝固卵白は、加熱殺菌により食感が硬くなることが理解される。
【0044】
[試験例2]
実施例1及び2、並びに比較例1乃至3で得られた各加熱凝固卵白を用いて、下記に示す配合割合のFが4以上のレトルト殺菌を施したレトルトタマゴスプレッドを製した。
【0045】
1)「加熱凝固卵黄」の製造
試験例1の加熱凝固卵黄の製造方法に準じ製した。
【0046】
2)「レトルトタマゴスプレッド」の製造
加熱凝固卵白を約7mm、加熱凝固卵黄を約1cmのダイス状にカットした。次にタマゴスプレッドの全配合原料をミキサーに投入し加熱凝固卵白が崩れない程度の攪拌速度で攪拌混合してタマゴスプレットを製した後、これを100mm×160mmのレトルト用アルミパウチに60gずつ充填密封した。この密封物を116℃で30分間レトルト殺菌(Fが6)を施しレトルトタマゴスプレッドを製した。
なお、レトルト殺菌前のタマゴスプレッドはいずれもpHが約5.5であった。
【0047】
<タマゴスプレッドの配合割合>
加熱凝固卵黄 40部
(約1cmダイスカット品)
加熱凝固卵白 33部
(約7mmダイスカット品)
マヨネーズ 27部
(キユーピー(株)製「耐熱マヨネーズNo.2」)
――――――――――――――――――――
合計 100部
【0048】
3)加熱凝固卵白の食感評価
試験例1と同様に、各加熱凝固卵白を使用して得られたレトルト殺菌前後のタマゴスプレッドを試食し、レトルト殺菌前後における加熱凝固卵白の食感を評価した。また、レトルト殺菌後の各タマゴスプレッドを35℃で2週間保管して加速試験を行い、保存後の加熱凝固卵白の食感を評価した。結果を表2に示す。
なお、表中の評価結果は、試験例1に準ずる。
【0049】
【表2】


【0050】
表2より、加熱凝固卵白の加熱凝固処理前のスラリーにおいて、澱粉及び原料糖のDEが40以上の還元澱粉糖化物が添加されており、水分が卵白固形分11.6部に対して100〜150部であり、pHが8.0以下である実施例1及び2で得られた発明品1及び2の加熱凝固卵白は、試験例1の結果と同様に、レトルト殺菌を施しても弾力のあるソフトな食感を有し、保存後も当該食感が維持されるのに対し、比較例1乃至3で得られた比較品1乃至3の加熱凝固卵白は、レトルト殺菌により食感が硬くなることが理解される。
【出願人】 【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区渋谷1丁目4番13号
【出願日】 平成15年8月29日(2003.8.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−73537(P2005−73537A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−305813(P2003−305813)