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【発明の名称】 大豆麹によるγ−アミノ酪酸高生産法
【発明者】 【氏名】今野 宏

【氏名】佐塚 隆美

【氏名】中島 敏郎

【要約】 【課題】何ら機械加工処理を施さない大豆を麹原料として用いて、栄養価に優れた大豆麹を作る方法を開示する。

【解決手段】大豆を乳酸あるいはクエン酸を含む浸漬水に吸水させてから蒸煮し冷却後、これに一定のα化された米粉等の澱粉末をγ−アミノ酪酸高生産性純白種麹(受託番号:FERM P−19411)とともに接種して除湿保温することにより純白の高密度の菌糸に覆われた繭玉状のγ−アミノ酪酸などのアミノ酸に富む栄養豊かな健康食品素材としての美味な乾燥無塩大豆麹が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆を不揮発性の有機酸である乳酸水あるいはクエン酸水に浸漬し吸水させ得られた大豆を蒸煮した後放冷し、これに一定量のアルファー化米粉等の澱粉末とともにγ−アミノ酪産高生産性種麹を接種して、25〜30℃の温度条件下で除湿をしながら製麹することを特徴とする大豆麹の製造方法
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は大豆を麹原料としてこれに麹菌を培養した大豆麹の製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】味噌は、日本の代表的な醗酵調味料のひとつであり使用する麹の原料により米味噌、麦味噌、豆味噌及び調合味噌に大別される。豆麹の製造は麹原料として大豆豆を用いてこれを水洗後水に浸漬し収水させたものを蒸煮してから放冷し、これに種麹を散布して25−30℃でおおよそ40時間前後保つことにより大豆麹を製造する方法と蒸煮大豆を熱いうちに(60℃前後)の1−3cm径ぐらいの適当な大きさの玉に作りあげ上記のような方法で製造する方法がある。
【0003】
種麹は香煎(大麦または裸麦を炒って粉にしたもの)で増量したものを冷えた丸大豆あるいは味噌玉に散布、混合する方法がある。大豆麹自体は散麹であれ味噌玉麹であれ、その使用目的のほとんどが豆味噌の製造や大豆散麹の添加により、中性もしくは酸性プロテアーゼの酵素作用により旨味の向上、ヘミセルラーゼの酵素作用による味噌の色調とりわけ赤味の冴えが向上することを目的に使用されている。
【0004】
大豆麹とは上述のような味噌醸造を目的とした用途にしか用いられない。このような味噌醸造を目的とした大豆麹の製造は難しく、八丁味噌などに見られるように、伝統的な熟練した術がものをいう。例えば、高蛋白原料であるため容易に納豆菌のような雑菌がはびこり、麹の品質を著しくそこなうことが多く大豆の原料処理や、麹の製造方法に工夫がなされている。その一例として散麹(大豆の粒のままの麹)の場合、皮付大豆であると種皮と胚の間にあるご液(アメ)が除去できず雑菌が多くなりやすいので、味噌醸造および丸大豆麹製造では、脱皮大豆を使用することが多い。また皮付大豆であると極端に味噌の着色が進行する為、皮付丸大豆は好まれない。当然ながら脱皮することにより大豆は本来の丸い型を維持できずふたつに割れてしまう。
【0005】
味噌醸造においては麹の使用目的はその酵素活性にありその麹の形状、特に麹菌糸の大豆粒へのくい込みはあまり考慮されないのが現状である。
【0006】
一方で味噌の持つ多くの生理活性機能は明らかになってきている。これはとりもなおさず、大豆のもつ蛋白、ペプチド、フラボノイド、カロチノイド、ビタミンE、食物繊維等の成分によるもので、コレステロール低下作用、抗高脂血症、抗癌作用、細胞増殖作用、抗酸化作用、活性酸素除去、抗アレルギー、整腸作用等の既知の多くの生理機能があげられる。
【0007】
しかし、これだけの数多くの有効性が知られながら多量に味噌を摂取することは、味噌の含む12〜17%という高い食塩濃度から出来ない。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで発明者らは多くの生理活性作用の知られている大豆をより消化性を向上させ、無塩発酵させることにより、大豆麹を健康食品素材として多量に摂取可能な形状に出来ないか鋭意日々検討を重ねた結果、麹菌糸に覆われた美しい繭玉状の無塩大豆麹の製造法を完成するに至った。
【0009】
本発明の課題は丸大豆のまま、いかに種皮と胚の間にあるご液中に生育しやすい納豆菌のような雑菌を増殖させないかにある。また、丸大豆の形状を維持したままγ−アミノ酪酸生産性の高い純白麹菌(受託番号:FERM P−19411)を種こうじに用いα化された米粉やジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン等の澱粉含有粉の添加により従来の大豆の持つC/N比を変え麹菌が増殖しやすくなり、美しい純白の菌糸に覆われた栄養価に優れた無塩大豆麹の製造方法を開示することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】大豆麹、特に散麹の場合、雑菌汚染を防止する意味で有機酸による浸漬大豆のPH調整を検討したところ一般細菌数を大豆麹1gあたり10レベルにする為には酢酸0.2%、乳酸1.0%、クエン酸3.0%の水溶液が有効である事を知った。酢酸は低濃度で丸大豆の種皮と胚の間にあるご液中の雑菌の増殖を低減化させたが後の大豆の蒸煮処理により揮発してしまう為、その後の処理を誤ると雑菌の再侵入を拒むことができない。
【0011】
そこで不揮発性の乳酸およびクエン酸がより有効である事を明らかにした。大豆の4倍量の1・0%の乳酸及び3.0%クエン酸に3〜4時間浸漬する事により酸性下では増殖できない納豆菌等の雑菌の極めて少ないクリーンな大豆散麹をつくることが出来る。浸漬処理された丸大豆は充分に吸水し、加圧もしくは常圧下で蒸煮あるいは蒸熱処理し、放冷後α化された米粉等の澱粉末を含有する選別された専用種麹を散布する。
【00012】
【発明の実施の形態】大豆麹は味噌の原料としてのみ利用されてきたが本発明者は大豆麹の持つ極めてユニークなアミノ酸組成から健康食品素材の可能性を検討し、大豆麹に含まれる今までにない高付加価値を付与する為、思考錯誤を繰り返した末に大豆麹1グラム当たりの麹菌体量の多い大豆麹を作る方法を考案した。このように麹菌体量の多い大豆麹は有機酸浸漬処理されているにもかかわらず、発酸中に完全に分解され、呈味に酸味を感ずることはない。
【0013】
この様な大豆麹をつくるにはC/N比(炭水化物/蛋白質の比率)が麹菌体量の増減に大きく影響する。すなわち、大豆単用(C/N比0.57)の大豆麹は麹菌の生育がやや劣り、かつ酸性プロテアーゼ(PH3.0)は極めて微弱であるが大豆に対してα化米粉等の澱粉末を混ぜてC/N比を高めることにより、より麹菌の生育も良くなり、酸性プロテアーゼの著しい増強及び中性プロテアーゼの増強も見られた。表1に示すように菌体量はC/N比1.08すなわち大豆80に対して20のα化米粉等の澱粉末の添加により大豆表層の菌糸の増殖の良好な厚い繭状の大豆麹が得られる。
【0014】
このような麹によって作られアミノ酸は従来の大豆麹と異なったユニークなアミノ酸組成を有する。
【0015】
本発明に用いられる米粉等の澱粉末は180℃乾熱で6時間減菌、α化した物を100メッシュのフルイ通過物が好ましい。
【0016】
本発明にかかる大豆麹に用いられる種麹は(株)秋田今野商店製のγ−アミノ酪酸生産性の高い種麹Aspergillus oryzae 32−KA(受託番号:FERM P−19411)が有効である。発明者らは、γ−アミノ酪酸に限らず使用する麹菌菌株間には著しいアミノ酸生成に差があることを明らかにし、γ−アミノ酪酸高生産性の当該純白麹菌を選択した。
【0017】
表2に示した例は40%精米歩合の吟醸酒用の山田錦を用いた米麹でのアミノ酸組成である。基質が澱粉主体の米麹ですら本発明の用いられるγ−アミノ酪酸高生産性株Aspergillus oryzae 32−KAは通常用いられる味噌用の種麹(No.183)より約4倍近いγ−アミノ酪酸生産能が確認されている。
【0018】
【実施例】丸大豆を充分に水洗いした後、乳酸1.0%あるいはクエン酸3.0%を含む大豆原料の4倍量の水に3〜4時間浸漬する。浸漬後は完全に水を切り大豆表面の付着水を水切りする。蒸煮を行うと処理大豆の水分が多くなるので蒸熱処理が好ましい。大豆品質などにより異なるが60〜90分加圧蒸しを行う。処理後の大豆の硬度は上皿時計秤を用いて、30℃前後に冷却した蒸煮大豆を上皿に乗せ一粒ずつ人差し指で押し潰し、潰れるときに加わった重さを硬度として表したところ500g前後が適当であった。
【0019】
蒸熱後十分に冷却し、大豆原料重量に対して20%量のα化済みの100メッシュを通過した米粉等の澱粉末と共に(株)秋田今野商店製32−KA(FERMP−119411)種麹(1X10/g)を原重料200kgに対して70gを30℃にて散布し無菌的な攪拌を行い。麹蓋の底板をステンレスの網などで通気性を良くするか床に目の粗い布を敷き層高5cm以下に引き込む。その際の乾湿差はほとんどとらない。表面通風を行う方が良く内部通風を行うより麹菌体の大豆表層への廻りは良好である。
【0020】
米麹のように盛、手入れは必要がない。本操作を行う事によりせっかく形成されるつつある麹菌糸がつぶれて良好な繭状の大豆麹ができない。しかし網や大豆粒と粒の接した菌糸がはがれ落ちやすいので引き込み後20時間前後で大豆粒をこわさないように盛込み槽の上下を天地がえしする。その時期から徐々に除湿を行い表面の菌糸体の水分を除去していく。そのためには乾湿差を5度以上取ることが望ましい。
【0021】
品温は35℃以上になると粘りやアンモニア臭が発生してくるので室温は25℃にコントロールして品温は30℃以下にする。引き込み後45〜47時間で出麹となるがそこで大豆麹の水分はまだ38−40%近くあるのでそのまま放置するとアンモニア臭が発生してくるのでただちに1cmほどの盛り厚にして一昼夜45℃乾燥処理することにより10%以下の水分量となり保存性が良好となる。以上のような操作により1gの大豆麹あたりの麹菌体量の多いγ−アミノ酪酸高含有の保存性良好な大豆麹が出来上がる。
【0022】
【発明の効果】表3に示すように、本願製法によって得られる大豆麹の特徴は血圧上昇を抑制、潰瘍等臓器炎症の治療の促進、制癌効果、免疫調節機能作用、緑内障を防ぐ等種々の生理作用を有することが知られているγ−アミノ酪酸を著量に生産することが特徴的である。
【0023】
γ−アミノ酪酸は本来蛋白構成アミノ酸でない為、原料中には僅かしか含まれていないが、本願製法によって得られる大豆麹には、発芽玄米中に含まれるγ−アミノ酪酸の約5倍から8倍の高含有量が認められる。
【0024】
さらに
【図1】
【図2】
【表1】


に示すように当該処理により製造された大豆麹は1gあたりの麹菌体量が通常の大豆麹と比べて2.4倍と高く繭状の大豆麹が得られる。このような厚い繭状の麹菌体はキチン、グルカンから構成され、免疫増強活性、制癌効果なども知られており、得られた大豆麹は健康食品素材として極めて高い効果が期待できる。
【0025】
このようにして製造された大豆麹は
【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


に示すように栄養価に富み、味噌として摂取する大豆や米麹、豆麹に比べ食塩がまったく含有されていないことから嗜好性も高く、美味でかつ多量に摂取出来ることが特徴的である。
【図面の簡単な説明】
【表1】大豆麹製造上の原料配合(C/N)が及ぼすプロテアーゼ及び麹菌体量の相関である。
【表2】各麹菌株による吟醸米麹のアミノ酸組成である。
【表3】当該処理により製造された大豆麹のアミノ酸組成である。
【表4】当該処理により製造された大豆麹のビタミン組成である。
【表5】当該処理により製造された大豆麹の食品基礎成分である。
【表6】当該処理により製造された大豆麹の金属ミネラル類含有成分である。
【表7】当該処理により製造された大豆麹のプロテアーゼ活性である。
【図1】当該処理により製造された大豆麹の表面写真。
【図2】当該処理により製造された大豆麹の断面写真。




【出願人】 【識別番号】503280293
【氏名又は名称】今野 宏
【識別番号】503280008
【氏名又は名称】佐塚 隆美
【識別番号】503280031
【氏名又は名称】中島 敏郎
【出願日】 平成15年6月27日(2003.6.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−13205(P2005−13205A)
【公開日】 平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願番号】 特願2003−205577(P2003−205577)