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【発明の名称】 飼料とその製造方法
【発明者】 【氏名】小島 愛光

【氏名】中村 武雄

【要約】 【課題】家畜類が忌避する刺激臭を除去した上有効成分の変質や減少を抑制した醤油粕の飼料を提供する。

【解決手段】醤油粕を水溶性脂肪族カルボン酸で処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油粕を水溶性脂肪族カルボン酸で処理してなる飼料。
【請求項2】
水溶性脂肪族カルボン酸が蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマール酸、りんご酸及びクエン酸からなる群から選ばれた1種もしくは2種以上である請求項1の飼料。
【請求項3】
水溶性脂肪族カルボン酸の添加量が醤油粕固形分に対して0.05〜1重量%である請求項1又は2の飼料。
【請求項4】
含水率が1〜10重量%である請求項1〜3のいずれか1項の飼料。
【請求項5】
さらに0.5〜3重量%の粉末炭を含有してなる請求項1〜4のいずれか1項の飼料。
【請求項6】
さらに0.5〜3重量%の炭酸カルシウム及び/又はゼオライト粉末を含有してなる請求項1〜5のいずれか1項の飼料。
【請求項7】
醤油粕を乾燥処理するに際して、醤油粕に、水溶性脂肪族カルボン酸を添加混合することを特徴とする飼料の製造方法。
【請求項8】
乾燥処理を100℃以下でかつ減圧下に行う請求項7の飼料の製造方法。
【請求項9】
乾燥処理を50〜85℃でかつ0.001〜0.05Mpaの圧力条件下に行う請求項7又は8の飼料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は飼料とその製造方法に関するものであり、特に産業廃棄物化している醤油粕を家畜や家禽の飼料として回収利用する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
醤油は大豆と小麦を原料として、麹菌を加えて醗酵させ、熟成したもろみを圧搾することによって得られるが、その際大量の醤油粕が発生する。醤油粕は蛋白質や炭水化物を豊富に含み、家畜や家禽の飼料として利用が期待されている。しかしながら、醤油粕には醤油独特の匂いのほかに、独特の刺激臭があり、そのままでは飼料としての利用はできない。醤油粕の有効利用に際してはしばしば水洗による脱塩処理が施され、この脱塩工程で刺激臭も低下するが、大量の洗浄水を用いてもなお飼料に適し難い刺激臭が残留しやすいと共に、有効成分の一部も洗い出されてしまうという問題がある。
【0003】
醤油粕の脱臭方法としては、特許文献1に、醤油粕を100℃以上の高温で処理する方法が提案されている。この方法は脱臭効果には優れているものの、高温処理のため醤油粕の成分変化のおそれがある。
【特許文献1】特許第2668183号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、醤油粕をその成分の変質を極力抑えると共に、特有の刺激臭を除去してなる良品質の飼料とその製造方法を提供することにある。なお、本発明において醤油粕とは、熟成したもろみを圧搾して得られる絞り粕をいう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1は、醤油粕を水溶性脂肪族カルボン酸で処理してなる飼料である。
本発明の第2は、醤油粕を乾燥処理するに際して、醤油粕に、水溶性脂肪族カルボン酸を添加混合することを特徴とする飼料の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明による飼料は家畜や家禽が嫌う特有の刺激臭が顕著に軽減されているため、家畜や家禽は、抵抗なくこれを食することができる。
また本発明による飼料の製造方法は、脱塩処理した醤油粕に対しても適用可能だが、実質的に脱塩処理していない醤油粕に対して適用した場合により大きな効果を発揮する。この場合には、有効成分の低下を伴うことなく上記の刺激臭を選択的に顕著に軽減させることができると共に、飼料中に塩分が存在するため、家畜や家禽に必要な塩分をそこから補給することができると共に飼料全体の至適塩分量に合うように配合飼料の一部としてその使用量を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で醤油粕の処理用に用いる水溶性脂肪族カルボン酸は、水溶性で家畜や家禽に対して無害な水溶性脂肪族カルボン酸であれば適宜の化合物を用いうる。例えば、通常食品添加物として使用されていたり、食品中に含まれていたり、服用医薬等に使用されているカルボン酸は特に好ましく用いられる。一般的には低級鎖状又は環状脂肪族モノ、ジ又はトリカルボン酸で所望により水酸基等をもつものであり、具体的には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマール酸、りんご酸及び/又はクエン酸等が好ましく用いられる。これらのエステル形成性誘導体も包含される。
これらは通常水溶液として用いられる。水溶液の濃度は特に制限されず、分散効率と乾燥効率とを考慮して適宜の濃度の水溶液が用いられる。通常は0.5〜20重量%程度の濃度範囲から最適濃度が選択される。
【0008】
本発明では醤油粕の乾燥処理工程で上記した水溶性脂肪族カルボン酸の水溶液を添加し、両者を混合することによって醤油粕の乾燥と脱臭が同時に行なわれる。
加熱処理条件としては、100℃以下の温度と減圧との組合せ下での混合・攪拌操作が好ましい。より具体的には温度50〜85℃、圧力0.001〜0.05Mpa(メガパスカル)で乾燥処理することが好ましい。
醤油粕への水溶性脂肪族カルボン酸の添加時期は特に制限されないが、醤油粕の脱水が進み、含水率が概ね20%以下、特に15%以下になった時点に添加することが好ましい。
【0009】
醤油の醸造では蛋白質のアミノ酸醗酵のほかに、炭水化物のアルコール発酵等複雑な副反応が起こり、様々な副生物が生成する。これが醤油粕独特の刺激臭の原因ともなっているが、脂肪族カルボン酸はこれ等の副生物との反応でも消費されることから、減圧乾燥してできる限り揮発性の副生物を蒸発除去しておくことが望ましい。
水溶性脂肪族カルボン酸の添加量は、添加時点における醤油粕の含水率等によって異なるが、通常は醤油粕の固形分に対して5重量%以下、好ましくは0.05〜1重量%である。過剰量の使用は経済性を損なうが、乾燥による蒸発等もあり、飼料品質への悪影響はほとんどない。
【0010】
醤油粕中に含まれる刺激臭成分及びその量は明らかではないが、その臭気の特徴から家畜類が忌避する刺激臭成分はアミルアルコールがその主成分と推測される。従ってアミルアルコールを除去もしくは変成させることができれば、その刺激臭を除去もしくは軽減できるはずである。従って該醤油粕を加熱してアミルアルコールを蒸発させれば臭気成分を除去できる。然し、アミルアルコールの沸点は102〜137℃と高く高温加熱が必要であり、このような高温加熱では飼料成分が変化しやすい。本発明ではアミルアルコールが酢酸等のカルボン酸でエステル化することによって、香気成分に変成するものと推測される。
【0011】
本発明の処理に用いる乾燥機は、減圧下での加熱と混合及び/又は攪拌とが可能な装置であれば本質的にはどのような乾燥機も使用可能だが、真空ポンプに連結していると共に内壁を伝熱面とする円筒体内に、乾燥処理対象物を円筒体内壁に押し付けた上掻き取る機能をもつ回転式攪拌羽根を備えているバッチ式の減圧乾燥機が好ましく、その一例を図1に示す。図1において、1は攪拌スクリュー、2は攪拌羽根、3は原料投入口、4は蒸発水分排出口(蒸発蒸気を吸引する真空ポンプと蒸気を冷却する熱交換器が付属している)、5は製品取り出し口、6は加熱蒸気等熱媒の通路(乾燥機の外套部)、7は加熱蒸気等熱媒の投入口を示す。攪拌羽根は、伝熱面である円筒体内壁に被処理物を押し付けて伝熱効果を高める機能をもつ攪拌羽根と円筒体内壁に付着した被処理物を掻き取る機能をもつ攪拌羽根からなることが好ましい。攪拌羽根は、上記の機能を十分に発揮するようにそれらと円筒体内壁との間隔を保つことが好ましい。一例として、攪拌羽根を求心方向と遠心方向に摺動させて、被処理物を伝熱面に押し付け掻き取ることが好ましい。
【0012】
処理時間は規模や含水率等によって異なり、刺激臭の低下の確認などによって最適処理時間を決定しうるが、通常は10分〜5時間程度である。
【0013】
脱臭乾燥品の含水率は、品質保持の観点から10重量%以下が好ましく、特に1〜10重量%が好ましい。脱臭乾燥品にはその脱臭効果を上げるために、粉末炭を加えることができる。粉末炭は脱臭作用だけでなく、整腸作用もありよく家畜の飼料に混合される。その混合量は飼料成分に対して0.5〜0.3重量%が好ましい。また、多孔性のゼオライト粉末も同様に用いることができる。更に又、粉末炭の添加による飼料の色調の悪化を防ぐために炭酸カルシウム粉末を混合することができる。ゼオライト及び/又は炭酸カルシウムの混合割合は飼料成分に対して夫々0.5〜3重量%が好ましい。
【0014】
以下、本発明を実施例で説明する。
実施例1:
図1に示す減圧乾燥機に含水率10%の醤油粕100kgと10%酢酸水溶液9kgを充填し、攪拌混合しながら、温度60℃、圧力0.025Mpaで30分間減圧乾燥した。乾燥品の含水率は6.0%であり、当初持っていた刺激臭は著しく減少しており、醤油独特の香りに満ちた製品を得た。得られた製品を通常の飼料と混合して牛に給餌したところ、牛はこれを忌避することなく、旺盛に食した。
【0015】
比較例1:
酢酸水溶液を使用しない点を除いては実施例1と同様の方法で、醤油粕を乾燥した。乾燥品の含水率は4.0%であった。乾燥品は当初の刺激臭の若干の軽減はあったが、十分とはいえなかった。得られた乾燥品を通常の飼料と混合して、牛及び豚に給餌したところ、これを食することはなかった。
【0016】
実施例2:
実施例1で用いた10%酢酸水溶液9kgの代わりに、1%酢酸水溶液9kgを含水率10%の醤油粕100kgに添加混合して、温度80℃、圧力0.05Mpaで30分間減圧乾燥を行った。乾燥品の含水率は6.5%であった。乾燥品は刺激臭が著しく減少しており、飼料としての品質を十分に備えるものであった。これを牛及び豚に給餌したところ、旺盛な食欲を示した。
【0017】
実施例3:
蟻酸1%水溶液9kgを含水率10%の醤油粕100kgに添加混合した後、温度60〜70℃、圧力0.025〜0・035Mpaで30分間乾燥処理した。乾燥品の含水率は5.5%であった。乾燥品は飼料としての品質を十分に備えるものであった。
【0018】
実施例4:
クエン酸1%水溶液9kgを用いた以外は実施例3と同じ条件で減圧乾燥処理を行った。乾燥品の含水率は6.0%であり、飼料としての品質を十分に備えるものであった。
【0019】
実施例5:
乳酸1%水溶液9kgを用いる以外は実施例3と同じ条件で減圧乾燥を行った。乾燥品の含水率は6.7%であり、飼料としての品質を十分に備えるものであった。
【0020】
実施例6:
実施例1で得られた飼料に、重量割合で1%の粉末炭を混合したところ、当該飼料に比べて臭気の軽減が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明で使用する減圧乾燥機の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 攪拌スクリュー
2 攪拌羽根
3 原料投入口
4 蒸発水分排出口(熱交換器−真空ポンプ)
5 製品取出口
6 減圧蒸気乾燥機
7 蒸気吹込口
【出願人】 【識別番号】598141349
【氏名又は名称】東洋濾水工業株式会社
【出願日】 平成16年3月25日(2004.3.25)
【代理人】 【識別番号】100071755
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 武彦

【公開番号】 特開2005−270005(P2005−270005A)
【公開日】 平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願番号】 特願2004−89035(P2004−89035)