| 【発明の名称】 |
豆乳の製造方法及び豆腐の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】松浦 勝
【氏名】松浦 恵子
|
| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 大豆を磨砕温度が65℃から78℃で磨砕し、得られた磨砕物を80℃以上の温度に加熱してこれを固液分離することを特徴とする豆乳の製造方法。 【請求項2】 前記大豆が浸漬大豆あるいは無浸漬大豆であることを特徴とする請求項1記載の豆乳の製造方法。 【請求項3】 請求項1又は2記載の方法で得られた豆乳に、ニガリ等の凝固剤を添加して豆腐とすることを特徴とする豆腐の製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、豆乳、特に豆腐用豆乳の製造方法の改良及び豆腐の製造方法に係るものである。 【背景技術】 【0002】 豆乳は健康飲料としてそのまま利用されるだけでなく、ニガリを添加して電子レンジ、蒸し器等で加熱して凝固させ、手作り豆腐としても利用されている。しかしながら、市販されている豆乳の多くは、青豆臭、咽喉刺激性等の嫌味成分があり、飲みにくいという欠点を有している。青豆臭は大豆に含有される酸化酵素により、咽喉刺激性は配糖体分解酵素によって生成するので、大豆組織が破壊される磨砕工程で強く発現する。青豆臭を抑える方法として、酵素の熱失活温度である80℃以上での高温磨砕法が知られている(特許文献1)。しかしながら、大豆を一気に80℃以上で磨砕しようとすると、沸騰状態の熱水の中で磨砕せざるを得ないので、貯蔵蛋白質が過変性を受けてしまい、得られた豆乳のゲル化力が低下してしまう。このため、豆乳飲料として提供することは出来ても豆腐用豆乳として提供することは出来ない。 【0003】 豆乳を牛乳と同じように幅広く普及させるためには、「自然なおいしさを持った飲み物」、「家庭で豆腐作りや湯葉作りに使うことが出来る調理素材」という二つの要素を併せ持つことが必要である。しかしながら、市販されているどの豆乳もこの二つの条件を満たしていないのである。すなわち、必要なことは、青豆臭や咽喉刺激性のような嫌味成分が無く、豆乳本来の味である豆のおいしさを持っており、ニガリを添加すれば豆腐が出来るゲル化力を有する豆乳を製造することである。 【0004】 豆腐用豆乳は、大豆を水に浸漬して十分に膨潤させ水を加えながら磨砕(磨砕温度は20℃〜25℃)し、この磨砕物(以下、呉と称することがある)を80〜100℃に加熱した後固液分離して豆乳とおからに分けて得られる。大豆の酵素は15〜60℃を作用温度域としており、一般的な豆腐用豆乳の作り方では酵素が働き、青豆臭、咽喉刺激性が生成する。また、酸化酵素の働きで豆乳は赤みを増し、ゲル化力は低下する。 【0005】 豆腐用豆乳の製造法において大豆に含有される酵素の作用を抑え、青豆臭や咽喉刺激性の生成を抑える方法として、これまでに低温浸漬、低温磨砕による方法(特許文献2)や、無浸漬大豆を低温で磨砕する方法(特許文献3)が提案されている。しかしながら、低温磨砕で磨砕時の酵素の働きを抑えることが出来ても、磨砕の後に呉を80℃以上の高温に上げて酵素を熱失活させるまでは酵素は生きており、酵素は働くチャンスを待っている。それ故、これらの方法では呉を搬送する際には二重管を用いて外側に冷媒を流して徹底的に冷やし、なお且つ呉加熱の際には急速に昇温させるというエネルギー的にも装置的にも極めて無理をしたシステムを取らざるを得ないのである。それでも80℃までの温度上昇の過程で酵素の作用温度域を通過するので、このシステムで酵素反応を完璧に抑えることは不可能である。このため酵素を完璧に抑えることの出来る、新しい有効な豆腐用豆乳の製造法が望まれているのである。 【特許文献1】特公昭56−50818号公報 【特許文献2】特公昭35−11593号公報 【特許文献3】特許第2858984号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明者らは豆乳製造工程中での酵素の作用を完全に排除するため、大豆を酵素の働かない高温域で、しかも貯蔵蛋白質の熱による過変性が起こらない温度域で磨砕することによって、磨砕終了までの酵素の働きを抑え、その上で呉を80℃以上に加熱して酵素を失活させれば、目的とする豆乳が製造できるという知見を得たのである。 【0007】 本発明は、青豆臭、咽喉刺激性が無く、ミルクぽい感じのするコクがあり、赤みもなく、口当たりがよく、飲み易い豆乳を製造することのできる方法及びその豆乳を用いた豆腐の製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 すなわち、本発明の豆乳の製造方法は、大豆を65℃〜78℃で磨砕し、得られた磨砕物を80℃以上の温度に加熱してこれを固液分離することを特徴とする。 【0009】 本発明で用いられる大豆は、全粒大豆または脱皮大豆である。大豆は浸漬して用いても、浸漬せずに用いても良い。このような大豆をそのまま磨砕機にかけ磨砕するのであるが、この時の温度は酵素が働かない温度域であり、且つ貯蔵蛋白質の熱による過変性が起こらない温度域である65℃〜78℃の温度範囲で行うことが大切である。この磨砕処理における下限温度はより好ましくは68℃、最も好ましくは69℃であり、上限温度はより好ましくは75℃、最も好ましくは73℃である。そして、磨砕して得られた呉(磨砕物)を80℃以上の温度に昇温して酵素を熱失活させるのであるが、この呉を加熱装置に導入するまでの間に、呉の品温が65℃未満に下がることの無いように留意する。 【0010】 本発明の豆腐の製造方法は、本発明の豆乳の方法で得られた豆乳に、ニガリ等の凝固剤を添加して豆腐とすることを特徴とする。 【発明の効果】 【0011】 本発明の豆乳の製造方法によれば、青豆臭、咽喉刺激性が無く、ミルクぽい感じのするコクがあり、赤みもなく、口当たりがよく、飲み易い豆乳を製造することができる。本発明の豆乳の製造方法によって製造された豆乳は豆乳飲料とすることができることは勿論、この豆乳にニガリ等の凝固剤を添加することによって青豆臭がなく、喉越しがよい豆腐を得ることができ、また湯葉、油揚げ等に用いることができる。さらに得られた豆乳は、乳酸菌を添加することによって風味がよく、肌理の滑らかなヨーグルトを得ることができる他、アイスクリーム、チーズ等に用いることもできる。また、本発明の豆腐の製造方法によれば、青豆臭が無く、喉越しの良い、おいしい豆腐を製造することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 以下に本発明を実施するための最良の形態を添付図面とともに説明するが、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能であることはいうまでもない。 【0013】 図1は、本発明の豆乳の製造方法の工程順の一例を示すフローチャートである。まず、豆乳の原料となる大豆を準備する(ステップ100)。原料大豆としては、全粒大豆または脱皮大豆を用いることができる。この原料大豆は、浸漬(ステップ102)して用いてもよいし、浸漬せずに用いることもできる。この大豆をそのまま磨砕機にかけて磨砕する(ステップ104)。この磨砕機による磨砕処理の温度は酵素が働かずかつ貯蔵蛋白質の熱による過変性が起こらない65℃〜78℃で行う必要がある。この磨砕処理における下限温度はより好ましくは68℃、最も好ましくは69℃であり、その上限温度はより好ましくは75℃、最も好ましくは73℃である。 【0014】 定められた温度帯で磨砕するためには、70℃以上の熱水を大豆と共に磨砕機に投入して行うことが出来る。熱水の使用量は大豆に対して4〜10倍量である。磨砕機は湿式タイプの粉砕機、例えば、縦型磨砕機(増幸産業株式会社製)等であれば良いが、無浸漬大豆を使用する場合は微粉化能力の高い物が必要であり、そのためには例えばトリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機株式会社製)、横型磨砕機(特殊機化工業株式会社製)、超精密カッター(増幸産業株式会社製)等が好ましい。 【0015】 この磨砕によって呉が生成する(ステップ106)。こうして得られた呉は80℃以上に加熱し、90〜120℃で10秒〜3分程度加熱(ステップ108)したのち、100℃以下に冷却し固液分離する(ステップ110)。この固液分離によって呉は豆乳とおからに分離される。固液分離は通常の装置で行うことが出来る。固液分離した豆乳に直接ニガリ等の凝固剤を添加して豆腐とすることができるが、必要に応じて減圧チャンバーに入れて脱気する。 【0016】 さらに125℃以上の温度で殺菌した後、10℃程度に冷却してそのまま容器に充填し豆乳として流通させることが出来る。こうして得られた豆乳は、青豆臭、咽喉刺激性の無い、ミルクぽいコクを有する滑らかなものである。また冷却豆乳に塩化マグネシウム製剤、塩化カルシウム製剤、ニガリ等の凝固剤を添加し、容器に充填密封した後80℃以上の温度で加熱凝固させ豆腐とすることが出来る。こうして得られた豆腐は青豆臭、咽喉刺激性の無い、滑らかな喉越しのものである。本発明で得られた豆乳は、通常の豆腐は勿論のこと、湯葉、油揚げ等に用いることが出来る。また、得られた豆乳は、青豆臭や咽喉刺激性の無いすっきりしたものであるので、豆乳飲料、アイスクリーム、ヨーグルト、チーズ等に用いることが出来る。また、必要に応じて香料、糖類等を添加して豆乳加工品とした場合も、添加した香料等と良くなじみ、違和感の無いおいしい製品を作ることが出来る。 【実施例】 【0017】 以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。 【0018】 (比較例1) 大豆10kgを洗浄後20℃の水50Lに16時間浸漬した。水を切り1℃の水50Lと共に磨砕(磨砕温度8〜11℃、磨砕時間1分間)し、得られた11℃の呉を攪拌機付の二重釜に入れ外部二重管内に蒸気を通して加熱して4分10秒後に呉全体が80℃に達した。さらに加熱して95℃で1分間保持し、スクリュー絞り機に導入して固液分離し豆乳を得た。 【0019】 (比較例2) 大豆10kgを洗浄後20℃の水50Lに16時間浸漬し、20℃の水50Lと共に磨砕(磨砕温度24〜25℃、磨砕時間1分)し、得られた25℃の呉を攪拌機付き二重釜に入れ外部二重管内に蒸気を通して加熱して3分20秒後に呉全体が80℃に達した。さらに加熱して95℃で1分間保持し、スクリュー絞り機に導入して固液分離し豆乳を得た。 【0020】 (比較例3) 大豆10kgを洗浄後20℃の水50Lに16時間浸漬し、水を切り60℃の水50Lと共に磨砕(磨砕温度44〜43℃、磨砕時間1分間)し、得られた43℃の呉を攪拌機付き二重釜に入れ外部二重管内蒸気を通して加熱し、2分25秒後に呉全体が80℃に達した。さらに加熱して95℃で1分間保持し、スクリュー絞り機に導入して固液分離し豆乳を得た。 【0021】 (比較例4) 大豆10kgを洗浄後20℃の水50Lに16時間浸漬し、水を切り78℃の熱水50Lと共に磨砕(磨砕温度61〜60℃、磨砕時間1分間)し、得られた60℃の呉を攪拌機付き二重釜に入れ外部二重管内に蒸気を通して加熱し、1分54秒後に全体が80℃に達した。さらに加熱して95℃で1分間保持し、スクリュー絞り機に導入して固液分離し豆乳を得た。 (実施例1) 【0022】 大豆10kgを洗浄後20℃の水50Lに16時間浸漬し、水を切り95℃の熱水50Lと共に磨砕(磨砕温度74〜72℃、磨砕時間1分間)し、得られた72℃の呉を攪拌機付き二重釜に入れ外部二重管内に蒸気を通して加熱し、1分20秒後に全体が80℃に達した。さらに加熱して95℃で1分間保持し、スクリュー絞り機に導入して固液分離し豆乳を得た。 【0023】 (比較例5) 大豆10kgを洗浄後20℃の水50Lに16時間浸漬し、水を切り98℃の熱水50Lと共に磨砕した。この磨砕処理にあたっては、磨砕温度を80℃以上に保つために直接蒸気を吹き込んだ(磨砕温度82〜81℃、磨砕時間1分間)。得られた81℃の呉を攪拌機付き二重釜に入れ外部二重管内に蒸気を通して加熱して95℃で1分間保持し、スクリュー絞り機に導入して固液分離し豆乳を得た。 【0024】 上記比較例1〜5及び実施例1で得られた各豆乳を20℃に調整し、蛋白質濃度、a値、青豆臭、咽喉刺激性の強さ、及びミルクらしさの風味を示す度合いについて測定及び官能検査を実施し、その結果を表1に示した。さらに、各豆乳を蛋白質濃度5%に調整し、その1Lに対して10%グルコノデルタラクトン溶液30mLを添加し、300mL容ポリプロピレン容器に充填密封し、熱水中で90℃、40分間加熱、凝固させ豆腐とした。この豆腐について硬さと凝集性を測定し、その結果を表1に併せて示した。 【0025】 【表1】
【0026】 表1における注)は次の通りである。 1)蛋白質濃度:TN×6.25 2)a値:測色色差計(日本電色工業社製)で測定。a値は近似的に赤みを示し、数値が高い程赤みが強く、酸化が進んでいることを示す。 3)青豆臭:10人の試飲者による官能検査(+;青豆臭が感じられると評価されたもので、+の数が多いほど強く感じられたことを示す。−;青豆臭が殆ど感じられないと評価されたもの。)。 4)咽喉刺激性:10人の試飲者による官能検査(+;咽喉刺激性が感じられると評価されたもので、+の数が多いほど強く感じられたことを示す。−;咽喉刺激性が殆ど感じられないと評価されたもの。)。 5)ミルクらしさ:10人の試飲者による官能検査(+;ミルクらしさの風味有、−;ミルクらしさの風味無)。 6)豆腐の硬さ:テンシプレッサー(タケトモ電機製)を用い、17mm角に切り出した豆腐を圧縮し、破断するまでの距離(mm)を硬さとした。 【0027】 表1から明らかなように、実施例1において得られた豆乳は青豆臭、咽喉刺激性が殆ど感じられず、口あたりが良く、飲みやすい豆乳であった。また、赤みは殆ど無く、豆腐とした場合もしっかりとした硬さのある、おいしいものであった。 【0028】 これに対し比較例1において得られた豆乳は、赤みは殆ど無かったが、僅かに青豆臭、咽喉刺激性が感じられ、さっぱりしているが、おいしさの感じられないものであった。比較例2〜4において得られた豆乳は青豆臭と咽喉刺激性の強いもので、飲みにくいものであった。特に比較例3,4において得られた豆乳は、赤みが強く、豆腐は柔らかくおいしくないものであった。比較例5において得られた豆乳は青豆臭、咽喉刺激性は殆ど無く、赤みも無く豆乳としては飲み易いものであったが、凝固剤を添加した凝固物は硬さがなく、豆腐とは言えないものであった。 【0029】 また、比較例1〜5及び実施例1で得られた各豆乳の蛋白質濃度を5%に調整し、その豆乳に1.5%の砂糖を添加し、ついでミルクフレーバーを添加してフレーバリングを行った豆乳を作り、10人の試飲者による試飲後の感想をまとめ、その結果を表2に示した。 【0030】 【表2】
(実施例2) 【0031】 大豆20kgを洗浄後23℃の水200Lで16時間浸漬し、水切りして44kgの浸漬大豆を得た。この浸漬大豆(5kg/分)を85℃の熱水(9.6L/分)と共に市販の縦型磨砕機で磨砕(磨砕温度70〜68℃、磨砕時間0.5分間)した。これを直ちに加熱機に導入し、100℃15秒間の加熱を行った後、80℃まで冷却してスクリュー絞り機で豆乳とおからに分離した。得られた豆乳は、赤みは無く、青豆臭、咽喉刺激性が殆ど感じられず、ミルクぽさを有しコクのある滑らかなものであった。また、この滅菌豆乳20リットルに対して塩化マグネシウム製剤60g、塩化カルシウム製剤5gを添加したのち、300ml容ポリプロピレン容器に充填密封し、熱水中で85℃、60分間加熱、凝固させ豆腐とした。この豆腐は青豆臭が無く、喉越しの良い、おいしい豆腐であった。 【0032】 (実施例3) 脱皮大豆(2.5kg/分)を連続的に、80℃の熱水(11L/分)と共に市販の横型磨砕機で磨砕(磨砕温度69〜70℃、磨砕時間1分間)し、これを直ちに加熱機に導入して100℃15秒間の加熱を行った。これを80℃まで冷却してスクリュー絞り機で豆乳とおからに分離した。これを減圧チャンバーに導入して脱気し、135℃、10秒間の加熱による殺菌処理を行った後に10℃まで冷却した。得られた豆乳は、赤みは無く、青豆臭、咽喉刺激性の無い、ミルクぽい感じのするコクのある豆乳であった。この豆乳に市販の乳酸菌を添加し、37℃で一晩保持してヨーグルトとしたが、風味の良い肌理の滑らかなおいしいヨーグルトであった。 【図面の簡単な説明】 【0033】 【図1】本発明の豆乳の製造方法の工程順の一例を示すフローチャートである。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】503276986 【氏名又は名称】松浦 勝
|
| 【出願日】 |
平成15年7月31日(2003.7.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080230 【弁理士】 【氏名又は名称】石原 詔二
|
| 【公開番号】 |
特開2005−46118(P2005−46118A) |
| 【公開日】 |
平成17年2月24日(2005.2.24) |
| 【出願番号】 |
特願2003−284013(P2003−284013) |
|