| 【発明の名称】 |
リン酸化ショ糖脂肪酸エステルの用途 |
| 【発明者】 |
【氏名】高橋 幸資
【氏名】服部 誠
【氏名】好田 正
【氏名】山岸 由可子
【氏名】中西 勝義
【氏名】三国 克彦
|
| 【要約】 |
【課題】水への溶解性や乳化性の改善された食品用の界面活性剤、でんぷんに対して老化現象等を防止する作用を有するでんぷん改良剤、並びにカルシウムイオン結合能を有するカルシウムイオン捕捉剤、を提供することを目的とする。
【解決手段】リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とする界面活性剤、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするカルシウムイオン捕捉剤、並びにリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするでんぷん改良剤を提供する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とする界面活性剤。 【請求項2】 リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするカルシウムイオン捕捉剤。 【請求項3】 リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするでんぷん改良剤。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、ショ糖脂肪酸エステルにリン酸基を導入したリン酸化ショ糖脂肪酸エステルの用途に関し、詳しくはリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とする界面活性剤、カルシウムイオン捕捉剤、でんぷん改良剤に関する。 【背景技術】 【0002】 界面活性剤は工業用ではその種類が豊富であるが、食品用の界面活性剤は安全性が求められるため極端に種類が少なくなる。しかしながら、界面活性剤のうち乳化機能の高い乳化剤に関しては、加工食品の生産量の増大・多様化によるニーズの変化のため、その需要量は1998年において年間25000トン以上と推定されている。 【0003】 ショ糖は栄養面からも有用な機能を有しており、また、大量かつ安価に流通している食品である。このショ糖を原料として水酸基に脂肪酸をエステル結合により導入したショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖を親水基、脂肪酸残基を親油基とした界面活性剤であり、非イオン性の界面活性剤として、1959年日本では他国に先駆けて食品添加物として認可された。ショ糖脂肪酸エステルは安全性が高いことも知られており、国内だけでも需要量は1998年で4100トンを超えると推計される。 【0004】 ショ糖脂肪酸エステルは、O/W及びW/O乳化能、可溶化能、起泡能、油脂の結晶転移抑制及び促進作用、でんぷんの老化抑制作用、潤沢性能(粘度低下作用)、フラットサワー変敗抑制作用(抗菌性)といった広範囲な利用能のある界面活性剤である。 しかしながら、ショ糖脂肪酸エステルは、結合する脂肪酸残基の種類や結合数の増加によって、水への分散性が低下し、溶解性が著しく低下する欠点を有している。食品分野においてその需要の大半を占めるパルミチン酸エステル及びステアリル酸エステルについても決して水への溶解性が優れているとは言い難い。特に低温領域、低pH下では溶解性が著しく低下するという欠点がある。 また、でんぷんの老化抑制作用についても、より改善が求められている。 さらに、ショ糖脂肪酸エステルはカルシウムイオン結合能を有していないが、カルシウムイオン結合能を有するものとなれば、カルシウム強化剤としての役割をも持つことができ、より用途が広がることになる。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、上記従来の問題点を解消し、水への溶解性や乳化性の改善された食品用の界面活性剤を提供することを目的とするものである。即ち、本発明の主要な目的は、ショ糖脂肪酸エステルを改良し、水への溶解性や乳化性を改善した界面活性剤を提供することである。 また、本発明は、でんぷんに対して老化現象等を防止する作用を有するでんぷん改良剤を提供することをも目的とするものである。 さらに、本発明は、カルシウムイオン結合能を有するカルシウムイオン捕捉剤を提供することをも目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、ショ糖脂肪酸エステルにおける上記従来の問題点を解消するため鋭意検討を重ねた。 その過程において本発明者らは、ショ糖脂肪酸エステルに親水性を高める原子団を導入することが有効と考えた。 しかしながら、ショ糖脂肪酸エステルの高い安全性を損なうおそれがあるため、導入する原子団及びその導入方法についても安全性が確保されなければならない。また、低pHにおける溶解性を付与するためには、分子に負電荷を供給することが肝要である。 本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、リン酸に着目した。リン酸は食品添加物として広く利用されており安全性が高い。また糖に対するリン酸化は種々の方法が報告されており、でんぷんのリン酸化物であるリン酸化でんぷんは、多くの食品に利用されていることから、ショ糖脂肪酸エステルへリン酸基を導入する方法を考慮することで、食品用途への利用が期待される。また、リン酸基を導入することにより、カルシウムイオンとの相互作用に関しても期待できる。 そこで種々の条件にてショ糖脂肪酸エステルへリン酸基を導入することを試みたところ、得られたリン酸化ショ糖脂肪酸がこれら目的に合致するものであることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。 【0007】 即ち、請求項1に係る本発明は、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とする界面活性剤を提供するものである。 請求項2に係る本発明は、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするカルシウムイオン捕捉剤を提供するものである。 請求項3に係る本発明は、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするでんぷん改良剤を提供するものである。 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、ショ糖脂肪酸エステルをリン酸化することにより、水に対する溶解性、乳化能がショ糖脂肪酸エステルよりも改善された界面活性剤が提供される。特に低温での溶解性が改善された界面活性剤が提供され、また、低pHでの乳化性が改善された界面活性剤が提供される。 次に、本発明によれば、カルシウムイオン結合能力を有するカルシウムイオン捕捉剤(カルシウム強化剤)が提供される。 さらに、本発明によれば、でんぷんとの相互作用があり、でんぷん粒の膨潤及び崩壊を防止し、でんぷんの老化現象も抑制することのできるでんぷん改良剤が提供される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 以下に本発明を詳しく説明する。 請求項1に係る本発明は界面活性剤に関し、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするものである。 請求項1に係る本発明の界面活性剤は、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルを有効成分とするものであればよく、本発明の目的を損なわない限度において、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル以外のものを配合することもできる。 ここでリン酸化ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステルの水酸基にリン酸基を導入し、ショ糖脂肪酸エステルをリン酸化することにより得られる。 【0010】 原料として使用するショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸のアルキル鎖長、結合数はいずれのものでも使用することができるが、水への溶解性の改良の見地から、ステアリン酸もしくはパルミチン酸が1個結合したエステル体が好ましい。具体的には、ショ糖ステアリル酸モノエステル、ショ糖パルミチン酸モノエステルなどを挙げることができ、さらにこれらの混合物であってもよい。 【0011】 ショ糖脂肪酸エステルのリン酸化は、糖類等に対するリン酸化について報告しているTarelliらの方法[ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 222, 196-210(1994)]に準じて、ショ糖脂肪酸エステルにリン酸化試薬を加え、リン酸化反応によりリン酸基を導入することにより達成される。 具体的には、例えばショ糖脂肪酸エステルに、リン酸二水素ナトリウム(OPA),メタリン酸(MPA)などのリン酸化試薬を加え、凍結乾燥した後に加熱することによりリン酸化反応を行えばよい。リン酸化試薬としては、特に限定されるものではないが、食品としての安全性の確保の点から、過激なリン酸化試薬を用いず、食品添加物であるリン酸二水素ナトリウム(OPA)を用いるか、或いはメタリン酸(MPA)などを用いることが好ましい。通常、リン酸基は1個結合したものが得られるが、後述するように、条件を選択することにより、リン酸基が複数個結合したポリリン酸化体を得ることも可能である。 【0012】 より具体的には、ショ糖脂肪酸エステルに対し、リン酸化試薬がモル比で1:10前後となるように水溶液を調製し、凍結乾燥後、混合物を70〜200℃、好ましくは110℃前後の温度で、5〜40時間、好ましくは9〜20時間加熱してリン酸化反応を行う。未反応メタリン酸を冷水抽出した後、クロロホルム/メタノール混液を用いてリン酸化ショ糖脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを抽出し、その後、クロマト分画を行うことにより目的とするリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを得ることができる。 なお、リン酸化反応時のpHは特に限定されるものではないが、5.5〜7程度が好ましく、さらに冷水抽出による精製を組み合わせることによって、操作の簡便化と収率の改善を図ることができる。 【0013】 また、反応後の処理方法として、クロロホルム/メタノール混液を用いてリン酸化ショ糖脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを抽出した後、pHが3〜8で、0〜10℃、好ましくは4℃前後の冷水を加えて、溶解性の差により目的とするリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを抽出することも可能である。この場合、リン酸基が複数個結合したポリリン酸化体を得ることも可能である。 【0014】 このようにして製造されたリン酸化ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステルと比較してリン酸基が導入されたことにより、水に対する溶解性が改善され、ショ糖脂肪酸エステルでは水の溶解性が不充分であった界面活性剤、乳化剤などへの利用が期待できる。乳化力もショ糖脂肪酸エステルでは酸性領域では不充分であったが、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルでは該領域も中性領域とほぼ同等の乳化力を示すことができる。 【0015】 また、ショ糖脂肪酸エステルは構造に電荷を有さないことからカルシウムイオンとの相互作用が無かったが、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルでは、リン酸残基がカルシウムイオンと相互作用するため、納豆に存在するポリγ−グルタミン酸やカゼインホスホペプチドのようなカルシウムイオン相互作用を新たに付与することが可能である。 さらに、リン酸化ショ糖脂肪酸エステルは、でんぷんとの相互作用もあり、でんぷん粒の膨潤及び崩壊を防止し、老化現象も抑制するため、乳化剤以外にもでんぷん改良剤としての利用も期待できる。 【実施例】 【0016】 以下に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 製造例1 ショ糖脂肪酸エステル(S−1670、ショ糖ステアリル酸モノエステルを主成分とするもの、HLB値約10、三菱化学フーズ製)12.096gを600mlの蒸留水に60℃で加熱溶解させ、これにショ糖脂肪酸エステルとリン酸化試薬とのモル比が1:10となるように、リン酸二水素ナトリウム(和光純薬製)28.082gを加えた。溶液のpHを1M NaOHにて5.5に調整した後、液体窒素で凍結させ、凍結乾燥を行なった。 該混合物を110℃にて9時間加熱してリン酸化を行った後、クロロホルム/メタノール混液(8:2;v/v)200mlを加えてリン酸化ショ糖脂肪酸エステル及び未反応のショ糖脂肪酸エステルを抽出した。フィルター濾過後、濾液を濃縮し、粗精製のリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを得た。 得られた粗精製物をシリカゲル吸着クロマトグラフィーによって未反応ショ糖脂肪酸ジエステルを除去し、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル及び未反応ショ糖脂肪酸モノエステルが存在する画分を回収した。濃縮及び透析を行なった該画分を陰イオン交換クロマトグラフィーにより、目的とするリン酸化ショ糖脂肪酸エステル126mgを得た。 該化合物の分析を実施したところ、糖:脂肪酸:リン酸のモル比は、1:1:0.3であった。マススペクトルの分析(FAB−MS)から主分子量は688であり、この結果からショ糖脂肪酸エステルとリン酸の結合比は、1:1であり、その主生成物はモノホスホリルモノスクロースモノステアレートであることが示された。また、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析から、原料であるショ糖脂肪酸エステルも存在することが明らかとなった。 【0017】 製造例2 製造例1ではリン酸化試薬としてリン酸二水素ナトリウムを使用したが、リン酸化試薬としてメタリン酸を使用しても、目的とするリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを得ることができる。 前記と同じショ糖脂肪酸エステル12.096gを600mlの蒸留水に60℃にて加熱溶解させ、これにショ糖脂肪酸エステルとリン酸化試薬とのモル比が1:10となるように、メタリン酸(和光純薬製)40.091gを加えた。溶液のpHを5.5に調整した後、液体窒素で凍結させ、凍結乾燥を行なった。 該混合物を110℃にて20時間加熱してリン酸化を行った後、500mlの冷水を加え、4℃にて30分間攪拌して、未反応のメタリン酸を抽出除去した。しかる後、18000rpm、30分間遠心分離し、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル及び未反応ショ糖脂肪酸エステルを回収した。沈殿を凍結乾燥後、クロロホルム/メタノール混液(8:2;v/v)を加えてリン酸化ショ糖脂肪酸エステル及び未反応のショ糖脂肪酸エステルを抽出した。フィルター濾過後、濾液を濃縮し、粗精製のリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを得た。 得られた粗精製物をシリカゲル吸着クロマトグラフィーによって未反応ショ糖脂肪酸ジエステルを除去し、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル及び未反応ショ糖脂肪酸モノエステルが存在する画分を回収した。濃縮及び透析を行なった該画分を陰イオン交換クロマトグラフィーにより、目的とするリン酸化ショ糖脂肪酸エステル284mgを得た。 該化合物の分析を実施したところ、糖:脂肪酸:リン酸のモル比は、1:1:0.8であった。マススペクトルの分析から主分子量は688であり、この結果からショ糖脂肪酸エステルとリン酸の結合比は1:1であり、その主生成物はモノホスホリルモノスクロースモノステアレートであることが示された。また、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析から、原料であるショ糖脂肪酸エステルは含まれていないことが明らかとなった。 【0018】 製造例3 製造例1及び2では精製方法としてクロマトグラフィーの手法を使用したが、冷水を使用した抽出によっても目的とするリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを得ることが可能である。このとき、リン酸基が複数個結合したポリリン酸化体が得られる。 前記と同じショ糖脂肪酸エステル9.072gを300mlの蒸留水中に60℃にて加熱溶解させ、メタリン酸(和光純薬製)30.089gを加えた。溶液のpHを5.5(Aとする)及び7(Nとする)にそれぞれ調整した後、液体窒素で凍結させ、凍結乾燥を行なった。 各該混合物を110℃にて20時間加熱してリン酸化を行なった後、200mlのクロロホルム/メタノール混液(8:2;v/v)を加えて1時間攪拌してリン酸化ショ糖脂肪酸エステル及び未反応のショ糖脂肪酸エステルを抽出した。フィルター濾過して未反応のメタリン酸を除去し、濾液を濃縮して各粗精製のリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを得た。 該各粗精製物に500mlの冷水を加え、4℃、500rpmの条件で1晩攪拌した。しかる後、18000rpm、30分間の遠心分離にて未反応のショ糖脂肪酸エステルを除去し、上清を凍結乾燥することにより、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)及びリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)を得た。 各化合物に関して分析を実施したところ、糖:脂肪酸:リン酸のモル比は、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)が1:0.8:1.7であり、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)が1:0.9:1.6となり、製造例1及び2で得られたものより、それぞれリン酸量が多くなった。また、TLC分析から、原料であるショ糖脂肪酸エステルも存在することが明らかとなり、それぞれ53%、59%存在していた。 【0019】 実施例1(リン酸化ショ糖脂肪酸エステルの水に対する溶解性) 製造例2で得られたリン酸化ショ糖脂肪酸エステル10mg或いは20mgに対し、蒸留水1mlを加え、24000rpmにて1分間ホモジナイズした後、0℃もしくは30℃で1時間攪拌した。18000rpmにて30分間遠心分離した後、上清をフィルター濾過した。回収した濾液を10倍もしくは100倍希釈して糖濃度をフェノール−硫酸法により溶解性を評価した。 水に対する溶解性について、ショ糖脂肪酸エステルとの比較を実施したところ、図1に示すように、0℃においては30℃よりも溶解性が著しく低下したが、ショ糖脂肪酸エステル(SE)よりもリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)の方が有意に著しく高い溶解性を示した。30℃においては相互に有意さは認められなかったもののリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)の方が高い溶解性を示した。 【0020】 実施例2(リン酸化ショ糖脂肪酸エステルの水に対する溶解性) 製造例3で得られたリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)[SE−P(a)]及びリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)[SE−P(n)]80mgに、0.1Mの塩酸もしくは水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを4及び7にそれぞれ調整した水0.5mlを加え、30℃で1時間攪拌した。18000rpm、30分間遠心分離を行った後、上清をフィルター濾過した。濾液中の糖濃度をフェノール−硫酸法により測定して溶解量を算出した。図2に示すように、ショ糖脂肪酸エステル(SE)と比較して、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル[SE−P(a)とSE−P(n)]の方が、溶解量はいずれのpHでも改善された。 【0021】 実施例3(リン酸化ショ糖脂肪酸エステルの水に対する溶解性) 製造例3で得られたリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)[SE−P(a)]及びリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)[SE−P(n)]30mgに、pH7に調整した水0.5mlを加え、4℃、500rpmの条件或いは30℃、500rpmの条件で1晩攪拌した。18000rpm、30分間遠心分離を行った後、上清をフィルター濾過した。濾液中の糖濃度をフェノール硫酸法により測定して溶解量を算出した。図3のように、ショ糖脂肪酸エステル(SE)と比較して、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル[SE−P(a)とSE−P(n)]の方が、溶解量は、30℃はもとより4℃においても改善された。 【0022】 実施例4(リン酸化ショ糖脂肪酸エステルの乳化能) 製造例2で得られたリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを0.02Mクエン酸−0.01Mリン酸緩衝液(pH:4,5,6,7,8)に0.04%となる様に溶解させた。この溶液2mlを水相とし、コーン油0.5mlを油相として試験管に分取した。ホモジナイザーにて30℃、24000rpmで1分間ホモジナイズして、水中油滴型(O/W)エマルションを調製した。乳化性の評価は濁度法によって行った。即ち、エマルションを30℃に保持し、0,10,30,60,120分後にそれぞれエマルションの水相底部から50μlずつサンプリングして、0.1%SDS溶液で50倍希釈した溶液の500nmの吸光度を測定した。結果を図4に示す。乳化活性(EAI)は以下の式(1)に従って算出した。結果を図5に示す。 【0023】 ・乳化活性(EAI)=2T/ΦC・・・(1) なお、式(1)において、Tは濁度を示しており、T=2.3A/lである。ここでAは希釈倍率を考慮した500nmの吸光度であり、lは光路長(10-2m)である。また、Φは油相の割合(0.2)であって、Cは標品濃度(0.4×10-3g/m3)である。 【0024】 図4に示すように、経時変化ではショ糖脂肪酸エステル(SE)との比較を行ったところ、pHが6〜8では同様の吸光度変化を示したが、pH5以下ではリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)のみ、pHが6〜8と同様の変化を示した。 また、乳化活性(EAI)は、図5に示すように、pH6以下ではリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)の方が有意に高かった。 【0025】 実施例5(リン酸化ショ糖脂肪酸エステルの乳化能) 製造例3で得られた各該化合物に関して、実施例4と同様に、pH4及びpH7での500nmでの吸光度の経時変化を測定したところ、図6に示すように、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル[SE−P(a)とSE−P(n)]は、pH7ではショ糖脂肪酸エステル(SE)と同じ吸光度変化を示したものの、pH4では有意な乳化性が認められた。 また、図7に示すように、乳化活性(EAI)においても、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル[SE−P(a)とSE−P(n)]は、pH4でショ糖脂肪酸エステル(SE)よりも著しく高い活性を有していた。 【0026】 実施例6(カルシウムイオン結合能) 0.5mg/mlの製造例2で得られたリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)或いはショ糖脂肪酸エステル(SE)16mlに、12.5mM塩化カルシウム溶液を50μlずつ加え、電気伝導度の変化を導電率メーターを用いて測定したところ、図8に示すように、滴定終了点からリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)とカルシウムイオンの結合比は1:1であり、カルシウムイオン結合能があることが明らかとなった。 【0027】 実施例7(カルシウムイオン結合能) 製造例3で得られたリン酸化ショ糖脂肪酸エステル リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)或いはリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)1.0mg/mlに、12.5mM塩化カルシウム溶液を50μlずつ加え、電気伝導度の変化を導電率メーターを用いて測定したところ、図9に示すように、滴定終了点からリン酸化ショ糖脂肪酸エステル[SE−P(a)とSE−P(n)]とカルシウムイオンの結合比は4:1であり、カルシウムイオン結合能があることが明らかとなった。 【0028】 実施例8 バレイショでんぷん(PS)に、対でんぷん当り0.2%と0.5%のショ糖脂肪酸エステル或いは製造例2で得られたリン酸化ショ糖脂肪酸エステルを添加して、粘度測定機を用いて温度を変化させた際の粘度を測定した。 図10に示す様に、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)を0.5%添加した際に粘度挙動は著しい影響を受けた。このことより、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)を添加することにより、でんぷん粒が吸水膨潤して脆弱となって起こる崩壊が防止され、粘性の低い糊液が調製できることが言える。 【0029】 実施例9(でんぷん粒の老化防止効果) バレイショでんぷん(PS)と、製造例2で得られたリン酸化ショ糖脂肪酸エステル或いはショ糖脂肪酸エステルとが、重量比で95:5となる様に各試料を混合し、セル内に封入した。該セルを示差走査熱量測定機に供し、それぞれ5〜100℃、2℃/分、ヘリウムガス流量40ml/分の条件で測定を実施した。測定後、該試料を4℃で1週間保持した後に再度同測定を実施した。 ショ糖脂肪酸エステル(SE)を含む試料[表1ではPS/SEと示した。]とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)を含む試料[表1ではPS/SE−Pと示した。]のそれぞれの示差走査熱量測定で得られた再糊化ピーク温度(Tp)、吸熱ピークのエンタルピー全体から求められたでんぷん鎖の再転移によるエンタルピー(ΔH2)を表1に示す。 【0030】 【表1】
【0031】 なお、表1中において、符号aはPSに対して、危険率0.05未満で有意差があることを示し、符号bはPS/SEに対して、危険率0.05未満で有意差があることを示している。 【0032】 表1によれば、ショ糖脂肪酸エステル(SE)を含む試料[表1ではPS/SEと示した。]とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)を含む試料[表1ではPS/SE−Pと示した。]は、でんぷんのみ(PS)の試料[表1ではPSと示した。]と比較して、エンタルピーが有意に小さく、また、ショ糖脂肪酸エステル(SE)を含む試料とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)を含む試料とを比較すると、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)を含む試料の方がエンタルピーが小さくなる傾向が見られた。 エンタルピーは規則構造の再構築の程度を示すものであり、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)を含む試料の方が規則構造の再構築を抑制する効果があることになる。よって、リン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)は、でんぷんの老化を防止することができることが分かる。 【図面の簡単な説明】 【0033】 【図1】実施例1における0℃と30℃においてのショ糖脂肪酸エステル(SE)とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)のそれぞれの水に対する溶解性を示すグラフである。 【図2】実施例2におけるpH4と7においてのショ糖脂肪酸エステル(SE)とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)[SE−P(a)]とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)[SE−P(n)]のそれぞれの水に対する溶解性を示すグラフである。 【図3】実施例3における4℃と30℃においてのショ糖脂肪酸エステル(SE)とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)[SE−P(a)]とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)[SE−P(n)]のそれぞれの水に対する溶解性を示すグラフである。 【図4】実施例4におけるショ糖脂肪酸エステル(SE)とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)のそれぞれの500nmの吸光度の測定結果を示すグラフである。 【図5】実施例4におけるショ糖脂肪酸エステル(SE)とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)のそれぞれの乳化活性(EAI)の結果を示すグラフである。 【図6】実施例5におけるショ糖脂肪酸エステル(SE)とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)[SE−P(a)]とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)[SE−P(n)]の吸光度の測定結果を示すグラフである。 【図7】実施例5におけるショ糖脂肪酸エステル(SE)とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)[SE−P(a)]とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)[SE−P(n)]のそれぞれの乳化活性(EAI)の結果を示すグラフである。 【図8】実施例6におけるリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)のカルシウムイオン結合能を示すグラフである。 【図9】実施例7におけるリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(A)[SE−P(a)]とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(N)[SE−P(n)]のカルシウムイオン結合能を示すグラフである。 【図10】実施例8におけるショ糖脂肪酸エステル(SE)とリン酸化ショ糖脂肪酸エステル(SE−P)のバレイショでんぷん(PS)に対するそれぞれの粘度を示すグラフである。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】597112483 【氏名又は名称】株式会社横浜国際バイオ研究所
|
| 【出願日】 |
平成15年8月29日(2003.8.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100074077 【弁理士】 【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221 【弁理士】 【氏名又は名称】矢野 裕也
|
| 【公開番号】 |
特開2005−73531(P2005−73531A) |
| 【公開日】 |
平成17年3月24日(2005.3.24) |
| 【出願番号】 |
特願2003−305734(P2003−305734) |
|