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【発明の名称】 殺菌された穀粉の製造方法
【発明者】 【氏名】川崎貞道
【住所又は居所】熊本県熊本市花園1丁目25番1号 熊本製粉株式会社内

【氏名】山口祥夫
【住所又は居所】熊本県熊本市花園1丁目25番1号 熊本製粉株式会社内

【要約】 【課題】穀物の香、味を保ちながら、効果的に殺菌された穀粉を製造する方法の提供。

【解決手段】炭素数1乃至3の直鎖アルコールを穀物の表面に付着させ、穀物を加熱した後に、該穀物を製粉することを特徴とする穀粉の製造方法であり、好ましくは、前記炭素数1乃至3の直鎖アルコールの濃度が40〜100質量%で、前記付着量が穀物100質量部に対し直鎖アルコール0.5〜10質量部であり、前記加熱は穀温が50℃〜90℃になるように加熱する穀粉の製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1乃至3の直鎖アルコールを穀物の表面に付着させ、加熱した後に、該穀物を製粉することを特徴とする穀粉の製造方法。
【請求項2】
前記炭素数1乃至3の直鎖アルコールの濃度が40〜100質量%で、前記付着量が穀物100質量部に対し直鎖アルコール0.5〜10質量部である、請求項1に記載された穀粉の製造方法。
【請求項3】
前記加熱は穀温が50℃〜90℃になるように加熱する請求項1又は請求項2に記載された穀粉の製造方法。
【請求項4】
前記直鎖アルコールがエチルアルコールである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された穀粉の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された方法により製造された穀粉。
【請求項6】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載された穀物がそばである請求項5に記載の穀粉
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は殺菌された穀粉の製造方法に関し、更には穀物の香味を損なわない殺菌された穀粉の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
穀物の表層部分には一般生菌や大腸菌群が多く付着しており、これら一般生菌や大腸菌群が付着した穀物を製粉すると、菌類が粉内に混入するという問題があった。特にそばは、そば殻とそば実の間隙にも多くの雑菌が存在するため、そば殻を除去したそば実の表層部分にも前記一般生菌や大腸菌群が多く存在しており、そば粉内への雑菌類の混入は問題であった。又、石臼挽き粉の場合には、通常のロール式製粉に比べ穀物の表層部分が挽き込まれ、粉にされてしまうため、比較的菌数が多く残存していた。
【0003】
このため、そば等の穀物を殺菌する方法は従来から検討されており、極性有機溶媒の水溶液による処理をし、次いでソルビット溶液による処理をした後に、さらに低温乾燥による処理する方法が知られている(特許文献1を参照。)。又、玄そばを水蒸気等による加熱殺菌をした後に、保存又は製粉する方法(特許文献2、及び3を参照。)や、玄そば又はそば実を加熱水蒸気や飽和水蒸気により殺菌する方法が知られている(特許文献4、及び5を参照。)。
【0004】
しかしながら、これらの殺菌方法では穀物を高温にさらすことで穀物が持つ香味を損なうか、又は殺菌温度が低く上記の菌類等を十分に殺菌できないという問題があった。又、従来から殺菌に用いられているエチルアルコールを使用した場合には、穀物がもつアルコール分解酵素によってエチルアルコールが分解されてアルデヒドを生じ、異臭が発生するという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭57−163454号公報
【特許文献2】
特開昭53−012441号公報
【特許文献3】
特公平 3−032346号公報
【特許文献4】
特公平 4−025783号公報
【特許文献5】
特開平 7−000834号公報
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、穀物の香、味を保ちながら、効果的に殺菌された穀粉を製造する方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、
アルコール殺菌と加熱殺菌とを併用することで加熱温度、加熱時間を減少させ、穀物がもつ香、味を損なうことなく、一般生菌や大腸菌群の殺菌が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は
<1> 炭素数1乃至3の直鎖アルコールを穀物の表面に付着させ、穀物を加熱した後に、該穀物を製粉することを特徴とする殺菌された穀粉の製造方法である。
【0008】
<2> 前記炭素数1乃至3の直鎖アルコールの濃度が40〜100質量%で、前記付着量が穀物100質量部に対し直鎖アルコール0.5〜10質量部である前記<1>に記載された穀粉の製造方法である。
【0009】
<3> 前記加熱は穀温が50℃〜90℃になるように加熱する前記<1>又は<2>に記載された穀粉の製造方法である。
【0010】
<4> 前記直鎖アルコールがエチルアルコールである前記<1>ないし<3>のいずれかに記載された穀粉の製造方法である。
【0011】
<5> 前記<1>乃至<4>のいずれかに記載された方法により殺菌された穀粉である。
【0012】
<6> 前記<1>乃至<4>のいずれかに記載された穀物がそばである前記<5>に記載された穀粉である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、炭素数1乃至3の直鎖アルコールを穀物の表面に付着させ、穀物を加熱した後に、該穀物を製粉することを特徴とする殺菌された穀粉の製造方法である。アルコール殺菌を加熱殺菌と併用することで加熱温度、加熱時間を減少させ、穀物がもつ香、味を損なうこと無く、一般生菌や大腸菌群の殺菌が可能となる。さらに、アルコール殺菌後に加熱処理することで、アルコールの蒸発、及び穀物に含まれるアルコールデヒドロゲナーゼを失活させることができ、異臭がでないアルコール殺菌が可能となる。以下本発明について詳説する。
【0014】
本発明において穀物とは、そば、小麦、ライ麦、燕麦、大麦、米、粟、黍、豆類等をさす。前記小麦、大麦、ライ麦、米、粟、黍、豆類等を本発明の穀物とする場合は、一般的な精選工程を通過し、表面に付着したほこりや小石などを除去したものが用いられる。又、前記そばの場合は、玄そばから殻を取り外し、そば実にした状態のものが用いられる。
【0015】
本発明において殺菌の対象となる一般生菌とは中温性好気性菌を指し、具体的には、Micrococcus、Bacillus、Staphylococcus属等を挙げることができる。又、大腸菌群としては、具体的には Escherichia、Enterobacter属等を挙げることができ、その中で大腸菌とはEscherichia属の中のEscherichia coliをいう。
【0016】
前記炭素数1乃至3の直鎖アルコールとしてはメチルアルコール、エチルアルコール、及びプロピルアルコールを挙げることが出来る。中でもエチルアルコールが特に好ましい。アルコールの濃度は40〜100質量%が好ましく、中でも60〜100質量%が殺菌の効果の観点からはより好ましい。
【0017】
前記アルコールを穀物へ付着させる方法としては特に制限されず、浸漬する方法、噴霧する方法、その他穀物の表面に液体を付着させるいずれの方法をも用いることが出来る。中でも噴霧する方法が付着量の調整が容易であることから好ましい。噴霧する方法としては特に制限はされず、粒子サイズも特に制限はされないが、粒子サイズは100〜400μm程度が穀物表面への付着効率の観点から好ましい。
【0018】
前記アルコールの穀物への付着量としては、穀物100質量部に対してアルコール0.5〜10質量部が好ましく、中でも1〜5質量部がより好ましい。アルコールを付着させた穀物は、1〜3分間静置、又は撹拌させることが好ましく、それによりアルコールを穀物表面に満遍なく付着させ、且つアルコールの殺菌効果を高めることが出来る。
【0019】
前記によりアルコールが付着した穀物は、その後加熱殺菌する事により更に殺菌効果が高められる。加熱の方法としては特に制限されず、乾燥熱風の送風、蒸気の送風、加熱ドラム内への搬送、その他の通常穀物の加熱に用いられるいずれの方法も使用することが出来る。これらの中でも高温蒸気を噴霧する殺菌庫内において、静置、又は撹拌して加熱殺菌する方法が、短時間で穀温を上げることができ、殺菌効率の点からは好ましい。前記加熱は穀温が50〜90℃となるように加熱することが好ましく、更に好ましくは60〜80℃となるように加熱することである。加熱はアルコールが蒸発し穀温が前記の温度以上に上昇する前に停止し、穀物を殺菌庫から搬出する。具体的には穀温を市販の防水型食品用温度計等により測定し、殺菌庫内における静置、又は撹拌時間を調整する。
【0020】
加熱後は室温による送風乾燥を行い、穀物がもとの水分になるように調整する。水分調整後の穀物は通常の方法による貯蔵しても、殺菌がされているために、菌の増殖や腐敗を防止することができ、長期保存が可能であり、調整直後に製粉せずに貯蔵する場合も本発明による穀物の殺菌は有効である。
【0021】
水分調整後の穀物を製粉する方法としては特に限定されず、ロール、石臼、ピンミル、及びその他の通常用いられる方法で製粉することができる。中でも本発明は、石臼による製粉の場合のように穀物の表層部分が挽き込まれ、穀粉にされてしまう場合に特に有効である。
【0022】
【実施例】
以下に本発明の内容を、実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお以下の記載において単に「部」というときは質量部をいう。
(1)穀物そばについての実施例
《実施例1〜4》
中国産マンカン種の玄そばから殻を取り外したそば実に、表1に示す通り、濃度70質量%、温度20℃のエチルアルコールをそば実100部に対し1及び3部噴霧した(なお表1においては、エチルアルコールの噴霧量を対穀物質量%で表示した。以下、表3、表15においても同様である。)。その後1分静置後に、蒸気殺菌装置(商品名:蒸しロボットJO、株式会社オカダ製)により0.15Kg/mの蒸気圧を噴霧して、庫内温度を95℃及び100℃に設定した殺菌庫内に、前記アルコール処理をしたそば実を120秒間静置して加熱殺菌を行った。庫内経過時間ごとのそば実の温度を、防水型食品用温度計(商品名:SWP−01、株式会社佐藤計量器製作所製)により測定した。結果を表2に示す。
【0023】
殺菌後のそば実は水分がもとのレベルになるように、室温のもとで多翼送風機により5分間送風乾燥を行った。乾燥したそば実について、石臼(オーストリア、モラ社製、A400MSM)を用いて、歩留が90%のそば粉を作成した。
【0024】
上記により作成したそば粉について、そば粉に含まれる菌数の測定、及びそば粉の官能評価を下記の方法で実施した。結果を表1に示す。
【0025】
1.菌数測定:一般生菌数、大腸菌群数、大腸菌数について、AOAC法により実施した。3M社製のペトリフィルムを用い、35℃で48時間培養後、培地に赤色でガスの発生がみとめられるコロニーを大腸菌群として、培地の色が青色になっているコロニーを大腸菌として、各々のコロニー数をカウントした。
2.官能評価:200ccのカップにそば粉20g、熱湯30gを入れ、 すばやく50回攪拌したものを試料とした。評価項目は香、味の2項目とし、それぞれ対照例を3として、次のような5段階評価で実施した。 1=かなり劣る、2=少し劣る、3=同等、4=優れている、5=非常に優れている。評価は5名で行い、得点の平均を結果とした。
【0026】
《比較例1〜2》
実施例1に用いたそば実に、表1に示す通り、濃度70質量%、温度20℃のエチルアルコールを、そば実100質量部に対し1及び3部噴霧するのみで殺菌を行った。噴霧方法は実施例1又は2と同様に行った。殺菌後のそば粉の作成、及び菌数測定、官能評価については実施例1〜4と同様に行った。結果を表1に示す。
【0027】
《比較例3〜4》
実施例1に用いたそば実に、表1に示す通り、実施例1と同様の方法により、庫内温度を100℃に設定した殺菌庫内に、アルコール処理をしないそば実を60及び120秒間静置した加熱のみによる殺菌を行った。庫内経過時間ごとの、そばの実の温度を実施例1〜4と同様にして測定した。結果を表2に示す。殺菌後のそば粉の作成、及び菌数測定、官能評価については実施例1〜4と同様に行った。結果を表1に示す。
【0028】
《対照例1》
実施例1に用いたそば実について、表1に示す通り、殺菌を一切行わずそば粉を作成した。そば粉の作成、及び菌数測定、官能評価については実施例1〜4と同様に行った。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】


【0030】
【表2】


【0031】
表1の結果から、実施例1〜4はいずれも、蒸気殺菌中のそば実の温度が蒸気殺菌のみのもの(比較例4)に比べ低いにもかかわらず(表2)、一般生菌、大腸菌群が著しく減少しており、かつ香、味に大きな変化は認められなかった。しかしながら比較例1、2については一般生菌がわずかに減少しているが、香、味が極端に劣る結果になっていた。これはそば実に含まれるアルコールデヒドロゲナーゼがアルコールを分解し、異臭を発したためと考えられる。比較例3は、味、香について大きな変化は認められないが、一般生菌数が多く、殺菌効果が小さかった。比較例4については、一般生菌は減少しているものの、エチルアルコール噴霧をしていないので表2にあるようにそば実の温度が急激に上昇し、香、味が劣る結果になっていた。
【0032】
(2)穀物小麦についての実施例
《実施例5〜8》
カナダ産のハード系小麦1CW粒に、表3に示す通り、濃度70質量%、温度20℃のエチルアルコールを、小麦粒100部に対し1及び3部噴霧した。その後1分静置後に、実施例1と同様の方法により庫内温度を95℃及び100℃に設定した殺菌庫内に、前記アルコール処理をした小麦粒を60秒及び120秒間静置して加熱殺菌を行った。庫内経過時間ごとの小麦粒の温度を、防水型食品用温度計(商品名:SWP−01、株式会社佐藤計量器製作所製)により測定した。結果を表4に示す。
【0033】
殺菌後の小麦粒は水分がもとのレベルになるように、室温のもとで多翼送風機により5分間送風乾燥を行った。乾燥後の小麦粒について、ラボラトリーミル3100(スウェーデン、フォーリングナンバー社製)を用いて、小麦粉全粒粉を作成し、下記の方法により小麦粉全粒粉の菌数を測定した。結果を表3に示す。
【0034】
菌数測定:一般生菌数、大腸菌群数、大腸菌数について、AOAC法により実施した。3M社製のペトリフィルムを用い、35℃で48時間培養後、実施例1と同様にしてコロニー数をカウントした。
【0035】
《比較例5〜6》
実施例5に用いた小麦粒に、表3に示す通り、濃度70質量%、温度20℃のエチルアルコールを、小麦粉100部に対し1及び3部噴霧するのみで殺菌を行った。噴霧方法は実施例5又は6と同様に行った。殺菌後の小麦粉全粒粉の作成、及び菌数測定については実施例5〜8と同様に行った。結果を表3に示す。
【0036】
《比較例7〜8》
実施例5に用いた小麦粒に、表3に示す通り、実施例5又は7と同様の方法により、庫内温度を100℃に設定した殺菌庫内に、アルコール処理をしない小麦粒を60秒及び120秒間静置して加熱殺菌を行った。庫内経過時間ごとの小麦粒の温度を実施例5〜8と同様に測定した。結果を表4に示す。殺菌後の小麦粉全粒粉の作成、及び菌数測定については実施例5〜8と同様に行った。結果を表3に示す。
【0037】
《対照例2》
実施例5に用いた小麦粒について、表3に示す通り、殺菌を一切行わず小麦粉を作成した。小麦粉の作成、及び菌数測定については実施例5〜8と同様に行った。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】


【0039】
【表4】


【0040】
表3の結果から、アルコールと蒸気殺菌を併用した実施例5〜8についてのみ一般生菌数を10/g以下に抑えることができた。
【0041】
(製パン試験)
殺菌後の小麦の品質を確認するため、実施例8、比較例8、対照例2の方法で殺菌処理をしたハード系小麦粒について、製パン試験を実施した。前記ハード系小麦粒をテストミル(ビューラー社製)により1B、2B、1M、2Mのコースを使用し歩留まり60%粉に製粉した。前記により製造した粉について、前記小麦粉全粒粉に用いたと同様の方法により菌数測定を行うとともに、下記の方法により、水分、灰分、蛋白、ファリノ吸水率、最高糊化粘度、エクステンソR/Eの各項目について粉の一般分析を行った。結果を表5に示す。
【0042】
水分:常圧加熱乾燥法により測定した。水分計(型式:890100、ブラベンダー社製)を用い、試料10gを130℃で35分間加熱し、加熱前の試料の重量から加熱後の試料の重量を差し引いたものを水分量とした。水分値は、試料に対して質量パーセントで表示した。
灰分:乾式灰化法により測定した。マッフル炉(型式:PMR26K、いすず製作所製)を用いて、試料5gを850℃で3時間焼成し、焼成後の残ったものを試料に対して質量パーセントで表示した。
蛋白:デュマ法により測定した。窒素/タンパク質分析装置(型式:ラピッドN、エレメンター社製)を用い、試料60mgを960℃と800℃で二回燃焼し、発生した燃焼ガス中の窒素量を測定し、蛋白量に換算した。蛋白換算係数はそばが6.25、小麦が5.70、ライ麦が5.83を用いた。蛋白値は、試料に対し質量パーセントで表示した。
【0043】
最高糊化粘度:ラピッドビスコアナライザー(型式:RVA−3D、ニューポートサイエンティフィック社製)を用い、試料4gを純水25mlに攪拌し、次のような条件のもと温度を変化させ、攪拌パドルにかかる負荷の最高値(単位はBU)を最高糊化粘度とした。温度条件:0〜1分 50℃、1分〜16分 50℃から97℃へ温度を上げる。16分〜17分 97℃、17分〜21分 97℃から50℃へ下げる。
ファリノ吸水率:ファリノグラフ(型式:810143、ブラベンダー社製)を用い、試料300gをファリノグラフのミキサーに入れ、ミキシングしながらファリノカーブの中心線が500BU±20BUになるように水を加え、この加えた水の量を小麦粉に対し質量パーセントであらわしたものをファリノ吸水率とした。
【0044】
エクステンソR/E:試料300gに、捏ね終わり時の生地の硬さが500BUになるように水を加え、前記ファリノグラフのミキサーで3分間混合後に、150gの生地に2分割して棒状にし30℃の恒温層で45分間寝かせた生地について、エキステンソグラム(型式:860000、ブラベンダー社製)を用い、エキステンソグラフにより生地の伸長抵抗と伸長度を測定した。測定後は前記生地を再成形し、90分後、135分後について同様に測定した。エキステンソグラフのR/Eは生地の伸長抵抗を伸長度で割ったものを表示した。
【0045】
上記により作成したハード系小麦の粉を用い、製パン試験を実施した。製パン方法は表6に示すワンローフストレート法により焼成した。焼成後のパンについて、ボリューム、物性、外観について評価した。結果を表7に示す。なお、内相色調測定、及びテクスチャーアナライザーの方法は以下の通りである。
【0046】
内相色調測定:焼成後のパンを一晩常温で保存した後に、パンを3cmの厚さにスライスし、中央部分の内相をSMカラーコンピューターSM−4(スガ試験機株式会社)で測定した。
テクスチャーアナライザー物性測定:焼成後のパンを一晩常温で保存した後に、パンを3cmの厚さにスライスし、スライス1枚の中央部分の硬さをテクスチャーアナライザー(商品名:TA−XT2i、マイクロステイブル社製)にて、直径25mmのCYLINDER PROBESを用いて測定した。
【0047】
焼成後のパンについて官能評価をおこなった。官能評価は専門の5人のパネラーにより、表8に示す調査項目について、対照例を標準として、1=もっとも悪い、2=たいそう悪い、3=かなり悪い、4=少し悪い、5=わずかに悪い、6=標準、7=わずかに良い、8=少し良い、9=かなり良い、10=たいそう良い、11=もっとも良い、の11段階で評価を実施し、その平均点をスコアとした。結果を表8に示す。
【0048】
【表5】


【0049】
【表6】


【0050】
【表7】


【0051】
【表8】


【0052】
表5の結果から、実施例8の小麦粉の菌数は対照例2、比較例8の菌数と比べて菌数が少ない結果になった。又、エクステンソR/Eはいずれの時間においても、実施例8が比較例8と対照例2の中間の値を示し、実施例における小麦は熱による影響が抑えられていることが分かる。表8の結果から、実施例8のパンの品質は対照例2に比較するとボリュームが少なく、官能評価で劣るものの、従来の殺菌方法である比較例8に比べ、ボリューム、官能評価ともに優れる結果となった。
【0053】
(製麺試験)
《実施例9、比較例9、対照例3》
熊本県産ソフト系小麦チクゴイズミ粒を用い、前記実施例8、比較例4、対照例2の方法とそれぞれ同様の方法で殺菌をしたソフト系小麦粒について、歩留を55%にあわせるために、実施例9及び比較例9は1B、2B、3B、1M、2M、3Mのコースを使用し、対照例3は1B、2B、1M、2Mのコースを使用して製粉した。前記により製造した粉について、前記小麦粉全粒粉に用いたと同様の方法により菌数測定、及び水分、灰分、蛋白、ファリノ吸水率、最高糊化粘度、エクステンソR/Eの各項目について粉の一般分析を行った。結果を表9に示す。
【0054】
上記により作成したソフト系小麦の粉を用いて、表10に示す配合と工程でうどんを作り、製麺試験を実施した。
【0055】
前記製麺試験について、下記の方法により作業性、麺帯色調、茹で麺最大荷重について調査した。結果を表11に示す。製造されたうどんについて更に官能評価をおこなった。官能評価は表12に示す項目について、専門の5人のパネラーにより、前記製パン試験の官能評価と同様に対照例を標準として、11段階で評価を実施し、その平均点をスコアとした。結果を表12に示す。
【0056】
麺帯色調:麺帯をロール間隙20で圧延した後に、麺帯を長さ10cm程度切り取り、25℃で2時間保存後、SMカラーコンピューターSM−4(スガ試験機株式会社)にて麺帯の色調を測定した。
茹で麺最大荷重:#10角の切り歯で麺線を切り出した後に、沸騰したお湯で20分茹でた後に、1分間水洗し、テクスチャーアナライザー(商品名:TA−XT2i、マイクロステイブル社製)にて、VOLDLEVICH BITE JAWSを用いて茹で麺の固さを測定した。
【0057】
【表9】


【0058】
【表10】


【0059】
【表11】


【0060】
【表12】


【0061】
表9の結果から、実施例9の小麦粉の菌数は対照例3、比較例9の菌数と比べて菌数が少ない結果になった。表12の結果から、麺の硬さについては、実施例9は対照例3と比較例9の中間の硬さで、粘弾性については最も優れる結果になった。実施例9は、従来の殺菌方法より菌数を減らすことができ、且つうどんの品質も改良されている。
【0062】
《実施例10、比較例10、対照例4》
(製菓試験)
前記製麺試験に用いたと同様の粉を用い、表13に示す方法により、蒸しパンを製造して製菓試験を行った。製造された蒸しパンについて官能評価をおこなった。官能評価は表14に示す項目について、専門の5人のパネラーにより、前記製パン試験の官能評価と同様に対照例を標準として11段階で評価を実施し、その平均点をスコアとした。結果を表14に示す。
【0063】
【表13】


【0064】
【表14】


【0065】
表14の結果から、実施例9の小麦粉を使用した蒸しパンは、対照例3や比較例9よりもボリュームが大きく、ソフトな食感が得られた。
【0066】
(3)穀物ライ麦についての実施例
《実施例11〜14》
ドイツ産のライ麦粒に表15に示す通り、濃度が70質量%、温度20℃のメチルアルコールを、ライ麦粒100部に対し1及び3部噴霧した。その後1分静置後に表15に示すように、実施例1と同様の方法により庫内温度を100℃に設定した殺菌庫内に、前記アルコール処理をしたライ麦粒を60秒及び120秒間静置して加熱殺菌を行った。庫内経過時間ごとのライ麦粒の温度を、防水型食品用温度計(商品名:SWP−01、株式会社佐藤計量器製作所製)により測定した。結果を表16に示す。
【0067】
殺菌後のライ麦は水分がもとのレベルになるように5分間送風乾燥を行い、ラボラトリーミル3100(スウェーデン、フォーリングナンバー社製)を用いて全粒粉を作成し、全粒粉の菌数を下記の方法で測定した。結果を表15に示す。
【0068】
菌数測定:一般生菌数、大腸菌群数、大腸菌数については、AOAC法により実施した。3M社のペトリフィルムを用い、35℃で48時間培養後、実施例1と同様にしてコロニー数をカウントした。
【0069】
《比較例11〜12》
実施例11に用いたライ麦粒に、表15に示す通り、濃度70質量%、温度20℃のエチルアルコールを、ライ麦粒100部に対し1及び3部噴霧するのみで殺菌を行った。噴霧方法は実施例11又は12と同様に行った。殺菌後のライ麦粒について、実施例11又は12と同様に、全粒粉の作成、及び菌数測定を行った。結果を表15に示す。
【0070】
《比較例13〜14》
実施例11に用いたライ麦粒と同様のライ麦粒を、実施例11と同様の方法により庫内温度を100℃に設定した殺菌庫内に60秒及び120秒間静置して加熱するのみで殺菌を行った。庫内経過時間ごとのライ麦粒の温度を実施例11〜14と同様に測定した。結果を表16に示す。殺菌後のライ麦粒について、実施例11又は12と同様に、全粒粉の作成、及び菌数測定を行った。結果を表15に示す。
【0071】
《対照例5》
実施例11に用いたライ麦粒について、表15に示す通り、殺菌を一切行わず小麦粉を作成した。小麦粉の作成、及び菌数測定については実施例11〜14と同様に行った。結果を表15に示す。
【0072】
【表15】


【0073】
【表16】


【0074】
表15の結果から、小麦の場合と同様にライ麦でもアルコールと蒸気殺菌を併用した実施例11〜14についてのみ一般生菌数を10/g以下に抑えることができた。
【0075】
(ライ麦製パン試験)
殺菌後のライ麦の品質を確認するため、製パン試験を行った。実施例14、比較例14、対照例5と同様の方法により殺菌したライ麦粒について、石臼(オーストリア、モラ社製、A400MSM)により、250μmスル−、300μmスル−、800μmスル−のコースを加え歩留70%粉に製粉した。前記により製造した粉について、前記ライ麦粉全粒粉に用いたと同様の方法により菌数測定、及び水分、灰分、蛋白の各項目について粉の一般分析を行った。結果を表17に示す。
【0076】
更に上記により得られた粉を用いて、表18に示す方法により製パン試験を実施した。焼成されたパンについて、前記ハード系小麦の製パン試験と同様の方法により分析、及び官能評価を実施した。結果を表19及び表20に示す。
【0077】
【表17】


【0078】
【表18】


【0079】
【表19】


【0080】
【表20】


【0081】
表17の結果から、実施例14のライ麦粉の菌数は対照例5、比較例14の菌数と比べて一般生菌数が少ない結果になった。パンの品質は対照例5、比較例14と比べ大差はなかった。
【0082】
【発明の効果】
本発明であるアルコール殺菌と蒸気殺菌を併用することで、穀物の香、味を損なうことをなく穀物を殺菌することができ、殺菌後の穀物をロール、石臼、ピンミル、及びその他の製粉方法により製粉することで、殺菌された穀物の粉を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000164689
【氏名又は名称】熊本製粉株式会社
【住所又は居所】熊本県熊本市花園1丁目25番1号
【出願日】 平成15年6月24日(2003.6.24)
【代理人】 【識別番号】100119002
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 敦

【公開番号】 特開2005−13043(P2005−13043A)
【公開日】 平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願番号】 特願2003−179705(P2003−179705)