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【発明の名称】 ブリ類用飼料及びブリ類の肉色改善方法
【発明者】 【氏名】秋元 淳志
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町東深芝4−2 日本配合飼料株式会社中央研究所内

【氏名】高橋 康久
【住所又は居所】愛媛県南宇和郡城辺町脇本816 日本配合飼料株式会社中央研究所海洋開発センター内

【氏名】方波見 泰
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町東深芝4−2 日本配合飼料株式会社中央研究所内

【氏名】大川 拓実
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町東深芝4−2 日本配合飼料株式会社中央研究所内

【氏名】石田 明
【住所又は居所】愛媛県南宇和郡城辺町脇本816 日本配合飼料株式会社中央研究所海洋開発センター内

【氏名】堀 弘義
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町東深芝4−2 日本配合飼料株式会社中央研究所内

【要約】 【課題】養殖魚のうちでも血合い筋の変色の著しいブリ類において、フィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を防止する効果を高めた廉価なブリ類用飼料と、これを用いたブリ類の肉色改善方法とを提供することを目的とする。

【解決手段】20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3高度不飽和脂肪酸の占める割合が15%未満、8%以上であり、かつ、抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有するブリ類用飼料を提供すると共に、前記ブリ類用飼料を、1ヶ月以上3ヶ月以下の期間給与することを特徴とするブリ類の肉色改善方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3高度不飽和脂肪酸の占める割合が15%未満、8%以上であり、かつ、抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有するブリ類用飼料。
【請求項2】
20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3高度不飽和脂肪酸の占める割合が15%未満、8%以上であり、かつ、抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有するブリ類用飼料を、1ヶ月以上3ヶ月以下の期間給与することを特徴とするブリ類の肉色改善方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリ類用飼料及びそれを用いたブリ類の肉色改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海産魚類の中でも刺身などとして生で食されることの多いブリ類等については、調理加工後の血合い筋などにおける肉色低下速度が比較的速いため、その改善が強く求められている。
【0003】
このため、血合い筋などにおける肉色低下改善効果を示すものとして、ビタミンCやビタミンEを飼料に添加することによって変色を抑制することが提案されている。
例えば、特許文献1には、飼料中のビタミンC含量を1,000〜2,000ppm、かつ、ビタミンE含量を飼料中600〜1,200ppmとすることによって、ブリ及びマダイにおける血合い筋の変色が防止できることが記載されている。
また、血合い筋が変色する基本的なメカニズムは、血合い筋中に存在するミオグロビン(Mb)が酸化によって不可逆的にメト化(メトミオグロビン:MMb)される事によって生じるため、血合い筋の変色防止を目的として抗酸化剤、例えばカテキンなどのポリフェノールを飼料に添加することも現場レベルでは行われることがある。
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、通常飼料に添加する量よりも著しく多量のビタミンC及びビタミンEを添加する必要があることから、飼料コストを引き上げ、経済性が著しく低下する。
また、ポリフェノール類を用いる場合は、体重増加率や増肉係数の低下も引き起こすようになるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−233316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の欠点を解消し、養殖魚において、とりわけ養殖魚のうちでも調理加工後の血合い筋の変色の著しいブリ類において、フィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を防止する効果を高めた廉価な飼料と、これを用いた肉色改善方法とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねる過程で、必須脂肪酸としてのn-3高度不飽和脂肪酸(以下、n-3HUFAと略記する。)に着目した。
ブリ類を始めとする多くの海産魚類は、必須脂肪酸としてn-3HUFAを要求することが広く知られており、その要求量はブリでは飼料油脂中の15〜25%とされている。n-3HUFAとは、炭素数(C)が20以上で、かつ、二重結合がカルボキシル基末端(COOH)から数えて3つ目のCの位置から始まる脂肪酸の総称である。この中にはヒトの健康食品として広く知られるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれるが、養殖魚用飼料の場合も例外ではなく、一般にn-3HUFAは、EPA及びDHAの含量が全体の90%以上を占める。
しかしながら、このEPA及びDHAは二重結合を持つ故に酸化し易い。
そこで、飼料中のn-3HUFA含量を低減させ、酸化を抑制することを考えた。
【0008】
ところが飼料中の脂質組成によって血合い筋の変色防止効果を示すところまで飼料中のn-3HUFA含量を低下させると、これまでの研究においては、若干ブリの体重増加率や増肉係数が低下する傾向が認められていることから生産性の点でやや難があると考えられており、何よりもブリ類の要求する必須脂肪酸の要求量を大きく下回る添加レベルに落とさないと効果が見られないため、場合によっては必須脂肪酸欠乏のリスクを伴う可能性が有ると考えられた。
【0009】
しかしながら、これまで明らかになっている必須脂肪酸要求量は1kg以下のブリ当歳魚を用いて試験されたものに過ぎず、市場で多く流通する3kg以上のブリ2歳魚に於ける必須脂肪酸の要求量は必ずしも明らかではないことが分かった。
そこで、本発明者らは、これまでの常識に疑問を持ち、ブリ2歳魚に対して飼料油脂中の必須脂肪酸含量が15%未満の飼料を用いてブリに対する生理的な影響について検討したところ、n-3HUFA含量が一定量以上であれば、若干増肉係数が上昇し、血液性状にも植物性油脂を増加させたことによる影響が僅かに認められるものの、成長や生残率などには全く影響を与えることはなく、3度にわたる飼育試験ではいずれも順調に成長することが判明した。特に、ブリ2歳魚では飼料油脂中に含まれるn-3HUFA含量を、これまで要求量として知られている15%未満としても、比較的短期の飼育期間(1ヶ月乃至3ヶ月程度)であれば生理的な影響をほとんど受けないことが明らかとなった。
【0010】
しかしながら、n-3HUFA含量のみでフィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を防止しようとすると、n-3HUFA含量をかなり低減させなければならない。
そこでこの飼料中におけるn-3HUFA含量の低減と合わせて、飼料中に抗酸化活性を有する物質を含有させると、ブリ血合い筋の経時的な肉色変化を著しく抑制することが分かった。しかも予想外にも飼料中のn-3HUFA含量を低減させたことに伴い、これら抗酸化活性を有する物質の添加量を一般的な要求量より若干多くする程度で十分な肉色変化の抑制効果が得られることが分かった。
【0011】
即ち、本発明者らは、飼料中に含まれる油脂中のn-3HUFA含量を15%未満、8%以上とし、かつ、ポリフェノールやフェルラ酸、ビタミンC及びビタミンEなどの抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有させることにより、それらの相乗効果によって廉価にブリ類血合い筋の経時的な肉色変化を著しく抑制し、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
請求項1に係る本発明は、20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3高度不飽和脂肪酸の占める割合が15%未満、8%以上であり、かつ、抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有するブリ類用飼料を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3高度不飽和脂肪酸の占める割合が15%未満、8%以上であり、かつ、抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有するブリ類用飼料を、1ヶ月以上3ヶ月以下の期間給与することを特徴とするブリ類の肉色改善方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によれば、養殖魚、とりわけ養殖魚のうちでも特に血合い筋の変色の著しいブリ類において、フィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を防止する効果を高めた廉価な飼料が提供される。従って、肉質改善用飼料として有用である。
このような請求項1に係る本発明の養殖魚用飼料を用いた請求項3に係る本発明の肉色改善方法によれば、フィレー加工調理後のブリ類血合い筋の経時的な変色を有効に防止することができる。
さらに、本発明によれば、これを1ヶ月以上3ヶ月以下という比較的短期間給与することにより、成長等を損なうおそれなく、養殖魚、とりわけ養殖魚のうちでも特に血合い筋の変色の著しいブリ類において、フィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3高度不飽和脂肪酸(n-3HUFA)の占める割合が15%未満、8%以上であり、かつ、抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有するブリ類用飼料である。
【0015】
請求項1に係る本発明は、ブリ類用飼料に関し、養殖魚のうちでも特に血合い筋の変色の著しいブリ類(ブリやハマチなど)について有効に適用され、これら養殖魚について、フィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を有効に防止することができる。
【0016】
請求項1に係る本発明は、20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料である。ここで20%以上の油脂を含有するものでないと、ブリ2歳魚が必要とするエネルギー総量を満たすことができない。
請求項1に係る本発明は、このような20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3HUFAの占める割合が15%未満、8%以上であることが必要であり、好ましくは13.7%以下、8.3以上とする。
【0017】
なお、ブリ類の必須脂肪酸要求量は、一般に飼料油脂中15%〜25%とされており、本発明ではその要求量を下回ることになるが、稚魚ではなく、ブリ2歳魚くらいであれば飼料油脂中に含まれるn-3HUFA含量を、これまで要求量として知られている15%未満としても、比較的短期の飼育期間(1ヶ月乃至3ヶ月程度)であれば生理的な影響をほとんど受けないことが分かった。
従って、本発明は、市場で多く流通するブリ2歳魚、できれば3kg以上のものについて好適に適用することができる。
なお、請求項1に係る本発明のブリ類用飼料は、ブリ類の飼育期間の全てにわたり給与することができるが、できれば市場に出荷する直前に、例えば出荷する直前の1ヶ月〜3ヶ月、特に出荷する直前の2ヶ月〜3ヶ月くらいの間に給与するのが望ましい。従って、ブリ類の出荷日から逆算して飼料の給与開始日を決定すればよい。
【0018】
飼料中のn-3HUFA含量を低下させる手段として、飼料に添加する魚油の代替として植物油又は獣脂を用いることができる。本願実施例では全てパームヤシ油を用いているが、もちろん本発明はこれに限定されるものではなく、結果として飼料中のn-3HUFA含量を調整できるものであれば良い。即ち、植物油であれば本願実施例に用いたパーム油の他、大豆油や菜種油、コーン油などを用いることができ、また獣脂であれば牛脂、豚脂、チキンオイルなどを用いることができる。
【0019】
次に、抗酸化活性を有する物質としては、ビタミンC及びビタミンEの他、各種のポリフェノール、有機酸(フェルラ酸等)、カロテノイド類(β-カロテン,アスタキサンチン,ゼアキサンチン,カプサイシン等)、アミノ酸、ペプチド類、核酸塩基、含硫黄化合物(グルタチオン等)、クエン酸、リン脂質、糖アルコール、有機態金属(セレン等)等を用いることが可能であるが、とりわけ少なくともビタミンCとビタミンEとを併用することが望ましい。
本発明においては、これらの必要添加量は、抗酸化活性を有する物質のみを用いた場合と比べて、著しくその量を減じることが可能である。例えば、特許文献1では飼料中のビタミンC含量を1,000〜2,000ppm、かつビタミンE含量を飼料中600〜1,200ppmとすることを要求しているが、本発明においてはビタミンC含量が300ppm以上1000ppm未満、ビタミンE含量は300ppm以上700ppm未満で、より好ましくはビタミンC含量が300ppm以上500ppm以下、ビタミンE含量は500ppm以上700ppm未満で十分な効果を示すことができる。
【0020】
請求項1に係る本発明は、上記したように20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3HUFAの占める割合が15%未満、8%以上であり、かつ、抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有するものであればよく、それ以外の点は通常の養殖魚用飼料と同じもので良く、例えばEP飼料で良い。
【0021】
次に、請求項2に係る本発明は、ブリ類の肉色改善方法に関し、20%以上の油脂を含有するブリ類用飼料であって、該飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3高度不飽和脂肪酸(n-3HUFA)の占める割合が15%未満、8%以上であり、かつ、抗酸化活性を有する物質として、少なくともビタミンCを300ppm以上1000ppm未満、ビタミンEを300ppm以上700ppm未満含有するブリ類用飼料を、1ヶ月以上3ヶ月以下の期間給与することを特徴とするものである。
【0022】
ここでブリ類用飼料中油脂の脂肪酸組成のうちn-3HUFAの占める割合や抗酸化活性を有する物質等については、請求項1に係る本発明において述べたとおりである。
請求項2に係る本発明においては、そのような請求項1に記載した如きブリ類用飼料を、1ヶ月以上3ヶ月以下の期間、好ましくは2ヶ月以上〜3ヶ月以下の期間給与することを特徴とするものである。飼料の給与はブリ類の出荷直前であることが望ましいことから、ブリ類の出荷日から逆算して飼料の給与開始日を決定すればよい。
ここで1ヶ月未満の給与であると、ブリ類について、フィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を有効に防止することができない。一方、3ヶ月を超えて給与した場合、ブリ類について体重増加率や増肉係数等が低下するおそれがあり、好ましくない。
なお、養殖魚としては、前記したように特に血合い筋の変色の著しいブリ類(ブリやハマチなど)について有効に適用され、これらブリ類について、フィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を有効に防止することができる。とりわけ市場で多く流通するブリ2歳魚、できれば3kg以上のものについて好適に適用することができる。
【0023】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
(1)養魚用飼料を用いてのブリの飼育試験1
表1に示す配合率にて直径12mmのEP飼料を作成し、飼育試験に供した。対照区1は添加する油脂として魚油(植田製油(株)製 ナイスフィードオイル)のみを用いた。対照区2は、対照区1において魚油の70%をパーム油(植田製油(株)製 パームオレイン)に置換した区であり、試験区1は対照区2に対してさらに抗酸化剤としてフェルラ酸を添加すると共に、さらに通常の添加量よりビタミンC(昭和電工(株)社製 ホスピタンC)及びビタミンE(ロシュ・ビタミン・ジャパン(株)社製 ロビミックスE-50)を増量した区とした。各区の試験飼料中のビタミンC及びビタミンE含量は表1に示したとおりである。また、各区の飼料油脂中のn-3HUFA含量も表1に示した。飼育は、4×4×4mの化繊網生け簀(海面小割生け簀)に平均魚体重約2,000gのブリ(2歳魚)を50尾ずつ収容し、63日間飼育を行った。飼育期間中の水温は20.4〜25.0℃であった。
【0025】
【表1】


【0026】
(2)飼育試験の結果(飼育成績)
飼育成績を表2に示す。いずれの区とも飼育期間中に斃死は見られず順調に成長した。
即ち、終了時の平均魚体重はいずれの区も3000g前後であり、成長倍率も140〜144%とほぼ同等の成長を示した。
一方、増肉係数は試験区1が2.71であったのに対して、対照区1は2.33とやや優れた値を示していた。これは日間摂餌率が対照区1で1.32%bw/dayであったのに対して試験区1はいずれも1.4%bw/dayとやや高く、その反面成長率に違いが無かったことが原因と思われる。日間摂餌率が高かったのは、おそらく試験区1が添加油脂としてパーム油の混合比率を高めたことにより、魚油に比べて若干消化吸収率に劣った可能性が推察される。
但し、それらの成績差はごく僅かであり、また、飼育試験終了時における肥満度は区間による差が全く認められなかった。
従って、本実施例1で用いた飼料は、いずれも63日間の飼育期間では全く問題は無いと判断できる。
【0027】
【表2】


【0028】
(3)変色度合いの評価
次に、これらの試験魚のうち各区より大きさの比較的揃った3尾を飼育試験終了後に海上にて活け締めし、速やかに3枚におろして魚肉をブロック状に切り出し、密閉容器に収容して4.5℃で暗所にて保存し、経時的に血合い筋の赤色(a値)を色彩色差計(ミノルタ社製CR-200)にて測定した。結果を図1に示す。
また、同じサンプルを用いて血合い筋表面をスキャナーで取り込み、画像処理にて血合い筋の表面積に対する変色した部位の割合を算出した。結果を図2に示す。
さらに、より実際の流通条件に合わせ、これらの試験魚のうち各区より大きさの比較的揃った3尾を飼育試験終了後に海上にて活け締めし、速やかに3枚におろして魚肉をブロック状に切り出し、密閉容器に収容して10℃で蛍光灯照射下にて保存し、経時的に血合い筋の赤色(a値)を色彩色差計(ミノルタ社製CR-200)にて測定した。結果を図3に示す。
【0029】
色彩色差計による暗所でのa値の測定値では、図1に示されるように、72時間後より対照区1の値が徐々に低下し始め、以後大幅に低下した。一方、魚油をパーム油に置換した対照区2では96時間までa値を保っていたが、それ以後は徐々に低下した。ビタミンCとビタミンEを強化し、さらにフェルラ酸を添加した試験区1ではa値の保持は明らかに対照区1、2に比べて高い傾向を示した。これらの結果より、飼料中の魚油の一部をパーム油に置換することによって血合い筋のa値の低下は抑えることができるが、さらにビタミンCやビタミンE、フェルラ酸などの抗酸化能を有する添加物を併用することによって、血合い筋のa値の低下は著しく抑えることが可能であると分かった。
また、血合い筋変色部位比率の測定でも図2に示される様に、ほぼa値の変化と同様の傾向が認められた。すなわち、対照区1では保存後24時間後から徐々に変色部位が増加し始め、測定終了時の192時間後には約90%が変色した。対照区2ではパーム油を魚油に代替したため、対照区1よりも若干変色の進行は抑制されているが、それでも最終的には60%以上が変色した。一方、ビタミンC及びビタミンEをそれぞれ表1に示す量とした試験区1では血合い筋の変色は著しく抑制され、192時間後の変色部位比率は僅かに25%程度を示すにとどまった。
図3は、図1と同様に血合い筋のa値の変化を経時的に測定したものであるが、図1での保存条件は4.5℃の低温で、かつ、暗室だったため一般的な小売店などでの条件とは大きく異なり、変色が進行するまでに相当に時間を要したのに対して、より現実的な条件設定として保存温度を10℃とし、さらに保存中も常時蛍光灯の光を照射する条件とした。その結果、対照区1及び2は、保存開始6時間後より徐々にa値が低下し始め、特に10時間以後急速にa値の低下が認められた。一方、試験区1は10時間目までほとんどa値の低下は認められず、僅かに10時間から11時間目にかけて低下が認められただけであり、本発明による効果は著しいものが認められた。
【実施例2】
【0030】
(1)養魚用飼料を用いてのブリの飼育試験2
表3に示す配合率にて直径12mmのEP飼料を作成し、飼育試験に供した。対照区3は添加する油脂として魚油及びパーム油を7:3の割合で混合したものを用いた。対照区4は、対照区3に対してビタミンC及びビタミンEをそれぞれ239ppm、405ppm増加したものである。試験区2は、対照区3に対して、パーム油の混合割合を魚油に対して50%に増加すると共に、ビタミンC及びビタミンEをそれぞれ239ppm、405ppm増加したものである。さらに、試験区3は、対照区3に対して、パーム油の混合割合を魚油に対して70%に増加すると共に、ビタミンC及びビタミンEをそれぞれ239ppm、405ppm増加したものである。
各区の試験飼料中のビタミンC及びビタミンE含量は表3に示したとおりである。
また、各区の飼料油脂中のn-3HUFA含量も表3に示した。飼育は4×4×4mの化繊網生け簀(海面小割生け簀)に平均魚体重約2,500gのブリ(2歳魚)を50尾ずつ収容し、63日間飼育を行った。飼育期間中の水温は17.6〜23.6℃であった。
【0031】
【表3】


【0032】
(2)飼育試験の結果(飼育成績)
飼育成績を表4に示す。いずれの区とも飼育期間中に斃死は見られず順調に成長した。即ち、終了時の平均魚体重はいずれの区も3.2〜3.3kg、成長倍率は129〜135%と、実施例1に比べると全体的に低いものの、試験区の方が対照区に比べて同等か若干良好な成長を示した。増肉係数は全体に実施例1に比べて高い傾向を示してはいるものの、実施例1のように対照区と試験区の間に特に差は認められなかった。日間摂餌率は実施例1とほとんど同じ傾向を示し、対照区3で1.3%bw/dayであったのに対して、試験区2、3はいずれも1.4%bw/dayとやや高かった。
これらの結果から、本実施例2では、魚油をパーム油に置換することによる飼育成績に対する悪影響は全く認められず、むしろ良好な傾向を示していたが、水温が低下する時期の63日間の飼育期間であることや、若干試験区間における成績のばらつきも大きいことから、実質的にはほぼ同等の成績を示しているものと思われる。
【0033】
【表4】


【0034】
(3)変色度合いの評価
次に、これらの試験魚のうち各区より大きさの比較的揃った3尾を飼育試験終了後に海上にて活け締めし、速やかに3枚におろして魚肉をブロック状に切り出し、密閉容器に収容して4.5℃で暗所にて保存し、経時的に血合い筋の赤色(a値)を色彩色差計(ミノルタ社製CR-200)にて測定した。結果を図4に示す。また、同じサンプルを用いて血合い筋表面をスキャナーで取り込み、画像処理にて血合い筋の表面積に対する変色した部位の割合を算出した。結果を図5に示す。
図4に示される色彩色差計によるa値の測定値では、24時間後より対照区3の値が徐々に低下し始め、以後大幅に低下した。一方、対照区3に対してビタミンCとビタミンEを強化した対照区4では48時間以後もa値は維持される傾向を示し、明らかに対照区3よりも高い値で推移した。しかし、対照区4においても、72時間以後はa値が急速に低下し始め、144時間後には対照区3と同等の値を示すようになった。魚油とパーム油の置換率をそれぞれ50%及び70%とした試験区2及び試験区3では、明らかに対照区3、4よりも高い値を維持する傾向を示した。
【0035】
また、図5に示される血合い筋変色部位比率の測定結果も、a値の経時変化とほぼ同様の結果で、対照区3が最も早く変色した。ビタミンC及びビタミンEを強化した対照区4では血合い筋の変色が抑制される傾向が認められ、さらに、試験区2、3のように魚油とパーム油の置換率を50%以上とすることによって、一層変色は抑制されることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、養殖魚のうちでも特に血合い筋の変色の著しいブリ類において、フィレー加工調理後の血合い筋の経時的な変色を防止する効果を高めた廉価なブリ類用の飼料が提供されることから、ブリ類用の肉質改善用飼料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1において、暗所での各区における血合い筋のa値の測定結果を経時的に示したものである。
【図2】実施例1において、各区における血合い筋の変色部位面積の占める割合を経時的に示したものである。
【図3】実施例1において、蛍光灯照射下での各区における血合い筋のa値の測定結果を経時的に示したものである。
【図4】実施例2において、各区における血合い筋のa値の測定結果を経時的に示したものである。
【図5】実施例2において、各区における血合い筋の変色部位面積の占める割合を経時的に示したものである。
【出願人】 【識別番号】591010505
【氏名又は名称】日本配合飼料株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目9番地13
【出願日】 平成16年3月31日(2004.3.31)
【代理人】 【識別番号】100074077
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 藤郎

【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也

【公開番号】 特開2005−278593(P2005−278593A)
【公開日】 平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願番号】 特願2004−101808(P2004−101808)