| 【発明の名称】 |
アポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材 |
| 【発明者】 |
【氏名】武井 利之
【氏名】小堀 真珠子
【氏名】吉田 充
【氏名】亀山 眞由美
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| 【要約】 |
【課題】食用キノコの一種であるコウタケ抽出物から得られ、副作用が少なく、安全性に優れており、白血病をはじめとする各種がん疾患の抑制乃至予防に有なアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材を提供することを目的とするものである。
【解決手段】コウタケを抽出して得られるコウタケ抽出物からなるアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材、並びに、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドからなるアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材を提供するものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コウタケを抽出して得られるコウタケ抽出物からなるアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材。 【請求項2】 コウタケ抽出物が、がんの抑制乃至予防効果を示す請求項1記載のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材。 【請求項3】 コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドからなるアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材。 【請求項4】 コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドが、コウタケを抽出したコウタケ抽出物を精製することにより得られたものである、請求項3記載のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材。 【請求項5】 コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドが、がんの抑制乃至予防効果を示す請求項3又は4記載のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、アポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材に関し、詳しくは食用キノコの一種であるコウタケ抽出物から得られ、白血病をはじめとする各種がんの抑制乃至予防に有効なアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、日常の食生活による健康維持・疾病予防の目的で、食品の持つ「体調維持に貢献する機能(食品の三次機能)」を示す成分について、多くの研究がなされている。それらの研究は、様々な農林水産物の成分(脂質、タンパク質、炭水化物、及び無機質等)に及んでいる。 【0003】 一方、ヒトの死因に占めるがん(悪性新生物)の割合は高く、我が国においては死因の第一位である。食品の三次機能の中で、がんの予防・治療効果が期待できるものに、がん細胞のアポトーシス(Apoptosis;自死)誘導がある。 アポトーシスは、細胞がアポトーシス誘導刺激を受けてから、計画されたシグナル伝達により、縮小、ヌクレオソーム単位でのDNAの断片化、アポトーシス小体の形成等を経て、マクロファージなどに貪食除去される。このため、細胞内容物が漏れ出すことがなく、ネクローシス(Necrosis;壊死)のように周囲の細胞・組織に炎症を起こさせることがない。 【0004】 現在、臨床で使用されている幾つかの抗がん剤や抗がん活性を示す物質が培養細胞にアポトーシスを誘導することが知られており、アポトーシス誘導ががん抑制に結びつくと考えられている。特に、白血病などの造血器腫瘍の治療は、造血器腫瘍細胞の根絶が治療の基本理念であり、その化学療法剤や放射線による治療は、造血器腫瘍細胞にアポトーシスを誘導することに由来している。 【0005】 このようにアポトーシス誘導が安全ながん抑制方法であると認められることから、上記したように、従来から、抗がん剤をはじめとして種々のアポトーシス誘導剤が見出されてきた(例えば、特許文献1参照)。 しかしながら、多くのものは、化学合成品であったり、天然には存在しないタンパク質の加水分解物であったりすることから、長期間使用した場合の副作用をはじめとして、安全性について必ずしも充分ではないという問題があった。 また、天然物由来の抗がん物質についても、従来から研究がなされているが、それらは細胞毒を指標として選抜されており、その作用機序が明らかにされていないため、長期にわたり連用した場合などには副作用が懸念されるなど、安全性に問題があった。 【0006】 【特許文献1】 特開2002−275068号公報 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、このような従来の欠点を解消するものであって、食品由来のものであって、副作用が少なく、安全性に優れたアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材を提供することを目的とするものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記従来の課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、驚くべきことに、伝統的に食品として利用されてきたキノコ(食用キノコ)の一種であるコウタケからの抽出物が目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。 【0009】 即ち、請求項1に係る本発明は、コウタケを抽出して得られるコウタケ抽出物からなるアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材を提供するものである。請求項2に係る本発明は、コウタケ抽出物が、がんの抑制乃至予防効果を示す請求項1記載のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材を提供するものである。 請求項3に係る本発明は、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドからなるアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材を提供するものである。 請求項4に係る本発明は、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドが、コウタケを抽出したコウタケ抽出物を精製することにより得られたものである、請求項3記載のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材を提供するものである。 請求項5に係る本発明は、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドが、がんの抑制乃至予防効果を示す請求項3又は4記載のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材を提供するものである。 【0010】 【発明の実施の形態】 次に、本発明の実施の形態を示す。 請求項1に係る本発明は、アポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材に関し、コウタケを抽出して得られるコウタケ抽出物からなるものである。 請求項1に係る本発明で用いられるコウタケ(Sarcodon aspretus(Berk.)S.Ito)は、イボタケ科コウタケ属に属する食用キノコである。 コウタケは、山間部で伝統的に食されてきた食用キノコである。コウタケは膚の抗炎症に有効であるとされており、福島県でも手荒れに良いとの言い伝えがある。しかし、食品機能性に関しては、これまで全く明らかにされていない。 【0011】 なお、これまでキノコについては、がん抑制についての研究が進んでおり、例えばアガリクス、マイタケ、シイタケなどについてがん抑制などの薬理効果があると報告がなされている。これらの報告においては、キノコの薬効成分は多糖類であるとの報告が大部分である。 これらの活性の中心は、1,3分岐を有する1,6−β−D−グルカン、或いはそのタンパク質との複合体であるとされている。 請求項1に係る本発明で用いられるコウタケ抽出物(粗抽出物)は、これらの多糖類と糖タンパク質を全く含まない。 従って、請求項1に係る本発明は、多糖類による人体の免疫賦活に由来するがん抑制とは全く異なるものである。 また、このようなコウタケ抽出物を精製して得られるコウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイド等の成分も多糖類ではなく、がん抑制機構も免疫賦活ではなく、アポトーシス誘導であって、従来キノコに関して報告されているものとは異なるものである。 【0012】 請求項1に係る本発明は、アポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材に関し、コウタケを抽出して得られるコウタケ抽出物からなるものである。 ここでコウタケとしては、一般に乾燥品(好ましくは水分含量を10%程度以下としたもの)が用いられるが、これに限定されるものではない。 コウタケを抽出するに際しては、これを予め粉砕機などにより粉砕しておくことが好ましい。この他、コウタケを適当な大きさに切断したものを用いることもできる。 【0013】 コウタケ抽出物は、このようなコウタケを例えば、水及び/又は有機溶媒、或いは臨界抽出等により抽出、好ましくは水及び/又は有機溶媒により抽出して得られるものである。 ここで水を用いる場合には、冷水、温水、熱水があるが、熱水が好ましい。 また、有機溶媒としては、一般的に植物成分の抽出に用いられている有機溶媒であれば特に制限はなく、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどの親水性有機溶媒や、クロロホルムなどの親油性有機溶媒を用いることができる。必要に応じて、水と有機溶媒を併用することもできる。 抽出は、コウタケの粉砕物を常温常圧にて浸漬、攪拌することで得られる。また、加熱、加圧して抽出することもできる。抽出後はろ過して溶出液を集め、これをそのまま用いるか、或いは必要に応じて、さらにロータリーエバポレーターなどを用いて濃縮することにより、コウタケ抽出物が得られる。 【0014】 このようにして得られる請求項1に係る本発明のコウタケ抽出物からなるアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材は、アポトーシス誘導能(アポトーシス誘導作用)に基づいて各種がん疾患に適用することができる。コウタケ抽出物にアポトーシス誘導能があることは、これまで全く知られていなかった。 適用疾患としては、悪性新生物、より具体的には脳腫瘍、口腔及び咽頭、消化器及び腹膜(胃癌、大腸癌、肝癌、膵癌)、肺癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、腎癌、膀胱癌、リンパ組織及び造血組織(悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)、子宮癌、卵巣癌などを挙げることができる。 【0015】 請求項1記載のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材は、請求項2に記載したように、上記した如きがんの抑制乃至予防効果を示す。 【0016】 コウタケ抽出物は、そのままで食品又は食品素材として利用することができるし、又は他の食品や材料と組み合わせて、食品又は食品素材として利用することもできる。 ここで食品としては、菓子、パンなどの固形物の他、飲料を含む概念である。また、コウタケ子実体の水煮、塩漬等の加工品、及びいわゆる機能性食品や健康食品も含まれる。 このような食品として用いる場合又は食品に含有させる場合、コウタケ抽出物は、一般に液剤、粒剤、粉剤などの形で用いられるが、これに制限されるものではない。 また、コウタケ抽出物は、そのまま、或いは他のキノコ、野菜、その他の適宜材料と組み合わせて、食品素材として利用することもできる。 【0017】 請求項3に係る本発明は、アポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材に関し、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドからなるものである。 エルゴステロールパーオキサイド( ergosterol peroxide)は既知の物質であるが、これまでコウタケにエルゴステロールパーオキサイドが存在していることは知られていなかった。また、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドにアポトーシス誘導能があることもこれまで全く知られていなかった。 さらに、上記したように、このコウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドも多糖類ではなく、そのがん抑制機構も免疫賦活ではなく、アポトーシス誘導であって、従来キノコに関して報告されているものとは異なるものと考えられる。 【0018】 ここでコウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドは、請求項4に記載したように、コウタケを抽出したコウタケ抽出物を精製することにより得られる。コウタケ抽出物に関しては、請求項1に記載したとおりであり、コウタケを例えば、水及び/又は有機溶媒、或いは臨界抽出等により抽出、好ましくは水及び/又は有機溶媒により抽出して得られるものである。 請求項4に係る本発明のコウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドは、このようなコウタケを抽出したコウタケ抽出物をさらに精製することにより得られる。精製は、クロマトグラフィーなどを用いる公知の方法で行うことができる。 【0019】 請求項3又は4記載のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材は、請求項5に記載したように、がんの抑制乃至予防効果を示しており、アポトーシス誘導能に基づいて、前記したとおりの各種がん疾患に適用することができる。 前記したように、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドにアポトーシス誘導能があることはこれまで全く知られていなかった。 【0020】 コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドは、そのままで食品又は食品素材として利用することができるし、又は他の食品や材料と組み合わせて、食品又は食品素材として利用することもできる。 ここで食品としては、菓子、パンなどの固形物の他、飲料を含む概念である。また、コウタケ子実体の水煮、塩漬等の加工品、及びいわゆる機能性食品や健康食品も含まれる。 このような食品として用いる場合又は食品に含有させる場合、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドは、一般に液剤、粒剤、粉剤などの形で用いられるが、これに制限されるものではない。 また、コウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドは、そのまま、或いは他のキノコ、野菜、その他の適宜材料と組み合わせて、食品素材として利用することもできる。 【0021】 なお、コウタケを水及び/又は有機溶媒で抽出して得られるコウタケ抽出物やコウタケ由来のエルゴステロールパーオキサイドは、アポトーシス誘導能を有するアポトーシス誘導剤として用いることもできる。このようなアポトーシス誘導剤は、一般的な医薬製剤の形をはじめとして、使用目的等に応じて各種剤型のものとすることができる。例えば、液剤、錠剤、粒剤、粉剤、カプセル剤などの剤型が挙げられる。 このようにアポトーシス誘導剤として用いる場合の投与量は、適用する疾患の種類や症状等により異なり、一義的に定めることは困難であるが、一般に成人1日あたり0.1〜40mg/kg体重、好ましくは0.5〜20mg/kg体重である。 【0022】 【実施例】 以下において、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0023】 調製例1(コウタケ抽出物の調製) 福島県産のコウタケ(Sarcodon aspretus(Berk.)S.Ito)の乾燥品103.3g(含水率3.7%)を粉砕後、アセトン中で攪拌抽出した。次いで、ろ過して溶出液を集め、ロータリーエバポレーター(40℃)にて濃縮して、コウタケ抽出物5.27gを得た。 【0024】 実施例1(コウタケ抽出物についてのがん細胞の増殖阻害試験結果及びアポトーシス誘導効果の確認試験結果) (1)がん細胞の増殖阻害試験 調製例1で得られたコウタケ抽出物のヒト前骨髄性白血病細胞株HL60(以下、HL60細胞と称する。)の増殖に及ぼす影響は、1×105個cells/mlとなるように播種したHL60細胞に、調製例1で得られたコウタケ抽出物を0.1mg/mlとなるように加え、24時間培養後、トリパンブルー色素排除能を示す生細胞数を血球計算盤を用いて測定して検討した。その結果を、コウタケ抽出物を全く加えなかったコントロールの結果と共に図1に示す。なお、培地としては、10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地を用い、37℃、相対湿度100%で培養した。 【0025】 図1によれば、コウタケ抽出物を加えた場合、コウタケ抽出物を全く加えなかったコントロールと比べて、生細胞数が著しく減少し、がん細胞の増殖抑制に有効であることが分かった。 【0026】 (2)アポトーシス誘導効果の確認試験 調製例1で得られたコウタケ抽出物のアポトーシス誘導効果は、調製例1で得られたコウタケ抽出物を培地1mlあたり0.1mgをHL60細胞に添加し、約20時間培養後に、アポトーシスに特徴的なDNAのヌクレオソーム単位での断片化を検出することにより、及び核の凝縮・断片化を観察することにより確認した。なお、培地としては、10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地を用い、37℃、相対湿度100%で培養した。 DNAのヌクレオソーム単位での断片化は、試料を添加して培養したHL60細胞を回収し、Lysis緩衝液を加えて細胞を溶解した後、リボヌクレアーゼ(RNase)、プロテイナーゼ(Proteinase)K で処理し、エチレンブロマイドを含む2%アガロースゲルで電気泳動してUVトランスイルミネーター上で観察した。結果を、コウタケ抽出物を全く加えなかったコントロールの結果と共に図2に示す。 核の凝縮・断片化は、試料を添加して培養した細胞を回収後、10%グルタールアルデヒド/PBSで固定し、ヘキスト33258で核DNAを蛍光染色して蛍光顕微鏡で観察した。結果を図3に示す。また、コウタケ抽出物を全く加えなかったコントロールの結果を図4に示す。 【0027】 その結果、コウタケ抽出物を加えて培養した細胞のDNAは、アポトーシス特有のヌクレオソーム単位の断片化(図2)と、核の断片化と凝縮(図3)を示し、アポトーシスであることが明らかとなった。 【0028】 以上のように、コウタケ抽出物を、ヒト前骨髄性白血病細胞(HL60細胞)の培養液に添加したところ、顕微鏡下でアポトーシス小体形成等のアポトーシス特有の形態変化が観察された。また、この細胞のDNAをアガロースゲル電気泳動に供した結果、アポトーシス特有のDNAの断片化が認められ、アポトーシスであることを確認した。 これらの結果から、コウタケ抽出物は、がん抑制の重要な抑制機構であるアポトーシス誘導機能を有し、がん細胞の増殖抑制に有効であることが明らかとなった。 【0029】 このように、コウタケ抽出物がHL60細胞のアポトーシスを誘導したことから、次の調製例2では、コウタケ抽出物からアポトーシス誘導活性を有する物質の単離を行った。 【0030】 調製例2(エルゴステロールパーオキサイドの単離) 調製例1で得られたコウタケ抽出物5.20gをカラム(Waters社製 OASIS HLBカラム)に添加し、蒸留水、蒸留水:エタノール(8:2、6:4、4:6、2:8)、エタノールで順次溶出し、溶出液をロータリーエバポレーター(40℃)にて濃縮乾固した。蒸留水:エタノール2:8溶出部から、アポトーシス誘導活性を有する画分2.34gを得た。これをヘキサン溶解し、可溶部(2.05g)と不溶部(0.29g)とに分けた。このヘキサン可溶部をシリカゲルカラムに添加し、ヘキサン:酢酸エチル(10:1)、ヘキサン:酢酸エチル(3:1)、メタノールで溶出し、4画分(1:968mg、2:546mg、3:63.3mg、4:351mg)を得た。この中からアポトーシス誘導活性を有する画分3を分取し、シリカゲル薄層クロマトグラフィーにより、2.5%メタノール/ジクロロメタンを展開溶媒に用いて分離し、アポトーシス誘導化合物として物質A13.7mgを単離した。 単離された物質Aについて、機器分析を行った。核磁気共鳴スペクトル(13C、1H、DQFCOCY、HSQC、HMBC、DEPT)は、Bruker DRX800により、CDCl3中、298Kで測定した。 質量(MS)スペクトルは、島津フーリエ変換サイクロトロン共鳴質量分析装置(高分解能)により、エレクトロスプレーイオン化法でイオン化して測定した。分子量は、ナトリウム塩、カリウム塩の双方の計算値と比較・同定した。 【0031】 実施例2(エルゴステロールパーオキサイドについてのがん細胞の増殖阻害試験結果及びアポトーシス誘導効果の確認試験結果) (1)がん細胞の増殖阻害試験 調製例2で得られた物質A、つまりエルゴステロールパーオキサイドのHL60細胞の増殖に及ぼす影響は、5×104個cells/mlとなるように播種した細胞に、調製例2で得られた物質A、つまりエルゴステロールパーオキサイドをそれぞれ10、25、50μMとなるように加え、0〜48時間培養後、トリパンブルー色素排除能を示す生細胞数を血球計算盤を用いて測定して検討した。その結果(物質Aを10μM、25μM、50μMそれぞれ添加した場合の結果)を、調製例2で得られた物質Aを全く加えなかったコントロールの結果と共に図5に示す。 【0032】 図5によれば、調製例2で得られた物質A、つまりエルゴステロールパーオキサイドは、濃度依存的に細胞増殖を抑制し、物質Aを50μM含む培地では12時間後に、物質Aを25μM含む培地では48時間後に、ほぼ完全に細胞を死滅させたことが分かる。 【0033】 (2)アポトーシス誘導効果の確認試験 実施例1の(2)において、調製例1で得られたコウタケ抽出物の代わりに、調製例2で得られた物質A、つまりエルゴステロールパーオキサイドを用いたこと以外は、実施例1の(2)と同様にして、調製例2で得られた物質A、つまりエルゴステロールパーオキサイドのアポトーシス誘導効果を確認した。 細胞のDNAを電気泳動した結果(物質Aを25μM、50μMそれぞれ添加した場合の結果)を、調製例2で得られた物質Aを全く加えなかったコントロールの結果と共に図6に示す。また、物質Aを50μM加えて蛍光染色した結果を図7に、物質Aを25μM加えて蛍光染色した結果を図8にそれぞれ示す。さらに、調製例2で得られた物質Aを全く加えなかったコントロールの結果を図9に示す。 【0034】 その結果、物質A、つまりエルゴステロールパーオキサイドのDNAは、アポトーシス特有のヌクレオソーム単位の断片化(図6)と、クロマチン凝集と核の断片化(図7、図8)を示し、アポトーシスを誘導することが明らかとなった。 【0035】 以上のように、コウタケの抽出物から精製して得られた物質A、つまりエルゴステロールパーオキサイドを、HL60細胞の培養液に添加したところ、顕微鏡下でアポトーシス特有の形態変化が観察された。また、この細胞のDNAをアガロースゲル電気泳動に供した結果、アポトーシス特有のDNAの断片化が認められ、アポトーシスであることを確認した。 これらの結果から、物質A、つまりエルゴステロールパーオキサイドは、がん抑制の重要な抑制機構であるアポトーシス誘導機能を有し、がん細胞の増殖抑制に有効であることが明らかとなった。 【0036】 【発明の効果】 本発明によれば、副作用が少なく、安全性に優れたアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材が提供される。 即ち、本発明のアポトーシス誘導能を有する食品又は食品素材は、食用キノコの一種であるコウタケ抽出物から得られるものであって、副作用が少なく安全性に優れたものである。 従って、本発明は、白血病をはじめとする各種がん疾患の抑制乃至予防に有効に用いることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】実施例1におけるコウタケ抽出物についての増殖阻害試験の結果を示すグラフである。 【図2】実施例1におけるコウタケ抽出物についてのアポトーシス誘導効果の確認試験結果を示す電気泳動写真像図である。 【図3】実施例1におけるコウタケ抽出物についてのアポトーシス誘導効果の確認試験結果を示す蛍光顕微鏡写真像図である。 【図4】実施例1におけるコントロールについてのアポトーシス誘導効果の確認試験結果を示す蛍光顕微鏡写真像図である。 【図5】実施例2におけるエルゴステロールパーオキサイドについてのがん細胞の増殖阻害試験結果を示すグラフである。 【図6】実施例2におけるエルゴステロールパーオキサイドについてのアポトーシス誘導効果の確認試験結果を示す電気泳動写真像図である。 【図7】実施例2においてエルゴステロールパーオキサイドを50μM添加した場合のアポトーシス誘導効果の確認試験結果を示す蛍光顕微鏡写真像図である。 【図8】実施例2においてエルゴステロールパーオキサイドを25μM添加した場合のアポトーシス誘導効果の確認試験結果を示す蛍光顕微鏡写真像図である。 【図9】実施例2においてエルゴステロールパーオキサイドを全く添加しなかったコントロールのアポトーシス誘導効果の確認試験結果を示す蛍光顕微鏡写真像図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501145295 【氏名又は名称】独立行政法人食品総合研究所 【識別番号】391041062 【氏名又は名称】福島県
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| 【出願日】 |
平成15年8月29日(2003.8.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100074077 【弁理士】 【氏名又は名称】久保田 藤郎
【識別番号】100086221 【弁理士】 【氏名又は名称】矢野 裕也
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| 【公開番号】 |
特開2005−73502(P2005−73502A) |
| 【公開日】 |
平成17年3月24日(2005.3.24) |
| 【出願番号】 |
特願2003−209493(P2003−209493) |
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