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【発明の名称】 養殖用特殊飼料
【発明者】 【氏名】堀内 三津幸

【氏名】比留間 聡

【氏名】山田 毅

【要約】 【課題】本発明は、養殖魚介類の生産過程では抗病性を維持・向上させることによる魚病被害の予防又は軽減の機能を持ち、その販売過程では外見が美しく、安全・安心で、生産物の価値を差別化できるような魚介類養殖用の乾燥固形飼料又は乾燥固形飼料用の添加剤を開発することを課題とする。

【解決手段】課題を解決できる手段として、ノリを含有する魚介類養殖用固形乾燥飼料あるいは固形乾燥飼料用添加剤を用いることが有効であることを見出した。この飼料あるいは飼料添加剤を養殖魚介類に投与することにより、養殖魚介類の黄色系体色、茶褐色系殻色、体表粘液分泌、魚介類臭又は抗病性を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノリを含有してなる魚介類養殖用固形乾燥飼料。
【請求項2】
ノリを含有してなる魚介類養殖用固形乾燥飼料用添加剤。
【請求項3】
養殖魚介類がアユであることを特徴とする請求項1記載の固形乾燥飼料。
【請求項4】
養殖魚介類がアユであることを特徴とする請求項2記載の添加剤。
【請求項5】
ノリを養殖魚介類に投与することにより、養殖魚介類の黄色系体色、茶褐色系殻色、体表粘液分泌、魚介類臭又は抗病性を改善する方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ノリを含有してなる養殖魚介類用の固形乾燥飼料又は固形乾燥飼料用添加剤に関し、また、この飼料又は添加剤を養殖魚介類に投与することによって、黄色系体色、茶褐色系殻色、体表粘液分泌、魚介類臭又は抗病性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我国では、淡水魚としてはウナギ・コイ・アユ・ニジマス等、海産魚介類としてはブリ・カンパチ・ヒラマサ・シマアジ・アジ・サバ・マダイ・トラフグ・スズキ・クルマエビ・アワビ等様々な魚介類が養殖されているが、常にウイルス、細菌又は寄生虫に起因する魚病蔓延の危険にさらされているのが現状である。
【0003】
近年、ブリ・マダイ・カンパチなど養殖生産量が多い魚種で、被害が大きい連鎖球菌症やイリドウイルス感染症については、有効なワクチンが開発され急速に普及し効果を発揮しているが、養殖生産量が少なく市場規模が小さい魚病についてはワクチンの開発がなされず、養殖業者は困っている状況にある。
【0004】
例えば近年アユ養殖では冷水病が最大の問題となっており、その被害によって養殖業者の経営が破綻し廃業が頻発しているが、アユ冷水病のワクチンはマーケットが小さいために、未だその開発が本格化していない現状にある。また、特定の魚病に対して有効なワクチンが開発・上市されても、ワクチンの効果は特異的であり異なる魚病には無効であるために、別の魚病が蔓延しだすことも多く問題となっている。新たに蔓延しだした魚病に対するワクチンの開発には数年の期間と多大な経費がかかり、そのワクチンの使用で一旦は被害を軽減できても、また新たな魚病が発生しだすというような正にイタチごっこの関係にある。
【0005】
もう一つの魚病対策としては抗生物質など抗菌剤を投与して治療する方法があるが、残留や耐性菌の問題があること、投薬経費が嵩むこと、また、消費者の「安全・安心」志向が高まっていることなどの理由で、安易に使用できない状況となっている。
【0006】
魚介類の病原体の多くは条件発病性であり、また魚介類には生来、非特異的な生体防御能が備わっている。水質などの環境変化や過密・過食、栄養不足等のストレス負荷によってこの生体防御能が低下すると感染して発病するパターンが大半である。魚介類用飼料は養殖生産のために重要な基幹的資材であり、これを使用する養殖業者からは成長面での基本性能の他に、確実に抗病性が高まるなど、機能性の賦与が望まれているが、飼料ばかりでなく飼料添加剤においても期待するほどの効果があるものは極めて少なく、また、もしそのような機能を示す素材が見出されても価格面、安全面又は法律面での問題があって、多くは実用性に乏しいのが現実である。
【0007】
さらに近年、天然魚介類だけでなく養殖魚介類においても、その品質や安全・安心が保証されている所謂「ブランド魚介類」が好まれる傾向にある。この市場ニーズを反映して養殖業者サイドは、品質・安全・安心の点で他のものと差別化することによって、生産魚介類の価値を高め、有利に販売したいとの願望が益々強くなっている。養殖魚介類の品質としては、刺身や焼き物や煮物等調理したものを食べて美味しいかどうかも重要ではあるが、魚介類自体の体色や殻色など外見上の美しさも重要な要因であり、また、生鮮魚介類の臭い(魚臭)の良し悪しや強弱もその価値に影響する。
【0008】
このように安全・安心で品質がよく、差別化販売の可能な養殖魚介類を安定して生産できる機能を持ち、望ましくは生産コストを上げない飼料や飼料添加剤の開発が切望されているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特許第2593794号公報
【特許文献2】特開昭57−152854号公報
【非特許文献1】水交社発行(1990)「水産の研究」9巻「養魚飼料への藻類の添加効果」(上)1号52−56頁
【非特許文献2】水交社発行(1990)「水産の研究」9巻「養魚飼料への藻類の添加効果」(中)2号51−55頁
【非特許文献3】水交社発行(1990)「水産の研究」9巻「養魚飼料への藻類の添加効果」(下)3号31−37頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、養殖魚介類の生産過程では抗病性を維持・向上させることによる魚病被害の予防又は軽減の機能を持ち、その販売過程では外見が美しく、安全・安心で、生産物の価値を差別化できるような魚介類養殖用の乾燥固形飼料又は乾燥固形飼料用の添加剤を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意研究を積み重ねた結果、ノリが最も適切な素材であることを発見し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は
(1)ノリを含有してなる魚介類養殖用固形乾燥飼料、
(2)ノリを含有してなる魚介類養殖用固形乾燥飼料用添加剤、
(3)養殖魚介類がアユであることを特徴とする(1)記載の固形乾燥飼料、
(4)養殖魚介類がアユであることを特徴とする(2)記載の添加剤、
(5)ノリを養殖魚介類に投与することにより、養殖魚介類の黄色系体色、茶褐色系殻色、体表粘液分泌、魚介類臭又は抗病性を改善する方法
に関する。
【0013】
本発明のノリを含有した固形乾燥飼料又は固形乾燥飼料用添加剤を魚介類に投与することにより、養殖魚介類の生体防御能すなわち抗病性が高まり、魚病被害が予防又は軽減される結果、生産コストが低くなり、また、同時に黄色系体色や茶褐色系殻色、臭いなどが改善される結果、養殖魚介類の市場価値が高まり、有利な販売が可能となる。
【0014】
平成13年度の漁業・養殖業生産統計年報では、ノリの生産量は約37万トンで、生産金額は1200億円近くに達する。収穫されたノリは乾ノリとなり、そのまま流通したり、焼ノリ、味付ノリ、佃煮、刻みノリ等に加工されて流通する。ノリの生産量や品質は天候(降雨量・日照量)と海水温等自然環境に左右され、色落ちなど品質が悪く食用に適さないものは未利用資源となっている。海藻類の粗蛋白質含量は乾燥重量の概ね10〜20%であるが、ノリは例外的に粗蛋白含量が高く40%前後である。アミノ酸の特徴としてはグルタミン酸、アスパラギン酸、アラニンに富み、また、生命活動を維持するために重要なアミノ酸としてヒトやペットの健康面で注目されているだけでなく、養魚飼料分野においても最近注目されだしたタウリンを高濃度で含有し、その含有量は貝類のカキやハマグリに匹敵する。さらに、大半の海藻類の脂質含量は1%以下であるが、ノリには3.5%前後も含まれており、脂肪酸としてはEPA(エイコサペンタエン酸)を極めて多く含有するのも大きな特徴である。従って、ノリは他の海藻類よりも飼料原料として栄養上有用な海藻であると言える。また、ノリにはビタミンA、ビタミンC及びビタミンB群が豊富で、ビタミンAとビタミンCは強い抗酸化作用を持つ。また、ビタミンAとしての機能も持ち、免疫賦活効果や抗酸化作用も有する色素であるβ―カロテンが豊富で、他にルテインやゼアキサンチンなどの色素も含まれている。ノリの香気は100種以上の揮発成分からなる複合香であり、その主成分はノルカロチノイドであることが判明している。これらのことからノリは単なる蛋白や脂質の給源としてだけでなく、様々な機能成分の補給源としても極めて有用なものであると考えられる。
【0015】
クロレラやスピルリナなどの微細藻類やワカメ・アオサ・コンブ・ノリ・ヒトエグサなどの大型藻類を各種の養殖魚に投与した場合の効果については、今までに様々な研究がなされている(水交社発行(1990)「水産の研究」9巻「養魚飼料への藻類の添加効果」(上)1号52−56頁(非特許文献1)、(中)2号51−55頁(非特許文献2)、(下)3号31−37頁(非特許文献3))。
【0016】
また、養魚へのノリの応用に着目した例としては、天然餌料と人工飼料の混合物にノリ粉末を添加して調整した所謂「モイストペレット」について、マダイでの実施例のみが記載された特許が出願され登録されている(特許第2593794号公報:特許文献1)。また古くは海苔の抄製工場排水中の海苔分を防腐処理して飼料として活用することに関する特許が出願され、錦鯉等のような養殖魚或いは観賞魚の赤味を鮮色化する作用があるとしている(特開昭57−152854号公報:特許文献2)。
【0017】
しかし、ノリを淡水魚のアユや、海産魚のブリ・カンパチ・ヒラマサ・シマアジ等に投与した例はなく、まして魚の黄色系体色、体表粘液分泌状態、魚臭、抗病性等への影響やアワビ・クルマエビの殻色への影響について明らかにした知見は見当たらない。
【0018】
ノリを配合した乾燥固形飼料をアユに投与すると、体表粘液の分泌が亢進し、病原体の皮膚からの感染防止と出荷魚の鮮度感の醸成に有効である。また、ノリをアユに投与すると、鰭(胸鰭、臀鰭、尾鰭等)や鰓蓋後方の黄斑の黄色が鮮やかになり、商品価値を高める効果がある。また、ノリの香気がアユ魚体に移り、従来の養殖アユとは異なるまさに「香魚」と呼ばれる天然アユに近い香りとなることも発見した。さらに、実際の養殖場で試験を行った結果、ノリを配合していない従来の飼料を給餌していた池のアユには冷水病とビブリオ病が発病したのに対し、ノリを配合した飼料を給餌した池のアユでは発病しなかった。海産魚ではブリにノリを配合した乾燥固形飼料を与えると、生残率や飼料効率が高まる結果が得られるとともに、体表の黄色系発色が顕著となり、出荷先の評判が上がり商品価値の高まることが期待できた。また、アワビではその殻色が天然アワビに近似した茶褐色となり、クルマエビでは茶褐色の縞模様が鮮明となり、いずれも商品価値の高まることが期待できた。本発明者らは、未利用資源であり食用としては低品質の養殖ノリを乾燥固形飼料に応用して様々な実験を繰り返し、これらの新たな機能を発見し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、皮膚の粘液分泌が健全化し、抗病性が高まり、黄色系体色や魚臭等を改善できる結果、養殖魚介類の品質すなわち商品としての価値が高まる安全・安心な乾燥固形飼料又は同飼料用添加剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明においてノリとはアサクサノリやスサビノリなど我国で広く養殖されているアマノリ属の海藻の全てを指す。乾燥固形飼料に配合される原料としてのノリの使用形態としては、抄製工程前の液状ノリでも可能であるが、その効率的収集は困難で、腐敗防止のための処理の必要もあり、それを飼料工場では扱い難いので、乾ノリもしくは焼ノリが望ましい。また、板状のノリは飼料製造工程では粉砕しにくいため、養殖ノリを各地から集積して入札が行われるノリの流通施設内で粗粉砕を行い、それを飼料工場に搬入して使用する方法が良い。
【0021】
ノリを配合して製造する乾燥固形飼料の形態としては、ペレットミルやエクストルーダーで造粒されるドライペレット、そのペレットを破砕し適度なメッシュの篩で分級して製造するクランブル状飼料、高速攪拌造粒装置等の機械で造粒される顆粒状飼料などその形態はどのようなものでもよい。
【0022】
本発明の乾燥固形飼料へのノリの配合率については特に制限はない。しかし、その効果を期待するには0.5重量%以上は必要であり、また現実的にはノリのみで構成される飼料もありえない。魚類用飼料では過剰に配合すると飼料の粗蛋白含量が低下して飼料効率と成長の両面で好ましくないので、0.5〜10重量%、望ましくは0.5〜5重量%である。アワビ用飼料ではノリを70〜80重量%配合した飼料も原理的には可能であるが、栄養素のバランスに配慮すると0.5〜30重量%、望ましくは2〜20重量%であり、クルマエビでは魚類と同様、0.5〜10重量%、望ましくは0.5〜5重量%である。このようにノリの投与対象となる魚介類種によって、その栄養バランスに配慮して、最適な配合率が決定されるべきである。
【0023】
本発明に言う乾燥固形飼料用添加剤は、上記のドライペレット、クランブル状飼料及び顆粒状飼料など常温保管が可能な乾燥固形飼料に用時添加して使用されるもので、その形態は粉末状、液体状、ペースト状など様々なものが提供でき、ノリだけでなく、ビタミン類、ミネラル類、オキアミエキス、粘結剤、防腐剤、色素類、強肝剤などの有用成分をその使用目的に応じて配合することが可能である。添加剤の場合には乾燥固形飼料への添加率に制約があり、通常は5重量%以内である。添加剤の乾燥固形飼料への用時添加率を仮に5重量%とし、その添加剤には50重量%のノリが配合されているとすると、その添加剤を添加した乾燥固形飼料中のノリ含有率は、2.5重量%となる。本発明の添加剤は、その効果だけでなく添加対象の乾燥固形飼料の特性に応じて、最適な配合組成と用時の推奨添加率を決める必要がある。
【0024】
本発明を応用する魚介類の種類に制限はないが、淡水魚としてはアユ、海産魚としてはブリ、カンパチ、シマアジ、ヒラマサ、サバ、アジ等、体側・背部等の黄斑や黄色縦横帯、尾鰭・背鰭・臀鰭等各鰭が黄色身を帯びている魚が、その商品価値を高める意味で特に適している。また、アワビにノリを投与すると、殻が天然アワビに近い茶褐色となり、クルマエビでは茶褐色の縞模様が明瞭となり尾扇部の黄色も鮮やかとなるので、ともに商品価値を高めることができる。魚類の場合はノリに含まれるルテインなどが、アワビの場合はフィコビリン(γ―フィコエリトリン、γ―フィコシアニン)が、クルマエビの場合にはβ―カロテンが有効に機能する結果であると考えられる。
【0025】
以下にノリに関する本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
≪アユ(水槽試験)≫
表1に示す2種類(対照区と試験区)のクランブル飼料を作製した。試験区飼料には3重量%のノリを配合した。
【0027】
【表1】


【0028】
平均体重が約95gのアユ260尾ずつを底面積4.8m2、水深1mのコンクリート製8角水槽に収容し、対照区と試験区に各々2水槽ずつを充当した。飼育水温は16〜17℃で、エアレーション下で流水飼育した。各区飼料を3回/日で週6日給餌し、飼育日数は56日間とした。また試験終了日にアユを手でつかむと、ノリを配合していない対照区の魚に比べてノリ配合の試験区では体表粘液が明らかに多い感じを受けたので、各水槽から10尾ずつを無作為に抽出し、その10尾の総体重(a)を測定したのち、あらかじめ重量(b)を測定したキムワイプで体表粘液を丁寧にふき取って、その重量(c)を測定し、c−bを体表粘液の重量(d)として、d÷a×100を求め、これを体表粘液分泌率(%)として各水槽の値を求めた。
【0029】
さらに、対照区と試験区から50尾ずつを無作為に抽出し、氷〆を行って各々5尾ずつをビニール袋に入れ、空気を充満させて輪ゴムで縛り、30分間冷蔵庫内に置いたのち、10人のパネラーに各々1袋ずつ配り、輪ゴムを外してまずアユの臭いを嗅がせ、次いで外観色調について目視評価させた。臭いの比較評価項目は強弱と質(好ましい香りかどうか)とし、外観色調は胸鰭と鰓蓋後部の黄斑部の黄色色調について回答を求めた。
【0030】
飼育成績は表2のとおりで、ノリ配合の試験区はノリを配合していない対照区と比較して、生残率・飼料効率・増重倍率のいずれも良い成績が得られた。
【0031】
【表2】


【0032】
表中、生残率とは、終了時尾数÷開始時尾数×100、個体増重量倍率とは、(終了時平均体重)/(開始時平均体重)×100、補正飼料効率とは、((増重量+(開始時平均体重+終了時平均体重)÷2×斃死尾数))÷給餌量×100で表す。
【0033】
また、体表粘液分泌率は対照区2水槽の平均が1.42%であったのに対し、ノリ配合の試験区2水槽の平均が1.9%(33.8%増)となり、ノリを投与するとアユ体表の粘液分泌が多くなる結果となった。アユ魚臭の強弱については、10人中10人(100%)がノリ配合の試験区のほうが強いと回答し、その臭いが好ましいかどうかについては、10人中9人が好ましい香りであると答え、残りの1名はわからないと回答した。外観色調については例外なく試験区のアユのほうが黄色が鮮やかで濃いとの回答であった。(表3)
【0034】
【表3】


【実施例2】
【0035】
≪アユ(養殖場での試験)≫
アユ水槽試験に用いた飼料と同組成のクランブル飼料を作製した(表1)。試験区飼料にはノリを3重量%配合した。底面積225m2(15×15m)、水深1.5mの池4面(No.1〜No.4)に平均体重約24gのアユを各々73,460尾、61,870尾、69,740尾、71,590尾ずつ収容し、2面を対照区とし残りの2面をノリ配合の試験区とした。換水率は4回/日とし、3回/日で毎日給餌した。試験期間は26日間で、その間の池水温は17〜18℃であった。
その結果、飼育成績は表4に示すとおりとなった。
【0036】
【表4】


【0037】
表中、生残率とは、終了時尾数÷開始時尾数×100、個体増重量倍率とは、(終了時平均体重)/(開始時平均体重)×100、補正飼料効率とは、((増重量+(開始時平均体重+終了時平均体重)÷2×斃死尾数))÷給餌量×100で表す。
【0038】
すなわち、生残率、個体増重倍率及び補正飼料効率のいずれでも試験区が対照区と比べて良い結果となった。試験終了時に対照区2面のアユと試験区2面のアユは別々に各々1面ずつの出荷用蓄養池に移され、その4日後には対照区のアユでは体表や眼周囲のビラン・出血・脱鱗等の症状を伴う疾病が発生し、冷水病とビブリオ病が併発していると診断されたのに対し、ノリが投与された試験区のアユには疾病が全く発生しなかった(表5、図1)。
【0039】
図1−1は、対照区のアユで上段のアユは眼球発赤症状が認められ、下段のアユは眼球発赤症状と鰓蓋後部及び腹鰭上方の体側面に脱鱗・出血症状が認められる。一方、図1−2の試験区(ノリ配合)の方は、上段・下段いずれのアユも外観的な異常症状が観察されない。
【0040】
【表5】


【0041】
さらに試験区と対照区ではアユの外観、特に尾鰭や胸鰭、鰓蓋後部の黄斑等の黄色色調に顕著な差が認められた。そこで、対照区と試験区から各々12尾ずつを無作為に抽出し、氷〆の1日後に尾鰭の同部位について黄色度の強さ(b*値)を色差計(ミノルタ製カラーリーダー、CR−13型)で測定した。その結果は図2のとおりで、試験区のアユ尾鰭の黄色度が対照区のアユより明らかに高い結果となり、目視による色調差が数値的に裏付けされ、水槽試験の結果が実規模の養殖池でも再現された。
【実施例3】
【0042】
≪ブリ(生簀での試験)≫
表6に示す組成の2種のドライペレットをエクストルーダーで作製した。試験区飼料にはノリを3%配合した。
【0043】
【表6】


【0044】
3×3×3.5mの生簀4面を使用し、2面は対照区とし、残り2面はノリ配合の試験区とした。各生簀には平均体重が約2800gのブリ50尾ずつを収容した。試験期間は67日間で、同期間中の表面海水温は23〜16℃であった。
【0045】
飼育成績は表7に示すとおりで、生残率、個体増重倍率、補正飼料効率において試験区は対照区よりも僅差ではあるが数値的には良い結果であった。
【0046】
【表7】


【0047】
表中、生残率とは、終了時尾数÷開始時尾数×100、個体増重量倍率とは、(終了時平均体重)/(開始時平均体重)×100、補正飼料効率とは、((増重量+(開始時平均体重+終了時平均体重)÷2×斃死尾数))÷給餌量×100で表す。
【0048】
また、対照区のブリに比べノリを投与した試験区のブリでは目視観察にて体表の黄色色調に顕著な差異が観察され、試験区のブリのほうが天然魚に近く、見るからに健康的で商品価値は高いと考えられた。
【0049】
各区から12尾ずつを無作為に抽出し活〆・放血後、氷冷保管し、1日後に背鰭先端部直下体側の黄色縦帯部の黄色度の強さ(b*値)を色差計(ミノルタ製カラーリーダー CR−13型)で測定した結果は図3の通りとなり、目視による観察結果を裏付けるデータとなった。
【実施例4】
【0050】
≪アワビ飼育試験≫
平均体重が約2.2g、平均殻長が約25mmのエゾアワビを100個体ずつの2群に分け、一方を対照区とし、他方を試験区とした。対照区には海藻原料として褐藻類のみを25%配合した飼料を給与し、試験区には褐藻類を15重量%とノリを10重量%配合した飼料を給与した。底面積0.6m2(60×100cm)の塩化ビニール製水槽を用い、水深は30cmとし、水中に遮光板を設置して飼育した。給餌は日曜日を除く週6日とし、1日1回夕方に行った。
【0051】
2ケ月間飼育後、各区水槽から5個体ずつを取り上げ、その殻の片縁の成長部を観察したところ、対照区は全て緑黄色であったのに対し、試験区では全て天然アワビの殻の色調に酷似した茶褐色となっていた。これらのアワビの殻のみを採取し、よく水洗したのち自然乾燥し、デジタルカメラ(リコー製、RDC−5300型)で殻の片縁成長部を中心に接写した。その画像データを拡大してプリントアウトし、ミノルタ製カラーリーダー(CR−13型)のレンズ部を当てて、殻片縁部のa*値とb*値を測定して比較した。その結果、対象区アワビのa*値とb*値の平均は各々−4.6と−3.8であったのに対し、試験区アワビのそれらは各々5.3と1.2となり、肉眼観察の結果が裏付けられた。ノリのような紅藻類に存在し、褐藻類にはない色素蛋白であるフィコビリン(γ―フィコエリトリン、γ―フィコシアニン)が、このような殻色差を生じさせたものと考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1−1】対照区のアユの外観を示す図。
【図1−2】試験区のアユの外観を示す図。
【図2】アユの対照区と試験区における黄色度の強さを示す図。
【図3】ブリの対照区と試験区における黄色度の強さを示す図。
【出願人】 【識別番号】000232612
【氏名又は名称】日本農産工業株式会社
【識別番号】000201630
【氏名又は名称】全国漁業協同組合連合会
【出願日】 平成16年4月8日(2004.4.8)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔

【識別番号】100096183
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貞次

【識別番号】100107168
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 徹夫

【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節

【公開番号】 特開2005−295844(P2005−295844A)
【公開日】 平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願番号】 特願2004−114342(P2004−114342)